(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241008BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 G
H05K3/00 K
(21)【出願番号】P 2020046544
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】松岡 良尚
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0008029(US,A1)
【文献】特開2018-182046(JP,A)
【文献】特表2016-517173(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003016(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0044096(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0001150(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0012380(US,A1)
【文献】特開2015-185777(JP,A)
【文献】特開2015-185735(JP,A)
【文献】特表2017-505541(JP,A)
【文献】特開平5-267848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層、コア層、プリプレグ層を複数層積層して積層基板を形成する工程と、
この積層基板を厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する工程と、
この貫通孔の内周面に、前記導体層に接続された導体ビアを形成する工程と、
この導体ビア内で前記積層基板の厚さ方向に沿う軸を回転中心として切削工具を回転させることにより前記導体ビアを切断して、前記厚さ方向に複数に分割する工程と、
を有し、
前記貫通孔は、前記積層基板の一方の面の側より、他方の面の側の内径が大きく、前記積層基板の一方の面から他方の面へ内径が漸次拡大し、
前記一方の面の側の第1貫通孔と、前記他方の面の側の第2貫通孔と、これら第1貫通孔と第2貫通孔との間に配置された同一内径の中間貫通孔とを
有し、
前記切削工具は、ドリルであって、該ドリルを前記導体ビアの軸線方向へ移動させることにより、前記導体ビアを複数に分割して中間貫通孔の上下で互いに分離し、
前記ドリルは、導体ビアの分割箇所に応じて、前記貫通孔の最大径部分と最小径部分との間の外径を有する複数種から選択して用いられる、
回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板および回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどで使用するCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのLSI(Large Scale Integration)は、伝送速度の高速化に伴い、それらLSIのピン数の増加の一方で基板サイズの縮小、高密度実装が要求されている。このため、部品間を伝送する配線数が増加する傾向にあり、LSIや部品の電源層接続や引き出しなどを行うために、多層構造の回路基板に多数のスルーホールビアを設けることが必要となり、このスルーホールビアにより回路基板の面積が占有されることがある。また、このスルーホールビアによる接続を回避しようとすると、結果として回路基板上の回路パターンを設けるべき配線エリアの確保が難しくなっている。
【0003】
特許文献1に記載された製造方法による多層構造の回路基板は、小径の第1の貫通孔の内周にビアとなる導体層を形成し、その後、前記第1の貫通孔より大径の第2の貫通孔を形成し、この第2の貫通孔の内周にビアとなる導体等を形成することにより、第1、第2の貫通孔に互いに独立したビアを設けた構成となっている。
【0004】
特許文献2に記載された多層構造の回路基板は、大小二種の径のドリルによる機械加工により貫通孔を形成して、各貫通孔にビアとなる導体層を形成し、さらに、より大径のドリルによりビアとなる導体層を部分的に除去することにより、互いに分割された複数のビアを形成する構成となっている。
【0005】
特許文献3に記載された多層構造の回路基板は、貫通孔の内面に形成されたビアとなる導体層を貫通孔より小径のドリルにより切削する製造方法についての構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-185735号公報
【文献】特開2005-235963号公報
【文献】特開平8-330735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の回路基板は、貫通孔を形成する機械加工工程と、その内周に導体層を形成するめっき等の化学的加工工程とを繰り返し行うことが必要であって、製造工程が複雑化するという課題がある。
【0008】
また特許文献2に記載の回路基板は、貫通孔を形成する機械加工工程と、その内周に導体層を形成するためのめっき等の化学的加工工程と、形成された導体層の一部を除去する機械加工工程と、を必要とし、後で行われる機械加工工程により不要な導体層を全部除去することが必要であるため、除去される導体層が無駄になるという課題がある。
【0009】
また特許文献3に記載の回路基板は、ドリルを貫通孔内で移動させながら切削加工する工程が開示されているが、貫通孔より小径のドリルの先端の切刃がいかなる作用によって貫通孔の内周のビアを所望の箇所で切断するかを明確に示すものではない。
【0010】
この発明は、層間の接続のためのビアを備えた回路基板の製造を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1の態様にかかる回路基板は、導体層、コア層、プリプレグ層を繰り返し複数層にわたって積層して構成された積層基板と、この積層基板を厚さ方向に貫通して、前記積層基板の一方の面から他方の面へ内径が漸次拡大する貫通孔と、この貫通孔の内周に前記積層基板の厚さ方向へ互いに分離した複数の領域に設けられ、各領域に対応する積層 基板の導体層に電気的に接続された複数の導体ビアと、を有する回路基板。
【0012】
本発明の第2の態様にかかる回路基板の製造方法は、導体層、コア層、プリプレグ層を複数層積層して積層基板を形成する工程と、この積層基板を厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する工程と、この貫通孔の内周面に、前記導体層に接続された導体ビアを形成する工程と、この導体ビア内で前記積層基板の厚さ方向を回転中心として前記切削工具を回転させることにより前記導体ビアを切断して、複数に分割する工程とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各層の導体層を複数の分割ビアにより接続した回路基板の製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の態様の最小構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の態様の最小構成例にかかる回路基板の断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の基板の貫通孔を設ける前の断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の基板に貫通孔を設けた後の断面図である。
【
図5】
図4の貫通孔に導体めっきをほどこした状態の断面図である。
【
図6】
図4のビアに切削工具を挿入した状態の断面図である。
【
図7】
図6の工程によりビアが分割された回路基板における回路を示す断面図である。
【
図8】
図7の変形例における電流の流れを示す断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の回路基板の貫通孔を設けた後の断面図である。
【
図10】
図9の貫通孔に導体めっきをほどこした状態の断面図である。
【
図11】
図10のビアに切削工具を挿入した状態の断面図である。
【
図12】
図11の工程によりビアが分割された回路基板における回路を示す断面図である。
【
図13】
図11に示す切削工具と貫通孔の内径との関係の説明図である。
【
図14】本発明の第3実施形態の基板の貫通孔を設けた後の断面図である。
【
図15】
図14の貫通孔に導体めっきをほどこした状態の断面図である。
【
図16】
図15のビアに切削工具を挿入した状態の断面図である。
【
図17】
図16の工程によりビアが分割された回路基板における回路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の態様にかかる回路基板の最小構成について、
図1を参照して説明する。
符号1は積層基板で、この積層基板1は、導体層2、コア層3、プリプレグ層4を繰り返し複数層にわたって積層して構成されている。この積層基板1には、これを厚さ方向に貫通して、前記積層基板1の一方の面(
図1の上面)から他方の面(
図1の下面)へ内径が漸次拡大する貫通孔5と、この貫通孔5の内周に前記積層基板1の厚さ方向へ互いに分離した複数の領域に設けられ、各領域に対応する積層基板1の導体層2に電気的に接続された複数の導体ビア6が設けられている。
【0016】
図示例の貫通孔5は、一方の面側の内径をd1、他方の面側の内径d2とすれば、
d1<d2の関係となっている。また前記導体ビア6は、例えば貫通孔5の内面に金属めっきを施すこと、あるいは、相似形状のテーパー筒状導体を挿入することにより形成されていて、上下に二つに分割されている。
【0017】
上記構成の回路基板は、上下で内径が異なる貫通孔5の内面に形成された導体ビア6の形成に際し、貫通孔5の内面を金属等の導体のめっき等により被覆しておき、これを前記d1とd2との中間の外径を有するドリル等の切削工具切削することにより分離して前記複数の導体ビア6とすることができる。したがって、切削工具の外径を最適に設定することにより、切削工具を軸方向へ移動させるという単純な工程によって、所要の箇所で分割された複数の導体ビアを備えた回路基板を製造することができる。
【0018】
上記構成の回路基板にあっては、
図1矢印Aで示すように最上部の導体層2から上部の導体ビア6を経由して上から二段目の導体層2Aへ到る経路で電流が流れることができる。すなわち、最上部の導体層2により構成された導体回路と二段目の導体層2Aにより構成された導体回路とを上部の導体ビア6により電気的に接続することができる。また、矢印Bで示すように、下部の導体ビア6を経由して、最下段の導体層2から下部の導体ビア6を経由して、下から二段目の導体層2Bへ到る経路で電流が流れることができる。
【0019】
本発明の第2の態様にかかる回路基板の製造方法の最小構成について、
図2を参照して説明する。
第2の態様にあっては、導体層2、コア層3、プリプレグ層4を複数層積層して積層基板1を形成する工程と、この積層基板1を厚さ方向に貫通する貫通孔5を形成する工程と、この貫通孔5の内周面に、前記導体層2に接続された導体ビア6を形成する工程と、この導体ビア6内で前記積層基板1の厚さ方向を回転中心として切削工具7のシャンク8を回転させることにより前記導体ビア6を切断して、上下方向へ分割された複数の導体ビア6を形成する工程とにより、回路基板を製造する。
【0020】
上記構成の製造方法にあっては、前記切削工具7を回転させるとともに、回転中心軸方向と、回転中心と交差する方向とへ移動させることにより、貫通孔5の内面を覆う導体ビア6を積層基板1の厚さ方向に分割することができる。例えば、二段目の導体層2Aとその下側の導体層2Bの間で導体ビア6を切断、除去することにより、導体ビア6を上下に分割して、最上部の導体層2から二段目の導体層2Aへ到る経路で電流が流れることができる。また、下部の導体ビア6を経由して、最下段の導体層2から下部の導体ビア6を経由して、下から二段目の導体層2Bへ到る経路で電流が流れることができる。
【0021】
(第1実施形態)
図1および2を具体化した本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法について、
図3~
図8を参照して説明する。なお、図中
図1、2と共通の構成には同一符号を付し、説明を簡略化する。
図3に示すように、導体層2、コア層3を積層して積層基板1Aを形成する。
図4に示すように、積層基板1を厚さ方向に貫通する貫通孔5を形成する。図示例では、内径が一定の貫通孔5が形成されている。
図5に示すように、貫通孔5の内周に金属等の導体によりめっき等の処理を施すことにより、一体の導体ビア16を形成する。また導体ビア16は、各導体層2の表面を覆うように形成されて、電気的に接続される。
【0022】
図6に示すように、貫通孔5(詳細には、貫通孔5の内周の導体ビア16を構成するめっき層)の内面の内径より回転半径が小さい切削工具7、例えば、JISB0172に定義された円周、端面で回転切削するフライスカッターを貫通孔5内に挿入し、フライス盤等により、回転中心となるシャンク8の軸線方向への移動と、シャンク8と直交する方向への移動とを行わせることによって、導体ビア16を
図6の上下方向へ切断し、複数の導体ビア6に分割する。
【0023】
図6に示す切削工具7による機械加工によって、二段目の導体層2Aとその下側の導体層2Bの間で導体ビア16を切断、除去することにより、
図7に示すように、導体ビア16を上下に分割することができる。この結果、矢印Aで示すように、上部の導体ビア6を経由して、最上部の導体層2から二段目の導体層2Aへ到る経路で電流が流れることができる。また、矢印Bで示すように、下部の導体ビア6を経由して、最下段の導体層2から下部の導体ビア6を経由して、下から二段目の導体層2Bへ到る経路で電流が流れることができる。したがって、予め、導体ビア6を切断することを想定して配線パターンを設計しておくことにより、同一の貫通孔5に設けられた、もともとは一つの円筒であった導体ビア16を複数系統の回路(回路パターン)で使用することが可能となる。すなわち、もともと一つであった導体ビアを複数の回路で使用することが可能となるため、積層基板1の異なる層にまたがる配線間の乗り換えに使用していた導体ビアの個数が少なくなり、導体ビアによる配線性(積層基板表面の実質的に配線することができる領域の減少による配線の自由度)の低下が緩和され、配線性の向上および部品実装の高密度化が可能となる。
【0024】
図8は、導体ビア16を3つに分割した場合の変形例を示す。
図8に示すように、二段目の導体層2Aとその下側の導体層2Cの間で導体ビア16の一部を周方向に連続して切断、除去することにより、一体の円筒状であった導体ビア16を上の導体ビア6と下の導体ビア6とに分割することにより、矢印Aで示すように、最上部の導体層2から二段目の導体層2Aへ到る経路で電流が流れることができる。また、導体層2Dとその下側の導体層2Bとの間で、さらに導体ビア16の一部を周方向に連続して切断、除去することにより、矢印Cで示すように、中間部分の一の導体層2Cから中間部分の導体ビア6を経由して他の導体層2Dへ到る経路で電流が流れることができる。さらに、前記導体ビア16の切断により、矢印Bで示すように、最下部の導体層2から導体層2Bへ到る経路で電流が流れることができる。
【0025】
すなわち、切削加工を用いて、導体ビア16を同軸上で二分割、三分割して、互いに電気的に絶縁することにより、積層基板1A中に、分割された導体ビア6の数に対応する数の回路を設けることができる。したがって、積層基板1Aの面方向に沿って複数箇所に各々導体ビアを設ける場合、換言すれば複数本にわたって導体ビアを設ける場合に比して、回路パターンの形成に利用することができる基板上の面積が導体ビアにより奪われることが少なく、積層基板1Aの面積を有効に利用することができる。
【0026】
(第2実施形態)
図1を具体化した本発明の第2実施形態について、
図9~
図13を参照して説明する。なお、図中
図1~
図8と共通の構成要素には共通の符号を付し、説明を簡略化する。
第2実施形態の積層基板1Bは、
図9の上側の一方の面から
図9の下側の他方の面へ漸次内径が拡大するテーパー状の貫通孔5Aを有している。
図9は、導体層2、コア層3、プリプレグ層4を有する積層基板1Bに前記テーパー状の貫通孔5Aを形成した後の形状を示している。前記貫通孔5Aは、例えば、最小径に相当する外径のドリルによって下穴としての貫通孔を形成した後、形成すべきテーパーに対応する形状のリーマ等の切削工具により漸次内径を拡大する機械加工、あるいは、フライスカッターを用いた機械加工等によって形成される。
【0027】
図10は、
図9で形成された貫通孔5Aの内面に前記導体等2に電気的に接続された導体ビア16Aを形成した状態を示している。すなわち、
図10の工程では、前記貫通孔5Aの内周に金属等の導体によりめっき等の処理を施すことにより、一体の導体ビア16Aを形成する。この導体ビア16Aは、貫通孔5Aの内周面に一定厚さで形成されているため、貫通孔5Aと同等の傾斜のテーパー状をなしている。
【0028】
前記導体ビア16Aに下方(内径が大きい側)から切削工具7A、図示例では、JISB0171に定義された先端に切れ刃を有するドリル等の工具、を挿入し、シャンク8の軸線を中心として回転させると、切削工具7Aの先端の外径に相当する内径となる迄、導体ビア16Aが切削され、除去される。
【0029】
前記切削工具7Aは、詳細には、
図13に示すように、外径Dxを有し、この外径Dxは、貫通孔5Aの最小径d1、最大径d2に対して、d1<Dx<d2の関係を有する。
すなわち、導体ビア16A内に切削工具7Aを回転させながら挿入すると、導体ビア16Aの内径が切削工具7Aの外径Dxと一致する箇所から切削工具7Aの先端の切れ刃により切削、除去され始める。そして、切削工具7Aの外径Dxが貫通孔5Aの内径dxと一致するまで挿入されるところに達すると、所定範囲の導体ビア16A、より具体的にはめっきによる導体層が除去されて、導体ビア16Aが複数の導体ビア6に分割される。このドリルによる加工は、切削工具の軸方向への移動のみにより行うことができるから、ボール盤等の比較的簡易な工作機械によって行うことができる。
【0030】
図11は、切削工具7Aにより導体ビア16Aを切削する途中の状態を示し、切削工具7Aを所定の深さ迄挿入すると、
図12に示すように、上側と下側の2箇所に、互いに電気的に絶縁された導体ビア6が形成される。
すなわち、矢印Aで示すように、上面の導体層2、上側の導体ビア6、導体層2Aを経由する経路で電流が流れることができる。また、矢印Bで示すように、下面の導体層2、下側の導体ビア6、導体層2Bを経由する経路で電流が流れることができる。
【0031】
なお、
図11に示す切削工具7Aより小径の切削工具を用いて切削を行なうことにより、
図12よりさらに上部で導体ビア16Aを切断、除去することにより、導電ビア16Aをさらに多くの箇所で分断して導電ビア6の数を増やすことができる。なお
図11に示す切削工具7Aによる切削の前に、これより大径の切削工具を用いて切削を行うことにより、
図12より下部で導体ビア16Aを切断、除去してもよい。
【0032】
すなわち、大径から小径へ切削工具(ドリル)の径を変更しながら切削を行おうことにより、導体ビア16Aを軸線方向(基板の厚さ方向)へ二分割、さらには回路基板の設計上の要請に応じて三分割して、互いに電気的に絶縁し、複数の導体ビアを形成することができる。
したがって、積層基板の面方向に沿って複数箇所に導体ビアを設ける場合に比して、回路パターンの形成に利用することができる基板上の面積が導体ビアにより占められることが少なく、積層基板1Aの面積を有効に利用することができる。
なお、切削工具としてフライスカッターを用いれば、前述のドリルを用いる場合のような径の異なるドリルへの変更を伴うことなく、切削工具の軸方向への移動と軸と交差する方向への移動とによって所定箇所で導体ビア16Aを分割することができる。
【0033】
上記の切削工具による機械加工によって、二段目の導体層2Aとその下側の導体層2Bの間で導体ビア6を切断、除去することにより、
図7に示すように、導体ビア16Aを上下に分割することができる。この結果、矢印Aで示すように、上部の導体ビア16Aを経由して、最上部の導体層2から二段目の導体層2Aへ到る経路で電流が流れることができる。また、矢印Bで示すように、下部の導体ビア16Aを経由して、最下段の導体層2から下から二段目の導体層2Bへ到る経路で電流が流れることができる。
【0034】
(第3実施形態)
図1を具体化した本発明の第3実施形態について、
図14、15を参照して説明する。なお、図中
図1~
図13と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を簡略化する。
図14の積層基板1Cは、
図14の上側の一方の面より、
図14の下側の他方の面の側で内径が大きくされた貫通孔5を有している。詳細には、
図14に示す一方の面から他方の面へ向けて、貫通孔5Aの内径に相当する外径のドリル等の切削工具を挿入して、少なくとも、積層基板1Cの厚さ方向の途中まで貫通する小径の貫通孔5Aを形成し、その後、他方の面から一方の面へ向けて前記貫通孔5Aより大径の貫通孔5Bに相当する外径のドリル等の切削工具を挿入して、積層基板1Cの厚さ方向の途中まで貫通する大径の貫通孔5Bを形成する。
【0035】
このようなドリルによる切削加工の繰り返しにより、
図14に示すような段状に内径が異なる貫通孔5が形成される。
図15は、
図14に示す貫通孔5A、5Bの内面に前記導体等2に電気的に接続された導体ビア16Aを形成した状態を示している。すなわち、
図15の工程では、前記貫通孔5Aの内周に金属等の導体によりめっき等の処理を施すことにより、一体の導体ビア16Bを形成する。この導体ビア16Bは、貫通孔5A、5Bの内周面に一定厚さで形成されている。
【0036】
図15に示す状態において、積層基板1Cの他方の面(下側)から下側の貫通孔5Bの内周を被覆する導体ビア16Bの内径より僅かに小さく、上側の貫通孔5Aの内径より大きな外径を有するドリルを挿入し、貫通孔5A~5Bの間の部分の導体ビア16Bを切断、除去すると、貫通孔5Aの内周部分と貫通孔5Bの内周部分とで導体ビア16Bが分割される。すなわち、上下に分割された二つの導体ビア6が形成され、各導体ビア6は、導体層2A、2Bに接続される。
なお、
図14、15の例に代えて、さらに多段に内径が異なる貫通孔5を形成して、導体ビア16Bをさらに多数に分割してもよい。
【0037】
上記の切削工具による機械加工によって、二段目の導体層2Aとその下側の導体層2Bの間で導体ビア16Bを切断、除去することにより、
図16に示すように、導体ビア16Bを上下に分割することができる。この結果、矢印Aで示すように、上部の導体ビア6を経由して、最上部の導体層2から二段目の導体層2Aへ到る経路で電流が流れることができる。また、矢印Bで示すように、下部の導体ビア6を経由して、最下段の導体層2から下より二段目の導体層2Bへ到る経路で電流が流れることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、回路基板、およびその製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 積層基板
2、2A、2B 導体層
3 コア層
4 プリプレグ層
5、5A、5B 貫通孔
6 導体ビア
7、7A 切削工具
8 シャンク
16、16A、16B 導体ビア