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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ロール
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20241008BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20241008BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G15/16 103
F16C13/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020044581
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2020166251
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019068142
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】荻島 和也
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281865(JP,A)
【文献】特開平06-124041(JP,A)
【文献】特開2000-283264(JP,A)
【文献】特開平11-133766(JP,A)
【文献】特開2017-009985(JP,A)
【文献】特開2008-169008(JP,A)
【文献】特開2006-337814(JP,A)
【文献】特開2005-215548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/16
G03G 15/08
G03G 21/00
F16C 13/00
B65H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の軸と、
前記軸に設けられる弾性層と、
前記軸のうち前記弾性層の軸方向の両端面から突出する両端部の少なくとも一方に当該弾性層の端面に接触した状態で装着される非導電性の環状手段と、
を備え、
前記軸の両端部のうち前記環状手段が装着される部分に、前記環状手段の軸方向の装着位置を固定する固定部が設けられており、
前記環状手段の内周面の軸方向における一部に、前記軸の前記固定部で固定される被固定部が設けられており、
前記軸の両端部のうち前記環状手段の装着される部分が小径部および大径部からなる2段の段付き部分であり、
前記環状手段が前記軸の前記段付き部分の小径部および大径部にそれぞれ装着される小径部および大径部を有する2段形状の部材であり、
前記軸の段付き部分の小径部に前記固定部が設けられており、
前記環状手段の小径部の内周面に前記被固定部が設けられており、
前記固定部は、前記軸の周方向全域に連続した溝で構成されており、
前記被固定部は、前記固定部の前記溝に嵌め入れられて軸方向に変位しない突起で構成されているロール。
【請求項2】
導電性の軸と、
前記軸に設けられる弾性層と、
前記軸のうち前記弾性層の軸方向の両端面から突出する両端部の少なくとも一方に当該弾性層の端面に接触した状態で装着される非導電性の環状手段と、
を備え、
前記軸の両端部のうち前記環状手段が装着される部分に、前記環状手段の軸方向の装着位置を固定する固定部が設けられており、
前記環状手段の内周面の軸方向における一部に、前記軸の前記固定部で固定される被固定部が設けられており、
前記軸の両端部のうち前記環状手段の装着される部分が小径部および大径部からなる2段の段付き部分であり、
前記環状手段が前記軸の前記段付き部分の小径部および大径部にそれぞれ装着される小径部および大径部を有する2段形状の部材であり、
前記軸の段付き部分の大径部に前記固定部が設けられており、
前記環状手段の大径部の内周面に前記被固定部が設けられており、
前記固定部は、前記軸の周方向全域に連続した溝で構成されており、
前記被固定部は、前記固定部の前記溝に嵌め入れられて軸方向に変位しない突起で構成されているロール。
【請求項3】
前記環状手段の大径部が、前記軸の大径部に圧入される圧入部分として構成されている請求項1に記載のロール。
【請求項4】
前記環状手段の小径部が、前記軸の小径部に圧入される圧入部分として構成されている請求項に記載のロール。
【請求項5】
前記環状手段の前記弾性層と接する端面に、当該弾性層の端面に食い込む突出部が設けられている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧の電圧が印加されてもリークが生じにくいロール(ローラ)等に関する技術としては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、芯金の外周面に弾性層が形成されたローラ部材であって、その芯金は前記弾性層が形成された範囲から軸方向端部にむけて突き出すように形成された突出部を有し、非導電性材料で形成されて、前記弾性層における軸方向端部の端面に喰い込むように前記突出部に設置された非導電性部材を備えたローラ部材と、そのローラ部材を転写ローラ又は転写対向ローラとして用いる画像形成装置とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-9985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、放電が発生し得る電圧が供給され得る導電性の軸に少なくとも弾性層を設けてなり、その軸のうち弾性層の軸方向の端部から突出する端部に当該弾性層の端面に接触した状態で装着される非導電性の環状手段を有するロールにおいて、軸の環状手段が装着される部分に固定部を設けず、環状手段にその固定部に固定される被固定部を設けない場合に比べて、経時等の要因により環状手段と弾性層の間に生じる隙間を経由して放電が発生することを抑制できるロールを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(A1)のロールは、請求項1に記載されている通り、
導電性の軸と、
前記軸に設けられる弾性層と、
前記軸のうち前記弾性層の軸方向の両端面から突出する両端部の少なくとも一方に当該弾性層の端面に接触した状態で装着される非導電性の環状手段と、
を備え、
前記軸の両端部のうち前記環状手段が装着される部分に、前記環状手段の軸方向の装着位置を固定する固定部が設けられており、
前記環状手段の内周面の軸方向における一部に、前記軸の前記固定部で固定される被固定部が設けられており、
前記軸の両端部のうち前記環状手段の装着される部分が小径部および大径部からなる2段の段付き部分であり、
前記環状手段が前記軸の前記段付き部分の小径部および大径部にそれぞれ装着される小径部および大径部を有する2段形状の部材であり、
前記軸の段付き部分の小径部に前記固定部が設けられており、
前記環状手段の小径部の内周面に前記被固定部が設けられており、
前記固定部は、前記軸の周方向全域に連続した溝で構成されており、
前記被固定部は、前記固定部の前記溝に嵌め入れられて軸方向に変位しない突起で構成されているものである。
【0007】
この発明(A2)のロールは、
導電性の軸と、
前記軸に設けられる弾性層と、
前記軸のうち前記弾性層の軸方向の両端面から突出する両端部の少なくとも一方に当該弾性層の端面に接触した状態で装着される非導電性の環状手段と、
を備え、
前記軸の両端部のうち前記環状手段が装着される部分に、前記環状手段の軸方向の装着位置を固定する固定部が設けられており、
前記環状手段の内周面の軸方向における一部に、前記軸の前記固定部で固定される被固定部が設けられており、
前記軸の両端部のうち前記環状手段の装着される部分が小径部および大径部からなる2段の段付き部分であり、
前記環状手段が前記軸の前記段付き部分の小径部および大径部にそれぞれ装着される小径部および大径部を有する2段形状の部材であり、
前記軸の段付き部分の大径部に前記固定部が設けられており、
前記環状手段の大径部の内周面に前記被固定部が設けられており、
前記固定部は、前記軸の周方向全域に連続した溝で構成されており、
前記被固定部は、前記固定部の前記溝に嵌め入れられて軸方向に変位しない突起で構成されているものである
【0008】
この発明(A)のロールは、上記発明Aのロールにおいて、前記環状手段の大径部が、前記軸の大径部に圧入される圧入部分として構成されているものである。
この発明(A)のロールは、上記発明Aのロールにおいて、前記環状手段の小径部が、前記軸の小径部に圧入される圧入部分として構成されているものである。
【0009】
この発明(A)のロールは、上記発明A1からAのいずれかのロールにおいて、前記環状手段の前記弾性層と接する端面に、当該弾性層の端面に食い込む突出部が設けられているものである。
【発明の効果】
【0010】
上記発明A1のロールによれば、軸の環状手段が装着される部分に固定部を設けず、環状手段にその固定部に固定される被固定部を設けない場合に比べて、経時等の要因により環状手段と弾性層の間に生じる隙間を経由して放電が発生することを抑制できる。
また、上記発明A1のロールによれば、環状手段が軸に対してその軸方向に変位する状態に装着される場合に比べて、環状手段が弾性層の端面に対して接触する状態が保持される。
さらに、上記発明A1のロールによれば、2段形状の環状手段を弾性層に密着させて装着することができ、上記放電が発生することをより確実に抑制できる。
【0011】
上記発明A2のロールによれば、軸の環状手段が装着される部分に固定部を設けず、環状手段にその固定部に固定される被固定部を設けない場合に比べて、経時等の要因により環状手段と弾性層の間に生じる隙間を経由して放電が発生することを抑制できる
また、上記発明A2のロールによれば、環状手段が軸に対してその軸方向に変位する状態に装着される場合に比べて、環状手段が弾性層の端面に対して接触する状態が保持される。
さらに、上記発明A2のロールによれば、環状手段の内周面のうち被固定部を形成する部分以外の部分が圧入部分として構成されていない場合に比べて、経時等の要因により環状手段と弾性層の間に生じる隙間を経由して放電が発生することをより確実に抑制できる。
【0012】
上記発明Aのロールによれば、2段形状の環状手段を弾性層により安定して密着させて装着することができ、上記放電が発生することをより一層確実に抑制できる。
上記発明Aのロールによれば、2段形状の環状手段を弾性層により安定して密着させて装着することができ、上記放電が発生することをより一層確実に抑制できる。
【0013】
上記発明Aのロールによれば、環状手段に弾性層の端面に食い込む突出部を設けない場合に比べて、上記放電が発生することをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係るロールを備える画像形成装置の構成を示す概要図である。
図2図1の画像形成装置の一部(主に作像装置)を示す概要図である。
図3図1の画像形成装置の他の一部(主に二次転写の部分)を示す概要図である。
図4】(A)は実施の形態1に係るロールを適用した二次転写ロールの全体を示す概要図、(B)は(A)のロールの一端部を拡大して示す概要図である。
図5】(A)は図4の二次転写ロールの一端部のホルダー等を取り外した状態を示す概要図、(B)は(A)のロールの一端部を示す斜視図である。
図6】(A)は図5の二次転写ロールにおける軸の一端部を示す斜視図、(B)は図5の二次転写ロールにおける環状部材を示す斜視図である。
図7】(A)および(B)は図6(B)の環状部材を異なる方向からそれぞれ見たときの各状態を示す概要図である。
図8】(A)は図5の二次転写ロールにおける軸の一端部を示す概要図、(B)は図7(B)の環状部材のQ-Q線に沿う概略断面図である。
図9】(A)は図5の二次転写ロールの一端部における環状部材の装着した状態を示す一部断面で示す図、(B)は図5の二次転写ロールの一端部の縦断面図である。
図10】実施の形態2に係る二次転写ロールの一端部の構成を示す各断面図である。
図11図10の二次転写ロールにおける環状部材を異なる方向から見たときの状態を示す概要図である。
図12】実施の形態3に係る二次転写ロールを示す図であり、(A)はその二次転写ロールにおける軸の一端部を示す概要図、(B)はその二次転写ロールにおける環状部材を示す概略断面図である。
図13】実施の形態4に係る二次転写ロールの一端部の構成を示す各断面図である。
図14】(A)は図13の二次転写ロールにおける軸の一端部を示す概要図、(B)は図13の二次転写ロールにおける環状部材を示す概略断面図である。
図15】比較例1の二次転写ロールにおける環状部材の構成と放電発生時の状態を示す概略断面図である。
図16】比較例2の二次転写ロールにおける環状部材の構成と放電発生時の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[実施の形態1]
図1には、実施の形態1に係るロールを備える画像形成装置1が示されている。図1を含む他の図面中に符号X,Y,Zを付して示す矢印は、その各図面において想定した幅、高さおよび奥行の各方向を示す。また図1図2等において符号X,Yの矢印が交わる部分における丸印の記号は、符号Zの方向が図面の垂直下方に向いていることを示している。
【0017】
<画像形成装置>
画像形成装置1は、電子写真方式等の画像形成方式を利用して、現像剤としてのトナーで構成される画像を記録媒体の一例である用紙9に形成する装置である。この画像形成装置1は、例えば、情報端末機、画像読取装置等の外部機器から入力される画像情報に対応した画像の形成を行うプリンタとして構成されている。
【0018】
この画像形成装置1は、図1に示されるように、装置本体の一例である筐体10の内部空間に、未定着像としてのトナー像を形成する像形成手段2と、像形成手段2で形成されるトナー像を一時的に保持して搬送した後に用紙9に二次転写させる中間転写手段3と、中間転写手段3の二次転写する位置に供給すべき用紙9を収容するとともに送り出す給紙手段4と、中間転写手段3で二次転写されたトナー像を用紙9に定着させる定着手段5等を備えている。
【0019】
筐体10は、各種の支持部材、外装材等の材料で所要の構造および形状に組み立てられる構造物である。この筐体10は、その上面部の一部に、画像が形成された後に排出される用紙9を積み重ねた状態で収容する排出収容部12が形成されている。図1における一点鎖線は、筐体10内で用紙9が搬送されるときの主な搬送経路を示している。
【0020】
像形成手段2は、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)という4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置2Y,2M,2C,2Kにて構成されている。実施の形態1における4つの作像装置2(Y,M,C,K)は、図1に示す筐体10の内部において右肩上がりに傾いた状態で並ぶよう配置されている。
【0021】
4つの作像装置2(Y,M,C,K)はいずれも、図1図2に示されるように、矢印で示す方向に回転する像保持手段の一例である感光ドラム21を有している。
また作像装置2(Y,M,C,K)はいずれも、その感光ドラム21の周囲に、感光ドラム21の像保持領域を帯電する帯電装置22と、感光ドラム21の帯電された像保持領域に画像情報に応じた露光を行って静電潜像を形成する露光手段の一例である露光装置23と、感光ドラム21の像形成面に形成された静電潜像を対応する色のトナーで現像してトナー像にする現像装置24(Y,M,C,K)と、感光ドラム21の像形成面を清掃する第1清掃装置26等の機器を配置している。
図1では便宜上、符号21から24、26をブラック(K)の作像装置2Kには全て記載し、他の色の作像装置2Y,2M,2Cにはその一部のみを記載して残り一部の記載を省略している。
【0022】
このうち帯電装置22は、接触帯電部材の一例である帯電ロール221を用い、その帯電ロール221に給電装置15から所要の帯電用電圧を供給して帯電を行う接触帯電方式の帯電装置を適用している。図2中の符号223は、帯電ロール221に接触してロール表面を清掃する清掃ロールである。
また、現像装置24(Y,M,C,K)は、その本体(ハウジング)241に収容される現像剤におけるトナーの色が上記4色(Y,M,C,K)のいずれか1色である点で互いに異なる以外はほぼ同じ構成になっている。すなわち、現像装置24(Y,M,C,K)は、図2に示されるように、その本体241内に、現像剤を保持して感光ドラム21と対向する現像工程域を通過させるよう回転して搬送する現像ロール242と、本体241内の現像剤を撹拌しながら現像ロール242に供給するよう回転して搬送するオーガ等の攪拌部材243と、現像ロール242に保持させる現像剤の量(厚さ)を規制する層厚規制部材244等が配置されて構成されている。現像ロール242は、給電装置15から所要の現像用電圧が供給されて現像を行う。
【0023】
中間転写手段3は、筐体10の内部において像形成手段2としての作像装置2(Y,M,C,K)の上方側に配置されている。
この中間転写手段3は、作像装置2(Y,M,C,K)でそれぞれ形成されるトナー像を一次転写で受けて保持した後に用紙9に二次転写する位置まで搬送するよう回転する中間転写ベルト31と、作像装置2(Y,M,C,K)の各感光ドラム21に形成された各トナー像を中間転写ベルト31の外周面の像保持領域にそれぞれ一次転写させる一次転写装置33と、中間転写ベルト31上のトナー像を用紙9に二次転写させる二次転写装置35と、中間転写ベルト31の外周面を清掃する第2清掃装置36等の機器を配置して構成されている。
【0024】
中間転写ベルト31は、複数の支持ロール32a~32dに架け回された状態で、作像装置2(Y,M,C,K)の各感光ドラム21と二次転写装置35等を順次通過しながら矢印で示す方向に回転するようになっている。支持ロール32aは駆動ロールとして、支持ロール32bは二次転写対向ロールとして、それぞれ構成されている。
また、一次転写装置33は、図1図2に示されるように、接触転写部材の一例である一次転写ロール331を用い、その一次転写ロール331に給電装置15から所要の一次転写用電圧を供給して一次転写を行う接触転写方式の転写装置を適用している。
さらに、二次転写装置35は、図1図3に示されるように、接触転写部材の一例である二次転写ロール351を用い、その二次転写ロール351に給電装置15から所要の二次転写用電圧を供給して二次転写を行う接触転写方式の転写装置を適用している。
【0025】
給紙手段4は、用紙9を収容する用紙収容体41、用紙9を用紙収容体41から1枚ずつ送り出す送出装置43等の機器を配置して構成されている。給紙手段4から送り出された用紙9は、用紙搬送ロール45、図示しない搬送ガイド等で構成される給紙搬送路を経由して、中間転写手段3における中間転写ベルト31と二次転写装置35との間になる二次転写位置まで搬送される。
【0026】
定着手段5は、中間転写手段3の二次転写位置の上方側に配置されている。定着手段5は、筐体50の内部空間に、加熱用回転体51、加圧用回転体52等の機器を配置して構成されている。定着手段5から定着後に送り出される用紙9は、用紙搬送ロール47、図示しない搬送ガイド等で構成される排出経路を経由して、排出収容部12まで搬送される。
【0027】
<二次転写ロール>
二次転写ロール351は、この発明のロール6の一例として構成されている。
【0028】
二次転写ロール351は、図3図5等に示されるように、軸61と、軸61に設けられる弾性層62および表面層63と、軸61のうち弾性層62の軸方向Dの両端面62eからそれぞれ突出する両端部61a,61bに弾性層62の端面62eに接触した状態でそれぞれ装着される環状手段の一例である環状部材64とを備えた構造からなるものである。
【0029】
図4において符号65は、軸61の両端部61a,61bを保持して二次転写ロール351全体を図示しない支持フレーム等の装着部に取り付ける際に使用される非導電性のホルダーを示す。また符号66は二次転写ロール351が図示しない回転駆動装置から伝達される回転動力を受けるギヤと二次転写ロール351以外の回転部品へ回転動力を中継して伝える中継ギヤとからなる二段ギヤを示し、符号67はホルダー65と後述する環状部材(64)との隙間を覆って隠す非導電性のカバーを示す。
2つのホルダー65内には、軸61の両端部61a,61bを回転可能に支持する軸受が配置されており、カバー67のある側のホルダー65には給電装置15からの二次転写用電圧を軸61に接して供給する図示しない給電部材が配置されている。給電部材は、二次転写ロール351の装着時に、給電装置15からの送電部材と接触して接続された状態になる。
【0030】
軸61は、その全体が所要の径および長さからなるほぼ円柱形状の部材であり、ステンレス鋼(SUS)等の導電性を有する材料で構成されている。
実施の形態1における軸61は、図6(A)等に示されるように、その両端部61a,61bのうち環状部材64を装着する部分が、外径を大小に異ならせた大径部612および小径部613からなる段付き部分として形成されている。大径部612は、弾性層62が設けられる部分と同じ径になっている。小径部613は、大径部612よりも外径が小さい部分である。図6(A)では弾性層62および表面層63を省略している。
【0031】
また軸61は、図5図6(A)等に示されるように、小径部613よりも外側に、更に外径が2段階で小さくなる第2の小径部614および第3の小径部615が形成されている。第2の小径部614と第3の小径部615は、ホルダー65の取付けと軸受の取付けのために使用される。
この軸61には、二次転写が行われるときに、ホルダー65内にある図示しない給電部材を介して5kVから7kVの二次転写用電圧が供給されるようになっている。
【0032】
弾性層62は、所要の層厚からなる弾性変形し得る層であり、導電性の発泡材料(導電性発泡ECO/NBR)等の材料を用いて構成されている。
実施の形態1における弾性層62は、軸61の大径部612の両端部を少し残した状態で形成されている。また弾性層62は、体積抵抗率が例えば106~109Ω・cmの範囲内になるよう構成されている。
【0033】
表面層63は、離型性等の所要の機能を付すための表面層である。
実施の形態1における表面層63は、離型層として構成されており、ポリイミド等の材料を用いて、弾性層62の外周面を覆うように形成されている。また表面層63は、体積抵抗率が例えば108~1012Ω・cmの範囲内になるよう構成されている。
また表面層63は、図5等に示されるように、弾性層62の両端部61a,61bから所要の長さだけ迫り出した状態で形成されている。図5等における符号63bは、表面層63の迫り出し部分を示している。
【0034】
環状部材64は、軸61の弾性層62の両端部61a,61bから突出する両端部61a,61bに対して弾性層62の端面62eに接触した状態で装着される非導電性(体積抵抗率:1015Ω・cm以上)の部材であり、カーラーとも称される部材である。環状部材64は、ポリアセタール(POM)成形材料(M90-44)等の材料を用いて所要の形状に形成されている。
【0035】
実施の形態1における環状部材64は、図5(B)、図6(B)に示されるように、軸61の上記段付き部分における小径部613および大径部612にそれぞれ嵌め入れて装着される小径部641および大径部642を有する2段形状の部材として構成されている。小径部641の内側には、軸61の小径部613が嵌め入れられるよう円柱状に貫通した小径の装着孔(空洞)643が形成されている。大径部642の内側には、軸61の大径部612が嵌め入れられるよう小径部641に向けて窪んだ大径の装着孔(凹部)644が形成されている。小径の装着孔643と大径の装着孔644との境界部は、図7に示されるように小径の装着孔643から大径の装着孔644に向けて拡がる勾配からなるテーパー面645が形成されている。
【0036】
ところで、本発明者の研究によれば、二次転写ロール351として、例えば図15(A)に示されるように、上記環状部材64に代えて段付きの形状でない点で異なるのみの比較用の環状部材640を、軸61の端部に弾性層62の端面62eに接触させた状態で装着した比較例1のロール60Xを適用した場合には、次の不具合があることが確認されている。なお、このときの環状部材640は、軸61の一端部に対して圧入等の手段により強固に装着されている。
すなわち、この比較例1のロール60Xは、5~7kV程度の二次転写用電圧を供給する二次転写ロール351として使用した場合、一定の時間(例えば100時間以上)が経過したときに放電が発生することがあった。このときの放電は、ロール60Xの軸61から中間転写ベルト31にむけて発生したものと推測される。
【0037】
また、この放電が発生したロール60Xについて調べたところ、図15(B)に示されるように、環状部材640と弾性層62の端面62eとの間に、軸61に至る小さい隙間100が存在していることが確認された。このときの隙間100は、図15(B)に例示されるように環状部材640が弾性層62の端面62eから離れるよう軸方向Dに僅かにずれたことで生じたものであると考えられる。また、この隙間100は、環状部材640の周方向全域にわたって存在するように発生していた。
【0038】
そこで、二次転写ロール351としてのロール6においては、図6から図9に示されるように、軸61の両端部61a,61bの環状部材64が装着される部分に環状部材64の軸方向Dの装着位置を固定する固定部71を設け、また環状部材64の内周面(641a)の軸方向Dにおける一部に軸61の固定部71で固定される被固定部73を設けている。
【0039】
固定部71は、図6(A)等に示されるように、軸61の環状部材64が装着される部分が大径部612および小径部613からなる段付き部分になっているので、その段付き部分のうちの小径部613に設けられている。
【0040】
実施の形態1における固定部71は、図6(A)、図8(A)等に示されるように、軸61の小径部613の周方向全域に連続した溝(凹部の一例)として形成されている。周方向は、軸方向Dとほぼ直交(90°±1°の角度で交差)する方向である。また固定部71の溝は、断面形状がほぼ四角形からなり、所要の幅w1および深さd1で小径部613の周方向の全域に連続している円環状の溝である。
【0041】
一方、被固定部73は、図6(B)等に示されるように、環状部材64が小径部641および大径部642を有する2段形状であり、軸61の固定部71が設けられた小径部613に装着される部分が小径部641になるので、その小径部641における小径の装着孔643の内周面641aに設けられている。
この被固定部73は、軸61にある固定部71の溝に嵌め入れられて少なくとも軸方向Dには変位しない形状からなるものである。また被固定部73は、軸61にある固定部71の溝に嵌め入れられたとき、環状部材64の大径部642の端面64eが弾性層62の端面62eと接触した状態になる位置に設けられる。
【0042】
実施の形態1における被固定部73は、図6(B)、図7図8(B)等に示されるように、環状部材64の小径部641における内周面641aの周方向に間隔をあけて複数(本例では3つ)形成されている。また被固定部73は、小径部641における内周面641aから所要の幅w2および高さh1で隆起して周方向に所要の長さmで円弧状に曲がって延びる板状の突起(凸部の一例)として形成されている。
この場合、被固定部73の幅w2は、固定部71の溝の幅w1よりも極僅かに狭い幅である。また被固定部73の高さh1は、固定部71の溝の深さd1よりも僅かに低い高さであり、例えば0.01~0.06mm程度の値である。さらに被固定部73の1つの長さmは、被固定部73が小径部641における内周面641aの周方向に間隔をあけて3つ設けるので、その内周面641aの周長の1/3よりも短い長さ(例えば1/18程度の長さ)である。
【0043】
また、実施の形態1における二次転写ロール351としてのロール6では、環状部材64の内周面のうち被固定部73を形成する部分以外の部分を、軸61の端部61a,61bに圧入される圧入部分75として構成している。
【0044】
ここで、実施の形態1における環状部材64の内周面のうち被固定部73を形成する部分以外の部分については、被固定部73を小径部641における内周面641aの周方向に沿う部分に形成しているため、その小径部641の内周面641aではない大径部642の内周面642aとする。
また、上記圧入とは、環状部材64の圧入部分75を、圧力を加えて押し込むことにより軸61の装着部分に装着することをいう。このため、圧入部分75は、例えば、図8に示されるように、環状部材64の圧入する大径部642の内周面642aにおける内径Diを、その装着先の部分となる軸61の大径部612の外径Deと同じ寸法又は極僅か小さい寸法にすることと、環状部材64に一定以上の力をかけたときに大径部642等が破損することなくその径が一時的に広がるよう変形し得る材料で製作することで構成される。
【0045】
さらに、実施の形態1における二次転写ロール351としてのロール6では、図7図8(B)等に示されるように、環状部材64の弾性層62と接する端面64eに、弾性層の端面62eに食い込む突出部80を設けている。
【0046】
実施の形態1における突出部80は、図8(B)に示されるように、環状部材64の弾性層62の端面62eと接触する部分である大径部642の端面64eから、その端面64eの厚さt2よりも薄い厚さt1(<t2)で軸方向Dとほぼ平行して突出した形状からなる部分である。突出部80の厚さt1は、例えば、環状部材64の端面64eの厚さt2の1/2よりも薄い厚さにするとよい。
また、この突出部80は、図7に示されるように、環状部材64の円環状の端面64eにおいて円環状に連続する形状の突出部として形成されている。さらに、突出部80は、図9に示されるように、環状部材64を装着した際に軸61と接触しない位置に設けられている。実施の形態1では、突出部80を、図7図8(B)等に示されるように大径部642の端面64eにおける厚さ方向のほぼ中間の位置に設けている。
【0047】
この二次転写ロール351としてのロール6は、例えば、次のような順番で組み立てられる。
【0048】
まず、二次転写ロール351における軸61の大径部612および小径部613に、環状部材64を装着する。このときの二次転写ロール351は、軸61の大径部612の所定の範囲に弾性層62と表面層63をこの順で設けてなるロールである。
【0049】
この際、環状部材64は、その大径部642が軸61の大径部612に圧入されるとほぼ同時に、その小径部641が軸61の小径部613に装着される。
【0050】
特に環状部材64の小径部641が軸61の小径部613に装着されるときには、図9に示されるように、環状部材64の小径部641の内周面641aにある3つの突起からなる被固定部73が、軸61の小径部613にある連続した溝形状の固定部71に嵌め入れられた状態になる。
【0051】
これにより、環状部材64における3つの被固定部73は、軸61の溝状の固定部71の軸方向Dにおける左右の溝側壁面に接触して軸方向Dに対する移動が阻止される。この結果、環状部材64は、軸61に対してその軸方向Dに変位することなく固定された状態に保たれ、その結果として、環状部材64が弾性層62の端面62eに対して接触する状態が保持される。
【0052】
また、環状部材64の大径部642が軸61の大径部612に装着されると、図9に示されるように、その大径部642の端面64eが突出部80を弾性層62の端面62eに喰い込ませた状態で弾性層62の端面62eと接触した状態になる。このとき、突出部80は、弾性層62の端面62eの一部をその内側に軸方向Dに沿って押し込むように弾性変形させた状態にすることで食い込むことになる。
【0053】
これにより、環状部材64は、大径部642の端面64eが弾性層62の端面62eに接触した状態になることにとどまらず、環状部材64に突出部80を設けない場合に比べて、環状部材64の端面64eが弾性層62の端面62eに圧着された状態に保たれ、弾性層62の端面62eとの間に隙間が更に生じにくくなる。
また、突出部80は、環状部材64の大径部642の端面64eに円環状に連続した形状の突出部として形成されているので、弾性層62の円環状の端面62eに途切れることなく連続した状態で食い込むようになり、このため環状部材64は弾性層62の端面62eとの間に隙間が更に生じにくくなる。
また、突出部80は、環状部材64を装着した際に軸61と接触しない位置に設けられているので、弾性層62は突出部80の食い込みにより弾性変形しても軸61(の大径部612)の周面から剥がれにくくなり、環状部材64の大径部642の端面64eと軸61の外周面との間に新たな隙間が発生するおそれもない。
【0054】
さらに、環状部材64の大径部642が軸の大径部612に装着されるときには、大径部642の内周面642aが圧入部分75として構成されているので、圧入された状態で装着される。
これにより、環状部材64は、軸61の軸方向Dへの移動が発生しにくくなり、上記固定部71と被固定部73との嵌め合いによる軸方向Dへの移動が阻止される作用とも協働して軸方向Dに対して強固に装着された状態に保たれる。しかも、このときの環状部材64は、軸61の周方向への移動も発生しにくくなって強固に装着された状態に保たれる。
【0055】
続いて、二次転写ロール351は、図4に示されるように、軸61の一方の端部61aに、軸受を有するホルダー65を装着した後に、そのホルダー65を外側からほぼ囲むような状態でカバー67を取り付ける。また二次転写ロール351は、その他方の端部61bに、二段ギヤ66を取り付けた後に、その二段ギヤ66の外側ギヤの内側に差し込むような状態でホルダー65を取り付ける。これにより、二次転写ロール351は、図4に示されるような外観からなるロール6として完成する。
【0056】
また、完成した二次転写ロール351は、画像形成装置1の二次転写装置35における装着部に装着される。また、二次転写ロール351は、画像形成装置1における二次転写位置に正式にセットされると、その軸61が給電装置15と通電可能な状態になる。
【0057】
そして、二次転写ロール351としてのロール6は、給電装置15から5~7kV程度の二次転写用電圧を供給して二次転写工程に一定の時間(例えば100時間以上)が経過するまで使用したところ、軸61に固定部71を設けずかつ環状部材64に被固定部73を設けない場合に比べて、環状部材64と弾性層62の間に生じる隙間を経由して放電が発生することが抑制されることが確認された。
また、このときの二次転写ロール351について検査したところ、図9(A)に示されるように、環状部材64と弾性層62の端面62eとの間に隙間の存在は確認されなかった。なお、この二次転写ロール351においては、表面層63の両端部が弾性層62の端面62eよりも外側に迫り出した迫り出し部分63bを有しているので、これによっても環状部材64と弾性層62の端面62eとの間に生じる隙間に起因した放電が発生しにくい状態になる。
【0058】
そしてまた、このロール6からなる二次転写ロール351を二次転写装置35に適用した画像形成装置1にあっては、その二次転写ロール351において経時等の要因により環状部材64と弾性層62の間に生じる隙間を経由して放電が発生することが抑制されるので、かかる放電による二次障害の発生も抑制される。このときの二次障害とは、例えば、二次転写ロール351における弾性層62等の発泡材料への引火等の不具合である。
【0059】
[実施の形態2]
図10は、実施の形態2に係る二次転写ロール351としてのロール6Bを示すものである。
実施の形態2に係る二次転写ロール351としてのロール6Bは、図10図11に示されるように、環状部材64として突出部80を設けない環状部材64Bを適用して変更した以外は実施の形態1に係るロール6と同じ構成からなるものである。
【0060】
このロール6Bからなる二次転写ロール351は、環状部材64Bを軸61に装着した際、環状部材64Bの大径部642の端面64eが弾性層62の端面62eに対してそのままの面で接触した状態になり、実施の形態1における環状部材64(図9等を参照)のように突出部80による食い込みがない点で異なるのみで環状部材64Bが軸61(の大径部612および小径部613)に同様の状態で装着される。
【0061】
つまり、環状部材64Bは、その大径部642が軸61の大径部612に圧入されるとほぼ同時に、その小径部641が軸61の小径部613に装着される。
特に、環状部材64Bの小径部641が軸61の小径部613に装着されるときには、図10に示されるように、環状部材64Bの小径部641の内周面641aにある3つの突起からなる被固定部73が、軸61の小径部613にある連続した溝形状の固定部71に嵌め入れられた状態になる。
また、環状部材64Bの大径部642が軸の大径部612に装着されるときには、図10に示されるように、大径部642の内周面642aにおける圧入部分75が圧入された状態で装着される。
【0062】
そして、このロール6Bからなる二次転写ロール351においても、実施の形態1に係るロール6の場合とほぼ同様に、軸61に固定部71を設けずかつ環状部材64Bに被固定部73を設けない場合に比べて、環状部材64Bと弾性層62の間に生じる隙間を経由して放電が発生することが抑制される。
【0063】
参考までに、二次転写ロール351として、例えば図16(A)に示されるように、上記環状部材64Bに代えて、被固定部73を設けた円環状の第1環状部材640Yと圧入部分75として構成した円環状の第2環状部材640Zとの2つに分割して構成された比較用の環状部材を用い、この環状部材を軸61の一端部に第1環状部材640Yが弾性層62の端面62eに接触した状態になり、第2環状部材640Zが第1環状部材640Yに接触した状態となるように装着した比較例2のロール60Yを適用した場合には、次の不具合があることが確認されている。
【0064】
すなわち、この比較例2のロール60Yは、5~7kV程度の二次転写用電圧を供給する二次転写ロール351として使用した場合、一定の時間(例えば100時間以上)が経過したときに放電が発生することがあった。
また、この放電が発生したロール60Yについて調べたところ、図16(B)に示されるように、第1環状部材640Yと第2環状部材640Zとの間に、軸61に至る小さい隙間101が存在していることが確認された。このときの隙間101は、図16(B)に例示されるように第2環状部材640Zが第1環状部材640Yから離れるよう軸方向Dに僅かにずれたことで生じたものであると考えられる。
なお、このときのロール60Yでは、第1環状部材640Yと弾性層62の端面62eとの間に隙間が発生していなかった。
【0065】
[実施の形態3]
図12は、実施の形態3に係る二次転写ロール351としてのロール6Cの一部を示すものである。
実施の形態3に係るロール6Cは、図12に示されるように、固定部71を軸61Cの大径部612に設け、かつ被固定部73を環状部材64Cの大径部642の内周面642aに設けるようしたことと、小径部641を圧入部分75として構成したことで変更した以外は実施の形態2に係るロール6Bと同じ構成からなるものである。
【0066】
軸61Cの大径部612に設ける固定部71は、図12(A)に示されるように、実施の形態1における固定部71とほぼ同様の構成(図8(A))からなる溝状の固定部である。また、環状部材64Cの大径部642の内周面642aに設ける被固定部73は、図12(B)に示されるように、実施の形態1における被固定部73とほぼ同様の構成(図8(B))からなる3つの被固定部である。
また、環状部材64Cは、その小径部641の内周面641aを、軸61Cの小径部613に圧入する圧入部分75として構成した。
【0067】
このロール6Cにおける環状部材64Cは、その大径部642が軸61Cの大径部612に装着されるとほぼ同時に、その小径部641が軸61Cの小径部613に圧入される。
特に、環状部材64Cの大径部642が軸61Cの大径部612に装着されるときには、環状部材64Cの大径部642の内周面642aにある3つの被固定部73が、軸61Cの大径部612にある連続した溝形状の固定部71に嵌め入れられた状態になる。
また、環状部材64Cの小径部641が軸61Cの小径部613に装着されるときには、小径部641の内周面641aにおける圧入部分75が圧入された状態で装着される。
【0068】
そして、このロール6Cからなる二次転写ロール351においても、実施の形態2に係るロール6Bの場合とほぼ同様に、軸61Cに固定部71を設けずかつ環状部材64Cに被固定部73を設けない場合に比べて、環状部材64Cと弾性層62の間に生じる隙間を経由して放電が発生することが抑制される。
【0069】
[実施の形態4]
図13は、実施の形態4に係る二次転写ロール351としてのロール6Dの一部を示すものである。
実施の形態4に係るロール6Dは、図13図14に示されるように、溝状の固定部71を設ける小径部613の長さを長くした軸61Dを適用し、2段形状でない円筒状の環状部材64Dを適用し、その環状部材64Dの弾性層62に接触させる端面64eに近い側の部分に被固定部73を設けるとともに端面64eから遠い側の部分を圧入部分75として構成して変更した以外は実施の形態3に係るロール6Cと同じ構成からなるものである。
圧入部分75は、例えば環状部材64Dの内周面64aの内径Diを、軸61Dの小径部613の外径Dfと同じ寸法にすることで構成した。
【0070】
このロール6Dにおける環状部材64Dは、弾性層62に接触させる端面64eのある端部を先頭にして軸61Dの小径部613に装着される。
特に、環状部材64Dの端面64eに近い側の部分が軸61Dの小径部613に装着されるときには、環状部材64Dの内周面64aにある3つの被固定部73が、軸61Dの小径部613にある連続した溝形状の固定部71に嵌め入れられた状態になる。
また、環状部材64Dの端面64eから遠い側の部分が軸61Dの小径部613に装着されるときには、環状部材64Dの内周面64aにおける圧入部分75が圧入された状態で装着される。
【0071】
そして、このロール6Dからなる二次転写ロール351においても、実施の形態3に係るロール6Cの場合とほぼ同様に、軸61Dに固定部71を設けずかつ環状部材64Dに被固定部73を設けない場合に比べて、環状部材64Dと弾性層62の間に生じる隙間を経由して放電が発生することが抑制される。つまり、この一体構造の環状部材64Dを適用した場合は、上記比較例2のロール60Yのような隙間101(図16(B))が発生することが抑制される。
【0072】
[変形例]
この発明は、上記実施の形態1~4で例示した内容に何ら限定されるものではなく、各請求項に記載した各発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更することが可能である。このため、この発明は以下に例示するような変形例も含むものである。
【0073】
実施の形態1,2,4における環状部材64,64B,64Dは、その圧入部分75を省略してもよい。
なお、この圧入部分75を省略する場合は、環状部材64,64B,64Dが装着される軸61,61Dにおいて周方向への移動(回転)を阻止する構成を採用することが好ましい。その周方向への移動を阻止する構成としては、例えば、固定部71を被固定部73の周方向への移動を阻止する形状(被固定部73とほぼ合致する形状)にする構成や、軸61,61Dと各環状部材64,64B,64Dの両者に設ける軸方向Dに沿う溝に回転止めの棒状部材を挿入する構成などが挙げられる。
【0074】
実施の形態1~4におけるロール6等は、環状部材64,64B,64C,64Dを各軸61等の両端部61a,61bの一方に装着するものであってもよい。また、この発明のロール6等は、表面層63を設けない構造のものであっても構わない。また、表面層63を設ける場合は、その表面層63の迫り出し部63bを設けることを省略してもよい。
【0075】
また、実施の形態1~4におけるロール6等は、二次転写ロール351に適用する場合に限定されるものでなく、放電が発生し得る電圧を軸61に供給する他のロールとして適用することも可能である。他のロールとしては、例えば、一次転写ロール、帯電ロール、二次転写対向ロール、弾性層を設ける現像ロール等が挙げられる。
【0076】
さらに、この発明のロール6等を適用する画像形成装置は、この発明のロール6等を適用することが可能な画像形成装置であればよく、その形式、種類、画像形成方式等については特に限定されない。
【0077】
この他、上記各実施の形態におけるロール6等は、画像形成装置に適用する場合に限定されるものではない。
例えば、上記各実施の形態におけるロール6等を帯電付与ロールとして利用し、その帯電付与ロールによりシートの蛇行や巻きずれ等が発生しないように電気絶縁性シートにあらかじめ帯電により電荷を付与して、その電荷による静電気力により蛇行や巻きずれの発生を抑制するシート巻き取り装置に適用してもよい。具体的には、上記各実施の形態におけるロール6は、フィルムなどのシートを巻き取るシート巻き取り装置における帯電付与ロールとして適用される。この場合、その帯電付与ロールを適用したシート巻き取り装置にあっては、その帯電付与ロールによって帯電させられたフィルムが、そのフィルムを挟んで帯電付与ロールに対向している搬送ロールの表面に、電荷によって安定して巻き付けられるようになり、これにより蛇行や巻きずれが生じるのが抑制される。
また、上記各実施の形態におけるロール6等は、電圧を供給するロールとして他の用途に適用してもよく、さらには、電圧を供給しないロールとして他の用途に適用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
6 …ロール
61…軸(軸の一例)
61a,61b…両端部
62…弾性層
62e…端面
64…環状部材(環状手段の一例)
71…溝(固定部および凹部の一例)
73…突起(被固定部および凸部の一例)
75…圧入部分
80…突出部(食い込む突出部の一例)
351…二次転写ロール
612…軸の大径部
613…軸の小径部
641…環状部材の小径部
642…環状部材の大径部
D …軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16