(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】固体電解質,固体電解質電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20241008BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20241008BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241008BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/058
H01M10/0562
H01B13/00 Z
(21)【出願番号】P 2020176758
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019194716
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】是津 信行
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 勝弥
(72)【発明者】
【氏名】中西 巧
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-058376(JP,A)
【文献】特開2016-062709(JP,A)
【文献】特開2015-109199(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181673(WO,A1)
【文献】特開2017-061390(JP,A)
【文献】特開2009-114037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0121374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01B 13/00
H01M 10/0562
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性を有する材料よりなる複数の板状粒子が、前記板状粒子の板厚方向に積層するとともに、前記板状粒子の板の広がる方向に沿って配列して形成された組積体の焼結体よりなり、
前記板状粒子が、縦:横の長さの比が
2.2~3:1であり、かつ横:板厚の長さの比が
3.1~4:1であることを特徴とする固体電解質。
【請求項2】
前記板状粒子は、平均粒径(D50)が2.0μm~8.0μmである請求項1記載の固体電解質。
【請求項3】
前記板状粒子は、粒度分布において、小径からの25%累積値(D25)と75%累積値(D75)との間の長さが平均粒径(D50)の長さの34~230%である請求項2記載の固体電解質。
【請求項4】
前記固体電解質は、前記板状粒子が広がる方向に沿って広がる板状を有し、その厚さが0.5μm以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記イオン伝導性を有する材料は、LiNbO
3である請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の前記固体電解質と、
前記固体電解質の前記板厚方向の一方の表面に密着して設けられた正極と、
前記固体電解質の前記板厚方向の他方の表面に密着して設けられた負極と、
を有することを特徴とする固体電解質電池。
【請求項7】
前記正極は、前記固体電解質が伝導するイオン種を吸蔵放出可能な正極活物質を有し、
前記負極は、前記固体電解質が伝導するイオン種を吸蔵放出可能な負極活物質を有する請求項6記載の固体電解質電池。
【請求項8】
前記正極及び前記負極の少なくとも一方は、イオン伝導性を有する材料を更に含有する請求項7記載の固体電解質電池。
【請求項9】
前記イオン伝導性を有する材料は、前記固体電解質の材料と同じ材料である請求項8記載の固体電解質電池。
【請求項10】
前記固体電解質,前記正極及び前記負極は、一体に形成されている請求項6~9のいずれか1項に記載の固体電解質電池。
【請求項11】
前記固体電解質は、LiNbO
3よりなり、
前記正極は、Liイオンを吸蔵放出可能な材料の正極活物質を有し、
前記負極は、Liイオンを吸蔵放出可能な材料の負極活物質を有する請求項6~10のいずれか1項に記載の固体電解質電池。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解質を有する固体電解質電池を製造する方法であって、
イオン伝導性を有する材料よりなる板状粒子の粉末を分散媒に分散させてペーストを調製する調製工程と、
塗工面に沿う剪断応力を付与しながら前記ペーストを前記塗工面に塗工する塗工工程と、
塗工体を焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする固体電解質電池の製造方法。
【請求項13】
前記塗工工程は、バーコータで前記ペーストを前記塗工面に塗工する工程である請求項12記載の固体電解質電池の製造方法。
【請求項14】
焼結体の厚さ方向の一方の表面に正極を、他方の表面に負極を形成する電極形成工程を有する請求項12~13のいずれか1項に記載の固体電解質電池の製造方法。
【請求項15】
前記電極形成工程は、
前記焼結体の前記他方の表面に、負極の材料を溶着して前記負極を形成する工程を有する請求項14記載の固体電解質電池の製造方法。
【請求項16】
前記電極形成工程は、
前記焼結体の一方の表面に正極の材料を、他方の表面に負極の材料をそれぞれ配する工程と、
積層体を焼結する工程と、
を有する請求項14記載の固体電解質電池の製造方法。
【請求項17】
前記焼結工程は、前記塗工体の厚さ方向の両面に、正極の材料及び負極の材料を配した後に焼結する工程である請求項12~13のいずれか1項に記載の固体電解質電池の製造方法。
【請求項18】
前記板状粒子は、フラックス法で板状の中間生成物を生成し、前記中間生成物からイオン交換法で最終生成物として製造される請求項12~17のいずれか1項に記載の固体電解質電池の製造方法。
【請求項19】
請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解質を製造する方法であって、
イオン伝導性を有する材料よりなる板状粒子の粉末を分散媒に分散させてペーストを調製する調製工程と、
塗工面に沿う剪断応力を付与しながら前記ペーストを前記塗工面に塗工する塗工工程と、
塗工体を焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする固体電解質の製造方法。
【請求項20】
前記塗工工程は、バーコータで前記ペーストを前記塗工面に塗工する工程である請求項19記載の固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質,固体電解質電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコンなどの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池の利用が進められている。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な活物質を有する正極及び負極と、有機溶媒に支持塩を溶解した非水電解質と、を有している。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、自動車や電力貯蔵などの中・大型電源への適用が検討されている。リチウムイオン二次電池は、中・大型電源への適用範囲の拡大にともなって、更なる高性能化も求められている。
【0004】
従来のリチウムイオン二次電池は、非水電解質が漏出することなどによる安全性・信頼性への懸念があった。この懸念に対し、非水電解質に替えて、固体よりなる固体電解質を用いた固体電解質電池(全固体電池とも称する)の開発が進められている。
【0005】
従来の固体電解質電池において、正極と負極の間に介在する固体電解質は、材料粉末を成形・焼結して製造されたものが用いられている。固体電解質は、焼結体であり、緻密かつ高強度の性質を有している。しかし、従来の固体電解質電池でも、非水電解質を用いたリチウムイオン二次電池の場合と同様に、負極にデンドライトが生成するおそれがあった。そして、デンドライトが生成し成長すると、正極と負極の間で固体電解質の内部に導電経路が形成され、両極が短絡するという問題があった。
【0006】
また、従来の固体電解質電池は、その使用環境によっては、振動等の衝撃により固体電解質が損傷し、損傷が進行すると固体電解質に割れが発生するという問題があった。
【0007】
このように、従来の固体電解質は、デンドライトや割れ等の損傷が生じるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、損傷が生じにくい固体電解質,固体電解質電池及び固体電解質電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らは固体電解質の構造について検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0010】
本発明の固体電解質は、イオン伝導性を有する材料よりなる複数の板状粒子が、前記板状粒子の板厚方向に積層するとともに、前記板状粒子の板の広がる方向に沿って配列して形成された組積体の焼結体よりなり、前記板状粒子が、縦:横の長さの比が1~3:1であり、かつ横:板厚の長さの比が1.3~4:1であることを特徴とする。
【0011】
本発明の固体電解質電池は、請求項1~5のいずれか1項に記載の前記固体電解質と、前記固体電解質の前記板厚方向の一方の表面に密着して設けられた正極と、前記固体電解質の前記板厚方向の他方の表面に密着して設けられた負極と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の固体電解質の製造方法は、イオン伝導性を有する材料よりなる板状粒子の粉末を分散媒に分散させてペーストを調製する調製工程と、塗工面に沿って剪断応力を付与しながら前記ペーストを前記塗工面に塗工する塗工工程と、塗工体を焼結する焼結工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
なお、本発明の固体電解質は、板状粒子の組積体の焼結体である。焼結体は、部分的に結晶構造が異なるものであり、その違いに係る構造を一概に特定できるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】板状粒子の形状の近似方法を示す模式図である。
【
図3】板状粒子の形状の近似方法を示す模式図である。
【
図4】板状粒子の形状の近似方法を示す模式図である。
【
図5】組積体の板状粒子の配置を示す断面模式図である。
【
図6】組積体において、板状粒子の重なりを示す側面図である。
【
図7】組積体において、板状粒子の重なりを示す側面図である。
【
図8】組積体において、板状粒子の重なりを示す側面図である。
【
図9】実施形態1の固体電解質において、デンドライトの成長を示す断面模式図である。
【
図10】従来の固体電解質において、デンドライトの成長を示す断面模式図である。
【
図11】実施形態1のリチウムイオン二次電池の構成を示す模式図である。
【
図12】実施形態1のリチウムイオン二次電池の製造方法を示す工程図である。
【
図13】実施形態1の製造における中間生成物のK
4Nb
6O
17の拡大写真である。
【
図14】実施形態1の製造における中間生成物のK
4Nb
6O
17の拡大写真である。
【
図15】実施形態1の製造における中間生成物のH
4Nb
6O
17の拡大写真である。
【
図16】実施形態1の製造における中間生成物のH
4Nb
6O
17の拡大写真である。
【
図17】実施形態1のLiNbO
3の拡大写真である。
【
図18】実施形態1のLiNbO
3の拡大写真である。
【
図20】実施形態1のLiNbO
3の組積体の圧縮前の拡大写真である。
【
図21】実施形態1の圧縮された組積体の断面の拡大写真である。
【
図22】実施形態1の固体電解質の断面の拡大写真である。
【
図23】実施形態2のリチウムイオン二次電池の製造方法を示す工程図である。
【
図24】実施形態3のリチウムイオン二次電池の構成を示す断面図である。
【
図25】実施形態3のリチウムイオン二次電池の製造方法を示す工程図である。
【
図26】実施形態4のリチウムイオン二次電池の製造方法を示す工程図である。
【
図27】実施形態5のリチウムイオン二次電池の正極の構成を示す断面図である。
【
図28】Li
3xLa
(2/3)-x□
(1/3)-2xTiO
3よりなる板状粒子の拡大写真である。
【
図29】Li
2TiO
3よりなる板状粒子の拡大写真である。
【
図30】Na
2Ti
3O
7よりなる板状粒子の拡大写真である。
【
図31】K
4Nb
6O
17よりなる板状粒子の拡大写真である。
【
図32】KTiNbO
5よりなる板状粒子の拡大写真である。
【
図33】LaOClよりなる板状粒子の拡大写真である。
【
図34】実施形態の固体電解質において、亀裂の伸展を抑える効果を示す断面模式図である。
【
図35】従来の固体電解質において、亀裂の伸展を示す断面模式図である。
【
図36】実施例1の圧縮された組積体の断面の拡大写真である。
【
図37】比較例1の圧縮された組積体の断面の拡大写真である。
【
図38】実施例1の固体電解質のインピーダンスの測定結果を示す図である。
【
図39】固体電解質のインピーダンスの測定における等価回路を示す回路図である。
【
図40】実施例1の電池セルの定電流サイクル試験の試験結果を示す図である。
【
図41】比較例1の電池セルの定電流サイクル試験の試験結果を示す図である。
【
図42】比較例2の電池セルの定電流サイクル試験の試験結果を示す図である。
【
図43】実施例2の圧縮された組積体の断面の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を用いて本発明を具体的に説明する。なお、各実施形態は本発明を具体的に実施した形態を示すものであり、本発明は、これらの形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、これらの実施形態に記載されている事項を適宜組み合わせた形態を含んでいる。
【0016】
[実施形態1]
本形態は、LiNbO3よりなる固体電解質、それを用いたリチウムイオン二次電池及びその製造方法である。
【0017】
[固体電解質]
本形態の固体電解質は、複数の板状粒子が、所定の状態に配列して形成された組積体の焼結体よりなり、板状粒子が、縦:横の長さの比が1~3:1であり、かつ横:板厚の長さの比が1.3~4:1である。板状粒子は、イオン伝導性を有する材料よりなる。組積体は、複数の板状粒子が、その板厚方向に積層するとともに、その板の広がる方向に沿って配列(あるいは、配向)して形成される。
【0018】
複数の板状粒子は、組積体を形成したときに、隣接した板状粒子同士が焼結可能に近接した状態で配列しており、隣接した板状粒子同士が当接した状態で配列していることが好ましい。
【0019】
板状粒子は、LiNbO3よりなる。LiNbO3は、イオン伝導性を有する材料である。LiNbO3は、Liイオン(Li+)を伝導する。
【0020】
板状粒子は、単結晶一次粒子であることが好ましい。板状粒子は、平面的な板状に発達した結晶の一次粒子であることが好ましい。板状粒子が単結晶一次粒子であることで、所定の状態に配列した組積体を形成できる。
【0021】
本形態の固体電解質は、LiNbO3よりなる板状粒子の組積体が焼結してなる焼結体であり、全体としてもLiNbO3よりなる。本形態の固体電解質(焼結体)は、Liイオンに対するイオン伝導性を有する。具体的には、焼結体は、板状粒子の組積体に焼結反応を生じさせて形成される。焼結反応は、隣接する板状粒子同士に原子の拡散を生じさせて結合する反応である。焼結反応では、板状粒子が他の成分と反応して新規化合物を生成する反応、及び板状粒子の化合物を熱分解する分解反応が生じない。つまり、焼結反応後でも、組積体の板状粒子の材料の組成及びイオン伝導性を有するという特性が維持される。この結果、本形態の固体電解質(焼結体)は、全体としてもLiNbO3よりなるとともに、イオン伝導性を有する。
【0022】
本形態において、板状粒子は、例えばSEM等の装置を用いて粒子形状(一次粒子の形状)を観察したときに、板状の形状をなしている粒子である。板状の形状は、一方の表面(以下、上面とも称する),一方の表面(上面)に背向する他方の表面(以下、下面とも称する),一方の表面(上面)と他方の表面(下面)とをつなぐ外周面(以下、側面とも称する)を有する形状である。板状粒子は、
図1に模式的に示すように、縦(a),横(b),板厚(c)の長さのうち、板厚の長さが最も小さい(薄い)形状であり、板厚(c)<横(b)≦縦(a)の関係を有する。
【0023】
板状粒子は、縦(a):横(b)の長さの比が1~3:1であり、かつ横(b):板厚(c)の長さの比が1.3~4:1である。なお、板状粒子の粒子形状の縦,横,板厚の長さの比は、直方体形状の板状粒子での外周形状の長さの比である。板状粒子がこの長さの比を有することで、例えば後述の製造方法の工程を用いて簡単に組積体を製造することができる。
【0024】
板状粒子は、
図1に模式的に示すように、外周形状が直方体形状をなしていることが好ましい。
【0025】
板状粒子の外周形状が直方体形状でない場合、上記の縦:横:板厚の長さの比は、近似の直方体形状の外形の長さの比を代用できる。近似の直方体形状とは、板状粒子に外接する直方体(
図2に上面図で例示)、板状粒子に内接する直方体(
図3に上面図で例示)、板状粒子の縦,横,板厚の最も長い部分と最も短い部分との平均により形成される直方体(
図4に上面図で例示)、のいずれかから選択して用いることができる。さらに、近似の直方体形状は、板状粒子の縦,横,板厚のそれぞれで、別々の前記の条件で近似してもよい。なお、本形態の縦,横,板厚の長さの比は、板状粒子に外接する直方体(
図2)で近似した長さの比である。
【0026】
板状粒子が直方体形状以外の外周形状である場合、上記の比を有する形状であればよく、例えば、フィルム状,シート状,フレーク状等の外周形状をあげることができる。
【0027】
板状粒子は、平均粒径(D50)が2.0μm~8.0μmであることが好ましい。板状粒子の平均粒径(D50)がこの範囲内に含まれることで、複数の板状粒子が所定の状態で配列した組積体を簡単に形成できる。
【0028】
なお、板状粒子の平均粒径は、従来の粒度分布の測定装置(例えば、動的光散乱法,レーザー回折法,画像イメージング法,重力沈降法等の測定方法の測定装置)を用いて測定できる。本形態において、板状粒子の粒度分布を測定したときのD50,D25,D75等の値は、板状粒子の直方体形状において、縦(a),横(b),板厚(c)の長さのうち、最も長い辺の長さ(すなわち、縦(a)の長さ)に相当する。
【0029】
板状粒子は、粒度分布を測定したときに、小径からの25%累積値(D25)と75%累積値(D75)との間の長さが平均粒径(D50)の長さの34~230%であることが好ましい。D25とD75との間の長さがこの範囲内となることで、組積体は、後述の迷路効果をより確実に発揮できるように板状粒子が配列して形成される。
【0030】
詳しくは、D25とD75との間の長さがこの範囲内となると、組積体を形成するための複数の板状粒子(板状粒子の粉末)は、粒径にバラツキをもつことになる。換言すると、板状粒子の粉末は、粒度分布の測定結果が、ブロードなピークを示す。粒径にバラツキがある板状粒子から形成した組積体は、
図5に模式図で示すように、組積体での板状粒子の積層方向において複数の板状粒子が板厚方向で互い違いに重なる状態がより確実に形成される。
【0031】
具体的には、本形態における組積体は、複数の板状粒子が板の広がる方向に沿って配列した層を形成し、形成された層の複数が積層した構成を有する。組積体の各層は、板状粒子の形状のバラツキ(特に、縦(a)や横(b)の長さのバラツキ)により、板状粒子の配列状体が異なる。特に、各層では、隣接する2つの板状粒子がその側面同士で当接する当接部の位置が、異なる。このような層が積層して形成された組積体では、積層した2つの層において、当接部の重なりが生じにくくなる。仮に、部分的に当接部が積層方向で重なったとしても、当接部の他の部分は板状粒子の上面又は下面と重なり、当接部の他の部分が重ならない。
【0032】
より具体的には、板状粒子が積層して第1層と第2層とをなしている場合、一方の層の板状粒子を他方の層に投影したときに、投影された板状粒子の外周は、他方の層の板状粒子の外周よりも内部に位置する配列(
図6に模式図で例示)、又は、一方の層の板状粒子の外周が他方の層の複数の板状粒子に重なって位置する配列(
図7に模式図で例示)、となる。仮に、板状粒子の粒径にバラツキがない場合、
図8に模式図で示すように、積層方向の2つの板状粒子が完全に重なり合う場合が生じるおそれがある。この場合、当接部が全周で重なりあっており、固体電解質が後述の迷路効果を発揮しなくなる。
【0033】
組積体は、板厚方向での積層数が、2層以上であればよく、3層以上であることがより好ましい。積層数が多くなるほど、各層における板状粒子同士の側面同士の当接部が重なる量が減少する。すなわち、全ての層の当接部が重なることがより抑えられる。組積体は、各層における板状粒子の側面同士の当接部が重なる部分がないことが最も好ましい。この構成となることで、後述の迷路効果を最も確実に発揮できる。
【0034】
本形態の固体電解質は、上記の構成の組積体の焼結体である。焼結体よりなることで、本形態の固体電解質は、一体の構造を有するものとなる。また、本形態の固体電解質は、固体電解質電池を形成したときに、生成したデンドライトの成長を抑制できる効果、すなわち、デンドライトにより損傷することが抑えられる効果を発揮する。
【0035】
具体的には、本形態の固体電解質を形成する焼結体は、板状粒子の組積体を熱処理し、板状粒子を焼結する。一般に、焼結反応は、当接した粒子の当接部同士を接合してネックを形成し、ネックが成長するように進行する。焼結体は、原料の粒子に由来する部分(以下、粒子由来部分と称する)とネックに由来する部分(以下、ネック由来部分と称する)が存在する。粒子由来部分とネック由来部分とは、同一の組成を有しているが、その結晶構造が異なる。粒子由来部分は、ネック由来部分と比較して、高い硬度を備えている。
【0036】
そして、固体電解質3を用いた固体電解質電池(例えば、リチウムイオン二次電池1)において、一方の極(負極4)に対向した表面にデンドライトが生成し、他方の極(正極2)に向けて成長しいていくと、このネック由来部分31(あるいは、原料の粒子由来部分30の周縁部)に沿ってデンドライトが成長する。本形態の固体電解質3では、ネック由来部分31が入り組んだ構成を有しており、
図9に模式図で示すように、固体電解質3を貫通して成長するデンドライトは、一方の極(負極4)から他方の極(正極2)に到達するまでに何度も折れ曲がる。デンドライトが成長して短絡するまでに要する長さ(短絡に要するデンドライトの長さ)が長くなる。対して、固体電解質3が従来の球状粒子の粉末の焼結体よりなる場合には、
図10に模式図で示すように、固体電解質3を貫通して成長するデンドライトは、短絡までに要する長さが固体電解質3の厚さとほぼ同じ長さとなる。この結果、本形態の固体電解質を用いた固体電解質電池は、デンドライトの成長による内部短絡の発生が抑えられる効果を発揮する。
【0037】
本形態の固体電解質において、組積体は、板状粒子が所定の状態で配列して形成されたものであればよく、組積体の全体で同一方向に配列したものであることが最も好ましい。その上で、複数の板状粒子が所定の状態で配列して形成された組積体部を形成し、この組積体部が集合した集合体(例えば、後述の
図21に示した構成)であってもよい。組積体が組積体部の集合体よりなる場合には、板状粒子の配列方向がランダムであってもよい。
【0038】
本形態の固体電解質は、その厚さが限定されない。固体電解質の厚さは、板状粒子の縦(a),横(b),板厚(c)の各辺の長さのうち、最も長い辺の長さ(すなわち、縦(a)の長さ)より長い(厚い)ことが好ましい。この構成となることで、組積体が複数の組積体部よりなる場合に、組積体部に含まれる板状粒子の上面及び下面が積層方向(固体電解質の厚さ方向)に沿って広がる状態で配列していたとしても、その側面が別の組積体部の板状粒子と当接する。そうすると、組積体は、板状粒子同士の界面が直線状で組積体を貫通しなくなり、入り組んだ構成となる。つまり、固体電解質(組積体の焼結体)は、ネック由来部分31が入り組んだ構成となる。
【0039】
固体電解質の厚さは、具体的には、板状粒子の縦(a),横(b),板厚(c)の各辺の長さをしたときに、最も長い辺の長さ(すなわち、縦(a)の長さ)の1.3倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることが更に好ましい。さらに、本形態の固体電解質は、全体として板状粒子が広がる方向に沿って広がる板状を有し、その厚さが0.5μm以上であることが好ましい。
【0040】
組積体の形状は、本形態の固体電解質に対応する形状とすることができる。対応する形状とは、本形態の固体電解質は組積体の焼結体であることから、焼結時に生じる収縮等の体積変化を想定した形状である。
【0041】
本形態の固体電解質は、緻密体であることが好ましい。すなわち、本形態の固体電解質は、気孔率が小さければ小さいほどよい。気孔率は、20%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0042】
なお、固体電解質は、焼結体に切削や研削等の加工を施して成形したものであってもよい。例えば、正極及び/又は負極と対向する面は、研削された表面であることが好ましい。
【0043】
本形態の固体電解質は、その形状が限定されない。使用時の形状(すなわち、電池を形成したときの固体電解質の形状)とすることができる。
【0044】
[リチウムイオン二次電池]
本形態のリチウムイオン二次電池は、本形態の固体電解質を電解質に用いた電池であり、固体電解質電池である。本形態のリチウムイオン二次電池1は、
図11に示すように、正極2,固体電解質3,負極4,ケース5を有する。正極2,固体電解質3,負極4のそれぞれは、同じ径の円板形状を有し、軸心が一致して積層した状態で形成されている。
【0045】
(固体電解質)
固体電解質3は、上記の本形態の固体電解質である。
【0046】
(正極)
正極2は、Liイオン(すなわち、固体電解質3が伝導するイオン種)を吸蔵放出可能な正極活物質を有し、固体電解質3の板厚方向の一方の表面に密着して設けられた板状の部材である。
【0047】
本形態の正極2は、正極集電体20と、その表面に形成された正極活物質層21と、を有する。正極活物質層21は、正極活物質を結着剤(バインダ)や導電材とともに混合してなる正極合材を正極集電体20の表面に塗布・乾燥して形成される。正極活物質層21は、乾燥後に圧縮してもよい。
【0048】
(正極活物質)
正極活物質は、Liイオン(固体電解質3が伝導するイオン種)を吸蔵放出可能な材料であれば、具体的な化合物が限定されない。
【0049】
正極活物質としては、Li-Mn複合酸化物、Li-Ni複合酸化物、Li-Co-Al複合酸化物、Li-Ni-Co-Mn複合酸化物、スピネル型Li-Mn-Ni複合酸化物、Li-Mn-Co複合酸化物、オリビン構造のLiリン酸鉄(LiFePO4)やLiリン酸Mn(LiMnPO4)などを挙げることができる。これらの化合物より選ばれる1種を単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いても良い。
【0050】
正極活物質は、例えばLixMn2O4又はLixMnO2などのLi-Mn複合酸化物、LixNi1-yAlyO2などのLi-Ni-Al複合酸化物、LixCoO2などのLi-Co複合酸化物、LixNi1-y-zCoyMnzO2などのLi-Ni-Co複合酸化物、LixMnyCo1-yO2などのLi-Mn-Co複合酸化物、例えばLixMn2-yNiyO4などのスピネル型Li-Mn-Ni複合酸化物、例えばLixFePO4,LixFe1-yMnyPO4,LixCoPO4などのオリビン構造を有するLiリン酸化物、例えばLixFeSO4Fなどのフッ素化硫酸鉄、例えばLi3V2(PO4)3などのLi-V-P複合酸化物を挙げることができる。なお、上記各一般式において、x,yは、特に記載がない限り、0~1の範囲(境界値を含む)であることが好ましい。
【0051】
正極活物質としては、さらに、Li-M系化合物(M:K,Na,Mg,Al,Hより選ばれる少なくとも1種、化合物は酸化物,リン酸化物,酸塩化物,酸フッ化物,酸窒化物,水素化物あるいはこれらを2つ以上含む複合酸化物)を挙げることができる。
【0052】
正極活物質としてこれらから選ばれる化合物を用いると、高い正極電圧を得られるので好ましい。特に、Li-Ni-Al複合酸化物、Li-Ni-Co-Mn複合酸化物、Li-Mn-Co複合酸化物は、電池寿命を大幅に向上することができる。特にLixNi1-y-zCoyMnzO2(0<x<1.1、0<y<0.5、0<z<0.5)で表されるLi-Ni-Co-Mn複合酸化物が好ましい。Li-Ni-Co-Mn複合酸化物の使用により、より高温耐久寿命を得ることができる。
【0053】
(導電材)
導電材は、正極2の電気伝導性を確保する。導電材としては、黒鉛の微粒子,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック,ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子などを使用できるが、これらに限定されない。
【0054】
(結着剤)
結着剤は、正極活物質粒子や導電材を結着する。結着剤としては、例えば、PVDF,EPDM,SBR,NBR,フッ素ゴムなどを使用できるが、これらに限定されない。
【0055】
(正極合材)
正極合材は、溶媒に分散させて正極集電体20に塗布される。溶媒としては、通常は結着剤を溶解する有機溶媒を使用する。例えば、NMP,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,酢酸メチル,アクリル酸メチル,ジエチルトリアミン,N-N-ジメチルアミノプロピルアミン,エチレンオキシド,テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどで正極活物質をスラリー化する場合もある。
【0056】
(正極集電体)
正極集電体20は、例えば、アルミニウム,ステンレスなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0057】
(負極)
負極4は、Liイオン(すなわち、固体電解質3が伝導するイオン種)を吸蔵放出可能な負極活物質を有し、固体電解質3の板厚方向の他方の表面に密着して設けられた板状の部材である。
【0058】
本形態の負極4は、正極2と同様に、負極集電体40と、その表面に形成された負極活物質層41と、を有する。負極活物質層41は、負極活物質のみから形成しても、負極活物質を結着剤(バインダ)や導電材とともに混合してなる負極合材を負極集電体40の表面に塗布・乾燥して形成しても、いずれでもよい。負極合材から形成された負極活物質層41は、乾燥後に圧縮してもよい。
【0059】
(負極活物質)
負極活物質は、Liイオンを吸蔵・放出可能な材料であれば限定されるものではない。例えば、金属Li,Li合金,金属酸化物,金属硫化物,金属窒化物,炭素材料,シリコン材料などを挙げることができる。
【0060】
炭素材料は、例えば、黒鉛,コークス,炭素繊維,球状炭素,粒状炭素などの黒鉛系材料もしくは炭素系材料を挙げることができる。炭素材料は、熱硬化性樹脂,等方性ピッチ,メソフェーズピッチ,メソフェーズピッチ系炭素繊維,気相成長系炭素繊維,メソフェーズ小球体などに対して、熱処理を行って得られる黒鉛系材料もしくは炭素系材料であってもよい。シリコン材料としては、例えば、非晶質(アモルファス)シリコン,微結晶シリコン,多結晶シリコンを挙げることができ、これらのうちで二つ以上を組み合わせて用いても良い。シリコン材料では、結晶性が高くなるにつれて電気伝導度も高くなることが知られている。
【0061】
(導電材)
導電材は、負極4の電気伝導性を確保する。導電材としては、正極2の導電材と同様に、黒鉛の微粒子,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック,ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子などを使用できるが、これらに限定されない。さらに、導電性高分子ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどの導電性プラスチックを用いてもよい。
【0062】
(結着剤)
結着剤は、負極活物質粒子や導電材を結着する。結着剤としては、正極2の結着剤と同様に、例えば、PVDF,EPDM,SBR,NBR,フッ素ゴムなどを使用できるが、これらに限定されない。
【0063】
(負極合材)
負極合材は、溶媒に分散させて負極集電体40に塗布される。溶媒としては、通常は結着剤を溶解する水やNMP等の溶媒を使用する。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどで負極活物質をスラリー化する場合もある。
【0064】
(負極集電体)
負極集電体40としては、従来の集電体を用いることができ、銅、ステンレス、チタンあるいはニッケルなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0065】
(ケース)
ケース5は、正極2,固体電解質3及び負極4よりなる充放電要素を内部に収容する。ケース5は、リチウムイオン二次電池1の外周形状を形成する。
【0066】
ケース5は、充放電要素を内部に収容することができる形状及び材料により形成できる。例えば、直方体形状や円筒形状を有する、金属製や樹脂製のケースを挙げることができる。
【0067】
ケース5は、正極2(具体的には、正極集電体20)と電気的に接続した正極端子、負極4(具体的には、負極集電体40)と電気的に接続した負極端子、を有している。
【0068】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、以下の各工程を有する製造方法で製造される。本形態の製造方法の各工程を
図12に示した。
【0069】
(板状粒子準備工程;S1)
本工程S1は、板状粒子を準備する工程である。
【0070】
板状粒子は、組積体を構成する粒子である。本工程S1は、LiNbO3(イオン伝導性を有する材料)の板状粒子を製造する工程であっても、市販等の板状粒子を準備する工程であっても、いずれでもよい。本工程S1は、板状粒子を所定量となるように秤量する工程を含む。
【0071】
本形態では、下記の式(1)~(3)の反応を経由して板状粒子を製造した。
【0072】
【0073】
式(1)は、フラックス中でK
4Nb
6O
17を生成する反応である。式(1)の反応で生成するK
4Nb
6O
17は、
図13~
図14に拡大写真(SEM写真)で示したように、板状粒子の形状の一次粒子である。
【0074】
式(2)は、K
4Nb
6O
17をプロトン交換してH
4Nb
6O
17を生成する反応である。生成したH
4Nb
6O
17は、
図15~
図16に拡大写真(SEM写真)で示したように、プロトン交換前の板状粒子の形状が保たれている。
【0075】
式(3)は、フラックス中でH
4Nb
6O
17をLi化合物と反応させて、LiNbO
3を生成する反応である。生成したLiNbO
3は、
図17~
図18に拡大写真(SEM写真)で示したように、板状粒子の一次粒子で形成されている。この拡大写真から、式(3)の反応は、トポタクティック反応であることが確認できる。
【0076】
上記の式(1)~(3)の反応を用いた製造方法によると、
図13~
図18に示すように、板状の一次粒子の状態で板状粒子を製造できる。
【0077】
上記のように、本形態の板状粒子準備工程S1は、LiNbO3の板状粒子を一次粒子の状態で準備した。
【0078】
(ペースト調製工程;S2)
本工程S2は、板状粒子が分散したペーストを調製する工程である。
【0079】
本工程S2で調製するペーストは、板状粒子が分散媒に分散したものであり、流動性を備えたペースト(あるいは、懸濁液)である。ペーストは、分散した板状粒子の移動(変位)が規制されておらず、分散媒とともに板状粒子が流動できる。分散媒は、板状粒子を分散することができる分散媒(溶媒)であれば限定されない。分散媒(溶媒)としては、ポリプロピレンカーボネート(PPC),ポリビニルアルコール(PVA),ポリイミド(PI)等の高分子系分散剤と、1,4-ジオキサン(DO),N-メチルピロリドン(NMP),ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒より選ばれる少なくとも1種、水,水溶液等の溶媒を挙げることができる。本形態では、PC:DOが1:3の質量比で混合した混合溶媒を用いた。
【0080】
本工程S2で調製するペーストは、従来公知の添加剤を添加していてもよい。添加剤は、例えば、バインダ(結着剤),pH調整剤,分散剤,凝集剤,粘度調整剤等を挙げることができる。添加剤は、後の焼結工程S6等の工程での加熱により、消失(あるいは、揮発,焼失)するものであることが好ましい。
【0081】
(塗工工程;S3)
本工程S3は、調製したペーストを塗工する工程である。
【0082】
本工程S3では、塗工面に沿う剪断応力を付与しながらペーストを塗工面に塗工する。
【0083】
塗工面は、ペーストが塗工される表面である。塗工面は、後の工程でペースト塗工体を剥離可能な表面を備えている。本形態では、離型フィルム(シリコーン系軽剥離フィルム。東洋紡株式会社製,商品名:E7002-100μm)により塗工面が形成されている。
【0084】
本工程S3において、ペーストは、塗工面に沿う剪断応力を付与しながら塗工面に塗工される。つまり、塗工面にペーストを塗布し(あるいは、ペーストを塗工面に滴下・付着し)、塗布したペーストに所定の剪断応力が付与される。この方法でペーストを塗工すると、ペースト塗工体は、ペースト中の複数の板状粒子が所定の状態に配列する。
【0085】
本工程S3は、コート装置を用いて実施できる。本形態では、コート装置6として、
図19に概略構成を示したバーコータ60を用いた。バーコータ60は、塗工面61との間に所定の間隔を隔てた状態で配される。バーコータ60は、ペースト62を塗布した塗工面61上を、塗工面61に平行に定速で移動する。バーコータ60が移動してペースト62上を通過すると、塗工面61とバーコータ60との間隔である均一な厚さのペースト塗工体63が得られる。本形態では、254μm(10mil)の厚さのペースト塗工体63を得た。
【0086】
本形態のコート装置6は、バーコータ60が移動すると、バーコータ60がペースト62と接触する。そして、バーコータ60がペースト62と接触した状態で移動すると、ペースト62の表面近傍には剪断応力が加わる。この剪断応力は、塗工面61の広がる方向に沿った方向の応力である。この応力が加わると、ペースト62中の板状粒子が、板状粒子の広がる方向が剪断応力の方向と平行な状態(つまり、塗工面61と平行な状態)で配列する。この結果、ペースト塗工体63は、ペースト62中の板状粒子が、所定の状態に配列したものとなる。以上のように、本形態では、複数の板状粒子が所定の状態に配列した均一な厚さのペースト塗工体63が得られた。
【0087】
なお、本形態では塗工面61が平面のバーコータ60を用いたが、塗工面が湾曲面をなしているロールコータを用いてもよい。
【0088】
(乾燥工程;S4)
本工程S4は、塗工面に塗工されたペースト塗工体を乾燥する工程である。
【0089】
ペースト塗工体の乾燥は、ペースト塗工体から分散媒(溶媒)を揮発して行われる。ペースト塗工体を乾燥することで、板状粒子が所定の状態に配列した組積体が形成される。本工程S4は、塗工面から組積体を取り外す工程を含む。
【0090】
ペースト塗工体の乾燥は、ペースト塗工体から分散媒(溶媒)を揮発することができれば具体的な方法が限定されない。例えば、分散媒を常温で保持する方法、板状粒子の焼結温度未満の温度で加熱する方法、等の方法を挙げることができる。また、常圧だけでなく、減圧下で分散媒(溶媒)を揮発させてもよい。本形態では、ペースト塗工体を常温で保持して分散媒を揮発した。
【0091】
(圧縮工程;S5)
本工程S5は、乾燥したペースト塗工体を圧縮する工程である。
【0092】
ペースト塗工体(すなわち、組積体)を圧縮することで、隣接する板状粒子同士が密着した状態のペースト塗工体(緻密な組積体)となる。
【0093】
ペースト塗工体の圧縮の具体的な方法は限定されず、成形型を用いた加圧,冷間等方圧加圧(CIP),熱間等方圧加圧法(HIP)等の方法を挙げることができる。ペースト塗工体を圧縮する圧縮条件についても限定されない。所望の密度の成形体(組積体)を得られる条件(加圧力,加圧時間)を適宜選択する。本形態では、300MPa,10minの条件で冷間等方圧加圧(CIP)にて組積体を圧縮した。
【0094】
(焼結工程;S6)
本工程S6は、圧縮されたペースト塗工体(組積体)を焼結する工程である。
【0095】
ペースト塗工体(すなわち、組積体)を焼結することで、組積体を形成する板状粒子同士を焼結し、本形態の固体電解質3を製造する。本工程S6は、板状粒子同士を焼結温度で加熱する前に、焼結温度以下の温度で加熱する脱脂工程を含む。
【0096】
組積体の焼結の具体的な加熱条件は限定されない。所望の固体電解質(焼結体)を得られる条件(加熱温度,加熱時間,加熱雰囲気,加熱圧力)を適宜選択する。本形態では、常圧の大気雰囲気下で、300℃,1時間の加熱を行った後に、1000℃まで昇温し、10時間保持した。
【0097】
(正極製造工程;S7)
本工程S7は、正極活物質を有する正極2を製造する工程である。
【0098】
本形態では、正極活物質粉末を結着剤(バインダ)や導電材とともに混合してなる正極合材を正極集電体20の表面に塗布・乾燥し、圧縮して正極2を製造した。
【0099】
(負極製造工程;S8)
本工程S8は、負極活物質を有する負極4を製造する工程である。
【0100】
本形態では、負極活物質粉末を結着剤(バインダ)や導電材とともに混合してなる負極合材を負極集電体40の表面に塗布・乾燥し、圧縮して負極4を製造した。
【0101】
(組立工程;S9)
本工程S9は、正極2,固体電解質3及び負極4から、リチウムイオン二次電池1を組み立てる工程である。
【0102】
本形態では、正極2の正極活物質層21の表面が固体電解質3の一方の表面に対向(密着)し、かつ負極4の負極活物質層41の表面が固体電解質3の他方の表面に対向(密着)した状態に積層し、積層体をケース5に封入してリチウムイオン二次電池1を組み立てた。
【0103】
本工程S9において、正極2,固体電解質3及び負極4の積層体は、積層方向に圧縮して密着させてもよい。さらに、積層体のケース5への封入は、正極集電体20と正極端子とを、及び負極集電体40と負極端子とを、それぞれ接続する工程や、ケース5を封止する工程を含む。
【0104】
以上により、本形態のリチウムイオン二次電池1(固体電解質電池)が製造された。なお、本形態の製造方法において、塗工工程S3は請求項の塗工工程に、焼結工程S6は請求項の焼結工程に、正極製造工程S7~組立工程S9は請求項の電極形成工程に、それぞれ相当する。
【0105】
[効果]
本形態の固体電解質は、イオン伝導性を有する材料としてのLiNbO3から形成した板状粒子が所定の状態で配列して形成された組積体の焼結体である。
【0106】
一般的に、焼結体は、当接した粒子の当接部同士を接合してネックを形成し、ネックが成長するように焼結反応が進行して形成される。焼結体は、原料の粒子由来部分とネック由来部分とでは、同一の組成を有しているが、両部分の結晶構造が異なる。粒子由来部分は、ネック由来部分と比較して、高い硬度を備えている。
【0107】
そして、本形態の固体電解質3を用いたリチウムイオン二次電池1(固体電解質電池)は、所定の充電条件よりも厳しい充電(過充電や急速充電)を行うと、負極4の表面(固体電解質3と負極4の界面)にデンドライトが生成する。そして、この充電が継続すると、正極2に向けてデンドライトが成長する。成長したデンドライトは、固体電解質3中のネック由来部分(あるいは、原料の粒子由来部分の周縁部)に沿って成長する。ここで、固体電解質3中に板状粒子の間のすき間に由来する細孔が存在している場合には、当該細孔を結ぶように、デンドライトが成長する。
【0108】
本形態の固体電解質3は、組積体の板状粒子の配置のままに焼結したものであり、ネック由来部分が入り組んだ構成を有している。
図7に模式図で示したように、本形態の固体電解質3を貫通して成長するデンドライトは、負極4から正極2に向けて成長するときに、その伸びる方向が何度も折れ曲がる。すなわち、成長方向が折れ曲がる迷路効果が発揮される。この結果、負極4から正極2にデンドライトが到達しにくくなり、リチウムイオン二次電池1の内部短絡の発生が抑えられる。
【0109】
対して、粉末粒子の焼結体よりなる従来構成の固体電解質3では、
図8に模式図で示したように、ネック由来部分は、固体電解質3の厚さ方向の長さとほぼ一致する。この従来構成の固体電解質3を用いたリチウムイオン二次電池1では、負極4から正極2に向けて成長するデンドライトは、迷路効果が発揮されずに直ちに短絡を引き起こす。
【0110】
以上に詳述したように、本形態の固体電解質3及びそれを用いたリチウムイオン二次電池1は、デンドライトの成長による内部短絡の発生が抑えられる効果を発揮する。すなわち、デンドライトの発生及び成長による損傷が抑えられたものとなっている。
【0111】
そして、本形態の固体電解質3において、組積体を形成する板状粒子が、縦:横の長さの比が1~3:1であり、かつ横:板厚の長さの比が1.3~4:1である。板状粒子がこの比を有する外周形状を備えることで、板状粒子が所定の状態に配列した組積体(及び焼結体)を形成できる。
【0112】
本形態の固体電解質3において、板状粒子は、平均粒径(D50)が2.0μm~8.0μmである。板状粒子の平均粒径がこの範囲となることで、板状粒子が所定の状態に配列した組積体(及び焼結体)となる。
【0113】
本形態の固体電解質3において、板状粒子は、粒度分布において、小径からの25%累積値(D25)と75%累積値(D75)との間の長さが平均粒径(D50)の長さの34~230%である。板状粒子がこの粒度分布をもつことで、組積体(及び焼結体)を形成したときに、粒子同士の当接部(ネック由来部分)が入り組んだ構成となる。
【0114】
本形態の固体電解質3は、前記板状粒子が広がる方向に沿って広がる板状を有し、その厚さが0.5μm以上である。この構成によると、ネック由来部分が入り組んだ構成を有したものとなり、より確実に上記の効果を発揮する。
【0115】
本形態の固体電解質3において、イオン伝導性を有する材料は、LiNbO3である。イオン伝導性を有する材料がLiNbO3であることで、固体電解質3がLiイオンを伝導する。
【0116】
本形態のリチウムイオン二次電池1(固体電解質電池)は、上記の効果を発揮する固体電解質3を用いてなるものであり、同様な効果を発揮する。
【0117】
本形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法(固体電解質電池の製造方法)は、ペーストを調製し、剪断応力を付与しながらペーストを塗工面に塗工する工程を備えていることから、板状粒子が所定の状態に配列した組積体及びその焼結体を製造することができる。この結果、上記の効果を発揮するリチウムイオン二次電池1を製造することができる。
【0118】
本形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法は、塗工工程S3がバーコータでペーストを塗工面に塗工する工程である。この工程S3によると、板状粒子が所定の状態に配列した組積体を製造することができる。
【0119】
本形態の製造方法は、板状粒子が、フラックス法で板状の中間生成物を生成し、中間生成物からイオン交換法で最終生成物として製造される。この反応経路を利用することで、板状粒子を形成しにくいLiNbO3であっても、板状粒子の一次粒子を形成できる。この結果、イオン伝導性に優れたLiNbO3よりなる固体電解質3及びリチウムイオン二次電池1を製造することができる。
【0120】
より具体的には、フラックス法を用いない製造方法(例えば、焼成による製造方法)でLiNbO
3を製造すると、略球状の一次粒子となる。略球状の一次粒子の焼結体よりなる固体電解質3は、上記した
図8に模式図で示した構造を有する。つまり、上記の迷路効果を発揮できない。これに対し、本形態では、フラックス法で板状の中間生成物を生成することで、板状形状の粒子形状をもつLiNbO
3を製造することができる。このように、フラックス法を用いることで、結晶成長の方向が異なる材料であっても、板状粒子の一次粒子を製造することができる。
【0121】
本形態の製造方法では、板状粒子の組積体を形成し(工程S1~S4)、圧縮して緻密な組積体とし(工程S5)、焼結(工程S6)することで、緻密な固体電解質3が製造される。緻密な固体電解質3は、デンドライトの成長が抑えられる効果をより発揮できる。
【0122】
本形態の製造方法の工程S4が施された状態の組積体の切断面を拡大写真で
図20に、工程S5が施された状態の組積体(圧縮した組積体)の切断面を拡大写真で
図21に、本形態の固体電解質3(工程S6が施されてなる焼結体)の切断面を拡大写真で
図22に、それぞれ示した。
【0123】
本形態の製造方法では、バーコータ60でペースト62を塗工面61に塗工する塗工工程S3を施している。この工程を施すことで、
図20~
図21に示すように、板状粒子(一次粒子)が所定の状態に配列した組積体を形成できる。
【0124】
図20に示すように、工程S4が施された状態の組積体は、板状粒子(一次粒子)が所定の状態に配列している。
図21に示すように、工程S5が施されてなる圧縮した組積体は、隣接する板状粒子同士が当接した状態(具体的には、板状粒子の上面と下面とが面接触した状態)で板状粒子(一次粒子)が配されている。さらに、圧縮した組積体は、表面近傍と内部を比較すると、CIPの成形型に当接する表面近傍は密な状態で、内部はすき間が多い疎な状態で、複数の板状粒子が配されている。
図22に示すように、工程S6が施されてなる焼結体は、圧縮した組積体が焼結したものであり、圧縮した組積体と同様に、表面近傍と内部とでは部分的な密度に差がある。さらに、疎な部分では、
図22に示すように、板状粒子の粒子形状が残存しており、板状粒子の表面に沿った形状の細孔が残存している。
【0125】
[変形形態]
本形態は、製造方法が異なること以外は、実施形態1と同様な構成のリチウムイオン二次電池1である。本形態において、特に言及しない構成は、実施形態1と同様である。
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、焼結工程S6が異なること以外は、実施形態1の製造方法と同様な製造方法で製造される。
【0126】
(焼結工程;S6)
本形態の製造方法での焼結工程S6は、圧縮されたペースト塗工体(組積体)を赤外線加熱炉で焼結する工程である。
赤外線加熱炉は、赤外線ランプから発せられる赤外線を被加熱物(組積体)に集光して加熱する加熱炉である。赤外線加熱炉は、焼結温度までの昇温を素早く行うことができる(急速加熱が可能)。また、赤外線加熱炉は、加熱を停止することで冷却(放冷)が開始する(急速冷却が可能)。
【0127】
赤外線加熱炉での組積体の焼結の具体的な加熱条件は、実施形態1の場合と同様に限定されない。所望の固体電解質(焼結体)を得られる条件(加熱温度,加熱時間,加熱雰囲気,加熱圧力)を適宜選択する。本形態では、常圧の大気雰囲気下で、300℃,1時間の加熱を行った後に、1000℃まで昇温し、0.08時間(4分48秒)保持した。また、1000℃での保持後、直ちに加熱炉の通電を終了し、冷却(放冷)を行った。
【0128】
[効果]
本形態の固体電解質3、リチウムイオン二次電池1及びその製造方法は、実施形態1と同様な効果を発揮する。
また、本形態の製造方法は、焼結工程S6での加熱を赤外線加熱炉で行う。赤外線加熱炉は、急速加熱、急速冷却での処理(焼結処理)が可能な加熱炉である。本形態の製造方法では、実施形態1と比べて焼結時間(1000℃で保持される時間)を短くしているが、実施形態1の固体電解質3と同様な構成の固体電解質3が製造できる。つまり、本形態の製造方法によると、短時間で固体電解質3及びリチウムイオン二次電池1を製造できる。
【0129】
本形態の固体電解質3は、板状粒子の粒子形状を維持した状態で、板状粒子(組積体)が焼結した構造を有する。一般的に、粉末を焼結温度に加熱すると、隣接する粉末粒子の当接部にネックが形成される反応と、固体表面の拡散と粒成長が生じて粉末粒子が丸くなる反応と、が生じる。焼結温度に保持される時間が長くなるほど、これら二つの反応が進行する。そして、本形態の製造方法では焼結温度に保持される時間を短くしているが、板状粒子同士のネックを形成する反応は進行する。また、焼結温度に保持される時間を短くすることで、板状粒子が丸くなる反応が過剰に進行することが抑えられる。さらに、本形態の製造方法では焼結温度での保持が終了したら直ちに冷却が開始され、組積体(焼結体)の温度が低下して焼結温度より低い温度(焼結反応が生じにくい温度)となり、焼結反応が停止する。
この結果、本形態によると、粒成長で板状粒子が丸くなる前に焼結工程S6(焼結処理,加熱処理)が終了し、板状粒子が配列した状態のまま、粒成長が抑えられた状態で焼結した組織を有する固体電解質3となる。本形態の固体電解質3は、ネック由来部分がより入り組んだ構成を有したものとなる効果を発揮する。
【0130】
本形態の固体電解質3は、上記のように粒成長が抑えられた状態で板状粒子(組積体)が焼結した構造を有している。焼結体において、板状粒子由来の部分の形状(すなわち、ネック由来の部分を除いた部分の形状)が、上記の縦:横:板厚の長さの比の範囲に含まれていることが好ましい。
【0131】
なお、本形態では赤外線加熱炉で焼結しているが、赤外線加熱炉に替えて急速加熱及び急速冷却が可能な加熱装置(焼結炉)を用いても同様の効果を発揮できる。このような加熱装置としては、マイクロ波加熱装置、プラズマ加熱装置、トンネル炉、誘導加熱装置等の装置を挙げることができる。
【0132】
[実施形態2]
本形態は、負極4の構成が異なること以外は、実施形態1と同様な構成のリチウムイオン二次電池1である。本形態の固体電解質3は、実施形態1と同様である。本形態において、特に言及しない構成は、実施形態1と同様である。
【0133】
[リチウムイオン二次電池]
本形態のリチウムイオン二次電池は、正極2,固体電解質3,負極4,ケース5を有する。
【0134】
(負極)
負極4は、固体電解質3に溶着した金属Liよりなる。すなわち、負極4は、金属Liよりなる負極活物質のみからなる。
【0135】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、
図23に示した各工程を有する製造方法で製造される。
【0136】
本形態の製造方法において、板状粒子準備工程S1~正極製造工程S7は、実施形態1の各工程と同様である。
【0137】
(負極溶着工程;S8)
本工程S8は、固体電解質3の他方の表面に負極活物質(金属Li)を溶着して一体に形成する工程である。
【0138】
本形態では、負極活物質である金属Liを固体電解質3の他方の表面上に載置し、加熱・溶融させた後に冷却することで、固体電解質3の他方の表面に負極活物質(金属Li)を所定の厚さで一体に溶着する。なお、本形態では、金属Liを加熱・溶融・冷却により一体に溶着しているが、この方法に限定されない。例えば、CVD,PVD等の方法を用いて一体に負極4を形成してもよい。
【0139】
(組立工程;S9)
本工程S9は、負極4が溶着した固体電解質3と正極2から、リチウムイオン二次電池1を組み立てる工程である。
【0140】
本形態では、正極2の正極活物質層21の表面が固体電解質3の一方の表面に対向(密着)した状態でケース5に封入する。
【0141】
以上により、本形態のリチウムイオン二次電池1(固体電解質電池)が製造された。なお、本形態の製造方法において、塗工工程S3は請求項の塗工工程に、焼結工程S6は請求項の焼結工程に、正極製造工程S7~組立工程S9は請求項の電極形成工程に、それぞれ相当する。
【0142】
[効果]
本形態の固体電解質3、リチウムイオン二次電池1及びその製造方法は、実施形態1と同様な効果を発揮する。
【0143】
さらに、本形態のリチウムイオン二次電池1は、固体電解質3に負極4が溶着により一体に形成されている。この構成によると、固体電解質3の他方の表面の微細な凹凸の内部にまで負極4の金属Liが浸入している。つまり、固体電解質3に対して負極4がアンカー効果を発揮する強固な結合を形成する。この結果、負極4と固体電解質3との界面で剥離が生じなくなる。
【0144】
さらに、固体電解質3と負極4との界面の全て(すなわち、固体電解質3の他方の表面の微細な凹凸の表面を含む全ての表面)でLiイオンの移動が可能となり(すなわち、負極活物質へのLiイオンの脱挿入が可能となり)、一度に多量のLiイオンの移動が可能となる。すなわち、高い電池性能を発揮できる。
【0145】
本形態の製造方法では、固体電解質3(焼結体)の他方の表面に、負極4の材料(負極活物質,金属Li)を溶着して負極4を形成する工程を有している。この工程を有することで、上記の効果を発揮するリチウムイオン二次電池1を製造できる。
【0146】
[実施形態3]
本形態は、正極2及び負極4の構成が異なること以外は、実施形態1と同様な構成のリチウムイオン二次電池1である。本形態の固体電解質3は、実施形態1と同様である。本形態において、特に言及しない構成は、実施形態1と同様である。
【0147】
[リチウムイオン二次電池]
本形態のリチウムイオン二次電池は、
図24に断面図で構成を示すように、正極2,固体電解質3,負極4,ケース5を一体に有する。
【0148】
(正極)
正極2は、実施形態1の正極活物質の焼結体である。すなわち、正極2は、正極活物質のみからなる。なお、正極2は、導電材等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0149】
(負極)
負極4は、実施形態1の負極活物質の焼結体である。すなわち、負極4は、負極活物質のみからなる。なお、負極4が焼結体であることから、負極活物質は、焼結可能な材料(すなわち、金属Li以外の材料)から選択される。負極4は、導電材等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0150】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、
図25に示した各工程を有する製造方法で製造される。
【0151】
本形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法において、板状粒子準備工程S1~焼結工程S6は、実施形態1の各工程と同様である。
【0152】
(正極製造工程;S7)
本工程S7は、正極2を製造する工程である。
【0153】
本形態では、正極活物質の粉末を所定の形状に圧縮成形し、成形体を焼結して正極2を製造する。
【0154】
正極活物質の粉末は、その粒度特性(例えば、D50,D25,D75等の粒度分布特性)については限定されない。
【0155】
圧縮成形の成形方法や成形条件についても限定されない。成形体が所定の密度を有するように圧縮できる条件であることが好ましい。
【0156】
成形体の焼結は、成形体の正極活物質が焼結する条件で行う。すなわち、正極活物質の材料や成形体の形状に応じて適宜決定される。
【0157】
(負極製造工程;S8)
本工程S8は、負極活物質を有する負極4を製造する工程である。
【0158】
本形態では、負極活物質の粉末を所定の形状に圧縮成形し、成形体を焼結して負極4を製造する。
【0159】
負極活物質の粉末は、その粒度特性(例えば、D50,D25,D75等の粒度分布特性)については限定されない。
【0160】
圧縮成形の成形方法や成形条件についても限定されない。成形体が所定の密度を有するように圧縮できる条件であることが好ましい。
【0161】
成形体の焼結は、成形体の負極活物質が焼結する条件で行う。すなわち、負極活物質の材料や成形体の形状に応じて適宜決定される。
【0162】
(組立・焼結工程;S9)
本工程S9は、正極2,固体電解質3,負極4を積層した状態に組み立て、正極2,固体電解質3,負極4を焼結して一体にする工程である。
【0163】
本工程では、正極2(焼結体)が固体電解質3の一方の表面に対向し、負極4(焼結体)が固体電解質3の他方の表面に対向し、かつそれぞれが密着した状態で積層する。そして、この積層体を焼結する。
【0164】
積層体において、正極2,固体電解質3,負極4は、各界面において全面で当接することが好ましく、当接面は平面に成形されていることがより好ましい。界面の全面で当接すると、焼結したときに当接面の全面で接合することとなり、強固な接合体(焼結体)となる。また、全面で接合することで、正極2及び負極4の界面の全面でLiイオンが脱挿入することとなり、Liイオンの脱挿入が部分的に集中しなくなる。
【0165】
積層体を焼結するときの焼結条件についても限定されない。正極2,固体電解質3,負極4が一体に焼結する焼結温度,焼結時間,焼結雰囲気を用いることができる。
【0166】
なお、本形態では、正極2,固体電解質3,負極4を一度の焼結で一体に接合しているが、正極2と固体電解質3との焼結と、負極4と固体電解質3との焼結と、を別々の工程で行ってもよい。
【0167】
本工程S9は、正極2,固体電解質3,負極4を一体に焼結した後に、ケース5に封入する。正極2及び負極4は、それぞれ正極端子又は負極端子を溶着して接合した状態でケース5に封入される。この場合、正極2に溶着した正極端子及び負極4に溶着した負極端子は、集電体としても機能する。
【0168】
以上により、本形態のリチウムイオン二次電池1(固体電解質電池)が製造された。なお、本形態の製造方法において、塗工工程S3は請求項の塗工工程に、焼結工程S6は請求項の焼結工程に、正極製造工程S7~組立・焼結工程S9は請求項の電極形成工程に、それぞれ相当する。
【0169】
[効果]
本形態の固体電解質3、リチウムイオン二次電池1及びその製造方法は、実施形態1と同様な効果を発揮する。
【0170】
本形態のリチウムイオン二次電池1は、固体電解質3,正極2及び負極4が、焼結で一体に形成されている。この構成によると、固体電解質3,正極2及び負極4が強固に結合したものとなり、強度が向上する。また、焼結により固体電解質3と正極2又は負極4との界面(境界が明確な界面)の量が減少しており、Liイオンが移動するときの界面抵抗が減少する。この結果、リチウムイオン二次電池1は、内部抵抗が減少したものとなっている。
【0171】
本形態の製造方法では、固体電解質3(焼結体)の一方の表面に正極2(正極2の材料)を、他方の表面に負極4(負極4の材料)をそれぞれ配し、積層体を焼結する工程を有している。この工程を有することで、固体電解質3,正極2及び負極4が、一体に焼結したものとなり、上記の効果を発揮できる。
【0172】
[実施形態4]
本形態は、正極2の構成が異なること以外は、実施形態3と同様な構成のリチウムイオン二次電池1である。本形態の固体電解質3及び負極4は、実施形態2と同様である。本形態において、特に言及しない構成は、実施形態2と同様である。
【0173】
[リチウムイオン二次電池]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極2,固体電解質3,負極4,ケース5を有する。
【0174】
(正極)
正極2は、実施形態2の正極活物質とLiNbO3とが均一に混合した焼結体である。なお、正極2は、導電材等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0175】
本形態の正極2において、正極活物質とLiNbO3の質量比は限定されないが、正極活物質の質量が多いことが好ましい。正極活物質とLiNbO3の合計の質量を100%としたときに、正極活物質が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
【0176】
本形態の正極2において、正極活物質とLiNbO3は、均一に混在している。LiNbO3は、Liイオンに対するイオン伝導性を有する。
【0177】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、
図26に示した各工程を有する製造方法で製造される。
【0178】
本形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法において、板状粒子準備工程S1~圧縮工程S5は、実施形態3の各工程と同様である。
【0179】
(正極グリーンシート製造工程;S6)
本工程S6は、正極2のグリーンシートを製造する工程である。
【0180】
本形態では、正極活物質とLiNbO3との混合粉末を所定の形状に圧縮成形し、成形体(正極2の正極グリーンシート)を製造する。
【0181】
LiNbO3の粉末は、粒子形状が限定されない。つまり、固体電解質3の製造に用いた板状粒子であっても、球状粒子であっても、いずれでもよい。LiNbO3の粉末は、その粒度特性(例えば、D50,D25,D75等の粒度分布特性)についても限定されない。ただし、正極活物質の粒子と混合したときに、均一に混合できる粒度特性であることが好ましい。
【0182】
正極活物質とLiNbO3との混合粉末は、正極活物質の粉末とLiNbO3の粉末とが均一に混合した状態であればよく、分散媒に分散した状態であってもよい。また、混合粉末は、従来公知の添加剤が添加されていてもよい。
【0183】
圧縮成形の成形方法や成形条件についても限定されない。成形体が所定の密度を有するように圧縮できる条件であることが好ましい。
【0184】
本工程S6で製造される成形体(正極グリーンシート)は、乾燥していることが好ましい。すなわち、成形体(正極グリーンシート)は、乾燥工程S4と同様な工程を施して乾燥していることが好ましい。成形体(正極グリーンシート)が乾燥していることで、組立・焼結工程S8で焼結したときに、乾燥ムラに起因する焼結不良が発生することが抑えられる。
【0185】
(負極グリーンシート製造工程;S7)
本工程S7は、負極4のグリーンシートを製造する工程である。
【0186】
本形態では、負極活物質の粉末を所定の形状に圧縮成形し、成形体(負極4のグリーンシート)を製造する。
【0187】
本工程S7においても、正極グリーンシート製造工程S6と同様に、成形体(グリーンシート)は、添加剤や分散媒を用いてもよい。
【0188】
本工程S7で製造される成形体(負極グリーンシート)は、乾燥していることが好ましい。すなわち、成形体(負極グリーンシート)は、乾燥工程S4と同様な工程を施して乾燥していることが好ましい。成形体(負極グリーンシート)が乾燥していることで、組立・焼結工程S8で焼結したときに、乾燥ムラに起因する焼結不良が発生することが抑えられる。
【0189】
(組立・焼結工程;S8)
本工程S8は、正極2の成形体(正極グリーンシート),固体電解質3の成形体,負極4の成形体(負極グリーンシート)を積層し、この積層体を焼結して一体の焼結体を製造する工程である。
【0190】
本形態では、正極2の成形体(正極グリーンシート)が固体電解質3の成形体の一方の表面に対向し、負極4の成形体(負極グリーンシート)が固体電解質3の成形体の他方の表面に対向した状態で積層する。このとき、積層体は、各界面で密着するように積層方向で圧縮することが好ましい。そして、積層体を焼結する。
【0191】
積層体を焼結するときの焼結条件についても限定されない。正極2,固体電解質3,負極4が一体に焼結する焼結温度,焼結時間,焼結雰囲気を用いることができる。
【0192】
本工程S8では、正極2,固体電解質3,負極4の焼結体を製造した後に、ケース5に封入する。
【0193】
以上により、本形態のリチウムイオン二次電池1(固体電解質電池)が製造された。なお、本形態の製造方法において、塗工工程S3は請求項の塗工工程に、組立・焼結工程S8は請求項の焼結工程に、それぞれ相当する。
【0194】
[効果]
本形態は、実施形態3と同様な効果を発揮する。
【0195】
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極2が、固体電解質3を形成する材料(LiNbO3)を含有する。この材料は、イオン伝導性を有する材料である。
【0196】
この構成によると、正極2の内部にイオン伝導性を持つLiNbO3が存在する。このため、正極2の内部にまでLiイオンが伝導しやすくなっており、正極活物質に挿入・脱離する反応が、正極2の内部でも進行する。つまり、正極2の全体でLiイオンが正極活物質に挿入・脱離する反応が進行し、反応するLiイオン量が増加する。この結果、リチウムイオン二次電池1の電池性能が向上する。
【0197】
さらに、正極2中のLiNbO3と固体電解質3と同じ材質であるため、工程S8で焼結したときにLiNbO3同士が結合し、正極2と固体電解質3とがより強固に一体に結合する。この構成によると、正極2,固体電解質3,負極4が強固に結合したものとなり、全体の強度が向上する。
【0198】
[実施形態5]
本形態は、正極2の構成が異なること以外は、実施形態4と同様な構成のリチウムイオン二次電池1である。本形態の固体電解質3及び負極4は、実施形態4と同様である。本形態において、特に言及しない構成は、実施形態4と同様である。
【0199】
[リチウムイオン二次電池]
(正極)
正極2は、実施形態2の正極活物質とLiNbO3とが所定の状態に混合した焼結体である。なお、正極2は、導電材等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0200】
本形態の正極2は、
図27に断面図で示すように、正極活物質とLiNbO
3とが、固体電解質3との対向面から背向面側に進むにつれて、LiNbO
3の含有割合が減少した状態で混在している。具体的には、本形態の正極2は、正極活物質とLiNbO
3との含有割合が異なる3層が一体に接合した構造を有している。そして、固体電解質3との対向面から背向面に向かうにつれて、LiNbO
3の含有割合が最も多い接合層22、接合層22よりLiNbO
3の含有割合が少ない中間層23、中間層23よりLiNbO
3の含有割合が少ない活物質層24、の順に積層して形成されている。LiNbO
3の含有割合は、接合層22>中間層23>活物質層24となっている。正極活物質の含有割合は、活物質層24>中間層23>接合層22となっている。
【0201】
本形態の正極2は、正極活物質とLiNbO3が、固体電解質3との結合界面にLiNbO3が多く存在している状態である。本形態の正極2は、正極活物質とLiNbO3の混合割合が異なる3層が積層して形成されているが、層数は、含有割合が徐々に変化する2層以上であれば限定されない。また、本形態の正極2は、含有割合が階段状に変化しているが、含有割合がなめらかに変化していてもよい。
【0202】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極グリーンシート製造工程S6が異なること以外は、実施形態4と同様な製造方法で製造される。
【0203】
(正極グリーンシート製造工程;S6)
本工程S6は、正極2のグリーンシートを製造する工程である。
【0204】
本工程S6は、正極活物質とLiNbO3との混合粉末を予め決められた割合で含まれるように調製し、それぞれの混合粉末を圧縮成形し、各成形体を濃度勾配を有する状態で積層して成形体(正極グリーンシート)を製造する工程である。
【0205】
本形態では、実施形態3と同様な方法で、正極活物質とLiNbO3との含有割合が異なる3つの層の成形体(接合層22、中間層23、活物質層24の各層の原料粉末の成形体)を製造する。
【0206】
そして、製造した3つの層の成形体を、接合層22、中間層23、活物質層24となる順序で積層する。積層体は、積層方向に圧縮して各層同士を密着する。
【0207】
以上により、正極グリーンシートが製造された。
【0208】
なお、本工程S6で製造される成形体(正極グリーンシート)は、実施形態4と同様に、乾燥していることが好ましく、同様な工程を施して乾燥させることが好ましい。
【0209】
[効果]
本形態は、実施形態4と同様な効果を発揮する。
【0210】
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極2が、固体電解質3を形成する材料(LiNbO3)を含有する。そして、正極2は、固体電解質3との対向面から背向面に向かうにつれて、LiNbO3の含有割合が減少するように、接合層22、中間層23、活物質層24が形成されている。
【0211】
この構成によると、正極2の固体電解質3との界面では多量のLiNbO3が存在する。この焼結体は、LiNbO3が固体電解質3と同材質であるため、焼結したときにより強固に一体に結合する。また、正極2の固体電解質3との界面と背向する背向面では多量の正極活物質が存在し、高い電池容量を発揮する。
【0212】
[実施形態6]
本形態は、イオン伝導性を有する材料が上記の各形態と異なる固体電解質である。つまり、上記の各形態の固体電解質は、イオン伝導性を有する材料としてLiNbO3を用いているが、イオン伝導性を有する材料であれば、LiNbO3以外の材料を用いて固体電解質を形成してもよい。
【0213】
イオン伝導性を有する材料において、伝導するイオン種は限定されない。すなわち、固体電解質に伝導するイオン種は限定されるものではない。この伝導するイオン種としては、従来の固体電解質において伝導可能なイオン種をあげることができる。Liイオン(Li+)以外のイオンとしては、例えば、Naイオン(Na+),Mgイオン(Mg2+),Kイオン(K+),Caイオン(Ca2+),Alイオン(Al3+),Oイオン(O2-),Hイオン(H+),OHイオン(OH-),Fイオン(F-),Clイオン(Cl-),ヒドリドイオン(H-)等のイオンをあげることができる。これらのイオンのうち、Liイオン(Li+)であることがより好ましい。
【0214】
板状粒子のイオン伝導性を有する材料は、イオンを伝導できる材料であれば、その具体的な組成は限定されない。以前から知られた固体電解質の材料をあげることができる。なお、以下に例示する化合物は、他の元素(例えば、遷移金属元素等)で一部が置換(又は固溶)したものや、格子欠陥を有する結晶よりなるものを含む。
【0215】
Liイオンを伝導できる材料としては、例えば、酸化物系固体電解質材料,硫化物系固体電解質材料,窒化物系固体電解質材料,ハロゲン化物系固体電解質材料,アンチペロブスカイト型構造電解質材料等の無機固体電解質材料を挙げることができる。
【0216】
硫化物系固体電解質材料としては、例えば、Li2S-P2S5,Li2S-P2S5-LiI,Li2S-P2S5-LiCl,Li2S-P2S5-LiBr,Li2S-P2S5-Li2O,Li2S-P2S5-Li2O-LiI,Li2S-SiS2,Li2S-SiS2-LiI,Li2S-SiS2-LiBr,Li2S-SiS2-LiCl,Li2S-SiS2-B2S3-LiI,Li2S-SiS2-P2S5-LiI,Li2S-B2S3,Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。),Li2S-GeS2,Li2S-SiS2-Li3PO4,Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。),Li10GeP2S12等を挙げることができる。
【0217】
酸化物系固体電解質材料としては、例えば、Li2O-B2O3-P2O5,Li2O-SiO2,LiLaTaO(例えば、Li5La3Ta2O12),LiLaZrO(例えば、Li7La3Zr2O12。いわゆるLLZ。),LiBaLaTaO(例えば、Li6BaLa2Ta2O12),Li1+xSixP1-xO4(0≦x<1、例えば、Li3.6Si0.6P0.4O4),Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0≦x≦2),Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(0≦x≦2),Li3PO(4-3/2x)Nx(0≦x<1)等を挙げることができる。
【0218】
窒化物系固体電解質材料としては、例えばLi3NやLi3PO4-xNxを挙げることができ、ハロゲン化物系固体電解質材料としては、例えばLiI等を挙げることができる。
【0219】
アンチペロブスカイト型構造電解質材料(一般式:Li3OX)としては、例えば、Li3OClxBry(x+y=1),Li2OHClxBry(x+y=1),Li2(OH)0.9F0.1ClxBry(x+y=1)等を挙げることができる。
【0220】
Liイオンを伝導できる材料としては、リチウムイオン伝導性セラミックスをあげることができる。リチウムイオン伝導性セラミックスとしては、例えば、Li-La-Ti-O系のセラミックス(LLTO)をあげることができ、具体的には、Li3xLa(2/3)-x□(1/3)-2xTiO3(組成式中、□は格子欠陥を示す)を挙げることができる。
【0221】
Liイオンを伝導できる材料としては、チタン酸リチウムをあげることができる。チタン酸リチウムとしては、Li-Ti-O系の化合物をあげることができ、具体的には、Li2TiO3を挙げることができる。
【0222】
Naイオンを伝導できる材料(Naイオン伝導固体電解質)としては、例えば、Na2Ti3O7,Na3PS4,Na3PO4,Na3PS4-Na3PO4-Al2O3,
Na3Zr2Si2PO12等の化合物を挙げることができる。
【0223】
Kイオンを伝導できる材料(Kイオン伝導固体電解質)としては、例えば、K4Nb6O17,KTiNbO5等の化合物を挙げることができる。
【0224】
Clイオンを伝導できる材料(Clイオン伝導固体電解質)としては、例えば、LaOCl等の化合物を挙げることができる。
【0225】
上記のイオン伝導性を有する材料の板状粒子を、
図28~
図33に拡大写真で例示する。
図28には、Li
3xLa
(2/3)-x□
(1/3)-2xTiO
3の板状粒子を示した。
図29には、Li
2TiO
3の板状粒子を示した。
図30には、Na
2Ti
3O
7の板状粒子を示した。
図31には、K
4Nb
6O
17の板状粒子を示した。
図32には、KTiNbO
5の板状粒子を示した。
図33には、LaOClの板状粒子を示した。
【0226】
図28~
図33に拡大写真で示したように、LiNbO
3以外の材料を用いても、それぞれの材料で板状粒子を形成できる。
【0227】
これらの材料の板状粒子は、例えば、実施形態1と同様にして組積体を形成することができる。さらに、これらの材料は無機酸化物であることから、LiNbO3と同様に板状粒子を焼結で結合できる。すなわち、これらの材料を用いても、上記の各形態と同様に、組積体を形成し、組積体を焼結して焼結体(すなわち、固体電解質)を形成できる。そして、その焼結体(固体電解質)は、上記の各形態の固体電解質3と同様に、ネック由来部分31と粒子由来部分30とを有している。つまり、本形態の固体電解質は、上記の各形態の固体電解質3と同様な結晶構造を有している。
【0228】
なお、固体電解質3のイオン伝導性を有する材料としてLiNbO3以外の材料を用いた場合、すなわち、伝導するイオン種がLiイオン以外のイオンの場合には、本発明の固体電解質電池は、当該イオンが伝導する電池となる。この電池としては、酸化物イオン(O2-)がイオン種となる燃料電池(具体的には、固体酸化物型燃料電池、SOFC),水酸化物イオン(OH-)がイオン種となる空気電池,ナトリウムイオン(Na+)がイオン種となるナトリウムイオン電池,カリウムイオン(K+)がイオン種となるカリウムイオン電池,マグネシウム(Mg2+)やアルミニウムイオン(Al3+)などの多価カチオンがイオン種となる多価イオン電池,ヒドリドイオン(H-)や塩化物イオン(Cl-),フッ化物イオン(F-)がイオン種となるアニオンイオン電池,水素イオン(H+)がイオン種となるレドックスフロー電池等の電池を形成できる。
【0229】
さらに、本形態の固体電解質は上記の各形態の固体電解質3と同様な結晶構造を有しており、各形態と同様なリチウムイオン二次電池1(あるいは、伝導するイオン種により異なる固体電解質電池)を形成できる。
【0230】
さらに、上記の各形態の製造方法を用いて固体電解質電池を製造することができる。
【0231】
[効果]
本形態の固体電解質は、実施形態1~5の固体電解質と同様な効果を発揮する。すなわち、固体電解質3のイオン伝導性を有する材料がLiNbO3以外の材料であっても、上記の各形態と同様な効果を発揮できる。
【0232】
特に、LiNbO3以外の材料が板状粒子を形成しにくい材料であっても、本発明の製造方法を用いると板状粒子を製造できる。この結果、イオン伝導性に優れかつデンドライトの発生及び成長による損傷(及び短絡の発生)が抑えられた固体電解質3及び固体電解質電池を製造することができる。
【0233】
[各形態の他の効果]
上記の各形態の固体電解質は、板状粒子が所定の状態に配列した組積体の焼結体よりなる。
【0234】
この固体電解質3(焼結体)は、上記のように、粒子由来部分30とネック由来部分31とを備えている。粒子由来部分30は、ネック由来部分31と比較して、高い硬度を備えている。
【0235】
そして、固体電解質(焼結体)に物理的な衝撃や熱衝撃が加わると、亀裂が発生することがある。亀裂は、固体電解質3(焼結体)において比較的硬度が低いネック由来部分31に発生する。そして、発生した亀裂が進展する場合、ネック由来部分31(あるいは、原料の粒子由来部分30の周縁部)に沿って進展する。
【0236】
各形態の固体電解質は、ネック由来部分31が入り組んだ構成を有しており、
図34に模式図で示すように、固体電解質3を貫通するように亀裂が進展しても、ネック由来部分31よりも硬度が高い粒子由来部分30の上面に亀裂の進展方向が略垂直な方向で当たり、それ以上の亀裂の進展が粒子由来部分30により抑えられる。
【0237】
このように、上記の各形態の固体電解質3は、亀裂の発生及び進展が抑えられている。この結果、亀裂の進展に起因する固体電解質3の割れが抑えられる効果、すなわち耐割れ性に優れたものとなる効果を発揮する。
【0238】
対して、固体電解質3が従来の球状粒子の粉末の焼結体よりなる場合には、
図35に模式図で示すように、固体電解質3を貫通するように進展する亀裂は、粒子由来部分30の上面に亀裂の進展方向が略垂直に当たらず、亀裂がネック由来部分31(あるいは、原料の粒子由来部分30の周縁部)に沿って進展する。つまり、固体電解質3が従来の球状粒子の粉末の焼結体よりなる場合には、亀裂の発生及び伸展を抑える効果が発揮されなかった。
【0239】
以上に詳述したように、上記の各形態の固体電解質(本発明の固体電解質)は、固体電解質電池だけでなく、損傷が生じにくくかつ高い強度が要求される用途にも使用できる。例えば、金属イオンでない無機イオンが伝導イオンとなる電池の電解質や、ガスセンサのセンサ素子の電解質等に利用することができる。
【実施例】
【0240】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
本発明の実施例として、実施形態1又はその変形形態の固体電解質及び固体電解質電池を製造した。
【0241】
各実施例及び各比較例の固体電解質は、以下の板状粒子を用いて製造された。
実施例1及び各比較例の製造方法の圧縮工程S5及び焼結工程S6での処理は、上記した処理条件で行った。
【0242】
(実施例1)
Nb2O5とK2CO3を出発原料として、犠牲テンプレートとして板状のK4Nb6O17結晶を用い、KClフラックス中で反応を進行した。次に、犠牲テンプレートを塩酸に浸漬して生成化合物(中間生成物)のプロトン交換を行った。プロトン交換後、LiNO3と混合して、KNO3フラックス中で板状LiNbO3結晶を育成することで、本例の板状粒子を製造した。以下にその反応の詳細を示す。
【0243】
(1) 3Nb2O5+2K2CO3 → K4Nb6O17+2CO2
反応原料として、酸化ニオブ(Nb2O5,特級,和光純薬工業社製)、炭酸カリウム(K2CO3,和光純薬工業社製)および硝酸カリウム(KNO3,特級,和光純薬工業社製)、並びに塩化カリウム(KCl,特級,和光純薬工業社製)を用いた。
【0244】
これらを溶質濃度20mol%となるように調整した後、調合物をアルミナるつぼに充填し、アルミナ板で蓋をした。蓋をしたるつぼを電気炉(商品名:FO100,ヤマト科学株式会社製)内に載置して加熱し、K4Nb6O17の板状結晶を合成した。このとき、昇温速度45℃・h-1、保持時間5h、冷却速度300℃・h-1の温度条件で加熱・保持および冷却を行った。なお、加熱状態での保持時間を長くすることにより、生成する結晶粒が粒成長し、板状粒子が生成できる。
【0245】
(2) K4Nb6O17+4HCl → H4Nb6O17+4KCl
K4Nb6O17の板状結晶(10g)をそれぞれ1MのHCl水溶液(1L)中に加え、120h浸漬・撹拌した。このとき、HCl水溶液は、24hごとに交換した。
【0246】
反応終了後、洗浄液のpHが中性になるまで蒸留水での洗浄を繰り返した。その後、吸引ろ過により結晶を濾別し、回収した。濾別した結晶を60℃で一晩真空乾燥し、残留する水分を取り除き乾燥した。
【0247】
(3) H4Nb6O17+6LiNO3 → 6LiNbO3+2H2O+6NOx
プロトン交換後のK4Nb6O17(H4Nb6O17)結晶と硝酸リチウム(LiNO3,和光純薬工業社製)、硝酸カリウム(KNO3,純度99+%,和光純薬工業社製)をそれぞれ秤量し、乾式混合した。その後、混合物をB2型アルミナ製るつぼ(SSA-S)に投入した。アルミナるつぼをアルミナ板で蓋した後、電気炉(商品名:FO100,ヤマト科学株式会社製)を用いて所定時間加熱した。昇温速度500℃・h-1、保持時間5min、冷却速度200℃・h-1の温度条件で加熱・保持および冷却を行った。
【0248】
以上により、本例のLiNbO3よりなる板状粒子(一次粒子)を製造した。
【0249】
本例の板状粒子は、LiNbO3からなる板状粒子よりなり、縦(a):横(b)の長さの比が2.2:1であり、横(b):板厚(c)の長さの比が3.1:1である。そして、平均粒径(D50)が8.0μmであり、粒度分布において、D25とD75との間の長さが11.5μmであり、この長さはD50の長さの144%である。
【0250】
本例の固体電解質の製造において、圧縮された組積体の拡大写真を
図36に切断面の拡大写真で示した。
【0251】
(比較例1)
出発原料のカリウム源をK2CO3からKNO3に変更した以外は、実施例1と同様な方法で板状LiNbO3の結晶を合成した。本例の板状粒子(一次粒子)は、実施例1の板状粒子と粒子形状が異なる。
【0252】
本例の板状粒子は、LiNbO3よりなり、縦(a):横(b)の長さの比が1.6:1であり、横(b):板厚(c)の長さの比が1.2:1である。そして、平均粒径(D50)が3.8μmであり、粒度分布において、D25とD75との間の長さが7.3μmであり、この長さはD50の長さの192%である。
【0253】
本例の固体電解質の製造において、組積体の切断面の拡大写真を
図37に示した。
【0254】
(比較例2)
板状粒子(一次粒子)の形状が異なること以外は、比較例1と同様な方法で、板状LiNbO3の結晶を合成した。本例の板状粒子(一次粒子)は、実施例1の板状粒子と粒子形状が異なる。
【0255】
本例の板状粒子は、LiNbO3よりなり、縦(a):横(b)の長さの比が1.0:1であり、横(b):板厚(c)の長さの比が2.7:1である。そして、平均粒径(D50)が3.8μmであり、粒度分布において、D25とD75との間の長さが7.3μmであり、この長さはD50の長さの192%である。
【0256】
[評価]
実施例1及び比較例1~2の固体電解質をもつ固体電解質電池の電池セル(試験セル)を製造し、評価を行った。
【0257】
(電池セルの製造)
実施形態1の製造方法の工程S1~S6を用いて、厚さ45μmの円板状の固体電解質を製造する。
【0258】
円板状の固体電解質の両面に、実施形態3の負極溶着工程S8と同様の方法で、金属Liよりなる電極を溶着する。溶着で製造された電極は、φ:8mm、厚さ:500nmの円板状であった。
【0259】
以上により、実施例1及び比較例1~2の固体電解質電池の電池セル(試験セル)が製造された。
【0260】
(イオン伝導度)
実施例1及び比較例1~2の電池セルに対し、交流インピーダンス法を用いて固体電解質3のイオン伝導度を求めた。交流インピーダンス法におけるインピーダンスの測定結果を
図38に示した。
図38には、インピーダンスの実測値を点(・)で、
図39の等価回路でフィッティングしたときのシミュレーション値を実線で合わせて示した。
【0261】
図38及び
図39の測定結果から算出した、実施例1及び各比較例の電池セルの固体電解質3のイオン伝導度は、1.5×10
-7(S・cm
-1)であった。
【0262】
すなわち、実施形態1の固体電解質は、高いLiイオン伝導度を有している。
【0263】
(定電流サイクル特性)
実施例1及び比較例1~2の電池セルに対し、定電流サイクル試験を施した。実施例1の電池セルの試験結果を
図40に、比較例1の電池セルの試験結果を
図41に、比較例2の電池セルの試験結果を
図42に、それぞれ示した。
【0264】
定電流サイクル試験は、ガルバノスタッド(商品名:SP-50,Bio-Logic社製)を用いて以下の様に行った。
【0265】
グリーンシート法にて板状LiNbO3シートを作製した。シートをφ12mmに打ち抜いた後、一軸加圧成形機(商品名:100kNニュートンプレス,NPaシステム株式会社製)を用いて20MPaで加圧成形した。その後、さらに冷間静水圧成形機(商品名:Press-CIP,NPaシステム株式会社製)を用いて300MPaで10分加圧成形した。
【0266】
抵抗加熱式真空蒸着装置(商品名:SVC-700TMSG,サンユー電子株式会社製)を用いて、背圧5.0×10-3Pa、電流15~25Aの条件で複合体の表面にリチウム電極を作製した。電極の面積は0.50cm2、電極厚さは500nm程度になるよう実験条件を調整した。二極乾式測定セル(商品名:HSフラットセル,宝泉株式会社製)を用いて対称セルを作製した。
【0267】
定電流サイクルは、ガルバノスタッド(商品名:SP-50,Bio-Logic社製)を用いた。測定温度25℃とし、電流値0.02~0.9mA・cm-2で1時間ごとのサイクルで繰り返しおこなった。なお、各比較例に対しては、電流値0.02~1.5mA・cm-2のサイクルを繰り返した。
【0268】
図40に示したように、実施例の電池セルは、電流密度を0.9mA・cm
-2まで増加しても、デンドライトによる短絡が生じていないことが確認できる。対して、比較例の電池セルは、
図41に示したように、10(s)で電圧が過上昇し、電流密度も増加している。つまり、比較例1の電池セルでは、デンドライトによる短絡が発生したことが確認できる。
図42に示したように、電流密度が0.9mA・cm
-2まで増加したときに、電圧が過上昇し、電流密度が増加している。つまり、比較例2の電池セルでは、デンドライトによる短絡(微短絡)が発生したことが確認できる。
【0269】
以上のように、実施例1の固体電解質は、それを用いた電池において、デンドライトの発生及び成長による短絡の発生による損傷が抑えられる効果を発揮する。
【0270】
(実施例2)
実施形態1の変形形態を用いて固体電解質を製造し、評価を行った。本例の特に言及しない構成は、実施例1と同様である。なお、本例の固体電解質は、実施例1と同様の方法で、固体電解質電池を製造できる。
【0271】
詳しくは、実施形態1の製造方法の工程S1~S5を用いて、厚さ45μmの固体電解質を製造する。そして、打ち抜き機(宝泉株式会社製)でφ12mmの円板状に打ち抜いた後、一軸加圧成形機(商品名:100kNニュートンプレス,NPaシステム株式会社製)を用いて20MPaで加圧成形した。その後、さらに冷間静水圧成形機(商品名:Press-CIP,NPaシステム株式会社製)を用いて300MPaで10分加圧成形した。
そして、赤外線加熱炉(商品名:HP-2-6S,株式会社米倉製作所製)を用いて成形体を焼結した。赤外線加熱炉は、6000℃・h-1の昇温速度で300℃まで昇温し、1時間保持する。保持後、6000℃・h-1の昇温速度で1000℃まで昇温し、0.08時間(4分48秒)保持する。保持後、加熱を終了(ヒーターの通電を終了)し、直ちに放冷(冷却)を行う。
以上により、本例の固体電解質が製造された。
【0272】
[評価]
(相対密度)
本例の固体電解質は、膜厚が39μmであり、その相対密度は63%であった。なお、相対密度は、(測定した密度)/(真密度)×100(%)で求めた。真密度は、LiNbO3の密度である。一方、実施例1の固体電解質の相対密度は45%であり、本例の固体電解質はより高い相対密度を有している(すなわち、緻密となっている)。緻密な固体電解質は、高い強度を有しており、固体電解質の膜厚を薄くすることができる。そうすると、固体電解質を用いるリチウム二次電池(固体電解質二次電池)を小型化でき、高いエネルギー密度の電池を得られる。
【0273】
(SEM)
製造された固体電解質の断面を、FIB-SEM(商品名:JIB-4610F,日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧15kVの条件で観察した。撮影した固体電解質の断面の拡大写真を
図43に示した。
図43に示すように、本例の固体電解質は、組積体(板状粒子)の粒子形状を維持した状態で、板状粒子(組積体)が焼結した構造を有する。より具体的には、隣接した板状粒子同士は、ネックが形成されて焼結していることが確認できる。一方、焼結後にも、焼結前の板状粒子の形状がほぼ維持されており、板状粒子自身の粒成長がほとんど生じていないことが確認できる。すなわち、本例の固体電解質は、ネック由来部分がより入り組んだ構成を有したものとなっている。
以上のように、本例の固体電解質は、実施例1と同様に入り組んだ結晶構造を有していることから、実施例1の固体電解質と同様な効果を発揮できる。すなわち、本例の固体電解質を用いた電池では、デンドライトの発生及び成長、並びにデンドライトによる短絡が発生することが抑えられる効果を発揮する。実施例1と同様に定電流サイクル特性を測定した場合、デンドライトによる短絡が見られなくなる効果を発揮する。
その上で、本例の固体電解質は、緻密な固体電解質となっており、高いエネルギー密度の電池を得られる効果を発揮する。
すなわち、本例によると、高いエネルギー密度を有するとともに、デンドライトに起因する損傷が抑えられる電池を得られる効果を発揮する。
【符号の説明】
【0274】
1:リチウムイオン二次電池、2:正極、3:固体電解質、4:負極、5:ケース