(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド切削液自動補給装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20241008BHJP
C10M 173/00 20060101ALI20241008BHJP
C10N 40/22 20060101ALN20241008BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
C10M173/00
C10N40:22
C10N30:00 Z
(21)【出願番号】P 2020143232
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】520328224
【氏名又は名称】株式会社ティーシーイーエム
(73)【特許権者】
【識別番号】512085865
【氏名又は名称】合同会社U.ENG
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【氏名又は名称】小川 眞一
(72)【発明者】
【氏名】内山 忠男
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-167594(JP,A)
【文献】特開平09-085577(JP,A)
【文献】特開平07-001334(JP,A)
【文献】国際公開第2013/058004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10
B24B 55/03、55/12
C10M 173/00
C10N 40/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水を供給され、供給された水道水からアルカリイオン水を生成するアルカリイオン水生成器と、
生成されたアルカリイオン水が貯留されるアルカリイオン水タンクと、
添加オイルが貯留されるオイルタンクと、
水道水と前記アルカリイオン水タンク内のアルカリイオン水と前記オイルタンク内の添加オイルとが供給され、補給用の切削液が生成されて貯留される補給タンクと、
前記補給タンク内の切削液を送り出す補給ポンプと、
前記補給タンクから送り出された切削液が供給され、供給された切削液が切削マシンに供給される切削マシン側タンクと、
前記切削マシン側タンク内の切削液のPH値を測定する切削マシン側タンクPH値センサと、
水道水を前記補給タンク内に導くように開弁される水道水自動弁と、
前記アルカリイオン水タンク内のアルカリイオン水を前記補給タンク内に導くように駆動されるアルカリイオン水ポンプと、
前記オイルタンク内の添加オイルを前記補給タンク内に導くように駆動されるオイルポンプ
と、を有し、
前記補給タンク内の切削液面が設定値まで低下した場合には、前記水道水自動弁を開弁させて水道水を前記補給タンク内に設定量供給し、
前記アルカリイオン水ポンプを駆動させてアルカリイオン水を前記補給タンク内に設定量供給し、前記オイルポンプを駆動させて添加オイルを前記補給タンク内に設定量供給することにより前記補給タンク内で予め設定されたPH値の切削液を生成し、
前記切削マシン側タンク内の切削液のPH値が設定値以下に低下した場合には、前記アルカリイオン水ポンプを駆動させてアルカリイオン水を前記補給タンク内に一定量供給することにより前記補給タンク内の切削液のPH値を高くし、PH値の高くなった切削液を前記補給ポンプを駆動させて全て自動で前記切削マシン側タンクに送り出すとともに、前記補給タンクには前記補給タンク内の切削液を攪拌するための手段を設けたことを特徴とするハイブリッド切削液自動補給装置。
【請求項2】
前記切削マシン側タンク内の切削液の液面が設定値まで低下したことを検出する切削マシン側タンク液面センサと、前記補給タンクと前記切削マシン側タンクとを接続する補給配管内の圧力を検出する圧力センサと、前記補給配管を開閉する補給配管自動弁と、前記補給配管の末端に設けられて前記切削マシン側タンク液面センサの検出結果に基づいて開弁する切削マシン側タンク自動弁とを有し、この切削マシン側タンク自動弁の開弁に伴って前記圧力センサが圧力低下を検出することにより、前記補給配管自動弁を開弁し、前記補給ポンプを駆動させることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド切削液自動補給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削マシンで使用する切削液をアルカリイオン水を用いて生成し、その切削液のPH値を所定の設定値に維持するようにしたハイブリッド切削液自動補給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削マシンで使用される切削液は、大別すると水溶性切削液と不水溶性切削液とに分けられる。水溶性切削液は冷却性能が高い点で優れているが、切削液の主成分として水を使用しているため、細菌やバクテリアが発生・増殖しやすいという問題がある。切削液中に細菌やバクテリアが発生・増殖すると、切削液が腐敗して悪臭を発生するという問題や、切削刃物に対する切削性能が低下して切削刃物の寿命が短くなるという問題が生じる。
【0003】
切削液中での細菌やバクテリアの発生・増殖を抑制する方法としては、下記特許文献1に記載されているように、水に代えてアルカリイオン水を用いることが有効であると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切削マシンにおいて使用する切削液をアルカリイオン水を用いて生成した場合、切削加工時間の経過とともに切削液が消費され、また、PH値が低下する。その場合には、切削マシンに対して所定のPH値を有する切削液を補給する必要があるが、所定のPH値の切削液を人手で設定することは手間がかかって煩雑である。さらに、切削液のPH値が低下した場合に、低下したPH値を設定値に戻す必要があり、切削液のPH値を所定のPH値に戻すことは手間がかかって容易ではない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、切削マシンで使用する切削液としてアルカリイオン水を用いた所定のPH値の切削液を使用する場合、切削液が減少したときには所定のPH値の切削液を自動的に生成することができ、また、使用中に切削液のPH値が低下したときにはそのPH値を自動的に設定値に戻すことができるハイブリッド切削液自動補給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハイブリッド切削液自動補給装置では、水道水を供給され、供給された水道水からアルカリイオン水を生成するアルカリイオン水生成器と、生成されたアルカリイオン水が貯留されるアルカリイオン水タンクと、添加オイルが貯留されるオイルタンクと、水道水と前記アルカリイオン水タンク内のアルカリイオン水と前記オイルタンク内の添加オイルとが供給され、補給用の切削液が生成されて貯留される補給タンクと、前記補給タンク内の切削液を送り出す補給ポンプと、前記補給タンクから送り出された切削液が貯留され、貯留された切削液が切削マシンに供給される切削マシン側タンクと、前記切削マシン側タンク内の切削液のPH値を測定するPH値センサと、水道水を前記補給タンク内に導くように開弁される水道水自動弁と、前記アルカリイオン水タンク内のアルカリイオン水を前記補給タンク内に導くように駆動されるアルカリイオン水ポンプと、前記オイルタンク内の添加オイルを前記補給タンク内に導くように駆動されるオイルポンプと、を有する。
そして、前記補給タンク内の切削液面が所定値まで低下した場合には、前記水道水自動弁を開弁させて水道水を前記補給タンク内に設定量供給し、前記アルカリイオン水ポンプを駆動させてアルカリイオン水を前記補給タンク内に設定量供給し、前記オイルポンプを駆動させて添加オイルを前記補給タンク内に設定量供給することにより、前記補給タンク内で予め設定されたPH値の切削液を生成する。
また、前記切削マシン側タンク内の切削液のPH値が所定値以下に低下した場合には、前記アルカリイオン水ポンプを駆動させてアルカリイオン水を前記補給タンク内に一定量供給することにより前記補給タンク内の切削液のPH値を高くし、PH値の高くなった切削液を前記補給ポンプを駆動させて前記切削マシン側タンクに送り出す。
【0008】
また、前述のハイブリッド切削液自動補給装置において、前記補給タンクには、前記補給タンク内の切削液を撹拌する手段を設けることが必要である。
【0009】
そして、前述のハイブリッド切削液自動補給装置においては、更に、前記切削マシン側タンク内の切削液の量が所定値まで減少したことを検出する切削マシン側タンク液面センサと、前記補給タンクと前記切削マシン側タンクとを接続する補給配管内の圧力を検出する圧力センサと、前記補給配管を開閉する補給配管自動弁と、前記補給配管の末端に設けられて前記切削マシン側タンク液面センサの検出結果に基づいて開弁する切削マシン側タンク自動弁とを備え、またこの切削マシン側タンク自動弁の開弁に伴って、前記圧力センサが圧力低下を検出することにより、前記補給配管自動弁を開弁し、前記補給ポンプを自動駆動させる手段を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るハイブリッド切削液自動補給装置では、補給タンク内の切削液が設定量まで減少した場合には、水道水自動弁が開弁されて水道水が補給タンク内にフロースイッチにより設定量供給され、また、アルカリイオン水ポンプが駆動されてアルカリイオン水が補給タンク内にフロースイッチにより設定量供給される。そして、オイルポンプが駆動されて添加オイルが補給タンク内にフロースイッチにより設定量供給され、補給タンク内で予め設定されたPH値の切削液が生成される。生成された切削液は、切削マシン側タンクに供給され、切削マシンに切削液マシン供給ポンプにより供給される。このため、アルカリイオン水を用いた切削液の補給を、人手に頼らず自動で確実に行える。また、切削マシン側タンク内の切削液のPH値が所定値以下に低下した場合には、アルカリイオン水ポンプを駆動させてアルカリイオン水を補給タンク内に一定量供給することにより補給タンク内の切削液のPH値を高くし、PH値の高くなった切削液を補給ポンプを駆動させて切削マシン側タンクに送り出すことにより、切削マシン側タンク内の切削液のPH値を上昇させる。この動作は切削マシン側タンクPH値センサの上限設定値に達する迄自動的に行われる。こうして、切削加工の時間経過とともに切削液のPH値が低下した場合であっても、切削マシンで使用される切削液のPH値を常時所定値に維持することができる。
【0011】
また、補給タンクには、補給タンク内の切削液を撹拌する手段が設けられているので、補給タンク内の切削液のPH値を均一に調整することができる。
【0012】
また、切削マシン側タンク内の切削液の量が所定値まで減少した場合には、切削液が減少したことを検出した切削マシン側タンク液面センサの検知結果に基づいて切削マシン側タンクに設けられている切削マシン側タンク自動弁が開弁し、この開弁に伴って圧力センサが圧力低下を検出することにより、補給配管自動弁が開弁し、補給ポンプが駆動されるので、切削マシン側タンク内の切削液が減少した場合の切削マシン側タンク内への切削液の補給を、電気的なインターロックなしに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】切削液自動補給装置を示すブロック図である。
【
図2】切削液が減少した場合に所定のPH値の切削液を生成する行程を示すフローチャートである。
【
図3】切削マシン側タンク内の切削液のPH値が低下した場合に、低下した切削液のPH値を所定値に戻す行程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、切削マシン1に切削液を供給するハイブリッド切削液自動補給装置を示すブロック図である。この切削マシン1では、PH値を所定値である10.0~11.0とした切削液が使用されており、切削液自動補給装置は、アルカリイオン水を用いて所定のPH値の切削液を生成し、生成した切削液を切削マシン1に供給している。
【0015】
ハイブリッド切削液自動補給装置は、アルカリイオン水生成器2と、アルカリイオン水タンク3と、オイルタンク4と、補給タンク5と、切削マシン側タンク6とを有している。
【0016】
アルカリイオン水生成器2は、水道水蛇口7と水道水配管7aを介して接続されている。水道水配管7aの途中に手動弁8が設けられており、この手動弁8を開弁することにより水道水が水道水配管7aを通ってアルカリイオン水生成器2内に流入する。アルカリイオン水生成器2内には、水道水を電気分解することによりアルカリイオン水を生成する装置(図示せず)が設けられている。
【0017】
アルカリイオン水タンク3は、アルカリイオン水生成器2と配管9を介して接続されている。このアルカリイオン水タンク3には、アルカリイオン水生成器2で生成されたアルカリイオン水が貯留される。アルカリイオン水タンク3内には、アルカリイオン水タンク3内に貯留されているアルカリイオン水の量を測定するセンサとして、上限警報センサ10と、下限警報センサ11と、下限予報センサ12とが設けられている。アルカリイオン水タンク3のアルカリイオン水の量が下限予報センサ12の位置まで減少した場合には、警告ライト(図示せず)が点灯され、作業者に対してアルカリイオン水生成器2を運転してアルカリイオン水を生成する旨の指示が行われる。アルカリイオン水タンク3内のアルカリイオン水の量が上限警報センサ10や下限警報センサ11により検知された場合には、アルカリイオン水の量が異常状態であるとして警報が発報される。
【0018】
アルカリイオン水タンク3と補給タンク5とは、配管13により接続されている。配管13の途中には、アルカリイオン水ポンプ14とアルカリイオン水積算フローセンサ15とが設けられている。アルカリイオン水ポンプ14は、駆動されることによりアルカリイオン水タンク3内のアルカリイオン水を補給タンク5内に供給する。アルカリイオン水積算フローセンサ15は、補給タンク5内に供給されるアルカリイオン水の量を積算する。
【0019】
オイルタンク4内には、切削液を構成する要素の一つである添加オイルが貯留されている。オイルタンク4と補給タンク5とは、配管16により接続されている。配管16の途中には、オイルポンプ17とオイル積算フローセンサ18とが設けられている。オイルポンプ17は、駆動されることによりオイルタンク4内の添加オイルを補給タンク5内に供給する。オイル積算フローセンサ18は、補給タンク5内に供給される添加オイルの量を積算する。また、オイルタンク4内には、オイルタンク4内の添加オイルの量が所定値まで減少したことを検知する下限警報センサ19が設けられている。オイルタンク4内の添加オイルが下限警報センサ19により検知される位置まで減少した場合には、警告ライト(図示せず)が点灯され、作業者に対してオイルタンク4内に添加オイルを補給する旨の指示が行われる。
【0020】
補給タンク5は、アルカリイオン水を用いた切削液を生成するところであり、この補給タンク5への入口側配管として、アルカリイオン水が供給される配管13と、添加オイルが供給される配管16と、水道水蛇口7に接続されて水道水が供給される水道水配管7bとが接続されている。そして、アルカリイオン水と添加オイルと水道水とが補給タンク5内で混合されることにより、切削液が生成される。生成される切削液は、水道水とアルカリイオン水との比率を調整することにより、PH値が設定値(10.0~11.0)とされている。
【0021】
水道水配管7bの途中には、水道水の供給を断続する水道水自動弁20と水道水積算フローセンサ21とが設けられている。水道水自動弁20は、開弁されることにより補給タンク5内へ水道水が供給され、閉弁されることにより供給が停止される。水道水積算フローセンサ21は、補給タンク5内に供給された水道水の量を積算し、この水道水積算フローセンサ21から出力される信号により水道水自動弁20が開閉される。
【0022】
補給タンク5内には、補給タンク5内に貯留されている切削液の量を測定するセンサとして、上限警報センサ22と、下限警報センサ23と、下限予報センサ24とが設けられている。補給タンク5内の切削液の量が下限予報センサ24の位置まで減少した場合には、水道水とアルカリイオン水と添加オイルとが供給され、切削液の生成が開始される。補給タンク5内の切削液の量が上限警報センサ22や下限警報センサ23により検知された場合には、切削液の量が異常状態であるとして警報が発報される。
【0023】
補給タンク5の底部と切削マシン側タンク6との間には補給配管25a、25bが接続されている。これらの補給配管25a、25bの途中には、補給ポンプ26と、補給配管自動弁27と、圧力センサ28と、切削マシン側タンク自動弁29とが設けられている。補給ポンプ26は、駆動されることにより補給タンク5内の切削液を切削マシン側タンク6内に供給する。圧力センサ28は、補給配管25b内の圧力を検知する。補給配管自動弁27は、圧力センサ28の検知結果に応じて開閉され、圧力センサ28が上限値を検出している場合に閉弁され、圧力センサ28の検出値が下限値に低下した場合に開弁される。
【0024】
補給配管25aにおける補給ポンプ26と補給配管自動弁27との間の部分には、撹拌配管30の一端が接続されている。撹拌配管30の他端は、補給タンク5の中間部に接続されている。撹拌配管30の途中には、撹拌用自動弁31が設けられている。
【0025】
切削マシン側タンク6には、切削マシン側タンク液面センサ32と、最低1ケ所に切削マシン側タンクPH値センサ33とが設けられており、各切削マシン側タンク6には切削液マシン供給ポンプ34と、切屑処理部35とが設けられている。切削マシン側タンク液面センサ32は切削マシン側タンク6内の切削液の水位を検知し、その水位が設定値以下となった場合には切削マシン側タンク自動弁29を開弁させる。切削マシン側タンクPH値センサ33は、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値を測定し、測定したPH値が設定値以下となった場合に検知信号を出力する。切削液マシン供給ポンプ34は、切削マシン側タンク6内の切削液を切削マシン1の切削加工部に向けて吐出供給する。切屑処理部35は、切削マシン1において使用された切削液が切削マシン側タンク6内に戻されるところであり、戻された切削液に含まれている切屑が除去される。
【0026】
切削マシン1及び切削マシン側タンク6が複数台並べて設置されている場合、各切削マシン側タンク6を数台~10台程度1ブロックとし連通配管36で接続することが望ましい。これにより、各切削マシン側タンク6の切削液の液面が一定に維持される。
【0027】
このハイブリッド切削液自動補給装置には、補給タンク5内の切削液が減少した場合に所定のPH値の切削液を生成する手段と、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値が低下した場合にその切削液のPH値を所定値に戻す手段とを備えている。これらの手段は、CPUやROM、RAMを備えた制御部(図示せず)と、この制御部に接続されたセンサや自動弁やポンプ等により構成されている。例えば、補給タンク5内の切削液が減少した場合に所定のPH値の切削液を生成する手段は、制御部、補給タンク5内の下限予報センサ24、水道水自動弁20、水道水積算フローセンサ21、アルカリイオン水ポンプ14、アルカリイオン水積算フローセンサ15、オイルポンプ17、オイル積算フローセンサ18、補給ポンプ26、撹拌用自動弁31等により構成されている。また、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値が低下した場合にその切削液のPH値を所定の設定値に戻す手段は、制御部、切削マシン側タンクPH値センサ33、アルカリイオン水ポンプ14、アルカリイオン水積算フローセンサ15、補給ポンプ26、 撹拌用自動弁31、切削マシン側タンク液面センサ32、切削マシン側タンク自動弁29、補給配管自動弁27、圧力センサ28等により構成されている。
【0028】
このような構成において、このハイブリッド切削液自動補給装置を備えた切削マシン1では、補給タンク5内と切削マシン側タンク6内とに設定したPH値の切削液が貯留された状態で切削作業が開始される。
【0029】
切削マシン1が運転されると、切削マシン側タンク6内の切削液が切削マシン1の切削刃の部分に供給される。供給された切削液は、飛散したり、加工部に付着したりし、切削マシン側タンク6内の切削液が次第に減少する。そして、切削マシン側タンク6内の切削液面が設定値以下に低下すると、設定値以下に低下したことが切削マシン側タンク液面センサ32により検知される。
【0030】
切削マシン側タンク液面センサ32が、切削マシン側タンク6内の切削液面が設定値以下に低下したことを検知すると、その検知結果に基づいて切削マシン側タンク自動弁29が開弁される。切削マシン側タンク自動弁29が開弁されると、補給配管25b内の圧力が低下し、その圧力低下が圧力センサ28により検知される。圧力センサ28が圧力低下を検知すると、補給配管自動弁27が開弁され、ついで、補給ポンプ26が駆動される。これにより、補給タンク5内の切削液が補給配管25b内を通って切削マシン側タンク6内に供給される。
【0031】
切削マシン側タンク6内の切削液面が設定値まで上昇すると、切削液面が設定値まで上昇したことが切削マシン側タンク液面センサ32により検知される。この検知結果に基づき、切削マシン側タンク自動弁29が閉弁され、その閉弁により補給配管25bの圧力が上昇し、その圧力上昇が圧力センサ28により検知される。そして、この検知結果に基づいて補給配管自動弁27が閉弁されるとともに補給ポンプ26が停止され、補給タンク5内から切削マシン側タンク6内への切削液の供給が停止される。以上のようにして、補給タンク5内から切削マシン側タンク6内への切削液の供給が繰り返される。
【0032】
つぎに、補給タンク5内の切削液面が設定値まで低下した場合には、補給タンク5内で設定した値のPH値の切削液を生成する手段が実行される。この切削液の生成手段について、
図2に基づいて説明する。この切削液の生成手段は、まず、補給タンク5内の下限予報センサ24からの検知信号が制御部に入力されることにより開始される(ステップS1)。
【0033】
下限予報センサ24からの検出信号が制御部に入力されると(ステップS1のYES)、所定値の水道水が補給タンク5内に供給され(ステップS2)、所定値のアルカリイオン水が補給タンク5内に供給され(ステップS3)、所定値の添加オイルが補給タンク5内に供給され(ステップS4)、撹拌が行われる(ステップS5)。なお、ステップS2~S3の行程は、略同じタイミングで開始される。ステップ4の行程はステップ3の行程が完了後スタートする。
【0034】
ステップS2の所定量の水道水の供給に関しては、まず、水道水自動弁20が開弁されることにより、補給タンク5内への水道水の供給が開始される。供給された水道水の量は水道水積算フローセンサ21により積算され、積算量が所定値に達した場合に水道水自動弁20が閉弁され、水道水の供給が停止される。
【0035】
ステップS3の所定量のアルカリイオン水の供給に関しては、まず、アルカリイオン水ポンプ14が駆動されることにより、アルカリイオン水タンク3内から補給タンク5内へのアルカリイオン水の供給が開始される。供給されたアルカリイオン水の量はアルカリイオン水積算フローセンサ15により積算され、積算値が所定値に達した場合にアルカリイオン水ポンプ14の駆動が停止され、アルカリイオン水の供給が停止される。
【0036】
ステップ4の所定量の添加オイルの供給に関しては、まず、オイルポンプ17が駆動されることにより、オイルタンク4内から補給タンク5内への添加オイルの供給が開始される。供給された添加オイルの量はオイル積算フローセンサ18により積算され、積算値が所定値に達した場合にオイルポンプ17の駆動が停止され、添加オイルの供給が停止される。
【0037】
ステップS5の撹拌では、撹拌用自動弁31が開弁され、補給ポンプ26が駆動される。これにより、補給タンク5内の切削液が補給ポンプ26により吸い出され、吸い出された切削液は撹拌配管30内を通って補給タンク5内に循環される。なお、補給ポンプ26の駆動は、予め設定されている撹拌時間の経過により終了する。撹拌時間終了後、補給配管自動弁27が開弁され、補給ポンプ26により吸い出された切削液の切削マシン側タンク6側への供給が開始される。
【0038】
以上のステップS2~ステップS4により、所定量の水道水と所定量のアルカリイオン水と所定量の添加オイルとから、設定した値のPH値の切削液が補給タンク5内で自動的に生成される。このとき、ステップS5の撹拌が行われることにより、補給タンク5内で生成された切削液のPH値は、部分的な偏りがなく均一な状態とされる。
【0039】
つぎに、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値が設定値以下に低下した場合には、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値を設定値に戻す手段が行われる。この低下した切削液のPH値を設定値に戻す手段について、
図3に基づいて説明する。この手段は、まず、切削マシン側タンク6内の切削マシン側タンクPH値センサ33からのPH値が所定の設定値以下に低下したことが切削マシン側タンクPH値センサ33により検知され、その検知信号が制御部に入力されることにより開始される(ステップS11)。
【0040】
切削マシン側タンクPH値センサ33からのPH値が設定値以下に低下した旨の信号が制御部に入力されると(ステップS11のYES)、補給タンク5内で高PH値の切削液が作成され(ステップS12)、作成された高PH値の切削液が切削マシン側タンク6内に供給され(ステップS13)、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値が上昇する。この動作は切削マシン側タンクPH値センサ33が上限を検知する迄繰り返される。
【0041】
ステップS12の高PH値の切削液を生成する場合には、まず、アルカリイオン水ポンプ14が駆動され、アルカリイオン水が一定量、補給タンク5内に供給されることにより補給タンク5内の切削液のPH値が高くなる。このとき、撹拌用自動弁31が開弁されるとともに補給ポンプ26が駆動され、補給タンク5内の切削液が撹拌配管30内を通って循環されることにより補給タンク5内で切削液が撹拌される。
【0042】
ステップS13の高PH値の切削液を切削マシン側タンク6に供給する行程は、切削マシン側タンク6内の切削液面(PH値が低くなった切削液)が所定値以下に低下したことを切削マシン側タンク液面センサ32が検知することにより開始される。切削マシン側タンク6内の切削液面が所定値以下に低下したことを切削マシン側タンク液面センサ32が検知すると、切削マシン側タンク自動弁が開弁し、そのことにより補給配管25b内の圧力が低下し、それを圧力センサが下限を検知したことで、上述した補給タンク5内から切削マシン側タンク6内へ切削液を補給する場合と同様の行程が行われる。具体的には、切削マシン側タンク自動弁29が開弁され、補給配管25内の圧力低下が圧力センサ28により検知され、補給配管自動弁27が開弁され、補給ポンプ26が駆動される。これにより、補給タンク5内の高PH値の切削液が補給配管25内を通って切削マシン側タンク6内に補給され、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値が上昇する。そして、切削マシン側タンク6内の切削液のPH値が所定値まで上昇したことが切削マシン側タンクPH値センサ33により検知されると、切削マシン側タンク6内への高PH値の切削液の補給が停止される。なお、切削マシン側タンク6内への高PH値の切削液の補給が停止された後、所定量の水道水が補給タンク5内に供給され、補給タンク5内の切削液のPH値が元の所定のPH値に戻される。
【符号の説明】
【0043】
1 切削マシン
2 アルカリイオン水生成器
3 アルカリイオン水タンク
4 オイルタンク
5 補給タンク
6 切削マシン側タンク
7a 水道水配管
7b 水道水配管
8 手動弁
9 配管
10 上限警報センサ
11 下限警報センサ
12 下限予報センサ
13 配管
14 アルカリイオン水ポンプ
15 アルカリイオン水積算フローセンサ
16 配管
17 オイルポンプ
18 オイル積算フローセンサ
19 下限警報センサ
20 水道水自動弁
21 水道水積算フローセンサ
22 上限警報センサ
23 下限警報センサ
24 下限予報センサ
25a 補給配管
25b 補給配管
26 補給ポンプ
27 補給配管自動弁
28 圧力センサ
29 切削マシン側タンク自動弁
30 撹拌配管
31 撹拌用自動弁
32 切削マシン側タンク液面センサ
33 切削マシン側タンクPH値センサ
34 切削液マシン供給ポンプ
35 切屑処理部
36 連通配管