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特許7567082放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法
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  • 特許-放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法 図1
  • 特許-放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法 図2
  • 特許-放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/44 20060101AFI20241007BHJP
   H05G 1/26 20060101ALI20241007BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241007BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20241007BHJP
【FI】
H05G1/44 A
H05G1/26 E
A61B6/42 500S
A61B6/00 520Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024060123
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2020036975の分割
【原出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2024079839
(43)【公開日】2024-06-11
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】尾島 徹則
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 健太郎
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-137271(JP,A)
【文献】特開2017-209244(JP,A)
【文献】特開2014-87513(JP,A)
【文献】実開昭60-140399(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
H05G 1/00-2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線照射装置から照射された放射線を検出するセンサ部と、
前記放射線の累積線量を取得する手段と、
前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、を有し、
前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、
前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、
前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記所定の閾値条件は、前記経過時間の増加にともなって前記閾値が増加する閾値条件であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記所定の閾値条件は、前記経過時間に対して階段的に変化する階段関数で表されることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記階段関数における時間区分の長さは、前記時間区分ごとに異なることを特徴とする請求項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記階段関数における時間区分の長さは、前記経過時間とともに徐々に長くなることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記所定の閾値条件は、前記経過時間に対して閾値が連続的に変化する閾値条件であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記所定の閾値条件は、前記閾値の時間当たりの増加量が前記経過時間の増加にともなって減少する閾値条件であることを特徴とする請求項6に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記放射線に基づき放射線画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
放射線照射装置から照射された放射線を放射線撮影装置で検出する放射線撮影システムであって、
放射線を検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出した前記放射線の累積線量を取得する手段と、
前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、
前記所定の信号に基づいて前記放射線の照射を停止する手段と、を有し、
前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、
前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、
前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であることを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項10】
放射線照射装置から照射された放射線をセンサ部で検出する放射線撮影装置と通信可能な制御装置であって、
前記放射線の累積線量を取得する手段と、
前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、を有し、
前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、
前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、
前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
放射線照射装置から照射された放射線を放射線撮影装置のセンサ部で検出する放射線撮影システムにおいて前記放射線照射装置による放射線の照射を停止させる照射停止方法であって、
前記放射線の累積線量を取得する工程と、
前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する工程と、
前記所定の信号に基づいて前記放射線の照射を停止する工程と、を有し、
前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、
前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、
前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であることを特徴とする照射停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置、放射線撮影システム、制御装置及び照射停止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、X線等の放射線による医療画像診断や非破壊検査に用いる放射線撮影装置として、半導体材料によって形成された平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)を備えた放射線撮影装置が普及している。このような放射線撮影装置は、例えば医療画像診断においては、一般撮影のような静止画撮影や透視撮影のような動画撮影を行うデジタル放射線撮影装置として用いられている。
【0003】
放射線撮影装置の中には、照射された放射線の線量(累積線量)をモニタして当該累積線量が閾値に達した場合に放射線の照射を停止させる(例えば、放射線の照射を停止させるための照射停止信号を放射線発生装置に対して出力する)ものがある。この動作は、自動露光制御(Automatic Exposure Control:AEC)と称され、これによって、例えば放射線の過剰照射を防ぐことができる。
【0004】
このような放射線撮影装置として、例えば、特許文献1には、FPDの撮像領域内に、撮像領域に到達する放射線の線量を検出する線量検出部を備える放射線撮影装置が開示されている。この特許文献1では、線量検出部で検出する線量と予め設定された線量目標値とに基づいて、放射線発生装置において放射線の照射を停止すべき停止タイミングを予測し、放射線発生装置に対して放射線の照射停止タイミングを知らせるための照射停止タイミング通知を、照射停止タイミングが到来する前に発信するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-138829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の記載の技術では、放射線発生装置からの放射線の照射停止制御の精度に課題がある。即ち、特許文献1の記載の技術では、被写体を透過する放射線の透過線量率が高くなる場合、放射線の累積線量が閾値に達するまでの時間が数ms程度と短くなり、その結果、照射停止タイミング通知が間に合わずに放射線発生装置が放射線の照射を停止する以前に放射線の累積線量が閾値よりも大きくなってしまうという問題が生じうる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、放射線発生装置からの放射線の照射停止制御を高精度で行える仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射線撮影装置は、放射線照射装置から照射された放射線を検出するセンサ部と、前記放射線の累積線量を取得する手段と、前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、を有し、前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値である
本発明の放射線撮影システムは、放射線照射装置から照射された放射線を放射線撮影装置で検出する放射線撮影システムであって、放射線を検出するセンサ部と、前記センサ部で検出した前記放射線の累積線量を取得する手段と、前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、前記所定の信号に基づいて前記放射線の照射を停止する手段と、を有し、前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値である
本発明の制御装置は、放射線照射装置から照射された放射線をセンサ部で検出する放射線撮影装置と通信可能な制御装置であって、前記放射線の累積線量を取得する手段と、前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する手段と、を有し、前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値である
本発明の照射停止方法は、放射線照射装置から照射された放射線を放射線撮影装置のセンサ部で検出する放射線撮影システムにおいて前記放射線照射装置による放射線の照射を停止させる照射停止方法であって、前記放射線の累積線量を取得する工程と、前記累積線量が所定の閾値条件の閾値以上となったことに基づいて、前記放射線照射装置による前記放射線の照射を停止させるための所定の信号を出力する工程と、前記所定の信号に基づいて前記放射線の照射を停止する工程と、を有し、前記所定の閾値条件は、前記放射線の照射開始からの経過時間が異なる第1のタイミングと第2のタイミングとを少なくとも含む複数のタイミングで閾値が異なる閾値条件であり、前記第1のタイミングにおける閾値は、前記放射線照射装置との間の通信で所定の遅延時間を生じる環境において、第1の線量率の放射線の照射を目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値であり、前記第2のタイミングにおける閾値は、前記所定の遅延時間を生じる環境において、前記第1の線量率よりも線量率の低い第2の線量率の放射線の照射を前記目標の累積線量の近傍で停止させるための閾値である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線発生装置からの放射線の照射停止制御を高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムにおいて、被写体の撮影の開始から終了までの一連の制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態を示し、撮影制御部において設定された線量(累積到達線量)の閾値及びその閾値の時間変化と線量(累積到達線量)との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。なお、本明細書においては、本発明に係る放射線としては、X線を用いることが好適であるが、このX線に限定されるものではなく、α線やβ線、γ線なども、含まれるものとする。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る放射線撮影システム100の概略構成の一例を示す図である。本実施形態においては、放射線撮影システム100は、特に医療用として使用されることが好適である。この放射線撮影システム100は、図1に示すように、放射線発生装置110、放射線撮影装置120、及び、制御装置130を有して構成されている。また、制御装置130は、放射線発生装置110及び放射線撮影装置120と通信可能に構成されており、撮影条件設定部131、演算部132、撮影制御部133、画像処理部134、及び、表示部135を含み構成されている。
【0013】
放射線発生装置110は、制御装置130(より具体的には、撮影制御部133)の制御に基づいて、被写体Pに向けて放射線Rを照射する。この放射線発生装置110は、放射線Rを生成する放射線生成部である放射線管球111、及び、放射線管球111で生成した放射線Rのビーム広がり角を規定するコリメータ112を含み構成されている。
【0014】
放射線撮影装置120は、例えばFPDを備えて構成されており、二次元に分布した撮像素子を含むセンサ部を有して構成されている。このセンサ部は、放射線発生装置110から照射され、入射した放射線Rを検出するものである。放射線撮影装置120は、具体的にセンサ部において撮像素子に到達した放射線量の二次元分布の情報(線量情報)を検出し、放射線画像データを生成する。その後、放射線撮影装置120は、生成した放射線画像データを制御装置130の画像処理部134に送信する。また、放射線撮影装置120は、センサ部において検出した放射線量の二次元分布の情報(線量情報)を制御装置130の演算部132に送信する。
【0015】
制御装置130は、放射線発生装置110及び放射線撮影装置120の動作を制御するとともに、放射線撮影装置120のセンサ部において検出された線量情報や放射線撮影装置120で撮影された放射線画像データを取得して処理する。
【0016】
続いて、制御装置130が備える各構成部131~135の機能を説明する。
撮影条件設定部131は、例えば操作者が入力した、被写体Pの撮影部位や、放射線管球111における管電圧及び管電流、遅延時間、放射線Rが被写体Pを透過し放射線撮影装置120に到達する線量(累積到達線量)の基準値Dref、放射線発生装置110に対する照射停止信号の出力制御を行う際の閾値Dth等の撮影条件情報を含む撮影条件データを設定する。そして、撮影条件設定部131は、設定した撮影条件データの中から必要な撮影条件情報を撮影制御部133に送信する。ここで、線量とは、一般的に、放射線照射時の累積到達線量を意味するが、それに類似した線量の値または連動した線量の値を使用しても構わなく、以下、必要に応じて「累積到達線量」と記載する。
【0017】
演算部132は、放射線撮影装置120から送信された線量情報に基づいて、放射線撮影装置120のセンサ部で検出した放射線Rの線量(累積到達線量)を演算し、これを撮影制御部133に送信する。
【0018】
撮影制御部133は、撮影条件設定部131から受信した撮影条件情報及び演算部132から受信した線量(累積到達線量)の情報に基づいて、放射線発生装置110及び放射線撮影装置120を制御する。
【0019】
画像処理部134は、放射線撮影装置120から送信された放射線画像データに対して、階調処理やノイズ低減処理といった画像処理を行う。そして、画像処理部134は、画像処理後の放射線画像データを表示部135に送信する。
【0020】
表示部135は、画像処理部134から送信された放射線画像データに基づく放射線画像をモニタ等に出力して表示する。
【0021】
なお、撮影条件設定部131で設定する遅延時間とは、演算部132で算出した放射線Rの線量(累積到達線量)に基づいて撮影制御部133から放射線発生装置110に対して放射線Rの照射を停止させるための照射停止信号が出力されてから、放射線発生装置110において放射線Rの照射が停止するまでの時間である。また、放射線発生装置110において放射線Rの照射が停止する時間とは、放射線発生装置110の放射線管球111における管電圧が下がり始めた時間または当該管電圧が下がりきった時間である。ここで、放射線発生装置110の放射線管球111における管電圧が下がりきった時間に基づき遅延時間を設定する場合には、放射線管球111における管電圧が下がり始めてから下がりきるまでの非定常期間の時間に対して、線量・線質の変化を考慮した係数をかけた時間を加味して、遅延時間を設定することが望ましい。より具体的には、遅延時間Tdは、信号発信から管電圧が下がり始めるまでの定常期間Taと、管電圧が下がり始めてから下がりきるまでの非定常期間Tbとに分けられる。このとき、非定常期間Tbは、放射線管球111における管電圧が低下するため、係数k(ここで、係数kは1以下である)をかけて加える。即ち、非定常期間Tbを加味した場合の遅延時間Tdは、以下の式に基づいて定めることができる。
Td=Ta+kTb
【0022】
本実施形態においては、この遅延時間Tdは、撮影環境ごとに、被写体Pの放射線撮影に係る放射線Rの照射前(撮影前)までに取得しておく必要がある。また、この遅延時間Tdは、放射線撮影装置120の設置時に実際に測定した値を用いることができる。さらに、撮影環境や使用する放射線発生装置110を予めデータベースに登録しておき、データベースより参照して遅延時間Tdを算出してもよい。
【0023】
次に、被写体Pの撮影の処理について、図2を用いて説明する。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る放射線撮影システム100において、被写体Pの撮影の開始から終了までの一連の制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0025】
本撮影処理では、事前取得した遅延時間Td及び線量(累積到達線量)の基準値Drefに基づいて、線量(累積到達線量)の閾値Dth及びその閾値Dthの時間変化を設定し、被写体Pの放射線撮影を行う。
【0026】
まず、ステップS201において、撮影条件設定部131は、入力部(不図示)を介して操作者が入力した撮影開始の指示を受け取るとともに、例えば操作者が入力した撮影条件情報(照射条件情報)を設定する。ここで、撮影条件設定部131は、撮影条件情報(照射条件情報)として、放射線管球111における管電圧や管電流、線量(累積到達線量)の基準値Dref、遅延時間Td等を設定する。その後、撮影条件設定部131は、取得した撮影開始の指示及び設定した撮影条件情報(照射条件情報)を撮影制御部133に送信する。また、放射線撮影システム100を構成するいずれかの装置に遅延時間Tdの値を保存しておき、その値を参照してもよい。
【0027】
続いて、ステップS202において、撮影制御部133は、ステップS201で設定された線量(累積到達線量)の基準値Drefと遅延時間Tdとに基づいて、線量(累積到達線量)の閾値Dth及びその時間変化を設定する。この線量(累積到達線量)の閾値Dth及びその時間変化を設定については、図3を用いて後述する。
【0028】
続いて、ステップS203において、撮影制御部133は、ステップS201において撮影条件設定部131から受け取った撮影条件情報(照射条件情報)とともに、放射線Rの照射を行わせるための照射実行信号を放射線発生装置110に送信する。これに伴って、放射線発生装置110は、撮影条件設定部131から受け取った撮影条件情報(照射条件情報)及びステップS202で設定した閾値Dthに基づく照射条件で被写体Pに向けて放射線Rを照射する。
【0029】
続いて、ステップS204において、まず、演算部132は、放射線撮影装置120から送信された線量情報(例えば、センサ部における撮像素子ごとの線量情報)に基づいて、センサ部で検出した放射線Rの線量(累積到達線量)を代表する値Dを演算する。なお、ここでの放射線Rの線量(累積到達線量)を代表する値Dとしては、線量(累積到達線量)の最大値や平均値、中央値等を用いてもよい。以降の説明では、放射線Rの線量(累積到達線量)を代表する値Dを「放射線Rの線量(累積到達線量)D」として記載する。そして、撮影制御部133は、演算部132から受信した放射線Rの線量(累積到達線量)Dと、ステップS202で設定した閾値Dthとを比較し、線量(累積到達線量)Dが閾値Dthよりも小さいか否かを判断する。この判断の結果、線量(累積到達線量)Dが閾値Dthよりも小さい場合には(S204/YES)、ステップS204で待機する。
【0030】
一方、ステップS204の判断の結果、線量(累積到達線量)Dが閾値Dthよりも小さくない場合(線量(累積到達線量)Dが当該閾値以上である)には(S204/NO)、ステップS205に進む。
ステップS205に進むと、撮影制御部133は、線量(累積到達線量)Dが閾値Dthを超えた(達した)ため、放射線発生装置110に対して放射線Rの照射を停止させるための照射停止信号を出力する。この際、撮影制御部133から放射線発生装置110への照射停止信号の出力から実際に放射線発生装置110において放射線Rの照射が停止するまでの遅延時間Tdの分だけ放射線Rが照射され続けるため、線量(累積到達線量)の基準値Drefに対して実際に照射された線量(累積到達線量)Dを近づけることが可能となる。
【0031】
続いて、ステップS206において、撮影制御部133は、まず、放射線撮影装置120に対して撮影制御信号を送信する。そして、放射線撮影装置120は、撮影制御部133から受信した撮影制御信号に基づいて、センサ部における撮像素子を制御し、撮影制御信号の受信から所定時間の経過後に線量情報への変換を停止し、生成した放射線画像データを画像処理部134に送信する。
【0032】
続いて、ステップS207において、画像処理部134は、放射線撮影装置120から受信した放射線画像データに対して、階調処理やノイズ低減処理といった画像処理を行う。その後、画像処理部134は、画像処理後の放射線画像データを表示部135に送信する。
【0033】
続いて、ステップS208において、表示部135は、画像処理部134から受信した放射線画像データに基づく放射線画像をモニタ等に出力して表示し、操作者に放射線画像を提示する。
【0034】
そして、ステップS208の処理が終了すると、図2に示す被写体Pの放射線撮影に係るフローチャートの処理を終了する。
【0035】
次に、図3を用いて、図2のステップS202における線量(累積到達線量)の閾値Dth及びその閾値Dthの時間変化の設定処理について説明する。なお、線量(累積到達線量)の閾値Dthの時間変化を設定する際には、ステップS204において肯定判断(S204/YES)がなされた場合に、ステップS202の処理内容も行うことになる。
【0036】
図3は、本発明の実施形態を示し、撮影制御部133において設定された線量(累積到達線量)の閾値Dth及びその閾値Dthの時間変化と線量(累積到達線量)Dとの関係の一例を示す図である。この図3では、縦軸に示された線量(累積到達線量)Dと、横軸に示された時間(経過時間)との関係が示されている。
【0037】
図3に示すように、撮影制御部133は、放射線Rの照射開始からの経過時間に応じて線量(累積到達線量)の閾値Dthを変化させる制御を行っている。具体的に、図3では、撮影制御部133は、経過時間とともに線量(累積到達線量)の閾値Dthを増加させる制御を行っている。
【0038】
そして、撮影制御部133は、演算部132から得られた線量(累積到達線量)Dが、この図3に示す経過時間とともに変化する線量(累積到達線量)の閾値Dth以上となった場合に(S204/NO)、図2のステップS205において、放射線発生装置110に対して照射停止信号を出力する。この際、撮影制御部133から放射線発生装置110への照射停止信号の出力から実際に放射線発生装置110において放射線Rの照射が停止するまでの遅延時間Tdの分だけ放射線Rが照射され続ける。
【0039】
図3に示す例では、放射線撮影装置120に入射する放射線Rの線量率が高い線量率301の場合には、照射時間Thighで、演算部132から得られた線量(累積到達線量)Dが、線量(累積到達線量)の閾値Dth以上となる。その結果、照射時間Thighの時点で、撮影制御部133は、放射線発生装置110に対して照射停止信号を出力し、その後、放射線発生装置110において放射線Rの照射が停止する。そして、この場合、線量(累積到達線量)Dhighの放射線Rが放射線撮影装置120に到達することになる。
【0040】
同様に、放射線撮影装置120に入射する放射線Rの線量率が低い線量率302の場合には、照射時間Tlowで、演算部132から得られた線量(累積到達線量)Dが、線量(累積到達線量)の閾値Dth以上となる。その結果、照射時間Tlowの時点で、撮影制御部133は、放射線発生装置110に対して照射停止信号を出力し、その後、放射線発生装置110において放射線Rの照射が停止する。そして、この場合、線量(累積到達線量)Dlowの放射線Rが放射線撮影装置120に到達することになる。
【0041】
ここで、この図3に示すように、放射線Rの線量率301や線量率302は、線量(累積到達線量)Dと時間との関係に基づき定まるものである。この図3において、例えば、線量(累積到達線量)の閾値Dthを一定とした場合には、線量率の変化に応じて実際の線量(累積到達線量)Dが変化し、線量(累積到達線量)の基準値Drefから離れた値となってしまう。これに対して、本実施形態では、図3に示すように、放射線Rの照射開始からの経過時間に応じて線量(累積到達線量)の閾値Dthを変化させる(具体的には、経過時間とともに線量(累積到達線量)の閾値Dthを増加させる)制御を行っているため、高い線量率301の場合の線量(累積到達線量)Dhigh及び低い線量率302の場合の線量(累積到達線量)Dlowのどちらも、線量(累積到達線量)の基準値Drefの近くの値とすることができる。これにより、線量率の大小にかかわらずに、放射線Rの照射停止制御を高精度で行うことができる。
【0042】
本実施形態においては、図3に示すように、線量(累積到達線量)の閾値Dthの時間変化を、経過時間に対して階段的に変化する階段関数で表されるようにすることができる。この際、線量(累積到達線量)の閾値Dthに係る階段関数の時間区分T1~T4の長さは、図3に示すように、時間区分ごとに異なっていてもよい。この場合、図3に示すように、階段関数の時間区分T1~T4の長さを、経過時間とともに徐々に長くすると(T1よりもT2を長くする,T2よりもT3を長くする,T3よりもT4を長くする)、時間区分の数を減らすことができる。即ち、この場合、撮影制御部133は、線量(累積到達線量)の閾値Dthの時間当たりの増加量を経過時間とともに減少させることになる。そして、このように、時間区分の数を減らすことができると、使用するメモリが少なくなり、線量(累積到達線量)の閾値Dthを変化させることによる制御装置130への負荷を軽減させることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、線量(累積到達線量)の閾値Dthの時間変化は、経過時間に対して連続的に変化させてもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、経過時間tに対する線量(累積到達線量)の閾値Dthは、経過時間t、遅延時間Td、及び、線量(累積到達線量)の基準値Drefを用いて、以下の(1)式を満たすものとして設定することができる。
【数1】
【0045】
即ち、(1)式に示すように、撮影制御部133は、経過時間tに応じて線量(累積到達線量)の閾値Dthを変化させ、かつ、線量(累積到達線量)の基準値Drefと遅延時間Tdとに基づいて、線量(累積到達線量)の閾値Dthの時間変化を設定する。
【0046】
なお、線量(累積到達線量)の閾値Dthとして階段関数を用いる場合には、(1)式と階段の各段がそれぞれ交わるような関数を設定することが望ましい。
【0047】
以上説明したように、撮影制御部133は、経過時間tに応じて線量(累積到達線量)の閾値Dthを変化させ、かつ、線量(累積到達線量)の基準値Drefと遅延時間Tdとに基づいて、線量(累積到達線量)の閾値Dthの時間変化を設定している。
かかる構成によれば、放射線発生装置110からの放射線の照射停止制御を高精度で行うことができる。即ち、AECを高精度で行うことができる。
【0048】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明に含まれる。
【0049】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、当業者の通常の知識に基づいて、上述した本発明の実施形態に対して適宜変更や改良等が加えられたものについても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100:放射線撮影システム、110:放射線発生装置、111:放射線管球、112:コリメータ、120:放射線撮影装置、130:制御装置、131:撮影条件設定部、132:演算部、133:撮影制御部、134:画像処理部、135:表示部、P:被写体、R:放射線
図1
図2
図3