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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】楽器、譜面立ておよび鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/00 20190101AFI20241008BHJP
   G10B 3/00 20190101ALI20241008BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G10C3/00 210
G10B3/00 150
G10H1/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020044087
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021144187
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】蓬原 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 実
(72)【発明者】
【氏名】羽場 大輔
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-258832(JP,A)
【文献】特開2008-040047(JP,A)
【文献】特開2015-206956(JP,A)
【文献】特開2016-066045(JP,A)
【文献】特開2004-151594(JP,A)
【文献】特開2015-184289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0000506(US,A1)
【文献】"楽譜が滑る譜面台の悩みを解決!簡単にできる100均の安いオススメの滑り止め!",[online],[2023年12月07日検索],2016年08月09日,インターネット<URL:https://norikazu-miyao.com/?p=523>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 3/00-3/30
G10C 3/00-3/24
G10H 1/00-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
譜面立てが取り付けられる鍵盤楽器であって、
前後方向で前記鍵盤楽器の前部に配置された鍵盤と、
前後方向で前記鍵盤の後端よりも後方、かつ、前後方向で前記鍵盤の後端と前記鍵盤楽器の後端との中間位置よりも前方に配置された取付部とを備え、
前記取付部には、譜面設置面が第1の角度となるよう前記譜面立てが取り付けられ、
前後方向で前記鍵盤と前記取付部との間に、情報を表示する表示部、および/または、操作を受け付ける操作部が前記第1の角度で配置され、
前記譜面設置面の下端は、前後方向で前記表示部および/または前記操作部の後端に隣接して配置される、鍵盤楽器。
【請求項2】
前記取付部には、前記譜面立ての下端に設けられた接続部が取り付けられ、
前記接続部が前記取付部に取り付けられたとき、前記譜面設置面が前記第1の角度となるよう、前記接続部の上部に前記譜面設置面を有する本体部が傾斜角を持って接続されている、請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記第1の角度は、水平面に対して35度~55度の範囲である、請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記第1の角度は、水平面に対して40度~50度の範囲である、請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
前記第1の角度は、電子端末の操作に適した範囲である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
【請求項6】
前記譜面設置面にはずれ防止加工が施される、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
【請求項7】
前記譜面設置面を有する前記本体部の裏面には補強部が設けられる、請求項2に記載の鍵盤楽器。
【請求項8】
譜面立てが取り付けられる楽器であって、
前後方向で前記楽器の前部に配置された演奏操作部と、
前後方向で前記演奏操作部の後端よりも後方、かつ、前後方向で前記演奏操作部の後端と前記楽器の後端との中間位置よりも前方に配置された取付部とを備え、
前記取付部には、譜面設置面が第1の角度となるよう前記譜面立てが取り付けられ、
前記取付部には、前記譜面立ての下端に設けられた接続部が取り付けられ、
前記接続部が前記取付部に取り付けられたとき、前記譜面設置面が前記第1の角度となるよう、前記接続部の上部に前記譜面設置面を有する本体部が傾斜角を持って接続されており、
前記譜面立ての前記本体部には、前記接続部とは別の位置に追加接続部が接続されており、前記追加接続部が前記取付部に取り付けられたとき、前記譜面設置面が第2の角度となるよう前記追加接続部と前記本体部とが傾斜角を持って接続される、楽器。
【請求項9】
前記第1の角度は、電子端末の操作に適した範囲であり、
前記第2の角度は、紙の楽譜を置いて演奏するスタイルに適した範囲である、請求項8に記載の楽器。
【請求項10】
楽器に取り付けられる譜面立てであって、
譜面設置面を有する本体部と、
前記本体部の下端に接続される接続部と、
を備え、
前記接続部が前記楽器の取付部に取り付けられたとき、前記譜面設置面が第1の角度となるよう、前記接続部と前記本体部とが傾斜角を持って接続されおり、
前記本体部には、前記接続部とは別の位置に追加接続部が接続されており、
前記追加接続部が前記楽器の前記取付部に取り付けられたとき、前記譜面設置面が第2の角度となるよう前記追加接続部と前記本体部とが傾斜角を持って接続される、譜面立て。
【請求項11】
前記第1の角度は、電子端末の操作に適した範囲であり、
前記第2の角度は、紙の楽譜を置いて演奏するスタイルに適した範囲である、請求項10に記載の譜面立て。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の譜面立てを備える鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、譜面立てを取り付け可能な楽器および鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鍵盤楽器においては、鍵盤の後方に譜面立てが取り付けられる。演奏者は、譜面立てに置かれた楽譜を参照しながら演奏を行う。
【0003】
最近では、紙の楽譜に代えて電子楽譜が利用されることも多い。電子楽譜は、タブレットなどの電子端末に保存される。演奏者は、譜面立てに置かれた電子端末の画面に表示された電子楽譜や各種の演奏情報を参照しながら演奏を行う。また、電子端末にアプリケーションプログラムがインストールされることにより、電子端末を用いて電子楽器に対する各種の設定を行うことが可能である。演奏者は、譜面立てに置かれた電子端末を操作することで、電子楽器に対する各種の設定操作を行うことができる。
【0004】
下記非特許文献1の4ページには、付属品として電子鍵盤楽器に取り付けられる譜面立てが図示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】ヤマハ株式会社、「DIGITAL PIANO P-125 P-121 取扱説明書」、2019年1月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
譜面立ては、元々は紙の楽譜を置くために用意されたものである。タブレットなどの電子端末が電子楽譜を表示する上で、譜面立てがより利便性の高い構造を有していることは、演奏者が演奏を行う上で重要な要素である。
【0007】
本発明の目的は、電子端末を利用する上で適した構造を有する楽器および鍵盤楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従う楽器は、譜面立てが取り付けられる楽器であって、前後方向で楽器の前部に配置された演奏操作部と、前後方向で演奏操作部の後端よりも後方、かつ、前後方向で演奏操作部の後端と楽器の後端との中間位置よりも前方に配置された取付部とを備え、取付部には、譜面設置面が第1の角度となるよう譜面立てが取り付けられ、第1の角度は、水平面に対して35度~55度の範囲である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子端末を利用する上で適した構造を有する楽器および鍵盤楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る電子鍵盤楽器の斜視図である。
図2】実施の形態に係る電子鍵盤楽器の平面図である。
図3】実施の形態に係る電子鍵盤楽器の側面図である。
図4】譜面立てを取り外した状態の電子鍵盤楽器の平面図である。
図5】電子鍵盤楽器に取り付けられる譜面立ての正面図である。
図6】電子鍵盤楽器に取り付けられる譜面立ての背面図である。
図7】電子鍵盤楽器に取り付けられる譜面立ての側面図である。
図8】取付部の拡大図である。
図9】譜面立ての取付部への取付状態を示す図である。
図10】変形例の譜面立ての側面図である。
図11】譜面立てが取り付けられた状態の変形例に係る電子鍵盤楽器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)楽器の構成
以下、本発明の実施の形態に係る楽器について図面を用いて詳細に説明する。図1は、実施の形態に係る楽器である電子鍵盤楽器1の斜視図である。図2は、電子鍵盤楽器1の平面図である。図3は、電子鍵盤楽器1の側面図である。各図面において、電子鍵盤楽器1の前方を符号F、後方を符号B、上方を符号U、および、下方を符号Dで示す。
【0012】
図1および図2に示すように、電子鍵盤楽器1は、筐体10を備える。筐体10は、左右の側部プレート10Sおよび上部プレート10Uを備える。筐体10の前部には、鍵盤11が配置されている。鍵盤11の後部には、パネル12が配置されている。パネル12は、情報の表示を行う表示部12Aとしての機能と、操作を受け付ける操作部12Bとしての機能を備える。図1および図2に示すように、本実施の形態においては、パネル12は、電子鍵盤楽器1の左右方向の全体に亘って延びている。表示部12Aおよび操作部12Bは、パネル12の一部または全体に配置される。
【0013】
表示部12Aには、例えば、音色設定、演奏スタイルなどが表示される。操作部12Bには、例えば、音色設定、演奏スタイル設定、音量設定、テンポ設定などを行うための操作子が配置される。操作部12Bには、機械式の操作ボタン、ダイヤル、タッチパネル式の操作子が含まれる。
【0014】
電子鍵盤楽器1の上部プレート10Uには、譜面立て2が取り付けられている。本実施の形態においては、譜面立て2は、パネル12の後方で、パネル12に隣接して取り付けられている。譜面立て2には、タブレット5が置かれている。タブレット5には、演奏支援アプリケーションプログラム(以下、支援プログラムとする。)がインストールされている。タブレット5は、支援プログラムを実行させることにより、タブレット5のタッチパネルディスプレイに、電子楽譜の他、各種の演奏支援情報を表示させることができる。
【0015】
また、タブレット5は、支援プログラムを実行させることにより、タブレット5のタッチパネルに、電子鍵盤楽器1の各種の設定操作のためのユーザインタフェースを表示させることができる。タブレット5は、USB(Universal Serial Bus)などの有線通信、または、BLUETOOTH(登録商標)、無線LAN(Local Aria Network)などの無線通信を介して、電子鍵盤楽器1の制御部と通信が可能である。演奏者は、タブレット5のタッチパネルディスプレイに表示されたユーザインタフェースに対して入力操作を行うことで、電子鍵盤楽器1に対する各種の設定を行うことができる。
【0016】
図3に示すように、譜面立て2は、パネル12の後方の位置から、後ろ斜め上方に向かって延びるように取り付けられている。本実施の形態においては、譜面立て2の傾斜角は、筐体10の上部プレート10Uに対して略45度である。筐体10は、通常は、ピアノ台または机などの水平面に設置されるので、上部プレート10Uは水平面に対して略平行である。したがって、本実施の形態においては、譜面立て2の傾斜角は、水平面に対して略45度である。つまり、譜面立て2の譜面設置面20の傾斜角は、上部プレート10Uおよび水平面に対して略45度である。
【0017】
また、図3に示すように、パネル12の傾斜角も、筐体10の上部プレート10Uに対して略45度である。したがって、譜面立て2の譜面設置面20と、パネル12のパネル面とは略平行に配置されている。パネル12は、上述したように、情報の表示を行う表示部12Aとしての機能と、操作を受け付ける操作部12Bとしての機能を備える。演奏者は、表示部12Aに表示された情報および譜面立て2に置かれたタブレット5のタッチパネルディスプレイを同様の傾斜角で参照することができるので、情報の参照性がよい。また、操作部12Bおよびタブレット5のタッチパネルディスプレイが同様の傾斜角で配置されるので、操作性がよい。
【0018】
図3に示すように、譜面立て2の背面には、支持バー25が設けられている。支持バー25は、譜面立て2の背面から後ろ斜め下方に向かって延び、上部プレート10Uにおいて支持されている。譜面立て2は、支持バー25を備えることにより、前後方向および上下方向への圧力に対して補強されている。演奏者は、譜面立て2に置かれたタブレット5を操作するとき、譜面立て2に対して前後方向および上下方向の力を加えることになる。譜面立て2が支持バー25により補強されていることにより、演奏者によるタブレット5の操作によっても譜面立て2が揺れ動いたり、撓んだりすることがなく、操作性が良い。
【0019】
本実施の形態においては、譜面立て2の背面に支持バー25を設けることで譜面立て2を補強している。この他にも、例えば、譜面立て2の背面にリブなどを設けることにより、譜面立て2を補強してもよい。
【0020】
(2)取付部の構成
図4は、譜面立て2を取り外した状態の電子鍵盤楽器1の平面図である。図に示すように、筐体10の上部プレート10Uには、取付部13およびガイド14が設けられている。取付部13は、上部プレート10Uの上面に左右方向に延びる溝を備えている。取付部13には、譜面立て2の下端が取り付けられる。ガイド14は、上部プレート10Uの上面に、取付部13と略平行で左右方向に延びる溝を備えている。ガイド14において、譜面立て2の支持バー25が支持される。
【0021】
図4において、位置APは、電子鍵盤楽器1の前後方向で、鍵盤11の後端の位置を示す。位置BPは、電子鍵盤楽器1の前後方向で電子鍵盤楽器1の後端位置を示す。位置MPは、電子鍵盤楽器1の前後方向で位置APと位置BPとの中間位置を示す。このように、本実施の形態の電子鍵盤楽器1においては、電子鍵盤楽器1の前後方向で鍵盤11の後端の位置である位置APと電子鍵盤楽器1の後端位置である位置BPとの中間位置である位置MPよりも前方に取付部13が配置されている。これにより、譜面立て2が鍵盤11に近い位置に配置されることになる。譜面立て2にタブレット5が置かれたとき、タブレット5が演奏者に比較的近い位置に配置される。これにより、演奏者によるタブレット5の操作が行い易い。
【0022】
特に本実施の形態においては、取付部13は、パネル12の後端に隣接して配置されている。取付部13は、パネル12より後方においては、最も鍵盤11に近い位置に配置されている。これにより、演奏者によるタブレット5の操作が行い易い。
【0023】
(3)譜面立ての構成
図5は、譜面立て2の正面図である。図6は、譜面立て2の背面図である。譜面立て2は、本体部21および接続部22を備える。本体部21の正面側が譜面設置面20となっている。接続部22は、本体部21の下部に接続されている。本実施の形態においては、本体部21および接続部22は、一体的に成型されている。本実施の形態においては、譜面立て2は、樹脂で構成されているが、他にも木材、金属などで構成されてもよい。
【0024】
本実施の形態においては、譜面立て2の譜面設置面20には、しぼ加工が施されている。しぼ加工は、譜面設置面20の全面に施されても良いし、譜面設置面20の一部に施されていても良い。譜面設置面20にしぼ加工が施されていることにより、譜面設置面20にすべり止めの効果が付与される。これにより、譜面立て2にタブレット5が置かれて、タブレット5に対する操作が行われた場合にも、タブレット5の位置がずれることが抑制され、操作性が向上する。
【0025】
図5および図6に示すように、接続部22には、左右の突起23,23が形成されている。突起23,23には、それぞれ係止溝24,24が形成されている。突起23,23および係止溝24,24は、譜面立て2が電子鍵盤楽器1に取り付けられるときに用いられる。
【0026】
図6に示すように、本体部21の背面には、支持バー25が取り付けられている。支持バー25は、本体部21の背面において、左右方向に延びる取付部材26に取り付けられている。支持バー25は、取付部材26を回転軸(左右方向に延びる軸)として、取付部材26に対して回転可能に取り付けられている。
【0027】
図7は、譜面立て2が、電子鍵盤楽器1に取り付けられた状態の側面図である。図7に示すように、譜面立て2の本体部21は、電子鍵盤楽器1の上部プレート10Uに対して、略45度の傾斜角を持って配置される。また、譜面立て2の本体部21および接続部22には、側面視において、略135度の角度を持って接続されている。したがって、接続部22を、上部プレート10Uに対して垂直に取り付けることにより、本体部21が、上部プレート10Uに対して略45度の傾斜角を持って配置される。
【0028】
図7に示すように、譜面立て2の接続部22は、取付部13に形成された溝に嵌め込まれる。また、支持バー25がガイド14に嵌め込まれる。ガイド14は、浅い溝であり、支持バー25の前後方向への移動を規制することが可能である。
【0029】
このように、本実施の形態においては、譜面立て2の譜面設置面20が水平面に対して略45度の傾斜角をもって配置される。譜面設置面20が、比較的緩い傾斜角で配置されるので、譜面立て2にタブレット5が載置されたとき、演奏者はタブレット5の操作が行い易い。従来のピアノ、電子ピアノなどでは、譜面立てが水平面に対して75度など比較的角度の大きい傾斜を有している。このような譜面立てにおいては、紙の譜面を参照するには問題はないが、タブレットの操作などには適していない。本実施の形態においては、タブレット5の操作を行うことに適した角度となるように譜面立て2の譜面設置面20の傾斜角が設定されている。
【0030】
本実施の形態においては、譜面立て2の譜面設置面20の傾斜角を水平面に対して略45度としたが、これは一例であり、タブレット5の操作に適した範囲で設計すればよい。タブレット5の操作に適した角度の範囲としては、譜面立て2の譜面設置面20の傾斜角は水平面に対して35度~55度の範囲が望ましい。つまり、本体部21と接続部22との傾斜角が125度~145度の範囲で設定されることが望ましい。譜面設置面20の傾斜角が水平面に対して55度を超えると、タブレット5のタッチパネルディスプレイを操作する手の角度が不自然になり操作性が低下する。また、譜面設置面20の傾斜角が水平面に対して35度より小さくなると、タブレット5のタッチパネルディスプレイに表示された情報の参照性が低下する。さらに、望ましくは、譜面立て2の譜面設置面20の傾斜角は水平面に対して40度~50度の範囲である。つまり、本体部21と接続部22との傾斜角が130度~140度の範囲で設定されることが、さらに望ましい。
【0031】
このように、本実施の形態においては、譜面立て2の譜面設置面20は、水平面に対して略45度の傾斜角を持って配置される。また、パネル12も、水平面に対して略45度の傾斜角を持って配置される。したがって、図3に示すように、パネル12および譜面設置面20は、略平行に配置されている。これにより、演奏者は、パネル12に配置された表示部12Aと譜面立て2に置かれたタブレット5のタッチパネルディスプレイを、同様の傾斜角で参照することができる。これにより、演奏者にとって、パネル12およびタブレット5によって提示される情報を参照することが容易となる。また、演奏者は、パネル12に配置された操作部12Bと譜面立て2に置かれたタブレット5のタッチパネルディスプレイを、同様の傾斜角で操作することができる。これにより、演奏者にとって、パネル12およびタブレット5に対する設定操作が容易となる。
【0032】
(4)取付構造
図8は、上部プレート10Uに設けられた取付部13の拡大図である。取付部13は、上部プレート10Uの左右方向に延びる挿入溝131を有する。挿入溝131には、譜面立て2の接続部22が挿入される。また、取付部13は、挿入溝131内に、係止爪132を有する。図9に示すように、譜面立て2の接続部22が挿入溝131に挿入された後、譜面立て2を図9に示す矢印の方向に移動させることにより、係止溝24に係止爪132が引っ掛けられる。これにより、譜面立て2が上部プレート10Uの取付部13に固定される。
【0033】
(5)実施の形態の効果
以上説明したように、本実施の形態に係る電子鍵盤楽器1は、譜面立て2を取り付けるための取付部13が、前後方向で鍵盤11の後端位置APよりも後方、かつ、前後方向で鍵盤11の後端位置APと電子鍵盤楽器1の後端位置BPとの中間位置MPよりも前方に配置される。また、取付部13には、譜面立て2の譜面設置面20が水平面に対して35度~55度の範囲で設定される。これにより、演奏者は、譜面立て2に置かれた電子端末の操作が行い易い。
【0034】
また、取付部13には、譜面立て2の下端に設けられた接続部22が取り付けられ、接続部22が取付部13に取り付けられたとき、譜面設置面20の水平面に対する傾斜角が35度~55度となるよう、接続部22の上部に譜面設置面20を有する本体部21が傾斜角を持って接続されてもよい。接続部を22を取付部13に取り付けることにより、譜面設置面20を電子端末の操作に適した角度に設定することができる。
【0035】
また、譜面設置面20の水平面に対する傾斜角は、40度~50度の範囲であってもよい。さらに、演奏者は、譜面立て2に置かれた電子端末の操作が行い易い。
【0036】
また、前後方向で鍵盤11と取付部13との間に、情報を表示する表示部12A、および/または、操作を受け付ける操作部12Bが配置されてもよい。表示部12Aの参照性および操作部12Bに対する操作性を確保することができる。
【0037】
取付部13は、前後方向で表示部12Aおよび/または操作部12Bの後端に隣接して配置されてもよい。取付部13が鍵盤11に近い位置に配置されるため、演奏者は、譜面立て2に置かれた電子端末の操作が行い易い。
【0038】
譜面設置面20は、表示部12Aおよび/または操作部12Bと略平行に配置されてもよい。表示部12Aおよび/または操作部12Bと譜面立て2に置かれた電子端末の画面が同様の傾斜角で配置されるので、情報の参照性および設定操作などの操作性が向上する。
【0039】
譜面設置面20にはずれ防止加工が施されてもよい。譜面立て2に置かれた電子端末がずれることが抑制され、電子端末の操作性が向上する。
【0040】
譜面設置面20を有する本体部21の裏面には補強部が設けられてもよい。譜面立て2に置かれた電子端末を操作した場合であっても、譜面立て2が揺れ動いたり、撓んだりすることが抑制され、電子端末の操作性が向上する。
【0041】
(6)変形例
次に、図10および図11を参照しながら、本発明の変形例に係る電子鍵盤楽器1Aについて説明する。図10は、変形例に係る電子鍵盤楽器1Aに取り付けられる譜面立て3の側面図である。図11は、譜面立て3が取り付けられた状態の電子鍵盤楽器1Aの側面図である。
【0042】
図10に示すように、譜面立て3は、本体部31の下部に接続部32を有するとともに、本体部31の上部にも接続部33を有する。本実施の形態においては、接続部32は本体部31に傾斜角135度(90度+45度)を持って接続されている。また、本実施の形態においては、接続部33は、本体部31に傾斜角165度(90度+75度)を持って接続されている。
【0043】
図11(A)は、接続部32を取付部13に固定した状態の電子鍵盤楽器1Aの側面図である。接続部32は本体部31に傾斜角135度(90度+45度)を持って接続されているので、接続部32を上部プレート10Uに対して垂直に取り付けた場合、譜面立て3の譜面設置面30は、水平面に対して略45度の傾斜角を有する。つまり、譜面設置面30の傾斜角は、図3で示した電子鍵盤楽器1と同様である。したがって、図11(A)の状態では、譜面立て2にタブレット5が置かれた演奏スタイルに合わせることができる。
【0044】
図11(B)は、譜面立て3の上下を逆にし、接続部33を取付部13に固定した状態の電子鍵盤楽器1Aの側面図である。接続部33は本体部31に傾斜角165度(90度+75度)を持って接続されているので、接続部33を上部プレート10Uに対して垂直に取り付けた場合、譜面立て3の譜面設置面30は、水平面に対して略75度の傾斜角を有する。このように、図11(B)の状態では、譜面設置面30は従来の鍵盤楽器の譜面立てと同様の傾斜角を有する。したがって、図11(B)の状態では、紙の楽譜を参照する従来の演奏スタイルに合わせることができる。
【0045】
図10および図11で示した例では、接続部32を取付部13に固定した状態で譜面設置面30の傾斜角を45度としたが、これは一例である。例えば、譜面設置面30の傾斜角が35度~55度となるように、接続部32と本体部31との傾斜角を、125度~145度の範囲で設定可能である。また、接続部33を取付部13に固定した状態で譜面設置面30の傾斜角を75度としたが、これは一例である。例えば、譜面設置面30の傾斜角が55度以上となるように、接続部33と本体部31との傾斜角を、145度以上の範囲で設定可能である。
【0046】
(7)変形例の効果
以上説明したように、譜面立て3の本体部31には、接続部32とは別の位置に接続部33が接続されており、接続部33が取付部13に取り付けられたとき、譜面設置面30の水平面に対する傾斜角が55度以上となるように、接続部33と本体部31とが傾斜角を持って接続されている。これにより、接続部33を取付部13に固定することにより、譜面立て2は、従来の紙の楽譜を置いて演奏するスタイルに適した構造となる。また、接続部32を取付部13に固定することにより、譜面立て2は、タブレット5を置いて演奏するスタイルに適した構造となる。
【0047】
(8)その他の実施の形態
上記実施の形態においては、取付部13をパネル12の後端に隣接して配置した。つまり、取付部13を表示部12Aおよび操作部12Bの後端に隣接して配置した。他の実施の形態としては、取付部13が、鍵盤11の後端に隣接して配置されてもよい。
【0048】
上記実施の形態においては、譜面立て2,3に置かれる電子端末としては、タブレット5を例に説明したが、これは一例である。例えば、譜面立て2,3に電子端末として、スマートフォンや、薄型のノート型コンピュータを置いてもよい。
【0049】
上記実施の形態においては、本発明の楽器の実施の形態として電子鍵盤楽器1,1Aを例に説明した。他にも本発明は、電子鍵盤楽器以外の鍵盤楽器にも適用可能である。鍵盤楽器としては、アコースティックピアノ、オルガンなどが挙げられる。
【0050】
(9)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。上記の実施の形態では、鍵盤11が演奏操作部の例である。上記の実施の形態では、支持バー25が補強部の例である。上記の実施の形態では、接続部33が、追加接続部の例である。上記の実施の形態では、接続部22または接続部32を取付部13に固定した場合における、譜面設置面20または譜面設置面30の水平面に対する傾斜角が、第1の角度の例である。上記の実施の形態では、接続部33を取付部13に固定した場合における、譜面設置面30の水平面に対する傾斜角が、第2の角度の例である。
【符号の説明】
【0051】
1,1A…電子鍵盤楽器、10…筐体、10U…上部プレート、10S…側部プレート、13…取付部、131…挿入溝、132…係止爪、14…ガイド、2,3…譜面立て、20,30…譜面設置面、21,31…本体部、22,32,33…接続部、23…突起、24…係止溝
図1
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