(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料用樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20241008BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241008BHJP
C08G 75/045 20160101ALI20241008BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
C08J5/24 CER
C08G75/045
C08F222/40
(21)【出願番号】P 2019081120
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】宮田 篤
(72)【発明者】
【氏名】竹綱 啓尚
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-213821(JP,A)
【文献】特開2019-157097(JP,A)
【文献】特許第6944518(JP,B2)
【文献】特許第6859920(JP,B2)
【文献】特開2019-035036(JP,A)
【文献】特開2016-074902(JP,A)
【文献】特開昭60-243125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00- 75/32
C08F 2/00-299/08
C08L 1/00-101/16
C08J 3/00- 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と樹脂成分とを含む繊維強化複合材料用樹脂組成物であって、
該樹脂成分は、1分子中に少なくとも2個以上のアリル基と1個以上のベンゼン環を有するアリル化合物(A)
(ただし、マレイミド基を有する化合物を除き、チオール基を有する化合物を除く)と、
1分子中に少なくとも2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物(B)
(ただし、アリル基を有する化合物を除き、チオール基を有する化合物を除く)と、
1分子中に少なくとも2個以上のチオール基を有するチオール化合物(C)
(ただし、アリル基を有する化合物を除き、マレイミド基を有する化合物を除く)とを含み、
アリル化合物(A)100重量部に対する、マレイミド化合物(B)の重量割合が180~470重量部、チオール化合物(C)の重量割合が15~120重量部である
ことを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂成分中のアリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)の合計重量に対するチオール化合物(C)の重量割合が4~28重量%であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【請求項3】
前記マレイミド化合物(B)は、下記式(1)で表される構造を有するマレイミド化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【化1】
[R
1~R
4は、それぞれ独立しており、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。X
1は炭化水素基、または芳香環を含む2価の有機基である。X
1を構成する芳香環の数は複数であってもよく、複数の芳香環同士はエーテル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、アザメチレン基又はアルキレン基を介して結合していてもよく、直接結合していてもよい。またX
1が含む芳香環は1つ又は複数の置換基を有していてもよい。]
【請求項4】
前記チオール化合物(C)は、下記式(2)で表される構造を有するチオール化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【化2】
[円形の破線で表されるYは環状構造を有する有機基であって、芳香族、複素環式又は多環のいずれであってもよい。mは2~10の整数であり、nは0~8の整数である。m個のR
5はそれぞれ独立しており、鎖状脂肪族基、環状構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される1種の有機基、又は、これらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基である。R
5は複数の環状構造を有する有機基が、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合によって結合されたものであってもよい。n個のR
6はそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。]
【請求項5】
前記チオール化合物(C)は、下記式(3)で表される構造を有するチオール化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【化3】
[oは2~6の整数であり、pは0~4の整数であり、o+pは2~6の整数である。Zは炭素数1~6の鎖状の有機基であって、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでいてもよい。o個のR
7はそれぞれ独立しており、鎖状脂肪族基、環状構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される1種の有機基、又は、これらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基であり、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでいてもよい。p個のR
8は、それぞれ独立しており、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。]
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物を材料として用いてなることを特徴とするプリプレグ。
【請求項7】
前記プリプレグ中の樹脂成分と炭素繊維の合計重量に対する樹脂成分の重量割合が20~55重量%であることを特徴とする請求項6に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料用樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック複合材料(FRP)は軽い材料でありながら高い強度を有するために、航空機産業や半導体産業などにおいて金属代替材料として使用されている。FRP用のマトリクス樹脂としては機械的強度の高さや繊維に対する密着性の高さ、コストなどの面からエポキシ樹脂が広く用いられているが、200℃以上の耐熱性が求められる分野においては性能が不十分である。この点に関し、耐熱性の高いビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂とを樹脂成分として用いて炭素繊維と混合した材料が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、エポキシ樹脂に比べて耐熱性の高いビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂を樹脂成分として用いて炭素繊維と混合した材料が開示されているが、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた繊維強化プラスチック複合材料に比べると機械的強度に劣るという問題があった。このため、耐熱性に優れるとともに、ビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂を樹脂成分として用いた材料に比べて機械的強度に優れる繊維強化複合材料が求められていた。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、耐熱性に優れ、かつ、強化繊維に対してビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂とを樹脂成分として混合した材料に比べて機械的強度にも優れた繊維強化複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、耐熱性に優れ、かつ、強化繊維に対してビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂とを樹脂成分として混合した材料に比べて機械的強度にも優れた繊維強化複合材料について検討し、1分子中に少なくとも2個以上のアリル基と1個以上のベンゼン環を有するアリル化合物と、1分子中に少なくとも2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物に加えて、1分子中に少なくとも2個以上のチオール基を有するチオール化合物を所定の割合で含む樹脂成分を強化繊維と混合した組成物を用いると、耐熱性に優れるとともに、強化繊維に対してビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂とを樹脂成分として用いた材料に比べて機械的強度にも優れた繊維強化複合材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、強化繊維と樹脂成分とを含む繊維強化複合材料用樹脂組成物であって、該樹脂成分は、1分子中に少なくとも2個以上のアリル基と1個以上のベンゼン環を有するアリル化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、1分子中に少なくとも2個以上のチオール基を有するチオール化合物(C)とを含み、アリル化合物(A)100重量部に対する、マレイミド化合物(B)の重量割合が155~530重量部、チオール化合物(C)の重量割合が15~120重量部であることを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物である。
【0008】
上記強化繊維は、炭素繊維であることが好ましい。
【0009】
上記樹脂成分中のアリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)の合計重量に対するチオール化合物(C)の重量割合が4~28重量%であることが好ましい。
【0010】
上記マレイミド化合物(B)は、下記式(1)で表される構造を有するマレイミド化合物であることが好ましい。
【0011】
【0012】
[R1~R4は、それぞれ独立しており、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。X1は炭化水素基、または芳香環を含む2価の有機基である。X1を構成する芳香環の数は複数であってもよく、複数の芳香環同士はエーテル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、アザメチレン基又はアルキレン基を介して結合していてもよく、直接結合していてもよい。またX1が含む芳香環は1つ又は複数の置換基を有していてもよい。]
【0013】
上記チオール化合物(C)は、下記式(2)で表される構造を有するチオール化合物であることが好ましい。
【0014】
【0015】
[円形の破線で表されるYは環状構造を有する有機基であって、芳香族、複素環式又は多環のいずれであってもよい。mは2~10の整数であり、nは0~8の整数である。m個のR5はそれぞれ独立しており、鎖状脂肪族基、環状構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される1種の有機基、又は、これらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基である。R5は複数の環状構造を有する有機基が、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合によって結合されたものであってもよい。n個のR6はそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。]
【0016】
上記チオール化合物(C)は、下記式(3)で表される構造を有するチオール化合物であることが好ましい。
【0017】
【0018】
[oは2~6の整数であり、pは0~4の整数であり、o+pは2~6の整数である。Zは炭素数1~6の鎖状の有機基であって、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでいてもよい。o個のR7はそれぞれ独立しており、鎖状脂肪族基、環状構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される1種の有機基、又は、これらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基であり、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでいてもよい。p個のR8は、それぞれ独立しており、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。]
【0019】
本発明はまた、本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物を材料として用いてなることを特徴とするプリプレグでもある。
【0020】
上記プリプレグ中の樹脂成分と強化繊維の合計重量に対する樹脂成分の重量割合が20~55重量%であることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする繊維強化複合材料でもある。
【発明の効果】
【0022】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、耐熱性に優れ、かつ、強化繊維に対してビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂とを樹脂成分として用いた繊維強化複合材料に比べて機械的強度にも優れることから、耐熱性と機械的強度とが求められる用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】炭素繊維としてCO6343を用い、樹脂成分としてチオール化合物を含む樹脂組成物から得られた実施例1~3の複合材料1~3と、樹脂成分としてチオール化合物を含まない樹脂組成物から得られた比較例1~3の比較複合材料1~3の曲げ強度を示した図である。
【
図2】炭素繊維としてTR3110Mを用い、樹脂成分としてチオール化合物を含む樹脂組成物から得られた実施例4~9の複合材料4~9と、樹脂成分としてチオール化合物を含まない樹脂組成物から得られた比較例4~8の比較複合材料4~8の曲げ強度を示した図である。
【
図3】樹脂成分としてチオール化合物を含まない樹脂組成物から得られた比較例5の比較複合材料5と、樹脂成分としてチオール化合物を異なる割合で含む樹脂組成物から得られた実施例5、10~12の複合材料5、10~12、比較例9の比較複合材料9の曲げ強度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0025】
1.繊維強化複合材料用樹脂組成物
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、樹脂成分が1分子中に少なくとも2個以上のアリル基と1個以上のベンゼン環を有するアリル化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物(B)とに加えて更に1分子中に少なくとも2個以上のチオール基を有するチオール化合物(C)を含み、アリル化合物(A)100重量部に対する、マレイミド化合物(B)の重量割合が155~530重量部、チオール化合物(C)の重量割合が15~120重量部であることを特徴とする。本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、アリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)をそれぞれ1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
上記樹脂成分が、アリル化合物(A)100重量部に対して、マレイミド化合物(B)を155~530重量部、チオール化合物(C)を15~120重量部含むことで、本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物から得られる繊維強化複合材料が耐熱性及び機械的強度に優れたものとなる。
樹脂成分中のマレイミド化合物(B)の割合は、より好ましくは、アリル化合物(A)100重量部に対して、180~470重量部であり、更に好ましくは、200~410重量部である。
また樹脂成分中のチオール化合物(C)の割合は、より好ましくは、アリル化合物(A)100重量部に対して、15~110重量部であり、更に好ましくは、15~90重量部である。
【0027】
上記樹脂成分中のアリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)の合計重量に対するチオール化合物(C)の重量割合は4~28重量%であることが好ましい。チオール化合物(C)をこのような割合で含むことで、チオール化合物(C)を含むことの効果がより発揮され、繊維強化複合材料用樹脂組成物がより耐熱性、機械的強度に優れたものとなる。
アリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)の合計重量に対するチオール化合物(C)の重量割合は、より好ましくは、4~25重量%であり、更に子好ましくは、4~22重量%である。
【0028】
<アリル化合物(A)>
上記1分子中に少なくとも2個以上のアリル基と1個以上のベンゼン環を有するアリル化合物(A)としては、ジアリル化ビスフェノールA、ジアリル化ビスフェノールAP、ジアリル化ビスフェノールAF、ジアリル化ビスフェノールB、ジアリル化ビスフェノールBP、ジアリル化ビスフェノールC、ジアリル化ビスフェノールE及びジアリル化ビスフェノールF等のジアリル化ビスフェノール化合物、ベンゼンポリ(2~6)カルボン酸ポリ(2~6)アリルエステル並びにアリル化ノボラックが好ましく用いられる。
その他に、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTM、ビスフェノールZをジアリル化したジアリル化ビスフェノール等が挙げられる。
【0029】
ジアリル化ビスフェノールAとしては、下記式(4)に示される2,2-ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン及び2-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、並びに、下記式(5)に示される2,2-ビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0030】
【0031】
【0032】
ジアリル化ビスフェノールAPとしては、1,1-ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-フェニルエタン、1,1-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-フェニルエタン、1-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン及び1,1-ビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]-1-フェニルエタン等が挙げられる。
【0033】
ジアリル化ビスフェノールAFとしては、2,2-ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン及び2,2-ビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0034】
ジアリル化ビスフェノールBとしては、2,2-ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ブタン、2,2-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ブタン、2-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ブタン及び2,2-ビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]ブタン等が挙げられる。
【0035】
ジアリル化ビスフェノールBPとしては、ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ジフェニルメタン、ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ジフェニルメタン、[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル][3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]ジフェニルメタン及びビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0036】
ジアリル化ビスフェノールCとしては、2,2-ビス[2-(2-プロペニル)-3-メチル-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン、2-[2-(2-プロペニル)-3-メチル-4-ヒドロキシフェニル]-2-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン、2-[2-(2-プロペニル)-3-メチル-4-ヒドロキシフェニル]-2-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン及び2-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]-2-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン等が挙げられる。
【0037】
ジアリル化ビスフェノールEとしては、1,1-ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]エタン、1,1-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]エタン、1-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]エタン及び1,1-ビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]エタン等が挙げられる。
【0038】
ジアリル化ビスフェノールFとしては、ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]メタン、[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル][3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]メタン及びビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]メタン等が挙げられる。
【0039】
ベンゼンポリ(2~6)カルボン酸ポリ(2~6)アリルエステルにおけるカルボン酸基の数は2~6であり、上記カルボン酸基と結合しているアリル基の数は2~6であり、アリル基の数はカルボン酸基の数以下である。
ベンゼンポリ(6)カルボン酸ポリ(6)アリルエステルとしては、メリット酸ヘキサアリルエステル等が挙げられ、ベンゼンポリ(5)カルボン酸ポリ(5)アリルエステルとしては、ベンゼンペンタカルボン酸ペンタアリルエステル等が挙げられ、ベンゼンポリ(4)カルボン酸ポリ(4)アリルエステルとしては、ピロメリット酸テトラアリルエステル等が挙げられ、ベンゼンポリ(3)カルボン酸ポリ(3)アリルエステルとしては、トリメリット酸トリアリルエステル、トリメシン酸トリアリルエステル等が挙げられ、ベンゼンポリ(2)カルボン酸ポリ(2)アリルエステルとしては、ジアリルオルソフタレート(下記式(6)に示す構造)、ジアリルイソフタレート(下記式(7)に示す構造)、ジアリルテレフタレート(下記式(8)に示す構造)等が挙げられる。
これらの中では、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等のベンゼンポリ(2)カルボン酸ポリ(2)アリルエステル[フタル酸ジアリルともいう]が好ましい。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
アリル化ノボラックは下記式(9)に示す構造である。
【化9】
【0044】
上記式(9)におけるqの値は1~1000の整数である。
【0045】
これらのうちでは、2,2-ビス[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2-[2-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン及び2,2-ビス[4-(2-プロペニルオキシ)フェニル]プロパン等のジアリル化ビスフェノールA;ジアリルオルソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート等のフタル酸ジアリル;アリル化ノボラック;等がより好ましい。
【0046】
<マレイミド化合物(B)>
上記1分子中に少なくとも2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物(B)としては、1分子中に少なくとも2個以上のマレイミド基を有するものであればよいが、下記式(1)で表される構造を有するマレイミド化合物であることが好ましい。
【0047】
【0048】
[R1~R4は、それぞれ独立しており、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。X1は炭化水素基、または芳香環を含む2価の有機基である。X1を構成する芳香環の数は複数であってもよく、複数の芳香環同士はエーテル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、アザメチレン基又はアルキレン基を介して結合していてもよく、直接結合していてもよい。またX1が含む芳香環は1つ又は複数の置換基を有していてもよい。]
【0049】
X1は、炭化水素基、または芳香環を含む2価の有機基であれば特に制限されないが、芳香環を含む2価の有機基であることが好ましい。繰り返しのない構造であってもよく、炭化水素基、または芳香環を含む構造単位が繰り返された構造であってもよい。繰り返された構造を有する場合、繰り返しの数は2~40であることが好ましく、2~10がより好ましい。
【0050】
X1が炭化水素基を含む有機基である場合、炭化水素基としては炭素数1~150のアルキレン基が好ましい。この場合、X1が含むアルキレン基は1つであっても複数であってもよく、環式化合物を含んでいてもよい。複数のアルキレン基同士はエーテル基(-O-)、エステル基(-O-CO-)、アミド基(-CO-NH-)、カルボニル基(-CO-)、またはアザメチレン基(例えば-NH-)等を介して結合していてもよい。X1における炭素数1~150のアルキレン基としては、特に限定されないが、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0051】
X1が芳香環を含む有機基である場合、X1を構成する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、炭素以外の原子(例えば窒素原子、硫黄原子)を含む複素芳香環であってもよい。中でも、ベンゼン環であることが好ましい。
【0052】
X1を構成する芳香環の数は複数であってもよく、複数の芳香環同士はエーテル基(-O-)、エステル基(-O-CO-)、アミド基(-CO-N-)、カルボニル基(-CO-)、アザメチレン基(例えば-NH-)、又はアルキレン基(例えば-CH2-)を介して結合していてもよく、複数の芳香環同士が直接結合していてもよい。
【0053】
X1が芳香環を含む有機基である場合、X1としては、下記式(10)及び(11)に示すような、フェニレン基であってもよく、下記式(12)~(14)に示すように、複数のベンゼン環がアルキレン基を介して結合しているジフェニルアルカン骨格であってもよく、下記式(15)に示すように、複数のベンゼン環がエーテル基及びアルキレン基(ジメチルメチレン基:-C(CH3)2-)を介して結合した構造の骨格であってもよい。
【0054】
【0055】
上記式(10)及び(11)において、R9及びR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等の置換基のいずれかである。
【0056】
【0057】
上記式(12)~(14)において、R11~R13はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等の置換基のいずれかである。
上記式(12)~(14)において、X2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基のいずれかの炭素数1~5のアルキレン基を表す。
【0058】
【0059】
上記式(15)において、R14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等の置換基のいずれかである。
【0060】
これらの中では、X1がフェニレン基、ジフェニルメタン骨格又は2,2’-ジフェニルプロパン骨格を有することがより好ましく、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業(株)製BMI-1000、BMI-1100、ケイ・アイ化成(株)製BMI-H、EVONIK(株)製Compimide MDAB);フェニルメタンマレイミド(大和化成工業(株)製BMI-2300);m-フェニレンビスマレイミド(大和化成工業(株)製BMI-3000);2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(大和化成工業(株)製BMI-4000、ケイ・アイ化成(株)製BMI-80);3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業(株)製BMI-5100、ケイ・アイ化成(株)製BMI-70);4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド(大和化成工業(株)製BMI-7000、EVONIK(株)製Compimide TDAB);1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(大和化成工業(株)製BMI-TMH)などが好適に用いられる。
【0061】
また、一般式(1)で示される化合物と芳香族ジアミン、もしくは脂肪族ジアミンとを予め反応させたプレポリマーをマレイミド化合物(B)として用いてもよい。該プレポリマーの例としては、マレイミド化合物(B)と芳香族ジアミン、もしくは脂肪族ジアミンとが交互に付加反応で連結した構造が理想的であるが、それに限らずマレイミド化合物(B)同士、もしくはジアミン化合物同士が連結した構造を含んでいても良い。また、末端官能基は特に限定されず、末端官能基の全てがマレイミド基である化合物でも良いし、マレイミド基とアミノ基が混在する化合物であっても構わない。このような化合物としては、大和化成工業(株)製DAIMIDE-100や、HOS-Technik GmbH製Homide250などが好適に用いられる。
【0062】
本発明において、マレイミド化合物は1種類でも良く、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。2種類以上のマレイミド化合物を組み合わせる場合、X1が芳香環を含む有機基であるマレイミドのみからなる組み合わせの場合でも、X1が芳香環を含む有機基であるマレイミドとX1が炭化水素基を含み、芳香環を含まない有機基であるマレイミドとの組み合わせであっても構わないが、硬化して得られる複合材料の耐熱性の観点から、少なくともX1が芳香環を含む有機基であるマレイミドを含むほうが好ましい。
【0063】
2種類以上のマレイミド化合物を組み合わせる場合、その混合比率は任意で構わないが、例えばX1が芳香環を含む有機基であるマレイミドのみからなる組み合わせの場合、その混合物が共融点を有する比率を中心に決めることができる。ここで言う共融点は混合物の融点が一つになる点を指し、共融点はマレイミド化合物の組み合わせにより変化する。
マレイミド化合物の中に共融点を示す混合物(以下、共融混合物と記載)が含まれる場合、その含有割合を、マレイミド化合物の総重量中、50重量%以上とすることは本発明の好適な実施形態の1つである。この場合、耐熱性及び機械的強度に優れた繊維強化複合材料が得られることに加え、共融混合物とそれ以外のマレイミド化合物の融点差が小さくなるため、強化繊維へ含浸させる際の溶融粘度の上昇や繊維強化複合材料としたときの特性の低下を抑制する効果も得られる。
例えば4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドと4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミドの組み合わせの場合、共融点はそれぞれの成分比率が60重量%:40重量%付近であることから、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドと4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミドの混合比率は80重量%:20重量%~30重量%:70重量%が好適である。4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドと3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドの組み合わせの場合も同様に、共融点は成分比率が60重量%:40重量%付近であることから、混合比率は80重量%:20重量%~30重量%:70重量%が好適である。また、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドと2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンの組み合わせの場合、共融点は成分比率が40重量%:60重量%付近であることから、、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドと2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンの混合比率は70重量%:30重量%~20重量%:80重量%が好適である。
【0064】
<チオール化合物(C)>
上記1分子中に少なくとも2個以上のチオール基(メルカプト基ともいう)を有するチオール化合物(C)としては、1分子中に2個以上のチオール基を有していれば、その構造は特に限定されないが、下記式(2)で示される構造を有していることが好ましい。
【0065】
【0066】
円形の破線で表されるYは環状構造を有する有機基であって、芳香族、複素環式又は多環のいずれであってもよい。mは2~10の整数であり、nは0~8の整数である。mは2~5であることが好ましい。
m個のR5はそれぞれ独立しており、鎖状脂肪族基、環状構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される1種の有機基、又は、これらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基である。R5は複数の環状構造を有する有機基が、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合によって結合されたものであってもよい。n個のR6はそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。
【0067】
上記式(2)で示されるチオール化合物(C)は、環状構造を有する有機基Yと、上記有機基Yとチオール基とを接続するR5と、上記有機基Yに結合するR6からなる。
【0068】
まず、チオール化合物(C)を構成する有機基Yについて説明する。
【0069】
環状構造を有する有機基Yとしては、芳香族、複素環式又は多環のいずれであってもよい。
【0070】
有機基Yが芳香族基である場合、例えば、下記式(16)~(19)に示す構造から、任意の数の水素原子を取り除いた構造等が挙げられる。
【0071】
【0072】
有機基Yが複素環式である場合、例えば、下記式(20)~(21)に示すものが挙げられる。
【0073】
【0074】
有機基Yが上記式(20)~(21)で示される構造を有する場合、環を構成している窒素原子全てに(-R5-SH)が結合していることが好ましい。
【0075】
上述した構造以外にも、有機基Yが多環である場合、例えば下記式(22)~(25)に記載された構造が挙げられる。また、Yとしては、スピロ化合物から2~10個の水素原子を任意に取り除いたものも含まれる。
【0076】
【0077】
続いて、チオール化合物(C)を構成するR5について説明する。
【0078】
R5としては、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでも良い炭素数2~12の直鎖アルキレン基であることが好ましい。なお、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、およびウレタン結合は、イソシアヌル環上の窒素原子およびチオール基を構成する硫黄原子と直接結合していないことが好ましい。
炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられ、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基又はオクチレン基がより好ましく、製造原料の入手のし易さから、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基がさらに好ましい。
なお、エステル結合、エーテル結合、アミド結合およびウレタン結合等の結合がR5に含まれる場合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合を形成する炭素原子は、直鎖アルキレン基の炭素数に含まない。例えば、R5がエステル結合を1つ含む炭素数12の直鎖アルキレン基であった場合、R5の炭素数は13となる。
【0079】
エステル結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、
2-オキソ-3-オキサブチレン基(-CH2-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソブチレン基(-CH2-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサペンチレン基(-CH2-CO-O-C2H4-)、3-オキソ-4-オキサペンチレン基(-C2H4-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソペンチレン基(-CH2-O-CO-C2H4-)、3-オキサ-4-オキソペンチレン基(-C2H4-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサヘキシレン基(-CH2-CO-O-n-C3H6-)、3-オキソ-4-オキサヘキシレン基(-C2H4-CO-O-C2H4-)、4-オキソ-5-オキサヘキシレン基(-n-C3H6-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソヘキシレン基(-CH2-O-CO-n-C3H6-)、3-オキサ-4-オキソヘキシレン基(-C2H4-O-CO-C2H4-)、4-オキサ-5-オキソヘキシレン基(-n-C3H6-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサヘプチレン基(-CH2-CO-O-n-C4H8-)、3-オキソ-4-オキサヘプチレン基(-C2H4-CO-O-n-C3H6-)、4-オキソ-5-オキサヘプチレン基(-n-C3H6-CO-O-C2H4-)、5-オキソ-6-オキサヘプチレン基(-n-C4H8-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソヘプチレン基(-CH2-O-CO-n-C4H8-)、3-オキサ-4-オキソヘプチレン基(-C2H4-O-CO-n-C3H6-)、4-オキサ-5-オキソヘプチレン基(-n-C3H6-O-CO-C2H4-)、5-オキサ-6-オキソヘプチレン基(-n-C4H8-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサオクチレン基(-CH2-CO-O-n-C5H10-)、3-オキソ-4-オキサオクチレン基(-C2H4-CO-O-n-C4H8-)、4-オキソ-5-オキサオクチレン基(-n-C3H6-CO-O-n-C3H6-)、5-オキソ-6-オキサオクチレン基(-n-C4H8-CO-O-C2H4-)、6-オキソ-7-オキサオクチレン基(-n-C5H10-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソオクチレン基(-CH2-O-CO-n-C5H10-)、3-オキサ-4-オキソオクチレン基(-C2H4-O-CO-n-C4H8-)、4-オキサ-5-オキソオクチレン基(-n-C3H6-O-CO-n-C3H6-)、5-オキサ-6-オキソオクチレン基(-n-C4H8-O-CO-C2H4-)、6-オキサ-7-オキソオクチレン基(-n-C5H10-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサノニレン基(-CH2-CO-O-n-C6H12-)、3-オキソ-4-オキサノニレン基(-C2H4-CO-O-n-C5H10-)、4-オキソ-5-オキサノニレン基(-n-C3H6-CO-O-n-C4H8-)、5-オキソ-6-オキサノニレン基(-n-C4H8-CO-O-n-C3H6-)、6-オキソ-7-オキサノニレン基(-n-C5H10-CO-O-C2H4-)、7-オキソ-8-オキサノニレン基(-n-C6H12-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソノニレン基(-CH2-O-CO-n-C6H12-)、3-オキサ-4-オキソノニレン基(-C2H4-O-CO-n-C5H10-)、4-オキサ-5-オキソノニレン基(-n-C3H6-O-CO-n-C4H8-)、5-オキサ-6-オキソノニレン基(-n-C4H8-O-CO-n-C3H6-)、6-オキサ-7-オキソノニレン基(-n-C5H10-O-CO-C2H4-)、7-オキサ-8-オキソノニレン基(-n-C6H12-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサデシレン基(-CH2-CO-O-n-C7H14-)、3-オキソ-4-オキサデシレン基(-C2H4-CO-O-n-C6H12-)、4-オキソ-5-オキサデシレン基(-n-C3H6-CO-O-n-C5H10-)、5-オキソ-6-オキサデシレン基(-n-C4H8-CO-O-n-C4H8-)、6-オキソ-7-オキサデシレン基(-n-C5H10-CO-O-n-C3H6-)、7-オキソ-8-オキサデシレン基(-n-C6H12-CO-O-C2H4-)、8-オキソ-9-オキサデシレン基(-n-C7H14-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソデシレン基(-CH2-O-CO-n-C7H14-)、3-オキサ-4-オキソデシレン基(-C2H6-O-CO-n-C6H10-)、4-オキサ-5-オキソデシレン基(-n-C3H6-O-CO-n-C5H10-)、5-オキサ-6-オキソデシレン基(-n-C4H8-O-CO-n-C4H8-)、6-オキサ-7-オキソデシレン基(-n-C5H10-O-CO-n-C3H6-)、7-オキサ-8-オキソデシレン基(-n-C6H12-O-CO-C2H4-)、8-オキサ-9-オキソデシレン基(-n-C7H12-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサウンデシレン基(-CH2-CO-O-n-C8H16-)、3-オキソ-4-オキサウンデシレン基(-C2H4-CO-O-n-C7H14-)、4-オキソ-5-オキサウンデシレン基(-n-C3H6-CO-O-n-C6H12-)、5-オキソ-6-オキサウンデシレン基(-n-C4H8-CO-O-n-C5H10-)、6-オキソ-7-オキサウンデシレン基(-n-C5H10-CO-O-n-C4H8-)、7-オキソ-8-オキサウンデシレン基(-n-C6H12-CO-O-n-C3H6-)、8-オキソ-9-オキサウンデシレン基(-n-C7H14-CO-O-C2H4-)、9-オキソ-10-オキサウンデシレン基(-n-C8H16-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソウンデシレン基(-CH2-O-CO-n-C8H16-)、3-オキサ-4-オキソウンデシレン基(-C2H4-O-CO-n-C7H14-)、4-オキサ-5-オキソウンデシレン基(-n-C3H6-O-CO-n-C6H12-)、5-オキサ-6-オキソウンデシレン基(-n-C4H8-O-CO-n-C5H10-)、6-オキサ-7-オキソウンデシレン基(-n-C5H10-O-CO-n-C4H8-)、7-オキサ-8-オキソウンデシレン基(-n-C6H12-O-CO-n-C3H6-)、8-オキサ-9-オキソウンデシレン基(-n-C7H14-O-CO-C2H4-)、9-オキサ-10-オキソウンデシレン基(-n-C8H16-O-CO-CH2-)、2-オキソ-3-オキサドデシレン基(-CH2-CO-O-n-C9H18-)、3-オキソ-4-オキサドデシレン基(-C2H4-CO-O-n-C8H16-)、4-オキソ-5-オキサドデシレン基(-n-C3H6-CO-O-n-C7H14-)、5-オキソ-6-オキサドデシレン基(-n-C4H8-CO-O-n-C6H12-)、6-オキソ-7-オキサドデシレン基(-n-C5H10-CO-O-n-C5H10-)、7-オキソ-8-オキサドデシレン基(-n-C6H12-CO-O-n-C4H8-)、8-オキソ-9-オキサドデシレン基(-n-C7H14-CO-O-n-C3H6-)、9-オキソ-10-オキサドデシレン基(-n-C8H16-CO-O-C2H4-)、10-オキソ-11-オキサドデシレン基(-n-C9H18-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソドデシレン基(-CH2-O-CO-n-C9H18-)、3-オキサ-4-オキソドデシレン基(-C2H4-O-CO-n-C8H16-)、4-オキサ-5-オキソドデシレン基(-n-C3H6-O-CO-n-C7H14-)、5-オキサ-6-オキソドデシレン基(-n-C4H8-O-CO-n-C6H12-)、6-オキサ-7-オキソドデシレン基(-n-C5H10-O-CO-n-C5H10-)、7-オキサ-8-オキソドデシレン基(-n-C6H12-O-CO-n-C4H8-)、8-オキサ-9-オキソドデシレン基(-n-C7H14-O-CO
-n-C3H6-)、9-オキサ-10-オキソドデシレン基(-n-C8H16-O-CO-C2H4-)及び10-オキサ-11-オキソドデシレン基(-n-C9H18-O-CO-CH2-)等が挙げられる。
【0080】
エステル結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、2-オキサ-3-オキソペンチレン基、3-オキサ-4-オキソペンチレン基、2-オキサ-3-オキソヘキシレン基、3-オキサ-4-オキソヘキシレン基、2-オキサ-3-オキソヘプチレン基、3-オキサ-4-オキソヘプチレン基、2-オキサ-3-オキソオクチレン基又は3-オキサ-4-オキソオクチレン基であることが好ましく、製造原料の入手のし易さから、3-オキサ-4-オキソヘキシレン基又は3-オキサ-4-オキソヘプチレン基であることがより好ましい。
【0081】
エーテル結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、上記エステル結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基におけるカルボニル基をメチレン基に変更したものに相当し、
2-オキサプロピレン基、2-オキサブチレン基、3-オキサブチレン基、2-オキサペンチレン基、3-オキサペンチレン基、4-オキサペンチレン基、2-オキサヘキシレン基、3-オキサヘキシレン基、4-オキサヘキシレン基、5-オキサヘキシレン基、2-オキサヘプチレン基、3-オキサヘプチレン基、4-オキサヘプチレン基、5-オキサヘプチレン基、6-オキサヘプチレン基、2-オキサオクチレン基、3-オキサオクチレン基、4-オキサオクチレン基、5-オキサオクチレン基、6-オキサオクチレン基、7-オキサオクチレン基、2-オキサノニレン基、3-オキサノニレン基、4-オキサノニレン基、5-オキサノニレン基、6-オキサノニレン基、7-オキサノニレン基、8-オキサノニレン基、2-オキサデシレン基、3-オキサデシレン基、4-オキサデシレン基、5-オキサデシレン基、6-オキサデシレン基、7-オキサデシレン基、8-オキサデシレン基、9-オキサデシレン基、2-オキサウンデシレン基、3-オキサウンデシレン基、4-オキサウンデシレン基、5-オキサウンデシレン基、6-オキサウンデシレン基、7-オキサウンデシレン基、8-オキサウンデシレン基、9-オキサウンデシレン基、10-オキサウンデシレン基、2-オキサドデシレン基、3-オキサドデシレン基、4-オキサドデシレン基、5-オキサドデシレン基、6-オキサドデシレン基、7-オキサドデシレン基、8-オキサドデシレン基、9-オキサドデシレン基、10-オキサドデシレン基及び11-オキサドデシレン基等が挙げられる。
【0082】
エーテル結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、2-オキサプロピレン基、2-オキサブチレン基、2-オキサペンチレン基が好ましく、製造原料の入手のし易さから、2-オキサブチレン基がより好ましい。
【0083】
アミド結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、上記エステル結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基におけるエーテル基(上記置換基名における[オキサ]部分)をアザメチレン基に変更したものに相当し、2-オキソ-3-アザブチレン基(-CH2-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソブチレン基(-CH2-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザペンチレン基(-CH2-CO-NH-C2H4-)、3-オキソ-4-アザペンチレン基(-C2H4-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソペンチレン基(-CH2-NH-CO-C2H4-)、3-アザ-4-オキソペンチレン基(-C2H4-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザヘキシレン基(-CH2-CO-NH-n-C3H6-)、3-オキソ-4-アザヘキシレン基(-C2H4-CO-NH-C2H4-)、4-オキソ-5-アザヘキシレン基(-n-C3H6-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソヘキシレン基(-CH2-NH-CO-n-C3H6-)、3-アザ-4-オキソヘキシレン基(-C2H4-NH-CO-C2H4-)、4-アザ-5-オキソヘキシレン基(-n-C3H6-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザヘプチレン基(-CH2-CO-NH-n-C4H8-)、3-オキソ-4-アザヘプチレン基(-C2H4-CO-NH-n-C3H6-)、4-オキソ-5-アザヘプチレン基(-n-C3H6-CO-NH-C2H4-)、5-オキソ-6-アザヘプチレン基(-n-C4H8-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソヘプチレン基(-CH2-NH-CO-n-C4H8-)、3-アザ-4-オキソヘプチレン基(-C2H4-NH-CO-n-C3H6-)、4-アザ-5-オキソヘプチレン基(-n-C3H6-NH-CO-C2H4-)、5-アザ-6-オキソヘプチレン基(-n-C4H8-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザオクチレン基(-CH2-CO-NH-n-C5H10-)、3-オキソ-4-アザオクチレン基(-C2H4-CO-NH-n-C4H8-)、4-オキソ-5-アザオクチレン基(-n-C3H6-CO-NH-n-C3H6-)、5-オキソ-6-アザオクチレン基(-n-C4H8-CO-NH-C2H4-)、6-オキソ-7-アザオクチレン基(-n-C5H10-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソオクチレン基(-CH2-NH-CO-n-C5H10-)、3-アザ-4-オキソオクチレン基(-C2H4-NH-CO-n-C4H8-)、4-アザ-5-オキソオクチレン基(-n-C3H6-NH-CO-n-C3H6-)、5-アザ-6-オキソオクチレン基(-n-C4H8-NH-CO-C2H4-)、6-アザ-7-オキソオクチレン基(-n-C5H10-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザノニレン基(-CH2-CO-NH-n-C6H12-)、3-オキソ-4-アザノニレン基(-C2H4-CO-NH-n-C5H10-)、4-オキソ-5-アザノニレン基(-n-C3H6-CO-NH-n-C4H8-)、5-オキソ-6-アザノニレン基(-n-C4H8-CO-NH-n-C3H6-)、6-オキソ-7-アザノニレン基(-n-C5H10-CO-NH-C2H4-)、7-オキソ-8-アザノニレン基(-n-C6H12-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソノニレン基(-CH2-NH-CO-n-C6H12-)、3-アザ-4-オキソノニレン基(-C2H4-NH-CO-n-C5H10-)、4-アザ-5-オキソノニレン基(-n-C3H6-NH-CO-n-C4H8-)、5-アザ-6-オキソノニレン基(-n-C4H8-NH-CO-n-C3H6-)、6-アザ-7-オキソノニレン基(-n-C5H10-NH-CO-C2H4-)、7-アザ-8-オキソノニレン基(-n-C6H12-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザデシレン基(-CH2-CO-NH-n-C7H14-)、3-オキソ-4-アザデシレン基(-C2H4-CO-NH-n-C6H12-)、4-オキソ-5-アザデシレン基(-n-C3H6-CO-NH-n-C5H10-)、5-オキソ-6-アザデシレン基(-n-C4H8-CO-NH-n-C4H8-)、6-オキソ-7-アザデシレン基(-n-C5H10-CO-NH-n-C3H6-)、7-オキソ-8-アザデシレン基(-n-C6H12-CO-NH-C2H4-)、8-オキソ-9-アザデシレン基(-n-C7H14-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソデシレン基(-CH2-NH-CO-n-C7H14-)、3-アザ-4-オキソデシレン基(-C2H4-NH-CO-n-C6H12-)、4-アザ-5-オキソデシレン基(-n-C3H6-NH-CO-n-C5H10-)、5-アザ-6-オキソデシレン基(-n-C4H8-NH-CO-n-C4H8-)、6-アザ-7-オキソデシレン基(-n-C5H10-NH-CO-n-C3H6-)、7-アザ-8-オキソデシレン基(-n-C6H12-NH-CO-C2H4-)、8-アザ-9-オキソデシレン基(-n-C7H14-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザウンデシレン基(-CH2-CO-NH-n-C8H16-)、3-オキソ-4-アザウンデシレン基(-C2H4-CO-NH-n-C7H14-)、4-オキソ-5-アザウンデシレン基(-n-C3H6-CO-NH-n-C6H12-)、5-オキソ-6-アザウンデシレン基(-n-C4H8-CO-NH-n-C5H10-)、6-オキソ-7-アザウンデシレン基(-n-C5H10-CO-NH-n-C4H8-)、7-オキソ-8-アザウンデシレン基(-n-C6H12-CO-NH-n-C3H6-)、8-オキソ-9-アザウンデシレン基(-n-C7H14-CO-NH-C2H4-)、9-オキソ-10-アザウンデシレン基(-n-C8H16-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソウンデシレン基(-CH2-NH-CO-n-C8H16-)、3-アザ-4-オキソウンデシレン基(-C2H4-NH-CO-n-C7H14-)、4-アザ-5-オキソウンデシレン基(-n-C3H6-NH-CO-n-C6H12-)、5-アザ-6-オキソウンデシレン基(-n-C4H8-NH-CO-n-C5H10-)、6-アザ-7-オキソウンデシレン基(-n-C5H10-NH-CO-n-C4H8-)、7-アザ-8-オキソウンデシレン基(-n-C6H12-NH-CO-n-C3H6-)、8-アザ-9-オキソウンデシレン基(-n-C7H14-NH-CO-C2H4-)、9-アザ-10-オキソウンデシレン基(-n-C8H16-NH-CO-CH2-)、2-オキソ-3-アザドデシレン基(-CH2-CO-NH-n-C9H18-)、3-オキソ-4-アザドデシレン基(-C2H4-CO-NH-n-C8H16-)、4-オキソ-5-アザドデシレン基(-n-C3H6-CO-NH-n-C7H14-)、5-オキソ-6-アザドデシレン基(-n-C4H8-CO-NH-n-C6H12-)、6-オキソ-7-アザドデシレン基(-n-C5H10-CO-NH-n-C5H10-)、7-オキソ-8-アザドデシレン基(-n-C6H12-CO-NH-n-C4H8-)、8-オキソ-9-アザドデシレン基(-n-C7H14-CO-NH-n-C3H6-)、9-オキソ-10-アザドデシレン基(-n-C8H16-CO-NH-C2H4-)、10-オキソ-11-アザドデシレン基(-n-C9H18-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソドデシレン基(-CH2-NH-CO-n-C9H18-)、3-アザ-4-オキソドデシレン基(-C2H4-NH-CO-n-C8H16-)、4-アザ-5-オキソドデシレン基(-n-C3H6-NH-CO-n-C7H14-)、5-アザ-6-オキソドデシレン基(-n-C4H8-NH-CO-n-C6H12-)、6-アザ-7-オキソドデシレン基(-n-C5H10-NH-CO-n-C5H10
-)、7-アザ-8-オキソドデシレン基(-n-C6H12-NH-CO-n-C4H8-)、8-アザ-9-オキソドデシレン基(-n-C7H14-NH-CO-n-C3H6-)、9-アザ-10-オキソドデシレン基(-n-C8H16-NH-CO-C2H4-)及び10-アザ-11-オキソドデシレン基(-n-C9H18-NH-CO-CH2-)等が挙げられる。
【0084】
アミド結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、2-アザ-3-オキソブチレン基、2-アザ-3-オキソペンチレン基、3-アザ-4-オキソペンチレン基、3-アザ-4-オキソヘキシレン基が好ましく、製造原料の入手のし易さから、3-アザ-4-オキソヘキシレン基がより好ましい。
【0085】
ウレタン結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基としては、上記エステル結合を含む炭素数2~12の直鎖アルキレン基に対して、カルボニル基(上記置換基名における[オキソ]部分)に隣接するメチレン基をアザメチレン基に変更したものに相当し、
2-オキサ-3-オキソ-4-アザペンチレン基(-CH2-O-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサペンチレン基(-CH2-NH-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソ-4-アザヘキシレン基(-CH2-O-CO-NH-C2H4-)、3-オキサ-4-オキソ-5-アザヘキシレン基(-C2H4-O-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサヘキシレン基(-CH2-NH-CO-O-C2H4-)、3-アザ-4-オキソ-5-オキサヘキシレン基(-C2H4-NH-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソ-4-アザヘプチレン基(-CH2-O-CO-NH-n-C3H6-)、3-オキサ-4-オキソ-5-アザヘプチレン基(-C2H4-O-CO-NH-C2H4-)、4-オキサ-5-オキソ-6-アザヘプチレン基(-n-C3H6-O-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサヘプチレン基(-CH2-NH-CO-O-n-C3H6-)、3-アザ-4-オキソ-5-オキサヘプチレン基(-C2H4-NH-CO-O-C2H4-)、4-アザ-5-オキソ-6-オキサヘプチレン基(-n-C3H6-NH-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソ-4-アザオクチレン基(-CH2-O-CO-NH-n-C4H8-)、3-オキサ-4-オキソ-5-アザオクチレン基(-C2H4-O-CO-NH-n-C3H6-)、4-オキサ-5-オキソ-6-アザオクチレン基(-n-C3H6-O-CO-NH-C2H4-)、5-オキサ-6-オキソ-7-アザオクチレン基(-n-C4H8-O-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサオクチレン基(-CH2-NH-CO-O-n-C4H8-)、3-アザ-4-オキソ-5-オキサオクチレン基(-C2H4-NH-CO-O-n-C3H6-)、4-アザ-5-オキソ-6-オキサオクチレン基(-n-C3H6-NH-CO-O-C2H4-)、5-アザ-6-オキソ-7-オキサオクチレン基(-n-C4H8-NH-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソ-4-アザノニレン基(-CH2-O-CO-NH-n-C5H10-)、3-オキサ-4-オキソ-5-アザノニレン基(-C2H4-O-CO-NH-n-C4H8-)、4-オキサ-5-オキソ-6-アザノニレン基(-n-C3H6-O-CO-NH-n-C3H6-)、5-オキサ-6-オキソ-7-アザノニレン基(-n-C4H8-O-CO-NH-C2H4-)、6-オキサ-7-オキソ-8-アザノニレン基(-n-C5H10-O-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサノニレン基(-CH2-NH-CO-O-n-C5H10-)、3-アザ-4-オキソ-5-オキサノニレン基(-C2H4-NH-CO-O-n-C4H8-)、4-アザ-5-オキソ-6-オキサノニレン基(-n-C3H6-NH-CO-O-n-C3H6-)、5-アザ-6-オキソ-7-オキサノニレン基(-n-C4H8-NH-CO-O-C2H4-)、6-アザ-7-オキソ-8-オキサノニレン基(-n-C5H10-NH-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソ-4-アザデシレン基(-CH2-O-CO-NH-n-C6H12-)、3-オキサ-4-オキソ-5-アザデシレン基(-C2H4-O-CO-NH-n-C5H10-)、4-オキサ-5-オキソ-6-アザデシレン基(-n-C3H6-O-CO-NH-n-C4H8-)、5-オキサ-6-オキソ-7-アザデシレン基(-n-C4H8-O-CO-NH-n-C3H6-)、6-オキサ-7-オキソ-8-アザデシレン基(-n-C5H10-O-CO-NH-C2H4-)、7-オキサ-8-オキソ-9-アザデシレン基(-n-C6H12-O-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサデシレン基(-CH2-NH-CO-O-n-C6H12-)、3-アザ-4-オキソ-5-オキサデシレン基(-C2H4-NH-CO-O-n-C5H10-)、4-アザ-5-オキソ-6-オキサデシレン基(-n-C3H6-NH-CO-O-n-C4H8-)、5-アザ-6-オキソ-7-オキサデシレン基(-n-C4H8-NH-CO-O-n-C3H6-)、6-アザ-7-オキソ-8-オキサデシレン基(-n-C5H10-NH-CO-O-C2H4-)、7-アザ-8-オキソ-9-オキサデシレン基(-n-C6H12-NH-CO-O-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサウンデシレン基(-CH2-NH-CO-O-n-C7H14-)、3-アザ-4-オキソ-5-オキサウンデシレン基(-C2H4-NH-CO-O-n-C6H12-)、4-アザ-5-オキソ-6-オキサウンデシレン基(-n-C3H6-NH-CO-O-n-C5H10-)、5-アザ-6-オキソ-7-オキサウンデシレン基(-n-C4H8-NH-CO-O-n-C4H8-)、6-アザ-7-オキソ-8-オキサウンデシレン基(-n-C5H10-NH-CO-O-n-C3H6-)、7-アザ-8-オキソ-9-オキサウンデシレン基(-n-C6H12-NH-CO-O-C2H4-)、8-アザ-9-オキソ-10-オキサウンデシレン基(-n-C7H14-NH-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソ-4-アザウンデシレン基(-CH2-O-CO-NH-n-C7H14-)、3-オキサ-4-オキソ-5-アザウンデシレン基(-C2H4-O-CO-NH-n-C6H12-)、4-オキサ-5-オキソ-6-アザウンデシレン基(-n-C3H6-O-CO-NH-n-C5H10-)、5-オキサ-6-オキソ-7-アザウンデシレン基(-n-C4H8-O-CO-NH-n-C4H8-)、6-オキサ-7-オキソ-8-アザウンデシレン基(-n-C5H10-O-CO-NH-n-C3H6-)、7-オキサ-8-オキソ-9-アザウンデシレン基(-n-C6H12-O-CO-NH-C2H4-)、8-オキサ-9-オキソ-10-アザウンデシレン基(-n-C7H14-O-CO-NH-CH2-)、2-アザ-3-オキソ-4-オキサドデシレン基(-CH2-NH-CO-O-n-C8H16-)、3-アザ-4-オキソ-5-オキサドデシレン基(-C2H4-NH-CO-O-n-C7H14-)、4-アザ-5-オキソ-6-オキサドデシレン基(-n-C3H6-NH-CO-O-n-C6H12-)、5-アザ-6-オキソ-7-オキサドデシレン基(-n-C4H8-NH-CO-O-n-C5H10-)、6-アザ-7-オキソ-8-オキサドデシレン基(-n-C5H10-NH-CO-O-n-C4H8-)、7-アザ-8-オキソ-9-オキサドデシレン基(-n-C6H12-NH-CO-O-n-C3H6-)、8-アザ-9-オキソ-10-オキサドデシレン基(-n-C7H14-NH-CO-O-C2H4-)、9-アザ-10-オキソ-11-オキサドデシレン基(-n-C8H16-NH-CO-O-CH2-)、2-オキサ-3-オキソ-4-アザドデシレン基(-CH2-O-CO-NH-n-C8H16-)、3-オキサ-4-オキソ-5-アザドデシレン基(-C2H4-O-CO-NH-n-C7H14-)、4-オキサ-5-オキソ-6-アザドデシレン基(-n-C3H6-O-CO-NH-n-C6H12-)、5-オキサ-6-オキソ-7-アザドデシレン基(-n-C4H8-O-CO-NH-n-C5H10-)、6-オキサ-7-オキソ-8-アザドデシレン基(-n-C5H10-O-CO-NH-n-C4H8-)、7-オキサ-8-オキソ-9-アザドデシレン基(-n-C6H12-O-CO-NH-n-C3H6-)、8-オキサ-9-オキソ-10-アザドデシレン基(-n-C7H14-O-CO-NH-C2H4-)及び9-オキサ-10-オキソ-11-アザドデシレン基(-n-C8H16-O-CO-NH-CH2-)等が挙げられる。
【0086】
なお、R5はYと結合する側の炭素を1番としてカウントし、上記置換基の記載では、左側の端部でYと結合するように記載している。
【0087】
上記式(2)で示される構造を有する化合物としては、Yが、上記式(16)、(20)、及び(21)から選ばれる1つの有機基であるものがより好ましく、例えば、トリス-[(3-メルカプトピロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトエチル)グリコールウリル等が挙げられる。これらの中でも上記式(2)におけるYが、式(20)であるものが更に好ましく、トリス-[(3-メルカプトピロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートが更に好ましい。
【0088】
上記チオール化合物(C)としては、上記式(2)で示される構造を有する化合物のほかに、下記式(3)で示される構造を有する化合物も好適に用いられる。
【0089】
【0090】
[oは2~6の整数であり、pは0~4の整数であり、o+pは2~6の整数である。Zは炭素数1~6の鎖状の有機基であって、エステル結合、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでいてもよい。o個のR7はそれぞれ独立しており、鎖状脂肪族基、環状構造を含む脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される1種の有機基、又は、これらの群から選ばれる複数の有機基の組み合わせからなる有機基であり、カルボニル基、エーテル結合、アミド結合及びウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでいてもよい。p個のR8は、それぞれ独立しており、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種である。]
【0091】
oは2~6の整数である。チオール基の含有量が多いほど、硬化後の樹脂の耐熱性の向上が期待できるが、耐熱性と曲げ強度や靱性といった機械特性のバランスを考慮すると、oは2~4であることが好ましい。
またR7としては、既に説明したR5と同様の置換基を好適に用いることができる。
なお、R7はZと結合する側の炭素を1番としてカウントする。
【0092】
Zとしては、炭素数1~4の直鎖炭化水素基であることが好ましい。また、Zはエステル結合、エーテル結合、アミド結合およびウレタン結合からなる群から選択される結合を含んでいてもよいが、製造原料の入手のし易さから、これらのなかではエーテル結合を含むことが好ましい。
【0093】
R7は-CH2-O-CO-R10-、-CH2-O-R10-、-CH2-CH2-O-CO-R10-、-O-(CH2)2-O-CO-(CH2)2-で表される基(R10は、炭素数1~5のアルキレン基を表す。)であることが好ましく、製造原料の入手のし易さから、2-オキサ-3-オキソペンチレン基又は2-オキサ-3-オキソヘキシレン基、2-オキサペンチレン基、-O-(CH2)2-O-CO-(CH2)2-で表される基のいずれかであることがより好ましい。
【0094】
R8は、それぞれ独立しており、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基からなる群から選択される1種であるが、R8が置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基である場合の置換基としては、水酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基が挙げられる。置換基は1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0095】
Zがエーテル結合を含む場合には、ジペンタエリスリトールから6つのヒドロキシメチル基(-CH2-OH)を取り除いた構造(下記式(26)で示される構造)であることがより好ましい。
【0096】
【0097】
上記式(3)で示される構造を有する化合物としては、トリメチロール基を有する骨格を有し、下記式(27)又は(28)で表される構造を有するチオール化合物や、ペンタエリスリトール骨格を有し、下記式(29)又は(30)で表される構造を有するチオール化合物が更に好ましい。
【0098】
【0099】
[R9は炭素数が1~3のアルキル基又は水酸基であり、R10は炭素数が1~5のアルキレン基である。]
【0100】
上記式(3)で示される構造を有する化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール等が挙げられる。
【0101】
<その他の樹脂>
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、樹脂成分としてアリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)を含む限り、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂やマレイミド化合物(B)以外の熱硬化性樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0102】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂などが挙げられる。また、マレイミド化合物(B)以外の熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。この中で炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維との相溶性が高いエポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0103】
エポキシ樹脂は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、その分子量や分子構造等は特に限定されない。具体的には、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂、脂環式タイプのエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
【0104】
上記で示すその他の樹脂の樹脂成分全体に対する量は用途に応じて任意に設定可能であり、アリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)を含む樹脂が本来有する曲げ特性や耐熱性を損なわない程度に設定することが望ましい。
なお、本発明において樹脂成分とは、アリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)のいずれか1つ以上と反応し得る強化繊維以外の有機化合物(単量体又は重合体)、若しくは、アリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)のいずれとも反応しない重合体を意味する。
【0105】
また本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、アリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)のいずれにも該当しない、ヒドロキシル基を構造中に2つ以上有する環式化合物の含有量が、繊維強化複合材料用樹脂組成物中のマレイミド化合物(B)100重量部に対して、0.01重量部未満であることが好ましい。
【0106】
<強化繊維>
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物が含む強化繊維は特に制限されず、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維および表面処理した有機繊維を挙げることができる。これらの中で、比強度、比弾性率に優れる炭素繊維や黒鉛繊維が好ましい。また、ガラス繊維のようなチオール化合物との親和性が良好な繊維を用いることも本発明の好適な実施形態の1つである。強化繊維が炭素繊維である場合、その形態は平織、綾織、朱子織等の経糸と緯糸から構成されるものの他、繊維束を一方向に引き揃えシート状とし、これを直角方向にステッチ糸で縫合した一軸織物、一方向に引き揃えたシート状物を角度を変えて複数積層し、これを直角方向にステッチ糸で縫合した多軸織物等の形で用いられる。
【0107】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物が炭素繊維を含む場合、炭素繊維はサイジング剤で処理されていることが望ましい。サイジング剤で処理されていない炭素繊維は脆く、集束性や耐摩耗性に乏しいため、後工程において毛羽や糸切れが発生しやすいだけでなく、マトリクス樹脂との界面接着性が不十分であることから、炭素繊維強化樹脂複合材料(CFRP)を作製したときに炭素繊維の優れた特性を活かすことができない場合がある。このような問題を解決するために、通常炭素繊維はサイジング剤で処理されており、マトリクス樹脂がエポキシ樹脂である場合、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が一般的に用いられる。しかしながら、マレイミド化合物(B)、もしくはアリル化合物(A)とマレイミド化合物(B)との混合物は、このようなサイジング剤との相性が低く、CFRPとしたときに満足な物性を得ることができない。
【0108】
これに対し本発明の樹脂組成物は、サイジング剤で処理された炭素繊維を用いた場合でも樹脂成分との相性がよく、機械的強度に優れた繊維強化複合材料用樹脂組成物が得られる。その理由は、樹脂成分に含まれるチオール化合物(C)がサイジング剤とビスマレイミド化合物とを結ぶ架橋点となる、もしくはサイジング剤とビスマレイミド化合物の相互作用を向上させるためであると推測している。
このような理由から、サイジング剤はビスフェノールAグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂に限らず、脂肪族タイプのエポキシ樹脂やその他のエポキシ樹脂でも構わない。また、サイジング剤はエポキシ樹脂に限らず、チオールと反応可能な、もしくは相互作用可能な官能基を表面に有していればよく、エポキシ基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、マレイミド基、イソシアネート基からなる群から選択される官能基を表面に有するものであることが好ましい。
炭素繊維に付着するサイジング剤の量はチオール基が架橋点として作用するのに十分な量があれば制限はないが、0.1~10wt%の範囲が好適に用いられる。
【0109】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物が炭素繊維以外の強化繊維を含む場合においても、その表面が上述した官能基を表面に有するものであることが好ましい。
【0110】
<その他の成分>
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、上記樹脂成分と強化繊維とを含むものである限り、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、溶媒、触媒、無機充填材、難燃剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0111】
上記溶媒としては、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0112】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物が溶媒を含む場合の含有割合は、繊維強化複合材料用樹脂組成物から強化繊維を除いた合計重量に対して、20~80重量%であることが好ましい。より好ましくは、40~60重量%である。
【0113】
上記触媒としては、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン化合物や2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、ジクミルパーオキシド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシ)バレロニトリル等のアゾ化合物;トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のリン系化合物;四級アンモウニウム塩等の触媒が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0114】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物が上記触媒を含む場合の含有割合は、組成物が含む樹脂成分の合計100重量%に対して、0.1~10重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1~5重量%であり、更に好ましくは、0.1~3重量%である。
【0115】
無機充填材としては、天然シリカ、焼成シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、ホワイトカーボン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化珪素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、銅、銀、金、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、天然マイカ、合成マイカ、アエロジル、カオリン、クレー、タルク、焼成カオリン、焼成クレー、焼成タルク、ウオラストナイト、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラス及びチタン酸カリウム繊維等が挙げられる。
【0116】
難燃剤としては、塩素化パラフィン、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、リン酸アミド、リン酸アミドエステル、ホスフィネート、ホスフィネート塩、リン酸アンモニウム及び赤リン等のリン系難燃剤、メラミン、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メロン及びサクシノグアナミン等の窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃剤等の難燃剤並びに三酸化アンチモン等の難燃助剤等が挙げられ、本発明の樹脂組成物の特性を妨げない限り、その配合量は特に限定されない。
【0117】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、上記以外のその他の成分として更に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、光沢剤、及び帯電防止剤、導電剤等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
無機充填材、難燃剤、及び、その他の成分は、繊維強化複合材料の用途や求められる特性に応じ、適宜最適な量を用いることができる。
【0118】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物を製造する方法は特に制限されないが、1分子中に少なくとも2個以上のアリル基と1個以上のベンゼン環を有するアリル化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、1分子中に少なくとも2個以上のチオール基を有するチオール化合物(C)とを、アリル化合物(A)100重量部に対する、マレイミド化合物(B)の重量割合が155~530重量部、チオール化合物(C)の重量割合が15~120重量部となる割合で含む樹脂成分とその他の成分とを先に混合した後、強化繊維に含浸して製造することが望ましい。樹脂成分とその他の成分とを混合する方法は特に制限されず、タンブラー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどの混合機を用いることができる。
【0119】
また本発明において、樹脂成分は強化繊維へ含浸させる前にアリル化合物(A)、マレイミド化合物(B)及びチオール化合物(C)を混合した状態で使用しても良いし、混合した樹脂成分に熱をかけて一部反応させた状態で使用しても良い。
樹脂成分を一部反応させる場合の反応温度は、通常80℃~200℃であり、好ましくは100℃~180℃、より好ましくは110℃~160℃である。
樹脂成分を一部反応させる場合の反応時間は反応温度により任意に設定することができるが、以下の項目に示す溶融粘度の範囲を満たすように設定することが望ましい。
【0120】
本発明において強化繊維へ樹脂成分等を含浸させる方法は特に制限が無いが、溶剤を用いない方法が望ましく、ホットメルト法が好ましい。 ホットメルト法は、樹脂成分と積層した強化繊維基材とを加圧下で加熱することにより、樹脂成分の粘度を低下させ、強化繊維内に含浸させる方法である。
樹脂成分を含浸させる際の加圧条件・加熱温度は、樹脂成分の組成や粘度に応じて適宜調整される。本発明における樹脂成分においては、加熱温度は80℃~160℃の範囲で任意に設定することができる。加熱温度が80℃未満である場合、樹脂成分の粘度が低くならず、強化繊維への含浸性が不十分となる。加熱温度が160℃を超える場合、樹脂成分の硬化反応が著しく進行し、プリプレグはタック性やドレープ性を失い易い。樹脂成分の溶融粘度が十分に低下し、且つ樹脂成分の硬化反応が進行しにくいという点では加熱温度は110℃~140℃がより好ましい。
樹脂成分の溶融粘度は強化繊維への含浸性向上のため低いほうが好ましいが、110℃での溶融粘度が10~100,000mPa・sであれば良く、好ましくは50~50,000mPa・sであり、さらに好ましくは100~20,000mPa・sである。
樹脂成分の溶融粘度は細管式粘度計、落球式粘度計、回転式粘度計などにより測定することができる。
【0121】
2.プリプレグ、繊維強化複合材料
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物は、従来のエポキシ樹脂を用いた繊維強化複合材料に比べて耐熱性に優れ、更に強化繊維に対してビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノール樹脂とを樹脂成分として混合した材料に比べて機械的強度に優れるため、従来から繊維強化複合材料が使用されている分野に加えて、更に耐熱性が要求される分野にも好適に用いることができる。
このような、本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物である繊維強化複合材料もまた、本発明の1つである。
【0122】
本発明の繊維強化複合材料は、ガラス転移温度が210℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度はより好ましくは230℃以上であり、更に好ましくは250℃以上である。
繊維強化複合材料のガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0123】
更に本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物を半硬化状態としたプリプレグ(中間材)も各種用途に好適に用いることができる。このような、繊維強化複合材料用樹脂組成物を材料として用いてなるプリプレグもまた、本発明の1つである。
プリプレグは、プリプレグ中の樹脂成分と強化繊維の合計重量に対する樹脂成分の重量割合が20~55重量%であることが好ましい。このような割合であることで、プリプレグが耐熱性、機械的強度により優れたものとなり、各種用途により好適に用いることができるものとなる。樹脂成分と強化繊維の合計重量に対する樹脂成分の重量割合はより好ましくは30~40重量%である。
本発明の繊維強化複合材料中の樹脂成分と強化繊維の合計重量に対する樹脂成分の重量割合も上記と同様であることが好ましい。
【0124】
本発明のプリプレグは、公知の手法により硬化して繊維強化複合材料に成形することができる。例えばプリプレグを積層して、オートクレーブ中または加圧プレス等で加熱硬化することにより複合材料を得ることができる。本発明のプリプレグは、オートクレーブまたは加圧プレスで0.2~1MPaに加圧し、160~200℃で段階的に温度を上昇させながら1~10時間加熱することにより複合材料(本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物)を作製することができ、ポストキュアとして210~260℃で段階的に温度を上昇させながら1~15時間処理することで機械的特性や耐熱性を向上することができる。
本発明のプリプレグを硬化させて得られた複合材料は、強化繊維の含有量が35~75体積%であることが好ましく、50~65体積%であることがさらに好ましい。
【0125】
また本発明の繊維強化複合材料は、用途に応じて所望の形状に成形された成形体であってもよい。
成形体を製造する方法は特に制限されず、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等の公知の成形方法を用いることができる。
【0126】
本発明の繊維強化複合材料の用途は特に制限されず、航空機、自動車、船舶等の構造部材や半導体材料、ゴルフクラブやテニスラケット等のスポーツ用品の材料等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0127】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(重量%)」を意味する。なお、各物性の測定方法は以下の通りである。
【0128】
[実施例で用いた材料]
<アリル化合物>
(A)2,2-ビス[3-(2-プロペニル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン(別名、2,2’-ジアリルビスフェノールA)(大和化成工業(株)製:DABPA)
<マレイミド化合物>
(B-1)4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド (ケイ・アイ化成(株)製:BMI-H)
(B-2)4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド (EVONIK(株)製:TDAB)
(B-3)3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド (ケイ・アイ化成(株)製:BMI-70)
<チオール化合物>
(C-1)トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート (SC有機化学(株)製:TEMPIC)
(C-2)ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(SC有機化学(株)製:PEPT)
<炭素繊維>
CO6343 (東レ(株)製)
TR3110M (三菱ケミカル(株)製)
【0129】
実施例1
撹拌羽根の付いたオイルジャケット付容器に、DABPAを100g、TEMPICを34g、BMI-Hを349g添加した後、40℃で30分撹拌した。得られた混合物150gをアルミカップに採取し、160℃のオーブンに入れた。つぎに、200mm角にカットしたCO6343を10枚積層し、160℃のオーブンに入れた。混合物が完全に溶融したのを確認した後、積層したCO6343の上に溶融した混合物を垂らした。このとき混合物は3回に分けて垂らし、均一に含浸するようにした。さらに、プレス用の金型を上から載せ、減圧脱泡を行った。このようにして得られた樹脂含浸炭素繊維を予め160℃に加温したプレス機にセットし、0.2MPaで2時間加圧した。その後、プレス機を200℃に加温し、さらに0.2MPaで2時間加圧した。プレス機の温度調節器をオフにし、室温に下がるまで加圧状態で放置した。室温まで下がったのを確認した後、プレス機から取り出し、オーブンに入れ、230℃で2時間、250℃で2時間硬化を行った。室温まで冷ました後、オーブンから取り出して硬化された複合材料1を得た。
複合材料1の曲げ強さ、曲げ弾性率、ガラス転移温度、及び、繊維含有率を後述する方法により測定した。結果を表1に示す。
【0130】
実施例2、3、比較例1~3
使用する樹脂成分の配合を表1に記載のように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2、3、比較例1~3を行い、硬化された複合材料2、3、硬化された比較複合材料1~3を得た。
複合材料2、3及び比較複合材料1~3の曲げ強さ、曲げ弾性率、ガラス転移温度、及び、繊維含有率を後述する方法により測定した。結果を表1に示す。
【0131】
実施例4~9、比較例4~8
使用する樹脂成分の配合を表2に記載のように変更し、炭素繊維をTR3110Mに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例4~9、比較例4~8を行い、硬化された複合材料4~9、硬化された比較複合材料4~8を得た。
複合材料4~9及び比較複合材料4~8の曲げ強さ、曲げ弾性率、ガラス転移温度、及び、繊維含有率を後述する方法により測定した。結果を表2に示す。
【0132】
実施例10~12、比較例9
使用する樹脂成分の配合を表3に記載のように変更し、炭素繊維をTR3110Mに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例10~12、比較例9を行い、硬化された複合材料10~12、硬化された比較複合材料9を得た。
複合材料10~12、比較複合材料9の曲げ強さ、曲げ弾性率、ガラス転移温度、及び、繊維含有率を下記方法により測定した。結果を表3に示す。表3には複合材料5の結果、及び、比較のため、チオール化合物を含まない比較複合材料5の結果も示した。
【0133】
[曲げ強さ、曲げ弾性率]
各実施例及び比較例にかかる硬化された複合材料から70mm×10mm×2mmの試験片を切り出し、材料万能試験機((株)島津製作所製 AGS-X)を用いて、支点間距離を32mm、荷重速度を1.5mm/minとし、3点曲げ試験を行った。曲げ強さ及び曲げ弾性率はJIS K 7074に記載の計算式を用いて算出した。
[ガラス転移温度]
各実施例及び比較例にかかる硬化された複合材料から60mm×10mm×2mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 EXSTAR6000)を用いて、昇温速度を2℃/min、周波数を1Hzとし、曲げモードで測定した。得られた損失正接曲線のピークトップをガラス転移温度とした。
[繊維含有率(体積%)]
各実施例及び比較例にかかる硬化された複合材料から10mm×10mm×2mmの試験片を切り出し、JIS K 7075に準拠して燃焼法により繊維含有率を算出した。
[樹脂成分含有率(重量%)]
上記で得られた繊維含有率(重量%)をもとに、下記式より樹脂成分含有率(重量%)を算出した。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
表1、2や
図1、2から、それぞれ
実施例1~9と
比較例1~8との比較から、アリル化合物とマレイミド化合物に加えて、更にチオール化合物を所定の割合で用いることで、アリル化合物とマレイミド化合物のみを樹脂成分として用いた場合に比べて、得られる複合材料が機械的強度に優れたものとなることが確認された。
また表3、
図3から、使用するチオール化合物の配合量を調整することで複合材料を機械的強度に特に優れたものとすることができることが確認された。