(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリイミド、ポリイミド溶液、コーティング材料および成形材料
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20241007BHJP
C09D 179/08 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C08G73/10
C09D179/08 A
(21)【出願番号】P 2023572125
(86)(22)【出願日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2023027166
(87)【国際公開番号】W WO2024038737
(87)【国際公開日】2024-02-22
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2022129262
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591067794
【氏名又は名称】JFEケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】小倉 丈人
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-301281(JP,A)
【文献】特開平10-120785(JP,A)
【文献】特開平10-231426(JP,A)
【文献】特開2002-265918(JP,A)
【文献】特開2003-253125(JP,A)
【文献】特開2003-298242(JP,A)
【文献】特開平10-265760(JP,A)
【文献】特開平11-335652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C09D 179/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド溶液用のポリイミドであって、
3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる酸成分と、
20.0~80.0mol%の下記式(A)で表される化合物Aおよび20.0~80.0mol%の2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンからなるジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
【化1】
前記式(A)中のR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。
【請求項2】
ポリイミド溶液用のポリイミドであって、
3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、
下記式(A)で表される化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%および2,4-ジアミノトルエンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
【化2】
前記式(A)中のR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。
【請求項3】
ポリイミド溶液用のポリイミドであって、
3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、
下記式(A)で表される化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%および2,4-ジアミノトルエンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
【化3】
前記式(A)中のR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。
【請求項4】
ポリイミド溶液用のポリイミドであって、
3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、
下記式(A)で表される化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%ならびに4,4′-オキシジアニリンおよび/または3,4′-オキシジアニリンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
【化4】
前記式(A)中のR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。
【請求項5】
ポリイミド溶液用のポリイミドであって、
3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、
下記式(A)で表される化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%ならびに4,4′-オキシジアニリンおよび/または3,4′-オキシジアニリンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
【化5】
前記式(A)中のR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリイミドを極性有機溶媒中に5~50質量%含有するポリイミド溶液。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリイミドを含有するコーティング材料。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリイミドを含有する成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド、ポリイミド溶液、コーティング材料および成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(ポリイミド樹脂)は、優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質などの特性を併せ持つ。
そのため、フレキシブルプリント配線回路用基板、絶縁被覆塗料、耐熱性成形材料などに用いる材料として、ポリイミドが知られている。
【0003】
工業的に用いられる構造のポリイミドの多くは、有機溶媒に不溶であり、しかも、ガラス転移温度以上でも溶融しない。このため、通常、ポリイミドそのものを成形加工することは容易ではない。
一般に、ポリイミドは、例えば、特許文献1に記載されるように、合成される。
すなわち、まず、N-メチル-2-ピロリドンなどの非プロトン性極性有機溶媒中で、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物と、1,4-フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンとを反応させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を得る。
その後、このポリアミド酸を、250℃~400℃で加熱し、脱水および環化(イミド化)を進めることによって、ポリイミドを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工業的に用いられる構造のポリイミドの多くは、ポリアミド酸の状態では有機溶媒に溶解するものの、ポリイミドの状態になると、合成直後や1日程度放置したらゲル化したり析出したりして、溶解せず不溶になる。
このため、ポリイミドを含有する材料(ポリイミド材料)を得るためには、ポリアミド酸の溶液を塗工し、溶媒を揮発除去してから、その後に加熱し、イミド化させることが一般的である。
しかし、ポリアミド酸をイミド化する過程で縮合水が発生するので、ポリイミド材料にボイドが発生する場合がある。更に、ポリイミド材料が収縮して、厚さ等が変化する場合もある。
【0006】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、溶媒に対する溶解性に優れる(ゲル化や析出が生じない)ポリイミドを提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記ポリイミドを含有するポリイミド溶液、コーティング材料および成形材料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、後述する化合物Aを20.0~80.0mol%および2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを20.0~80.0mol%含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
[2]3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、後述する化合物Aを20.0~80.0mol%および2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを20.0~80.0mol%含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
[3]3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、後述する化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%および2,4-ジアミノトルエンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
[4]3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、後述する化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%および2,4-ジアミノトルエンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
[5]3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、後述する化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%ならびに4,4′-オキシジアニリンおよび/または3,4′-オキシジアニリンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
[6]3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、後述する化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%ならびに4,4′-オキシジアニリンおよび/または3,4′-オキシジアニリンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなるポリイミド。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミドを極性有機溶媒中に5~50質量%含有するポリイミド溶液。
[8]上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミドを含有するコーティング材料。
[9]上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミドを含有する成形材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶媒に対する溶解性に優れるポリイミドを提供できる。
このようなポリイミドを含有する溶液(ポリイミド溶液)を用いれば、すでにイミド化が進行しているため、得られるポリイミド材料において、ボイド等の発生を抑制できる。
すなわち、ポリイミド溶液を塗工し、溶媒を揮発除去するだけで、任意形状のポリイミド材料が得られる。また、機械強度や熱特性も遜色ないものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリイミド]
本発明のポリイミド(ポリイミド樹脂)について、第1~第6実施形態を、以下に詳細に説明する。以下に説明する第1~第6実施形態のポリイミドは、溶媒(例えば、後述する極性有機溶媒)に対して優れた溶解性を示す。
【0011】
〈第1実施形態〉
第1実施形態のポリイミドは、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、後述する化合物Aを20.0~80.0mol%および2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを20.0~80.0mol%含有するジアミン成分と、を重合してなる。
【0012】
《酸成分》
酸成分は、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含有する。
酸成分中、BPDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、90.0mol%以上が好ましく、95.0mol%以上がより好ましく、100.0mol%が更に好ましい。
【0013】
《ジアミン成分》
ジアミン成分は、下記式(A)で表される化合物Aを含有する。
【0014】
【0015】
上記式(A)中のR1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である。
【0016】
化合物Aとしては、例えば、後述する式(3)で表される4,4′-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)(MED)、後述する式(4)で表される4,4′-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)(MMD)、および、後述する式(5)で表される4,4′-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)(EED)が好適に挙げられる。
【0017】
ジアミン成分中、化合物Aの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、20.0~80.0mol%であり、23.0~77.0mol%が好ましく、25.0~75.0mol%がより好ましい。
【0018】
ジアミン成分は、更に、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を含有する。
ジアミン成分中、BAPPの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、20.0~80.0mol%であり、23.0~77.0mol%が好ましく、25.0~75.0mol%がより好ましい。
【0019】
〈第2実施形態〉
第2実施形態のポリイミドは、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、化合物Aを20.0~80.0mol%および2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを20.0~80.0mol%含有するジアミン成分と、を重合してなる。
【0020】
《酸成分》
酸成分は、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含有する。
酸成分中、BPDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、70.0mol%超100.0mol%未満であり、73.0~97.0mol%が好ましく、75.0~90.0mol%がより好ましい。
【0021】
酸成分は、更に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含有する。
酸成分中、PMDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、0.0mol%超30.0mol%未満であり、3.0~27.0mol%が好ましく、10.0~27.0mol%がより好ましい。
【0022】
《ジアミン成分》
ジアミン成分は、化合物Aを含有する。
ジアミン成分中、化合物Aの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、20.0~80.0mol%であり、23.0~77.0mol%が好ましく、25.0~75.0mol%がより好ましい。
【0023】
ジアミン成分は、更に、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を含有する。
ジアミン成分中、BAPPの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、20.0~80.0mol%であり、23.0~77.0mol%が好ましく、25.0~75.0mol%がより好ましい。
【0024】
〈第3実施形態〉
第3実施形態のポリイミドは、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%および2,4-ジアミノトルエンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなる。
【0025】
《酸成分》
酸成分は、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含有する。
酸成分中、BPDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、90.0mol%以上が好ましく、95.0mol%以上がより好ましく、100.0mol%が更に好ましい。
【0026】
《ジアミン成分》
ジアミン成分は、化合物Aを含有する。
ジアミン成分中、化合物Aの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、20.0~70.0mol%が好ましく、20.0~60.0mol%がより好ましい。
【0027】
ジアミン成分は、更に、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を含有する。
ジアミン成分中、BAPPの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、20.0~70.0mol%が好ましく、25.0~60.0mol%がより好ましい。
【0028】
ジアミン成分は、更に、2,4-ジアミノトルエン(DAT)を含有する。
ジアミン成分中、DATの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、0.0mol%超30.0mol%未満であり、5.0~28.0mol%が好ましく、10.0~27.0mol%がより好ましい。
【0029】
〈第4実施形態〉
第4実施形態のポリイミドは、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%および2,4-ジアミノトルエンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなる。
【0030】
《酸成分》
酸成分は、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含有する。
酸成分中、BPDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、70.0mol%超100.0mol%未満であり、73.0~97.0mol%が好ましく、75.0~90.0mol%がより好ましい。
【0031】
酸成分は、更に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含有する。
酸成分中、PMDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、0.0mol%超30.0mol%未満であり、3.0~27.0mol%が好ましく、10.0~25.0mol%がより好ましい。
【0032】
《ジアミン成分》
ジアミン成分は、化合物Aを含有する。
ジアミン成分中、化合物Aの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、20.0~60.0mol%が好ましく、22.0~45.0mol%がより好ましい。
【0033】
ジアミン成分は、更に、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を含有する。
ジアミン成分中、BAPPの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、25.0~60.0mol%が好ましく、30.0~55.0mol%がより好ましい。
【0034】
ジアミン成分は、更に、2,4-ジアミノトルエン(DAT)を含有する。
ジアミン成分中、DATの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、0.0mol%超30.0mol%未満であり、5.0~28.0mol%が好ましく、10.0~27.0mol%がより好ましい。
【0035】
〈第5実施形態〉
第5実施形態のポリイミドは、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有する酸成分と、化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%ならびに4,4′-オキシジアニリンおよび/または3,4′-オキシジアニリンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなる。
【0036】
《酸成分》
酸成分は、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含有する。
酸成分中、BPDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、90.0mol%以上が好ましく、95.0mol%以上がより好ましく、100.0mol%が更に好ましい。
【0037】
《ジアミン成分》
ジアミン成分は、化合物Aを含有する。
ジアミン成分中、化合物Aの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、20.0~60.0mol%が好ましく、23.0~52mol%がより好ましい。
【0038】
ジアミン成分は、更に、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を含有する。
ジアミン成分中、BAPPの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、20.0~60.0mol%が好ましく、23.0~52.0mol%がより好ましい。
【0039】
ジアミン成分は、更に、4,4′-オキシジアニリン(ODA)および/または3,4′-オキシジアニリン(DAPE)を含有する。
ジアミン成分中、ODAおよびDAPEの合計含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、0.0mol%超30.0mol%未満であり、5.0~28.0mol%が好ましく、10.0~27.0mol%がより好ましい。
【0040】
〈第6実施形態〉
第6実施形態のポリイミドは、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70.0mol%超100.0mol%未満およびピロメリット酸二無水物を0.0mol%超30.0mol%未満含有する酸成分と、化合物Aを15.0~80.0mol%、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを15.0~80.0mol%ならびに4,4′-オキシジアニリンおよび/または3,4′-オキシジアニリンを0.0mol%超30.0mol%未満含有するジアミン成分と、を重合してなる。
【0041】
《酸成分》
酸成分は、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を含有する。
酸成分中、BPDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、70.0mol%超100.0mol%未満であり、73.0~97.0mol%が好ましく、75.0~90.0mol%がより好ましい。
【0042】
酸成分は、更に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含有する。
酸成分中、PMDAの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、0.0mol%超30.0mol%未満であり、3.0~27.0mol%が好ましく、10.0~25.0mol%がより好ましい。
【0043】
《ジアミン成分》
ジアミン成分は、化合物Aを含有する。
ジアミン成分中、化合物Aの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、20.0~60.0mol%が好ましく、22.0~55.0mol%がより好ましい。
【0044】
ジアミン成分は、更に、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を含有する。
ジアミン成分中、BAPPの含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、15.0~80.0mol%であり、20.0~60.0mol%が好ましく、23.0~55.0mol%がより好ましい。
【0045】
ジアミン成分は、更に、4,4′-オキシジアニリン(ODA)および/または3,4′-オキシジアニリン(DAPE)を含有する。
ジアミン成分中、ODAおよびDAPEの合計含有量は、強度と溶解性とを両立させるという理由から、0.0mol%超30.0mol%未満であり、5.0~28.0mol%が好ましく、10.0~27.0mol%がより好ましい。
【0046】
[ポリイミドの製造方法およびポリイミド溶液]
次に、上述した第1~第6実施形態のポリイミドを製造する方法(以下、便宜的に、「本製造方法」ともいう)を説明する。
以下の説明は、ポリイミドが溶媒に溶解した溶液(ポリイミド溶液)の説明も兼ねる。ポリイミド溶液は、ポリイミドを含有するコーティング材料でもある。
ポリイミド溶液(コーティング材料)は、電着塗料、絶縁性塗料、耐熱性塗料などとして使用できる。
【0047】
本製造方法は、概略的には、上述したジアミン成分と酸成分とを溶媒中で重合(脱水縮合)させて、上述したポリイミド(第1~第6実施形態)を得る方法である。
【0048】
ジアミン成分は、上述したとおりである。
ジアミン成分としては、更に、1,4-フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミンなどの脂肪族ジアミン;一般的に公知の多価アミン;等を用いてもよい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
酸成分は、上述したとおりである。
酸成分としては、更に、4,4′-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)などの芳香族テトラカルボン酸二無水物;シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;等を用いてもよい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
適量のモル比で配合したジアミン成分と酸成分とを、溶媒中で反応させて、ポリアミド酸を得る。すなわち、ポリアミド酸を含有する溶液(ポリアミド酸溶液)を得る。
このとき、反応温度は、30~70℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。反応時間は、1~36時間が好ましく、6~30時間がより好ましい。反応は、例えば、大気圧下で実施する。
【0051】
次いで、ポリアミド酸溶液を加熱することにより、ポリアミド酸をイミド化(脱水および環化)する。これにより、ポリイミドを含有する溶液(ポリイミド溶液)が得られる。
【0052】
ポリアミド酸(ポリアミド酸溶液)を加熱する際の温度(加熱温度)は、共沸溶媒を留去できる温度が選定されていれば特に限定されないが、140~220℃が好ましく、160~200℃がより好ましい。
この加熱温度での保持時間(加熱時間)は、0.5~10時間が好ましく、2~7時間がより好ましい。また、温度管理は、必要に応じて不活性ガス吹き込み環境下や減圧環境下で行なってもよい。
【0053】
本製造方法においては、ディーンスターク型トラップやコンデンサなど各種の冷却装置を備える容器を用いることが好ましい。そのうえで、イミド化の進行に応じて生じる水分を除去しながら、所望のポリイミド溶液を得ればよい。
【0054】
酸成分とジアミン成分とのモル比(酸成分/ジアミン成分)は、例えば、塗工して使用されるポリイミド溶液の粘度などに応じて任意に設定してよく、0.90~1.10が好ましく、0.95~1.05がより好ましい。
【0055】
ポリイミドの分子構造は、特に限定されない。例えば、重合条件により、ランダム共重合、交互共重合体、ブロック共重合体などを例示できる。
【0056】
得られるポリイミドの重量平均分子量は、1,500以上が好ましい。分子量がこの範囲であれば、ポリイミド溶液が充分な粘性を示し、所望する膜厚を得やすい。
一方、この分子量は、20万以下が好ましい。分子量がこの範囲であれば、攪拌設備に不具合を与えることが抑制される。また、溶媒を効率的に除去しやすい。
【0057】
本製造方法に使用する溶媒としては、得られるポリイミドが充分な溶解性を示すという理由から、極性有機溶媒を用いることが好ましい。
溶媒中でポリイミドを得る際には、イミド化によって生成する水分を除去する。そのため、水との共沸作用が知られている公知の助溶剤(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)を共存させ、加熱等により除去することが好ましい。
また、ポリイミド溶液は、塗工相応の流動性を有し、かつ、析出物の無い均一透明な溶液であることが好ましい。
これらの観点から、極性有機溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶媒が好ましい。
【0058】
ポリイミド溶液の固形分濃度は、特に限定されず、所望する粘度などに応じて適宜設定され、例えば、5~50質量%である。
【0059】
ポリイミド溶液の粘度は、ポリイミド溶液を撹拌混合したり、ポンプを用いて送液したりすることができ、かつ、塗工に不都合の生じない範囲で適宜で設定すればよい。具体的には、25℃での粘度は、0.3~200Pa・sが好ましい。
【0060】
本製造方法においては、イミド化を促進するため、溶媒中に、脱水剤およびイミド化触媒を配合してもよい。
脱水剤としては、一般公知のものを任意で使用してよく、例えば、無水酢酸、無水シュウ酸などの酸無水物;γ-バレロラクトン;等が挙げられる。
イミド化触媒としては、一般公知のものを任意で使用してよく、例えば、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどの第三級アミン類が挙げられる。
脱水剤やイミド化触媒は、複数種を混合して使用してもよい。
【0061】
更に、得られるポリイミドの機械特性および電気特性などを損なわない範囲で、ポリイミドの主鎖を修飾して各種特性を付与することを目的として、架橋剤、カップリング剤などを配合してもよい。
架橋剤としては、一般公知のものを任意で使用してよく、例えば、オキサゾリン類、メラミン類、イソシアネート類、アジリジン類、ベンゾオキサジン類、ビスマレイミド類などが挙げられ、複数種を混合して使用してもよい。
【0062】
工業的に使用する観点から、ポリイミド溶液は、重合(脱水縮合)後の状態が2週間以上継続することが好ましく、粘度の変化も伴わないことがより好ましい。
このため、得られるポリイミドの機械特性および電気特性などを損なわない範囲で、粘度安定剤を配合してもよい。
【0063】
[ポリイミド膜(成形材料)]
次に、ポリイミド溶液を用いて得られる硬化膜(ポリイミド膜)を説明する。
ポリイミド膜は、ポリイミドを含有する成形材料でもあり、厚さに応じて、フィルム、シート、パネルなどとして取り扱うことができる。継ぎ目のない筒状のチューブやベルトや金型を使用した成形部品に応用してもよい。
【0064】
ポリイミド膜を、例えば耐熱性成形材料として、フレキシブルプリント配線回路(FPC)、チップオンフィルム(COF)、テープオートメーテッドボンディング(TAB)用電子回路基板などの分野において使用できる。
【0065】
ポリイミド溶液からポリイミド膜を得るための条件は、ポリイミドの組成、溶媒の種類、塗工対象である基材などに応じて変動し得るが、その方法としては、公知の方法を採用でき、特に限定されない。
【0066】
例えば、ポリイミド溶液を、基材上に塗工した後、乾燥することにより、硬化膜であるポリイミド膜が得られる。
【0067】
基材は、ポリイミド溶液の溶媒に浸食されないことが好ましい。
具体的には、基材の材料としては、例えば、ガラス;木材;石材;トリアセテートセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、トリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリルなどの樹脂;ゴム;SUS、銅などの金属;等が挙げられる。
基材が透明性に優れる場合、基材および硬化膜の複合体を透明材料として使用できる。
基材が有色であれば、基材の意匠性を損なうことなく使用ができる。
【0068】
塗工方法としては、一般公知のものを任意で使用してよく、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、スプレー法、浸漬法、スクリーン印刷法、スプレー法などを適宜で採用すればよい。
【0069】
乾燥方法としては、一般公知のものを任意で使用してよく、例えば、熱風乾燥、遠赤外線加熱炉、セラミックヒーター、マッフル炉などを用いた方法が挙げられ、複数の方法を組み合わせてもよい。
乾燥温度は、例えば、溶媒の沸点に合わせて設定する。ポリイミドや基材のガラス転移点を考慮して設定すればよい。
上述した本製造方法により得られるポリイミド溶液は、本製造方法において実施する溶媒の加熱によって既にイミド閉環が進行している。このため、硬化膜を形成するためには、ポリイミド溶液を塗工した後に、溶媒を揮発除去するだけでよい。時間や圧力を適宜で設定すれば、溶媒の沸点以下の条件でも硬化膜が得られる。
【0070】
得られる硬化膜であるポリイミド膜は、一般的なポリイミドに必要とされる脱水縮合の工程が不要であるため、ポリイミドに特有の硬化収縮が起こらない。
このため、中間フィルムの端部を固定し延伸するなど従来のポリイミドに必要とされる工程を省略できる。
【0071】
ポリイミド溶液からポリイミド膜を得るに際して、硬化膜の諸特性を改善する目的で、ポリイミド溶液にフィラーを添加してもよい。
フィラーとしては、一般公知のものを任意で使用してよく、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母、カーボンブラックなどが挙げられ、複数種を混合して使用してもよい。また、これらには、導電成分、着色成分、接着付与成分などが共存していてもよい。
そのほか、必要に応じて、離型剤、消泡剤、レベリング剤、イオントラッパー、重合禁止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を添加してもよい。
【0072】
ポリイミド膜は、従来公知のポリイミドの用途に使用できる。
例えば、ディスプレイ、タッチパネル、プロジェクタ、プリンタ、イヤホン、スピーカー、アンテナなどの電子機器に使用される。これら電子機器への搭載を前提として、基材を選定してもよい。
得られるポリイミドは、良好な機械特性のほか、耐熱性や硬度などの物理特性にも優れることから、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属ナノワイヤなどの結着剤(バインダー)にも適用して使用できる。
加熱の負荷を軽減できるため、基材を金属箔とする二次電池の電極類に適用できる。
硬化収縮を伴わず、寸法が安定するため、内部に空隙を持つ多孔質材料に適用できる。ポリイミド膜を筒状して、チューブ類やベルト類としても使用できる。
膜厚精度を確保して平滑に塗工し乾燥することで得られるポリイミド膜は、剥離したうえで、フィルム、シート、パネルなどとして取り扱うこともできる。
【0073】
ポリイミド膜は、極性の低い溶媒や水分に対しては充分な耐久性が期待できるため、耐水性や耐薬品性などが要求される用途にも使用できる。
更に、この性質を応用して、アルコール等の貧溶媒と混合しながらポリイミドを沈殿させ、必要に応じて洗浄や乾燥を行なうことによって、ポリイミドの固形物(粉末)を得ることもできる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0075】
〈実施例1〉
《ポリイミド溶液の調製》
窒素雰囲気下、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)78.77gに、化合物Aとしての4,4′-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)(MED)を7.62g(27.00mmol)、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を3.70g(9.01mmol)、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を10.60g(36.01mmol)添加し、50℃、大気圧中で24時間撹拌、反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液にγ-バレロラクトン(GVL)、ピリジン、トルエンを添加し、170℃で5時間、縮合水を系外へ除去しながら加熱撹拌し、ポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液は赤褐色透明であった。
【0076】
《溶解性》
得られたポリイミド溶液を、常温、大気圧中で2週間放置した。放置後に良好な溶解性、流動性を示した場合は「Good」を、合成直後または合成後1日以内にゲル化、析出などの異常を生じた場合は「Bad」を下記表1に記載した。「Good」であれば、得られたポリイミド溶液中のポリイミドは、溶媒に対する溶解性に優れると評価できる。
【0077】
《ポリイミド膜の作製》
得られたポリイミド溶液(合成後1日以内のもの)15gを、バーコーターを用いてガラス板に塗布し、100℃で30分間、150℃で30分間、200℃で90分間、220℃で30分間加熱し、約50μm厚のポリイミド膜を得た。
【0078】
《機械強度》
得られたポリイミド膜について、JIS K 7127:1999(ISO 527-3:1995)に準拠して、以下の条件で引張試験を実施して、引張弾性率(単位:MPa)および引張強さ(単位:MPa)を求めた。結果を下記表1に示す。
測定装置:島津製作所製AGS-J
引張速度:102mm/min
チャック間距離:30mm
【0079】
《熱特性》
得られたポリイミド膜について、以下の条件で試験を実施して、ガラス転移温度(単位:℃)、線熱膨張係数(単位:ppm/K)および熱分解温度(単位:℃)を求めた。結果を下記表1に示す。
【0080】
(ガラス転移温度)
機器:TAインストルメント製DMA Q800
昇温速度:3℃/min
温度範囲:50~450℃
周波数:1Hz
【0081】
(線熱膨張係数)
機器:島津製作所TMA-60
温度範囲:50℃-200℃
昇温速度:10℃/min
【0082】
(熱分解温度)
機器:島津製作所DTG-60
速度:10℃/min
熱分解温度:測定チャートから5質量%の減少が生じた温度
【0083】
〈実施例2~25および比較例1~7〉
下記表1に示すジアミン成分および酸成分を、下記表1に示す配合量で用いて、実施例1と同様の手順で、ポリイミド溶液を作製し、評価した。結果を下記表1に示す。
【0084】
実施例12および実施例19については、製造後2月室温で保管したサンプルを用いて、《ポリイミド膜の作成》と同じ条件でポリイミド膜を作成し、機械強度および熱特性を測定した。結果を下記表2に示す。2月保管しても、合成直後の結果とほぼ同じ結果を得た。
【0085】
なお、溶解性が「Bad」であったサンプル(具体的には、比較例1~7)については、ポリアミド酸溶液を再度製造した。いずれのサンプルもゲル化も析出もないことを確認した。得られたポリアミド酸溶液を用いて、《ポリイミド膜の作成》と同じ条件でポリイミド膜を作成し、参考として機械強度および熱特性を測定した。
【0086】
下記表1に示す各成分は、以下のとおりである。
BPDA:下記式(1)で表される3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:下記式(2)で表されるピロメリット酸二無水物
MED:下記式(3)で表される4,4′-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)
MMD:下記式(4)で表される4,4′-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)
EED:下記式(5)で表される4,4′-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)
MDA:下記式(6)で表される4,4′-メチレンジアニリン
BAPP:下記式(7)で表される2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
DAT:下記式(8)で表される2,4-ジアミノトルエン
ODA:下記式(9)で表される4,4′-オキシジアニリン
DAPE:下記式(10)で表される3,4′-オキシジアニリン
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
〈評価結果まとめ〉
上記表1に示すように、実施例1~25のポリイミドは、溶媒に対する溶解性が良好であった。
これに対して、比較例1~7のポリイミドは、溶媒に対する溶解性が不十分であった。