(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】美容方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20241008BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241008BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/06
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020120804
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和1年7月19日に株式会社資生堂ウェブサイト(https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002723&rt_pr=tre18)で公開(2)令和1年8月18日に株式会社資生堂ウェブサイト(https://www.shiseido.co.jp/elixir/advanced)及びYouTube(https://youtube.com/channel/UCrgHdSQWAXEv1QZpzgrJHnA)で公開(3)令和2年8月21日に「エリクシール アドバンスト エイジングケア シリーズ」の製品本体及び外装、使用説明書における使用説明欄で公開(4)令和1年9月12日に芝浦工業大学豊洲キャンパスにおいて開催されたJSKE第21回日本感性工学会大会で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】武内 浩子
(72)【発明者】
【氏名】長井 綾香
(72)【発明者】
【氏名】藤村 貴子
(72)【発明者】
【氏名】薮崎 智穂
(72)【発明者】
【氏名】中川 文香
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-113369(JP,A)
【文献】再公表特許第2009/005032(JP,A1)
【文献】特開2020-007247(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/208730(JP,A1)
【文献】特表2013-506657(JP,A)
【文献】特開2005-314329(JP,A)
【文献】特開2019-43917(JP,A)
【文献】rnmm,スキンケアの基本!化粧水・美容液・乳液の正しい塗り方をおさらい,[online],2017年09月17日,[令和6年3月12日検索],インターネット<URL:http://mama.smt.docomo.ne.jp/article/b/194135>
【文献】THREE,#005 男性のための、スキンケア入門。,[online],2019年01月23日,[令和6年3月12日検索],インターネット<URL:https:www.threecosmetics.com/brand/journal/detail/2019/01/feel-so-three-5>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の化粧料を塗布する第1の塗布動作と、前記第1の塗布動作の後に、前記第1の化粧料と異なる、水分と油分とが乳化しかつ前記第1の化粧料よりも粘度が高い第2の化粧料を塗布する第2の塗布動作と、を有し、
前記第1の塗布動作が、
前記第1の化粧料を、コットンによって顔全体に塗り広げる動作と、
前記第1の化粧料を、
前記コットンによって顔面を押さえて浸透させる押し込み動作
と、
前記押し込み動作の後に、前記押し込み動作よりも弱い力で、塗布具又は手によって顔面を押さえて浸透させる包み込み動作と、を含
み、
前記第2の塗布動作が、
前記第1の塗布動作の後に、
前記第2の化粧料を、コットンによって顔全体に塗り広げる動作と、
前記コットンを顔面上
で曲線状にすべらせる動作
と、
前記すべらせる動作の後に、前記押し込み動作よりも弱い力で、塗布具又は手によって顔面を押さえて浸透させる包み込み動作と、を含む
、美容方法。
【請求項2】
前記塗布具はコットンである
請求項1に記載の美容方法。
【請求項3】
前記第1の化粧料および第2の化粧料から選ばれるいずれか1つ以上に、
イノシトール、イリス根エキス、ウコン根茎エキス、ムクロジ果皮エキス、
オランダガラシ葉/茎エキス、イチョウ葉エキス、水溶性コラーゲンから選ばれる成分を一つ以上含む
請求項1
又は2に記載の美容方法。
【請求項4】
前記第1の化粧料および第2の化粧料から選ばれるいずれか1つ以上に、
オランダガラシ葉/茎エキス、イチョウ葉エキス、グリセリン、1,3-ブチレングリコールから選ばれる、刺激による発熱する成分を一つ以上含む
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項5】
前記第1の化粧料及び前記第2の化粧料が、オランダガラシ葉/茎エキス及びイチョウ葉エキスを含む
請求項4に記載の美容方法。
【請求項6】
前記第2の化粧料に、ラウロイルグルタミン酸、サッカロミセス培養溶解質液、グリセリン、コメ胚芽油、ワセリン、バーム油、ミネラルオイル、高級アルコール、シリコーン油分のうちいずれかを選択的に一つ以上含む
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項7】
前記第1の化粧料に、エリスリトールを含む
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の化粧料をそれぞれ異なる方法で塗布する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の肌は、加齢や乾燥によって、肌の水分量が減少し、ハリ(弾力性)が失われ、たるみが発生することが知られている。従来から、このような顔面の様々な悩みを解消するために、手法によりマッサージする方法が知られている。
【0003】
例えば、たるみを解消する目的で、特許文献1では、顎から耳下腺へ円を描きながら動かす手技を行った後、口角の横から頬下を通り、上向きに指で皮膚を押し上げ、引き続き皮膚を頬骨の下に強く押し込むように押圧し、こめかみ方向へ動かす手技を行ない、頬脂肪体を移動ないし変形させる、という美容方法を提案している。
【0004】
一方、特許文献2では、肌に対する化粧料の美容効果の向上を図るために、塗布前に、肌を指で叩くタッピング処理を実施した後に、顔に化粧料を塗布し、その後、手のひらを用いて顔を包み込むラッピング処理を実施する美容方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-029573公報
【文献】特開2006-348017公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のマッサージ法は、頬脂肪体に起因した、フェースラインのたるみの解消を目的としており、化粧水によって、肌質自体(肌の水分量やハリ)を改善するものではなかった。
【0007】
一方、特許文献2は、タッピング後の化粧料塗布工程において、化粧料として化粧水と乳液の2種類の液を塗布することは開示されているが、塗布のやり方自体は開示されておらず、また化粧水と乳液の塗布の間隔では手法の実施は指示されていなかった。即ち、化粧水と乳液の塗布方法による効果については、言及されていなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、複数の化粧料をそれぞれ適した塗布方法で塗布することで、肌の水分量を上昇させ、肌のハリ弾力性を高めることができる美容方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様では、
第1の化粧料を塗布する第1の塗布動作と、前記第1の塗布動作の後に、前記第1の化粧料と異なる、水分と油分とが乳化しかつ前記第1の化粧料よりも粘度が高い第2の化粧料を塗布する第2の塗布動作と、を有し、
前記第1の塗布動作が、
前記第1の化粧料を、コットンによって顔全体に塗り広げる動作と、
前記第1の化粧料を、前記コットンによって顔面を押さえて浸透させる押し込み動作と、
前記押し込み動作の後に、前記押し込み動作よりも弱い力で、塗布具又は手によって顔面を押さえて浸透させる包み込み動作と、を含み、
前記第2の塗布動作が、
前記第1の塗布動作の後に、前記第2の化粧料を、コットンによって顔全体に塗り広げる動作と、
前記コットンを顔面上で曲線状にすべらせる動作と、
前記すべらせる動作の後に、前記押し込み動作よりも弱い力で、塗布具又は手によって顔面を押さえて浸透させる包み込み動作と、を含む第2の塗布動作と、
を有する美容方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、複数の化粧料をそれぞれ適した塗布方法で塗布する美容方法によって、肌の水分量を上昇させ、肌のハリ弾力性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る美容方法の第1の化粧料、第2の化粧料の塗布の全体フロー。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る美容方法の化粧水の塗布の詳細フロー。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る美容方法の乳液の塗布の詳細フロー。
【
図4】皮膚の細胞の模式図であって、(a)は若い人の正常の肌の立体断面模式図で、(b)は老化した肌の断面模式図。
【
図5】各年代の女性の合計1000人に肌の状態についてアンケートをとった回答結果を示す表。
【
図6】各年代の女性、合計1000人に肌の変化についてアンケートをとった回答結果を示す表。
【
図7】本発明の2種類の化粧料を本発明の美容方法で塗布した場合の作用効果を示す表。
【
図8】実験1における、被験者の肌の変化の一例を示す写真。
【
図9】実験2における、被験者が化粧水及び乳液を自己流で塗布した場合、及び本発明の美容方法で塗布した場合とで、顔の血流の変化を示す図。
【
図10】実験3で使用される、TDSのスキンケアの評価項目と塗布後の期待度を示す表。
【
図11】被験者が、自己流及び塗布法Aで化粧水を塗布した際の被験者の肌に対する感覚の変化を時系列に示すTDS曲線のグラフ。
【
図12】
図11において自己流及び塗布法Aで化粧水を塗布する期間における、被験者の肌に対する感覚のうち、有意水準5%で有意だった感覚を抽出した相対時間のタイミングチャート。
【
図13】
図11において自己流及び塗布法Aで化粧水を塗布した際に、被験者が「しみこんでいく」及び「しっとり」と感じた人の合計時間を示す図。
【
図14】被験者が、化粧水を塗布した後に、自己流及び塗布法Bで、乳液を塗布した際の被験者の肌に対する感覚の変化を示すTDS曲線のグラフ。
【
図15】
図14において自己流及び塗布法Bで乳液を塗布した際の、被験者の肌に対する感覚のうち、有意水準5%で有意だった感覚を抽出した、相対時間のタイミングチャート。
【
図16】
図14において自己流及び塗布法Bで乳液を塗布した際に、被験者が「しっとり」及び「ふっくら」と感じた人の合計時間を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
本発明は、複数の化粧料をそれぞれ異なる方法で塗布する美容方法に関する。
【0014】
下記において、第1の化粧料として化粧水を例として説明するが、第1の化粧料は、スキンケア化粧料において粘度が低い化粧料であればよく、化粧水の他に導入液であってもよい。
【0015】
また、第2の化粧料として乳液を例として説明するが、第2の化粧料は、スキンケア化粧料において、第1の化粧料よりも粘度が高い化粧料であればよく、乳液の他に、美容液、ジェル、ゼリー、クリーム等であってもよい。
【0016】
なお、下記において、第1の化粧料の一例である化粧水は、油性成分が透明になって水に混じることで可溶化した透過性のある液体である。本発明の化粧水の適切な粘度は、100~10,000mPa・s程度である。なお、本発明の化粧水の粘度を複数設定することで、複数種類の化粧水を設定してもよい。
【0017】
第2の化粧料の一例である乳液は、水分と油分が混じり合って乳化した油中水型乳化化粧料(エマルジョン)である。本発明の乳液の適切な粘度は、1,000~1,000,000mPa・s程度である。また、本発明の乳液の粘度を複数設定することで、複数種類の乳液を設定してもよい。
【0018】
<第1実施形態の美容方法>
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る美容方法について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る美容方法の第1の化粧料、第2の化粧料の塗布の全体フローである。
【0019】
本発明の実施形態に係る美容方法では、化粧水などの第1の化粧料を塗布する第1の塗布工程と、乳液などの第2の化粧料を塗布する第2の塗布工程と、を有する。以下、第1の化粧料が化粧水、第2の化粧料が乳液である例を説明する。
【0020】
本発明の美容方法において、化粧料を、収容されている容器から顔に化粧料を移動して、顔の肌に塗布する手段は、手、又はコットン、ティッシュ、スポンジ等の塗布具である。
【0021】
塗りムラを少なくする観点では、塗布する手段はコットンであるとより好適である。コットンを用いる場合は、コットンのサイズは、縦2~9cm×横2~8cm程度であって、厚さ5~15mm程度であると、好適である。さらに、大きさ、縦、横ともに、5~8cm程度あると、取扱いの点でより好適である。また、コットンは2層以上の層状構造であると好適であり、コットンの素材として、天然綿、無漂白綿、シルクを含んでいてもよい。
【0022】
図1のステップS1の化粧水を塗布する工程では、化粧水をつけた手又は塗布具(コットン)で肌を押さえる動作を含む。
【0023】
このように、S1において、第1の化粧料である化粧水を塗布する際に、肌を押さえることで、肌に軽く圧がかかり、肌がほぐれて、角層やその下の真皮に化粧水が浸透しやすくなることが期待できる。
図1の右上図に示すように、顔において、皮膚が乾燥しやすい部位である、少なくとも頬、額の部分を押圧するとより効果的である。
【0024】
このS1の第1の塗布工程における化粧水の塗布量は、500円硬貨大又は500円硬貨よりやや大きい程度の、直径2.5~3.5cm程度の円になる量であって、1.6~2.4mL程度である。この1.6~2.4mLは一例であって、例えば、このような量を1又は複数回塗布することで、1.6~7.2mL程度であってもよい。
【0025】
ステップS2の乳液を塗布する工程では、乳液をつけた手又は塗布具で、肌の上を移動してすべらせる動作を含む。即ち、肌上をマッサージしながら、塗り広げる。
【0026】
なお、ステップS2における、すべらせる移動では、乳液をつけた手又は塗布具で、肌の上を曲線状に移動させる。この「曲線状に移動」とは、クルクルと円を描くような円状、楕円状、うずまき状に加え、波状、トロコロイド状、サイクロイド状等のスライド移動が含まれる。
【0027】
ステップS2で、第2の化粧料である乳液を塗布する際に、
図1の右下図に示すように、指又は塗布具を大きく動かして顔の広い範囲に対して曲線状にすべらせることで、顔の広い範囲が、指又は塗布具によって連続的になでられることになる。このように顔の皮膚上を、指又は塗布具が大きく接触移動することで、乳液が肌上に薄く均一に伸ばされるとともに、顔の皮膚の下の血管に沿って血行が促進され、血液循環が起きやすくなる。さらに、肌の近傍の血液の流れがよくなることで、肌の各種細胞の能力を高め、保湿能力が高まることが期待できる。
【0028】
このS2の第2の塗布工程における乳液の塗布量は、10円硬貨大又は10円硬貨よりやや大きい程度の、直径1.9~2.9cm程度の円になる量であって、1.1~1.9mL程度である。この1.1~1.9mLは一例であって、例えば、このような量を1又は複数回塗布することで、1.1~6.7mL程度であってもよい。
【0029】
このように、本発明では、化粧水と乳液について、それぞれに適した異なる手法によって、肌への塗布を実施することで、その塗布工程毎の効果を奏することができる。
【0030】
<第2実施形態の美容方法>
図2、
図3は、本発明の第2実施形態の美容方法に係る、化粧水及び乳液の塗布工程を示す詳細フローである。
図2は化粧水の塗布工程を示し、
図3は、乳液の塗布工程を示している。なお、下記において、
図2に示す化粧水の塗布方法を塗布法A、
図3に示す乳液の塗布方法を塗布法Bとする。
【0031】
第2実施形態の美容方法では、第1実施形態と比較して、第1の塗布工程の内部において、上記押し込み動作の前後に、手又は塗布具によって化粧水を顔全体に塗り広げる動作と、肌を手で包み込む動作を含む点が異なり、第2の塗布工程の内部において、上記すべらせる動作の前後に、手又は塗布具によって乳液を顔全体に塗り広げる動作と、肌を手で包み込む動作を含む点が異なる。
【0032】
図2に示す化粧水の塗布では、まず、ステップS11で、手又は塗布具によって、化粧水を顔全体的に塗り広げる(なじませる)。この際、塗り方は、特に限定しないが、例えば、
図2のS11の対応図の矢印で示すような軌跡で塗布する軽圧式塗布法であってもよい。また、顔に加えて、首に化粧水を塗布してもよい。
【0033】
ステップS12で、手又は塗布具によって、肌を押し込む。
【0034】
なお、S11で手によって塗り広げた場合は、S12においても、手によって肌を押し込む。一方、S11で塗布具によって塗り広げた場合は、S12においてもS11で使用した塗布具によって押し込む。仮にS11の後、手を拭いたり、塗布具を取り替えたりしてしまうと、S12で手や塗布具によって、肌上の化粧水が吸い取られてしまうおそれがあり、その現象を防止するためである。
【0035】
ステップS13で、手のひら全体を用いて顔を包み込むラッピングを行う。この包み込みは、S12の押し込み動作よりも弱い力で、より広範囲に接触圧がかかるようにする。S13において手によって顔を包み込む期間は、1秒以上、より好ましくは3秒以上であると好適である。なお、下記実験における、化粧水の包み込み工程では、各人のスピードで3秒カウントすることで約3秒間の、包み込みの継続を行った。
【0036】
本塗布法では、S12で肌を押し込む前に、S11で事前に肌全体に化粧水を塗り広げることにより、塗りムラを抑止することができ、S11での塗り広げによりさらに軽いマッサージ効果を与えることができる。
【0037】
さらに、本塗布法では、S12で肌に押し込んだ後に、S13で包み込みを行うことで、手のぬくもりによって、化粧水が温まって浸透力が上がるとともに、手で押さえている期間、化粧水が密閉されることで、肌の奥まで浸透させることができる。
【0038】
一方、
図3に示す乳液の塗布では、化粧水同様、まず、ステップS21で、手又は塗布具によって、化粧水を顔全体的に塗り広げる(なじませる)。この際、塗り方は、特に指定しないが、例えば、
図3のS21の対応図の矢印で示すような軌跡で塗布する軽圧式塗布法であってもよい。また、顔に加えて、乳液を首に塗布してもよい。
【0039】
次に、S22で、手又は塗布具によって、肌上を曲線状に移動するようにすべらせる。塗り方は、特に指定しないが、例えば、
図3のS22の対応図の矢印で示すような軌跡で塗布する軽圧式塗布法であってもよい。この際、直前のステップS21の顔面上に手又は塗布具を曲線状にすべらせる軌道とは異なる向きで塗り広げると、より好適である。
【0040】
化粧水同様に、S21で手によって塗り広げた場合は、S22においても、手によって曲線状に移動させる。一方、S22で、塗布具によって塗り広げた場合は、S22においてもS21で使用した塗布具によって肌と接触するように、曲線状に移動するようにすべらせる。S22によって、肌上を指又は塗布具がスライドしても摩擦によって顔の皮膚を傷つけないためである。さらに、S21の後、手を拭いたり、塗布具を取り替えて使用すると、S22で指や塗布具によって、肌上の乳液が吸い取られてしまうおそれがあり、その現象を防止するためである。
【0041】
ステップS23で、手のひら全体を用いて顔を包み込むラッピングを行う。この包み込みでは、広範囲に接触圧がかかるようにする。S23において手によって顔を包み込む期間は、1秒以上、より好ましくは3秒以上であると好適である。なお、下記実験における、乳液の包み込み工程では、各人のスピードで3秒カウントすることで約3秒間の、包み込みの継続を行った。
【0042】
本塗布法では、S22で肌に押し込む前に、S21で事前に肌全体に化粧水を塗り広げることにより、塗りムラを抑止することができるとともに、S22とは異なる方向に、軽いマッサージ効果を与えることができる。
【0043】
さらに、本塗布法では、S22で肌上マッサージした後に、S23で包み込みを行うことで、手のぬくもりによって、乳液が温まって浸透力が上がるとともに、手で押さえている期間、乳液が密閉されることで、肌の奥まで浸透させることができる。
【0044】
<皮膚内の様子>
図4は、皮膚の細胞の模式図である。
図4(a)は、若く、肌トラブルのない皮膚の立体断面模式図であり、
図4(b)は、老化した皮膚の断面模式図である。
【0045】
図4(a)に示すように、皮膚は大きく表皮と真皮に分かれている。表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと、水分を保持する働きを担っている。表皮は、皮膚の最外層を構成する角質細胞を含んでおり、角質細胞を覆う頑丈なたんぱく質の膜状構造は、「角化外膜」(Cornified Envelope:以下CEと呼ぶ)となっている。
【0046】
表皮では、約4週間かかる肌の代謝であるターンオーバーによって、CEが成熟し、成熟したCEを土台として細胞間脂質がきちんと配列することで、最外層において、バリア機能が良好な角質細胞の層が形成される。
【0047】
バリア機能が保たれている肌では、
図4(a)の拡大図に示すように、CEが成熟し、細胞間脂質がきちんと整列して、角質同士が隙間なく並んでいる。この状態では、CEは、アミノ酸等で構成された天然保湿因子(Natural moisturizing Factor:以下NMFと呼ぶ)が水分をしっかり抱えた状態で存在している。
【0048】
一方、バリア機能が保たれていない、乾燥した肌では、
図4(b)の拡大図に示すように、CEが未成熟であり、細胞間脂質が整列できていないため、隣接する角質に隙間が空く部分がある。そして、CEにおいて角質内のNMFが水分をしっかりと抱えられていない状態で存在している。
【0049】
一方、真皮はコラーゲン・エラスチン等で構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に関与している。
【0050】
ここで、真皮内において、形状が変化した線維芽細胞は、
図4(b)のように細胞の変形を伝播させる因子を分泌することが知られている。そうすると、正常な形状の線維芽細胞まで、変形していってしまい、伝播によって変形した形状の線維芽細胞でも、真皮の産生低下、真皮の分解が発生してしまう。そして、真皮の分解により幹細胞も少なくなると、新たに産生できる線維芽細胞も少なくなり、変形した繊維芽細胞を補修できなくなる。
【0051】
上記のように、形状が変化した線維芽細胞、及び伝播により形状が変化した線維芽細胞に起因して、真皮の産生低下、真皮の分解を引き起こすことによって、真皮の変化の影響を受けて、目に見える肌表面においても変化が発生する。
【0052】
ここで、20代~60代の各年代の女性、合計1000人にアンケートをとった回答結果を、
図5、
図6に示す。
図5は、各年代の女性の合計1000人に肌の状態についてアンケートをとった回答結果を示す表である。モニター参加者は、20代が135人、30代が193人、40代が231人、50代が195人、60代が246人であった。
【0053】
図5は、しみ、透明感のなさ、ハリのなさ、頬やフェースラインのたるみ、乾燥、毛穴の目立ち、テカリ、しわ、その他について、「気になる」、「気にならない」という2択を選択肢としたアンケート結果である。また、
図5の表の各欄の数値は、その年齢層の合計人数に対して、「気になる」と答えた人の割合を示す。
【0054】
図5を参照すると、乾燥、毛穴の目立ち、テカリは、20代、30代で多く、「気になる」と回答している。一方、ハリのなさ、頬やフェースラインのたるみ、しわは、40代、50代、60代で多く、「気になる」と回答している。また、透明感のなさは、30代が多く「気になる」と回答している。このように、年齢に応じて、肌の悩みは変化することがわかる。
【0055】
図6は、各年代の女性、合計1000人に肌の変化についてアンケートをとった回答結果を示す表である。モニター参加者は
図5と同様である。
図6(a)は、「肌自体が、水分や栄養などを、蓄えられなくなってきた」という質問に対する、回答結果の割合を世代別に示し、
図6(b)は、「最近、スキンケアの効果を感じられなくなってきた」という質問に対する、回答結果の割合を世代別に示している。また、
図6では、参加者に、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」、「そう思わない」の3択で回答してもらい、「そう思う」と、「どちらかといえばそう思う」の回答を合計した「肯定の回答をした人」の割合を右側の欄外に示した。
【0056】
図6の設問はいずれも過去の状態と比較した肌の変化を問いている。
図6を参照すると、30代で、(a)「肌自体が、水分や栄養などを、蓄えられなくなってきた」、(b)「最近、スキンケアの効果を感じられなくなってきた」、において、「そう思う」と回答した人の割合が多い。即ち、30~39歳のいずれかの年齢で、以前と比較して肌の変化を感じている人が多い、と解釈できる。
【0057】
詳しくは、
図6(a)の、「肌自体が、水分や栄養などを、蓄えられなくなってきた」については、30代で「そう思う」と顕著に感じる人の割合、その次に「どちらかといえばそう思う」と肯定を示す回答が多い。40代でも肯定を示す割合が多く、その中で「どちらかといえばそう思う」と、回答する人が多い。50代、60代では、「どちらかといえばそう思う」と、回答する人が多い。その結果、30代で肌に大きく、「蓄えられなくなってきた」という変化を感じ、その後「どちらかといえば蓄えられなくなってきた」と、緩やかに変化を感じ、50代から60代では、肌の蓄えについては、あまり変化は感じられないと思われる。
【0058】
また、
図6(b)の、「最近、スキンケアの効果を感じられなくなってきた」、については、30代で「そう思う」及び「どちらかといえばそう思う」と肯定を示す回答が多い。40代でも肯定を示す割合が多く、その中で「どちらかといえばそう思う」と、回答する人が30代よりも増加する。50代、60代では、「どちらかといえばそう思う」と、回答する人が多い状態が続く。その結果、30代で肌に対して、「効果が感じられなくなってきた」という変化を強く感じ、その後「どちらかといえば効果を感じられなくなってきた」と、緩やかに変化を感じている、と思われる。
【0059】
そのため、30代以上で、以前と比較して肌に変化を感じている年齢を重ねた大人な肌に対しては、水分を肌に浸透させて蓄えさせ、さらに、使用者に、スキンケアの効果としてうるおいを実感してもらうことが望まれる。
【0060】
そこで、本発明では、使用者にうるおいを実感してもらうため、化粧水及び乳液の有効成分を、
図1~
図3に示すような塗布法で塗布することで、複合的な効果が得られる、トータルの美容方法を提供する。
【0061】
<化粧料の成分と塗布による作用効果>
図7は、本発明の2種類の化粧料を、それぞれに適した塗布方法によって塗布した場合の作用効果を示す表である。
【0062】
本発明では、
(1)化粧水及び乳液に共通する有効成分、
(2)化粧水のみに含まれる有効成分、
(3)乳液のみに含まれる有効成分、をそれぞれ配合し、化粧水と乳液とで異なる塗布等で塗布することで、各成分が適切なタイミングで機能し、成分と塗布法による複合的な効果が得られるようにしている。
【0063】
それにより、
図7に示すように、化粧水、乳液で共通の肌への作用効果と、化粧水・乳液それぞれの肌への作用効果が発生する。
【0064】
図7に示すように、化粧水及び乳液に共通する有効成分から見込める効果として、「表皮細胞の活性化」、「表皮成分の酸化抑制」、「コラーゲンの再生促進」、「水溶性コラーゲンの浸透」がある。
【0065】
「表皮細胞の活性化」は、「肌の内側から水分を増やす成分」によって肌に作用され、そのための成分として、表皮幹細胞を活性化する、イリス根エキス、ウコン根茎エキス、ムクロジ果皮エキス、イノシトール等が含まれている。
【0066】
「イリス根エキス」は、皮脂腺の周囲にある幹細胞を、皮脂腺から離れた真皮内の他の位置に移動させる、誘引効果がある。イリス根エキスにより、皮脂腺の幹細胞を真皮の他の位置に誘引すると、移動した幹細胞は、線維芽細胞に分化し、コラーゲンなどの真皮成分を産生することができる。さらに、皮脂腺周囲から真皮の他の位置に誘引された幹細胞は、変形した線維芽細胞が分泌する老化因子の発生を抑制し、真皮の産生低下、分解、伝播による他の線維芽細胞の変形等の悪影響を防ぐ、即ち、表皮細胞を活性化させることができる。
【0067】
さらに、「肌の内側から水分を増やす成分」として、血行を促進しコラーゲンを再生する機能を有する、オランダガラシ葉/茎エキス、グリセリン、1,3-ブチレングリコール等が含まれる。グリセリンや1,3-ブチレングリコール等の保湿剤は、水に混ざると発熱する性質を有している。
【0068】
また、「表皮細胞の酸化抑制」は「肌の水分を減らさない成分」によって肌に作用され、その、酸化を抑制する成分として、イチョウ葉エキス、等が含まれている。
【0069】
さらに、コラーゲンの再生促進及び水溶性コラーゲンの浸透は、「肌に水分を与える成分」によって効果を奏し、その成分として、水溶性コラーゲン、グリセリン等が含まれている。
【0070】
このような、共通の成分において「肌の内側から水分を増やす成分」及び「肌の水分を減らさない成分」を肌に与えることで、肌にハリ・弾力を与え、「ふっくら」という肌の感触が発現すると考えられ、「肌に水分を与える成分」は、「しっとり」という肌の感触が発現すると考えられる。
【0071】
これらの「ふっくら」等の肌の感覚への化粧水、乳液塗布後の期待度は、後段の
図10の表に示す通りである。なお、化粧料の塗布における感覚の作用効果の表れ方は個人差があるため、有効成分に対して対応する効果が発現する人と発現しない人が存在する。
【0072】
ここで、一般的な「保湿効果」には、「モイスチャー効果」と「エモリエント効果」とが含まれている。「モイスチャー効果」は、皮膚に水分を与えて浸透させて浸透した水分を留めておく、即ち水分を補給する効果を指す。「エモリエント効果」は、皮膚の表面に幕を張って水分が蒸発することを防ぎ柔らかな状態にする、即ち水分がなくならないようにブロックする効果を指す。
【0073】
本発明の美容方法に適用される化粧料では、モイスチャー効果を、化粧水及び乳液の両方であって特に化粧水の方で多く実現され、エモリエント効果を特に乳液の方で実現されるように、成分が配合されている。
【0074】
化粧水には、エリスリトールが含まれている。エリスリトールは、糖アルコールの一種であって、水分を引き寄せる性質を持っているため、浸透性が高く、浸透により、皮膚細胞に水分を直接補給する。また、角質のCEを成熟させる機能も有している。
【0075】
化粧水において、エリスリトールを肌に与えることで、「みずみずしい」、「しみ込んでいく」、「しっとり」という肌の感触が発現すると考えられる。
【0076】
乳液に含まれる、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドリル)は、角質を柔軟にする効果(柔軟性付与効果)、バリア保護によるエモリエント作用、及び皮表水分量増加によるエモリエント作用を有している。
【0077】
そのため、乳液において、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドリル)を肌に与えることで、「なめらか」という肌の感触が発現すると考えられる。
【0078】
乳液に含まれる、サッカロミセス溶解質エキスは、酵母が作り出す溶解液から得られるエキスであって、アミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラルを含んでおり、表皮の水分量を増加し、かつ角層の細胞間脂質を整え保湿し、皮膚表面に保護膜を作り水分を保持する働きを有し、水分保持力を向上する。
【0079】
そのため、乳液において、サッカロミセス溶解質エキスを肌に与えることで、「なめらか」、「もっちり」、「ふっくら」という肌の感触が発現すると考えられる。
【0080】
乳液に含まれる、ローヤルゼリーエキスは、糖質、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、及びヒドロキシデセン酸(ローヤルゼリー酸)を含んでおり、ヒドロキシデセン酸は、角質の水分量を増加する作用を有している。
【0081】
そのため、乳液において、ローヤルゼリーエキスを肌に与えることで、「なめらか」、「もっちり」、「ふっくら」という肌の感触が発現することが予想される。
【0082】
さらに、乳液には、肌表面を覆う油膜を形成するために、複数の種類の油を含んでいる。
【0083】
油膜を形成する油に含まれるコメ胚芽油は、オレイン酸及びリノール酸を含有しており、肌なじみが良く及び伸びが良いため軽い使用感を付与し、バリア保護をするエモリエント作用を有している。
【0084】
さらに、油膜を形成する他の油として、ワセリン、ミネラルオイル、又はバーム油の少なくとも1つが、択一的に含まれている。なお、バーム油が選択される場合は、水添パーム油、ジイソステアリン酸グリセリル、パーム核油等の油分と一緒に含まれていてもよい。
【0085】
乳液において、コメ胚芽油と、他の油を肌に与えることで、「なめらか」、「もっちり」という肌の感触が発現すると考えられる。
【0086】
また、その他の油分としては、特に制限されず、液状油分、固型油分、半固型油分のいずれでもよい。例えば、液状油分として、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、月見草油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、水添ポリデセン等が挙げられる。
【0087】
固形油分として、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0088】
その他保湿剤として、グリセリン、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、アミノ酸、核酸、コラーゲン、エラスチン等のタンパク質、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等が挙げられる。
【0089】
その他の薬剤成分は、油溶性、水溶性、両親媒性のいずれも適用し得る。具体的には、例えば、美白剤、保湿剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン類、各種アミノ酸およびその誘導体や酵素、抗酸化剤、育毛剤などの薬剤が挙げられる。
【0090】
美白剤としては、アルブチン等のハイドロキノン誘導体、コウジ酸、L-アスコルビン酸(ビタミンC)およびその誘導体、パントテニールエチルエーテル、トラネキサム酸およびその誘導体、プラセンタエキスや植物抽出物(例えばカミツレエキス等)等の各種抽出物などが例示される。
【0091】
その他、化粧料には、上述した各成分(薬剤)の他、本発明の効果を損なわない範囲において、任意のその他の成分を含有することができる。
【0092】
その他の成分としては、例えば、増粘剤、PH調整剤、中和剤、酸化防止剤、アルコール類、防腐剤、抗菌剤、薬剤、(植物)抽出液、香料、色素、上述した油溶性紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは従来一般的に用いられているものを、一般的な配合量で使用することができる。
【0093】
増粘剤は、例えば、デキストリン脂肪酸エステル等である。デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体的には、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる本発明の水中油型乳化化粧料に油相増粘剤を配合する場合、その配合量は水中油型乳化化粧料全体に対して、0.1~5質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.4~1質量%とすることができる。
【0094】
キレート剤として、例えば、酸塩、エデト酸塩等を用いることができる。
【0095】
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
【0096】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0097】
アルコール類としてエチルアルコールを用いることができる。
【0098】
防腐剤、抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素等が挙げられる。
【0099】
また、乳液では、さらに、任意添加成分としてカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム等の高分子乳化剤を配合することにより、みずみずしい使用性と製剤安定性をさらに向上させることができる。
【0100】
上述のように、化粧水の方には、浸透性が高いエリスリトールが含まれているため、圧をかけて押しこむことにより、水分が肌に直接補給される。
【0101】
また、化粧水を塗布する際には、肌への浸透性の高いエリスリトールを、圧をかけて肌に押し込むことで、上記の「化粧水及び乳液に共通する有効成分」も、一緒に肌に浸透させることができる。即ち、このように押し込んで塗布することで、化粧水を、
図7に示すように、硬くこわばった肌でも、圧力によりうるおいを送り込んで浸透させることができる(モイスチャー効果)。
【0102】
そのため、化粧水の粘度は、例えば、100~10,000mPa・s程度に、設定されると好適である。
【0103】
さらに、化粧水塗布時に、肌を「押圧」することにより、圧力により皮膚を介して、神経や筋肉に適度な刺激を与えることで、肌自らの力を引き出す作用効果がある。
【0104】
一方、乳液には、アミノ酸系の油性成分であるラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドリル)を含んでいるため、乳液を塗布する際に、曲線状に肌の上を移動しながら、動かすことで、肌を柔らかくほぐすことができる。さらに、乳液には酵母であるサッカロミセス培養溶解質液を含んでいるため、肌の弾力に関わるエラスチンの合成を促したり、保護したりする。また、乳液には、コメ胚芽油、グリセリン、ワセリン、バーム油、ミネラルオイル、高級アルコール、シリコーン油分の等の油分を含んでいるため、皮膚の表面に膜を張って水分が蒸発することを防ぐ。即ち、このようにマッサージしながら塗布されることで、乳液は、
図7に示すように、硬くこわばった肌の角質を柔らかくしつつ、保護膜をつくることができる(エモリエント効果)。
【0105】
そのため、乳液の粘度は、例えば、1,000~1,000,000mPa・s程度に設定されると好適である。
【0106】
さらに、乳液塗布時に、肌上を、指又はコットンで回転することにより、皮膚を動かすことで、肌全体を和らげながら、血行促進し、肌の代謝や、循環を助ける作用効果がある。
【0107】
<実験>
(実験1)
50代の被験者に対して、
図2、
図3に示すそれぞれ3段階の塗布法で、化粧水及び乳液を塗布し、塗布前後で写真を撮影した。
【0108】
図8は、被験者の肌の変化の一例を示す写真である。
図8(a)は、洗顔直後であって、化粧水塗布前(使用前)に撮影した写真であり、
図8(b)は、
図8(a)と同一人物に対して、
図2に示す塗布法Aで化粧水を塗布し、及び
図3に示す塗布法Bで乳液を塗布した後に撮影した写真である。なお、
図8では、肌の状態の説明のため、写真の白黒を反転して示している。
【0109】
図8(a)と
図8(b)とを比較すると、使用後の
図8(b)では、照明に対して、肌が広範囲で反射し、輝いている。即ち、肌に潤いが蓄えられ、ハリと透明感で満たされることで、外側からの光を受けて、内側から多く反射し、輝くようなつやが現れている(
図8(b)で濃く黒い部分)。
【0110】
一般的に、肌がしぼんでハリがない状態では肌の表面に小さな凹凸が存在し、光が均一に反射されないことでつやは現れない。一方、つやがある肌では、小さな凹凸がほとんどなく、なめらかでハリがあることで、光が反射される。そのため、写真において、つやとして反射する部分が発生する。
【0111】
さらに、21人のアンケート結果により、光が反射するつやの位置が、頬の高い位置に存在すると、その人物に「快活なイメージ」を与える、という感覚を引き起こすことがわかった。そのため、
図8(b)の使用後の被験者は、つやが、頬の高い位置に存在するため、
図8(a)の使用前と比較して、被験者は、「快活なイメージ」を周りの人に与えることができる。
【0112】
また、
図8(b)では、
図8(a)と比較して、肌の頬の反射が多くなったことが分かるため、上述の有効成分を含む本発明の化粧水及び乳液を、
図2、
図3に示す美容方法で塗布することで、肌に対してモイスチャー効果により水分の浸透が実現され、エモリエント効果により肌表面の凹凸が滑らかになったといえる。これにより、
図7に示す作用効果が確認できた。
【0113】
また、
図8(b)では、
図8(a)と比較して、被験者の顎の下端が鋭角になっている、即ち、顎周辺のたるみが減っている。このように、化粧水の塗布法Aの塗り広げ、押圧、包み込みの3段階の塗布と、乳液の塗布法Bの塗り広げ、回転移動、包み込みの3段階の塗布による、押圧・マッサージ効果により、弾力、ハリが改善されたといえる。
【0114】
(実験2)
さらに、本発明者は、50代の被験者に対して、化粧水及び乳液の塗布前後での、顔の血流の変化を測定する実験を行った。
【0115】
図9は、被験者が化粧水、乳液を自己流で塗布した場合と、本発明の塗布方法で塗布した場合とで、顔の血流の変化を示す図である。詳しくは、
図9において、(a)は、50代の被験者が化粧水、乳液を塗布する前の顔の血流を示す図であり、(b)は、同一の被験者が化粧水、乳液を自己流の塗布方法で塗布した直後の顔の血流を示す図である。また、(c)は、50代の被験者が化粧水、乳液を塗布する前の顔の血流を示す図であり、(d)は、同一の被験者が化粧水、乳液を
図1に示す本発明の塗布方法で塗布した直後の顔の血流を示す図である。なお、被験者の顔の血流の分布は、サーモグラフィーで測定した。
【0116】
上述のように、本発明の美容方法に適用される、化粧水及び乳液には、血行を良くするオランダガラシ葉/茎エキス及びイチョウ葉エキスが含まれている。
【0117】
そのため、
図9(b)、
図9(d)ともに、本発明の化粧水及び乳液を塗布することで、肌の血行が良くなっている。そして、自己流でも、
図9(b)に示すように使用後の血流改善が確認できたが、本発明の塗布方法では、
図9(d)に示すように、
図9(b)よりもさらに広範囲で血流改善が確認できた。
【0118】
この血流改善は化粧水塗布時の指又は塗布具での肌の押圧の刺激、及び乳液塗布時の指又は塗布具での肌表面上の回転移動による肌と指又は塗布具との移動摩擦、及び移動による顔の肉が移動することでの代謝熱が発生するものと考えられる。さらに、化粧水と乳液の両方に含まれる、オランダガラシ葉/茎エキス及びイチョウ葉エキスによる血行促進や、グリセリンによる発熱などによる温度上昇も考えられる。
【0119】
本発明の塗布方法で塗布することによって、
図9(d)に示すように、顔のより広範囲において1回でも血流がよくなる効果があるため、継続的にこの塗布法で塗布することを続けることで、顔のむくみ、及びハリ弾力の改善が見込まれる。
【0120】
(実験3)
化粧水や乳液のような、スキンケア化粧料の塗布方法の違いは肌への効果や塗布後の効果実感だけではなく、塗布中の効果実感や感触にも影響すると考えられる。
【0121】
そこで、本実験では、リアルタイムな官能評価手法として、塗布方法によって塗布中の効果実感や感触がどのように変化していくかについて、時系列官能評価手法TDS(Temporal Dominance of Sensations)法にて実験を行った。TDS法は時系列で最も優位な感覚を回答する手法であり、優位な感覚の変化を把握できる。
【0122】
詳しくは、本実験では、20代~50代の女性21名(平均年齢40.6歳、SD=6.3)が実験に参加し、化粧水・乳液を塗布しているときの肌の感覚についてTDS法による評価を行った。
【0123】
使用した化粧水、乳液は上述のような有効成分を含むものであって、「指定なし」の場合と、「指定あり」の場合で、化粧水1種類、乳液1種類でそれぞれ共通するものを使用した。そして、被験者は、共通する化粧水、乳液について、塗布動作を「指定なし」の場合と、「指定あり」の場合で、異なる2種類の方法で塗布を行った。
【0124】
最初に「指定なし」として、塗布動作を指定せず自分なりの方法で塗布・評価を行い、続いて、指定された塗布動作(
図2の塗布法A、
図3の塗布法B)で塗布・評価を行った。なお、「指定なし(自己流)」の塗布法は、化粧水については塗布法A、乳液については塗布法Bとは異なる方法であった。
【0125】
「指定なし」では自分なりの方法で、化粧水・乳液を顔全体になじませるよう求めた。手ではなく、塗布具を要望した一部の被験者にはコットンを使用して塗布をするよう指示し、最終的に手で塗布した人は8名、コットンで塗布した人は13名となった。
【0126】
一方の「指定あり」の実験では、効果実感を高めるために化粧水・乳液ともに
図2、
図3に示すように3つのステップに分かれており、いずれもコットンを用いて塗布が行われた。
【0127】
「指定あり」の化粧水は、
図2に示す塗布法Aで塗布され、化粧水を浸み込ませたコットンを顔全体に滑らせた後(S11)、コットンで顔全体の肌を押さえるようにし(S12)、最後に両手で包み込む動作を行った(S13)。
【0128】
「指定あり」の乳液は、
図3に示す塗布法Bで塗布され、乳液を浸み込ませたコットンを顔全体に滑らせた後(S21)、コットンで顔全体の肌をクルクルと円を描くように動かし(S22)、最後に両手で包み込む動作を行った(S23)。
【0129】
より自然な塗布状況下で評価を行うため、被験者は塗布をしながら感じた感覚を評価項目の一覧から選択し、その属性1項目を感じたタイミングに口頭で回答した(TDS法)。評価項目は、スキンケア時に感じられると考えられる10項目であった。10項目は、「こくがある」、「油っぽい」、「しみ込んでいく」、「しっとり」、「もっちり」、「みずみずしい」、「なめらか」、「さっぱり」、「ふっくら」、「べたつく」であった。なお、各項目の定義については、
図10で示す。また、
図10の表の右欄は、化粧水、乳液の塗布後における、特に好ましい感覚を◎、好ましい感覚を〇、好ましくない感覚を△と示す。
【0130】
なお、
図10の表において、「こくがある」とは、液にとろみがあってまろやかで濃厚であり、肌当たりがよいことを含む。「みずみずしい」とは、ひんやりとしてさらっと軽く、肌にたっぷりの水を感じることを含む。「油っぽい」とは、ぬるぬるとぬめりがあり、肌の上で重く、油っぽいことを含む。「もっちり」とは、肌がうるおいで満たされたように、もちもちとすいつく感じがすることを含む。「べたつく」とは、粘り気があって後残り感があり、肌がべたべたとくっつく感じがすることを含む。
【0131】
また、上述のように、30代以上で、以前と比較して肌に変化を感じている年齢を重ねた大人な肌となった使用者には、スキンケアの効果としてうるおいを実感してもらうことが望まれる。そのため、肌をうるおいで満たし、ほぐされたようにやわらかくふっくらしたハリ弾力を感じさせることができる、「しっとり」、「なめらか」に加えて、「ふっくら」、「もっちり」という感覚が期待する感覚となる。
【0132】
本実験のTDS法の評価では、化粧水・乳液それぞれについて、塗布条件ごとに各時点で感覚の属性が優位であった割合(優位比率)を求め、TDS曲線を算出した。詳しくは、被験者が感覚を口頭で回答した際に、実験監督者がその属性のボタンを選択して、被験者が次の感覚を口頭で回答するまでの期間、その感覚の属性を入力した。実験監督者によって入力された、データの解析には官能評価を行うソフトウエアであるJ-SEMS(登録商標)(ver.1.1.41)を使用した。なお、被験者は、それぞれ塗布に要した時間が異なることから、TDS曲線の解析は、相対時間を用いて行った。
【0133】
図11は、被験者が、自己流及び塗布法Aで化粧水を塗布した際の被験者の肌に対する感覚の変化を時系列に示すTDS曲線のグラフである。
図11では、縦軸はその感覚の占有割合(%)、横軸は塗布時間を100とした場合の時間の経過時間の割合(%)を示している。
図11において、(a)は自己流(指定なし)で化粧水を塗布した場合、(b)は塗布法Aで化粧水を塗布した場合を示している。
【0134】
図12は、
図11において自己流及び塗布法Aで化粧水を塗布する期間における、被験者の肌に対する感覚のうち、有意水準5%で有意だった感覚を抽出した相対時間のタイミングチャートである。
図12において、(a)は自己流(指定なし)で化粧水を塗布した場合、(b)は塗布法Aで化粧水を塗布した場合を示している。
【0135】
図11(a)、
図12(a)に示すように、化粧水を指定なしで塗布した場合は、塗布開始から順に「みずみずしい」「なめらか」「こくがある」「しっとり」「しみ込んでいく」「しっとり」「もっちり」が有意に感じられた(p<.05)。
【0136】
図11(b)、
図12(b)に示すように、化粧水を塗布法Aで塗布した場合は、塗布開始から順に「こくがある」「みずみずしい」「なめらか」「しみ込んでいく」「しっとり」「ふっくら」「もっちり」が有意に感じられた(p<.05)。
【0137】
図12(a)と
図12(b)とを比較すると、選択された属性はほぼ変わらないが、塗布法Aでは「しみ込んでいく」「しっとり」の有意な時間が長く、塗布後半で「ふっくら」の感覚が感じられた。
【0138】
また、
図11(a)と
図11(b)の平均塗布時間を比較すると、指定なしで塗布する場合よりも、塗布法Aで塗布した場合の方が、塗布時間が長い。
【0139】
そして、塗布方法の違いを確認するため、各属性が優位であった絶対時間の合計時間についてt検定を実施した。
図13は、実験3で化粧水を塗布した際に回答された、「しみ込んでいく」、「しっとり」という感覚が優位であった合計時間(すなわち、実感期間)のt検定結果を示す図である。
図13(a)は「しみ込んでいく」の合計時間の結果、
図13(b)は「しっとり」の合計時間の結果である。
【0140】
図13(a)及び
図13(b)に示すように、「しみ込んでいく」「しっとり」について塗布法Aの方が感じられた時間が有意に長かった(それぞれt(20)=3.79,p<.001,t(20)=2.25,p<.05)。
【0141】
ここで、被験者の行動を観察したところ、塗布法Aでは概ねステップS11:S12:S13にかける時間が2:2:1であった。そして、各動作を実行する期間に肌の感覚を対応づけると、
図11(b)に示すように、S12での押圧動作が「しみ込んでいく」「しっとり」という感覚の増加に、S13での包み込み動作が「ふっくら」の感覚の創出に寄与したと考えられる。このように、時系列評価を行うことで、塗布中のどのステップ(動作)が、どのような感覚につながるのかを明確に示すことが可能となった。
【0142】
そして、
図11(a)と
図11(b)の平均塗布時間を比較すると、指定なしで塗布する場合よりも、塗布法Aで塗布した場合の方が、20秒程度、全体の塗布時間が長い。この塗布時間が増加したことも、効果がより実感できるようになった要因の一つと考えられる。
【0143】
図14は、被験者が自己流及び塗布法Bで、乳液を塗布した際の被験者の肌に対する感覚の変化を示すTDS曲線のグラフである。
図14では、縦軸はその感覚の占有割合(%)、横軸は塗布時間を100とした場合の時間の経過時間の割合(%)を示している。
図14において、(a)は自己流(指定なし)で乳液を塗布した場合、(b)は塗布法Bで乳液を塗布した場合を示している。
【0144】
図15は、
図14において自己流及び塗布法Bで乳液を塗布した際の、被験者の肌に対する感覚のうち、有意水準5%で有意だった感覚を抽出した、相対時間のタイミングチャートである。
図15において、(a)は自己流(指定なし)で乳液を塗布した場合、(b)は塗布法Bで乳液を塗布した場合を示している。
【0145】
図14(a)、
図15(a)で示すように、乳液を指定なしで塗布した場合は、塗布開始から順に「こくがある」「なめらか」「しっとり」「しみ込んでいく」「しっとり」「もっちり」が有意に感じられた(p<.05)。
【0146】
図14(b)、
図15(b)で示すように、乳液を塗布法Bで塗布した場合は、塗布開始から順に「こくがある」「なめらか」「しっとり」「しみ込んでいく」「もっちり」「ふっくら」が有意に感じられた(p<.05)。
【0147】
図15(a)と
図15(b)で示すように、化粧水と同様に選択された属性はほぼ変わらなかったが、塗布法Bでは「しっとり」「ふっくら」の有意な時間が長く、塗布終盤で「ふっくら」が感じられた。
【0148】
塗布方法の違いを確認するため、各属性が優位であった絶対時間の合計時間についてt検定を実施した。
図16は、実験3で乳液を塗布した際に回答された、「しっとり」及び「ふっくら」という感覚が優位であった合計時間のt検定結果を示す図である。
図16(a)は「しっとり」の合計時間の結果、
図16(b)は「ふっくら」の合計時間の結果である。
【0149】
図16(a)及び
図16(b)に示すように、「しっとり」について塗布法Bの方が感じられた時間が有意に長く、また、「ふっくら」について塗布法Bの方が感じられた時間が優位傾向に長かった。(それぞれt(20)=2.79,p<.05,t(20)=1.88,p<.10)。なお、P値が0.05未満なら有意、0.05以上0.1未満のとき、有意傾向とする。
【0150】
ここで、被験者の行動を観察したところ、塗布法Bでは概ねステップS21:S22:S23にかける時間が2:2:1であった。そして、各動作を実行する期間に肌の感覚を対応づけると、
図14(b)に示すように、S22の肌上の回転移動動作が「しみ込んでいく」「しっとり」の時間の増加に、S23の包み込み動作が「ふっくら」の感覚の創出に寄与したと考えられる。このように、時系列評価を行うことで、塗布のどのステップがどのような感覚につながるのかを明確に示すことが可能となった。
【0151】
なお、
図14(a)と
図14(b)の平均塗布時間を比較すると、指定なしで塗布する場合よりも、塗布法Bで塗布した場合の方が、塗布時間が長い。
【0152】
効果実感を高めることを意図した塗布法A、塗布法Bでは、TDS曲線の結果から指定なしよりも化粧水・乳液ともに「しみ込んでいく」「しっとり」を感じる時間が長く、指定なしでは感じられにくかった「ふっくら」及び「もっちり」をより多くの人が感じており、同じ化粧水・乳液でも塗布方法により塗布中の評価は異なることが示された。
【0153】
また、絶対時間でも塗布法Aは「しみ込んでいく」「しっとり」を感じた時間が長く、塗布後のアンケートではより多くの被験者が効果実感を報告していた。実際に塗布方法の違いによって効果が異なり、効果実感に影響したことも考えられるが、効果実感を高めるためには、塗布中に効果実感につながる感覚を感じること、特により長く感じることが重要と考えられる。
【0154】
さらに、塗布の終了時点における感覚も重要と考えられる。化粧水を「指定なし」で塗布した場合、
図11(a)の終了時点の感覚に着目すると、被験者21人の感覚は多い順から上位3つは、もっちり(7人)、さっぱり(4人)、しっとり(3人)、しみ込んでいく(3人)、ふっくら(3人)であった。これに対して、化粧水を「塗布法A」で塗布した場合、
図11(b)での終了時点の被験者の感覚は、多い順から上位3つは、もっちり(11人)、べたつく(4人)、ふっくら(3人)であった。
【0155】
これにより、化粧水塗布の最終時点の感覚として、指定なしの塗布法では、2番目に多く「さっぱり」と感じており、「さっぱり」では爽快感によりすっきりしているため、物足りない感覚とも考えられる。これに対して、塗布法Aでは、「もっちり」と感じた人数が増えたため、期待する効果が、より多くの人に実感してもらえたことになる。
【0156】
一方、乳液を「指定なし」で塗布した場合、
図14(a)の終了時点の感覚に着目すると、被験者21人の感覚は多い順から上位3つは、もっちり(11人)、べたつく(5人)、ふっくら(3人)であった。これに対して、乳液を「塗布法B」で塗布した場合、
図14(b)での終了時点の感覚は、多い順から上位3つは、ふっくら(9人)、もっちり(8人)、べたつく(3人)であった。
【0157】
これにより、最終時点の感覚として、指定なしの塗布法では、「べったり」が3番目に多く存在し、この人たちに油っぽいというマイナスの感覚を持たれたと考えられる。これに対して、塗布法Bでは、「もっちり」及び「ふっくら」が増えたため、期待する効果がより多くの人に実感してもらえたことになる。なお、塗布法Bでは、べったりと回答した人は3人に減った。
【0158】
このように、本発明の美容方法では、2種類の化粧料をそれぞれ適した塗布方法で塗布することで、「もっちり」及び「ふっくら」という感覚をより多くの人に感じさせることが可能になり、肌の水分量を上昇させ、肌の弾力性(ハリ弾力)を高めることができる。
【0159】
これにより、本発明の2種の化粧料を用いた美容方法を実施することで、年齢を重ねた肌であっても、肌をうるおいで満たし、ほぐされたようにやわらかくふっくらしたハリ弾力を感じさせることができる。
【0160】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。