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特許7567065ねじ山を光学式に測定する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ねじ山を光学式に測定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/22 20060101AFI20241007BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20241007BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G01B11/22 Z
G01B11/24 R
B25J11/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023554906
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022054059
(87)【国際公開番号】W WO2022189122
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】102021202213.8
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル へーファー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ドホーン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ホレンダー
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523988(JP,A)
【文献】特開2016-75502(JP,A)
【文献】特表2019-517671(JP,A)
【文献】特表2013-527471(JP,A)
【文献】特開2020-165667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管(3)の少なくとも一方の端部に設けられたねじ山を、マニピュレータに取り付けられ、前記金属管(3)に関して好適には自由に位置決め可能な少なくとも1つの測定ヘッド(10)を用いて光学式に測定する方法であって、前記測定ヘッド(10)が、前記ねじ山を測定するための光学測定区間(16)と、少なくとも1つの姿勢検出器とを有しており、該方法が少なくとも、
A)測定姿勢で前記金属管(3)を提供するステップと、
B)測定位置への前記測定ヘッド(10)の位置決め前かつ/または位置決め中に、前記少なくとも1つの姿勢検出器を用いて前記金属管(3)の長手方向軸線(2)の空間姿勢を特定するステップと、
C)前記測定位置への前記測定ヘッド(10)の位置決め前かつ/または位置決め中に、前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)に対して平行に前記測定ヘッド(10)を位置調整するステップと、
D)前記光学式のねじ山測定を実施するステップと、
を有している、方法において、
前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)の前記空間姿勢を特定するステップを、前記測定ヘッド(10)の前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)の目標コースに沿った前記測定ヘッド(10)の直線運動中に実施し、
前記姿勢検出器として、第1のラインレーザ(6)を使用し、
前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)の前記空間姿勢を特定するステップならびに/または前記測定ヘッド(3)および/もしくは前記光学測定区間(16)を微調整するステップを、前記測定ヘッドに設けられた少なくとも1つの第2のラインレーザ(7)を使用しながら実施し、該第2のラインレーザ(7)が、前記金属管の前記長手方向軸線(2)の目標コースに対して平行に位置調整されている
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記測定ヘッド(10)および/または前記測定ヘッド(10)の前記測定区間(16)を、前記測定位置において、前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)に関して規定されかつ設定された角度でかつ/または規定された軸方向の位置で微調整する、別の方法ステップを有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のラインレーザ(6)が、前記測定ヘッド(10)において、前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)の目標コースに対して直角に位置調整されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記金属管の真円度を、前記測定ヘッドの回転中に、前記金属管の前記長手方向軸線の予め規定された目標コースを介して求める、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)の前記目標コースを中心とした少なくとも180°の前記測定ヘッド(10)の回転中に、前記光学測定区間(16)を用いて、前記金属管(3)の全周にわたる目標ねじ山深さからの実際ねじ山深さの偏差を測定する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記金属管(3)の全周にわたる前記ねじ山深さの偏差に基づいて、前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)の前記目標コースからの前記金属管の前記長手方向軸線の実際コースの角度のずれを計算する、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記測定ヘッド(10)および/または前記測定区間(16)が、前記微調整のために支持体(11)に対して位置調節可能である、請求項1からまでのいずれか1記載の方法。
【請求項8】
前記測定ヘッド(10)が、間隔を置いて延びる2つの測定区間(16)を有しており、該測定区間(16)の間隔が、前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)に関して調節可能であり、前記間隔を、前記金属管(3)の求められた直径および/または算出された直径に依存して調節する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
別の方法ステップが、前記ねじ山の設定された勾配角度に前記測定ヘッドを適合させるために、前記金属管(3)の前記長手方向軸線(2)の前記目標コースに対して垂直な軸線を中心として少なくとも1つの光学測定区間(16)を手動で、かつ/または自動的に位置調節するステップを規定している、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
別の方法ステップが、前記測定ヘッド(10)の衝突を検知するステップを有しており、該衝突を検出するステップが、前記測定ヘッド(10)および/または前記マニピュレータの引き続きの運動を阻止する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記別の方法ステップが、少なくとも1つの光学測定区間(16)の汚れを検知するステップを有しており、検出された汚れ度合いに依存して、クリーニング過程または前記測定過程の機能中断が引き起こされる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
金属管(3)の少なくとも一方の端部に設けられたねじ山を光学式に測定する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施する装置であって、マニピュレータにおいてガイドされ、かつ前記金属管(3)に関して自由に位置決め可能な少なくとも1つの測定ヘッド(10)を備えており、該測定ヘッド(10)が、前記ねじ山を測定するための少なくとも1つの光学測定区間(16)と、少なくとも1つの姿勢検出器とを有しており、前記測定ヘッドが、前記マニピュレータに取り付けられた支持体(11)に対して直線的に位置調節可能、かつ/または軸線を中心として旋回可能に取り付けられており、前記少なくとも1つの光学測定区間(16)が、前記測定ヘッド(10)の直線的な位置調節経路に対してほぼ垂直に延びており、前記装置が、測定位置において前記測定ヘッドおよび/または前記測定ヘッドの前記測定区間を調整および/または較正するための手段をさらに備えている、装置において、
姿勢検出器として、少なくとも1つの第1のラインレーザ(6)が設けられており、該第1のラインレーザ(6)が、前記測定ヘッド(10)の前記直線的な位置調節経路に対してほぼ直角に延びており、
姿勢検出器として、第2のラインレーザ(7)が付加的に設けられており、該第2のラインレーザ(7)が、前記測定ヘッド(10)の前記直線的な位置調節経路に対してほぼ平行に延びている
ことを特徴とする、装置
【請求項13】
マニピュレータとして、複数の自由度を有する関節アーム(9)を備えた産業ロボットが設けられている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの衝突検出器がさらに設けられており、該衝突検出器は、前記測定ヘッド(10)または前記測定ヘッド(10)の部分が前記金属管(3)と衝突し得る場合に、前記測定ヘッド(10)の位置調節および/または前記マニピュレータの運動を阻止する、請求項12または13項記載の装置。
【請求項15】
前記測定ヘッド(10)が、第1の光学測定区間(16)および第2の光学測定区間(16)を有しており、該第1の光学測定区間(16)および第2の光学測定区間(16)はそれぞれ、前記測定ヘッド(10)の前記直線的な位置調節経路に対してほぼ垂直に延びている、請求項12から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記測定ヘッド(10)が、互いに間隔を置いて配置されかつ互いに位置調節可能な少なくとも2つの脚部(19)を有しており、該脚部(19)に、それぞれ少なくとも1つの光学センサおよび該光学センサに対して間隔を置いて配置された少なくとも1つの光源が設けられており、前記光学センサと前記光源とが、それぞれ1つの光学測定区間(16)を形成する、請求項12から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
前記光学測定区間(16)のうちの少なくとも一方の光学測定区間が、他方の光学測定区間に対して、前記測定ヘッド(10)の前記直線的な位置調節経路に対して横方向に旋回可能である、請求項12から16までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管の少なくとも一方の端部に設けられたねじ山を、マニピュレータに取り付けられ、金属管に関して自由に位置決め可能な少なくとも1つの測定ヘッドを用いて光学式に測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はさらに、ねじ山を光学式に測定する、特に方法を実施するための装置に関する。例えば天然ガスまたは石油のような圧力下にある流体を搬送するために用いられ、耐圧で気密かつ液密に互いに螺合される管のねじ山には、密閉性に対して高い要求が課されている。石油もしくは天然ガスの試掘井または天然ガスもしくは石油の搬送管路のためのケーシングもしくは竪管としてのこのような油井管(OCTG = Oil Country Tubular Goods)では、通常、アンダカットされたねじ山フランクを備えた円錐形のねじ山が使用される。ねじ山には、通常、管の端面側でシールリップが接続している。ねじ山とシールリップとは両方とも、最も高い精密要求を満たさなければならない。従来技術において基本的に、管の品質検査のためにねじ山を光学式に測定することが公知である。
【0003】
管の雄ねじ山プロフィールを光学式に測定する方法ならびに装置は、例えば国際公開第201909371号から公知である。この装置は、測定すべき管のための支持台と、光源およびこの光源の光路内に配置された、雄ねじ山プロフィールの逆光線写真を撮影するためのカメラを含む少なくとも1つの測定装置を備えた光学式の測定ユニットと、を有しており、光学式の測定ユニットは、3つの空間軸線を中心として旋回可能に保持されている支持エレメントに不動に配置されており、さらに光学式の測定ユニットは、少なくとも2つの測定装置を有しており、これらの測定装置の光路は互いに交差する。この方法は、測定すべき管を支持台上に配置するステップであって、これにより、空間軸線が、測定ユニットの測定平面に対して横方向に延び、かつ雄ねじ山が光源と対応配置されたカメラとの間の光路内に配置されるステップと、測定平面が空間軸線と直角を成すように、測定ユニットを位置調整するステップと、少なくとも1つの測定装置のカメラを用いて雄ねじ山の逆光線写真を撮影するステップと、この逆光線写真を評価するステップと、を含んでいる。
【0004】
ねじ山を測定する別の装置は、例えば、欧州特許第3465079号明細書から公知である。この装置は、管を着脱可能に保持するためのホルダを備えており、ねじ山は、管の一方の端部に成形されており、第1の光学センサを備えた第1の光学測定区間を有し、第1の光学測定区間は、この第1の光学測定区間を管に対して運動させるように設定されている装置のマニピュレータに設けられており、第1の光学測定区間は、ねじ山のねじ山軸線に対して第1の作動軸線を中心として調節可能であり、マニピュレータに、第2の光学センサを備えた装置の第2の光学測定区間が配置されており、光学測定区間は、全体的に、ねじ山の反対に位置する側から同時に測定するための測定チャネルを形成する。この装置は、特に、測定チャネルが、マニピュレータにより、少なくとも1つの第2の作動軸線を中心として、ねじ山軸線に対して傾倒可能であり、これにより、測定チャネルは、所定の空間角度間隔内で自由に位置調節可能であることを特徴とする。
【0005】
独国特許出願公開第102007017747号明細書から、管端部に設けられた雄ねじ山プロフィールを光学式に測定する方法および装置が公知であり、管端部において、ねじ山が予め製造ラインにおいてタイミング制御されて形成され、ラインにおける後続加工前に、ねじ山の始端部から終端部まで連続的に測定させる。予め形成されたねじ山のプロフィールは、管と、逆光内に配置された、照明およびカメラから成る少なくとも1つの光学式の測定ユニットとの間の回転運動および並進運動から成る相対運動を介して、管横断面に対して接線方向で照射または走査される。
【0006】
別の従来技術は、欧州特許第2259015号明細書から公知であり、明細書には、管ねじ山の触覚式の測定と、光学式の測定との組み合わせが記載されている。
【0007】
最後に、欧州特許第2799809号明細書に基づいて、ねじ山のフランクをクリーニングし、次いで測定する方法が公知である。
【0008】
ねじ山の測定時に、通常、測定すべき金属管は測定姿勢にもたらされる。この測定姿勢では、空間におけるねじ山の位置が正確に定義されていない。これは、測定されるべき管が真直度に関する公差を有しているか、または管が全長にわたって支持台によって支持されていない場合に、管端部が重力に起因して下がることによっても生じる。これによって、測定の精度および再現性が損なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の根底を成す課題は、測定結果の精度および再現性に関して改善された、光学式にねじ山を測定する方法および装置を提供することである。さらに、本発明による方法および装置は、様々な直径を有する金属管における様々なねじ山の測定に簡単かつ正確に適合可能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。さらに、この課題は、請求項12に記載の特徴を有する装置によって解決される。本発明による方法および装置の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、測定ヘッドが、金属管に関して自由に位置決め可能であり、測定ヘッドが、少なくとも1つの光学測定区間と、少なくとも1つの姿勢検出器とを有している方法であって、この方法は、少なくとも、以下の方法ステップ、すなわち、
A)測定姿勢で金属管を提供するステップと、
B)金属管への測定ヘッドの接近前かつ/または接近中に、少なくとも1つの姿勢検出器を用いて金属管の長手方向軸線の空間姿勢を特定するステップと、
C)測定位置における測定ヘッドの位置決め前かつ/または位置決め中に、金属管の長手方向軸線に対して平行に測定ヘッドを位置調整するステップと、
D)光学式のねじ山測定を実施するステップと、
を含む方法が提案される。
【0012】
上に挙げた方法の特徴A)~D)は、好適には列挙された順番で実施されるが、方法ステップB)およびC)の順序は交換可能である。
【0013】
本発明によれば、少なくとも1つの姿勢検出器は、この姿勢検出器が、測定すべきねじ山または測定すべき金属管への測定ヘッドの接近時に、測定ヘッドが進む位置調節経路に関して測定すべき金属管に向かう方向で、測定ヘッドのガイドする端部に配置されるように、測定ヘッドに配置されている。これにより、測定ヘッドを、例えば測定ヘッドが取り付けられているマニピュレータの対応する制御によって、ねじ山への接近中にも、金属管の長手方向軸線に対して平行に位置調整することができる。
【0014】
本発明による方法の好ましいバリエーションでは、別の方法ステップが設けられている。この別の方法ステップは、測定ヘッドおよび/または測定ヘッドの測定区間を、測定位置において、金属管の長手方向軸線に関して規定されかつ設定された角度で、かつ/または規定された軸方向の位置で微調整するステップを含む。
【0015】
姿勢検出器として、第1のラインレーザが設けられており、この第1のラインレーザは、好適には、金属管の長手方向軸線の目標コース(Soll-Verlauf)または測定ヘッドの予め規定された直線的な位置調節に対して直角に位置調整されている。
【0016】
本発明による方法では、金属管の長手方向軸線の空間姿勢を特定するステップならびに/または測定ヘッドおよび/もしくは少なくとも1つの光学測定区間を微調整するステップを、測定ヘッドに設けられた少なくとも1つの第2のラインレーザを使用しながら実施し、第2のラインレーザが、金属管の長手方向軸線の目標コースに対して平行に位置調整されていることが規定されている。
【0017】
測定ヘッドは、基本的に、ねじ山フランクまたはねじ山のフランク角度を測定するために設けられている第3のラインレーザまたは光切断センサも備えていてよい。
【0018】
さらに、金属管の直径を、例えば測定位置への測定ヘッドの位置決め中に測定し、かつ/または計算することが規定されていてよい。金属管の直径は、直接的に、例えば測定ヘッドの光学測定区間を用いて求めることができる。
【0019】
本発明による方法の別の有利なバリエーションでは、金属管の真円度を測定ヘッドの回転中に金属管の長手方向軸線の予め規定された目標コースを介して求めることが規定されている。例えば、マシニングセンタにおけるねじ山切削過程に起因して、加工すべき金属管は、加工工程後に非円形であることがあり、または部分的に楕円形の周面輪郭を有していることがある。金属管の非真円度は、本発明によれば、金属管の長手方向軸線を中心とした規定された角度にわたる測定ヘッドの回転中に、例えば少なくとも1つのラインレーザを用いて、かつ/または少なくとも1つの光学測定区間を用いて求めることができる。
【0020】
本発明による方法のバリエーションでは、金属管の長手方向軸線の目標コースを中心とした少なくとも180°の測定ヘッドの回転中に、少なくとも1つの、好適には両方の光学測定区間を用いて、金属管の全周にわたる目標ねじ山深さからの実際ねじ山深さの偏差を測定することが規定されている。金属管の長手方向軸線の目標コースを中心として約180°だけ測定ヘッドを回転させる場合に、互いに反対側に位置するように配置された2つの光学測定区間を用いて、全体的にねじ山の360°スキャンを生成することができる。
【0021】
金属管の全周にわたるねじ山深さの偏差に基づいて、金属管の長手方向軸線の目標コースからの金属管の長手方向軸線の実際コース(Ist-Verlauf)の角度のずれも計算することができる。
【0022】
測定ヘッドおよび/または測定区間は、測定ヘッドおよび/または測定区間を微調整するために、マニピュレータの自由端に取り付けられていてよい支持体に対して位置調節可能であってよい。好適には、測定位置への測定ヘッドの位置決めは、まずマニピュレータの対応する制御により行われ、このマニピュレータは、例えば、複数の自由度で運動可能な関節アーム機構を備えた産業ロボットとして構成されている。測定ヘッドまたは光学測定区間の微調整は、好適には支持体に対する測定ヘッドの位置調節を介して行われ、ここで測定ヘッドは、支持体に関して、好適には直線的に位置調節可能であると共に、旋回可能でもある。測定ヘッドは、好適には金属管の長手方向軸線の目標コースに対してほぼ垂直に延びる軸線を中心として旋回可能である。
【0023】
本発明による方法の特に有利なバリエーションでは、測定ヘッドが、好適には互いに対してほぼ平行かつ互いに間隔を置いて延びる2つの測定区間を有しており、これらの測定区間の間隔は、金属管の長手方向軸線に関して調節可能であり、この間隔を、好適には金属管の求められた直径および/または算出された直径に依存して自動的に調節することが規定されている。これによって、本発明に係る装置の較正を、様々な管直径において特に簡単に実施することができる。較正は、例えば、測定ステーションに配置された試験片に基づいて実行することができる。
【0024】
好適には、別の方法ステップが、ねじ山の指定された勾配角度に測定ヘッドを適合させるために、金属管の長手方向軸線の目標コースに対して垂直な軸線を中心として少なくとも1つの光学測定区間を手動で、かつ/または自動的に位置調節するステップを有している。
【0025】
さらに好適には、測定位置への測定ヘッドの位置決め時に、金属管の直径および位置に関して衝突を検知するステップが規定されており、この衝突を検知するステップは、測定ヘッドと金属管との起こり得る衝突が検出された場合に、測定ヘッドおよび/またはマニピュレータの引き続きの運動を阻止する。これにより、高感度の測定電子機器が衝突に起因する力によって損傷することが阻止される。
【0026】
最後に、方法の本発明によるバリエーションでは、少なくとも1つの光学測定区間の汚れを好適には自動的に検知するステップが規定されている。検出された汚れ度合いに依存して、クリーニング過程を引き起こすことができるか、または測定過程の機能中断が規定されている。例えば、センサまたは光源のガラスカバーの汚れ度合いが増大すると、それぞれのセンサによって、いわゆるグレースケール検出の形態のかすみの度合いを求めることができる。この方法では、ガラスカバーを定期的に、例えばニューマチック式に自動的にクリーニングすることが規定されている。汚れ度合いに応じて、付加的なクリーニング過程を開始することができる。予め規定された汚れ度合いからは、測定はもはや確実に実施することができない。この場合、測定過程を中断することが有意である。測定区間の光学センサは、例えばCCDセンサまたはCMOSセンサとして構成されていてよい。
【0027】
本発明の別の観点は、金属管の少なくとも一方の端部に設けられたねじ山を光学式に測定する装置、特に上述した方法を実施する装置に関する。この装置は、マニピュレータにおいてガイドされ、かつ金属管に関して自由に位置決め可能な少なくとも1つの測定ヘッドを備えていてよく、測定ヘッドは、ねじ山を測定するための少なくとも1つの光学測定区間と、少なくとも1つの姿勢検出器とを有しており、測定ヘッドが、マニピュレータに取り付けられた支持体に対して直線的に位置調節可能、かつ/または軸線を中心として旋回可能に取り付けられており、少なくとも1つの光学測定区間が、測定ヘッドの直線的な位置調節経路に対してほぼ垂直に延びており、装置が、測定位置において測定ヘッドおよび/または測定ヘッドの測定区間を調整かつ/または較正するための手段をさらに備えている。
【0028】
測定ヘッドを調整しかつ/または較正するための手段として、例えば制御装置により対応して制御可能であってよい少なくとも1つのリニア駆動装置および/または少なくとも1つの回転駆動装置が設けられていてよい。
【0029】
合目的的には、マニピュレータとして、複数の自由度を有する関節アームを備えた産業ロボットが設けられている。
【0030】
姿勢検出器として、少なくとも1つの第1のラインレーザが設けられており、この第1のラインレーザが、測定ヘッドの直線的な位置調節経路に対してほぼ直角に延びている。
【0031】
好適には、少なくとも1つの衝突検出器が設けられており、この衝突検出器は、測定ヘッドまたは測定ヘッドの部分が金属管と衝突するおそれがある場合に、測定ヘッドの位置調節および/またはマニピュレータの運動を阻止する。姿勢検出器のラインレーザのうちの少なくとも1つが、同時に衝突検出器としての機能を満たすこともできる。
【0032】
合目的的には、測定ヘッドは、少なくとも第1の光学測定区間および第2の光学測定区間を有しており、第1の光学測定区間および第2の光学測定区間はそれぞれ、測定ヘッドの直線的な位置調節経路に対してほぼ垂直に延びている。測定ヘッドは、例えば互いに間隔を置いて配置されかつ互いに位置調節可能な少なくとも2つの脚部を有していてよく、これらの脚部に、それぞれ少なくとも1つの光学センサおよび光学センサに対して間隔を置いて配置された少なくとも1つの光源が設けられており、光学センサと光源とがそれぞれ1つの光学測定区間を形成する。測定区間の光学センサは、例えばCMOSまたはCCDセンサとして構成されていてよく、テレセントリック光学系を有していてよい。
【0033】
光学センサと光源との間の光路は、必ずしも直線状に延びている必要はなく、むしろ、光路を少なくとも1つのミラーによって偏向させることもできる。これにより、測定ヘッドの比較的コンパクトな構造形式を実現することができる。特に、これにより、管の長手方向軸線に対するそれぞれの測定区間の間隔、ひいては金属管の長手方向軸線を中心とした回転半径を小さくすることができる。
【0034】
好適には、測定ヘッドの光学測定区間または脚部のうちの少なくとも1つは、それぞれ他方の測定区間に対して、測定ヘッドの直線的な位置調節経路に対して横方向に旋回可能である。これにより、測定ヘッドもしくは測定区間の姿勢の好適には自動的な調節および/または様々なねじ山勾配角度に対する適合を達成することができる。
【0035】
本発明に係る方法および装置の好ましい実施例を、以下に添付の図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ねじ山測定時の本発明による測定ヘッドを示す斜視図である。
図2】測定ヘッドに設けられた、姿勢検出用のレーザと共に概略的に示す側面図である。
図3a】金属管の長手方向軸線の方向で見た、本発明による光学式の測定原理を示す図である。
図3b】アンダカットされたねじ山フランクを測定するための付加的な光切断センサを有する光学式の測定原理の側面図である。
図3c】アンダカットされたねじ山フランクの測定時の測定原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ねじ山を光学式に測定する本発明による装置が、図1に概略的に示されている。この装置は、マニピュレータとしてロボット8を含み、このロボット8は、好適には5つの自由度を有する、回転可能かつ旋回可能なロボットアーム9を備えており、ロボットアーム9の自由端には測定ヘッド10が配置されている。測定ヘッド10は、金属管3に設けられた雄ねじ山4を光学式に測定するための光学式の測定手段が設けられた支持体11を備えている。金属管3の雄ねじ山4は、例えばCNCフライス盤またはマシニングセンタの形態の図示しない工作機械において予め形成されている。次いで、図1に示すように、金属管3は規定された測定姿勢で固定される。測定姿勢は、例えば図1に概略的に示すように、中央で狭窄された位置ロール(ディアボロローラ)13によってローラ送りテーブル12上で定義されてよく、位置ローラ13の狭窄部が、金属管3の姿勢を決定する。代替的には、測定すべき金属管3を位置固定するための側方ストッパが設けられていてよい。金属管3のこの測定姿勢において、測定ヘッド10の支持体11は、場合によっては金属管3の直径較正後に、測定位置へと走行する。この測定位置において、測定ヘッド10は金属管に対して位置調整される。
【0038】
測定ヘッド10の直径較正は、金属管3が測定手段間に配置されるように、測定ヘッド10の測定手段を支持体11に対して位置決めする働きをし、これによって測定ヘッド10は、予備位置調整時に、金属管3に衝突しない。このために、測定ステーションに、基準構成部材としてカリバ(Kaliber)が配置されていてよく、このカリバに基づいて、測定過程の実施前に測定ヘッド10を較正することができる。
【0039】
測定ヘッド10の位置決めまたは予備位置調整のために、測定ヘッド10に、本発明によれば少なくとも1つの姿勢検出器が設けられていてよく、この姿勢検出器は、図1に示した測定姿勢への測定ヘッド10の運動前かつ/または運動中に、金属管3の長手方向軸線2の空間姿勢を特定する。金属管3の長手方向軸線2の実際コースは、長手方向軸線2の目標コースから逸脱していることがある。金属管3の長手方向軸線2の実際コースを検出するために、測定ヘッド10は、姿勢検出器として、第1のラインレーザ6および第2のラインレーザ7を備えており、第1のラインレーザ6および第2のラインレーザ7により、測定姿勢で固定された金属管3に対する測定ヘッド10の位置を検査し、場合によっては補正することができる。
【0040】
測定ヘッドにおける第1のラインレーザ6および第2のラインレーザ7の配置は、図2に概略的に図示されている。第1のラインレーザ6は、金属管3の長手方向軸線2の目標コースに対してほぼ90°の角度で、または測定ヘッド10の直線的な位置調節経路に関してほぼ90°の角度で延びている。第2のラインレーザ7は、金属管3の長手方向軸線2の目標コースに対してほぼ平行に、または第2の金属管3の長手方向軸線の目標コースに対して平行に、または測定ヘッド10の直線的な位置調節経路に対して平行に延びている。第2のラインレーザ7は、金属管3の長手方向軸線2の目標姿勢の高さにおいて、測定ヘッド10の、旋回不能な脚部19に配置されている。
【0041】
この方法は、ロボットアーム9の対応した制御により、図1に示した測定姿勢への測定ヘッド10の予備位置決めまたは測定ヘッド10の位置決めを含み、かつ支持体11に対する測定ヘッド10の位置調節による、測定姿勢における測定ヘッド10の微調整を含む。微調整は、金属管の長手方向軸線2に対してほぼ横方向に延びる旋回軸線1を中心とした測定ヘッドの旋回による、金属管3の長手方向軸線2に関する少なくとも1つの測定区間16の位置調整を含む。
【0042】
既に上述したように、測定ヘッド10は、支持体に対して直線的に走行可能であり、かつ好適には少なくとも1つの軸線を中心として旋回可能である。直線的な位置調節は、例えば少なくとも1つの駆動されるボール循環スピンドルによって、または少なくとも1つの主軸台によって実施することができる。旋回軸線1を中心とした位置調節は、例えば電気的な回転駆動装置(図示せず)により実施することができる。
【0043】
雄ねじ山4を測定するための測定手段は、それぞれ測定ヘッド10の脚部19に配置されている。測定ヘッド10の脚部19は、互いに対して間隔を置いて、直線上で位置調節可能である。測定ヘッド10の脚部19は、金属管3のU字形の包囲部を形成する。両脚部19は、独立してかつ互いに対して位置調節可能に形成されていてよい。説明した実施例では、測定ヘッド10の一方の脚部19が定置に配置されているのに対して、測定ヘッド10の他方の脚部19は、測定ヘッド10の反対側に位置する脚部19に対して位置調節可能であることが規定されている。様々なねじ山勾配に測定ヘッド10を調節するために、測定ヘッド10の脚部19は、測定ヘッド10の直線的な位置調節経路に対して横方向の軸線を中心として互いに対して旋回可能である。
【0044】
測定ヘッド10の脚部19のそれぞれに、例えば図3aに図示されているように、測定手段として、テレセントリック光学系を備えたカメラ14と、このカメラとは反対側に位置するように位置決めされた光源15とが設けられている。カメラ14および光源15は、それぞれ互いに間隔を置いて対峙して位置して1つの測定区間16を形成するように配置されており、測定区間16は真っ直ぐな測定区間16として形成されていてよい。カメラ14と光源15との間の光路は、代替的にミラーを介して偏向されていてよい。
【0045】
測定原理を、以下で図3a,図3bおよび図3cを参照しながら説明する。各測定区間16は、金属管の一方の側で、雄ねじ山プロフィールの一部を検出し、光源15によって形成された、雄ねじ山4の一部の投影が、それぞれテレセントリック光学系を用いて、カメラ14に配置された感光性のセンサ、例えばCMOSまたはCCDセンサにおいて生じる。カメラ14においてテレセントリック対物レンズを使用することによって、それぞれのセンサにより検出される投影を歪みなくかつ縮尺通りに撮影できることが確実になる。このようにして検出された雄ねじ山4の測定データは、記録され、雄ねじ山4の目標プロフィールと比較される。2つの測定区間16は、唯一の測定チャネルを形成することができる。
【0046】
本発明による測定ヘッド10のバリエーションでは、測定ヘッド10が、少なくとも1つの光切断センサ17を備えていることが規定されており、光切断センサ17は、レーザ切断センサとして構成され、かつ雄ねじ山4のねじ山フランク5に合わせて位置調整されている。ねじ山フランク5の測定は、図3cに具体的に示されている。
【0047】
図示しない閉ループ制御装置において、雄ねじ山プロフィールおよび/または雄ねじ山4のシールリップの測定データの評価と、特に目標プロフィールと測定データにより示される実際プロフィールとの間の偏差が生じた場合には、工作機械を制御するための制御命令の導出とが行われる。各目標プロフィールは、例えば操作者インターフェース(HMI)において、様々なねじ山タイプのカタログから自由に選択可能であってよい。
【0048】
測定ヘッド10と工作機械の制御装置とは、好適には閉ループ制御回路を形成する。制御命令は、例えば、工具位置の調整、工具の選択、工作機械の緊締チャックおよび金属管3の回転速度、およびその場合に加えられるトルク、工具交換の実施、工作機械のサイクルタイムの変更等であってよい。閉ループ制御は、自己学習式制御(AI)として構成されていてよく、このために少なくとも1つの制御アルゴリズムを含んでいてよい。管に関して求められた測定データは、本発明によれば、工作機械とのフィードバックのために、かつ工作機械の制御のためにだけに使用されるのではなく、安全性およびトレーシングの品質データのためにも使用される。
【符号の説明】
【0049】
1 測定ヘッドの旋回軸線
2 金属管の長手方向軸線
3 金属管
4 雄ねじ山
5 ねじ山フランク
6 第1のラインレーザ
7 第2のラインレーザ
8 ロボット
9 ロボットアーム
10 測定ヘッド
11 支持体
12 ローラ送りテーブル
13 位置ローラ
14 カメラ
15 光源
16 測定区間
17 光切断センサ
18 カリバ
19 測定ヘッドの脚部
図1
図2
図3a
図3b
図3c