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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】エレベータ自律移動体連携システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/40 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
B66B1/40 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024005222
(22)【出願日】2024-01-17
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中務 匡
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-018174(JP,A)
【文献】特開2005-089046(JP,A)
【文献】特開2024-036023(JP,A)
【文献】特開2024-099975(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066057(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3872015(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動可能な自律移動体と、
前記自律移動体を管理する第1のサーバと、
エレベータを管理するとともに、前記第1のサーバと通信可能な第2のサーバと、
前記エレベータの乗りかごを制御可能に構成されるとともに、前記第2のサーバを介して前記第1のサーバと通信可能な制御盤と、を備え、
前記制御盤は、
前記第1のサーバから、前記自律移動体が前記エレベータを利用するための呼びを取得すると、前記乗りかごを前記呼びに応答させ、
前記呼びに応じて乗り場に到着した前記乗りかごを戸開させた後、前記自律移動体が前記乗りかごの乗降に失敗すると、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせる、
エレベータ自律移動体連携システム。
【請求項2】
前記自律移動体は、
前記乗りかごの乗降時に前記乗りかごと前記乗り場との隙間により脱輪した場合には、前記乗りかごの乗降に失敗したことを示す第1の信号を前記第1のサーバへと送信し、
前記第1のサーバは、
前記自律移動体から受信した前記第1の信号を、前記第2のサーバを介して前記制御盤へと送信し、
前記制御盤は、
前記乗りかごを戸開させた後、前記第1のサーバから前記第1の信号を受信すると、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせる、
請求項1に記載のエレベータ自律移動体連携システム。
【請求項3】
前記自律移動体は、
前記乗りかごの乗降が完了すると、前記乗りかごの乗降が完了したことを示す第2の信号を前記第1のサーバへと送信し、
前記第1のサーバは、
前記自律移動体から受信した前記第2の信号を、前記第2のサーバを介して前記制御盤へと送信し、
前記制御盤は、
前記乗りかごを戸開させた後、前記第1のサーバか前記第2の信号を受信することなく所定時間が経過した場合には、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせる、
請求項1に記載のエレベータ自律移動体連携システム。
【請求項4】
前記制御盤は、
前記自律移動体が前記乗りかごへの乗車に失敗した場合には、前記乗りかごを微小距離下降させて、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせ、
前記自律移動体が前記乗りかごからの降車に失敗した場合には、前記乗りかごを微小距離上昇させて、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせる、
請求項1に記載のエレベータ自律移動体連携システム。
【請求項5】
前記自律移動体が前記乗りかごの乗降に失敗する場合には、前記乗りかごの乗降時に前記乗りかごと前記乗り場との隙間により前記自律移動体が脱輪することが含まれ、
前記第2のサーバは、
前記自律移動体が備える車輪のサイズの情報が格納された記憶部を有しており、
前記制御盤は、
前記車輪のサイズの情報に基づいて、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間の段差の大きさを調整する、
請求項1に記載のエレベータ自律移動体連携システム。
【請求項6】
前記制御盤は、
前記自律移動体が前記乗りかごの乗降に失敗した場合には、前記乗りかごを微小距離上下動させて、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせる処理を所定回数行う、
請求項1に記載のエレベータ自律移動体連携システム。
【請求項7】
前記第2のサーバは、
前記自律移動体の重量の情報が格納された記憶部を有しており、
前記制御盤は、
前記自律移動体の重量の情報に基づいて、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせる回数を調整する、
請求項6に記載のエレベータ自律移動体連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ自律移動体連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータシステムにおいては、ロボット等の自律移動体をビル内の異なる階に移動させて各種作業を実行させている。それに伴い、自律移動体に何らかの障害が生じるケースが生じている。
【0003】
例えば特許文献1には、指定されたフロアを無人で清掃する清掃ロボットに異常が発生した場合に、清掃ロボットの状態を警報により検出することができるエレベータシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-137650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、警報を検知した後、自律移動体を復旧させ、あるいは排除するため、作業員等の対応が必要となる。一例として、乗りかごへの乗降時、乗りかごの床と乗り場の床との隙間に車輪が嵌るなどして、ロボットが脱輪してしまう場合がある。このような場合に、作業員の対応を必要とすることなく復旧可能であることが望ましい。
【0006】
本実施形態が解決しようとする課題は、乗りかごの乗降時に脱輪した自律移動体を復旧させることが可能なエレベータ自律移動体連携システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のエレベータ自律移動体連携システムは、自律的に移動可能な自律移動体と、前記自律移動体を管理する第1のサーバと、エレベータを管理するとともに、前記第1のサーバと通信可能な第2のサーバと、前記エレベータの乗りかごを制御可能に構成されるとともに、前記第2のサーバを介して前記第1のサーバと通信可能な制御盤と、を備え、前記制御盤は、前記第1のサーバから、前記自律移動体が前記エレベータを利用するための呼びを取得すると、前記乗りかごを前記呼びに応答させ、前記呼びに応じて乗り場に到着した前記乗りかごを戸開させた後、前記自律移動体が前記乗りかごの乗降に失敗すると、前記乗りかごの床と前記乗り場の床との間に段差を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムの全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態にかかるエレベータシステムの詳細構成の一例を示す模式図である。
図3図3は、実施形態にかかるロボットクラウド内のサーバの詳細構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態にかかるロボットの詳細構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図6図6は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図7図7は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図8図8は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図9図9は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図10図10は、実実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図11図11は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図12図12は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システムにおけるエレベータシステムとロボットとの連携動作を順に例示する模式図である。
図13図13は、実施形態にかかるエレベータシステムによるロボットの脱輪復旧処理の手順の一例を示すフロー図である。
図14図14は、実施形態の変形例にかかるエレベータシステムの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(エレベータ/ロボット連携システムの全体構成)
図1は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システム1の全体構成の一例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、実施形態のエレベータ/ロボット連携システム1は、エレベータシステム2、複数のロボットクラウド300(300a,300b,300c・・・)、及びロボット500を備える。
【0011】
エレベータシステム2は、乗りかご50、制御盤100、コントローラ150、及び昇降機クラウド200を備える。なお、エレベータシステム2は、複数基の乗りかご50を備えていてもよく、その場合、制御盤100及びコントローラ150もまた、個々の乗りかご50ごとに設けられる。制御盤100、コントローラ150、及び昇降機クラウド200を含む構成をエレベータ制御システム2Bと呼ぶことがある。
【0012】
実施形態のエレベータシステム2は、オフィスビルまたはマンションビル等の複数の階床(フロア)を有するビル3に設置されている。より具体的には、エレベータシステム2は、ビル3に設けられた昇降路30内に乗りかご50、制御盤100、及びコントローラ150を備える。このほか、昇降路30内には、乗りかご50を駆動させるロープ、巻き上げ機、及びカウンタウェイト等が設けられる。
【0013】
乗りかご50には、乗り場60において、乗り場60のドア63と連動して開閉するドア53等が設けられ、エレベータの利用者の他、ロボット500が乗車可能である。乗りかご50が昇降路30内を昇降することで、利用者およびロボット500等を異なる階層間で移送可能に構成される。
【0014】
制御盤100は、乗りかご50を駆動させるロープ、巻き上げ機、及びカウンタウェイト、並びに乗りかご50に設けられたドア53等と無線または有線で接続されており、これらの各部を制御して乗りかご50を運行させる。制御盤100はまた、無線または有線でコントローラ150と接続されている。
【0015】
コントローラ150は、ネットワークで昇降機クラウド200内のサーバ210に接続される。これにより、コントローラ150は、制御盤100とサーバ210との間の通信を制御し、制御盤100とサーバ210との間で各種信号を仲介する。このように、コントローラ150は、制御盤100及びサーバ210間の信号を仲介するインターフェース機能、及びハブ機能を備えた仲介装置である。
【0016】
昇降機クラウド200は、サーバ210等を含んでクラウド上に置かれたコンピュータシステムである。昇降機クラウド200が、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の物理的な構成を備える1つ以上のコンピュータを含んでいてもよい。
【0017】
サーバ210は、乗りかご50の各部に対する各種制御を制御盤100に指示したり、制御盤100からの各種要求および各種データを受信したりする。サーバ210と制御盤100とのこれらのやり取りはコントローラ150を介して行われる。また、サーバ210は、ネットワークで複数のロボットクラウド300の個々のサーバ310とそれぞれ接続される。
【0018】
個々のロボットクラウド300a,300b,300c・・・は、それぞれがサーバ310a,310b,310c・・・等を含んでクラウド上に置かれたコンピュータシステムである。個々のロボットクラウド300が、CPU、ROM、及びRAM等の物理的な構成を備える1つ以上のコンピュータを含んでいてもよい。
【0019】
これらのロボットクラウド300は、それぞれが少なくとも1台以上のロボット500の管理および制御を行う。これらのロボット500は、例えば異なる機種ごとにグループ分けされており、異なる機種ごとに1つのロボットクラウド300が割り当てられている。
【0020】
サーバ310は、昇降機クラウド200のサーバ210から各種要求および各種データを受信する。サーバ310は、ビル3内の対応するロボット500とネットワークで接続されており、ロボット500に対して各種指示を送信する。また、サーバ310は、ロボット500を異なる階層へと移動させる際には、ロボット500にエレベータを利用させるため、昇降機クラウド200のサーバ210に対して呼びを行う。
【0021】
サーバ310がサーバ210に対して行う呼びには、乗り場呼びと行き先階呼びとがある。乗り場呼びとは、所定階の乗り場60に乗りかご50を呼ぶための操作であり、一般の利用者の場合、例えば乗り場60に設けられた図示しない乗り場呼びボタン等で乗り場呼びを行う。行き先階呼びとは、ロボット500が乗車した乗りかご50を所望の階床へと向かわせるための操作であり、一般の利用客の場合、例えば乗りかご50内に設けられた図示しない行き先階呼びボタン等で行き先階呼びを行う。
【0022】
このように、エレベータ/ロボット連携システム1においては、昇降機クラウド200とロボットクラウド300とがそれぞれ備えるサーバ210,310が、ネットワークを介して接続されることで、エレベータシステム2とロボット500とを連携させて制御することが可能となる。
【0023】
なお、エレベータ/ロボット連携システム1は、自律移動体としてのロボット500との連携を行うエレベータ自律移動体連携システムの一例である。また、ロボットクラウド300内のサーバ310は、ロボット500を管理する第1のサーバの一例であり、昇降機クラウド200内のサーバ210は、エレベータを管理する第2のサーバの一例である。
【0024】
自律移動体としてのロボット500は、複数のロボットクラウド300のうち、対応するロボットクラウド300のサーバ310からの指示を受けながら、ビル3内を自律的に移動して、例えばビル3内での配達または清掃等の種々の作業を行う。
【0025】
(エレベータ/ロボット連携システムの各部構成例)
次に、図2図4を用いて、エレベータ/ロボット連携システム1が備えるエレベータシステム2、ロボットクラウド300内のサーバ310、及びロボット500の詳細の構成例について説明する。
【0026】
図2は、実施形態にかかるエレベータシステム2の詳細構成の一例を示す模式図である。
【0027】
図2に示すように、エレベータシステム2は、乗りかご50、ロープ6、ロープ6に取り付けられたカウンタウェイト7、ロープ6を巻き上げる巻き上げ機8を昇降路30(図1参照)内に備える。
【0028】
乗りかご50は、ロープ6を介してカウンタウェイト7と連結されている。巻き上げ機8の駆動によりロープ6が送り動作されることで、乗りかご50がカウンタウェイト7とバランスを取りながら昇降路30内を昇降する。また、乗りかご50の前面、つまり、乗りかご50の乗降口側にはドア53が設けられている。
【0029】
エレベータ制御システム2Bに含まれる制御盤100は、制御部101、送受信部102、及び記憶部104を備えている。
【0030】
制御部101は、CPU等のハードウェアプロセッサである。制御部101は、記憶部104から制御プログラム等を読み出して実行することにより、乗りかご50の運行制御、ロボット500との連携を行う。制御盤100とロボット500との連携は、例えばコントローラ150、昇降機クラウド200、及び上述のロボットクラウド300(図1参照)等を介して行われる。
【0031】
送受信部102は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、制御盤100とコントローラ150との間での情報の送受信処理を行う。
【0032】
記憶部104は、例えばROMまたはRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)等である。記憶部104には、制御盤100の各種機能に用いる制御パラメータ及び制御プログラム等が記憶されている。
【0033】
エレベータ制御システム2Bに含まれるコントローラ150は、制御部151、送受信部152、及び記憶部154を備えている。
【0034】
制御部151は、CPU等のハードウェアプロセッサであり、主に送受信部152の動作を制御する。
【0035】
送受信部152は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、制御盤100とコントローラ150との間の通信処理、及びコントローラ150と昇降機クラウド200内のサーバ210との間の通信処理を行う。例えば、送受信部152は、制御盤100から送信された運転信号を受信すると、その運転信号を昇降機クラウド200内のサーバ210に送信する。
【0036】
記憶部154は、例えばROMまたはRAMなどの記憶媒体等である。記憶部154には、コントローラ150の各種機能に用いる制御パラメータ及び制御プログラム等が記憶されている。
【0037】
エレベータ制御システム2Bに含まれる昇降機クラウド200は、上述のように、サーバ210を備える。サーバ210は、制御部211、送受信部212(212a,212b,212c・・・),213、及び記憶部214を備えている。
【0038】
制御部211は、CPU等のハードウェアプロセッサである。制御部211は、記憶部214から制御プログラム等を読み出して実行することにより、エレベータシステム2の統括管理、及びロボットクラウド300内のサーバ310との連携を行う。このような連携の一例として、制御部211は、ロボットクラウド300内のサーバ310から、ロボット500にエレベータを利用させるための呼びを受信する。その呼びは更に、制御部211から、コントローラ150を介して制御盤100へと送信され、制御盤100の制御下で、乗りかご50による応答が実行される。
【0039】
送受信部212(212a,212b,212c・・・)はそれぞれ、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ210と、個々のロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0040】
送受信部212aは例えばロボットクラウド300aと対応しており、ロボットクラウド300aとの通信処理を行う。送受信部212bは例えばロボットクラウド300bと対応しており、ロボットクラウド300bとの通信処理を行う。送受信部212cは例えばロボットクラウド300cと対応しており、ロボットクラウド300cとの通信処理を行う。
【0041】
このように、個々のロボットクラウド300ごとに送受信部212が設けられていることで、所定のロボットクラウド300からアクセスがあった場合等に、昇降機クラウド200は、いずれのロボットクラウド300からのアクセスであるかを判別することができる。
【0042】
送受信部213は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ210とコントローラ150との間の通信処理を行う。
【0043】
記憶部214は、例えばROMまたはRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)等である。記憶部214には、サーバ210の各種機能に用いる制御パラメータ及び制御プログラム等が記憶されている。
【0044】
図3は、実施形態にかかるロボットクラウド300内のサーバ310の詳細構成の一例を示すブロック図である。図3には、ロボットクラウド300の基本的な構成を示しており、個々のロボットクラウド300は、いずれも図3に示す構成を有していてよい。
【0045】
図3に示すように、ロボットクラウド300内のサーバ310は、制御部311、送受信部312、及び記憶部314を備えている。
【0046】
制御部311は、CPU等のハードウェアプロセッサである。制御部311は、対応するロボット500に関する各種処理、及びエレベータシステム2との連携に関する各種処理等の制御を行う。より詳細には、制御部311は、ロボット500を統括的に管理および制御して、ロボット500をビル3内において自律的に移動させ、配達または清掃等の作業を行わせる。
【0047】
ロボット500のビル3内における移動には、エレベータシステム2の乗りかご50を用いた異なる階層間の移動も含まれる。異なる階層間でのロボット500の移動が必要になった場合、制御部311は、ロボット500を現在の階床の乗り場60に移動させるとともに、昇降機クラウド200内のサーバ210に対して乗り場呼びを送信する。乗り場呼びに応答した乗りかご50が、ロボット500が待機している乗り場60に到着すると、ロボット500は自律的に移動して、その乗りかご50へと乗車する。制御部211は、ロボット500が乗車した乗りかご50を所望の階床に移動させるため、昇降機クラウド200内のサーバ210に対して、更に行き先階呼びを送信する。
【0048】
送受信部312は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ310と昇降機クラウド200内のサーバ210との間の通信処理、及びサーバ310とロボット500との間の通信処理を行う。
【0049】
記憶部314は、例えばROMまたはRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)等である。記憶部314には、サーバ310の各種機能に用いる制御パラメータ及び制御プログラム等が記憶されている。
【0050】
図4は、実施形態にかかるロボット500の詳細構成の一例を示す模式図である。図4に示すように、ロボット500は、制御部501、送受信部502、駆動部503、記憶部504、及び各種センサ505を備えている。
【0051】
制御部501は、CPU等のハードウェアプロセッサである。制御部501は、記憶部504の制御プログラム等を読み出して実行することより、ビル3内での各種動作を実行する。このとき、制御部501は、ロボットクラウド300内のサーバ310からの指示にしたがうとともに、各種センサ505からのフィードバックを受けて、各種動作を実行する。
【0052】
送受信部502は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、ロボット500とロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0053】
駆動部503は、車輪等を含んだ機構であって、駆動部503が駆動することによりロボット500を走行させる。なお、駆動部503は、上記に挙げたものに限定されない。
【0054】
記憶部504は、例えばROMまたはRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)等である。記憶部504には、ロボット500の各種機能に用いる制御パラメータ及び制御プログラム等が記憶されている。
【0055】
各種センサ505は、ロボット500自体の状態とその周囲の状況とを検知可能に構成され、例えば赤外線センサ、加速度センサ、及びカメラ等の少なくともいずれかを含んでいてもよい。なお、各種センサ505は、上記に挙げたものに限定されない。
【0056】
(エレベータ/ロボット連携システムにおける連係動作)
次に、図5図12を用いて、実施形態のエレベータ/ロボット連携システム1におけるエレベータシステム2とロボット500との連携動作について説明する。図5図12は、実施形態にかかるエレベータ/ロボット連携システム1におけるエレベータシステム2とロボット500との連携動作を順に例示する模式図である。
【0057】
より詳細には、図5図9は、ロボット500が乗りかご50に乗車する際のエレベータシステム2とロボット500との連携動作を示している。また、図10図12は、ロボット500が乗りかご50から降車する際のエレベータシステム2とロボット500との連携動作を示している。
【0058】
また、図5図12の(a)は、所定の乗り場60に着床した乗りかご50の様子を示す。図5図12の(b)は、乗りかご50の床51と、乗り場60の床61とを上方から見た図である。図5図12の(b)は、乗りかご50の床51と、乗り場60の床61とを側方から見た断面図である。
【0059】
ロボット500をビル3内の他の階に移動させる必要が生じた場合、ロボットクラウド300内のサーバ310は、ロボット500を現在の階の乗り場60に移動させるとともに、昇降機クラウド200内のサーバ210に乗り場呼びを送信する。
【0060】
サーバ310から送信された乗り場呼びの情報は、昇降機クラウド200内のサーバ210からコントローラ150を介して、更に制御盤100へと送信される。このとき、エレベータシステム2が複数基の乗りかご50を備える場合には、昇降機クラウド200内のサーバ210が、個々の乗りかご50の運行状況に基づいて、適切な乗りかご50を割り当てて、その乗りかご50を制御する制御盤100に乗り場呼び情報を送信する。
【0061】
サーバ310から送信された乗り場呼びの情報を受信すると、制御盤100は、乗りかご50をその乗り場呼びに応答させる。すなわち、制御盤100は、ロボット500が乗りかご50への乗車待ちをしている階の乗り場60へと乗りかご50を向かわせる。
【0062】
図5(a)に示すように、ロボット500が乗車待ちをしている階床の乗り場60に乗りかご50が到着すると、制御盤100は乗りかご50を戸開する。また、これと連動して、乗り場60のドア63も戸開される。これにより、乗りかご50のドア53及び乗り場60のドア63が開放され、ロボット500が乗りかご50内へと乗車可能な状態となる。
【0063】
図5(c)に示すように、乗り場60に着床させる際、乗りかご50は、乗りかご50の床51と乗り場60の床61とに段差が生じないよう、これらの床51,61の高さが略等しくなる高さ位置に停止するよう制御される。
【0064】
図5(b)(c)に示すように、乗り場60に着床した乗りかご50の床51と、乗り場60の床61との間には、所定の隙間RCが存在する。これにより、乗りかご50を走行させる際、乗りかご50と乗り場60の床61との干渉を抑制することができる。このような隙間RCは、ランニングクリアランスとも呼ばれる。
【0065】
ロボット500は、乗りかご50のドア53及び乗り場60のドア63が開放されると、乗りかご50への乗車を開始する。
【0066】
図6(a)に示すように、ここで、ロボット500の駆動部503(図4参照)が備える車輪513が、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間の隙間RCによって脱輪したものとする。
【0067】
図6(b)(c)に示すように、ロボット500の脱輪は、例えば車輪513が、乗りかご50の床51の縁等に引っかかること等により生じる。乗りかご50の床51の縁等に引っかかった車輪513は、ロボット500の進行方向と交差し、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCが延びる方向を向くなどして、これらの隙間RCに嵌ってしまい脱輪することがある。
【0068】
車輪513が所定量以上に深く隙間RCに嵌ってしまうと、ロボット500が脱輪した状態から自律的に復旧することが困難な場合がある。この場合、ロボット500は、ロボットクラウド300内のサーバ310に、乗りかご50への乗車に失敗したことを示す信号を送信する。サーバ310は、ロボット500からの乗車失敗を示す信号を昇降機クラウド200内のサーバ210へと送信する。
【0069】
昇降機クラウド200内のサーバ210は、乗車失敗信号を受信すると、コントローラ150を介して、ロボット500の脱輪を復旧させる動作を行うことを制御盤100に指示する。
【0070】
図7(a)に示すように、サーバ210からの指示を受信すると、制御盤100は、乗りかご50を微小距離移動させて、乗りかご50の床51と乗り場60の床61とに若干の段差を生じさせる。このとき、サーバ210からの指示には上下いずれの方向に乗りかご50を移動させるかの指示も含まれている。ロボット500が乗りかご50に乗車する際に脱輪が生じたことが想定される場合には、制御盤100は、サーバ210からの指示に応じて、乗りかご50を微小距離だけ下降させる。
【0071】
図7(c)に示すように、これにより、乗りかご50の床51の高さ位置が、乗り場60の床61に対して若干低くなり、乗りかご50の床51が下方へ移動した分、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCも下方へと移動する。
【0072】
ただし、乗りかご50の下降距離はごく微小であり、また、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間に生じる段差もごく微小である。したがって、このような乗りかご50の挙動が。エレベータの利用者による乗りかご50への乗降には影響を及ぼすことは無い。
【0073】
図8に示すように、上記のように乗りかご50を動かすことで、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCが下方へと移動し、隙間RCに沿う方向に向いていた車輪513を、ロボット500の本来の進行方向である乗りかご50の床51側に向けることができる。これにより、ロボット500の車輪513が、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCから外れて、脱輪したロボット500を復旧させることができる。
【0074】
なお、ロボット500の車輪513が、隙間RCに深く嵌り込んでいるときは、乗りかご50の1回の下降動作では、隙間RCから車輪513が外れない場合もあり得る。このため、制御盤100は、乗りかご50の上下動を複数回繰り返してもよい。これにより、よりいっそう隙間RCから車輪513が外れやすくなる。
【0075】
図9に示すように、脱輪からの復旧後、ロボット500は、乗りかご50への乗車を終了させる。このとき、ロボット500から、ロボットクラウド300内のサーバ310へと乗りかご50の乗車が完了したことを示す信号を送信してもよい。サーバ310は更に、ロボット500からの乗車完了信号を昇降機クラウド200内のサーバ210へと送信することができる。
【0076】
ロボット500をビル3内の他の階に移動させる必要が生じた場合において、乗りかご50へと乗車したロボット500を所望の階へと移動させるため、ロボットクラウド300内のサーバ310は、ロボット500が乗車した乗りかご50について、昇降機クラウド200内のサーバ210に行き先階呼びを送信する。
【0077】
サーバ310から送信された行き先階呼びの情報は、昇降機クラウド200内のサーバ210から、対応する乗りかご50のコントローラ150を介して、更に制御盤100へと送信される。
【0078】
サーバ310から送信された行き先階呼びの情報を受信すると、制御盤100は、ロボット500が乗車した乗りかご50を行き先階呼びに応答させる。すなわち、制御盤100は、その行き先階呼びで指定される階へと乗りかご50を向かわせる。
【0079】
図10に示すように、ロボット500が乗車した乗りかご50が、指定階の乗り場60に到着すると、制御盤100は乗りかご50を戸開する。また、これと連動して、乗り場60のドア63も戸開される。これにより、乗りかご50のドア53及び乗り場60のドア63が開放され、ロボット500が乗りかご50から降車可能な状態となる。
【0080】
図11(a)に示すように、ここで、ロボット500の車輪513が、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間の隙間RCによって脱輪したものとする。
【0081】
図11(b)(c)に示すように、ロボット500の脱輪は、例えば車輪513が、乗り場60の床61の縁等に引っかかること等により生じる。乗り場60の床61の縁等に引っかかった車輪513は、ロボット500の進行方向と交差し、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCが延びる方向を向くなどして、これらの隙間RCに嵌ってしまい脱輪することがある。
【0082】
この場合にも、ロボット500が自律的に脱輪の状態から復旧することが困難な場合がある。この場合、ロボット500は、ロボットクラウド300内のサーバ310に、乗りかご50からの降車に失敗したことを示す信号を送信する。サーバ310は、ロボット500からの降車失敗を示す信号を昇降機クラウド200内のサーバ210へと送信する。
【0083】
昇降機クラウド200内のサーバ210は、降車失敗信号を受信すると、コントローラ150を介して、ロボット500の脱輪を復旧させる動作を行うことを制御盤100に指示する。
【0084】
図12(a)に示すように、サーバ210からの指示を受信すると、制御盤100は、乗りかご50を微小距離移動させて、乗りかご50の床51と乗り場60の床61とに若干の段差を生じさせる。このとき、ロボット500が乗りかご50から降車する際に脱輪が生じたことが想定される場合には、制御盤100は、サーバ210からの指示に応じて、乗りかご50を微小距離だけ上昇させる。
【0085】
図12(c)に示すように、これにより、乗りかご50の床51の高さ位置が、乗り場60の床61に対して若干高くなり、乗りかご50の床51が上方へ移動した分、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCから、車輪513がロボット500の本体ごと浮上することとなる。
【0086】
ただし、乗りかご50の上昇距離はごく微小であり、また、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間に生じる段差もごく微小である。したがって、このような乗りかご50の挙動が。エレベータの利用者による乗りかご50への乗降には影響を及ぼすことは無い。
【0087】
上記のように乗りかご50を動かすことで、ロボット500の車輪513が、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCから浮上して、隙間RCに沿う方向に向いていた車輪513を、ロボット500の本来の進行方向である乗り場60の床61側に向けることができる。これにより、ロボット500の車輪513が、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との隙間RCから外れて、脱輪したロボット500を復旧させることができる。
【0088】
なお、ロボット500の車輪513が、隙間RCに深くはまり込んでいるときは、乗りかご50の1回の上昇動作では、隙間RCから車輪513が外れない場合もあり得る。このため、制御盤100は、乗りかご50の上下動を複数回繰り返してもよい。これにより、よりいっそう隙間RCから車輪513が外れやすくなる。
【0089】
脱輪からの復旧後、ロボット500は、乗りかご50からの降車を終了させる。このとき、ロボット500から、ロボットクラウド300内のサーバ310へと乗りかご50の降車が完了したことを示す信号を送信してもよい。サーバ310は更に、ロボット500からの降車完了の信号を昇降機クラウド200内のサーバ210へと送信することができる。
【0090】
なお、ロボット500が乗りかご50への乗車に失敗したことを示す信号、及び降車に失敗したことを示す信号等の乗降失敗信号は第1の信号の一例である。また、ロボット500による乗りかご50への乗車が完了したことを示す信号、及び降車が完了したことを示す乗降完了信号は第2の信号の一例である。
【0091】
この他、乗りかご50の乗降に失敗したことの信号に加えて、ロボット500が、乗りかご50の上記動作により復旧したことの信号を、ロボットクラウド300内のサーバ310に送信してもよい。サーバ310は更に、ロボット500からの復旧信号を昇降機クラウド200内のサーバ210へと送信することができる。これにより、昇降機クラウド200内のサーバ210は、追加の復旧動作が必要か否かを判断してもよい。また、昇降機クラウド200内のサーバ210が、ロボット500の復旧を知らせる情報を乗り場60に提示するなどして、乗り場60の利用者に報知するようにしてもよい。
【0092】
ところで、既存のエレベータシステムにおいては、乗り場に着床させた乗りかごの床と乗り場の床との間に段差が生じてしまった場合等に、これらの床の高さを合わせて段差を解消する技術がある。上記のように、乗り場60に着床した乗りかご50を、微小距離移動させて意図的に段差を生じさせ、脱輪したロボット500を復旧させる動作は、このような既存技術を転用して容易に実行することが可能である。
【0093】
なお、昇降機クラウド200内のサーバ210は、ロボット500が乗りかご50への乗車に失敗したのか、あるいは降車に失敗したのかを、ロボットクラウド300内のサーバ310から受信したのが乗り場呼びであったか、行き先階呼びであったか等に基づいて判断することができる。
【0094】
つまり、ロボットクラウド300内のサーバ310からの乗り場呼びに応答した後、乗降失敗信号を受信した場合には、ロボット500が乗りかご50への乗車に失敗したものと判断することができる。また、ロボットクラウド300内のサーバ310からの行き先階呼びに応答した後、乗降失敗信号を受信した場合には、ロボット500が乗りかご50からの降車に失敗したものと判断することができる。
【0095】
あるいは、昇降機クラウド200内のサーバ210は、ロボット500から受信した信号が乗車失敗信号であるのか、あるいは降車失敗信号であるのかに基づいて、ロボット500が乗りかご50への乗車に失敗したのか、あるいは乗りかご50からの降車に失敗したのかを判断可能であってもよい。
【0096】
(エレベータ/ロボット連携システムの処理例)
次に、図13を用いて、実施形態のエレベータシステム2による処理例について説明する。図13は、実施形態にかかるエレベータシステム2によるロボット500の脱輪復旧処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0097】
図13に示すように、昇降機クラウド200内のサーバ210は、ロボットクラウド300内のサーバ310から、乗り場呼びまたは行き先階呼び等の呼びを受信する(ステップS101)。昇降機クラウド200内のサーバ210は、コントローラ150を介して制御盤100に指示をし、制御盤100は、乗りかご50を呼びに応答させる(ステップS102)。
【0098】
呼びに応答した乗りかご50に対し、ロボット500が乗降動作を行う間、昇降機クラウド200内のサーバ210は、ロボットクラウド300内のサーバ310を介して、ロボット500から送信される乗車失敗信号または降車失敗信号等の乗降失敗信号の受信の有無を監視する(ステップS103)。
【0099】
ロボット500から乗降失敗信号を受信した場合には(ステップS103:Yes)、昇降機クラウド200内のサーバ210は、ロボット500の乗降失敗が、乗りかご50への乗車時に発生したか降車時に発生したかを判定する(ステップS104)。
【0100】
ロボット500が乗りかご50への乗車に失敗していた場合には(ステップS104:Yes)、サーバ210は、コントローラ150を介して制御盤100に指示をし、制御盤100は、乗りかご50を微小距離だけ下降させる(ステップS105)。ロボット500が乗りかご50からの降車に失敗していた場合には(ステップS104:No)、サーバ210は、コントローラ150を介して制御盤100に指示をし、制御盤100は、乗りかご50を微小距離だけ上昇させる(ステップS106)。
【0101】
ロボット500が乗降動作を行う間に、乗降失敗信号を受信しなかった場合には(ステップS103:No)、昇降機クラウド200内のサーバ210は、ステップS104以降の処理をスキップする。
【0102】
この後、昇降機クラウド200内のサーバ210が、ロボット500からの復旧信号、または乗車完了信号もしくは降車完了信号等の乗降完了信号を受信するようにしてもよい。
【0103】
以上により、実施形態のエレベータシステム2によるロボット500の脱輪復旧処理が終了する。
【0104】
(概括)
近年、ビル内を自律的に移動し、配達または清掃等の種々の作業を行うロボットが開発されている。また、複数の階床を有するビルでは、ロボットがエレベータを使って異なる階へと移動する技術も提案されている。
【0105】
しかしながら、エレベータを使ったロボットの移動に際し、ロボットが乗りかごの床と乗り場の床との隙間によって脱輪し、乗りかごの乗降に失敗する場合がある。このような場合、ロボットが自律的に復旧できなければ、作業員等が実際に現場に足を運んで対応する必要が生じる。これにより、作業員の負荷が増すとともに、エレベータの円滑な運行にも支障が生じる恐れがある。
【0106】
実施形態のエレベータ/ロボット連携システム1によれば、制御盤100は、呼びに応じて乗り場60に到着した乗りかご50を戸開させた後、ロボット500が乗りかご50の乗降に失敗すると、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間に段差を生じさせる。
【0107】
これにより、乗りかご50の乗降時に脱輪したロボット500を復旧させることができる。よって、作業員の負荷を軽減し、エレベータを円滑に運行することが可能となる。
【0108】
実施形態のエレベータ/ロボット連携システム1によれば、制御盤100は、乗りかご50を戸開させた後、昇降機クラウド200内のサーバ210から、ロボット500が乗りかご50の乗降に失敗したことを示す信号を受信すると、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間に段差を生じさせる。
【0109】
このように、ロボット500が乗降失敗信号を発することで、乗りかごの乗降時、ロボット500に異常が生じたことを検知して、素早く復旧させることができる。
【0110】
実施形態のエレベータ/ロボット連携システム1によれば、制御盤100は、ロボット500が乗りかご50への乗車に失敗した場合には、乗りかご50を微小距離下降させて、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間に段差を生じさせる。
【0111】
これにより、ロボット500の進行方向側の乗りかご50の床51の高さを、ロボット500の進行方向後方の乗り場60の床61よりも下げることができる。よって、床51,61の隙間RCに嵌ったロボット500の車輪513が外れやすくなり、ロボット500を復旧させやすくなる。
【0112】
また、上述のように、乗り場60に着床した乗りかご50を微小距離下降させる動作は、乗りかご50の床51と乗り場60の床61とに生じた段差を解消するための技術を転用して容易に行わせることができる。乗りかご50の下降距離は微小であるので、他の利用者の乗りかご50への乗降にも影響を来さない。
【0113】
実施形態のエレベータ/ロボット連携システム1によれば、制御盤100は、ロボット500が乗りかご50からの降車に失敗した場合には、乗りかご50を微小距離上昇させて、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間に段差を生じさせる。
【0114】
これにより、ロボット500の進行方向後方の乗りかご50の床51の高さを、ロボット500の進行方向側の乗り場60の床61よりも高くすることができる。よって、床51,61の隙間RCに嵌ったロボット500の車輪513が外れやすくなり、ロボット500を復旧させやすくなる。
【0115】
また、上述のように、乗り場60に着床した乗りかご50を微小距離上昇させる動作は、乗りかご50の床51と乗り場60の床61とに生じた段差を解消するための技術を転用して容易に行わせることができる。乗りかご50の上昇距離は微小であるので、他の利用者の乗りかご50への乗降にも影響を来さない。
【0116】
実施形態のエレベータ/ロボット連携システム1によれば、制御盤100は、ロボット500が乗りかご50の乗降に失敗した場合には、乗りかご50を微小距離上下動させて、乗りかご50の床51と乗り場60の床61との間に段差を生じさせる処理を所定回数行う。このように、乗りかご50の上下動を1回以上繰り返すことで、よりいっそうロボット500を復旧させやすくなる。
【0117】
なお、上述の実施形態では、乗りかご50の乗降に失敗したロボット500が、乗降失敗の信号を発信することにより、エレベータシステム2の制御盤100が、ロボット500を復旧させる動作を乗りかご50に行わせることとした。しかし、エレベータシステム2が、ロボット500が乗りかご50の乗降に失敗したことを、上記以外の手法によって判断してもよい。
【0118】
例えば、乗りかご50の乗降が完了すると、上述のように、ロボット500が乗降完了の信号を発信する場合において、ロボットクラウド300内のサーバ310からの呼びに応答させた乗りかご50を乗り場60で戸開させた後、所定時間が経過してもロボット500からの乗車完了信号が受信されなかった場合には、制御盤100が、ロボット500を復旧させる動作を乗りかご50に行わせることとしてもよい。
【0119】
このような構成においても、乗りかごの乗降時、ロボット500に異常が生じたことを検知することができ、乗りかご50における上記復旧動作を行って、ロボット500を復旧させることができる。
【0120】
また、上述の実施形態では、ロボット500と利用者との両方が同じ乗りかご50を利用することを前提として説明を行った。しかし、エレベータシステム2が、利用者が利用する乗りかご50とは別に、ロボット500専用の乗りかご50を備えていてもよい。
【0121】
このような構成においても、ロボット500用の乗りかご50で、ロボット500の脱輪が生じた場合には、上記同様の復旧動作を行って、ロボット500を復旧させることができる。上述のように、上記復旧動作は、利用者のみならずロボット500に対しても安全に行うことが可能である。
【0122】
(変形例)
次に、図14を用いて、実施形態の変形例のエレベータシステム6について説明する。変形例のエレベータシステム6は、ロボット500ごとの情報を保有している点が、上述の実施形態とは異なる。
【0123】
図14は、実施形態の変形例にかかるエレベータシステム6の構成の一例を示す模式図である。なお、図14においては、上述の実施形態と同様の構成に同様の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0124】
図14に示すように、変形例のエレベータシステム6は、制御盤100、コントローラ150、及び昇降機クラウド600を有するエレベータ制御システム6Bを備えている。エレベータ制御システム6Bに含まれる昇降機クラウド600は、サーバ610等を含んでクラウド上に置かれたコンピュータシステムとして構成されている。
【0125】
昇降機クラウド600内のサーバ610は、実施形態のサーバ210が備える制御部211及び記憶部214に替えて、制御部611及び記憶部614を備えている。
【0126】
上述の実施形態と同様、昇降機クラウド600は、ロボット500の機種ごとに設けられた複数のロボットクラウド300a,300b,300c・・・のそれぞれのサーバ310と連携可能に構成されている。記憶部614は、個々のロボットクラウド300が管理するロボット500の機種ごとに異なるロボット情報615(615a,615b,615c・・・)を記憶する。これらのロボット情報615には、機種ごとに異なるロボット500の車輪径、車輪幅、本体の重量等、各種の仕様に関する情報が含まれる。
【0127】
ロボット情報615aは、例えばロボットクラウド300aが管理するロボット500の情報であり、ロボット情報615bは、例えばロボットクラウド300bが管理するロボット500の情報であり、ロボット情報615cは、例えばロボットクラウド300cが管理するロボット500の情報である。
【0128】
制御部611は、CPU等のハードウェアプロセッサであり、コントローラ150及び制御盤100を制御して、ロボットクラウド300内のサーバ310からの呼びに応答したり、ロボット500の脱輪時等には復旧動作を行わせたりする。
【0129】
ロボット500の復旧動作を制御盤100に指示する際、制御部611は、記憶部614に記憶されるロボット情報615を参照し、ロボット500の仕様に応じて復旧動作を異ならせるよう制御盤100に指示を行う。複数のロボット情報615a,615b,615c・・・のうち、いずれを参照するかは、複数のロボットクラウド300a,300b,300c・・・のうち、いずれのロボットクラウド300の呼びに応答中であったかに基づいて判断される。
【0130】
ロボット500の仕様に応じた復旧動作の一例としては、ロボット500の車輪径に応じて、乗りかご50を上昇または下降させる距離を変更することが挙げられる。すなわち、車輪径の大きいロボット500であれば、その分、乗りかご50の上昇下降距離を大きくし、車輪径の小さいロボット500であれば、その分、乗りかご50の上昇下降距離を小さくすることができる。
【0131】
これにより、車輪径の大きいロボット500であっても、乗りかご50を充分な距離移動させることができるので、隙間RCに挟まった車輪が外れやすくなる。一方、車輪径の小さいロボット500の場合、乗りかご50を不用意に長い距離移動させずに済み、利用者等に対する影響を更に抑制することができる。
【0132】
ロボット500の仕様に応じた復旧動作の他の例としては、ロボット500の重量に応じて、乗りかご50を上下動させる回数を変更することが挙げられる。すなわち、重量の大きいロボット500の場合、より深く隙間RCに嵌り込んでしまいやすいところ、乗りかご50を上下動させる回数を増やすことで、ロボット500をより復旧させやすくなる。一方、重量の小さいロボット500であれば、乗りかご50を上下動させる回数を減らしても容易に復旧させることができると考えられ、乗りかご50を不用意に上下動させる回数を減らして、利用者等に対する影響を更に抑制することができる。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0134】
1…エレベータ/ロボット連携システム、2,6…エレベータシステム、2B,6B…エレベータ制御システム、50…乗りかご、51,61…床、53,63…ドア、60…乗り場、100…制御盤、150…コントローラ、200,600…昇降機クラウド、210,310,610…サーバ、300…ロボットクラウド、500…ロボット。
【要約】
【課題】乗りかごの乗降時に脱輪した自律移動体を復旧させること。
【解決手段】実施形態のエレベータ自律移動体連携システムは、自律的に移動可能な自律移動体と、自律移動体を管理する第1のサーバと、エレベータを管理するとともに、第1のサーバと通信可能な第2のサーバと、エレベータの乗りかごを制御可能に構成されるとともに、第2のサーバを介して第1のサーバと通信可能な制御盤と、を備え、制御盤は、第1のサーバから、自律移動体がエレベータを利用するための呼びを取得すると、乗りかごを呼びに応答させ、呼びに応じて乗り場に到着した乗りかごを戸開させた後、自律移動体が乗りかごの乗降に失敗すると、乗りかごの床と乗り場の床との間に段差を生じさせる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14