(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】熱と水分の交換媒体
(51)【国際特許分類】
A61M 16/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61M16/16 Z
(21)【出願番号】P 2023065664
(22)【出願日】2023-04-13
(62)【分割の表示】P 2020524888の分割
【原出願日】2018-11-05
【審査請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507289070
【氏名又は名称】インターサージカル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ミクノヴィック、アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】グルンディンスキーネ、ロレータ
(72)【発明者】
【氏名】ブース、クリストファー、エジャリー
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/100947(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02705949(EP,A1)
【文献】国際公開第00/049357(WO,A1)
【文献】特表2012-514512(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02647401(EP,A1)
【文献】特開2013-188288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隣接した重なる層のHME材料を含むHME媒体であって、
前記HME材料は、前記HME材料の1つの表面の少なくとも一部から延在
し前記HME材料から形成され前記HME媒体の中の前記HME材料の隣接する層の間隔を維持する複数の離散した突出体を備え、
各突出体は、非突出体のHME材料によって完全に囲まれている、セルロース紙を含むHME媒体
。
【請求項2】
各突出体が形成される前記HME材料の領域は、0.4mm~5.0mmの間、0.6mm~3.0mmの間、0.8mm~2.0mmの間、のうち何れか一つの最大寸法を有する、請求項
1に記載のHME媒体
。
【請求項3】
前記突出体は前記HME材料の全幅には跨らない、請求項
1又は2のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項4】
前記突出体は、半球形、円錐台形、円筒形、角錐形、立方形、半円筒形、これらの任意の組合せ、のうちの少なくとも一つである、請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項5】
前記突出体は前記HME材料の表面から、0.1mm~1.0mmの間、0.3mm~0.8mmの間、0.5mm~0.6mmの間、のうち何れか一つだけ突出している、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項6】
前記突出体は前記HME材料の前記表面の上に規則的に分布している、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項7】
前記突出体の1cm2あたりの密度は、3~50の間、5~40の間、8~30の間、10~20の間、のうち何れか一つである、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項8】
前記HME材料はさらに天然繊維を含む、請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項9】
前記天然繊維は綿を含む、請求項
8に記載のHME媒体
。
【請求項10】
前記HME材料はさらに合成繊維を含む、請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項11】
前記合成繊維はポリアミン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、これらの任意の組合せ、のうちの少なくとも一つを含む、請求項
10に記載のHME媒体
。
【請求項12】
前記HME材料は吸湿性材料を含む、請求項1~請求項
11のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項13】
前記吸湿性材料は、グリコールやグリセリンなどのポリオール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの吸湿性ポリマー、ポリアクリレート、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化リチウムなどの吸湿性塩、これらの任意の組合せ、のうちの少なくとも一つを含む、請求項
12に記載のHME媒体
。
【請求項14】
前記HME材料は、0.01mm~1.0mmの間、0.05mm~0.5mmの間、0.1mm~0.3mm又は0.2mmの間、のうち何れか一つの厚さを有する、請求項1~請求項
13のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項15】
前記HME材料は、細長いストリップ形状である、請求項1~請求項
14のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項16】
前記HME材料のストリップの幅は、5mm~20mmの間、8mm~18mmの間、のうち何れか一つである、請求項
15に記載のHME媒体
。
【請求項17】
前記複数の離散した突出体は、前記HME材料の2つの対向する面の少なくとも一部から延在する、請求項1~請求項
16のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項18】
前記HME媒体は、前記HME材料のコイルの形状である、請求項1~
17のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項19】
前記HME媒体は、直径が1.5cm~8.0cmの間である、請求項1~
18のいずれか一項に記載のHME媒体
。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか一項のHME媒体を備えるHME装置
。
【請求項21】
複数の隣接した重なる層のHME材料によりHME媒体を構成するHME材料を作製する方法であって、
前記HME媒体の中の前記HME材料の前記複数の隣接した重なる層の間隔を維持し前記HME材料からの複数の離散した突出体を形成する複数の離散した突起を含む第1のエンボス加工面にHME材料を押し付けることを含み、前記第1のエンボス加工面の前記複数の離散した突起の各々は、前記第1のエンボス加工面の突起していない領域によって完全に囲まれている、セルロース紙を含むHME材料を作製する方法
。
【請求項22】
前記HME材料は、第2のエンボス加工面によって前記第1のエンボス加工面の上の前記突起に押し付けられる、請求項
21に記載の方法
。
【請求項23】
前記第2のエンボス加工面は、前記第1のエンボス加工面の前記突起に対応する窪みを備える、請求項
22に記載の方法
。
【請求項24】
前記第2のエンボス加工面はさらに、前記第1のエンボス加工面に設けられた窪みに対応する突起を備える、請求項
23に記載の方法
。
【請求項25】
前記第1のエンボス加工面と第2のエンボス加工面は、第1のエンボス加工ローラと第2のエンボス加工ローラの円周面である、請求項
23または請求項
24に記載の方法
。
【請求項26】
前記第1のエンボス加工ローラと第2のエンボス加工ローラは、前記第1のエンボス加工ローラと第2のエンボス加工ローラの前記円周面どうしが接触する挟み込み部を画定する、請求項
25に記載の方法
。
【請求項27】
前記第1のエンボス加工ローラの前記突起は、前記挟み込み部において前記第2のエンボス加工ローラの前記窪みと噛合する、請求項
26に記載の方法
。
【請求項28】
前記突起の高さは、0.2mm~6.0mmの間、0.4mm~4.0mmの間、0.6mm~2.0mmの間、のうち何れか一つである、請求項
21~請求項
27のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項29】
前記突起の高さは、前記HME材料の厚さの、1倍~30倍の間、2倍~20倍の間、3倍~10倍の間、のうち何れか一つであってよい、請求項
21~請求項
28のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項30】
前記突起は、半球状の端部を有する円筒である、請求項
21~請求項
29のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項31】
前記突起は、円筒形であって、その遠位端の表面がその長手軸に対して傾斜している、請求項
21~請求項
29のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項32】
前記エンボス加工されたHME材料をコイルに巻くことを更に含む、請求項
21~請求項
31のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項33】
前記HME材料はさらに天然繊維を含む、請求項
21~請求項
32のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項34】
前記天然繊維は綿を含む、請求項
33に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に呼吸ガスとの熱と水分の交換に使用する、熱と水分の交換(HME)材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な呼吸時には、ガスは口及び/又は鼻を介して体内に入り、気道を通って肺に入る間に加熱及び加湿される。しかし、気管切開時又は人工呼吸器や麻酔装置での人工換気時などで、上気道がバイパスされるときには、吸気ガスが下気道及び肺に到達する前に不適切な加熱及び加湿がなされることがある。下気道及び肺を不適切に加熱及び加湿されたガスに曝すことは、粘膜面を刺激して粘膜機能を損ない、不快感及び気道感染症への感受性を増大させることになる可能性がある。
【0003】
呼吸ガスは、熱と水分を保持及び放出することができるHME媒体を備えるHME装置を使用して、吸入の前に受動的に加熱及び加湿されてもよい。呼吸ガスは、患者の気道内で呼気ガスにより取り込まれた熱と水分がHME媒体に伝達され、吸入時にHME媒体を逆方向に通過するガスに伝達させられるようにして、HME媒体を通過する。
【0004】
HME媒体は、可能であればHME媒体の水分保持能力を高めるための吸湿性添加物を有する複数層のシート材料又は発泡材料で形成され得る。
【0005】
本出願の目的のために、HME材料に関するすべての言及は、シート材料、最も一般的には、発泡体ではなく、綿などの繊維材料を含むセルロース系の紙を指すことを理解されたい。HME媒体は典型的には、例えば1つ以上のHME材料ストリップをコイルに巻き取るなどして、複数層のHME材料を互いに隣接して積層することで形成される。そうして、ガス流が基本的にHME材料面に対して横断方向になるようにHME媒体がHME装置内に配置され、ガス流がHME媒体内のHME材料の隣接する層の間を主として通るようにする。
【0006】
HME材料は典型的には波形にされて、隣接するHME材料層の間隔を維持する。そうして、ガス流に対するHME媒体の抵抗を低減して、熱と水分の交換に利用可能なHME材料の表面積を増大させる。そのような波形は、HME材料の全幅を横断する、連続した/途切れのない隆起の形をとる。典型的には、これはHME材料の軸に対して垂直又は斜めの角度を有する直線的な隆起として設けられる。ただし、いくつかの場合において、波形を形成する隆起は、「V」字型かジグザグパターンであるか、あるいは湾曲していてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HME材料は従来は、材料のストリップを2つの噛合するギヤの間を通過させることによって波形加工される。ただし、この方法で形成される波形の完全度は、波形加工が行われる時の相対湿度に影響され得る。したがって、しっかりした波形が形成され、結果としてのHME媒体性能が一定であることを確保するために、この方法を用いるHME媒体の製造時には相対湿度を注意深く監視して、調整することを必要とする場合が多い。波形加工されたHME材料は、そのHME材料を波形構造に保持するために、波形のない材料に接着されることもある。
【0008】
さらに、HME材料を張力下に置くことで、波形が平坦化し、その結果、隣接するHME材料層との分離機能を失うこともある。これは、コイル形状をした比較的小さいHME媒体においては、HME媒体の中心における開口の形成を防ぐために比較的蜜にコイル巻きしなければならないので、特に問題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術に関する上記及び/又は他の問題を克服、又は実質的に軽減する、改良されたHME材料及びHME材料の製造方法が考案された。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、HME材料の一面の少なくとも一部から延在する複数の離散した突出体を備えるHME材料が提供される。
【0011】
本出願の内容における、「離散した突出体」とは、材料の実質的に全面に亘り一方向に延在する寸法を有する典型的な波形、又はそれに類似のものとは区別されることを意図する。離散突出体はそれとは対照的に、分離した点状の突出体、又はHME材料の表面内で閉ループ境界を有する突出体として近似可能である。
【0012】
HME材料は通常長さと幅を有し、複数の突出体は、HME材料の長さに沿う方向と幅の横断方向の両方に設けることが可能である。複数の突出体はこうして、HME材料の表面上に2次元配列で提供され得る。各突出体は、HME材料の対向する両端の間の材料面上に、閉ループの外部境界を画定できる。
【0013】
HME材料は、特に呼吸ガスとの熱と水分の交換に使用するための、HME装置内に含まれるHME媒体の製造のためのものであってよい。HME材料、HME媒体及びHME装置は、例えば、人工呼吸器又は麻酔装置を用いた気管切開又は人工呼吸時における、呼吸ガスの加熱及び加湿のために使用することができる。
【0014】
HME材料の一面の少なくとも一部から延在する複数の突出体は、HME媒体内のHME材料の隣接する層の間隔を維持し、そうして、ガス流に対するHME媒体の抵抗を低減して、熱と水分の交換に利用可能なHME材料の表面積を増大させることができる。
【0015】
HME材料内のそのような突出体の完全性により、製造時の相対湿度の影響を波形よりも受けにくい。さらに、HME材料内の突出体は、波形よりも平坦化する傾向が小さく、例えば、比較的小さいHME媒体を形成するために密接したコイルに巻き上げられるときなどの、比較的高い張力下に置かれた場合においても、HME材料の隣接層間の間隔を維持する能力が保持される。
【0016】
突出体は好ましくはHME材料と同一材料で形成される。具体的には、突出体は、HME材料から突出体が形成されるように変形された、HME材料の領域であることが好ましい。HME材料はしたがって、各突出体の反対側の面に圧痕を含み得る。そのような突出体は、HME材料をエンボス加工することで形成され得る。突出体は好ましくは、実質的に突出していないHME材料で完全に取り囲まれる。
【0017】
各突出体が形成されるHME材料の領域は、円形、楕円形、正方形、長方形、菱形、又はこれらの任意の組み合わせなどの、多種類の形状の任意のものであってよい。各突出体が形成されるHME材料の領域は、最大又は最長の寸法(例えば直径、長径、最大長さ/幅など)が、少なくとも0.4mm、少なくとも0.6mm、又は少なくとも0.8mmであり、かつ5.0mm以下、3.0mm以下、又は2.0mm以下であってよい。具体的には、各突出体が形成されるHME材料の領域は、0.4mm~5.0mmの間、0.6mm~3.0mmの間、又は0.8mm~2.0mmの間の、最大又は最長の寸法を有してもよい。具体的には、各突出体が形成されるHME材料の領域は、円形形状であって、最大寸法が各突起の直径に対応する。
【0018】
単一の突出体はHME材料の全幅には跨らない。そして典型的には、HME材料の幅を横断して提供される一群の突出体も同様に、全幅には跨らない。いずれにしても、突出体は好ましくは、HME材料が張力下に置かれたときに平坦化しやすくならないように配置される。
【0019】
突出体は、半球形、円錐台形、円筒形、角錐形、立方体形、半円筒形、又はこれらの任意の組合せなどの、多種類の形状の内の任意のものであってよい。
【0020】
突出体がHME材料の表面から突出する最大距離は、HME材料の隣接する層間の間隔を維持する能力の重要な因子である。具体的には、突出体はHME材料表面から、少なくとも0.1mm、少なくとも0.3mm、又は少なくとも0.5mm、かつ好ましくは1.0mm以下、0.8mm以下及び0.6mm以下だけ突出してよい。したがって、突出体はHME材料の表面から、0.1mm~1.0mmの間、0.3mm~0.8mmの間、又は0.5mm~0.6mmの間だけ突出してよい。
【0021】
HME材料形成に通常使用される材料の公差では、同一条件で形成された突出体のHME材料表面からの突出距離に大きな変動があり得る。具体的には、突出体のHME材料表面からの突出距離は、最大で20%、最大で15%、最大で10%あるいは最大で5%の変動があり得る。
【0022】
突出体は好ましくは、HME材料の少なくとも一面の実質的に全面に亘って分布する。突出体はHME材料の両面に存在してもよい。突出体が形成されるHME材料の面積の割合は、少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも20%であり、かつ50%未満、40%未満、又は30%未満であってよい。したがって、突出体が形成されるHME材料の表面積の割合は、5%~50%の間、10%~40%の間、又は20%~30%の間であってよい。
【0023】
HME材料の隣接層の間に均等な間隔を与えるために、突出体は好ましくはHME材料の表面上に規則的に分布される。多種の分布が適切であって、具体的には突出体は、3、4、5、6、7、又は8などの、複数列に分布してもよい。列は実質的に互いに平行であって、HME材料の長さに沿って延在してもよい。各列の突出体は、隣接する列の突出体に整列しても、それからずれてもよい。各列の間隔は、各列内の突出体の間隔と同じであって、突出体が規則的な格子パターンに配列されてもよい。
【0024】
HME材料の表面上の突出体の密度は、突出体の大きさと形状に大きく依存して変化し得る。ただし、1cm2当たりの突出体の密度は、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、又は少なくとも10であり、かつ50未満、40未満、30未満、又は20未満であってよい。HME材料の表面上の1cm2当たりの突起の密度は、3~50の間、5~40の間、8~30の間、又は10~20の間であってよい。
【0025】
突出体はさらにHME材料内に穿孔を備えてもよい。穿孔は、円形、楕円形、正方形、長方形、菱形、又はこれらの任意の組合せなどの、多種類の形状の内の任意のものであってよい。穿孔は、少なくとも0.4mm、少なくとも0.6mm、又は少なくとも0.8mmで、かつ5.0mm以下、3.0mm以下、又は2.0mm以下の最大寸法であってよい。具体的には、穿孔は、0.4mm~5.0mmの間、0.6mm~3.0mmの間、又は0.8mm~2.0mmの間の最大寸法であってよい。特に、穿孔が円形形状である場合は、最大寸法は穿孔の直径に対応する。
【0026】
各穿孔の端部の周りのHME材料の少なくとも一部は、HME材料面から突出してよい。例えば、各穿孔の端部の周りのHME材料の約25%、約50%、又は約75%が突出してもよい。ただし、各穿孔の端部すべてがHME材料面より突出して、突出体が実質的に、頂点に穿孔を有する円錐又は角錐形であってもよい。
【0027】
穿孔はHME材料内の切り込み形状であってもよい。具体的には、穿孔は、HME材料の領域を部分的に囲む切込みであって、HME材料面から延びるフラップを形成してもよい。例えば、切り込みはC字型でフラップが実質的に円形であってもよいし、又はV字型でフラップが実質的に三角形であってもよい。
【0028】
切り込みの形態での穿孔の形成は、HME材料部分の打ち抜きを含まないので、代替の穿孔方法に比べて作られる削り屑及び遊離した破片が少なくなる傾向がある。
【0029】
HME材料は、熱と水分を保持及び放出可能な任意の材料で形成され得る。HEM材料は一般に多孔質材料であり、具体的には紙や特にセルロース紙などの繊維性材料が典型的である。ただしHME材料は、綿などの他の天然繊維、ポリアミン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル及びポリビニルアルコールなどの合成繊維、又はこれらの任意の組合せで形成されるか、又はそれらを含んでもよい。
【0030】
HME材料は、水分を保持するHME材料の能力を改善する、吸湿性材料などの添加物を含んでもよい。具体的に適切な吸湿性材料としては、グリコールやグリセリンなどのポリオール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの吸湿性ポリマー、ポリアクリレート、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化リチウムなどの吸湿性塩、又はそれらの任意の組合せなどがある。
【0031】
吸湿性材料含有量のより大きなHME材料は、水分を保持及び放出する高い能力を有し、したがって、向上した熱及び水分の交換性能を有する。HME材料の吸湿性材料含有量は、重量で少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%であってよい。
【0032】
HME材料がシート形状である場合、吸湿性材料含有量は、少なくとも40g/m2、少なくとも60g/m2、少なくとも80g/m2、少なくとも100g/m2、少なくとも120g/m2、少なくとも140g/m2、少なくとも160g/m2、少なくとも180g/m2、又は少なくとも200g/m2であってよい。
【0033】
HME材料は好ましくは、シート形状である。シートの厚さは、熱と水分の交換のための十分な表面積を提供しつつ、熱と水分を保持するのに十分大きな厚さであることが好ましい。具体的には、HME材料は、好ましくは0.01mm~1.0mmの間、より好ましくは0.05mm~0.5mmの間であり、最も好ましくは0.1mm~0.3mmの間であって、具体的には約0.2mmの厚さを有する。
【0034】
HME材料は好ましくは細長いストリップであって、HME材料のHME媒体への形成を容易にする。HME材料ストリップの幅は、5mm~20mmの間、又は8mm~18mmの間であって、例えば約9.5mmの間、又は約16mmであってよい。
【0035】
離散した突出体は、HME材料の2つの対向する面の少なくとも一部から延在してもよい。HME材料のストリップの第1と第2の側は、こうして両方ともそれらの表面から延在する離散した突出体を含んでもよい。HME材料の第2の表面から延在する突出体は、前に述べた任意の突出体と同様であってよい。そして第1の表面から延在する突出体と同様であっても、異なっていてもよい。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるHME材料を備えるHME媒体が提供される。
【0037】
HME媒体は好ましくは、相互に隣接/重複して配置された、多層のHME材料で形成される。そして特にはHME材料のコイルであることが好ましい。HME媒体は、5個、4個、3個若しくは2個のHME材料、又はコイルに形成された1個のHME材料から形成されてよい。あるいは、HME材料は、自分自身の上に繰り返し折り畳まれて層を形成してもよい。
【0038】
HME媒体の高さは、その構成に使用されるHEM材料の幅に対応する。したがって、一般的に、5mm~20mmの間、又は8mm~18mmの間であり、例えば、約9.5mm、又は約16mmであってよい。
【0039】
HME媒体の直径は、HME材料の厚さ、コイルの巻き数、及びコイルの層の間隔に依存する。HME媒体は典型的には、直径が15mm~80mmであり、具体的には、比較的大きなHME媒体の場合には、直径が約50mmであり、比較的小さいHME媒体の場合には、約22mmであってよい。
【0040】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様によるHME媒体を備えるHME装置が提供される。
【0041】
HME装置は、例えば人工呼吸器又は麻酔装置を用いた気管切開又は人工呼吸時における、呼吸ガスを加熱及び加湿するために使用され得る。
【0042】
HME装置は好ましくは、装置を通過する実質的にすべてのガス流がHME媒体を通過するように配置される。HME媒体は好ましくは、装置を通過するガス流が、HME媒体内のHME材料の面を実質的に横断して、ガスがHME材料の隣接する層の間の空隙を主として通過するように配置される。
【0043】
HME装置は好ましくは、HME媒体を含む、熱と水分の交換チャンバを画定するハウジングを備える。ハウジングはさらに、熱と水分の交換チャンバと装置の外部との間を連通する2つのポートを備える。各ポートは好ましくは、通常の呼吸ライン及び関連装置と互換性のある、ルアーテーパなどの標準コネクタを備える。ポートは好ましくは、チャンバの対向する両端に設けられ、チャンバは好ましくは、ポートよりも大きい横断面積を有する。
【0044】
チャンバは好ましくは、HME媒体に占有されていない、各ポートに隣接する空間を含む。これがガスがチャンバ内に入るとガスの膨張を可能として、ガス流がHME媒体を通じて実質的に均等に分布されるようにする。
【0045】
ハウジングは、任意の適切な材料でできていてよい。ただし好ましくは射出成型プラスチック製である。ハウジングの一部又は全体の材料は、透明又は実質的に透明であって、HME媒体の目視検査を可能としてよい。
【0046】
ハウジングにはチャンバ内のガスのサンプリングを行うためのサンプリングポートが含まれてよい。これは好ましくは、HME装置の通常動作時にはガス流がサンプリングポートを通って流れないようにするバルブ又は閉鎖器が含む。
【0047】
本発明の第4の態様によれば、複数の突起を含むエンボス加工面にHME材料を押し付けることを含む、HME材料のエンボス加工方法が提供される。
【0048】
この方法は、HME材料の一面の少なくとも一部から延在する複数の突出体を備えるパターンでHME材料がエンボス加工されるように実行することが可能である。具体的には、本方法は、本発明の第1の態様によるHME材料の製造方法であってよい。
【0049】
HME材料内のこの突出体はその完全性により、製造時の相対湿度の影響を波形よりも受けにくい。したがって、この方法は、製造環境における相対湿度の精密制御をあまり必要とせずに実行可能である。それゆえ既知の方法に比べてコスト削減が達成可能である。
【0050】
HME材料は、任意の適切な手段によってエンボス加工面上の突起に押し付けることができる。ただしHME材料は好ましくは、第2のエンボス加工面によってエンボス加工面上の突起に押し付けられる。第2のエンボス加工面は、第1のエンボス加工面の突起パターンに対応する窪みのパターンを有し、これにより突起がHME材料面を貫通して延びることが可能となる。このことが、突起によるHME材料のより大きな変形を可能とする。その結果、より顕著な突出体及び穿孔がHME材料に形成される。
【0051】
第2のエンボス加工面はさらに、第1のエンボス加工面に設けられた窪みに対応する突起を備えてよい。両方のエンボス加工面は、突起と窪みの両方を有し、処理時にHME材料の両側から延在する突出体を提供することが可能である。第1のエンボス加工面に設けられる突起は、第1のエンボス加工面に設けられる窪みに、形状も分布も対応する必要がない。同様に、第2のエンボス加工面に設けられる突起は、第2のエンボス加工面に設けられる窪みに、形状も分布も対応する必要がない。このことは、異なる形状及び/又は分布をした突出体をHME材料の対向する側に形成することを可能とする。
【0052】
第1と第2のエンボス加工面は、第1と第2のエンボスローラの円周面であってよい。第1と第2のエンボス加工ローラが一緒になって、ローラの円周面同士が接触する挟み込み部を画定し得る。第1のエンボス加工ローラの突起が、挟み込み部において第2のエンボス加工ローラと噛合し得る。同様に、第2のエンボス加工ローラの任意の突起が、挟み込み部において第1のエンボス加工ローラの任意の窪みと噛合し得る。HME材料がエンボス加工ローラの回転によって挟み込み部を通過し、そこで、HME材料は突起からの十分な圧力下に置かれて突出体及び潜在的には穿孔をHME材料内に生成し得る。HME材料を挟み込み部に連続的に通過させることで、本方法の実行が容易に連続プロセスとなるので、この構成は特に好ましい。
【0053】
エンボス加工面の突起は、好ましくは離散的な突起であり、具体的にはエンボス加工面の、実質的に突起ではない領域で完全に囲まれることが好ましい。
【0054】
HME材料に形成される突出体の形状と分布は、主としてエンボス加工面の突起の形状と分布によって決まる。
【0055】
HME材料をエンボス加工面に押し付ける圧力が、HME材料の変形量、したがってHME材料面から突出する突出体の距離に影響する。HME材料がエンボス加工面に十分な圧力で押し付けられると、突起がHME材料を穿孔して、突出体にさらに穿孔を含ませる場合もある。
【0056】
突起の高さ(つまりエンボス加工面から延在する突起の距離)は、少なくとも0.2mm、少なくとも0.4mm、又は少なくとも0.6mmで、かつ6.0mm未満、4.0mm未満、又は2.0mm未満である。したがって、突起の高さは、0.2mm~6.0mmの間、0.4mm~4.0mmの間、又は0.6mm~2.0mmの間であってよい。
【0057】
具体的には、突起の高さは、HME材料の厚さに少なくとも等しいか、その少なくとも2倍、又は少なくとも3倍であり、かつHME材料の厚さの30倍未満、20倍未満、又は10倍未満であってよい。したがって、突起の高さは、HME材料の厚さの、1倍~30倍の間、2倍~20倍の間、又は3倍~10倍の間であってよい。
【0058】
比較的短い突起、例えば1.0mm、0.8mm、又は0.6mm未満、あるいはHME材料の厚さの5倍、4倍、又は3倍未満の高さを有する突起は、穿孔なしの突出体の生成に概してより適している。比較的長い突起、例えば1.0mm、1.2mm、又は1.4mm超、あるいはHME材料の厚さの5倍、6倍、又は7倍超の高さを有する突起は、HME材料への穿孔を有する突出体の生成に、一般的により適している。
【0059】
突起の断面は、円形、楕円形、正方形、長方形、菱形、又はこれらの任意の組合せなどの、多種類の形状の内の任意のものであってよい。突起の断面は、少なくとも0.4mm、少なくとも0.6mm、又は少なくとも0.8mmで、かつ5.0mm以下、3.0mm以下、又は2.0mm以下の最大寸法であってよい。具体的には、突起の断面は、0.4mm~5.0mmの間、0.6mm~3.0mmの間、又は0.8mm~2.0mmの間の最大寸法であってよい。特に、突起の断面が円形形状である場合は、最大寸法は各突起の直径に対応する。
【0060】
突起は、材料を打ち抜いてHME材料に穿孔を形成することがある。ただしこれは概して、HME材料の粒子の形の比較的多量の削り屑を生成する。突起はまた切断によってHME材料に穿孔を形成する場合もあり、この場合には削り屑が生成される傾向は小さい。
【0061】
突起は、半球形、円錐台形、円筒形、角錐形、立方体形、半円筒形、又はこれらの任意の組合せなどの、多種類の形状の内の任意のものであってよい。
【0062】
突起は、半球形の端部を有する円筒形であってもよい。ここで円筒は比較的短い(すなわちその高さより大きい直径を有する)か、又は比較的長い(すなわちその直径よりも大きい高さを有する)であってよい。そのような突起は、特に突起が比較的長く、及び/又は直径が小さい場合には、HME材料内に穿孔を含む突出体を形成し得る。
【0063】
また突起は円筒形であって、遠位端の表面がその長手軸に対して傾斜していてもよい。具体的には、遠位端表面が、30度~60度の間、又はその長手軸に対して約45度で傾斜していてもよい。したがって、突起の遠位端は、HME材料を突き刺して、HME材料に実質的に円形のフラップが形成されるような、ほぼC字型の切り込みを形成可能な尖端となる。
【0064】
エンボス加工面は好ましくは、十分に固く、HME材料に効果的なエンボス加工を可能とする材料で形成される。パターン付きの面を形成するために特に好適な材料は金属である。好適な金属はステンレススチールなどの鋼である。
【0065】
本発明の方法では、特に吸湿性添加物が使用される場合には、エンボス加工の前にHME材料の水分成分を減少させるステップが含まれてもよい。例えばHME材料は、低湿度環境に曝されてもよいし、又はHME材料をローラ面などの加熱表面上を通過させるか若しくは赤外放射に曝すかなどによって加熱されてもよい。
【0066】
HME材料は、微生物汚染がないか、又は実質的にないことが好ましい。これは、本方法を減菌又は無菌の環境で実行することにより達成可能である。代替的に、例えばガンマ線照射、又はHME材料の酸化エチレンへの露出によって、HME材料を消毒する追加ステップが本方法に含まれてもよい。
【0067】
本方法は、HME材料を、本発明の第2の態様によるHME媒体などのHME媒体に形成するステップを更に含んでもよい。具体的には、これは、HME材料の1つ以上のピースをスピンドルに取り付けることと、そのスピンドルを回転させてHME材料をスピンドルの周りのコイルに巻き上げることを含んでもよい。次に得られたHME媒体をスピンドルから取り外し、このプロセスを反復することができる。
【0068】
本方法は、本発明の第3の態様によるHME装置などのHME装置を製造するために、HME媒体をハウジング内に導入するステップを更に含んでもよい。
【0069】
本発明は、特に、フィルタ重量がより小さくて、より大きなフィルタ、すなわち同じ直径のコイルに対して必要とする材料長がより短いフィルタ、を提供する可能性を有する。これにより、コスト低減とともに、流れに対して低抵抗となる可能性も提供され、そのいずれもが利点となる。
【0070】
本発明のいずれか1つの態様に関して定義される任意の必須又は好適な特徴は、実施可能であるならば、任意の更なる態様に適用され得る。したがって、本発明は上で定義した特徴の様々な代替構成を備え得る。
【0071】
次に本発明の現在の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、例示としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】HME媒体製造装置の、縮尺通りではない概略図である。
【
図2A】
図1の装置のエンボス加工上ローラの第1の実施形態の正面図である。
【
図2B】
図2Aのエンボス加工上ローラの、ローラ内部構造を示す部分的な切り欠きを有する側面図である。
【
図3A】
図1の装置のエンボス加工上ローラの、第2の実施形態の正面図である。
【
図3B】
図3Aのエンボス加工上ローラの、ローラ内部構造を示す部分的な切り欠きを有する側面図である。
【
図4A】
図1の装置のエンボス加工下ローラの第1の実施形態の正面図である。
【
図5A】
図1の装置のエンボス加工下ローラの第2の実施形態の正面図である。
【
図6A】
図1の装置のエンボス加工下ローラの第3の実施形態の正面図である。
【
図7A】
図1の装置のエンボス加工下ローラの第4の実施形態の正面図である。
【
図9】上下のエンボス加工ローラの間をHME材料が通過する直前の、
図8のエンボス加工アセンブリの、縮尺通りではない概略断面図である。
【
図10A】エンボス加工されたHME材料の、縮尺通りではない概略平面図である。
【
図10B】
図10Aのエンボス加工されたHME材料の第1の実施形態の、線A-Aに沿った断面図である。
【
図10C】
図10Aのエンボス加工されたHME材料の第2の実施形態の、線A-Aに沿った断面図である。
【
図10D】
図10Aのエンボス加工されたHME材料の第3の実施形態の、線A-Aに沿った断面図である。
【
図11A】エンボス加工されたHME材料の更なる実施形態の、縮尺通りではない概略平面図である。
【
図11B】エンボス加工されたHME材料の更なる実施形態の、縮尺通りではない概略平面図である。
【
図11C】エンボス加工されたHME材料の更なる実施形態の、縮尺通りではない概略平面図である。
【
図12A】エンボス加工されたHME材料のコイル形状をした、HME媒体の側面図である。
【
図13A】エンボス加工されたHME材料の一実施形態の、縮尺通りではない概略平面図である。
【
図13C】エンボス加工されたHME材料の更なる実施形態の、縮尺通りではない概略平面図である。
【
図14】ローラ内部構造を概略的に示す、更なるエンボス加工ローラの切り欠き部の側面図である。
【
図15】エンボス加工されたHME材料の更なる例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1はHME媒体を製造する装置100を示す。装置100は、HME材料10aを担持するソースリール10、エンボス加工アセンブリ又は切断アセンブリ20、張力制御アセンブリ30及び巻取りアセンブリ40を備える。
【0074】
HME材料10aはストリップ形状であり、ソースリール10の矢印A方向への回転により巻き戻されて装置100に沿って矢印B方向に、エンボス加工アセンブリ20の方へ移送される。
【0075】
エンボス加工アセンブリ20は、エンボス加工上ローラ200とエンボス加工下ローラ300とを有し、これらが一緒になって挟み込み部400を画定する。モータ(図示せず)が矢印Cの方向にエンボス加工ローラ200、300の回転を駆動する。エンボス加工上ローラ200の円周面210は窪みのパターン(例えば
図2A、
図2Bを参照)を有し、エンボス加工下ローラ300の円周面310は対応する突起のパターン(例えば
図4A、
図4Bを参照)を有する。エンボス加工上ローラ200の窪みは、挟み込み部400においてエンボス加工下ローラ300の突起と噛合する。
【0076】
HME材料10aは、エンボス加工ローラ200、300の矢印Cの方向への回転によって挟み込み部400に引き込まれる。HME材料10aは、挟み込み部400を通過する際、エンボス加工ローラ200、300の円周面210、310上の、噛合する窪みと突起の間で圧縮される。そうしてHME材料10bにエンボス加工されたパターンが形成される。エンボス加工パターンは、エンボス加工ローラ200、300の円周面210、310上の窪みと突起のパターンに対応した、複数の突出体を含む。
【0077】
エンボス加工されたHME材料10bは、挟み込み部400から出て張力制御アセンブリ30に入る。ここには複数のローラ32があって、挟み込み部400を通過するときのHME材料10a、10bの張力を制御する。
【0078】
巻取りアセンブリはスピンドル42を備え、エンボス加工されたHME材料10bがそこに取り付けられる。スピンドル42が回転して、エンボス加工されたHME材料10bが張力制御アセンブリ30を通過して出てくるとコイルに巻き取られる。エンボス加工されたHME材料10bがコイルに十分巻き取られてHME媒体が形成されると、エンボス加工されたHME材料10bは切断されて、HME媒体がスピンドル42から外される。次にエンボス加工されたHME材料10bの自由端がスピンドル42に取り付けられて、プロセスが反復される。ただし、代替実施形態において、エンボス加工されたHME材料10bは張力制御アセンブリ30を通過後にローラに直接巻き取られて、別工程でHME媒体に加工されてもよい。
【0079】
HME媒体においては、エンボス加工されたパターンがHME材料10bの隣接層との間隔を保持し、それによって、HME媒体の熱と水分の交換性能を改善し、かつガス流に対するHME媒体の抵抗を低減する。HME媒体はHME装置を形成するためにハウジング内に導入されてもよい。
【0080】
エンボス加工されたパターンの完全性、及びしたがってHME媒体におけるHME材料10bの隣接層間での分離の保持能力は、製造時の相対湿度にあまり影響されない。したがってこの方法では、製造時の湿度制御を必要としないでより一定した性能を有するHME媒体の製造が可能である。
【0081】
図2A、
図2Bは、エンボス加工上ローラの第1の実施形態200aを示し、
図3A、
図3Bは、エンボス加工上ローラの第2の実施形態200bを示す。エンボス加工上ローラ200a、200bは概略円盤形状であって、それぞれが円周面210a、210b、2つの概ね円形面220a、220b、円形面220a、220bの中心間を貫通する溝230a、230b、円周面210a、210bの両端から半径方向に延びる隆起240a、240bを備える。
【0082】
第1の実施形態のエンボス加工上ローラの200aの円周面210a(
図2A、2B)は、ほぼ円筒形の窪み250aを備える。窪み250aは、ローラ200aの円周の周りに延在する4つの互い違いの列となって配置されている。
【0083】
第2の実施形態のエンボス加工上ローラ200b(
図3A、3B)の円周面210bは、第1の実施形態のエンボス加工上ローラの200aよりも幅が広い。円周面210bはまたほぼ円筒形の窪み250bのパターンを備え、これはこの実施形態では、ローラ200aの円周の周りの4つではなく7つの、互い違いに延在する列となって配置されている。
【0084】
図4Aと
図4Bは、エンボス加工下ローラの第1の実施形態300aを表し、
図5Aと
図5Bは、エンボス加工下ローラの第2の実施形態300bを表し、
図6Aと
図6Bは、エンボス加工下ローラの第3の実施形態300cを表し、
図7Aと
図7Bは、エンボス加工下ローラの第4の実施形態300dを表す。エンボス加工下ローラ300a、300b、300c、300dはまた、概ね円盤形状であって、それぞれが円周面310a、310b、310c、310d、2つの概ね円形面320a、320b、320c、320d、円形面320a、320b、320c、320dの中心間を貫通する溝330a、330b、330c、330d、それぞれの円周面320a、320b、320c、320d上で溝330a、330b、330c、330dの各端部を囲む環状カラー340a、340b、340c、340dを備える。
【0085】
エンボス加工下ローラ300a、300b、300c、300dの円周面310a、310b、310c、310dは、突起350a、350b、350c、350dのパターンを備える。第1の実施形態のエンボス加工下ローラ300a(
図4A、4B)の突起350aは、比較的短い円筒形(すなわち円筒の直径がその高さよりもはるかに大きい)であって、半球の端部を有する。突起350aは、ローラの円周の周りに延在する4つの互い違いの列となって配置されている。
【0086】
第2の実施形態のエンボス加工下ローラ300b(
図5A、5B)の突起350bは、比較的長い円筒形(すなわち円筒の高さがその直径よりもはるかに大きい)であって、半球の端部を有する。突起350bは、ローラ300bの円周の周りに延在する4つの互い違いの列となって配置されている。
【0087】
第3の実施形態のエンボス加工下ローラ300c(
図6A、6B)の突起350cは、長手軸に対して45度傾いた頂面を有する円筒形状である。突起350bは、ローラ300cの円周の周りに延在する4つの互い違いの列となって配置されている。
【0088】
第4の実施形態のエンボス加工下ローラ300dの円周面310d(
図7A、7B)は、他の実施形態のエンボス加工上ローラ300a、300b、300cの円周面310a、310b、310cよりも幅が広い。突起350dは、半球形端部を有する、比較的短い円筒形(すなわち各円筒の直径がその高さよりもはるかに大きい)をしており、第1の実施形態のエンボス加工下ローラ300aの突起350aに似た形である。突起350dは、ローラ300dの円周の周りに延在する4つではなく7つの互い違いの列となって配置されている。
【0089】
次に
図8、
図9を参照すると、エンボス加工ローラ200、300が、溝230、330を貫通する軸260、360を介してHME媒体100の製造装置に係合する。エンボス加工ローラ200、300の回転は、1つ又は両方の軸260、360に作用するモータ(図示せず)によって駆動されてよい。エンボス加工上ローラ200の窪み250は、エンボス加工下ローラ300の突起350と同じ分布で、かつそれを収容するのに十分な寸法である。したがって、エンボス加工ローラ200、300は回転すると、挟み込み部400において噛合可能となっている。
【0090】
窪み250と突起350の間の正確な嵌合は必ずしも必要ではなく、したがって、同じエンボス加工上ローラ200を異なるエンボス加工下ローラ300と組み合わせて使用することも可能である。具体的には、第1の実施形態のエンボス加工上ローラ200aの窪み250aの分布は、第1、第2、第3の実施形態のエンボス加工下ローラ300a、300b、300cの突起350a、350b、350cの分布と同一であり、したがって、これらのエンボス加工下ローラの任意のものを、このエンボス加工上ローラと組み合わせて使用可能である。この構成は、幅のより狭いHME材料のエンボス加工に使用可能である。
【0091】
さらに、第2の実施形態のエンボス加工上ローラ200bの窪み250bの分布は、第4の実施形態のエンボス加工下ローラ300dの突起350dの分布と同じであり、したがって、これらの上下のエンボス加工ローラを組み合わせて使用することが可能である。この構成は、幅のより広いHME材料のエンボス加工に使用可能である。
【0092】
HME材料10aは、エンボス加工ローラ200、300の矢印C方向への回転により挟み込み部400に引き込まれ、隆起240によって円周面210、310上に案内されて突起350に接触させられる。HME材料10aが挟み込み部400内に引き込まれる際、突起350がHME材料10aに増加する圧力をかける。そうして、HME材料10aの下面に圧痕、そしてHME材料10aの上面に対応する突出体を形成する。エンボス加工上ローラ上の窪み250の存在により、HME材料に掛かる最大圧力点である挟み込み部400において、突起350がHME材料10aの面を貫通して延びることを可能とする。このことが、突起350によるHME材料10aのより大きな変形を可能とする。その結果、突起350によりHME材料10a内により顕著な突出体、そして場合によっては、穿孔の形成もまた可能とする。
【0093】
挟み込み部400においてHME材料10aに印加される圧力は、紙に突出体又は穿孔を形成するのに十分でなければならない。必要とする特定の圧力は、特定のHME材料の厚さ及び組成によって変化し得るが、熟練者にはすぐに判定できることが理解されるであろう。挟み込み部400で与えられる動作圧力は、必要とするのが突出体であるか穿孔であるかに拘わらず同様であると想定される。それでも、ピンの寸法と形状の違いにより、材料に最終的に印加される圧力が異なることになる。
【0094】
例えば、突起の高さ又は長さは、HME材料に印加される最終的な圧力に比較的顕著な影響を与え得る。保護が長いほど、挟み込み部を通って引き込まれるHME材料にはより高い張力が生成される。そうして材料に印加される圧力は実効的に増加する。同様に、突起の数が多く、密度の高いパターンほど、同様に材料内の張力、したがって印加される最終的な圧力を増加させる。これらの因子を制御することで、本発明においては、挟み込み部400の圧力を調整することなしに、印加圧力をある程度制御することが可能となる。
【0095】
矢印Cの方向へのエンボス加工ローラ200、300の回転によって挟み込み部400からはじき出されるHME材料10bは、複数の突出体を含む、エンボス加工されたパターンを担持する。突出体の形状及び分布は、エンボス加工下ローラ30上の突起350の形状及び分布、並びに挟み込み部400でHME材料に印加される圧力のレベルによって決定される。したがって、異なるエンボス加工ローラ200、300と、挟み込み部400における異なる印加圧力を使用するこの方法によって、多種類のエンボス加工パターンを生成可能である。
【0096】
図10Aは、複数の突出体510から成るエンボス加工されたパターンを有するHME材料500を示す。突出体510は、平面図では概して円形であり、HME材料500の長手方向に延びる、7つのずれた列に規則的に配置されている。
【0097】
図10Bは、
図10Aに示すHME材料の第1の実施形態500aの、線A-Aに沿った断面図であり、ここでは、突出体510aはほぼ半球形状であって、HME材料500aは穿孔されていない。突出体510aは、第1の実施形態のエンボス加工下ローラ(
図4A、4B)などの、半球の端部を有する比較的短い円筒形状の突起によって形成され得る。
【0098】
図10Cは、
図10Aに示すHME材料の第2の実施形態500bの、線A-Aに沿った断面図であり、ここでは、突出体510bはほぼ円錐台形状であって、HME材料500bの頂点に穿孔520bを含む。突出体510bは、概ね「弾丸形状」の突起、例えば比較的長い、尖った円筒で形成されてもよい。そのような突起は、挟み込み部400で十分な圧力が印加されると、HME材料500を突き破ることが可能である。この場合、HME材料の粒子の形で、かなりの量の削り屑が生成されることがわかっている。
【0099】
図10Dは、
図10Aに示すHME材料の第3の実施形態500cの、線A-Aに沿った断面図であり、ここでは、突出体510cは穿孔520cの片側から延びるフラップ530cの形状をしている。突出体510cは、エンボス加工下ローラの第2の実施形態(
図5A、5B)などの、半球の端部を有する円筒形状の突起によって形成され得る。あるいは、エンボス加工下ローラ300cの第3の実施形態(
図6A、6B)などの、長手軸に対して45度傾いた頂面を有する円筒を用いることも可能である。そのような突起は、穿孔520cとフラップ530cを作製するために、挟み込み部400に圧力が印加されるときに、HME材料500c内に切り込むことが可能である。これは、エンボス加工下ローラの第2の実施形態(
図5A、5B)に見られる種類の、長い半球形突起を用いて、穿孔よりも削り屑のより少ない、きれいな切断がされることがわかっている。ここで、この穿孔は典型的には引き裂き作用によって形成される。
【0100】
図11A~
図11Cは、複数の突出体610a、610b、610cから成るエンボス加工されたパターンを有する、エンボス加工されたHME材料600a、600b、600cの更なる実施形態を示す。
図11Aに示す実施形態は、ほぼ円形の突出体が、4つのずれのない列に規則的に配置されている。
図11Bに示す実施形態は、ほぼ円形の突出体が、不規則に配置されている。
図11Cに示す実施形態は、ほぼ長方形の突出体が、5つのずれた列に規則的に配置されている。
【0101】
図12A、12Bは、エンボス加工されたHME材料がコイルの形となった、HME媒体700を示す。
図12Bは、HME媒体700を形成するHME材料が、ずれのない3列に規則的に配列されたほぼ円形の圧痕710の形のエンボス加工されたパターンを備えることを示している。突出体710は、HME媒体700において隣接するHME材料層の間隔を維持し、これによりHME媒体700の熱と水分の交換性能が向上し、かつHME媒体700のガス流に対する抵抗が減少する。
【0102】
前述した方法により製造された突出体においては、HME材料が比較的密着したコイルに巻かれるなどの、HME材料が比較的高い張力下に置かれる場合においても、HME材料の隣接する層の間隔が保持される。このことは、ガスがHME材料に対する適切な露出なしに流れることが可能な流路となる、HME媒体の中心開口の形成を防止するために、HME材料をより緊密に巻かなければならない比較的小さいHME媒体においては特に重要である。
【0103】
実施例1-
図4A、4Bに示すエンボス加工下ローラを用いた、9.5mm幅のHME材料ストリップのエンボス加工
HME材料が、実質的に
図8を参照して前述したように、エンボス加工アセンブリを用いてエンボス加工された。実質的に
図2A、2Bを参照して前述したようなエンボス加工上ローラと、実質的に
図4A、4Bを参照して前述したようなエンボス加工下ローラを用いた。エンボス加工ローラの直径は69.95mmであり、円周面は幅9.5mmであった。
【0104】
HME材料は幅9.5mm、厚さ0.2mmの連続ストリップであり、綿繊維を含むセルロース系の紙で形成された。ただしこのエンボス加工方法は、任意形状の天然繊維又は合成繊維と、CaClなどの吸湿性添加物を含有するHEM材料を含む、他の形態のHME材料に対しても同等に適用可能である。
【0105】
エンボス加工下ローラの突起は、半球の端部を有する比較的短い円筒形(すなわち円筒の直径がその高さよりもはるかに大きい)であった(
図4A、4B参照)。各突起の頂点は、エンボス加工下ローラの円周面から0.7mmにあった。
【0106】
複数の実質的に半球状の突出体(
図10B参照)から成るエンボス加工されたパターンをHME材料の一面に形成するために、HME材料をエンボス加工ローラの間の挟み込み部に通した。突出体は、HME材料ストリップの長さに沿って延びる4つのずれた列に配列された。
【0107】
図13A、13Bは、ずれた4列の突出体を有するエンボス加工されたHME材料の一実施形態の模式図である。図には、突出体の間隔に関する測定値(L1-L6)、及び突出体の直径(D)と高さ(h)が記されている。
図13A、13Bを参照すると、平均寸法及び突出体の間隔は、次のようであった。
L
1 0.79mm
L
2 2.25mm
L
3 2.92mm
L
4 2.92mm
L
5 2.28mm
L
6 0.97mm
D 1.85mm
h 0.45mm
【0108】
シャドウグラフ法などの様々な既知の方法を使ってこれらの寸法を測定可能であることが理解されるであろう。
【0109】
すべての突出体は、実質的に同一条件で形成された。ただし、高さ(h)は0.41mm~0.51mmの間であった。この変動は、突出体形成時のHME材料の公差を示すものと考えられ、恐らくは、挟み込み部における固有条件に依存する小さな圧力変化よるものである。
【0110】
長さ73cm(+/-10mm)のエンボス加工されたHME媒体のストリップが、HME装置に組み込むHME媒体を形成するために、コイルに巻き取られた。
【0111】
実施例2-
図5A、5Bに示すエンボス加工下ローラを用いた、9.5mm幅のHME材料ストリップのエンボス加工
HME材料がまた、実施例1の手順を用いてエンボス加工された。ここで、エンボス加工下ローラは実質的に
図5A、5Bに示すものである。このエンボス加工下ローラもまた、直径は69.95mmであり、円周面は幅9.5mmであった。突起は、半球端部を有する、比較的長い円筒形(すなわち円筒の高さがその直径よりもはるかに大きい)であった(
図5A、5B参照)。各突起の頂点は、エンボス加工下ローラの円周面から1.5mmにあった。
【0112】
HME材料の一面上の複数の突出体から成るエンボス加工されたパターンを形成するために、HME材料をエンボス加工ローラの間の挟み込み部に通した。ここで突出体は、
図10B又は10Cのものと同様の、概ね円錐台形であるが、材料のフラップは
図10Dのようにその頂点に残ったままであった。突出体は、HME材料ストリップの長さに沿って延びる4つのずれた列に配列された。
【0113】
突出体の寸法と分布は、実施例1で使用した方法を用いて、HME材料のエンボス加工されたストリップに沿った5地点で測定した。
図13A、13Bを参照すると、平均寸法及び突出体の間隔は、次のようであった。
L
1 1.64mm
L
2 3.09mm
L
3 2.96mm
L
4 3.65mm
L
5 3.10mm
L
6 0.94mm
D 1.03mm
h 0.62mm
【0114】
実施例3-
図6A、6Bに示すエンボス加工下ローラを用いた、9.5mm幅のHME材料ストリップのエンボス加工
HME材料がまた、実施例1の手順を用いてエンボス加工された。ここで、エンボス加工下ローラは実質的に
図6A、6Bに示すものである。このエンボス加工下ローラもまた、直径は69.95mmであり、円周面は幅9.5mmであった。エンボス加工下ローラの突起は、長手軸に対して45度傾いた頂面を有する円筒形(
図6A、6B参照)であった。各突起の頂点は、エンボス加工下ローラの円周面から1.3mmにあった。
【0115】
フラップが穿孔の片側から延びた形の複数の突出体(
図10D参照)から成るエンボス加工されたパターンを形成するために、HME材料をエンボス加工ローラの間の挟み込み部に通した。突出体は、HME材料ストリップの長さに沿って延びる4つのずれた列に配列された。
【0116】
突出体の寸法と分布は、実施例1で使用した方法を用いて、HME材料のエンボス加工されたストリップに沿った5地点で測定した。
図13A、13Bを参照すると、平均寸法及び突出体の間隔は、次のようであった。
L
1 1.30mm
L
2 3.10mm
L
3 3.29mm
L
4 3.30mm
L
5 3.05mm
L
6 1.27mm
D 0.97mm
h 0.58mm
【0117】
実施例4-
図7A、7Bに示すエンボス加工下ローラを用いた、16mm幅のHME材料ストリップのエンボス加工
9.5mmではなく16mm幅のHME材料もまた、実施例1の手順を用いてエンボス加工された。ここで、エンボス加工下ローラは実質的に
図7A、7Bに示すものであった。エンボス加工下ローラは、直径は69.95mmであり、円周面は幅16mmであり、ローラの円周の周りに広がる、ずれた7列に配列された突起を担持した。突起は、半球端部を有する、比較的短い円筒形(円筒の直径がその高さよりもはるかに大きい)であった(
図7A、7B参照)。各突起の頂点は、ローラの円周面から0.7mmにあった。
【0118】
幅16mmの円周面を有し、ローラの円周の周りに延在する、ずれた7列に配列された窪みを有する、実質的に
図3A、3Bに示すようなエンボス加工上ローラを、このエンボス加工上ローラとの組み合わせで用いた。
【0119】
複数の実質的に半球状の突出体から成るエンボス加工されたパターンをHME材料の一面に形成するために、HME材料をエンボス加工ローラの間の挟み込み部に通した。突出体は、HME材料ストリップの長さに沿って延びる7つのずれた列に配列された。
【0120】
突出体の寸法と分布は、実施例1で使用した方法を用いて、HME材料に沿った5地点で測定した。
図13C、13Dは、ずれた7列の突出体を有するエンボス加工されたHME材料の一実施形態の模式図である。図には、突出体の間隔に関する測定値(L1-L9)、及び突出体の直径(D)と高さ(h)が記されている。
図13C、13Dを参照すると、突出体の平均寸法及び分布は次のようであった。
L
1 1.41mm
L
2 3.33mm
L
3 3.31mm
L
4 3.28mm
L
5 1.84mm
L
6 3.37mm
L
7 3.29mm
L
8 3.25mm
L
9 3.87mm
D 0.76mm
h 0.44mm
【0121】
実施例1に比べると、上では、平均突出体高さに小さな差異がみられる(実施例1-0.45mm、実施例4-0.43mm)。これは、2つの実施例では同じ条件および突起が用いられたにもかかわらず、圧力の違いがあることを示す。これは、突起の分布/パターンの違いによるものである可能性がある。また、たとえ両実施例において張力制御アセンブリが同一であったとしても、幅の広い紙ほど挟み込み部における材料の張力が僅かに低くなり、実施例4においては印加圧力が低くなった結果である可能性がある。
【0122】
本発明はこれまでに述べた特定の実施例に限定されないことは理解されるであろう。例えば、上ローラと下ローラの両方に突起と窪みが含まれ、その結果紙の両側に突出体が形成される実施形態が考えられる。このタイプのローラの実施例を
図14に示す。これは
図3Bに示すものと同様の、ローラの切り欠き部720であるが、盛り上がった突出体750aが窪み750bと交互に設けられている。そのようなロール対を提供することで、紙又は他の材料の対向する両側に突出体を同時に生成することが可能となることが理解されるであろう。
図15は、突出体810a、810bが図に示すように上面と下面のそれぞれから突出する、HME材料800の一部分の例を示す。寸法D、hは本明細書で既に説明した実施例と同じ大きさであってよい。
【0123】
例えばギヤのタイミングや設計などの、いくつかの追加的な複雑さが導入されるが、HME材料の両側に突出体を設けることで、そのような材料を用いて形成されるフィルタの特性をさらに大きく制御可能とし得る。