(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】通信方法、ユーザ装置、チップセット、プログラム、及び移動通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 76/40 20180101AFI20241007BHJP
H04W 4/06 20090101ALI20241007BHJP
H04W 76/30 20180101ALI20241007BHJP
【FI】
H04W76/40
H04W4/06
H04W76/30
(21)【出願番号】P 2023575204
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2023000287
(87)【国際公開番号】W WO2023140144
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2022005614
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121567(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/090618(WO,A1)
【文献】OPPO,Discussion on support for IDLE and INACTIVE state UEs[online],3GPP TSG RAN WG1 #105-e R1-2104761,Internet:<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_105-e/Docs/R1-2104761.zip> ,2021年05月12日,[検索日 2024.08.29]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムにおいてユーザ装置が実行する通信方法であって、
前記ユーザ装置をRRCコネクティッド状態からRRCインアクティブ状態に遷移させるためのメッセージであって、閾値と、前記閾値とマルチキャストセッションとを対応付ける情報と、を含むRRC Releaseメッセージを受信することと、
前記RRCインアクティブ状態においてネットワークからの
前記マルチキャストセッションを受信することと、
前記マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、前記ネットワークからの受信品質を測定することと、
前記測定された受信品質が
、前記閾値
を下回ったことに応じて、
前記RRCインアクティブ状態から前記RRCコネクティッド状態に遷移する
ための処理を行うことと、を有する
通信方法。
【請求項2】
前記測定することは、一定時間にわたって測定することを含む
請求項1に記載の通信方法。
【請求項3】
前記測定された受信品質が前記閾値
を上回ったことに応じて、
前記RRCインアクティブ状態を維持しつつマルチキャスト受信を行うことをさらに有する
請求項1又は2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記遷移する
ための処理を行うことは、前記測定された受信品質が前記閾値
を下回ったが第1所定時間にわたって持続したことに応じて、前記遷移する
ための処理を行うことを含む
請求項1に記載の通信方法。
【請求項5】
前記ネットワークに含まれる
ネットワークノードから、前記第1所定時間を設定するための設定情報を受信することをさらに有する
請求項4に記載の通信方法。
【請求項6】
前記RRCインアクティブ状態に遷移してからの経過時間を計時することと、
前記経過時間が第2所定時間を超えるまでは、前記マルチキャスト受信のために前記遷移する
ための処理を行うことを避けることと、をさらに有し、
前記遷移する
ための処理を行うことは、前記経過時間が前記第2所定時間を超え、且つ、前記測定された受信品質が前記閾値
を下回ったことに応じて、前記遷移する
ための処理を行うことを含む
請求項1に記載の通信方法。
【請求項7】
前記ネットワークに含まれる
ネットワークノードから、前記第2所定時間を設定するための設定情報を受信することをさらに有する
請求項6に記載の通信方法。
【請求項8】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いるユーザ装置であって、
前記ユーザ装置をRRCコネクティッド状態からRRCインアクティブ状態に遷移させるためのメッセージであって、閾値と、前記閾値とマルチキャストセッションとを対応付ける情報と、を含むRRC Releaseメッセージを受信し、
前記RRCインアクティブ状態においてネットワークからの
前記マルチキャストセッションを受信する受信部と、
前記マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、前記ネットワークからの受信品質を測定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測定された受信品質が
前記閾値
を下回ったことに応じて、前記RRCインアクティブ状態から前記RRCコネクティッド状態に遷移する
ための処理を行う
ユーザ装置。
【請求項9】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いるユーザ装置のためのチップセットであって、
前記ユーザ装置をRRCコネクティッド状態からRRCインアクティブ状態に遷移させるためのメッセージであって、閾値と、前記閾値とマルチキャストセッションとを対応付ける情報と、を含むRRC Releaseメッセージを受信する処理と、
前記RRCインアクティブ状態においてネットワークからの前記マルチキャストセッションを受信する処理と、
前記マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、前記ネットワークからの受信品質を測定する処理と、
前記測定された受信品質が前記閾値を下回ったことに応じて、前記RRCインアクティブ状態から前記RRCコネクティッド状態に遷移するための処理を行う処理と、を実行する
チップセット。
【請求項10】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いるユーザ装置に、
前記ユーザ装置をRRCコネクティッド状態からRRCインアクティブ状態に遷移させるためのメッセージであって、閾値と、前記閾値とマルチキャストセッションとを対応付ける情報と、を含むRRC Releaseメッセージを受信する処理と、
前記RRCインアクティブ状態においてネットワークからの前記マルチキャストセッションを受信する処理と、
前記マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、前記ネットワークからの受信品質を測定する処理と、
前記測定された受信品質が前記閾値を下回ったことに応じて、前記RRCインアクティブ状態から前記RRCコネクティッド状態に遷移するための処理を行う処理と、を実行させる
プログラム。
【請求項11】
マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムであって、
ユーザ装置を備え、
前記ユーザ装置は、
前記ユーザ装置をRRCコネクティッド状態からRRCインアクティブ状態に遷移させるためのメッセージであって、閾値と、前記閾値とマルチキャストセッションとを対応付ける情報と、を含むRRC Releaseメッセージを受信し、
前記RRCインアクティブ状態においてネットワークからの前記マルチキャストセッションを受信し、
前記マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、前記ネットワークからの受信品質を測定し、
前記測定された受信品質が前記閾値を下回ったことに応じて、前記RRCインアクティブ状態から前記RRCコネクティッド状態に遷移するための処理を行う
移動通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信システムで用いる通信方法及びユーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格において、第5世代(5G)の無線アクセス技術であるNR(New Radio)の技術仕様が規定されている。NRは、第4世代(4G)の無線アクセス技術であるLTE(Long Term Evolution)に比べて、高速・大容量かつ高信頼・低遅延といった特徴を有する。3GPPにおいて、5G/NRのマルチキャストブロードキャストサービス(MBS)の技術仕様を策定する議論が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP寄書:RP-201038、“WID revision: NR Multicast and Broadcast Services”
【発明の概要】
【0004】
第1の態様に係る通信方法は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムにおいてユーザ装置が実行する方法である。前記通信方法は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態においてネットワークからのマルチキャストセッションを受信するステップと、前記マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、前記ネットワークからの受信品質を測定するステップと、前記測定された受信品質が閾値よりも悪いことに応じて、マルチキャスト受信のためにRRCコネクティッド状態に遷移する処理を行うステップと、を有する。
【0005】
第2の態様に係るユーザ装置は、マルチキャストブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いる装置である。前記ユーザ装置は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態においてネットワークからのマルチキャストセッションを受信する受信部と、前記マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、前記ネットワークからの受信品質を測定する制御部と、を備える。前記制御部は、前記測定された受信品質が閾値よりも悪いことに応じて、マルチキャスト受信のためにRRCコネクティッド状態に遷移する処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係るUE(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係るgNB(基地局)の構成を示す図である。
【
図4】データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図5】シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図6】実施形態に係るMBSトラフィック配信の概要を示す図である。
【
図8】実施形態に係るUEのMBS受信に関する内部処理の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係るUEのMBS受信に関する内部処理の他の例を示す図である。
【
図10】実施形態に係る移動通信システムの動作例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る移動通信システムの動作の第1変更例を示す図である。
【
図12】実施形態に係る移動通信システムの動作の第2変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
5G/NRのマルチキャストブロードキャストサービスは、4G/LTEのマルチキャストブロードキャストサービスよりも改善されたサービスを提供することが望まれる。
【0008】
そこで、本開示は、改善されたマルチキャストブロードキャストサービスを実現可能とすることを目的とする。
【0009】
図面を参照しながら、実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0010】
(移動通信システムの構成)
図1は、実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。移動通信システム1は、3GPP規格の第5世代システム(5GS:5th Generation System)に準拠する。以下において、5GSを例に挙げて説明するが、移動通信システムにはLTE(Long Term Evolution)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。また、移動通信システムには第6世代(6G)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0011】
移動通信システム1は、ユーザ装置(UE:User Equipment)100と、5Gの無線アクセスネットワーク(NG-RAN:Next Generation Radio Access Network)10と、5Gのコアネットワーク(5GC:5G Core Network)20とを有する。以下において、NG-RAN10を単にRAN10と呼ぶことがある。また、5GC20を単にコアネットワーク(CN)20と呼ぶことがある。
【0012】
UE100は、移動可能な無線通信装置である。UE100は、ユーザにより利用される装置であればどのような装置であっても構わない。例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)やタブレット端末、ノートPC、通信モジュール(通信カード又はチップセットを含む)、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0013】
NG-RAN10は、基地局(5Gシステムにおいて「gNB」と呼ばれる)200を含む。gNB200は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して相互に接続される。gNB200は、1又は複数のセルを管理する。gNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。gNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数(以下、単に「周波数」と呼ぶ)に属する。
【0014】
なお、gNBがLTEのコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)に接続することもできる。LTEの基地局が5GCに接続することもできる。LTEの基地局とgNBとが基地局間インターフェイスを介して接続されることもできる。
【0015】
5GC20は、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)300を含む。AMFは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。AMFは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100のモビリティを管理する。UPFは、データの転送制御を行う。AMF及びUPFは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0016】
図2は、実施形態に係るUE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。受信部110及び送信部120は、gNB200との無線通信を行う無線通信部を構成する。
【0017】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0018】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0019】
制御部130は、UE100における各種の制御及び処理を行う。このような処理は、後述の各レイヤの処理を含む。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)とを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0020】
図3は、実施形態に係るgNB200(基地局)の構成を示す図である。gNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。送信部210及び受信部220は、UE100との無線通信を行う無線通信部を構成する。バックホール通信部240は、CN20との通信を行うネットワーク通信部を構成する。
【0021】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0022】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0023】
制御部230は、gNB200における各種の制御及び処理を行う。このような処理は、後述の各レイヤの処理を含む。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUとを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0024】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して隣接基地局と接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してAMF/UPF300と接続される。なお、gNB200は、CU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)とで構成され(すなわち、機能分割され)、両ユニット間がフロントホールインターフェイスであるF1インターフェイスで接続されてもよい。
【0025】
図4は、データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0026】
ユーザプレーンの無線インターフェイスプロトコルは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤとを有する。
【0027】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとgNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。なお、UE100のPHYレイヤは、gNB200から物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)上で送信される下りリンク制御情報(DCI)を受信する。具体的には、UE100は、無線ネットワーク一時識別子(RNTI)を用いてPDCCHのブラインド復号を行い、復号に成功したDCIを自UE宛てのDCIとして取得する。gNB200から送信されるDCIには、RNTIによってスクランブルされたCRCパリティビットが付加されている。
【0028】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ:Hybrid Automatic Repeat reQuest)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとgNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。gNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0029】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとgNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0030】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化等を行う。
【0031】
SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS(Quality of Service)制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。なお、RANがEPCに接続される場合は、SDAPが無くてもよい。
【0032】
図5は、シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0033】
制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックは、
図4に示したSDAPレイヤに代えて、RRC(Radio Resource Control)レイヤ及びNAS(Non-Access Stratum)レイヤを有する。
【0034】
UE100のRRCレイヤとgNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間にコネクション(RRCコネクション)がある場合、UE100はRRCコネクティッド状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間にコネクション(RRCコネクション)がない場合、UE100はRRCアイドル状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間のコネクションがサスペンドされている場合、UE100はRRCインアクティブ状態にある。
【0035】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとAMF300AのNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。なお、UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等を有する。また、NASレイヤよりも下位のレイヤをASレイヤと呼ぶ。
【0036】
(MBSの概要)
実施形態に係るMBSの概要について説明する。MBSは、NG-RAN10からUE100に対してブロードキャスト又はマルチキャスト、すなわち、1対多(PTM:Point To Multipoint)でのデータ送信を可能とするサービスである。MBSのユースケース(サービス種別)としては、公安通信、ミッションクリティカル通信、V2X(Vehicle to Everything)通信、IPv4又はIPv6マルチキャスト配信、IPTV(Internet protocol television)、グループ通信、及びソフトウェア配信等が想定される。
【0037】
ブロードキャストサービスは、高信頼性のQoSを必要としないアプリケーションのために、特定のサービスエリア内のすべてのUE100に対してサービスを提供する。ブロードキャストサービスに用いるMBSセッションをブロードキャストセッションと呼ぶ。
【0038】
マルチキャストサービスは、すべてのUE100に対してではなく、マルチキャストサービス(マルチキャストセッション)に参加しているUE100のグループに対してサービスを提供する。マルチキャストサービスに用いるMBSセッションをマルチキャストセッションと呼ぶ。マルチキャストサービスによれば、ブロードキャストサービスに比べて、無線効率の高い方法でUE100のグループに対して同じコンテンツを提供できる。
【0039】
図6は、実施形態に係るMBSトラフィック配信の概要を示す図である。
【0040】
MBSトラフィック(MBSデータ)は、単一のデータソース(アプリケーションサービスプロバイダ)から複数のUEに配信される。5Gコアネットワークである5G CN(5GC)20は、アプリケーションサービスプロバイダからMBSデータを受信し、MBSデータのコピーの作成(Replication)を行って配信する。
【0041】
5GC20の観点からは、5GC共有MBSトラフィック配信(5GC Shared MBS Traffic delivery)及び5GC個別MBSトラフィック配信(5GC Individual MBS Traffic delivery)の2つのマルチキャスト配信方法が可能である。
【0042】
5GC個別MBSトラフィック配信方法では、5GC20は、MBSデータパケットの単一コピーを受信し、UE100ごとのPDUセッションを介してそれらのMBSデータパケットの個別のコピーを個別のUE100に配信する。したがって、UE100ごとに1つのPDUセッションをマルチキャストセッションと関連付ける必要がある。
【0043】
5GC共有MBSトラフィック配信方法では、5GC20は、MBSデータパケットの単一コピーを受信し、それらのMBSパケットの単一コピーをRANノード(すなわち、gNB200)に配信する。gNB200は、MBSトンネル接続を介してMBSデータパケットを受信し、それらを1つ又は複数のUE100に配信する。
【0044】
RAN(5G RAN)10の観点からは、5GC共有MBSトラフィック配信方法における無線を介したMBSデータの送信には、PTP(Point-to-Point)及びPTM(Point-to-Multipoint)の2つの配信方法が可能である。PTPはユニキャストを意味し、PTMはマルチキャスト及びブロードキャストを意味する。
【0045】
PTP配信方法では、gNB200は、MBSデータパケットの個別のコピーを無線で個々のUE100に配信する。他方、PTM配信方法では、gNB200は、MBSデータパケットの単一コピーを無線でUE100のグループに配信する。gNB200は、1つのUE100に対するMBSデータの配信方法としてPTM及びPTPのどちらを用いるかを動的に決定できる。
【0046】
PTP配信方法及びPTM配信方法は主としてユーザプレーンに関するものである。MBSデータ配信の制御モードとしては、第1配信モード及び第2配信モードの2つの配信モードがある。
【0047】
【0048】
第1配信モード(Delivery mode 1:DM1)は、RRCコネクティッド状態のUE100が利用できる配信モードであって、高QoS要件のための配信モードである。第1配信モードは、MBSセッションのうちマルチキャストセッションに用いられる。但し、第1配信モードがブロードキャストセッションに用いられてもよい。第1配信モードは、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態のUE100も利用可能であってもよい。
【0049】
第1配信モードにおけるMBS受信の設定は、UE固有(UE-dedicated)シグナリングにより行われる。例えば、第1配信モードにおけるMBS受信の設定は、gNB200からUE100にユニキャストで送信されるRRCメッセージであるRRC Reconfigurationメッセージ(又はRRC Releaseメッセージ)により行われる。
【0050】
MBS受信の設定は、MBSデータを伝送するMBSトラフィックチャネルの設定に関するMBSトラフィックチャネル設定情報(以下、「MTCH設定情報」と呼ぶ)を含む。MTCH設定情報は、MBSセッションに関するMBSセッション情報(後述のMBSセッション識別子を含む)と、このMBSセッションに対応するMBSトラフィックチャネルのスケジューリング情報とを含む。MBSトラフィックチャネルのスケジューリング情報は、MBSトラフィックチャネルの間欠受信(DRX)設定を含んでもよい。間欠受信設定は、オン期間(On Duration:受信期間)を定義するタイマ値(On Duration Timer)、オン期間を延長するタイマ値(Inactivity Timer)、スケジューリング間隔もしくはDRXサイクル(Scheduling Period、DRX Cycle)、スケジューリングもしくはDRXサイクルの開始サブフレームのオフセット値(Start Offset、DRX Cycle Offset)、オン期間タイマの開始遅延スロット値(Slot Offset)、再送時までの最大時間を定義するタイマ値(Retransmission Timer)、HARQ再送のDL割り当てまでの最小間隔を定義するタイマ値(HARQ RTT Timer)のいずれか一つ以上のパラメータを含んでもよい。
【0051】
なお、MBSトラフィックチャネルは論理チャネルの一種であって、MTCHと呼ばれることがある。MBSトラフィックチャネルは、トランスポートチャネルの一種である下りリンク共有チャネル(DL-SCH:Down Link―Shared CHannel)にマッピングされる。
【0052】
第2配信モード(Delivery mode 2:DM2)は、RRCコネクティッド状態のUE100だけではなく、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態のUE100が利用できる配信モードであって、低QoS要件のための配信モードである。第2配信モードは、MBSセッションのうちブロードキャストセッションに用いられる。但し、第2配信モードは、マルチキャストセッションにも適用可能であってもよい。
【0053】
第2配信モードにおけるMBS受信の設定は、ブロードキャストシグナリングにより行われる。例えば、第2配信モードにおけるMBS受信の設定は、gNB200からUE100にブロードキャストで送信される論理チャネル、例えば、ブロードキャスト制御チャネル(BCCH)及び/又はマルチキャスト制御チャネル(MCCH)により行われる。UE100は、例えば、技術仕様で予め規定された専用のRNTIを用いてBCCH及びMCCHを受信できる。BCCH受信用のRNTIがSI-RNTIであって、MCCH受信用のRNTIがMCCH-RNTIであってもよい。
【0054】
第2配信モードにおいて、UE100は、次の3つの手順でMBSデータを受信してもよい。第1に、UE100は、gNB200からBCCH上で伝送されるSIB(MBS SIB)によりMCCH設定情報を受信する。第2に、UE100は、MCCH設定情報に基づいてgNB200からMCCHを受信する。MCCHは、MTCH設定情報を伝送する。第3に、UE100は、MTCH設定情報に基づいて、MTCH(MBSデータ)を受信する。以下において、MTCH設定情報及び/又はMCCH設定情報をMBS受信設定と呼ぶことがある。
【0055】
第1配信モード及び第2配信モードにおいて、UE100は、gNB200から割り当てられるグループRNTI(G-RNTI)を用いてMTCHを受信してもよい。G-RNTIは、MTCH受信用RNTIに相当する。G-RNTIは、MBS受信設定(MTCH設定情報)に含まれていてもよい。
【0056】
なお、ネットワークは、MBSセッションごとに異なるMBSサービスを提供できる。MBSセッションは、TMGI(Temporary Mobile Group Identity)、ソーススペシフィックIPマルチキャストアドレス(アプリケーション機能やアプリケーションサーバ等のソースユニキャストIPアドレスと、宛先アドレスを示すIPマルチキャストアドレスとから成る)、セッション識別子、及びG-RNTIのうち少なくとも1つにより識別される。TMGI、ソーススペシフィックIPマルチキャストアドレス、及びセッション識別子の少なくとも1つをMBSセッション識別子と呼ぶ。TMGI、ソーススペシフィックIPマルチキャストアドレス、セッション識別子、及びG-RNTIを総括してMBSセッション情報と呼ぶ。
【0057】
図8は、実施形態に係るUE100のMBS受信に関する内部処理の一例を示す図である。
図9は、実施形態に係るUE100のMBS受信に関する内部処理の他の例を示す図である。
【0058】
1つのMBS無線ベアラ(MRB)は、マルチキャストセッション又はブロードキャストセッションを伝送する1つの無線ベアラである。すなわち、MRBにマルチキャストセッションが対応付けられる場合と、MRBにブロードキャストセッションが対応付けられる場合とがある。
【0059】
MRB及び対応する論理チャネル(例えば、MTCH)は、RRCシグナリングによってgNB200からUE100に設定される。MRBの設定手順は、データ無線ベアラ(DRB)の設定手順と分離されていてもよい。RRCシグナリングでは、1つのMRBを、「PTMのみ(PTM only)」、「PTPのみ(PTP only)」、又は「PTM及びPTPの両方(both PTM and PTP)」で設定できる。このようなMRBの種別はRRCシグナリングにより変更できる。
【0060】
図8において、MRB#1にはマルチキャストセッション及び専用トラフィックチャネル(DTCH)が対応付けられ、MRB#2にはマルチキャストセッション及びMTCH#1が対応付けられ、MRB#3にはブロードキャストセッション及びMTCH#2が対応付けられる一例を示している。すなわち、MRB#1はPTPのみ(PTP only)のMRBであり、MRB#2はPTMのみ(PTM only)のMRBであり、MRB#3はPTMのみ(PTM only)のMRBである。なお、DTCHは、セルRNTI(C-RNTI)を用いてスケジューリングされる。MTCHは、G-RNTIを用いてスケジューリングされる。
【0061】
UE100のPHYレイヤは、物理チャネルの1つであるPDSCH上で受信したユーザデータ(受信データ)を処理し、トランスポートチャネルの1つである下りリンク共有チャネル(DL-SCH)に流す。UE100のMACレイヤ(MACエンティティ)は、DL-SCH上で受信したデータを処理し、受信データに含まれるヘッダ(MACヘッダ)に含まれる論理チャネル識別子(LCID)に基づいて、当該受信データを対応する論理チャネル(対応するRLCエンティティ)に流す。
【0062】
図9において、マルチキャストセッションと対応付けられるMRBに、DTCH及びMTCHが対応付けられる一例を示している。具体的には、1つのMRBが2つのレグに分割(スプリット)され、一方のレグがDTCHと対応付けられ、他方のレグがMTCHと対応付けられている。当該2つのレグは、PDCPレイヤ(PDCPエンティティ)において結合される。すなわち、当該MRBは、PTM及びPTPの両方(both PTM and PTP)のMRBである。このようなMRBは、スプリットMRBと呼ばれることがある。
【0063】
(移動通信システムの動作)
実施形態に係る移動通信システム1の動作について説明する。以下において、上述の第1配信モード(DM1)によりマルチキャスト配信が行われるケースを主として想定する。上述のように、第1配信モードは、RRCコネクティッド状態のUE100が利用できる配信モードであって、高QoS要件のための配信モードである。
【0064】
実施形態では、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態にあるUE100がマルチキャストセッションの受信(すなわち、マルチキャスト受信)を行うものとする。例えば、gNB200は、RRCコネクティッド状態にあるUE100に対してマルチキャスト配信を開始した後、gNB200の負荷が高まったことに応じて当該UE100をRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移させつつ、マルチキャスト配信を継続する。UE100は、RRCコネクティッド状態においてマルチキャスト受信を開始した後、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態においてマルチキャスト受信を継続する。
【0065】
第1配信モード(DM1)は、高いQoS要件を担保することが必要とされ得るため、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態にあるUE100についても、高いQoS要件を担保することが必要とされ得る。ここで、UE100をRRCコネクティッド状態に維持しておけばQoSが満たされるが、ネットワーク側ではリソースの消費が大きくなり、UE100側では消費電力が大きくなる。UE100をRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移させることで、そのような問題は解決するが、QoSが満たされない可能性がある。よって、実施形態において、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態においてマルチキャスト受信を行うUE100は、マルチキャスト受信の受信品質の劣化に応じて、RRCコネクティッド状態に遷移することを可能とする。
【0066】
実施形態に係るUE100は、第1に、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態においてネットワーク(gNB200)からのマルチキャストセッションを受信する。第2に、UE100は、マルチキャストセッションを受信しているマルチキャスト受信状態において、ネットワークからの受信品質(以下、「マルチキャスト受信品質」とも称する)を測定する。第3に、UE100は、測定された受信品質が閾値よりも悪いことに応じて、マルチキャスト受信のためにRRCコネクティッド状態に遷移する処理を行う。これにより、RRCコネクティッド状態に遷移してマルチキャスト受信を継続することにより、マルチキャスト受信に必要とされるQoSを担保しやすくなる。
【0067】
UE100は、マルチキャスト受信品質が閾値よりも良い場合は、マルチキャスト受信のためにRRCコネクティッド状態へ遷移しない。すなわち、UE100は、マルチキャスト受信品質が閾値よりも良い場合は、マルチキャスト受信のためにRRCコネクティッド状態へ遷移することが禁止される。これにより、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態を維持できるため、ネットワーク側の負荷を軽減できる。
【0068】
UE100は、ネットワーク(gNB200)から、閾値を設定するための設定情報を受信してもよい。UE100は、測定された受信品質を、設定情報に応じて設定された閾値と比較してもよい。このように、UE100がRRCコネクティッド状態に遷移する処理を開始する閾値は、ネットワーク(gNB200)からUE100に設定されてもよい。これにより、ネットワークの管理下でUE100をRRCコネクティッド状態に遷移させることができる。
【0069】
図10は、実施形態に係る移動通信システム1の動作例を示す図である。
【0070】
ステップS101において、UE100は、gNB200のセルにおいてRRCコネクティッド状態にある。UE100は、あるマルチキャストセッション(以下、「対象マルチキャストセッション」と呼ぶ)への興味を持ったものとする。「マルチキャストセッションへの興味を持つ」とは、UE100の上位レイヤが当該マルチキャストセッションの受信を要求又は希望することであってもよい。ここで、上位レイヤは、NASレイヤを含む。上位レイヤは、アプリケーションをさらに含んでもよい。UE100(NASエンティティ)は、対象マルチキャストセッションへ参加するためのマルチキャストセッション参加プロシージャをネットワークに対して行う。例えば、UE100は、対象マルチキャストセッションへの参加を要求する第1NASメッセージをAMF300Aに送信し、対象マルチキャストセッションへの参加を承認する第2NASメッセージをAMF300Aから受信することにより、対象マルチキャストセッションに参加する。例えば、第1NASメッセージは、PDU Session Modification Requestであり、当該メッセージはMBSセッション識別子及び参加要求の情報を含んでもよい。第1NASメッセージが承認されたことを、gNB200からのMRB設定によって暗示的に通知する場合、第2NASメッセージは省略されてもよい。また、「対象マルチキャストセッションへ参加する」とは、マルチキャストセッションを受信するUEグループ(マルチキャストグループ)のメンバーとしてUE100をCN装置に登録することであってもよい。CN装置は、当該登録時にUE100の認証を行ってもよい。また、当該CN装置は、UE100へのマルチキャストセッション受信許可を行ってもよい。なお、マルチキャストセッションへの参加は、当該マルチキャストセッションが有効状態(送信中)において行ってもよく、無効状態(送信開始待ち又は送信中断中)において行ってもよい。
【0071】
ステップS102において、RRCコネクティッド状態にあるUE100は、対象マルチキャストセッションの受信を開始する。このマルチキャスト受信の前に、gNB200は、対象マルチキャストセッション受信のためのマルチキャスト受信設定をUE100に対して行ってもよい。マルチキャスト受信設定は、例えばMRB設定を含むRRC Reconfigurationメッセージにより行われてもよい。
【0072】
ステップS103において、RRCコネクティッド状態にあるUE100は、対象マルチキャストセッションの受信を行う。具体的には、UE100は、対象マルチキャストセッションに属するMBSデータをgNB200から受信する。
【0073】
ステップS104において、gNB200は、UE100をRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移させることを決定し、UE100をRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移させるためのRRC解放(RRC Release)メッセージをUE100に送信する。gNB200は、自身の負荷(例えばリソース負荷)が高まったことに応じて、UE100をRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移させると決定してもよい。UE100をRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移させることにより、gNB200の負荷が軽減される。
【0074】
実施形態において、gNB200は、上述の閾値を設定する設定情報を含むRRC ReleaseメッセージをUE100に送信する。閾値は、無線品質閾値、例えば、RSRP(Reference Signal Received Power)の閾値、RSRQ(Reference Signal Received Quality)の閾値、及び/又はSINR(Signal-to-Interference-plus-Noise Ratio)の閾値であってもよい。閾値は、復調品質閾値、例えば、BER(Bit Error Rate)の閾値、BLER(Block Error Rate)の閾値、及び/又はPER(Packet Error Rate)の閾値であってもよい。当該閾値は、マルチキャストセッション毎に設定されてもよい。すなわち、当該閾値は、MRB設定(MRB ID)又はマルチキャストセッションID(TMGI)と紐づけて設定されてもよい。よって、UE100は、複数のマルチキャストセッションを受信する場合、複数のマルチキャストセッションに対応する複数の閾値を保持してもよい。また、gNB200は、閾値条件の持続時間(第1所定時間)を設定する設定情報を含むRRC ReleaseメッセージをUE100に送信してもよい。これらの設定情報をRRC Releaseメッセージに含めることにより、UE固有の設定情報を効率的にUE100に送信できる。なお、このような設定は、ステップS102におけるRRC Reconfigurationで送信されてもよい。UE100は、RRC Reconfigurationに当該設定が含まれている場合、マルチキャストセッションをRRCアイドル又はインアクティブ状態で受信できる(受信が許可されている)と判定してもよい。
【0075】
ステップS105において、RRC Releaseメッセージを受信したUE100は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移する。UE100は、RRCコネクティッド状態において設定されたマルチキャスト受信設定を用いて、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態においてマルチキャスト受信を継続する。
【0076】
ステップS107において、UE100は、gNB200から設定された閾値に対応するマルチキャスト受信品質を測定する。例えば、UE100は、無線品質、例えば、RSRP、RSRQ、及び/又はSINRを測定してもよい。UE100は、復調品質、例えば、BER、BLER、及び/又はPERを測定してもよい。
【0077】
ステップS108において、UE100は、ステップS107で測定したマルチキャスト受信品質を、gNB200から設定された閾値と比較する。測定したマルチキャスト受信品質が閾値よりも良い場合(ステップS108:NO)、UE100は、処理をステップS107に戻す。この場合、UE100は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態を維持しつつマルチキャスト受信を行う。
【0078】
一方、測定したマルチキャスト受信品質が閾値よりも悪い場合(ステップS108:YES)、ステップS109において、UE100は、RRCコネクティッド状態に遷移する処理、すなわち、gNB200に対するランダムアクセスプロシージャを開始する。
【0079】
なお、マルチキャスト受信品質が閾値よりも悪い場合とは、無線品質(RSRP、RSRQ、及び/又はSINR)が閾値よりも低いことであってもよい。マルチキャスト受信品質が閾値よりも悪い場合とは、復調品質に相当する誤り率(BER、BLER、及び/又はPER)が閾値よりも高いことであってもよい。
【0080】
ステップS108において、UE100は、マルチキャスト受信品質が閾値よりも悪い状態が第1所定時間にわたって持続したか否かを判定してもよい。第1所定時間は、gNB200からの設定情報によりUE100に設定されてもよい。そして、UE100は、マルチキャスト受信品質が閾値よりも悪い状態が第1所定時間にわたって持続した場合、RRCコネクティッド状態に遷移する処理、すなわち、gNB200に対するランダムアクセスプロシージャを開始してもよい(ステップS109)。これにより、瞬時的なマルチキャスト受信品質の劣化の影響を除外しやすくなる。
【0081】
ステップS109において、UE100は、ランダムアクセスプロシージャを行う。ここで、UE100のASレイヤは、RRCインアクティブ状態の場合、RRC Resumeを開始してもよい。一方、RRCアイドル状態の場合、UE100のASレイヤは、RRC Setupを開始してもよい。UE100のASレイヤは、NASレイヤに閾値条件が満たされたことを通知してもよい。NASレイヤは、当該通知に基づいてRRCコネクティッド状態への遷移をASレイヤに指示してもよい。
【0082】
UE100は、ステップS109でのランダムアクセスプロシージャを行うことにより、RRCコネクティッド状態に遷移する。RRCコネクティッド状態に遷移したUE100は、マルチキャスト受信を継続する。なお、RRCコネクティッド状態においては、gNB200からUE100に対して個別のスケジューリングが可能であるため、高品質なサービスをUE100に提供可能であるものの、gNB200の負荷が高くなる。
【0083】
なお、UE100がRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態にある期間において、マルチキャスト受信以外の所定イベントが発生した場合、上記に関わらずUE100はRRCコネクティッド状態への遷移が許可されてもよい。所定イベントは、ネットワークからのPagingを受信したこと、すなわち、MT(Mobile Terminated)トラフィックの発生であってもよい。所定イベントは、上りリンク送信が必要となったこと、すなわち、MO(Mobile Originated)トラフィックの発生であってもよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、閾値をgNB200からUE100に設定する一例を説明したが、閾値は、UE100に事前設定されていてもよい。UE100は、事前設定された閾値をQoSレベル(5QI)ごとに保持してもよい。UE100は、対象マルチキャストセッションのQoSレベルに応じた事前設定された閾値をマルチキャスト受信品質と比較してもよい。
【0085】
(第1変更例)
図11に示すように、gNB200は、上述のような設定情報をシステム情報ブロック(SIB)に含めてブロードキャストしてもよい(ステップS106)。RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態にあるUE100は、設定情報を含むSIBをgNB200から受信し、受信した設定情報に従って閾値(及び第1所定時間)を適用してもよい。このようなSIBは、ベアラ(MRB)毎(若しくはサービス毎)、又はQoSレベル(5QI)ごとの個別の設定情報を含んでもよい。また、当該このようなSIBは、すべてのベアラに共通の設定情報を含んでもよい。
【0086】
例えば、SIBは、ベアラ識別子又は5QIと、当該ベアラ識別子又は5QIと対応付けられた設定情報とのセットを複数含んでもよい。SIBを受信したUE100は、対象マルチキャストセッションのベアラ又はQoSレベルに応じた設定情報をSIBから取得し、取得した設定情報に従って閾値(及び第1所定時間)を適用してもよい。
【0087】
(第2変更例)
図12に示すように、UE100は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移した後、所定時間(第2所定時間)が経過するまでは、マルチキャスト受信のためのRRCコネクティッド状態への遷移が禁止されてもよい。これにより、UE100がRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移した直後にRRCコネクティッド状態へ遷移することを防止できる。第2所定時間は、gNB200からUE100に対してRRC Releaseメッセージ又はSIBにより設定されてもよい。RRC Releaseメッセージ又はSIBは、第2所定時間を設定するための設定情報を含んでもよい。これにより、gNB200は、例えば自身の負荷状況に応じて、適切な第2所定時間を設定できる。
【0088】
ステップS201において、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移したUE100は、第2所定時間(タイマ値)をセットしたタイマを開始する。すなわち、UE100は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移してからの経過時間を計時する。第2所定時間(タイマ値)は、例えばgNB200から設定され、秒、サブフレーム、無線フレーム、又は時刻で指定されてもよい。
【0089】
UE100は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移してからの経過時間が第2所定時間を超えるまでは、マルチキャスト受信のためにRRCコネクティッド状態に遷移する処理(ランダムアクセスプロシージャ)を行うことを避ける。なお、UE100は、マルチキャスト受信以外の所定イベントが発生した場合、上記に関わらずRRCコネクティッド状態への遷移が許可されてもよい。所定イベントは、ネットワークからのPagingを受信したこと、すなわち、MT(Mobile Terminated)トラフィックの発生であってもよい。所定イベントは、上りリンク送信が必要となったこと、すなわち、MO(Mobile Originated)トラフィックの発生であってもよい。
【0090】
受信品質が閾値よりも悪いと判定(ステップS108:YES)した後、ステップS202において、UE100は、ステップS201で開始したタイマが満了したか否か、すなわち、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移してからの経過時間が第2所定時間を超えたか否かを判定する。タイマが満了していない場合(ステップS202:NO)、UE100は、処理をステップS107に戻す。一方、タイマが満了している場合(ステップS202:YES)、ステップS109において、UE100は、RRCコネクティッド状態に遷移する処理、すなわち、gNB200に対するランダムアクセスプロシージャを開始する。このように、UE100は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態に遷移してからの経過時間が第2所定時間を超え、且つ、測定された受信品質(マルチキャスト受信品質)が閾値よりも悪いことに応じて、RRCコネクティッド状態に遷移する処理を行う。
【0091】
(その他の実施形態)
上述の各動作フローは、別個独立に実施する場合に限らず、2以上の動作フローを組み合わせて実施可能である。例えば、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローに追加してもよいし、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローの一部のステップと置換してもよい。
【0092】
上述の実施形態及び実施例において、基地局がNR基地局(gNB)である一例について説明したが基地局がLTE基地局(eNB)又は6G基地局であってもよい。また、基地局は、IAB(Integrated Access and Backhaul)ノード等の中継ノードであってもよい。基地局は、IABノードのDUであってもよい。また、UE100は、IABノードのMT(Mobile Termination)であってもよい。
【0093】
UE100又はgNB200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。また、UE100又はgNB200が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100又はgNB200の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC:System on a chip)として構成してもよい。
【0094】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。また、「取得する(obtain/acquire)」は、記憶されている情報の中から情報を取得することを意味してもよく、他のノードから受信した情報の中から情報を取得することを意味してもよく、又は、情報を生成することにより当該情報を取得することを意味してもよい。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。さらに、本開示で使用されている「第1」、「第2」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0095】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0096】
本願は、日本国特許出願第2022-005614号(2022年1月18日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
【符号の説明】
【0097】
1 :移動通信システム
10 :RAN
20 :CN
100 :UE
110 :受信部
120 :送信部
130 :制御部
200 :gNB
210 :送信部
220 :受信部
230 :制御部
240 :バックホール通信部