(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20241008BHJP
【FI】
A61F2/90
(21)【出願番号】P 2021567278
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020046556
(87)【国際公開番号】W WO2021131857
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2019234361
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 涼太
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠一
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-516179(JP,A)
【文献】特開2009-160080(JP,A)
【文献】特表2010-517705(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148122(WO,A1)
【文献】特開2019-150570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内に留置されるステントであって、
前記生体管腔の第1管腔内に留置され、線材によって筒状に形成された第1骨格と、
前記第1管腔から分枝した複数の第2管腔内に留置され、前記第1骨格とは異なる線材によって
別体の筒状
体として形成された
複数の第2骨格と、を備え、
複数の前記第2骨格は、前記第1骨格の一端部から分枝するように設けられ、分枝部分において
近接する部分が、前記生体管腔内での目印となるマーカーとして機能するかしめ部材によって接続されることにより、互いに係合し
、
複数の前記第2骨格のそれぞれは、ジグザグ状に折り返されながら螺旋状に延在する前記線材を、軸方向の一端側に凸である一方の山部と前記軸方向の他端側に凸である他方の谷部を互いに噛み合わせるように編み込んでなり、前記軸方向への伸長が規制されている、
ステント。
【請求項2】
少なくとも1つの前記第2骨格は、前記第1骨格側の固定端部よりも
前記軸方向における反対側の自由端部の方が管径が大きい、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記第1骨格は、ジグザグ状に折り返されながら螺旋状に延在する、前記第2骨格とは異なる前記線材を、前記軸方向の一端側に凸である一方の山部と前記軸方向の他端側に凸である他方の谷部を互いに噛み合わせるように編み込んでなり、前記軸方向への伸長が規制され、
前記第1骨格と前記第2骨格が係合している、請求項1
又は2に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、食道、胆管、気管、尿管などの生体管腔に生じた狭窄部又は閉塞部に留置され、病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持するステントが知られている。ステントグラフト留置術においては、病変部位の状態によってステントを分枝させて留置することがある。例えば、肝門近傍に生じた病変部位に対しては、総肝管から右肝管及び左肝管(肝臓内の胆管)に分枝しているので、総肝管、右肝管及び左肝管のそれぞれにステントを留置する必要がある。
【0003】
このような場合、従来は、主管腔(例えば、総肝管)用のステントと分枝管腔(例えば、右肝管及び左肝管)用のステントというように複数のステントを用意して、一のステントの開口(例えば、骨格部の網目)に他のステントを挿入して、ステント同士を部分的に重複させて接続している(例えば、特許文献1参照)。例えば、肝門近傍に生じた病変部位に対してステントを留置する場合は、総肝管から一方の肝管(例えば、右肝管)に跨がって留置されるステントに対して、他方の肝管(例えば、左肝管)に留置されるステントが挿入され、接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等の場合、ステントごとに留置システムが必要となり、また、ステントを留置する際の手技も煩雑であり、ステントの変形や破損、肝門部の閉塞の虞がある。また、ステントの網目どうしが絡まるため、留置後の抜去が困難となる。したがって、ステント留置術を行う施術者には、豊富な経験と高い技量が要求される。
【0006】
本発明の目的は、生体管腔の分枝部分に容易かつ確実に留置させることができるステントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るステントは、
生体管腔内に留置されるステントであって、
前記生体管腔の第1管腔内に留置され、線材によって筒状に形成された第1骨格と、
前記第1管腔から分枝した複数の第2管腔内に留置され、前記第1骨格とは異なる線材によって別体の筒状体として形成された複数の第2骨格と、を備え、
複数の前記第2骨格は、前記第1骨格の一端部から分枝するように設けられ、分枝部分において近接する部分が、前記生体管腔内での目印となるマーカーとして機能するかしめ部材によって接続されることにより、互いに係合し、
複数の前記第2骨格のそれぞれは、ジグザグ状に折り返されながら螺旋状に延在する前記線材を、軸方向の一端側に凸である一方の山部と前記軸方向の他端側に凸である他方の谷部を互いに噛み合わせるように編み込んでなり、前記軸方向への伸長が規制されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体管腔の分枝部分に容易かつ確実にステントを留置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る胆管ステントの外観を示す図である。
【
図3】
図3は、第1骨格と第2骨格の係合部分及び第2骨格同士の係合部分の切断面を模式的に示す図である。
【
図4】
図4A、
図4Bは、肝門部における胆管ステントの留置状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、本発明の一例として、肝門部HP(
図2A、
図2B参照)の病変部位(例えば、肝門部HPの閉塞部又は狭窄部)を径方向外側に押し拡げて閉塞(狭窄)の治療を行うべく、総肝管H1、右肝管H2及び左肝管H3内に留置されて使用される胆管ステント1について説明する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る胆管ステント1の外観を示す図である。
図2A、
図2Bは、胆管ステント1の留置状態を示す図である。
図2Bは、
図2Aにおける肝門部HPを拡大して示している。
【0012】
胆管ステント1は、骨格のみからなる、いわゆるベアステントである。胆管ステント1は、第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bに区画される。
図2A及び
図2Bに示すように、第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bは、それぞれ、総肝管H1、右肝管H2及び左肝管H3に留置され、管腔を押し拡げて胆汁の流路を画成する。
第2ステント部20A、20Bは、第1ステント部10の一方の端部に、二股に分枝するように接続されている。すなわち、胆管ステント1は、全体としてY字形状を有している。第2ステント部20A、20Bが分枝する股部としてのステント分枝部1aの角度は、例えば、胆管ステント1が留置される肝門部HPの形状に応じて設定される。
図示を省略するが、胆管ステント1は、抜去時に回収用チューブ等に引き込まれる側の端部に、抜去用のワイヤーを引っかけるための抜去補助部を有していてもよい。
【0013】
第1ステント部10は、線材によって筒状に形成された第1骨格11を有する。第2ステント部20A、20Bは、第1骨格11とは異なる線材によって筒状に形成された第2骨格21、22を有する。なお、第2骨格21、22は、同じ線材によって形成されてもよいし、異なる線材によって形成されてもよい。第1骨格11及び第2骨格21、22の管径は、それぞれ、留置される総肝管H1、右肝管H2及び左肝管H3の管径に応じて設定される。例えば、第2骨格21、22の管径は、第1骨格11の管径よりも小さく設定されてもよい。
【0014】
第1骨格11及び第2骨格21、22は、例えば、軸方向における伸長が規制されるように、線材を管状に編み込んで形成される。具体的には、第1骨格11及び第2骨格21、22は、所定のピッチでジグザグ状(Z状)に折り返されながら螺旋状に延在する2本の線材を、屈曲部(軸方向一端側に凸の一方の山部と軸方向他端側に凸の他方の谷部)が互いに噛み合うようにひし形金網状(フェンス状)に編み込んで形成されている。胆管ステント1に対して軸方向に張力をかけた状態では、網目を形成する線材の屈曲部同士が密に交差するため、軸方向への伸長が規制される。
【0015】
第1骨格11及び第2骨格21、22は、拡張状態の形状が記憶された、いわゆる自己拡張性を有し、シース(図示略)からの放出に伴い、径方向外側に拡張する。すなわち、第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bは、径方向内側に折り畳まれた収縮状態から、径方向外側に拡張して管状流路を画成する拡張状態へと変形可能に構成されている。
【0016】
第1骨格11及び第2骨格21、22を形成する線材の材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金(ニチノール)、チタン合金等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。また、X線造影性を有する合金材料を用いてもよい。この場合、胆管ステント1の位置を体外から確認することができるようになる。なお、第1骨格11及び第2骨格21、22は、金属材料以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されてもよい。
【0017】
なお、第1骨格11及び第2骨格21、22を形成する線材の材料、線径(断面積)、周方向における折り返し回数及び折り返し形状(屈曲部の数及び形状)、並びに、網目の大きさ(単位長さ当たりの骨格量)等は、留置する生体管腔に応じて必要となる第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bの拡張力及び柔軟性を基準として適宜選択される。ここで、柔軟性とは、第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bの曲がり易さのことであり、特に、軸方向の曲げ剛性により規定される。すなわち、第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bの柔軟性が高いとは、軸方向に対する曲げ剛性が適度に低く、生体管腔やシース内でキンクすることなく当該生体管腔やシースの形状に追従する性質を有することをいう。
【0018】
また、第2骨格21、22は、第1ステント部10側の固定端部21b、22b(付け根の部分)において、第1骨格11と係合して組み合わされる。第2骨格21、22は、それぞれ、固定端部21b、22bの略半周が第1骨格11と係合される(
図3参照)。
図3は、第1骨格11と第2骨格21、22の係合部分31、32及び第2骨格21、22の係合部分33の切断面を模式的に示している。
例えば、第1骨格11の端部に形成されている網目に第2骨格21、22の線材を通しながら第2骨格21、22の編込みを始めることで、第2骨格21、22は第1骨格11と係合される。なお、第2骨格21、22を第1骨格11とは別に形成した後、かしめ部材(図示略)を用いて第2骨格21、22を第1骨格11に接続するようにしてもよい。
【0019】
さらに、第2骨格21、22の固定端部21b、22bは係合して組み合わされており、分離不能となっている(
図3参照)。例えば、第2骨格21、22の固定端部21b、22bの互いに近接する部分を、かしめ部材34によって接続することで、第2骨格21、22の固定端部21b、22bが係合される。第2骨格21、22の固定端部21b、22bの近接部分において、それぞれの網目が交差するようにしてもよい。この場合、第2骨格21、22の付け根が緩く結合しているだけなので、自由度が高く、シースに容易に充填することができ、総肝管H1から右肝管H2及び左肝管H3に分枝する胆管分枝部の形状(分枝角度)に対して適応しやすい。
【0020】
このように、胆管ステント1において、第1骨格11と第2骨格21、22は、径方向に重複することなく連結されている。すなわち、胆管ステント1の構造は、複数のステントを接続してステント同士が部分的に重複している、従来のpartial stent-in-stentとは異なる。胆管ステント1は、第1ステント部10と第2ステント部20A、20Bを一体として総肝管H1内、右肝管H2内、左肝管H3内に留置可能に形成されているので、肝門部HP(生体管腔の分枝部分)に一回の手技で容易に胆管ステント1を留置させることができる。したがって、施術者の経験や技量に関わらず、安定した手術が実現される。
【0021】
また、第2骨格21、22は、固定端部21b、22bよりも、軸方向における反対側の自由端部21a、22aの方が管径が大きくなっている。すなわち、第2骨格21、22の自由端部21a、22aは、いわゆるフレア形状を呈しており、固定端部21b、22bよりも拡張力が大きい。
胆管ステント1を留置する場合、シースから第2ステント部20A、20Bが放出された後、第1ステント部10が放出される。つまり、第2骨格21、22の自由端部21a、22aが、最初に放出される。第2骨格21、22の自由端部21a、22aをフレア形状とすることにより、右肝管H2及び左肝管H3との密着性が高まるので、胆管ステント1を留置する際の位置ずれを防止でき、胆管ステント1を適正な位置に留置することができる。
【0022】
また、第2骨格21、22を係合するためのかしめ部材34は、生体管腔内での目印となるマーカーとして機能することが好ましい。例えば、X線造影性を有する合金材料でかしめ部材34を形成することにより、マーカーとして機能させることができる。これにより、係合のために用いられるかしめ部材34を利用して、第2骨格21、22の係合部分33、すなわち胆管ステント1のステント分枝部1aが、胆管分枝部に適正に位置しているか、確認することができる。この場合、胆管ステント1の生体管腔内における位置確認のためのマーカーを設ける必要がないので、胆管ステント1が簡素化され、シースへの収納性及びシースからの放出性が向上する。
【0023】
図4A、
図4Bは、肝門部HPにおける胆管ステント1、2の留置状態を模式的に示す図である。
図4Aは、実施の形態に係る胆管ステント1の留置状態を示し、
図4Bは、第2骨格21、22が係合されていない胆管ステント2の留置状態を示す。
【0024】
胆管ステント2では、第2骨格21、22は、第1骨格11のみに係合しており、第2骨格21、22同士は係合していない。そのため、シースから胆管ステント2が放出される際に、第2骨格21、22の付け根が分離し、胆管ステント2を肝門部HPの全体にわたって適正に留置できない虞がある(
図4B参照)。また、留置した胆管ステント2を抜去する際に、第2骨格21、22の付け根の非係合部分が管腔壁に引っ掛かり、抜去作業が妨げられる虞がある。仮に、第2骨格21、22の付け根が近接した状態で胆管ステント2を留置できたとしても、胆管分枝部に対して拡張力Fは作用しない。そのため、胆管ステント2では、胆管分枝部の閉塞(狭窄)を治療することができない。
【0025】
これに対して、胆管ステント1では、第2骨格21、22が係合されており、シースから胆管ステント1が放出される際にも、それぞれの姿勢(形状)が拘束されるようになっている。これにより、胆管分枝部に、ステント分枝部1aを容易に位置させることができる(
図4A参照)。したがって、胆管ステント1を所望の留置部位に適正に留置することができ、抜去する際に第2骨格21、22の付け根の部分が管腔壁に引っ掛かり難くなる。さらに、胆管分枝部に対しても拡張力Fが作用するので、総肝管H1、右肝管H2又は左肝管H3に生じた閉塞(狭窄)だけでなく、胆管分枝部に生じた閉塞(狭窄)をも治療することができる。
【0026】
このように、実施の形態に係る胆管ステント1は、肝門部HP(生体管腔)内に留置されるステントであって、総肝管H1(第1管腔)内に留置され、線材によって筒状に形成された第1骨格11と、総肝管H1から分枝した右肝管H2及び左肝管H3(複数の第2管腔)内に留置され、第1骨格11とは異なる線材によって筒状に形成された第2骨格21、22と、を備える。第2骨格21、22は、第1骨格11の一端部から分枝するように設けられ、ステント分枝部1a(分枝部分)において互いに係合している。
【0027】
胆管ステント1によれば、胆管分枝部にステント分枝部1aを容易かつ確実に位置させ、胆管ステント1を所望の留置部位に適正に留置することができるとともに、留置後の抜去作業の容易化も図ることができる。さらに、胆管分枝部に対しても拡張力Fが作用するので、総肝管H1、右肝管H2又は左肝管H3に生じた閉塞(狭窄)だけでなく、胆管分枝部に生じた閉塞(狭窄)も治療することができる。
【0028】
胆管ステント1において、第2骨格21、22は、第1骨格11側の固定端部21b、22bよりも、軸方向における反対側の自由端部21a、22aの方が、管径が大きい。これにより、第2骨格21、22の自由端部21a、22aの拡張力を固定端部21b、22bの拡張力よりも大きくして、留置する際の位置ずれを防止でき、胆管ステント1を所望の留置部位に適正に留置することができる。
【0029】
また、胆管ステント1において、第2骨格21、22は、軸方向への伸長を規制するように編み込まれている。これにより、ステント分枝部1aにおける拡張力が確保され、胆管分枝部を適切に押し拡げることができる。また、留置する際に胆管ステント1の軸方向の長さが大きく変動しないので、胆管ステント1を所望の留置部位に適正に留置することができる。
【0030】
また、胆管ステント1において、第2骨格21、22は、かしめ部材34(係合部材)によって係合され、かしめ部材34は、生体管腔内での目印となるマーカーとして機能する。これにより、係合のために用いられるかしめ部材34を利用して、胆管ステント1のステント分枝部1aが、胆管分枝部に適正に位置しているか、確認することができる。
【0031】
また、胆管ステント1において、第1骨格11と第2骨格21、22が係合している。これにより、第1ステント部10と第2ステント部20A、20Bの境界にも骨格が存在し、この部分における拡張力が確保されるので、胆管ステント1を適正に留置することができる。
【0032】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0033】
例えば、胆管ステント1において、第1骨格11及び第2骨格21、22は、ひし形金網状ではなく、1又は複数の線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら、それぞれの軸方向に螺旋状に巻回して編み込まれた構成であってもよい。
【0034】
また例えば、
図5Aに示す胆管ステント1Aのように、第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bは、それぞれ、第1骨格11及び第2骨格21、22を覆う皮膜40を有し、皮膜40によって、第1ステント部10と第2ステント部20A、20Bが一体化されてもよい。皮膜40を形成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。皮膜40を設ける場合、
図5Bに示す胆管ステント1Bのように、第1骨格11と第2骨格21、22が係合していなくてもよい。第1骨格11及び第2骨格21、22の形態に関わらず、第1ステント部10と第2ステント部20A、20Bを一体化することができるので、設計の自由度が向上する。
【0035】
なお、皮膜40の構成は適宜任意に変更可能である。例えば、皮膜40は、第1骨格11及び第2骨格21、22を挟み込むように骨格の外周面と内周面に配置されてもよいし、骨格の外周面のみに配置されてもよいし、内周面のみに配置されてもよい。また例えば、第1ステント部10及び第2ステント部20A、20Bのいずれかに皮膜40を設けるようにしてもよいし、それぞれにおいて、全体的に又は部分的に皮膜40を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、第1ステント部10に皮膜40を設ける場合、第1骨格11は、骨格のみによって自立して管形状が呈される編込み形でなくてもよく、例えば、線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら円環状に形成された複数の骨格を、それぞれの軸方向に所定の間隔で皮膜40に固定した構成とすることもできる。
【0037】
また、胆管ステント1は、2つの第2骨格21、22を有するようにしたが、一例であってこれに限られるものではない。すなわち、第2骨格の数は適宜任意に変更可能であり、3つ以上の第2骨格を有してもよい。さらに、分枝部分においては、3つ以上の第2骨格の全てが互いに係合していなくてもよく、少なくとも2つの第2骨格が互いに係合していればよい。
【0038】
本発明は、実施の形態で説明した胆管ステント1に限らず、消化器系管腔や血管などの生体管腔の分枝部分に留置されるステントに適用することができる。
【0039】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0040】
2019年12月25日出願の特願2019-234361の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0041】
1 胆管ステント(ステント)
1a ステント分枝部
10 第1ステント部
11 第1骨格
20A、20B 第2ステント部
21、22 第2骨格
31、32、33 係合部分
40 皮膜
HP 肝門部(生体管腔)
H1 総肝管(第1管腔)
H2 右肝管(第2管腔)
H3 左肝管(第2管腔)