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特許7567104負極活物質、その作製方法、二次電池、二次電池を含む電池モジュール、電池パック及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】負極活物質、その作製方法、二次電池、二次電池を含む電池モジュール、電池パック及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20241008BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241008BHJP
   C01B 32/205 20170101ALI20241008BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
C01B32/205
C01B32/21
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2022545851
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 CN2020121268
(87)【国際公開番号】W WO2022077374
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】曽▲ウィ▼群
(72)【発明者】
【氏名】▲トン▼柏▲ダ▼
(72)【発明者】
【氏名】康蒙
(72)【発明者】
【氏名】李二嶺
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109841831(CN,A)
【文献】国際公開第2017/057123(WO,A1)
【文献】特開2018-088404(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124425(WO,A1)
【文献】特開2018-006270(JP,A)
【文献】特表2019-528559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
C01B 32/205
C01B 32/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造黒鉛を含むコアと、前記コアの表面の少なくとも一部を被覆する、非晶質炭素を含む被覆層とを有し、体積粒径分布Dv99≦24μmであり、かつ平均体積粒径Dv50が8μm≦Dv50≦15μmを満たす負極活物質であって、Dv99は前記負極活物質の累積体積分布百分率が99%に達する時に対応する粒径であり、Dv50は前記負極活物質の累積体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、前記負極活物質の粒度比表面積は、0.4m2/g~0.75m2/gである、負極活物質。
【請求項2】
前記体積粒径分布Dv99は、17μm≦Dv99≦24μmを満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記体積粒径分布Dv99は、18μm≦Dv99≦21μmを満たす、請求項2に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記平均体積粒径Dv50は、9μm≦Dv50≦13μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記平均体積粒径Dv50は、11μm≦Dv50≦13μmである、請求項4に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記負極活物質の粒度均一性Uniformityは、0.25~0.45である、請求項1~5のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記負極活物質の粒度均一性Uniformityは、0.32~0.38である、請求項6に記載の負極活物質。
【請求項8】
前記負極活物質の粒度比表面積は、0.5m2/g~0.65m2/gである、請求項1~7のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項9】
前記負極活物質は、二次粒子を含み、且つ前記負極活物質における前記二次粒子の個数比率≧50%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項10】
前記負極活物質における前記二次粒子の個数比率は、70%~95%である、請求項9に記載の負極活物質。
【請求項11】
前記負極活物質は、0.6≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.8を満たし、Dv90は前記負極活物質の累積体積分布百分率が90%に達する時に対応する粒径であり、Dv10は前記負極活物質の累積体積分布百分率が10%に達する時に対応する粒径である、請求項1~10のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項12】
前記負極活物質は、0.8≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.4を満たす、請求項11に記載の負極活物質。
【請求項13】
前記負極活物質の体積粒径分布Dv90は、13μm~18μmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項14】
前記負極活物質の体積粒径分布Dv90は、14μm~17μmである、請求項13に記載の負極活物質。
【請求項15】
前記負極活物質の体積粒径分布Dv10は、5μm~10μmである、請求項1~14のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項16】
前記負極活物質の体積粒径分布Dv10は、6μm~8μmである、請求項15に記載の負極活物質。
【請求項17】
前記負極活物質は、さらに、
(1)前記負極活物質の黒鉛化度は、91.0%~96.0%であることと、
(2)前記負極活物質のグラム容量は、345mAh/g~360mAh/gであることと、
(3)前記負極活物質のタップ密度は、0.9g/cm3~1.3g/cm3であることと、
(4)前記負極活物質の2kN圧における粉体圧密密度は、1.55g/cm3~1.67g/cm3であることとのうちの1種又は複数種を満たす、請求項1~16のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項18】
前記負極活物質は、さらに、
(1)前記負極活物質の黒鉛化度は、94.0%~95.0%であることと、
(2)前記負極活物質のグラム容量は、350mAh/g~358mAh/gであることと、
(3)前記負極活物質のタップ密度は、1.0g/cm3~1.1g/cm3であることと、
(4)前記負極活物質の2kN圧における粉体圧密密度は、1.60g/cm3~1.65g/cm3であることとのうちの1種又は複数種を満たす、請求項17に記載の負極活物質。
【請求項19】
人造黒鉛を含むコアを提供するステップA)と、
前記コアを被覆し、前記コアの表面の少なくとも一部に、非晶質炭素を含む被覆層を形成し、Dv99≦24μm且つ8μm≦Dv50≦15μmを満たす負極活物質を得るステップB)と、を含む負極活物質の作製方法であって、Dv99は前記負極活物質の累積体積分布百分率が99%に達する時に対応する粒径であり、Dv50は前記負極活物質の累積体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、前記負極活物質の粒度比表面積は、0.4m2/g~0.75m2/gである、負極活物質の作製方法。
【請求項20】
前記ステップA)において、前記人造黒鉛の作製は、
コークス原料を提供するステップa)と、
前記コークス原料に対して整形処理を行い、前駆体を得るステップb)と、
前記前駆体を造粒し、造粒物を得るステップc)と、
前記造粒物に対して黒鉛化処理を行い、体積平均粒径Dv50が6μm~14μmでありかつ体積粒径分布Dv99が17μm~26μmである人造黒鉛を得るステップd)とを含む、請求項19に記載の作製方法。
【請求項21】
前記造粒物の体積平均粒径Dv50が9μm~15μmであり、かつ体積粒径分布Dv99が17μm~24μmである、請求項20に記載の作製方法。
【請求項22】
前記前駆体の体積平均粒径Dv50が8μm~13μmであり、かつ体積粒径分布Dv99が16μm~22μmである、請求項20又は21に記載の作製方法。
【請求項23】
前記コークス原料の体積平均粒径Dv50が7μm~12μmであり、かつ体積粒径分布Dv99が15μm~21μmである、請求項20~22のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項24】
前記前駆体の粒度均一性UniformityをU1とし、且つ0.2≦U1≦0.55を満たし、又は、
前記人造黒鉛の粒度均一性UniformityをU2とし、且つ0.22≦U2≦0.48を満たす、請求項20~23のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項25】
0.3≦U1≦0.45であるか、又は、0.3≦U2≦0.4である、請求項24に記載の作製方法。
【請求項26】
前記コークス原料の揮発分含有量をC1とし、前記前駆体の粒度均一性UniformityをU1とし、且つ前記ステップc)の造粒過程において接着剤を添加し、前記接着剤の使用量をC2とし、21%≦(C1+C2)/U1×100%≦50%を満たす、請求項20~25のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項27】
31%≦(C1+C2)/U1×100%≦35%である、請求項26に記載の作製方法。
【請求項28】
前記コークス原料の揮発分含有量C1は、1%≦C1≦12%を満たす、請求項20~27のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項29】
前記コークス原料の揮発分含有量C1は、5%≦C1≦9%を満たす、請求項28に記載の作製方法。
【請求項30】
前記コークス原料は、石油系非針状コークス、石油系針状コークスのうちの1種又は複数種を含む、請求項20~29のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項31】
前記ステップB)は、
有機炭素源で前記コアを被覆し、熱処理により、前記コアの表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を形成し、前記負極活物質を得るステップe)を含む、請求項19~30のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項32】
前記ステップB)は、有機炭素源で前記コアを被覆し、熱処理により、前記コアの表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を形成し、前記負極活物質を得ることを含み、前記コークス原料の揮発分含有量をC1とし、前記ステップc)の造粒過程に接着剤を添加し、前記接着剤の使用量をC2とし、前記人造黒鉛の粒度均一性UniformityをU2とし、前記有機炭素源の使用量をC3とし、20%≦(C1+C2+C3)/U2×100%≦56%、1.2%≦C3×残炭率≦2.5%を満たす請求項20~30のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項33】
請求項1~18のいずれか一項に記載の負極活物質を含む負極板を備える二次電池。
【請求項34】
請求項33に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項35】
請求項33に記載の二次電池、または請求項34に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項36】
請求項33に記載の二次電池、請求項34に記載の電池モジュール、または請求項35に記載の電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池技術分野に属し、具体的には負極活物質、その作製方法、二次電池、二次電池を含む電池モジュール、電池パック及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は活性イオンが正極と負極との間に往復して放出することによって充電及び放電を行い、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、及び汚染がなく、記憶効果がないなどの突出した特徴を有する。そのため、二次電池はクリーンエネルギーとして、電子製品から電気自動車などの大型装置分野に普及し、環境とエネルギーの持続可能な発展戦略に適応する。
【0003】
しかしながら、従来の燃料車が速やかでかつタイムリーに給油することに対して、電気自動車は一般に小倍率で充電し、これで常に長い充電時間を必要とし、そのためユーザに航続距離への不安を与えて、電気自動車の速やかな普及を制限する。したがって、電気自動車の市場競争力を向上させるためには、良好な急速充電性能を有する二次電池を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は、二次電池の充電性能およびサイクル性能を向上させる負極活物質、その作製方法、二次電池、二次電池を含む電池モジュール、電池パックおよび装置を提供することを目的とする。
【0005】
上記発明目的を達成するために、本願の第1態様は、人造黒鉛を含むコアと、前記コアの表面の少なくとも一部を被覆する、非晶質炭素を含む被覆層とを有し、体積粒径分布D99≦24μmでありかつ平均体積粒径D50が8μm≦D50≦15μmを満たす負極活物質を提供する。D99は負極活物質の累積体積分布百分率が99%に達する時に対応する粒径であり、D50は負極活物質の累積体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径である。
【0006】
驚いたことには、負極板は本願の負極活物質を用いる場合、高い活性イオンの固相拡散性能を有することが見出された。充電末期の高リチウム吸蔵状態であっても、活性イオンは負極板において高い拡散速度を有することができ、オーム及び濃度分極を効果的に低減するので、負極板全体の充電速度及び充電深さを大幅に増加させ、電池の急速充電能力を顕著に向上させる。さらに、電池のサイクル性能も著しく向上する。
【0007】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質は17μm≦D99≦24μmを満たし、任意選択的には、18μm≦D99≦21μmである。負極活物質のD99は上記範囲内にあると、電池の急速充電能力およびサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0008】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質は、9μm≦D50≦13μmを満たし、任意選択的には、11μm≦D50≦13μmである。負極活物質のD50は適正範囲内にあると、電池の急速充電能力及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0009】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質の粒度均一性Uniformityは0.25~0.45であり、好ましくは0.32~0.38である。負極活物質の粒度均一性Uniformityは上記範囲内にあると、電池の急速充電能力をさらに向上させることができるとともに、負極板に高い圧密密度を備えさせ、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0010】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質の粒度比表面積は、0.4m/g~0.75m/gであり、好ましくは0.5m/g~0.65m/gである。負極活物質の粒度比表面積は適正範囲内にあると、電池の急速充電性能およびサイクル性能をさらに向上させることができるとともに、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0011】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質は二次粒子を含み、且つ負極活物質における二次粒子の個数比率≧50%である。任意選択的には、負極活物質における二次粒子の個数比率は、70%~95%である。負極活物質は適量の二次粒子を含むと、電池の急速充電能力、サイクル性能および保存性能をさらに向上させることができる。
【0012】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質は、0.6≦(D90-D10)/D50≦1.8を満たし、任意選択的には、0.8≦(D90-D10)/D50≦1.4である。D90は負極活物質の累積体積分布百分率が90%に達する時に対応する粒径であり、D10は負極活物質の累積体積分布百分率が10%に達する時に対応する粒径である。負極活物質の(D90-D10)/D50が適切であることは、電池の急速充電能力のさらなる改善に有利である。
【0013】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質の体積粒径分布D90は、13μm~18μmであり、任意選択的には、14μm~17μmである。負極活物質のD90は上記範囲内にあると、電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。
【0014】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質の体積粒径分布D10は、5μm~10μmであり、任意選択的には、6μm~8μmである。負極活物質のD10は上記範囲内にあると、電池のサイクル性能および保存性能の向上に有利である。
【0015】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質の黒鉛化度は91.0%~96.0%であり、好ましくは94.0%~95.0%である。負極活物質の黒鉛化度は上記範囲内にあると、電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。
【0016】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質のグラム容量は345mAh/g~360mAh/gであり、好ましくは350mAh/g~358mAh/gである。負極活物質のグラム容量が適正範囲内にあると、電池のエネルギー密度を向上させることができるとともに、電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させることができる。
【0017】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質のタップ密度は、0.9g/cm~1.3g/cmであり、好ましくは1.0g/cm~1.1g/cmである。負極活物質のタップ密度が所与の範囲内にあると、電池の急速充電能力を向上させることができるとともに、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0018】
本願のいずれかの実施形態において、負極活物質の2kN圧における粉体圧密密度は1.55g/cm~1.67g/cmであり、好ましくは1.60g/cm~1.65g/cmである。負極活物質は2kN圧における粉体圧密密度が所与の範囲内にあると、負極膜層における粒子同士を密着させることができ、また良好な電解液濡れトンネルを形成し、電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させることができる。
【0019】
本出願の第2態様は、
人造黒鉛を含むコアを提供するステップA)と、
前記コアの表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層が形成されるように前記コアを被覆してD99≦24μm且つ8μm≦D50≦15μmを満たす負極活物質を得るステップB)とを含む負極活物質の作製方法を提供する。
【0020】
本願のいずれかの実施形態において、ステップA)に記載の人造黒鉛の作製は、
コークス原料を提供するステップa)と、
前記コークス原料に対して整形処理を行い、前駆体を得るステップb)と、
前記前駆体を造粒し、造粒物を得るステップc)と、
前記造粒物に対して黒鉛化処理を行い、体積平均粒径D50が6μm~14μmであり且つ体積粒径分布D99が17μm~26μmである人造黒鉛を得るステップd)とを含む。
【0021】
本願のいずれかの実施形態において、前記造粒物の体積平均粒径D50は9μm~15μmであり、かつ体積粒径分布D99は17μm~24μmである。
【0022】
本願のいずれかの実施形態において、前記前駆体の体積平均粒径D50は8μm~13μmであり、かつ体積粒径分布D99は16μm~22μmである。
【0023】
本願のいずれかの実施形態において、前記コークス原料の体積平均粒径D50は7μm~12μmであり、かつ体積粒径分布D99は15μm~21μmである。
【0024】
本願のいずれかの実施形態において、前記前駆体の粒度均一性UniformityをUとし、且つ0.2≦U≦0.55を満たす。任意選択的には、0.3≦U≦0.45である。
【0025】
本願のいずれかの実施形態において、前記人造黒鉛の粒度均一性UniformityをUとし、0.22≦U≦0.48を満たす。任意選択的には、0.3≦U≦0.4である。
【0026】
本願のいずれかの実施形態において、コークス原料の揮発分含有量をCとし、前駆体の粒度均一性UniformityをUとし、且つステップc)の造粒過程において接着剤を添加し、接着剤の使用量をCとし、作製方法は21%≦(C+C)/U×100%≦50%を満たす。任意選択的には、31%≦(C+C)/U×100%≦35%である。
【0027】
本願のいずれかの実施形態において、コークス原料の揮発分含有量Cは1%≦C≦12%を満たす。任意選択的には、5%≦C≦9%である。
【0028】
本願のいずれかの実施形態において、前記コークス原料は石油系非針状コークス、石油系針状コークスのうちの1種又は複数種を含む。任意選択的には、前記コークス原料は石油生コークスを含む。
【0029】
本願のいずれかの実施形態において、ステップB)は、有機炭素源で前記コアを被覆し、熱処理により、前記コアの表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を形成し、負極活物質を得るステップe)を含む。
【0030】
本願のいずれかの実施形態において、ステップe)において添加された有機炭素源の使用量をCとし、作製方法は20%≦(C+C+C)/U×100%≦56%、1.2%≦C×残炭率≦2.5%を満たす。
【0031】
本願の作製方法で得られた負極活物質は、人造黒鉛を含むコアと、前記コア表面を被覆する、非晶質炭素を含む被覆層とを有し、且つ負極活物質はD99≦24μm及び8μm≦D50≦15μmを満たすことで、前記負極活物質を用いた電池の急速充電能力を顕著に向上させることができる。さらに、電池のサイクル性能も著しく向上する。
【0032】
第3態様は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ且つ本願に記載の負極活物質を含む負極活物質を包含する負極膜層と、を有する負極板を含む二次電池を提供する。
【0033】
本願に係る二次電池は、本願に記載の負極活物質を用いるので、高エネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能を兼備することができる。
【0034】
本願の第4態様は、本願に係る二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0035】
本願の第5態様は、本願に係る二次電池または電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0036】
本願の第6態様に係る装置は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
本願の電池モジュール、電池パック及び装置は本願に係る二次電池を含むので、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本願の実施例の態様をより明確に説明するために、以下は本願の実施例に使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明する図面は本願の一部の実施例に過ぎず、当業者は、創造的な労働をしない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
図1】本願に係る負極活物質の一実施形態の1000倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
図2】本願に係る負極活物質の別の実施形態の5000倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
図3】本願に係る負極活物質を負極板に作製した後の負極板の5000倍の拡大倍率でのイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
図4】本願に係る負極活物質の一実施形態の60000倍の拡大倍率での透過型電子顕微鏡(TEM)図である。
図5】二次電池の一実施形態を示す模式図である。
図6図5の分解図である。
図7】電池モジュールの一実施形態を示す模式図である。
図8】電池パックの一実施形態を示す模式図である。
図9図8の分解図である。
図10】二次電池を電源として用いる装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本願の発明目的、態様及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下は実施例を参照しながら本願をさらに詳細に説明する。本明細書に記載の実施例は単に本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではないと理解されよう。
【0040】
簡単のため、本明細書はいくつかの数値範囲のみを明確に開示する。但し、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また任意の下限は、他の下限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、他の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。なお、明記されていないが、範囲の端点間の各点または個別の数値は、いずれもこの範囲に含まれる。したがって、各点又は個別の数値はその自身の下限又は上限として他の点又は個別の数値と組み合わせて或いは他の下限又は上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。
【0041】
なお、本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種又は複数種」のうちの「複数種」は2種及び2種以上を意味する。
【0042】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、用語「又は」は包括的なものである。例えば、「A又はB」というフレーズは「A、B、又はAとBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真(または存在する)であり且つBが偽(または存在しない)である条件と、Aが偽(又は存在しない)であり且つBが真(又は存在する)である条件と、AとBが共に真(または存在する)である条件のいずれかも「A又はB」を満たしている。
【0043】
本願の上記発明内容は、本願に開示された実施形態全体又は実現形態全体を記載する意図がない。以下のように、記載は、より具体的に例を挙げて例示的な実施形態を説明するものである。本願の明細書の数か所には、一連の実施例により、教示を提供し、これらの実施例は各種の組合せ形式で使用することができる。各実例において、例示は、代表的なものに過ぎず、網羅的な例挙に解釈されるべきではない。
【0044】
二次電池は、充電池や蓄電池とも呼ばれ、電池の放電後に充電により活物質を活性化させて使用し続けることができる電池をいう。
【0045】
二次電池は、一般には、正極板、負極板、セパレータおよび電解質を含む。電池の充放電過程において、活性イオン(例えばリチウムイオン)は正極板と負極板との間に往復して吸蔵及び放出される。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、またイオンに通過されうる。電解質は、正極板と負極板との間で、主にイオンを伝導する役割を果たす。
【0046】
発明者らは、二次電池の急速充電能力を向上させるキーが負極の動力学的性能の向上にあることを発見した。負極板は、一般には、負極集電体と、負極活物質を含む負極膜層とを有する。負極活物質とは、一般には、電池の充放電過程において、負極板における活性イオンの吸蔵および放出に関与する物質をいう。現在、電池の動力学的性能を向上させるためには、負極膜層の厚さを薄くするか、負極膜層の圧密密度を低くする方法を採用することが多い。しかし大量の研究により、以上のような電池の動力学的性能を向上させる方法は電池の実際使用の低SOC状態(すなわち充電初期)の動力学的性能をある程度向上させるに過ぎず、電池の実際使用の高SOC状態(すなわち充電末期)の動力学的性能の改善が少なく、二次電池の急速充電能力を効果的に向上させることができない。また、電池のエネルギー密度も著しく低下する。
【0047】
一般に、負極活物質の作製工程において、業界では、その体積平均粒径D50が注目されており、小粒径側からの累積体積分布百分率が99%以上となる粒子は、個数比率が少ないため、負極活物質のD99は重要視されず無視されてきた。しかしながら、本発明者らは、鋭意研究を経て、負極活物質のD99を特定の範囲に控えると、負極活物質の高リチウム吸蔵状態(電池の高SOC状態に対応)での急速リチウム吸蔵能力を著しく改善することができ、上記ボトルネックを打破し、二次電池の高SOC状態での急速充電能力を向上させることができることを驚いて見出した。
【0048】
従って、本願は、人造黒鉛を含むコアと、前記コアの表面の少なくとも一部を被覆する、非晶質炭素を含む被覆層とを有し、体積粒径分布D99≦24μmであり、且つ平均体積粒径D50が8μm≦D50≦15μmを満たす負極活物質を提供する。
【0049】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本願に係る負極活物質を用いると、電池は高エネルギー密度を有する前提で、高い活性イオンの固相拡散性能を備えることができることを見出した。充電末期(高SOC状態)の高リチウム吸蔵状態においても、負極活物質粒子は良好な電気化学反応活性を保持することができ、活性イオンは負極活物質のバルク相に速やかに吸蔵され且つ速やかに移動することができ、負極板における活性イオンの拡散速度を効果的に向上させ、且つオームと濃度分極を低下させ、負極板全体の充電速度と充電深さを大幅に増加させる。したがって、本願は電池がすべてのSOC状態で大倍率充電を行うことを実現し、急速充電能力を顕著に向上させることができる。また、電池における正負極間の活性イオン移動性能が優れ、且つ分極が小さいので、サイクル性能を顕著に向上させることもできる。一般には、低SOC状態は一般に30%SOC以下を指し、高SOC状態は一般に60%SOC以上を指す。
【0050】
本願に記載の人造黒鉛は一般に黒鉛化高温処理を経て得られた黒鉛材料を指し、その黒鉛化結晶化の程度が一般には高い。
【0051】
本願に記載の非晶質炭素は一般に黒鉛化結晶化の程度が低い炭素材料を指す。
【0052】
一般には、人造黒鉛の格子構造は長距離秩序を持つ層状配列になる傾向があり、非晶質炭素の格子構造は不規則に配列する傾向がある。一般には透過型電子顕微鏡(TEM)図によってその格子配列を観察することができる。
【0053】
一部の実施形態において、前記コアの形状はブロック状、シート状、略球状のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0054】
一部の実施形態において、前記被覆層の厚さ≧2nmであり、任意選択的には、2nm~20nmであり、例えば、2nm~15nm、2nm~10nm、5nm~10nmである。
【0055】
一部の実施形態において、前記コア表面における前記被覆層の被覆率≧50%であり、任意選択的には、60%~100%である。
【0056】
一部の実施形態において、負極活物質は、D99≦23.8μm、≦23.5μm、≦23μm、≦22.5μm、≦22μm、≦21μm、又は≦20μmを満たすことができる。
【0057】
一部の実施形態において、負極活物質は、D99≧15μm、≧16μm、≧17μm、≧18μm、≧19μmを満たすことができる。
【0058】
一部の実施形態において、負極活物質は、15μm≦D99≦24μmを満たすことができ、例えば、16μm≦D99≦22μm、17μm≦D99≦24μm、17μm≦D99≦23μm、15μm≦D99≦21μm、18μm≦D99≦21μm、19μm≦D99≦21μm、19μm≦D99≦22μm、19μm≦D99≦23μm、20μm≦D99≦22μm、20μm≦D99≦21.5μm、又は20μm≦D99≦21μmである。
【0059】
負極活物質のD99は適正範囲内にあると、負極が高リチウム吸蔵状態にある時の活性イオンの固相拡散速度をさらに向上させ、分極を低減することができ、そのうちの比較的小さい粒子の減少に役立ち、粒子に活性イオンを多く吸蔵させることができ、また負極膜層にスムーズなトンネル構造を形成させ、液相伝導経路を短くし、電池の急速充電能力及びサイクル性能をさらに向上させる。D99が適切な負極活物質を用いることにより、二次電池は高い急速充電能力とサイクル性能の両立を図れる。
【0060】
一部の実施形態において、負極活物質は、D50≦14μm、≦13μm、又は≦12μmを満たすことができる。任意選択的には、D50≧8μm、≧9μm、≧10μm、又は≧11μmである。例えば、負極活物質は、8μm≦D50≦14μm、9μm≦D50≦13μm、10μm≦D50≦14μm、12μm≦D50≦14μm、12μm≦D50≦13μm、又は11μm≦D50≦13μmを満たすことができる。
【0061】
負極活物質のD50は適正範囲内にあると、負極活物質粒子における活性イオンの移動経路を短くすることができ、また負極膜層にスムーズな有孔構造を形成させることに有利であり、負極板が良好な活性イオンの固相拡散速度及び良好な液相輸送性能を備えるようにし、電池の急速充電能力をさらに向上させる。また、負極活物質のD50は適正範囲内にあると、さらに負極活物質が高いグラム容量を有することを保証することができ、電池が高エネルギー密度を得ることに有利であり、また負極での電解液の副反応を減少し、電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0062】
一部の実施形態において、負極活物質の粒度均一性Uniformityは、0.25~0.45であり、例えば0.28~0.4、0.32~0.4、0.32~0.38、0.30~0.36、0.31~0.35、又は0.32~0.36であってもよい。負極活物質の粒度均一性Uniformityは、負極活物質における全粒子の粒径が、負極活物質の体積平均粒径D50からずれるばらつき程度を表すことができ、負極活物質の粒径分布の均一性を反映している。負極活物質の粒度均一性Uniformityは上記範囲内にあると、負極膜層に短い液相輸送経路を形成しやすく、また粒子と粒子との間に大きい接触面積を有することができ、負極板における電子伝導及び活性イオンの輸送に有利であり、電池の急速充電能力をさらに向上させる。また、負極膜層の粒子同士を密着させることができ、負極板の圧密密度を高くし、電池のエネルギー密度を向上させる。
【0063】
一部の実施形態において、負極活物質は、0.6≦(D90-D10)/D50≦1.8を満たす。負極活物質の(D90-D10)/D50は、例えば、0.8~1.4、0.9~1.3、1.0~1.25、又は1.2~1.6である。負極活物質の(D90-D10)/D50は、負極活物質における大きな粒子の粒径と小さな粒子の粒径とが体積平均粒径D50からずれる程度を反映している。負極活物質の(D90-D10)/D50が適切であると、負極スラリー及び負極膜層の加工性の改善に有利であり、負極膜層全体は高い粒子分布均一性を備えるようにし、負極膜層の異なる領域にいずれも高い活性イオン輸送性能が現れることに有利であり、さらに電池の急速充電能力を改善する。
【0064】
一部の実施形態において、負極活物質の体積粒径分布D90は、13μm~18μmであり、例えば、13μm~16μm、14μm~17μm、又は15μm~18μmであってもよい。負極活物質のD90は適正範囲内にあると、負極膜層における活性イオンの固相拡散速度をさらに向上させ、電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。また、負極活物質は高いグラム容量を有することができ、これにより電池のエネルギー密度の向上に役立つ。
【0065】
一部の実施形態において、負極活物質の体積粒径分布D10は、5μm~10μmであり、例えば、6μm~8μmであってもよい。負極活物質における小粒子の含有量が少なので、電解液と材料との間の副反応を減少し、電池のサイクル性能及び保存性能を向上させることができる。
【0066】
一部の実施形態において、負極活物質の粒度比表面積は、0.4m/g~0.75m/gであり、例えば、0.4m/g~0.7m/g、0.42m/g~0.68m/g、0.46m/g~0.55m/g、0.5m/g~0.68m/g、又は0.5m/g~0.65m/gであってもよい。
【0067】
なお、本願に係る負極活物質の「粒度比表面積」は、一般の負極活物質の「比表面積」とは異なっている。現在業界の負極活物質の比表面積(SSA)はガス吸着BET法を用いて得られることが多く、負極活物質の物理吸着比表面積のみを表すために用いられる。本願の負極活物質の「粒度比表面積」は、レーザー回折式粒度分析法を用いて得られたものであり、負極活物質の形状が球形度からずれる程度を表すものである。
【0068】
本発明者らは、負極活物質の粒度比表面積が適正範囲内にあると、負極膜層におけるイオン放出通路を増加し、電荷交換インピーダンスを低減することができ、且つ負極膜層に、よりスムーズなトンネルを形成させ、電解液の濡れ性を高め、負極板における活性イオンの固相及び液相の輸送速度をさらに向上させることができるので、電池の急速充電性能とサイクル性能をさらに向上させることができることを見出した。また、負極活物質が適度な粒度比表面積を有することにより、負極被膜層の圧密密度を向上させ、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0069】
一部の実施形態において、負極活物質は、図1および図2に示すように、二次粒子を含む。任意選択的には、負極活物質における前記二次粒子の個数比率≧50%である。例えば、負極活物質における二次粒子の個数比率は、50%~100%、60%~100%、60%~90%、70%~100%、70%~95%、70%~90%、70%~80%、又は75%~85%である。負極活物質は二次粒子を多く含むと、負極膜層における活性イオン放出通路が多くなり、電池の急速充電能力をさらに向上させるとともに、分極を小さくし、サイクル性能を向上させることができる。特に、負極活物質は二次粒子と一次粒子を同時に含む場合、負極における電解液の副反応を低減することができ、電池のサイクル性能および保存性能をさらに向上させることができる。
【0070】
一部の実施形態において、前記負極活物質の黒鉛化度は91.0%~96.0%であり、例えば、94.0%~95.0%、又は93.0%~94.5%であってもよい。負極活物質の黒鉛化度が上記範囲内にあると、粒子構造には大きな層間距離を備えるとともに、低い粉体抵抗も具備することができ、急速充電能力をさらに向上させることができる。
【0071】
一部の実施形態において、前記負極活物質のグラム容量は345mAh/g~360mAh/gであり、例えば、350mAh/g~358mAh/g、351mAh/g~356mAh/g、又は352mAh/g~355mAh/gであってもよい。負極活物質のグラム容量が高いので、電池のエネルギー密度を向上させることができる。負極活物質のグラム容量が上記範囲内にあることは、その活物質の活性イオンの移動経路が短いことを意味し、電池の急速充電能力を向上させることができる。
【0072】
一部の実施形態において、前記負極活物質のタップ密度は0.9g/cm~1.3g/cmであり、例えば、1.0g/cm~1.1g/cmであってもよい。負極活物質のタップ密度を所与の範囲内にあると、負極被膜層における粒子同士を良好に接触させることができ、電池の急速充電能力を向上させることができる。また、粒子同士が緊密に堆積し、電池のエネルギー密度を向上させることもできる。
【0073】
一部の実施形態において、前記負極活物質の2kN圧における粉体圧密密度が1.55g/cm~1.67g/cmであり、例えば、1.60g/cm~1.65g/cmであってもよい。負極活物質の2kN圧における粉体圧密密度が所与の範囲内にあると、負極膜層における粒子同士を密着させると共に、良好な電解液濡れトンネルを形成することができ、電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させることができる。
【0074】
本願において、負極活物質のD99、D90、D50、D10、粒度均一性Uniformity、粒度比表面積は、いずれもレーザー回折式粒度分析法により測定することができる。例えば、GB/T19077-2016規格を参照し、レーザー粒度分析計(例えば、Malvern Master Size 3000)を用いて測定する。
【0075】
99は前記負極活物質の累積体積分布百分率が99%に達する時に対応する粒径であり、D90は前記負極活物質の累積体積分布百分率が90%に達する時に対応する粒径であり、D50は前記負極活物質の累積体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、D10は前記負極活物質の累積体積分布百分率が10%に達する時に対応する粒径である。
【0076】
本願において、負極活物質を負極板に作製し、負極板に対してイオン研磨断面形状(CP)の測定を行うことにより、コアの材料種類を観察することができる。例として、測定方法は以下のようなことであってもよい。まず作製された負極板を一定サイズの被測定サンプル(例えば2cm×2cm)に裁断し、パラフィンによって負極板をサンプル台に固定する。続いてサンプル台をサンプルホルダに入れてロックして固定し、アルゴンイオン断面研磨装置(例えばIB-19500CP)の電源を入れて真空引き(例えば10-4Pa)を行い、アルゴンガス流量(例えば0.15MPa)、電圧(例えば8KV)及び研磨時間(例えば2時間)を設定し、サンプル台を揺動モードに調整して、研磨を開始する。サンプル測定はJY/T010-1996を参考することができる。被測定サンプルにおいて領域をランダムに選択して走査測定を行い、且つ一定の拡大倍率(例えば5000倍)で負極板のイオン研磨断面形状(CP)写真を取得することができる。例えば、本願の図3から分かるように、本願の負極活物質のコアは人造黒鉛である。
【0077】
本願において、負極活物質の構造(例えば、コアおよび被覆層)は、当分野で公知の設備および方法を用いて測定することができる。例として、以下のステップで操作することができる。一定径のマイクログリッド(例えば直径が3mmである)を選択し、先尖りピンセットでマイクログリッドの縁部を挟み、その膜面を上向きにし(ランプの下で光沢が見られる面、すなわち膜面を観察する)、軽く平らに白色濾紙に置き、適量の黒鉛粒子サンプル(例えば1g)を取って、適量のエタノールが入ったビーカーに入れ、超音波発振を10min~30min行い、ガラスキャピラリーで吸引し、続いてこの被検サンプルを2~3滴マイクログリッドに滴下し、オーブンで5minを焼付した後、被測定サンプルが滴下されたマイクログリッドをサンプル台に置き、透過型電子顕微鏡(例えば、日立HF-3300S Cs-corrected STEM)を用いて一定の拡大倍率(例えば60000倍)で測定すると、被測定サンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)図を得ることができる。例えば、本願の図4から明らかなように、本願の負極活物質は、コアと、被覆層とを含む。
【0078】
本願において、一次粒子及び二次粒子は、いずれも当分野で公知の意味である。一次粒子とは、非凝集状態の粒子をいい、二次粒子とは、2つ以上の一次粒子が凝集した凝集状態の粒子をいう。一次粒子及び二次粒子は、走査型電子顕微鏡でSEM画像を撮影することにより容易に区別することができる。
【0079】
負極活物質における二次粒子の個数比率は、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。例示的な測定方法は、負極活物質を導電性粘着剤に敷設して粘着し、長さ×幅=6cm×1.1cmの被測定サンプルを作製し、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を用いて粒子形状を測定することである。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するために、被測定サンプルにおいて、複数(例えば5つ)の異なる領域をランダムに選択して走査測定を行い、且つ一定の拡大倍率(例えば1000倍)で、総粒子数に対する各領域における二次粒子数の百分率を算出すると、当該領域における二次粒子の個数比率を得、複数の測定領域の測定結果の平均値を負極活物質における二次粒子の個数比率とする。測定結果の正確性を確保するために、複数の試料(例えば10個)を取って上記測定を繰り返して行い、各試料の平均値を最終的な測定結果とすることができる。
【0080】
負極活物質の黒鉛化度は当分野で公知の意味であり、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。黒鉛化度は、例えば、X線回折装置(例えば、Bruker D8 Discover)を用いて、JISK0131-1996、JB/T4220-2011を参照してd002の大きさを測定し、式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%により算出することができる。d002は、ナノメートル(nm)で示す黒鉛結晶構造の層間距離である。X線回折分析測定において、銅ターゲットを陽極ターゲットとし、CuKα線を放射線源とし、放射線波長λ=1.5418Åであり、走査の2θ角度範囲は20°~80°であり、走査速度は4°/minであってもよい。
【0081】
負極活物質のタップ密度は、当分野で公知の意味であり、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T5162-2006規格を参照し、粉体タップ密度測定器を用いて測定することができる。北京鉄鋼研究総院のFZS4-4B型タップ密度計を用いる場合、測定パラメータは、振動頻度:250±15回/分、振幅:3±0.2mm、振動回数:5000回、目盛りシリンダ:25mLである。
【0082】
負極活物質の2kN圧における粉体圧密密度は、当分野で公知の意味であり、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T24533-2009規格を参照して、電子圧力試験機(例えば、UTM7305型)により測定する。例示的な測定方法は、負極活物質を1g秤量し、底面積1.327cmの型に入れ、200kg(2kNに相当)まで加圧し、30s保圧し、続いて減圧し、10s保持し、そして負極活物質の2kN圧における粉体圧密密度を算出して記録することである。
【0083】
負極活物質のグラム容量は当分野で公知の意味であり、当分野で既知の方法を用いて測定することができる。例示的な測定方法は以下通りである。作製された負極活物質、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるポリビニリデンフルオライド(PVDF)を質量比91.6:1.8:6.6で溶剤であるN-メチルピロリドン(NMP)に均一に混合し、スラリーを調製し、調製したスラリーを銅箔の集電体に塗布し、オーブンで乾燥した後に使用に備える。金属リチウムシートを対極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとする。エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合し、続いてLiPFを上記溶液に均一に溶解して電解液を得、LiPFの濃度は1mol/Lである。アルゴン雰囲気グローブボックスでCR2430型コイン電池を組み立てる。得たコイン電池を12時間静置した後、25℃において、0.05Cで0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、50μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、10μAで0.005Vまで定電流放電し、その後、0.1Cで2Vまで定電流充電し、充電容量を記録する。負極活物質の質量に対する充電容量の比は、作製された負極活物質のグラム容量である。
【0084】
なお、上記した負極活物質に対する各種パラメータの測定は、負極活物質のサンプルを直接取って測定してもよいし、二次電池からサンプリングして測定してもよい。
【0085】
二次電池から上記試料をサンプリングする場合、例として、以下のようなステップによってサンプリングすることができる。
【0086】
(1)二次電池を放電処理し(安全のため、一般に電池を満放電状態にする)、電池を取り外した後に負極板を取り出し、ジメチルカーボネート(DMC)に負極板を一定時間(例えば2~10時間)浸漬し、その後、負極板を取り出して一定の温度及び時間で乾燥処理(例えば60℃、4h)し、乾燥後に負極板を取り出す。
【0087】
(2)ステップ(1)で乾燥した負極板を一定の温度及び時間(例えば400℃、2h)で焼付し、焼付した負極板から任意の領域を選択し、負極活物質をサンプリングする(ブレードで粉末を掻き取ってサンプリングすることができる)。
【0088】
(3)ステップ(2)で収集した負極活物質に対してそれぞれ篩分け処理(例えば200メッシュのふるいで篩分ける)を行い、最終的に本願の上記各材料のパラメータを測定するために利用可能な負極活物質のサンプルを得る。
【0089】
本願は、次に負極活物質の作製方法を提供し、この作製方法に基づいて上記負極活物質を得ることができる。負極活物質の作製方法は、以下ステップA)およびB)を含むことができる。
【0090】
A)人造黒鉛を含むコアを提供する。
【0091】
B)コアの表面の少なくとも一部に非晶質炭素を含む被覆層が形成されるように前記コアを被覆してD99≦24μm、且つ8μm≦D50≦15μmである負極活物質を得る。
【0092】
一部の実施形態では、ステップA)において、人造黒鉛の作製方法は、
コークス原料を提供するステップa)と、
コークス原料に対して整形処理を行い、前駆体を得るステップb)と、
前記前駆体を造粒し、造粒物を得るステップc)と、
前記造粒物に対して黒鉛化処理を行い、D50が6μm~14μmであり、D99が17μm~26μmである人造黒鉛を得るステップd)とを含むことができる。
【0093】
一部の実施形態において、コークス原料のD50が7μm~12μmになり、D99が15μm~21μmになるように、コークス原料のD50及びD99を調整することができる。コークス原料のD50及びD99が所与の範囲内にあると、後続の整形及び造粒工程の改善に有利であり、最終的に得られた負極活物質は適切な二次粒子含有量及び適切なD50及びD99を備えるようになる。任意選択的には、コークス原料のD50は8μm~12μm、8μm~11.5μm、又は9μm~11μmである。任意選択的には、コークス原料のD99は16μm~21μm、17μm~21μm、17μm~20μm、又は17μm~19μmである。
【0094】
ステップa)において、コークス原料は、市販品をそのまま用いることができるし、コークス材料を粉砕して得ることができる。一部の実施形態において、コークス材料に対して粉砕処理を行い、コークス原料のD50及びD99を所望の範囲内に制御することができる。ジェットミル、機械ミル、ロールミルなど当分野で公知の設備及び方法を用いてコークス原料を粉砕することができる。粉砕中には常に過小粒子が多く生じ、また過大粒子が存在する場合もあるので、粉砕後に必要に応じて分級処理を行って粉砕後の粉体における過小粒子及び過大粒子を除去することができる。分級処理後に所望の粒径分布を有するコークス原料を得ることができる。分級処理は、分級篩、重力分級機、遠心分級機などの当分野で公知の設備及び方法を用いて行うことができる。
【0095】
コークス原料の粉砕処理は、粉砕機、分級機及び吸気ファンを含む工程ユニットで行うことができる。粉砕過程において、供給周波数、粉砕周波数、分級周波数、吸気周波数を調整制御することにより、得られたコークス原料のD50及びD99を所望の範囲内に調整制御することができる。従来の粉砕過程に分級周波数が低いことに対して、本願の方法は分級周波数を向上させることができ、過小粒子の除去に有利である。従来の粉砕過程に吸気周波数が高いことに対して、本願の方法は吸気周波数を低減することができ、過大粒子の除去に有利である。また、従来の粉砕過程に周波数が広い範囲に制御されることに対して、本願の方法はさらに主機周波数、分級周波数、吸気周波数を狭い周波数範囲に制御することができ、コークス原料の粒径分布幅を小さくすることができ、例えばコークス原料のD50及びD99を狭い範囲に調整制御する。また供給周波数を同期調整制御することで、供給量を制御することができ、これにより材料の粉砕効果をさらに改善することができる。
【0096】
一部の実施形態において、供給周波数は10Hz~40Hzであってもよく、例えば25Hz~35Hzである。
【0097】
一部の実施形態において、粉砕周波数は20Hz~50Hzであってもよく、例えば35Hz~45Hzである。
【0098】
一部の実施形態において、分級周波数は20Hz~50Hzであってもよく、例えば40Hz~50Hzである。
【0099】
一部の実施形態において、吸気周波数は30Hz~55Hzであってもよく、例えば35Hz~45Hzである。
【0100】
当業者は実際の操作状況に基づき、上記一つ又は複数の工程条件を選択して調整することで、最終的にD50が7μm~12μmでありで且つD99が15μm~21μmであるコークス原料を得ることができる。
【0101】
一部の実施形態において、ステップa)に記載のコークス原料は石油系非針状コークス、石油系針状コークスのうちの1種又は複数種を含むことができる。任意選択的には、前記コークス原料は石油生コークスを含む。
【0102】
一部の実施形態において、ステップa)に記載のコークス原料の揮発分含有量Cは1%≦C≦12%を満たす。任意選択的には、コークス原料の揮発分含有量Cは3%~10%、5%~9%、6%~8%、7%~8.5%、又は7.5%~8.5%などである。コークス原料の揮発分含有量が適切であると、後続の造粒過程における材料の粒度分布の改善に有利であり、負極活物質が所望の粒度分布を有することに役立つ。また、コークス原料の揮発分含有量が適切であると、また作製された人造黒鉛が高い構造強度を有するようにし、負極活物質のサイクル寿命を向上させ、電池のサイクル性能を改善することができる。
【0103】
コークス原料の揮発分含有量は本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、SH/T0026-1990を参照して測定する。
【0104】
ステップb)において、整形によってコークス原料粒子の角を研磨することができ、後続の造粒工程に有利であり、得られた負極活物質における二次粒子は高い構造安定性を有するようにする。整形機又は他の整形装置などの本分野で既知の設備及び方法を用いてコークス原料に対して整形処理を行うことができる。
【0105】
一部の実施形態において、コークス原料に対して整形処理を行った後、さらに分級処理を行うことで、得られた前駆体のD50は8μm~13μmになり、D99は16μm~22μmになり、最終的に得られた負極活物質は、適切な二次粒子含有量及び適切なD50及びD99を備えるようにする。任意選択的には、前駆体のD50は、9μm~12μm、9μm~11μm、10μm~12μm、または10μm~11μmである。前駆体のD99は、17μm~22μm以下、18μm~21μm以下、または18μm~20μm以下である。分級篩、重力分級機、遠心分級機など当分野で既知の設備及び方法を用いて分級処理を行うことができる。
【0106】
整形、分級処理は、整形機、分級機及び吸気ファンを含む工程ユニットで行うことができる。整形、分級処理過程において、整形周波数(例えば整形機の主機周波数及び補機周波数)、分級周波数、吸気周波数を調整制御することにより、得られた前駆体のD50及びD99を所望の範囲内に調整制御することができる。発明者らは、従来の整形、分級過程に比ると、本願の方法であれば、処理過程における整形周波数を向上させ、且つ整形時間を適切に延長し、さらに処理過程における分級周波数及び吸気周波数を低下させ、得られた前駆体のD50及びD99を目標範囲内に調整制御する。
【0107】
得られた前駆体はさらに適切な粒度均一性uniformity(U)を有することができ、得られた負極活物質の粒度均一性の改善に役立つ。
【0108】
一部の実施形態において、前駆体の粒度均一性Uは0.2≦U≦0.55を満たす。例えば、0.2≦U≦0.5、0.25≦U≦0.45、0.3≦U≦0.45、0.3≦U≦0.4、0.35≦U≦0.55、又は0.35≦U≦0.45である。
【0109】
一部の実施形態において、ステップb)では、整形機の主機周波数を35Hz~40Hzに、補機周波数を60Hz~70Hzに、分級周波数を40Hz~50Hzに、吸気周波数を10Hz~25Hzに、整形時間を160s~180sに制御することで、コークス原料に対して整形、分級処理を行い、D50が8μm~13μmであり且つD99が16μm~22μmである前駆体を得る。
【0110】
ステップc)において、前駆体を造粒することにより、独立に分散する一次粒子を凝集させて二次粒子を形成する。これにより、人造黒鉛の等方性が向上し、活性イオンが粒子の各方向から粒子に吸蔵されることができ、固相のリチウム吸蔵速度が向上し、分極が減少する。
【0111】
一部の実施形態において、ステップc)で得られた造粒物のD50は9μm~15μmであり、D99は17μm~24μmであってもよい。任意選択的には、造粒物のD50は10μm~14μm、11μm~15μm、又は11μm~13μmである。任意選択的には、造粒物D99は18μm~24μm、又は19μm~22μmである。造粒物のD50およびD99が適正範囲にあると、最終的に得られる負極活物質のD50およびD99を所望の範囲にする上で有利である。
【0112】
ステップc)において、当分野で公知の設備、例えば造粒機を用いて造粒することができる。造粒機は一般に撹拌反応釜と反応釜に対して温度制御を行うモジュールとを備える。造粒過程における撹拌回転数、昇温速度、造粒温度、降温速度などを調整制御することにより、造粒程度を調整制御することができ、また得られた造粒物のD50及びD99を所望の範囲内にすることができる。さらに、上記造粒工程を調整することにより、最終的に得られる負極活物質のD10、D90を所望の範囲にし、得られる造粒物のD10、D90が所望を満たすようにすることができる。
【0113】
一部の実施形態において、前駆体と接着剤を混合してから、高温造粒することができる。混合の温度は、20℃~40℃であってもよい。通常の黒鉛の作製工程に比べると、本願は混合周波数を適切に高めるとともに混合時間を短縮することで、造粒程度を改善することができ、得られた造粒物のD50及びD99を所望の範囲内に調整制御することに役立つ。
【0114】
高温造粒の温度は、接着剤の種類に応じて決定することができる。接着剤が高温で軟化し、粒子と粒子との貼り合せを行い、造粒を実現する。一部の実施形態において、接着剤はピッチである。これらの実施例において、造粒温度は700℃~800℃であってもよい。本願はさらに高温造粒過程の昇温プログラムを改善し、階段式昇温を採用する。昇温過程に複数(例えば2~4つ)のプログラム昇温プラットフォームを設定することにより、造粒物が所望の粒度分布を得ることができる。また、造粒物の粒度均一性が良好であり、後続の人造黒鉛、及び最終的な負極活物質製品が良好な粒度均一性uniformityを得ることに役立つ。
【0115】
一部の実施形態において、ステップc)では、混合周波数を35Hz~38Hzに、混合時間を50min~65minに制御し、続いて6~10℃/minで300℃~400℃まで昇温し、1h~2h保温し、さらに6~10℃/minで500℃~600℃まで昇温し、1h~2h保温し、さらに6~10℃/minで700℃~800℃まで昇温し、1h~2h保温し、その後自然降温し、造粒物を得ることができる。
【0116】
一部の実施形態において、ステップc)では、造粒過程で添加された接着剤の使用量Cとコークス原料の揮発分含有量C及び前駆体の粒度均一性Uとの間は、21%≦(C+C)/U×100%≦50%を満たす。任意選択的には、25%≦(C+C)/U×100%≦45%、25%≦((C+C)/U×100%≦38%、27%≦(C+C)/U×100%≦38%、30%≦(C+C)/U×100%≦40%、又は31%≦(C+C)/U×100%≦35%である。造粒過程で添加された接着剤の使用量Cとコークス原料の揮発分含有量C及び前駆体の粒度均一性Uとの間は上記関係を満たす場合、負極活物質粒子の造粒程度を改善し、負極活物質の脱イオン性能及び構造安定性を向上させることができる。
【0117】
前記造粒過程に添加された接着剤の使用量Cは、前駆体の総重量に対する前記造粒過程に添加された接着剤の重量の百分率である。造粒工程は、接着剤の添加又は不添加の条件で行われる。
【0118】
一部の実施形態において、前記造粒過程に添加された接着剤の使用量Cは0%≦C≦16%を満たすことができる。任意選択的には、1%≦C≦12%、2%≦C≦10%、4%≦C≦7%、又は5%≦C≦9%である。
【0119】
一部の実施形態において、ステップd)において、造粒物に対して2800℃~3200℃の温度で黒鉛化処理を行うことで、適切な黒鉛化度を有する人造黒鉛を得る。任意選択的には、黒鉛化処理の温度は2900℃~3100℃であってもよい。
【0120】
ステップd)において、当分野で既知の設備、例えば黒鉛化炉、さらに例えばアチソン型黒鉛化炉を用いて黒鉛化することができる。黒鉛化処理が終了した後、造粒物が高温黒鉛化中に凝集して形成した少量の過大粒子を篩分けによって除去することができ、最終的に得られた負極活物質のD50及びD99を所望の範囲内にすることに有利である。
【0121】
一部の実施形態において、ステップd)で得られた人造黒鉛のD50は6.5μm~14μm、7μm~14μm、6μm~13μm、7μm~13.5μm、8μm~12μm、9μm~12μm、9μm~11μm、10μm~13μm、10μm~12μm、6.5μm~12μm、又は6.5μm~12.5μmであってもよい。
【0122】
一部の実施形態において、ステップd)で得られた人造黒鉛のD99は18μm~24μm、19μm~26μm、21μm~26μm、20μm~25μm、20μm~23μm、又は19.5μm~22μmであってもよい。
【0123】
一部の実施形態において、ステップd)で得られた人造黒鉛の粒度均一性Uは0.22≦U≦0.48を満たすことができ、任意選択的には、0.25≦U≦0.45、0.26≦U≦0.43、0.3≦U≦0.4、又は0.33≦U≦0.38である。得られた人造黒鉛の粒度均一性uniformityが適正範囲内にあると、最終的に得られる負極活物質の粒度均一性uniformityを所望の範囲内にすることに有利である。
【0124】
一部の実施形態において、ステップB)は、有機炭素源で前記コアを被覆し、熱処理により、前記コアの表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を形成し、負極活物質を得るステップe)を含むことができる。
【0125】
一部の実施形態において、ステップe)では、前記コアの表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を形成した後、篩分けにより、負極活物質を得る。
【0126】
例として、ステップd)で得られた人造黒鉛を有機炭素源と混合し、有機炭素源で人造黒鉛の表面の少なくとも一部を被覆し、その後、700℃~1800℃の温度で加熱処理して有機炭素源を炭素化し、人造黒鉛の表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を形成することができる。任意選択的には、加熱処理の温度は、1000℃~1300℃である。
【0127】
一部の実施形態において、被覆過程で添加された有機炭素源の使用量Cとコークス原料の揮発分含有量C、造粒過程で添加された接着剤の使用量C及び人造黒鉛の粒度均一性Uとの間は20%≦(C+C+C)/U×100%≦56%を満たす。かつ有機炭素源は1.2%≦C×残炭率≦2.5%を満たす。有機炭素源の使用量Cは人造黒鉛の総重量に対する前記被覆過程に添加された有機炭素源の重量の百分率である。残炭率は有機炭素源の残炭率であり、LP-5731石炭ピッチのコーキング値測定機を用いて測定することができ、測定はGB/T268『石油製品の残留炭素測定法』、GB/T8727-2008『石炭ピッチ系製品コーキング値の測定方法』を参照することができる。
【0128】
被覆過程における有機炭素源の添加量が上記関係を満たすと、負極活物質の造粒程度を改善することができ、負極活物質の粒度均一性uniformity、粒度比表面積及び二次粒子の個数比率が上記範囲内にあることに有利である。また、有機炭素源の使用量は前記範囲内にあり、負極活物質における被覆層の比率が適切であることで、負極活物質は良好な動力学性能と長いサイクル寿命を両立することができる。任意選択的には、30%≦((C+C+C)/U×100%≦48%である。さらに任意選択的には、40%≦(C+C+C)/U×100%≦48%である。任意選択的には、1.5%≦C×残炭率≦2.4%、1.8%≦C×残炭率≦2.3%、または2%≦C×残炭率≦2.2%である。
【0129】
任意選択的には、2%≦C≦8%である。例えば、Cは3%、4%、5%、6%又は7%であってもよい。
【0130】
一部の実施形態において、有機炭素源はピッチ(例えば石炭ピッチ、石油ピッチ)、フェノール樹脂、ヤシ殻などのうちの1種又は複数種から選ぶことができ、さらに好ましくはピッチである。
【0131】
上記作製過程において、コークス原料は一般には、いくつかの不純物元素(例えば鉄、ニッケル、クロム、亜鉛、硫黄、ケイ素など)を含み、粉砕、整形、造粒過程に使用される設備でもいくつかの不純物元素(例えば鉄、銅等)が導入され、一般には、前記コアにおける不純物元素の含有量は僅かであり、一般に1ppm未満である。
【0132】
上記作製過程において、被覆過程に使用される有機炭素源及び被覆に使用される設備により被覆層に微量の不純物元素が導入される。
【0133】
二次電池
【0134】
本願はさらに二次電池を提供する。二次電池は、正極板と、負極板と、電解質とを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復して吸蔵及び放出される。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0135】
[負極板]
【0136】
本願に係る二次電池において、負極板は負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた負極膜層とを含み、前記負極膜層は本願のいずれか1種又は複数種の負極活物質を含む。
【0137】
一部の実施形態において、選択可能に、負極膜層は本願の上記負極活物質を含む以外に、一定量の他の常用の負極活物質を含むことができ、例えば、天然黒鉛、他の人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、錫系材料、チタン酸リチウムのうちの1種又は複数種である。前記ケイ素系材料は単体ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素炭素複合体の1種又は複数種から選ぶことができる。前記錫系材料は単体錫、錫酸化物、錫合金のうちの1種又は複数種から選択ぶことができる。
【0138】
本願に係る二次電池において、前記負極膜層は一般に負極活物質、選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及びその他の選択可能な助剤を含み、一般には、負極スラリーを塗布して乾燥させてなる。負極スラリーは、一般には、負極活物質および選択可能な導電剤や接着剤などを溶媒に分散させて均一に撹拌することにより形成されるものである。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0139】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーなどの1種又は複数種を含むことができる。
【0140】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0141】
他の選択可能な助剤は、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などである。
【0142】
なお、本願に係る二次電池において、負極板は、負極膜層以外の他の付加機能層を排除するものではない。例えば、ある実施形態において、本願に係る負極板は負極集電体と第1負極膜層との間に介在し且つ負極集電体の表面に設けられた導電性下塗層(例えば導電剤と接着剤で構成される)をさらに含むことができる。他の一部の実施形態において、本願に係る負極板は、第2負極膜層の表面を被覆する被覆保護層をさらに含むことができる。
【0143】
[正極板]
【0144】
本願に係る二次電池において、正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられて且つ正極活物質を含む正極膜層と、を含む。正極集電体は、例えば、その厚さ方向において対向する2つの面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの面のうちのいずれか一方または両方に設けられる。
【0145】
本願に係る二次電池において、前記正極活物質としては、当分野で公知の二次電池用の正極活物質を用いることができる。正極活物質は、例えば、リチウム遷移金属酸化物、オリビン型リチウム含有リン酸塩、およびこれらのそれぞれの変性化合物のうちの少なくとも1種又は複数種を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、マンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン型リチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。本願は、これらの材料に限定されず、従来から二次電池の正極活物質として利用可能な公知の他の材料を用いることができる。
【0146】
一部の実施形態において、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活物質は式1に示すリチウム遷移金属酸化物及びその変性化合物のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0147】
LiNiCo・・・式1
【0148】
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、MはMn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBのうちの1種又は複数種から選択され、AはN、F、S及びClのうちの1種又は複数種から選択される。
【0149】
本願において、上記各材料の変性化合物は、正極活物質に対してドーピング変性又は表面被覆変性を行ったものであってもよい。
【0150】
本願に係る二次電池において、前記正極膜層は、一般には、正極活物質、選択可能な接着剤及び選択可能な導電剤を含み、一般には、正極スラリーを塗布し、乾燥させ、冷間プレスしてなるものである。正極スラリーは、一般には、正極活物質、選択可能な導電剤及び接着剤などを溶媒に分散させ、均一に撹拌して形成されるものである。溶剤は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよい。
【0151】
例として、正極膜層に用いられる接着剤は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0152】
例として、正極膜層に用いられる導電剤は、超伝導カーボン、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種または複数種を含むことができる。
【0153】
本願に係る二次電池において、前記正極集電体としては、金属箔片または複合集電体(金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)を用いることができる。例として、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0154】
[電解質]
【0155】
本願に係る二次電池は、電解質の種類について特に限定されず、必要に応じて選択することができる。電解質は、例えば、固体電解質および液状電解質(すなわち、電解液)のうちの少なくとも1種から選ぶことができる。
【0156】
一部の実施形態において、電解質は電解液を用いる。電解液は、電解質塩と、溶媒とを含む。
【0157】
一部の実施形態において、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(リチウムヘキサフルオロアルセネート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)およびLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1種または複数種から選ぶことができる。
【0158】
一部の実施形態において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)およびジエチルスルホン(ESE)のうちの1種または複数種から選ぶことができる。
【0159】
一部の実施形態において、電解液は、選択可能に、添加剤を含む。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤を含んでもよいし、正極被膜形成添加剤を含んでもよいし、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤など電池の何らかの性能を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0160】
[セパレータ]
【0161】
電解液を用いた二次電池や固体電解質を用いた一部の二次電池には、セパレータがさらに含まれる。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、隔離の役割を果たす。本願において、セパレータの種類について、特に限定されず、良好な化学的安定性、機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のセパレータを用いることができる。一部の実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプローレン及びポリビニリデンフルーランドのうちの1種又は複数種から選ぶことができる。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0162】
一部の実施形態において、正極板、負極板及びセパレータは、巻取工程又は積層工程によって電極アセンブリを作製することができる。
【0163】
一部の実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、上記電極アセンブリおよび電解質をパッケージするために用いられる。
【0164】
一部の実施形態において、二次電池の外装はハードケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどである。二次電池の外装は、軟包装であってもよく、例えば、袋型軟包装である。軟包装の材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロプレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの1種または複数種である。
【0165】
本願は、二次電池の形状について、特に限定せず、円筒形、角形、その他の任意の形状であってもよい。図5は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0166】
一部の実施形態において、図6に示すように、外装は、ハウジング51と蓋板53とを含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、収容室を閉塞するように前記開口を覆設する。正極板、負極板およびセパレータは、巻取工程または積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容室に封入される。電解液は、電極アセンブリ52に浸み込んでいる。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つであってもよいし、複数であってもよく、必要に応じて調節することができる。
【0167】
一部の実施形態において、二次電池は電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの適用及び容量に基づいて調節することができる。
【0168】
図7は、一例としての電池モジュール4である。図7に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並設されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに、これらの複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0169】
選択可能には、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有する筐体をさらに備えてもよい。
【0170】
一部の実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックとして組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの適用及び容量に基づいて調節することができる。
【0171】
図8および図9は、一例としての電池パック1である。図8および図9に示すように、電池パック1は、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は下ケース3をカバーすることで、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成するように構成される。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ケースに配置することができる。
【0172】
装置
【0173】
本願は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュールまたは電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー貯蔵手段として用いられてもよい。前記装置はモバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカー、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限定されない。前記装置はその使用要求に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選ぶことができる。
【0174】
図10は、一例としての装置である。この装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。高出力、高エネルギー密度の要求に応えるためには、電池パックや電池モジュールを用いることができる。
【0175】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般に軽量薄型化が求められており、二次電池を電源として用いることができる。
【0176】
実施例
【0177】
以下の実施例は本願の開示内容をより具体的に説明し、これらの実施例は説明のためのものに過ぎず、本願の開示内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかからである。なお、特に断りがない限り、以下の実施例に記載されている部、%、比はいずれもに質量ベースである。また、実施例で使用された試薬は全て購入で入手するか又は通常方法に従って合成することができ、且つさらに処理することなくそのまま使用することができ、また、実施例で使用された器具はいずれも購入で入手できる。
【0178】
一、電池の製造
【0179】
実施例1
【0180】
負極活物質の作製
【0181】
揮発分含有量Cは7.87%である石油生コークスを用いた。石油生コークスを粉砕処理し、D50が11.8μmであり及びD99が20.1μmであるコークス原料を得た。
【0182】
コークス原料に対して整形分級処理を行い、D50が13.0μmであり及びD99が21.3μmである前駆体を得た。
【0183】
接着剤であるピッチを用いて前駆体を造粒し、接着剤の使用量Cは5%である。得られた造粒物は、D50が13.7μmであり、D99が21.9μmである。
【0184】
造粒物に対して3000℃の温度で黒鉛化処理を行い、篩分けを経て、人造黒鉛を得た。前記人造黒鉛のD99は22.9μmである。
【0185】
続いて有機炭素源であるピッチで人造黒鉛を被覆した後に炭化処理を行い、有機炭素源の使用量Cが3%であり、負極活物質を得て、前記負極活物質は人造黒鉛コアと人造黒鉛コアの表面を被覆する非晶質炭素被覆層とを含み、且つ負極活物質は、D50が14.5μmであり、D99が22.3μmであり、グラム容量が355.2mAh/gであることを満たしている。
【0186】
負極板の作製
【0187】
上記作製された負極活物質、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)及び導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量の脱イオン水に十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーに形成させ、負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストライプ化、裁断を経て、負極板を得た。前記負極板は、圧密密度が1.65g/cm、面密度が123g/mである。
【0188】
正極板の作製
【0189】
リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるPVDFを重量比97.5:1.5:1で適量のN-メチルピロリドン(NMP)に十分に撹拌して均一に混合し、均一な正極スラリーに形成させ、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストライプ化、裁断を経て、正極板を得た。前記正極板は、圧密密度が3.5g/cmであり、面密度が196g/mであった。
【0190】
セパレータ
【0191】
セパレータとしては、ポリエチレン(PE)フィルムを用いた。
【0192】
電解液の調製
【0193】
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1:1で混合した後、十分に乾燥したリチウム塩LiPFを上記溶液に均一に溶解して電解液を得て、LiPFの濃度は1mol/Lである。
【0194】
二次電池の製造
【0195】
正極板、セパレータ、負極板を順に積み重ねて、セパレータと負極板との間に基準電極(基準電極は電池のサンプルの後続の性能測定に用いられ、リチウムシート、リチウムワイヤなどを選べ、且つ基準電極はセパレータによって分離され、正、負極板のいずれか一側との接触を防止するべきである)を増設し、巻取を経て、電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装に入れ、上記電解液を添加し、封止、静置、化成、エージングなどの工程を経て二次電池を得た。
【0196】
実施例2~20及び比較例1~2は、実施例1の作製方法と類似しているが、負極活物質の作製パラメータを調整し、異なる作製パラメータ及び製品パラメータの詳細は表2から表5に示す。
【0197】
二、電池性能の測定
【0198】
(1)急速充電性能の測定
【0199】
25℃において、実施例および比較例で製造した二次電池を1C(すなわち1h内に理論容量を完全に放電する電流値)で4.25Vまで定電流充電し、その後電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに1Cで2.8Vまで定電流放電し、その実容量をCとして記録した。
【0200】
続いて電池を順に0.5C、1C、1.5C、2C、2.5C、3C、3.5C、4C、4.5Cで4.25V又は0Vの負極終止電位(先に達したものを基準とする)まで定電流充電し、充電が終了したたびに、1Cで2.8Vまで放電する必要があり、異なる充電倍率で10%、20%、30%…80%SOC(State of Charge、荷電状態)に充電する時に対応する負極電位を記録し、異なるSOC状態での倍率-負極電位曲線を描き、線形フィッティングした後に、異なるSOC状態での負極電位が0Vである時に対応する充電倍率を得て、この充電倍率は当該SOC状態での充電ウィンドウであり、それぞれC20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記し、式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%に基づき、この電池が10%SOCから80%SOCまで充電する充電時間T(min)を算出した。この時間が短いほど、電池の急速充電性能が優れることを示す。
【0201】
(2)サイクル性能の測定
【0202】
25℃において、実施例および比較例で製造した二次電池を0.33Cで充電終止電圧4.25Vまで定電流充電し、その後電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに0.33Cで放電終止電圧2.8Vまで定電流放電し、その初期容量をCとして記録した。その後、表1に記載の方策に従って充電し、0.33Cで放電を行い、サイクル容量維持率(C/C×100%)が80%になるまで、サイクル毎の放電容量Cを記録し、サイクル回数を記録した。サイクル回数が多いほど、電池のサイクル寿命が高いことを示す。
【0203】
【表1】
【0204】
実施例1~20及び比較例1~2の測定結果を表3及び表5に詳しく示す。
【0205】
【表2】
【0206】
【表3】
【0207】
表3の結果から分かるように、本願に係る負極活物質は、人造黒鉛を含むコアと、前記コアの表面を被覆する、非晶質炭素を含む被覆層と、を有し、且つ負極活物質はD99≦24μm及び8μm≦D50≦15μmを同時に満たすことで、この負極活物質を用いた二次電池は高エネルギー密度を有する条件で、急速充電能力とサイクル性能の向上が図れる。
【0208】
比較例1は、上記条件を満たさないため、急速充電能力およびサイクル性能がいずれも劣っている。
【0209】
【表4】
【0210】
表4において、A=(C+C)/U×100%;B=(C+C+C)/U×100%
【0211】
【表5】
【0212】
実施例7~11の結果から分かるように、負極活物質は、さらに、粒度均一性Uniformityが適正範囲内にあることを満たす場合、電池の急速充電能力およびサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0213】
実施例12~20の結果から分かるように、負極活物質は、さらに、その粒度比表面積又は二次粒子の個数比率が適正範囲内にあることを満たす場合、電池の急速充電能力及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0214】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な変更や置き換えを容易に想到でき、これらの変更や置き換えは、いずれも本願の保護範囲に属するものである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10