(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20241008BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/00 H
(21)【出願番号】P 2020090460
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026278(JP,A)
【文献】特開2017-094746(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080131(WO,A1)
【文献】特開2015-048142(JP,A)
【文献】特開2005-096791(JP,A)
【文献】特開2020-110956(JP,A)
【文献】特開2016-177873(JP,A)
【文献】特開2001-240085(JP,A)
【文献】特開2019-104501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノエタノールアミンを含有するヘアカラー剤を内容物として収納可能な包装袋であって、
包装袋は、プラスチックフィルムを基材とする積層体を製袋して形成されており、
積層体は包装袋外側から、基材フィルム層、第一の接着剤層、ガスバリア層、表面改質層、第二の接着剤層、押し出し樹脂層、シーラント層が順次積層されて構成されており、
基材フィルム層は、厚さ15μm以上、25μm以下の二軸延伸されたポリブチレンテレフタレート樹脂からなる単層であり、
ガスバリア層は、金属箔からなり、
積層体のループスティフネス強度が、100mN以下であり、
第一の接着剤層は、ウレタン系接着剤で形成された層であって、基材フィルム層とガスバリア層とを接着し、
第二の接着剤層は、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む接着剤で形成された層であって、表面改質層と押し出し樹脂層とを接着
し、
前記押し出し樹脂層は、厚さ10μm以上、35μm以下の、無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンの押し出しによるもの、あるいは低密度ポリエチレンと無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンとの共押し出しによるものであることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記表面改質層は、Zr、Crまたはその塩を含む無機被膜と、無機被膜を覆う有機高分子被膜とからなることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記ガスバリア層は、厚さ5μm以上、50μm以下のアルミニウム、またはアルミニウム合金からなる箔であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記シーラント層は、20μm以上、100μm以下の厚さであることを特徴とする、請求項1~請求項
3のいずれかに記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装袋に関するものである。特にヘアカラー剤などモノエタノールアミンを含む内容物を、内部に収納可能な包装袋に関するものであって、この場合には50℃以上の高温条件下の使用に耐え、基材層への内容物の浸透を防止することが可能であって、バリア層のピンホール、あるいはバリア層の劣化によって、外観に影響を与えることがなく、かつ柔軟性を有して充填機に対する適性を有する包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装袋はその利便性や意匠性のほか、内容物や使用環境に対応して多くの種類のものが実用化されている。特に近年ではプラスチックフィルムを基材フィルムとして、シーラント層を有した積層体から形成されて、必要な機能を満たすことのできる包装袋がさまざまな分野で商品化されている。
【0003】
一般に包装袋は、内容物を外部環境や外力から保護することがその役割である。また使用される環境はさまざまであり、包装袋ごと加熱される場合などもあり、それぞれの場合においての適性が求められる。内容物の外部への漏洩を防止することを求められることは当然として、特に臭気の強い内容物については、臭気の外部への染み出し、漏洩を防止することが最重要である場合もある。
【0004】
例えば、髪の毛を染めるためのヘアカラー剤は、染料を含む薬液の成分にモノエタノールアミンやアンモニアなどの強塩基性物質を含有することから匂いがきついため、内容物に対する耐性のほか、ガスバリア性も要求されることが多い。
【0005】
すなわちヘアカラー剤を収納する包装袋は、内容物が強塩基性であるために、ガスバリア層としてアルミニウム箔などの金属箔を使用する場合には、内容物の染み出しによる金属箔の腐食やそれに伴う外観不良の発生、積層体の層間の剥離強度の低下を防止しなくてはならない。さらにプラスチックフィルム自体の劣化防止など、包装袋を構成する積層体の構成要素の耐久性や剥離強度の確保も必要である。
【0006】
ガスバリア性と耐強塩基性を両立させて実現する方法として、特許文献1にはアルミニウム箔に化成処理をしてアルミニウム箔の腐食を抑える包装袋の提案がなされている。また先行文献2には、ガスバリア層としてアルミニウム箔を用いた積層体による包装袋の提案がなされ、積層体の剥離強度の向上のために熱可塑性樹脂の押し出し層を設けることによってその解決を図る提案がなされている。
【0007】
しかしながらいずれの場合においても、積層体中に硬質のアルミニウム箔層と、熱可塑性樹脂層が隣接して積層されており、また中間基材層を設けるなど、積層体の厚みが厚くなってしまい、それに伴って積層体の腰強度が強くなり、柔軟性に乏しいものとなっている。
【0008】
その結果、例えば充填工程における半折時の抵抗が増したり、熱融着時にシーラント層まで熱が伝わりにくくなって、その結果シール温度が高くなり素材の融点に近くなってしまうなど、内容物の充填工程における適性が不十分であって、さらには積層体の蛇行や外観不良を引き起こすなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5584970号公報
【文献】特開2003-81285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性を有し、耐強塩基性の内容物に対する耐性と、包装袋としての柔軟性とを両立させた、ヘアカラー剤を内容物として収納可能な包装袋の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
モノエタノールアミンを含有するヘアカラー剤を内容物として収納可能な包装袋であって、
包装袋は、プラスチックフィルムを基材とする積層体を製袋して形成されており、
積層体は包装袋外側から、基材フィルム層、ガスバリア層、表面改質層、押し出し樹脂層、シーラント層が順次積層されて構成されており、
基材フィルム層は、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなり、
ガスバリア層は、金属箔からなり、
積層体のループスティフネス強度が、100mN以下であることを特徴とする包装袋である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、
前記表面改質層は、Zr、Crまたはその塩を含む無機被膜と、無機被膜を覆う有機高分子被膜とからなることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、 前記基材フィルム層が、厚さ15μm以上、25μm以下の二軸延伸されたポリブチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の包装袋である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、
前記ガスバリア層は、厚さ5μm以上、50μm以下のアルミニウム、またはアルミニウム合金からなる箔であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の包装袋である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、
前記押し出し樹脂層は、厚さ10μm以上、35μm以下の、低密度ポリエチレン、もしくは無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンの押し出しによるもの、あるいは低密度ポリエチレンと無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンとの共押し出しによるものであることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載の包装袋である。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、
前記押し出し樹脂層は、厚さ15μm以上、30μm以下の熱可塑性ポリエチレン樹脂からなることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載の包装袋である。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、
前記シーラント層は、20μm以上、100μm以下の厚さであることを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載の包装袋である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガスバリア性を有し、耐強塩基性の内容物に対する耐性と、包装袋としての柔軟性とを両立させた、ヘアカラー剤を内容物として収納可能な包装袋の提供が可能である。
【0019】
すなわち、包装袋は、プラスチックフィルムを基材とする積層体を製袋して形成されており 積層体は包装袋外側から、基材フィルム層、ガスバリア層、表面改質層、押し出し樹脂層、シーラント層が順次積層されて構成されているために、内容物の充填の後シールして内容物を密封することが可能であって、例えば自動充填機などによる充填も可能である。
【0020】
基材フィルム層は、内容物とのSP値が離れているポリブチレンテレフタレート樹脂を採用することによって、積層体の厚みを薄くすることが可能になり、優れた耐性を有してかつ充填適性を両立させることが可能である。また、ポリブチレンテレフタレートフィルムは、耐ピンホール性にも優れるため、充填後の保管適性の向上にも効果的である。
【0021】
ガスバリア層は、金属箔からなることによって、ガスバリア性を高いレベルで維持することが可能である。
【0022】
さらに、本発明による積層体はループスティフネス強度を、100mN以下にすることが可能であって、これによって包装袋は十分な柔軟性が得られ、充填機に対する適性を満足させることができる。
【0023】
また特に請求項2に記載の発明によれば、表面改質層は、Zr、Crまたはその塩を含む無機被膜と、無機被膜を覆う有機高分子被膜とからなることによって、金属箔からなるガスバリア層の、樹脂層との接着性を向上させることに効果的であり、積層体の層間強度向上に効果的である。
【0024】
また特に請求項3に記載の発明によれば、基材フィルム層が、厚さ15μm以上、25μm以下の二軸延伸されたポリブチレンテレフタレート樹脂からなることによって、積層体(10)の柔軟性を確保することができ、充填機に対する適性に悪影響を与えることなく、内容物に対する耐性と充填機に対する適性を両立させ、充填後の保管適性を向上させることに、より効果的である。
【0025】
また特に請求項4に記載の発明によれば、ガスバリア層は、厚さ5μm以上、50μm以下のアルミニウム、またはアルミニウム合金からなる箔であることによって、高レベルで十分なガスバリア性を担保しつつ、積層体としての柔軟性を両立させ、ループスティフネス強度を、100mN以下にすることの実現を可能にすることができる。
【0026】
また、アルミニウムまたはアルミニウム合金は、一般的に価格も安定して入手しやすい材料であり、また箔の状態で十分な柔軟性を有しており、ラミネート加工も容易であって、包装袋としての適性を有している。
【0027】
また特に請求項5に記載の発明によれば、押し出し樹脂層は、厚さ10μm以上、35μm以下の、低密度ポリエチレン、もしくは無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンの押し出しによるもの、あるいは低密度ポリエチレンと無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンとの共押し出しによるものとすることによって、ガスバリア層の表面改質層に接着層を設けることなく直接積層体を構成することが可能である。
【0028】
また特に請求項6に記載の発明によれば、押し出し樹脂層は、厚さ15μm以上、30μm以下の熱可塑性ポリエチレン樹脂からなることによって、接着剤層と、この押し出し樹脂層で、シーラント層を積層する際の接着性の向上に効果的である。
【0029】
また特に請求項7に記載の発明によれば、シーラント層は、20μm以上、100μm以下の厚さであることによって、十分なシール性を担保することが可能になり、製袋においてのシール性を確保することができ、内容物充填後における内容物の密封性向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明に係る包装袋を形成する積層体の一実施態様を説明するための部分断面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る包装袋を形成する積層体の他の実施態様であり、実施例1を説明するための部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を図を参照しながら、さらに詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0032】
図1は、本発明に係る包装袋を形成する積層体の一実施態様を説明するための部分断面模式図である。
【0033】
本発明による包装袋は、特にモノエタノールアミンを含有するヘアカラー剤を内容物として収納可能な包装袋である。
【0034】
この包装袋は、プラスチックフィルムを基材とする積層体(10)を製袋して形成されている。一般にヘアカラー剤は、酸素に触れると変色したり、また強アルカリによって金属が腐食されたり、したがってピンホールの発生やそれに伴う変色、外観不良などを起こすために、積層体(10)の構成には内容物に対応した、特別の耐性、材料構成が求められる。
【0035】
本発明においては、積層体(10)の構成は包装袋外側から、基材フィルム層(1)、ガスバリア層(2)、表面改質層(3)、押し出し樹脂層(4)、シーラント層(5)が順次積層されて構成されており、基材フィルム層(1)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなり、ガスバリア層(2)は、金属箔からなることを特徴とする。
【0036】
また本発明においては、積層体(10)のループスティフネス強度が、100mN以下であることを特徴とする。すなわち積層体(10)が内容物に対する耐性を有すると同時に、柔軟性を有して、充填機に対する適性を両立させることのできる包装袋の提供を可能とするものである。
【0037】
基材フィルム層(1)は、内容物の主成分であるモノエタノールアミンとSP値が離れていて、かつ機械的強度に優れ、ピンポールの発生に対する耐性にも優れたポリブチレンテレフタレートを採用することによって、内容物に対する耐性を損なうことなく、積層体(10)の厚みを薄くして、包装袋の柔軟性を向上させ、充填機に対する適性を向上させることが可能となる。
【0038】
特に基材フィルム層は、厚さ15μm以上、25μm以下の二軸延伸されたポリブチレンテレフタレート樹脂とすることができ、この場合には、積層体(10)の柔軟性を確保することができ、充填機に対する適性に悪影響を与えることなく、内容物に対する耐性と充填機に対する適性を両立させ、充填後の保管適性をより向上させることが可能である。
【0039】
基材フィルム層(1)とガスバリア層(2)とは、例えば接着剤層を介して積層することが可能である。
【0040】
また、ガスバリア層(2)は、金属箔からなることによって、ガスバリア性を高いレベルで担保することができ、一方で前述のように基材フィルム層(1)にポリブチレンテレフタレートを採用することによって、ピンホールの発生や充填機に対する適性の両立をも図ることが可能になる。
【0041】
特にガスバリア層(2)は、厚さ5μm以上、50μm以下のアルミニウム、またはアルミニウム合金からなる箔とすることができ、この場合には、積層体(10)の柔軟性とガスバリア性の両立を図ることにより効果的である。
【0042】
本発明において、表面改質層(3)は、Zr、Crまたはその塩を含む無機被膜と、無機被膜を覆う有機高分子被膜とからなる。これは、ガスバリア層(2)は金属からなる箔を用いており、押し出し樹脂層(4)およびシーラント層(5)との接着性向上、同時に積層体(10)としての層間強度向上のためにガスバリア層(2)の金属箔の表面に設ける。
【0043】
また押し出し樹脂層(4)は、厚さ15μm以上、30μm以下の熱可塑性ポリエチレン樹脂とすることができ、この押し出し樹脂層(4)で、シーラント層(5)を積層する際の接着性の向上により効果的である。このときガスバリア層(2)の表面改質層(3)と押し出し樹脂層(4)との間に接着剤層を設けることができ、積層体(10)全体の層間強度の向上により効果的である。
【0044】
押し出し樹脂層(4)は、厚さ10μm以上、35μm以下の、低密度ポリエチレン、もしくは無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンの押し出しによるもの、あるいは低密度ポリエチレンと無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレンとの共押し出しによるものとすることができる。この場合には、ガスバリア層(2)の表面改質層(3)に接着層を設けることなく、押し出し樹脂層(4)を形成し、包装袋を形成する積層体(10)を構成することが可能である。
【0045】
シーラント層(5)は、20μm以上、100μm以下の厚さとすることができ、この場合には、十分なシール性を確保しながら、積層体(10)の柔軟性、充填適性を両立させることに効果的である。
【0046】
シーラント層(5)は、2枚の積層体(10)をシーラント層(5)同士が対向するように重ねて、加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、包装袋に製袋することを可能にする。
【0047】
シーラント層(5)の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0048】
シーラント層(10)の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、積層体(10)上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層体(10)の表面にシーラント層を形成することも可能である。
【0049】
必要に応じて、商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報表示や意匠性の向上を目的として、プラスチックフィルムを基材とする積層体(10)中の、包装袋外側から見える層に印刷層を設けることができる。印刷層は包装袋の最外層に設けるのでも構わない。
【0050】
ここで、印刷方法、および印刷インキには、特に制約を設けるものではないが、既知の印刷方法の中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、安全性などを考慮して適宜選択すればよい。
【0051】
例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性、プラスチックフィルムへの印刷適性、および絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0052】
積層体(10)には必要に応じて、印刷層を設けるほか、遮光層を有する基材を貼り合わせることができる。
【0053】
このようにして本発明によれば、ガスバリア性を有し、耐強塩基性の内容物に対する耐性と、包装袋としての柔軟性とを両立させた、ヘアカラー剤を内容物として収納可能な包装袋の提供が可能である。
【実施例】
【0054】
以下本発明を、実施例1~実施例2、および比較例1~比較例3によってさらに具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0055】
バリア性を有する積層体を作成し、遮光層を有する基材とウレタン系接着剤で貼り合わせて積層し試料として評価した。またこれを用いて、包装袋を作成し内容物を充填して評価した。
【0056】
評価項目は下記のとおりである。
・耐ピンホール性評価
・ループスティフネス強度評価
・耐内容物性評価
各評価項目の評価方法はそれぞれ下記のとおりである。
【0057】
耐ピンホール性評価
ゲルボフレックス試験機(テスター産業株式会社製)を用いて、室温、1000回の条件で行い、ピンホールの発生数を数えた。
【0058】
ループスティフネス強度評価
ループスティフネステスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、幅15mm、円周50mm、押し込み量10mmの条件で強度確認をした。
【0059】
耐内容物性評価
矩形のサンプルを、シーラントを対向させて2枚重ね、3辺をシールして三方袋とした。内容物としてpH9~10のヘアカラー1剤(主成分:モノエタノールアミン、SP値16.3)を充填して密封した。
このサンプルを、常温環境下で100回屈曲させたのち、50℃の恒温槽で保管し、2週間後に取り出して外観を観察した。
【0060】
<実施例1>
図2は、本発明に係る包装袋を形成する積層体の他の実施態様であり、実施例1を説明するための部分断面模式図である。
【0061】
バリア性を有する積層体(10)は、下記の構成である。
包装袋外側から順に、
・基材フィルム層(1) ポリブチレンテレフタレートフィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 ボブレット(登録商標)ST 厚さ15μm)/
・接着剤層(7) ウレタン系接着剤(主剤:三井化学株式会社製 タケラック(登録商標)A525、硬化剤:三井化学株式会社製 タケネート(登録商標)A50)/
・ガスバリア層(2) アルミニウム箔(東洋アルミ株式会社製 8079材 厚さ9μm)/
・表面改質層(3) Zr系コート剤(日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社製サーフコート(登録商標)EC1000A/B)/
・接着剤層(6) ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットタイプを主成分とした接着剤/
・押し出し樹脂層(4) 低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製 LC600A)/
・シーラント層(5) 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(フタムラ化学株式会社製 LL-MTNST)
の層構成を有する積層体を作成した。
さらに、この積層体に対して、ウレタン系接着剤を用いて、遮光層を有する基材を貼り合わせた。
【0062】
<実施例2>
実施例1に対して、接着剤層(6)および押し出し樹脂層(4)の代わりに無水マレイン酸グラフト重合ポリエチレン(三菱ケミカル株式会社製 融点ピーク:98℃ 密度0.88g/cm3 MFR:10g/10分)と低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製 LC600A)の共押し出し層を形成し、押し出しラミネート後、140℃、15秒ヒーターロールで加熱して積層フィルムを作成した以外は、実施例1と同様とした。
【0063】
<比較例1>
実施例1に対して、基材フィルム層(1)として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学株式会社製 FE2001 厚さ12μm)を用いた以外は、実施例1と同様とした。
【0064】
<比較例2>
実施例1に対して、基材フィルム層(1)として、延伸ポリアミドフィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 ボニール(登録商標)RX 厚さ15μm)を用いた以外は、実施例1と同様とした。
【0065】
<比較例3>
実施例1に対して、基材フィルム層(1)として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学株式会社製 FE2001 厚さ12μm)を用いて、かつ基材フィルム層(1)とガスバリア層(2)の間に中間基材層として延伸ポリアミドフィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 ボニール(登録商標)W 厚さ15μm)を積層した以外は実施例1と同様とした。
【0066】
評価結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
表1から、見て取れるとおり、本発明による実施例1、および実施例2は、いずれも耐ピンホール性評価において、比較例1~比較例3に比べてピンホールの発生数は少ない結果である。
【0069】
またループスティフネス強度評価においては、実施例1、および実施例2ともに本発明において規定する100mN以下を満足する値となっている。これにより積層体は柔軟性を有して、充填機に対する適性を得ることができる。
【0070】
これらは、基材フィルム層(1)に本発明で規定する、ポリブチレンテレフタレートフィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 ボブレット(登録商標)ST 厚さ15μm)を用いた効果が表れているものと考えられる。
【0071】
比較例1においては、本発明に規定する範囲を外れて、基材フィルム層(1)にポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学株式会社製 FE2001 厚さ12μm)を用いている結果、耐ピンホール性が劣る結果となっている。
【0072】
比較例2においては、本発明に規定する範囲を超えて、基材フィルム層(1)に延伸ポリアミドフィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 ボニール(登録商標)RX 厚さ15μm)を用いており、SP値が内容物の主成分であるモノエタノールアミンに近いため、耐内容物性評価において、50℃保管後において、部分的な変色(茶色斑点)が認められ、包装袋として実用上問題である。
【0073】
比較例3においては、基材フィルム層(1)として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学株式会社製 FE2001 厚さ12μm)を用いて、かつ基材フィルム層(1)とガスバリア層(2)の間に中間基材層として延伸ポリアミドフィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 ボニール(登録商標)W 厚さ15μm)を積層した結果、積層体全体の厚みも増大しループステフィネス強度が、本発明において規定する100mN以下を外れて大きくなっており、柔軟性に乏しく、包装袋として充填機などへの適合性が得られない恐れがある。
【0074】
このように本発明によれば、ガスバリア性を有し、耐強塩基性の内容物に対する耐性と、包装袋としての柔軟性とを両立させた、ヘアカラー剤を内容物として収納可能な包装袋の提供が可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0075】
1・・・基材フィルム層
2・・・ガスバリア層
3・・・表面改質層
4・・・押し出し樹脂層
5・・・シーラント層
6・・・接着剤層
7・・・接着剤層
10・・・積層体