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特許7567202繊維構造体製造装置、繊維構造体製造方法、および繊維構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】繊維構造体製造装置、繊維構造体製造方法、および繊維構造体
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/732 20120101AFI20241008BHJP
   D21B 1/06 20060101ALI20241008BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20241008BHJP
   B29C 70/50 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
D04H1/732
D21B1/06
D04H1/736
B29C70/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020089396
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183740
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】依田 兼雄
(72)【発明者】
【氏名】永井 芳之
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 洋一
(72)【発明者】
【氏名】浦野 信孝
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183297(JP,A)
【文献】特開平07-207510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/732
D21B 1/06
D04H 1/736
B29C 70/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積部と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送部と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
部と、を備え、
前記搬送部による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前記
加熱加圧部による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第1領
域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を形成
し、
前記搬送部は、前記第2領域に対して搬送力を付与することにより前記搬送を行う
構造体製造装置。
【請求項2】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積部と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送部と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
部と、を備え、
前記搬送部による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前記
加熱加圧部による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第1領
域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を形成
し、
形成された前記繊維構造体を切断する切断部を備え、
前記切断部は、前記第2領域を切断する維構造体製造装置。
【請求項3】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積部と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送部と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
部と、を備え、
前記搬送部による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前記
加熱加圧部による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第1領
域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を形成
し、
形成された前記繊維構造体を切断する切断部を備え、
前記切断部は、前記第1領域を切断する維構造体製造装置。
【請求項4】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積部と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送部と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
部と、を備え、
前記搬送部による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前記
加熱加圧部による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第1領
域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を形成
し、
形成された前記繊維構造体を折り曲げる折り曲げ部を備え、
前記折り曲げ部は、前記第2領域を折り曲げる維構造体製造装置。
【請求項5】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積部と、
生成され前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送部と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
部と、を備え、
前記搬送部による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前記
加熱加圧部による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第1領
域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を形成
し、
形成された前記繊維構造体を折り曲げる折り曲げ部を備え、
前記折り曲げ部は、前記第1領域を折り曲げる維構造体製造装置。
【請求項6】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積工程と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送工程と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
工程と、を含み、
前記搬送工程による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前
記加熱加圧工程による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第
1領域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を
形成し、
前記搬送工程では、前記第2領域に対して搬送力を付与することにより前記搬送を行う
維構造体製造方法。
【請求項7】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積工程と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送工程と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
工程と、を含み、
前記搬送工程による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前
記加熱加圧工程による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第
1領域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を
形成し、
形成された前記繊維構造体を切断する切断工程を含み、
前記切断工程では、前記第2領域を切断する維構造体製造方法。
【請求項8】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積工程と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送工程と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
工程と、を含み、
前記搬送工程による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前
記加熱加圧工程による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第
1領域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を
形成し、
形成された前記繊維構造体を切断する切断工程を含み、
前記切断工程では、前記第1領域を切断する維構造体製造方法。
【請求項9】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積工程と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送工程と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
工程と、を含み、
前記搬送工程による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前
記加熱加圧工程による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第
1領域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を
形成し、
形成された前記繊維構造体を折り曲げる折り曲げ工程を含み、
前記折り曲げ工程では、前記第2領域を折り曲げる維構造体製造方法。
【請求項10】
樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積工程と、
生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送工程と、
搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧
工程と、を含み、
前記搬送工程による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前
記加熱加圧工程による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第
1領域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を
形成し、
形成された前記繊維構造体を折り曲げる折り曲げ工程を含み、
前記折り曲げ工程では、前記第1領域を折り曲げる維構造体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維構造体製造装置、繊維構造体製造方法、および繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、繊維を含む被解繊物を空気中で解繊する解繊部と、解繊処理された解繊物に樹脂を含む添加物を供給する供給部と、これら解繊物と添加物とを堆積する堆積部と、堆積したウエブを、平板状のプレスで挟んで加熱する加熱部とを備えるシート製造装置としての繊維構造体製造装置が記載されている。この製造装置によれば、堆積部で堆積されたウエブが平板状のプレスによって挟まれて加熱されるため、ウエブの繊維や樹脂が一方向に向かった状態で押し潰されることがなく、繊維構造体として、異方性のないシートを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-160409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造装置では、装置の小型化のために、平板状のプレスの長さを許容長以下に制限し、プレス処理とウエブの搬送とを交互に繰り返しながら製造するように構成する必要があった。この場合、搬送精度のばらつきや、設定する搬送仕様によっては、平板状のプレスによるプレス処理の継ぎ目に、プレス処理されない領域が生じてしまう場合があり、その結果、製造される繊維構造体には、例えば、強度欠損部が発生してしまう場合があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の繊維構造体製造装置は、樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積部と、生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送部と、搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧部と、を備え、前記搬送部による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前記加熱加圧部による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第1領域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を形成する。
【0006】
本発明の繊維構造体製造方法は、樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブを生成する堆積工程と、生成された前記繊維ウエブを搬送方向に搬送する搬送工程と、搬送された前記繊維ウエブを加熱された平板で加圧し、前記樹脂を溶融させる加熱加圧工程と、を含み、前記搬送工程による前記搬送方向の前記平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、前記加熱加圧工程による加圧と、を交互に繰り返すことにより、前記加圧を所定回数行う第1領域と、前記加圧を前記所定回数より多い回数行う第2領域と、を有する繊維構造体を形成する。
【0007】
本発明の繊維構造体は、表裏の関係に位置する主面を有し、前記主面に沿って延在する繊維構造体であって、繊維と、前記主面の延在方向の全体に亘って前記繊維同士を結着する樹脂と、を含んで構成され、前記繊維を結着する際の前記樹脂の溶融状態に起因した硬度の高い領域が前記主面の面内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る繊維構造体製造装置の全体構成を示す模式図である。
図2】実施例1として、加熱加圧部の平板サイズと、搬送部が搬送する所定のピッチの長さの一例を示す模式図である。
図3】実施例2として、加熱加圧部の平板サイズと、搬送部が搬送する所定のピッチの長さの一例を示す模式図である。
図4】実施例3として、加熱加圧部の平板サイズと、搬送部が搬送する所定のピッチの長さの一例を示す模式図である。
図5】実施例4として、加熱加圧部の平板サイズを短く構成した場合の一例を示す模式図である。
図6】実施例5として、切断部で繊維ウエブを切断する際の切断位置の違いによる液体吸収材のバリエーションを示す模式図である。
図7】実施例5の液体吸収材のバリエーションの1事例の斜視図である。
図8】実施例5の液体吸収材のバリエーションの1事例の斜視図である。
図9】折り曲げ部の構成を示す模式図である。
図10】実施例6として、折り畳んだ状態の液体吸収材の1事例を示す模式図である。
図11】実施例6として、折り畳んだ状態の液体吸収材の他の事例を示す模式図である。
図12】繊維構造体製造装置のその他の実施形態の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る繊維構造体製造装置1の概略構成を示す模式図である。
繊維構造体製造装置1は、オフィスなどで発生する古紙などのリサイクル材を主原料とし、水を極力利用しない乾式によって、新たな繊維構造体として再生させる装置である。ここでは、製造する繊維構造体として、例えば、油や水などを吸収可能な液体吸収材Poを例に取って説明する。なお、主原料としては、セルロース繊維を含んだものであればよく、紙の他、木材などを使用することも可能である。
【0010】
なお、製造された繊維構造体は、このような液体吸収材Poのみならず、音を吸収する吸音材や梱包における緩衝材としても構成することが可能である。吸音材としての繊維構造体は、インクジェットプリンターなど各種家電製品などの内部に配設されることで、装置外部への動作音を抑制することが可能である。また、家電製品のみならず各種建材、あるいは、音響調整のためコンサートホールなどに配設される吸音材として利用することも可能である。
【0011】
繊維構造体製造装置1は、原料投入部10、粗砕部20、解繊部30、分級部40、添加材投入部50、堆積部60、シート供給部70、バッファー部80、加熱加圧部100、冷却部110、搬送部120、切断部130、収容部140などから構成されている。また、粗砕部20と解繊部30とは搬送管24によって接続され、解繊部30と分級部40とは搬送管34によって接続され、分級部40と堆積部60とは搬送管46によって接続されている。
【0012】
原料投入部10は、古紙トレー11、供給ローラー12などから構成されている。古紙トレー11に載置された古紙Piが、供給ローラー12によって1枚ずつピックアップされて粗砕部20に投入される。この原料投入部10は、主原料が、例えば、オフィスで排出されるA4サイズのコピー用紙などの古紙である場合の一例である。
粗砕部20は、互いに噛み合い回転駆動する一対の粗砕刃21、ホッパー22を含み構成されている。粗砕部20は、投入された古紙Piを粗砕刃21によって数センチ角の紙片に分断し、搬送管24を介して解繊部30に供給する。
なお、繊維構造体製造装置1は、原料投入部10および粗砕刃21を備えずに、分断された紙片を原料として、ホッパー22から供給する構成であってもよい。
【0013】
解繊部30は、ステーター31、ローター32などを含み構成されている。搬送管24を介して解繊部30内に導かれた紙片は、回転するローター32と、ステーター31との間で解繊される。解繊部30におけるこの解繊工程では、紙片は、紙片の形がなくなり、繊維状になるまで解繊される。このとき、紙片に付着するインクやトナー、各種の添加材料などの少なくとも一部は、数十μm以下の分離粒子として分離される。
解繊された繊維および分離粒子は、ローター32が発生させる気流に乗って搬送管34から分級部40に搬送される。
【0014】
分級部40は、サイクロン41、排出管42、排出容器44などを含み構成されている。サイクロン41は、気流式の分級器であり、旋回気流による遠心力と空気の抗力の釣り合いによって内容物を分級する機能を有する。
搬送管34を介してサイクロン41に導かれた繊維および分離粒子は、サイクロン41により、繊維と分離粒子とに分級される。分級された繊維は、搬送管46を介して、堆積部60に搬送される。また、分級された分離粒子は、排出管42を介して排出容器44に排出される。
分級部40による分級工程によってインクやトナーを含む分離粒子が除かれるため、堆積部60に搬送される繊維は、脱墨された繊維となる。なお、ここで言う分級は、繊維と分離粒子とが完全に分離することを意味するものではなく、また、脱墨は、繊維にまったくインクやトナーなどが含まれなくなることを意味するものではない。
【0015】
添加材投入部50は、搬送管46に連通するホッパー51を有している。ホッパー51からは、投入量が調整された各種添加剤が投入され、サイクロン41から搬送される繊維に混入される。
添加剤としては、溶融することで、繊維間の結合を図り、製造する液体吸収材Poに適度な強度を持たせるための繊維状の樹脂の他に、液体吸収材Poの耐火性能を高めるための難燃剤などが使用される。
【0016】
堆積部60は、解繊された繊維を、添加剤と共に、気中としての空気中に略均一に分散させる分散機構と、これにより分散された繊維および添加剤を堆積させる堆積機構とを有している。
分散機構は、ハウジング61およびハウジング61に覆われたフォーミングドラム62などから構成されている。フォーミングドラム62は、回転可能に構成された円筒体であり、円筒体の回転側面には、複数の小孔が設けられている。
添加剤が添加された繊維は、搬送管46から導かれて、回転するフォーミングドラム62の内部に投入される。フォーミングドラム62を回転駆動させ、フォーミングドラム62の内容物、つまり添加剤が添加された繊維を、小孔を通してフォーミングドラム62の外側に放出することにより、添加剤が均一に混ざりながら、分散された繊維が、フォーミングドラム62の下方に設けられた堆積機構に向けて降下する。
【0017】
堆積機構は、分散機構から降り積もる繊維を長尺状の堆積物として形成するための機構であり、メッシュベルト63、張架ローラー64、サクション装置65などから構成されている。
メッシュベルト63は、張架ローラー64に張架され回動する無端のメッシュ状のベルトであり、フォーミングドラム62の鉛直下方の空気中に、繊維が堆積する堆積領域を構成する。
サクション装置65は、メッシュベルト63が構成する堆積領域の下方に設けられ、メッシュベルト63を介して空気を吸引することで、空気中に分散された繊維および添加剤をメッシュベルト63上に堆積させることができる。
メッシュベルト63を回転駆動させながら、サクション装置65により、空気中に分散された繊維をメッシュベルト63上に、具体的には、メッシュベルト63上に供給される後述の第1シートN1上に吸引して堆積させることにより、長尺の繊維ウエブPwが形成されていく。
【0018】
つまり、堆積部60は、上述した分散機構と堆積機構とからなり、樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブPwを生成する。また、堆積部60におけるこの堆積工程では、樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブPwを生成する。
【0019】
シート供給部70は、第1シートN1を供給する第1シート供給部71と、第2シートN2を供給する第2シート供給部72から構成されている。
第1シートN1と第2シートN2は、堆積部60で形成される繊維ウエブPwをラミネートする長尺シートである。第1シートN1は、繊維ウエブPwを形成する際に繊維が堆積する土台となる底面を構成するシートであり、第2シートN2は、形成された繊維ウエブPwを、その上面側からラミネートするシートである。
つまり、第1シート供給部71は、形成された繊維ウエブPwが搬送される方向において、メッシュベルト63が構成する堆積領域の上流側に設けられ、メッシュベルト63の移動に合わせ、第1シートN1を堆積領域に、またその下流方向へと繰り出す。また、第2シート供給部72は、堆積領域の下流側において、搬送される繊維ウエブPwの上側に設けられ、第2シートN2を、更に下流側に設けられたバッファー部80の方向に繰り出しながら繊維ウエブPwの上面に積層させる。
【0020】
第1シートN1は、サクション装置65の吸引によって、空気中に分散された繊維を第1シートN1上に堆積させるために、通気性を有する必要がある。また、液体吸収材Poとして製造するため、第1シートN1および第2シートN2は、通液性を有する必要がある。
【0021】
なお、繊維ウエブPwは、必ずしも、第1シートN1と第2シートN2とによってラミネートする必要は無い。つまり、堆積部60は、例えば、第1シートN1のみを用いて、第1シートN1に繊維を堆積させる構成であってもよいし、第1シートN1をも用いることなく、メッシュベルト63の上面に繊維を堆積させ、堆積した繊維をメッシュベルト63から剥離させながら下流に搬送して連続した繊維ウエブPwとして形成していく構成であってもよい。この場合、堆積部60は、堆積した繊維をメッシュベルト63から剥離させるための剥離機構、および剥離した繊維ウエブPwを崩すことなく加熱加圧部100まで搬送する搬送機構を備える必要がある。
また、堆積部60は、第1シートN1のみを用いる場合には、第2シート供給部72を備える必要は無く、第1シートN1をも用いない場合には、第1シート供給部71を備える必要も無い。
なお、いずれの構成であっても、メッシュベルト63には、サクション装置65によって吸引された繊維が絡みつく場合があるので、メッシュベルト63には、絡みついた繊維を除去するクリーニング機構を設けることが好ましい。
【0022】
バッファー部80は、形成された繊維ウエブPwの搬送経路における下流側に備えられる加熱加圧部100以降の繊維ウエブPwの搬送が、定速の連続搬送ではなく間欠搬送となるため、加熱加圧部100以降の繊維ウエブPwの搬送が停止した際に、堆積部60から送り出される繊維ウエブPwを蓄えるためのバッファー機構である。
バッファー部80は、搬送される繊維ウエブPwの上下からニップして繊維ウエブPwの移動に伴って回転する2つのローラー対81と、軸位置が上下に移動可能に支持され、繊維ウエブPwの移動に伴って回転するローラー82とを備えている。2つのローラー対81は、繊維ウエブPwの搬送方向の前後において、軸位置が固定されて設けられ、ローラー82は、2つのローラー対81の間の空間において、繊維ウエブPwを下方から支持して繊維ウエブPwの搬送に合わせて上下に移動する。ローラー82の上下動は、メッシュベルト63の回転による繊維ウエブPwの連続搬送と、加熱加圧部100以降の繊維ウエブPwの間欠搬送との間で、繊維ウエブPwに掛かる張力が大きく変動しないように制御されることが好ましい。
なお、搬送方向とは、堆積部60で形成された繊維ウエブPwが、バッファー部80、加熱加圧部100、冷却部110、搬送部120、切断部130を経て、収容部140に収容されるまでの搬送経路における繊維ウエブPwの移動方向である。
【0023】
加熱加圧部100は、バッファー部80の下流側に設けられ、搬送された繊維ウエブPwをその上下から加熱された平板で加圧し、添加剤として加えられた繊維状の樹脂を溶融させる。つまり、加熱加圧部100におけるこの加熱加圧工程では、搬送された繊維ウエブPwを加熱された平板で加圧し、樹脂を溶融させる。
加熱加圧部100は、加熱し加圧する平板として、互いに対向して配置された下平板101と上平板102とを有している。下平板101および上平板102の幅方向の長さ、つまり繊維ウエブPwの搬送方向と交差する方向の長さは、共に繊維ウエブPwの幅を上回る長さである。また、それぞれの平板には、ヒーターが備えられおり、所望の温度に加熱可能に構成されている。下平板101と上平板102とが、油圧プレスやエアプレス、あるいは機械プレスなどのプレス機構を用いて相対的に移動し、下平板101と上平板102との間に繊維ウエブPwを挟み込み、所定の温度と所定の圧力で加熱加圧することにより、繊維ウエブPwに含まれる樹脂を溶融させて、繊維に絡ませることができる。また、下平板101と上平板102とで繊維ウエブPwを加圧することで、繊維ウエブPwには、表裏の関係に位置する主面が形成される。
【0024】
冷却部110は、加熱加圧部100の下流側に設けられており、加熱加圧部100で加熱加圧され、冷却部110に搬送された繊維ウエブPwを冷却する。冷却部110は、例えば、繊維ウエブPwの底面に摺接するヒートシンク板111を備えている。ヒートシンク板111は、繊維ウエブPwの底面から吸収する熱を、空気中に放熱する。なお、冷却部110は、繊維ウエブPwの上面やヒートシンク板111から空気中に放熱する放熱効果を高める送風部を備えてもよい。
溶融し繊維に絡んだ樹脂は、冷却されて固化することで、堆積した繊維同士を結着させる。また、第1シートN1および第2シートN2をラミネートする場合においては、樹脂が溶融し、冷却されて固化することで、第1シートN1が繊維ウエブPwの底面に接着され、第2シートN2が繊維ウエブPwの上面に接着され、それぞれ繊維ウエブPwの主面を構成する。
冷却部110におけるこの冷却工程を経て、溶融し繊維に絡んだ樹脂が冷却されて固化し、つまり、樹脂が繊維同士を結着し、繊維ウエブPwは、表裏の関係に位置する主面を有する繊維構造体としての態様となる。
【0025】
搬送部120は、冷却部110の下流側に設けられており、繊維ウエブPwに搬送力を付与することで、繊維ウエブPwを搬送方向に搬送する。つまり、搬送部120によるこの搬送工程では、生成された繊維ウエブPwを搬送方向に搬送する。
搬送部120は、テーブル121、搬送アーム122などによって構成されている。
テーブル121は、繊維ウエブPwの搬送方向に延在して、搬送される繊維ウエブPwを、その下方から支持する平板状のガイドテーブルである。
搬送アーム122は、テーブル121との間に繊維ウエブPwを把持し、搬送方向に移動することによって繊維ウエブPwに搬送力を付与し、繊維ウエブPwをテーブル121に摺接させながら移動させることができる。搬送アーム122は、繊維ウエブPwに当接する面に複数のスパイクピンを有し、テーブル121との間に繊維ウエブPwを把持する際に、このスパイクピンを繊維ウエブPwの上面に刺すように押圧する。搬送アーム122は、スパイクピンを繊維ウエブPwの上面に刺した状態で、搬送方向に所定のピッチの長さ移動することで、繊維ウエブPwを所定のピッチだけ搬送することができる。搬送アーム122は、所定のピッチの搬送が完了すると、テーブル121との間の把持を解除し、つまり、スパイクピンが繊維ウエブPwの上面から離間する方向に移動し、次いで、テーブル121との間に繊維ウエブPwを把持する位置に戻り、再び、テーブル121との間に繊維ウエブPwを把持する。
【0026】
搬送部120は、加熱加圧部100において加熱加圧が完了し、下平板101と上平板102とが開いている期間に、搬送を開始して所定のピッチの搬送を行い、加熱加圧部100において加熱加圧を行っている期間に、把持の開放と再把持までの動作を行う。この動作を繰り返すことで、繊維ウエブPwは、加熱加圧され、冷却されながら間欠搬送される。すなわち、繊維構造体製造装置1は、搬送部120による所定のピッチの搬送と、加熱加圧部100による加圧とを交互に繰り返す。
【0027】
搬送部120から送り出される繊維ウエブPwは、搬送部120の下流側に設けられた切断部130に到達する。
切断部130は、繊維ウエブPwの搬送方向と交差する方向に繊維ウエブPwを切断するカッター131を備えている。カッター131には、例えば、超音波カッター、ロータリーカッター、トムソン式カッターなど各種形態を採用することが可能である。
なお、切断部130は、上記のカッター131に加え、繊維ウエブPwを繊維ウエブPwの搬送方向に切断するカッターを備えてもよい。
切断部130では、所定の位置にカッター131を設けることで、切断部130に搬送された繊維ウエブPwを所定の位置で切断し、つまり、切断部130におけるこの切断工程では、繊維構造体を切断し、所定のサイズ、所定の形状の繊維構造体としての液体吸収材Poが形成される。切断された繊維構造体としての液体吸収材Poは、収容部140に収容される。
【0028】
以上に説明した基本構成の繊維構造体製造装置1では、加熱加圧部100における下平板101と上平板102のサイズ、搬送部120が搬送する所定のピッチの長さ、切断部130で切断する位置などの仕様により、形成される繊維構造体としての液体吸収材Poの態様を様々なものとすることができる。
本実施形態の繊維構造体製造装置1は、搬送部120による、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向の長さWより短い所定のピッチの搬送と、加熱加圧部100による加圧と、を交互に繰り返すことにより、加圧を所定回数行う第1領域P1と、加圧を所定回数より多い回数行う第2領域P2と、を有する繊維構造体を形成することを特徴としている。
また、本実施形態の繊維構造体製造方法としては、搬送工程による、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向の長さWより短い所定のピッチの搬送と、加熱加圧工程による加圧とを交互に繰り返すことにより、加圧を所定回数行う第1領域P1と、加圧を所定回数より多い回数行う第2領域P2と、を有する繊維構造体を形成することを特徴としている。
【0029】
このような製造方法、また、繊維構造体製造装置1によって製造される液体吸収材Poは、表裏の関係に位置する主面を有し、主面に沿って延在する繊維構造体として形成され、繊維と、主面の延在方向の全体に亘って繊維同士を結着する樹脂とを含んで構成される。また、液体吸収材Poは、加圧を所定回数行って形成された第1領域P1と、加圧を所定回数より多い回数行って形成された第2領域P2とを有して構成される。
第2領域P2は、第1領域P1に比較して、加熱加圧部100によって加熱加圧する回数が多いため、繊維を結着する際の樹脂の溶融状態に起因した硬度の高い領域となる。
【0030】
なお、搬送部120は、この第2領域P2に対して搬送力を付与することにより搬送を行うように構成されている。つまり、搬送部120による搬送工程では、第2領域P2に対して搬送力を付与する。具体的には、搬送部120において、テーブル121との間に繊維ウエブPwを把持する搬送アーム122は、繊維ウエブPwを把持する際に、第2領域P2を把持する位置に設けられている。搬送アーム122は、搬送アーム122が有するスパイクピンを繊維ウエブPwの第2領域P2に刺すように押圧して把持し、搬送を行う。
【0031】
加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さWは、具体的には、下平板101と上平板102とで加圧される領域の搬送方向における長さである。本実施形態では、下平板101と上平板102の搬送方向における長さが同じで、下平板101と上平板102とが、繊維ウエブPwをずれなく挟むように構成されている場合について説明する。従って、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さWは、下平板101の搬送方向における長さ、および上平板102の搬送方向における長さに等しい。
以下に、図2図11を参照して、液体吸収材Poの様々な態様を形成する具体的な実施例について説明する。
図2図5において、W、W1~W3は、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さを示している。また、L1~L3は、搬送部120が搬送する所定のピッチの長さを示している。
【0032】
(実施例1)
図2は、実施例1として、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さW、搬送部120が搬送する所定のピッチの長さL1において、L1<W<L1×2のピッチL1で搬送を行って製造した際の繊維ウエブPwの様子を示している。図2の上から順に、下平板101と上平板102とによる加圧と、ピッチL1の搬送とが交互に行われている様子を示している。
L1<Wであり、W<L1×2であるため、繊維ウエブPwには、加熱加圧部100によって加圧が行われない先端部の領域を除き、加熱加圧部100によって所定回数として1回加圧が行われる第1領域P1と、所定回数より多い2回加圧が行われる第2領域P2とが形成される。また、2回加圧が行われる第2領域P2の搬送方向における長さRは、R=W-L1>0である。
【0033】
(実施例2)
図3は、実施例2として、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さW、搬送部120が搬送する所定のピッチの長さL2において、L2×2<W<L2×3のピッチL2で搬送を行って製造した際の繊維ウエブPwの様子を示している。図3の例は、図2に示す実施例1のピッチL1に対してその半分のピッチL2での搬送を行う場合を示している。なお、図3では、2回目以降、順次、加圧および搬送が行われた繊維ウエブPwのみを示している。
L2×2<Wであり、W<L2×3であるため、繊維ウエブPwには、加熱加圧部100によって加圧が行われない、また、1回しか加圧が行われない先端部の領域を除き、所定回数としての2回加圧が行われる第1領域P1、所定回数より多い3回加圧が行われる第2領域P2とが形成される。また、3回加圧が行われる第2領域P2の搬送方向における長さRは、R=W-L2×2>0である。
【0034】
(実施例3)
図4は、実施例3として、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さW、搬送部120が搬送する所定のピッチの長さL3において、L3×3<W<L3×4のピッチL3で搬送を行って製造した際の繊維ウエブPwの様子を示している。図4の例は、図2に示す実施例1のピッチL1に対してその3分の1のピッチL3での搬送を行う場合を示している。なお、図4では、2回目以降、順次、加圧および搬送が行われた繊維ウエブPwのみを示している。
L3×3<Wであり、W<L3×4であるため、繊維ウエブPwには、加熱加圧部100によって加圧が行われない、また、2回までしか加圧が行われない先端部の領域を除き、所定回数としての3回加圧が行われる第1領域P1、所定回数より多い4回加圧が行われる第2領域P2とが形成される。また、4回加圧が行われる第2領域P2の搬送方向における長さRは、R=W-L3×3>0である。
【0035】
(実施例4)
実施例1~実施例3では、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さWに対して、搬送部120が搬送する所定のピッチの長さを変化させる場合の例について説明したが、本実施例では、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さWnと、搬送部120が搬送する所定のピッチの長さLnとの関係は、実施例1の場合の関係のまま、つまり、Ln<Wn<Ln×2の関係において、加熱加圧部100の加熱された平板の搬送方向における長さWをn分の1に短く構成した場合の例を説明する。加熱加圧部100の平板の搬送方向における長さWを短くすることによって、繊維構造体製造装置1を小型化することができる。
【0036】
ここで、nは自然数であり、図5には、n=1,2,3の場合、具体的には、W1、W1の2分の1のW2、W1の3分の1のW3の場合の例を示している。
図5に示すように、Ln<Wnであり、Wn<Ln×2であるため、繊維ウエブPwには、加熱加圧部100によって加圧が行われない先端部の領域を除き、加熱加圧部100によって所定回数として1回加圧が行われる第1領域P1と、所定回数より多い2回加圧が行われる第2領域P2とが形成される。また、2回加圧が行われる第2領域P2の搬送方向における長さRは、R=Wn-Ln>0である。
また、図5において、一点鎖線で囲む領域は、切断して得られる液体吸収材Ponの個体の例である。加熱加圧部100の平板の搬送方向における長さWを短くしても、加熱加圧部100による加圧と、搬送部120による搬送の回数を増やすことによって、同じ大きさの液体吸収材Ponを得ることができる。なお、nを大きくするほど、液体吸収材Ponの内部に分割されて形成される第2領域P2の数が多くなる。
【0037】
(実施例5)
次に実施例5として、切断部130で繊維ウエブPwを切断する際の切断位置の違いによる液体吸収材Poのバリエーションについて説明する。
図6に一点鎖線で囲む領域は、切断して得られる液体吸収材Ponの個体となる領域である。図6では、1つの繊維ウエブPwにおいて、異なる態様の液体吸収材Po4~Po8を示しているが、実際には、これらのいずれかが選択され、同一の態様の液体吸収材Ponが連続的に製造される。
【0038】
図6において、液体吸収材Po4、Po5は、第1領域P1を切断する場合の液体吸収材Poの例である。つまり、液体吸収材Po4、Po5の製造において、切断部130は、切断工程として、第1領域P1を切断するように設定されている。
第1領域P1を切断するため、第2領域P2、つまり硬度の高い領域は、主面の延在方向における一方の端部と他方の端部との間に設けられる構成となる。
図7には、液体吸収材Po5の斜視図を示している。下平板101および上平板102の幅方向の長さ、つまり繊維ウエブPwの搬送方向と交差する方向の長さは、共に繊維ウエブPwの幅を上回る長さであるため、図7に示すように、第2領域P2、つまり硬度の高い領域は、製造段階における搬送方向と交差する方向に主面を横断して設けられる。
なお、液体吸収材Po4、Po5は、それぞれ切断する第1領域P1の位置が異なり、液体吸収材Po4は、両切断端面の間の中央領域に、主面を横断する1つの第2領域P2を有している。また、液体吸収材Po5は、両切断端面の間の中央領域に、主面を横断する2つの第2領域P2を有している。
【0039】
また、図6において、液体吸収材Po6~Po8は、第2領域P2を切断する場合の液体吸収材Poの例である。つまり、液体吸収材Po6~Po8の製造において、切断部130は、切断工程として、第2領域P2を切断するように設定されている。
図8には、液体吸収材Po6の斜視図を示している。下平板101および上平板102の幅方向の長さは、共に繊維ウエブPwの幅を上回る長さであるため、図8に示すように、第2領域P2、つまり硬度の高い領域は、液体吸収材Po6~Po8の主面の延在方向における端部において、主面を横断して設けられる。
なお、液体吸収材Po6~Po8は、それぞれ切断する第2領域P2の位置が異なり、液体吸収材Po7は、両切断端面の間の中央領域にも、主面を横断する1つの第2領域P2を有している。また、液体吸収材Po8は、両切断端面の間の領域に主面を横断する2つの第2領域P2を有している。
【0040】
なお、液体吸収材Poは、折り畳んで構成されてもよい。
具体的には、例えば、繊維構造体製造装置1は、切断部130の下流側に、液体吸収材Poを折り畳む折り曲げ部150を備え、所定の位置で液体吸収材Poを折り曲げ、液体吸収材Poを畳んでから収容部140に収容するように構成してもよい。
折り曲げ部150は、図9に示すように、第1折りローラー対151、第2折りローラー対152、ガイド部材153、フィードローラー対154などから構成されている。第1折りローラー対151、第2折りローラー対152は、それぞれ駆動ローラーとピンチローラーとにより構成されている。
【0041】
繊維ウエブPwは、フィードローラー対154によってガイド部材153に挿入され、ガイド部材153は、回動することにより、繊維ウエブPwを第1折りローラー対151の方向と第2折りローラー対152の方向に交互に振り分ける。第1折りローラー対151、第2折りローラー対152には、繊維ウエブPwの切断先端、あるいは、繊維ウエブPwの折り曲げ領域が交互に差し込まれ、それぞれの駆動ローラーによる巻き込みと排出が行われる。駆動ローラーとピンチローラーとで繊維ウエブPwの折り曲げ領域を挟み込むことによって、繊維ウエブPwが折り曲げられる。第1折りローラー対151と第2折りローラー対152とで交互に折り曲げを行うことで、繊維ウエブPwに対する山折り、谷折りが施される。
【0042】
繊維ウエブPwの折り曲げ位置は、フィードローラー対154の駆動、およびガイド部材153の回動のタイミングによって制御することができる。従って、折り曲げ部150における折り曲げ工程では、製造する液体吸収材Poの仕様に応じ、第1領域P1を折り曲げる場合、第2領域P2を折り曲げる場合、あるいは、任意のサイズに合わせて任意の位置を折り曲げる場合などを選択することができる。
【0043】
なお、繊維ウエブPwの折り曲げは、上述した折りローラー対による方法に限定するものではない。例えば、繊維ウエブPwに折り曲げ金型を押圧することによって折り曲げを行うなどの方法であっても良い。
また、繊維構造体製造装置1は、折り曲げ部150を備えずに、繊維構造体製造装置1とは別に折り曲げ機構を設けて、液体吸収材Poを折り畳むようにしてもよい。
【0044】
(実施例6)
本実施例の液体吸収材Poは、繊維ウエブPwを折り曲げ、折り畳んだ状態で提供される場合の例である。図10に示す液体吸収材Po9、図11に示す液体吸収材Po10は、いずれも切断後の液体吸収材Poを折り畳んで構成した液体吸収材の例である。
液体吸収材Po9は、4か所の第2領域P2を折り曲げて折り畳んだ構成の液体吸収材Poである。また、液体吸収材Po9は、切断も第2領域P2で行われているため、折り畳まれた状態の液体吸収材Po9の端部は、いずれも第2領域P2で構成されている。つまり、硬度の高い領域は、液体吸収材Po9の主面の延在方向における端部に設けられている。
また、液体吸収材Po10は、4か所の第1領域P1を折り曲げて折り畳んだ構成の液体吸収材Poである。また、液体吸収材Po10は、切断も第1領域P1で行われているため、折り畳まれた状態の液体吸収材Po10の端部は、いずれも第1領域P1で構成されている。第2領域P2、つまり、硬度の高い領域は、液体吸収材Po10の主面の延在方向における一方の端部と他方の端部との間に設けられている。
【0045】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
繊維構造体製造装置1は、樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブPwを生成する堆積部60と、生成された繊維ウエブPwを搬送方向に搬送する搬送部120と、搬送された繊維ウエブPwを加熱された下平板101と上平板102とで加圧し、樹脂を溶融させる加熱加圧部100と、を備えている。また、繊維構造体製造装置1は、搬送部120による搬送方向の平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、加熱加圧部100による加圧と、を交互に繰り返すことにより、加圧を所定回数行う第1領域P1と、加圧を所定回数より多い回数行う第2領域P2と、を有する液体吸収材Poを形成する。そのため、繊維構造体製造装置1によって製造される液体吸収材Poにおいて、第2領域P2は、加熱加圧処理がオーバーラップして行われる領域となり、加熱加圧処理されていない領域が生じないようにすることができる。その結果、例えば、加熱加圧処理されていない領域が強度欠損部になってしまうことが無くなり、強度や剛性などの品質、また、例えば液体吸収材Poが紙であるならば紙力などの品質が確保された液体吸収材Poを提供することができる。
【0046】
また、搬送部120は、製造される液体吸収材Poの第2領域P2に対して搬送力を付与することにより搬送を行う。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。搬送部120は、この第2領域P2に対して搬送力を付与するので、搬送によって液体吸収材Poが型崩れすることが抑制される。
【0047】
また、繊維構造体製造装置1は、形成された液体吸収材Poを切断する切断部130を備え、切断部130は、液体吸収材Poの第2領域P2を切断することができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。切断部130は、この第2領域P2を切断することにより、切断による型崩れが抑制され、より寸法精度の高い液体吸収材Poを提供することができる。
【0048】
また、切断部130は、第1領域P1を切断することができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。切断部130は、この第2領域P2より機械的強度の弱い第1領域P1を切断することにより、より容易に切断を行うことが可能となる。例えば、カッター131を用いて切断する場合において、カッター131の刃の消耗や破損を抑制することができる。
【0049】
また、繊維構造体製造装置1は、液体吸収材Poを折り曲げる折り曲げ部150を備え、折り曲げ部150は、第2領域P2を折り曲げることができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。折り曲げ部150は、この第2領域P2を折り曲げることにより、折り曲げによる型崩れが少なく、より寸法精度の高い折り曲げを行うことができる。
【0050】
また、折り曲げ部150は、第1領域P1を折り曲げることができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。折り曲げ部150は、この第2領域P2より機械的強度の弱い第1領域P1を折り曲げることにより、より容易に折り曲げを行うことができる。
【0051】
本発明の繊維構造体製造方法は、樹脂と繊維とを含む材料を気中で堆積させて繊維ウエブPwを生成する堆積工程と、生成された繊維ウエブPwを搬送方向に搬送する搬送工程と、搬送された繊維ウエブPwを加熱された下平板101と上平板102とで加圧し、樹脂を溶融させる加熱加圧工程と、を含んでいる。また、本発明の繊維構造体製造方法は、搬送工程による搬送方向の平板の長さより短い所定のピッチの搬送と、加熱加圧工程による加圧と、を交互に繰り返すことにより、加圧を所定回数行う第1領域P1と、加圧を所所定回数より多い回数行う第2領域P2と、を有する液体吸収材Poを形成する。そのため、本発明の繊維構造体製造方法によって製造される液体吸収材Poにおいて、第2領域P2は、加熱加圧処理がオーバーラップして行われる領域となり、加熱加圧処理されていない領域が生じないようにすることができる。その結果、例えば、加熱加圧処理されていない領域が強度欠損部になってしまうことが無くなり、強度や剛性などの品質、また、例えば液体吸収材Poが紙であるならば紙力などの品質が確保された液体吸収材Poを提供することができる。
【0052】
また、搬送工程では、第2領域P2に対して搬送力を付与することにより搬送を行う。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。搬送工程では、この第2領域P2に対して搬送力を付与するので、搬送によって液体吸収材Poが型崩れすることが抑制される。
【0053】
また、本発明の繊維構造体製造方法は、形成された液体吸収材Poを切断する切断工程を含み、切断工程では、第2領域P2を切断することができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。切断工程では、この第2領域P2を切断するので、切断による型崩れが抑制され、より寸法精度の高い液体吸収材Poを提供することができる。
【0054】
また、切断工程では、第1領域P1を切断することができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。切断工程では、この第2領域P2より機械的強度の弱い第1領域P1を切断するので、より容易に切断を行うことが可能となり、例えば、カッター131を用いて切断する場合において、カッター131の刃の消耗や破損を抑制することができる。
【0055】
また、本発明の繊維構造体製造方法は、液体吸収材Poを折り曲げる折り曲げ工程を含んだ場合、折り曲げ工程では、第2領域P2を折り曲げることができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。折り曲げ工程では、この第2領域P2を折り曲げるので、折り曲げによる型崩れが少なく、より寸法精度の高い折り曲げを行うことができる。
【0056】
また、折り曲げ工程では、第1領域P1を折り曲げることができる。第2領域P2は、第1領域P1より加圧回数が多いため、第1領域P1に比較して充分に樹脂が溶融し、機械的強度がより強く形成される傾向にある。折り曲げ工程では、この第2領域P2より機械的強度の弱い第1領域P1を折り曲げるので、より容易に折り曲げを行うことができる。
【0057】
本発明の繊維構造体は、表裏の関係に位置する主面を有し、主面に沿って延在する液体吸収材Poであって、繊維と、主面の延在方向の全体に亘って繊維同士を結着する樹脂と、を含んで構成され、繊維を結着する際の樹脂の溶融状態に起因した硬度の高い領域が主面の面内に含まれる。樹脂が、主面の延在方向の全体に亘って繊維同士を結着しているため、液体吸収材Poは、強度欠損部の無い繊維構造体として構成される。また、液体吸収材Poには、繊維同士を結着する際の樹脂の溶融状態に起因した硬度の高い領域が含まれる。このような構成とすることで、液体吸収材Poの製造工程において、硬度の高い領域を、樹脂を溶融する際の溶融対象の重なり領域として構成することができる。例えば、加熱された平板で加圧することで、樹脂を溶融する加熱加圧処理などにおいて、硬度の高い領域を、加熱加圧処理のオーバーラップ領域として構成することができる。その結果、加熱加圧されない領域、つまり樹脂が溶融することなく繊維を結着していない領域が発生してしまうことが抑制され、例えば、加熱加圧処理されていない領域が強度欠損部になってしまうことが無くなり、品質が確保された液体吸収材Poとして提供される。
【0058】
また、液体吸収材Poは、繊維同士を結着する樹脂の溶融状態に起因した硬度の高い領域が、液体吸収材Poの主面を横断して設けられている。このような構成とすることで、液体吸収材Poの製造工程において、例えば、加熱された平板で加圧することで、樹脂を溶融する加熱加圧処理などにおいて、平板を主面の幅を上回る長さの平板とし、硬度の高い領域を、この平板により加熱加圧処理を行うオーバーラップ領域として構成することができる。その結果、主面の幅方向においても、加熱加圧されない領域、つまり樹脂が溶融することなく繊維を結着していない領域が発生してしまうことが抑制され、例えば、加熱加圧処理されていない領域が強度欠損部になってしまうことが無くなり、品質が確保された液体吸収材Poとして提供される。
【0059】
また、液体吸収材Poは、繊維同士を結着する樹脂の溶融状態に起因した硬度の高い領域が、液体吸収材Poの主面の延在方向における端部に設けられている。このような構成とすることで、液体吸収材Poの端部の機械的強度を高めることができ、型崩れし難い液体吸収材Poとして提供される。
【0060】
また、液体吸収材Poは、硬度の高い領域が、主面の延在方向の一方の端部と他方の端部との間に設けられている。このような構成とすることで、液体吸収材Poの一方の端部と他方の端部を、その間に設けられた硬度の高い領域より硬度の低い領域として構成することができる。その結果、例えば、液体吸収材Poを連続する長尺体から切断した個体として製造する場合においては、より硬度の低い領域で切断することができるため、容易に切断を行うことが可能となり、例えば、カッター131を用いて切断する場合において、カッター131の刃の消耗や破損を抑制することができる。つまり、製造しやすい、あるいは、製造コストのより安い液体吸収材Poとして提供される。
【0061】
なお、繊維構造体製造装置としては、図1に示す繊維構造体製造装置1の構成に限定するものではない。例えば、図12に示す繊維構造体製造装置1Aのように、分級部40を備えない構成であってもよい。
繊維構造体製造装置1Aでは、搬送管34、搬送管46に代わり、解繊部30と堆積部60とを接続する搬送管34Aを備え、添加材投入部50が有するホッパー51は、搬送管34Aに連通する。
【0062】
また、繊維構造体製造装置が備えるバッファー部の構成は、図12に示すバッファー部80Aのように、バッファー部80とは上下が逆の構成であってもよい。
バッファー部80Aは、2つのローラー対81の間の空間において、繊維ウエブPwを上方から押圧しながら繊維ウエブPwの搬送に合わせて上下に移動するローラー82Aを有する。ローラー82Aの上下動は、メッシュベルト63の回転による繊維ウエブPwの連続搬送と、加熱加圧部100以降の繊維ウエブPwの間欠搬送との間で、繊維ウエブPwに掛かる張力が大きく変動しないように制御される。
【符号の説明】
【0063】
1…繊維構造体製造装置、10…原料投入部、11…古紙トレー、12…供給ローラー、20…粗砕部、21…粗砕刃、22…ホッパー、24…搬送管、30…解繊部、31…ステーター、32…ローター、34…搬送管、40…分級部、41…サイクロン、42…排出管、44…排出容器、46…搬送管、50…添加材投入部、51…ホッパー、60…堆積部、61…ハウジング、62…フォーミングドラム、63…メッシュベルト、64…張架ローラー、65…サクション装置、70…シート供給部、71…第1シート供給部、72…第2シート供給部、80…バッファー部、81…ローラー対、82…ローラー、100…加熱加圧部、101…下平板、102…上平板、110…冷却部、111…ヒートシンク板、120…搬送部、121…テーブル、122…搬送アーム、130…切断部、131…カッター、140…収容部、150…折り曲げ部、151…第1折りローラー対、152…第2折りローラー対、153…ガイド部材、154…フィードローラー対、N1…第1シート、N2…第2シート、P1…第1領域、P2…第2領域。
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