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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20241008BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20241008BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D33/25 A
B65D33/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020091826
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021187454
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 和佳子
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 靖也
(72)【発明者】
【氏名】多久島 和弘
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024767(JP,A)
【文献】特開2006-051987(JP,A)
【文献】特開2016-098033(JP,A)
【文献】特開2007-331805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 33/25
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面フィルムと裏面フィルムの間に収容部を有するパウチであって、
第1縁部と、
前記第1縁部と対向する第2縁部と、
前記第1縁部と前記第2縁部の間に延びる第3縁部および第4縁部と、
前記第1縁部と前記第2縁部の間において、前記第1縁部寄りに形成された開閉機構と、を有し、
前記第3縁部、前記第4縁部には、前記第3縁部、前記第4縁部が延びる方向に沿って第3縁部シール部、第4縁部シール部が形成されており、
おもて面フィルムと裏面フィルムの一方をスリット形成面として、前記第3縁部シール部の内縁から前記第4縁部シール部の内縁に亘ってスリットが形成されており、
前記開閉機構は、互いに嵌合する第1部材と第2部材とからなり、
前記第1部材と前記第2部材は、前記スリット形成面におけるスリットを挟んだ位置に接合されており、
前記第1部材と第2部材は、1つの連続する部材が、当該連続する部材の薄肉部を内側にして折り返され端部を形成する、パウチ。
【請求項2】
前記開閉機構の内側嵌合強度は3N以上40N以下である、請求項1に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理を行う前に内容物の追加を行うためのパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を容器に収容したまま電子レンジにより加熱調理でき、且つ加熱調理中に発生する蒸気により収容された食品を蒸らす効果を有するとともに内部の蒸気圧力により熱接着部を一部剥離させて蒸気を逃がすことのできる包装袋が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-120550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、一旦開封したパウチを再封可能とするチャックと呼ばれる開閉機構を備えたパウチも知られている。チャックと呼ばれる開閉機構は、雄部材と雌部材を嵌合させて開口部を閉じることが可能な嵌合具である。このような開閉機構を利用することにより、一旦開封した後、別途具材や調味料を追加して再封し、調理を行うこともできるようになってきている。内容物入りのパウチを商品として販売する場合、内容物の充填はパウチの上方側から行われることが多い。このような場合、開閉機構がパウチの上方に形成されていると、充填時に開閉機構に内容物が付着し易くなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、内容物の充填口と異なる位置において、簡易に開閉を行うことが可能なパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、
おもて面フィルムと裏面フィルムの間に収容部を有するパウチであって、
第1縁部と、
前記第1縁部と対向する第2縁部と、
前記第1縁部と前記第2縁部の間に延びる第3縁部および第4縁部と、
前記第1縁部と前記第2縁部の間において、前記第1縁部寄りに形成された開閉機構と、を有し、
前記第3縁部、前記第4縁部には、前記第3縁部、前記第4縁部が延びる方向に沿って第3縁部シール部、第4縁部シール部が形成されており、
おもて面フィルムと裏面フィルムの一方をスリット形成面として、前記第3縁部シール部と前記第4縁部シール部を結ぶ方向にスリットが形成されており、
前記開閉機構は、互いに嵌合する第1部材と第2部材とからなり、
前記第1部材と前記第2部材は、前記スリット形成面におけるスリットを挟んだ位置に接合されている、パウチを提供する。
【0007】
また、本発明のパウチは、
前記第1部材と第2部材は、1つの連続する部材が、当該連続する部材の薄肉部における端部にて折り返されて形成されていてもよい。
【0008】
また、本発明のパウチは、
前記嵌合具の内側嵌合強度は3N以上40N以下であってもよい。
【0009】
また、本発明では、
おもて面フィルムと裏面フィルムの間に収容部を有し、おもて面フィルムと裏面フィルムの一方に形成されたスリットと前記収容部の間に前記収容部を開閉する開閉機構を有しており、前記収容部に第1の内容物が収容されているパウチの使用方法であって、
前記開閉機構を開けてパウチを開封した後、前記スリットを介して第2の内容物を収容する工程と、
前記開閉機構を閉じた後、電子レンジを用いて加熱する工程と、を含むパウチの使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明は、内容物の充填口と異なる位置において、簡易に開閉を行うことが可能なパウチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るパウチを示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るパウチの背面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るパウチを構成する部材を示す分解図である。
図4】本発明の一実施形態に係るパウチの断面図である。
図5】内容物を充填し、封止した後のパウチの正面図である。
図6】開閉機構である嵌合具20を構成する部材の断面図である。
図7】開閉機構の引張試験の様子を示す図である。
図8】開閉機構により開封した状態のパウチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<基本構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るパウチを示す正面図である。図2は、本発明の一実施形態に係るパウチの背面図である。また、図3は、本発明の一実施形態に係るパウチを構成する部材を示す分解図である。図4は、本発明の一実施形態に係るパウチの開閉機構の部分断面図である。図1図2に示した本実施形態のパウチは、内容物が充填される前の状態(内容物が充填されていない状態)のパウチを示したものである。本実施形態のパウチは、正面視において長方形状であり、互いに対向する第1縁部4と第2縁部5と、第1縁部4と第2縁部5の間に延びる第3縁部6と第4縁部7と、を含む。
【0013】
本明細書において、長方形とは、四隅が直角の長方形だけでなく、長方形の四隅が面取りされて、外に凸の円弧状となったもの等、略長方形と考えられるものも含む概念である。また、本明細書において、パウチは、内容物が充填されていない状態のパウチに限らず、内容物が充填されている状態のパウチも含む概念である。また、本実施形態のパウチは、第2縁部5側に、第1ひだ部9aと第2ひだ部9bを備えた底部ガセット部9を有している。底部ガセット部9を備えているため、第1縁部4側を上方、第2縁部5側を下方として載置することによりパウチを自立させることができる。
【0014】
本実施形態のパウチは、図3に示すように、略長方形状のおもて面フィルム1と、おもて面フィルム1と同一形状の裏面フィルム2と、略長方形状の底面フィルム3の3枚の積層フィルムを用いて構成されている。本実施形態のパウチは、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3の3枚のフィルムが所定の箇所においてヒートシール(熱融着)等により接合されることにより形成される。さらに、図3においては省略しているが、開閉機構となる嵌合具20が、おもて面フィルム1の内面にヒートシール等により接合される。
【0015】
図3に示すように、底面フィルム3は、折込部3aにおいて2つ折りされており、折込部3aを境界にして第1部分3fと第2部分3gとに区分される。底面フィルム3には、側縁を切り欠くように4つの半円弧状の切り欠き部3b、3c、3d、3eが設けられており、切り欠き部3bと3c、および、切り欠き部3dと3eは2つ折りしたときに対応する位置に設けられている。この切り欠き部3b~3eを介して、後述する第2底部シール部15bが形成される。また、電子レンジを用いて加熱するときに、自立性を安定させる観点から、折込部3aと直交する方向における折込部3aからパウチの第2縁部5までの距離H1は適宜設定することができる。折込部3aは、第1ひだ部9aと第2ひだ部9bの境界でもある。
【0016】
<各シール部>
本実施形態のパウチは、図1図2に示すように、底部シール部15と、第3縁部シール部16と、第4縁部シール部17と、を備え、第1縁部4側は未シールで内容物の充填のための開口が形成されている。底部シール部15は、第1底部シール部15a、第2底部シール部15bと、を含んでいる。図1図2においては、各シール部を斜線のハッチングで示している。
【0017】
第3縁部シール部16、第4縁部シール部17は、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がシールされて接合されたものである。第3縁部シール部16は、第3縁部6(図1における左端、図2における右端)を含むように、第3縁部6に沿って形成されており、第4縁部シール部17は、第4縁部7(図1における右端、図2における左端)を含むように、第4縁部7に沿って形成されている。第3縁部シール部16、第4縁部シール部17のシール幅は、例えば5mm以上30mm以下とすることが好ましい。本実施形態に係るパウチは、電子レンジ等で加熱する場合、加熱の直後は高熱となる。そのため、第3縁部シール部16、第4縁部シール部17を手で持ったときの火傷防止の観点から、シール幅は15mm以上とすることができる。本実施形態では、特に火傷防止用のシール部としていないため、シール幅は6mm程度である。なお、シール幅とは、シール部が延びる方向と直交する方向における幅である。
【0018】
底部シール部15は、折込部3aより第2縁部5側(図1図2における下側)に形成されるシール部であり、第1底部シール部15aと、第2底部シール部15bで構成されている。第1底部シール部15aは、おもて面フィルム1と底面フィルム3の第1部分3f、および、裏面フィルム2と底面フィルム3の第2部分3gがシールされたものである。第2底部シール部15bは、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がシールされたものである。図1に示すように、第3縁部6、第4縁部7に形成された第2底部シール部15bは、内側が円弧状の半円形状となっている。
【0019】
<底部ガセット部>
底面フィルム3の第1部分3fと、おもて面フィルム1の底面フィルム3の第1部分3fに対応する部分が、第1底部シール部15aにより接合されて、第1ひだ部9aが形成されている。また、底面フィルム3の第2部分3gと、裏面フィルム2の底面フィルム3の第2部分3gに対応する部分が、第1底部シール部15aにより接合されて、第2ひだ部9bが形成されている。そして、第1ひだ部9aと第2ひだ部9bとで、底部ガセット部9が形成されている。図1の正面図においては、折込部3aより下方において、第1ひだ部9aが見える状態となっている。図2の背面図においては、折込部3aより下方において、第2ひだ部9bが見える状態となっている。
【0020】
<収容部>
第1縁部4側の開口を介して内容物が収容された後、図1図2において14aと示されている第1縁部シール予定部(一点鎖線より上側)に第1縁部シール部14が形成され、パウチが封止される(図5参照)。第1縁部シール部14は、第1縁部4に沿って第3縁部シール部16から第4縁部シール部17に亘って形成される。収容部11は、第3縁部シール部16の内縁と、第4縁部シール部17の内縁と、第1底部シール部15aの内縁と、第1縁部シール部14の内縁と、で画成されている。したがって、第3縁部シール部16の内縁、第4縁部シール部17の内縁、第1底部シール部15aの内縁、第1縁部シール部14の内縁は、収容部11の外縁となる。図5は、内容物を充填し、封止した後のパウチの正面図である。なお、図示の都合上、内容物は省略してある。
【0021】
<内容物>
内容物としては、特に限定されないが、食品であることが好ましい。食品としては、食する主対象である食材であってもよいし、食材の味付けを行う調味料であってもよい。食する主対象である食材としては、例えば、固形物、乾燥食品(乾燥麺、乾燥食材、粉末調味料、ドライフルーツ)、冷凍食品等とすることができる。本実施形態では、第1縁部シール部14による封止前に収容される、これらの内容物を第1の内容物とする。そして、利用者がパウチ内に第2の内容物を収容する。第2の内容物は、利用者(消費者)が別途用意する内容物である。例えば、第1の内容物が食材である場合、第2の内容物は調味料とすることができ、第1の内容物が調味料である場合、第2の内容物は食材とすることができる。第1の内容物として調味液を用い、パウチへの充填後に冷凍して冷凍ミールキットとして販売することもできる。この場合、利用者は、後述する開閉機構から具材を投入して、電子レンジ等で加熱調理することができる。
【0022】
<開閉機構>
次に、開閉機構について説明する。図1に示すように、本実施形態のパウチでは、第1縁部4に沿ってパウチの開封および再封が可能な開閉機構である嵌合具20が形成されている。図4は、開閉機構である嵌合具20の断面図である。図4(a)は、図1に示すA-A線に対応する断面図であり、図4(b)(c)は、図4(a)に示した嵌合具20の部分拡大図である。図1図4に示すように、パウチは、収容部11の第1縁部4寄りに、相互に嵌合する第1部材と第2部材とからなる開閉自在な嵌合具20を開閉機構として備える。本実施形態では、雄部材21を第1部材、雌部材22を第2部材として説明していくが、雌部材22を第1部材、雄部材21を第2部材としてもよい。
【0023】
図1に示すように、正面視において帯状の嵌合具20は、第1縁部4に沿って設けられている。本実施形態では、嵌合具20の長手方向が、第1縁部4に平行になるように設けられている。図4(a)に示すように、雄部材21は正面視において帯状の第1基部21aと、第1基部21aの一方の側に雄型嵌合部21bを備えている。また、第1基部21aは、第1縁部4寄りの第1部分21aaと第2縁部5寄りの第2部分21abを有しており、第1部分21aaは、第1基部21aの他方の側において、おもて面フィルム1の内面に接合されている。雌部材22は正面視において帯状の第2基部22aと、第2基部22aの一方の側に雌型嵌合部22bを備えている。また、第2基部22aは、第1縁部4寄りの第1部分22aaと第2縁部5寄りの第2部分22abを有しており、第1部分22aaは、おもて面フィルム1の内面に接合されている。
【0024】
雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの詳細について説明する。図4(b)(c)は図4(a)に対応する嵌合具20の断面図である。このうち、図4(b)はおもて面フィルム1と裏面フィルム2が対向する方向において、雄型嵌合部21bの外方突起部21bbと雌型嵌合部22bの内方突起部22bbの間に隙間がない形態である。また、図4(c)はおもて面フィルム1と裏面フィルム2が対向する方向において、雄型嵌合部21bの外方突起部21bbと雌型嵌合部22bの内方突起部22bbの間に隙間がある形態であり、雄型嵌合部21bの外方突起部21bbと雌型嵌合部22bの内方突起部22bbが所定の距離Dだけ離れている。本実施形態に係る雄型嵌合部21bは、1つの柱部21baと、柱部21baの延びる方向と交差する方向に延びる突起である外方突起部21bbを2組備えている。また、本実施形態に係る雌型嵌合部22bは、柱部22baと柱部22baの延びる方向から交差する方向に延びる突起である内方突起部22bbを2組備えている。特に、図4(c)に示す嵌合具20では、おもて面フィルム1と裏面フィルム2が対向する方向において、雄型嵌合部21bの外方突起部21bbと雌型嵌合部22b内方突起部22bbが所定の距離D以上離れている。これにより、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの間の空間が大きくなり、収容部11内の圧力が高まった際に、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合が外れ易くなる。
【0025】
図1図4(a)に示すように、おもて面フィルム1には、第1縁部4に沿う方向に延びるように、おもて面フィルム1を貫通するスリット8が形成されている。本実施形態に係るパウチは、おもて面フィルム1と裏面フィルム2のいずれか一方をスリット形成面とし、スリット形成面にのみスリット8を形成している。おもて面フィルム1、裏面フィルム2の「おもて」と「裏」は相対的なものであるため、どちらをスリット形成面としてもよいが、本実施形態では、おもて面フィルム1をスリット形成面としている。スリット8は第3縁部シール部16と第4縁部シール部17を結ぶ方向に形成されている。具体的には、図1に示すように、スリット8は、第3縁部シール部16の内縁から第4縁部シール部17の内縁に亘って形成されている。好ましくは、スリット8の延伸方向は第1縁部4、第2縁部5に平行である。スリット8により、第3縁部シール部16の内縁から第4縁部シール部17の内縁の間において、スリット形成面であるおもて面フィルム1は、第1縁部4側の第1部分1aと、第2縁部5側の第2部分1bに区分される。おもて面フィルム1には、第1縁部4に沿う方向に延びるように、おもて面フィルム1を貫通するスリット8が形成されている。図4(a)に示すように、雄部材21と雌部材22を嵌合させた場合は、スリット8から収容部11へ通じる開口が閉じられ、パウチは再封される。
【0026】
このような第1縁部4、スリット8に沿って形成された嵌合具20は、いわゆるチャック(ジッパー)として用いることができ、収容部11を開封したり、再封したりすることが可能となる。なお、嵌合具20の接合面は図1図4(a)の態様に限定されるものではなく、第1基部21aの第1部分21aa、第2基部22aの第1部分22aaは、裏面フィルム2をスリット形成面として、その内面に接合されていてもよい。
【0027】
嵌合具20の材料としては、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3として用いられる積層フィルムのシーラント層と相溶性を有する樹脂を用いることができる。嵌合具20は、図4に示すように雄部材21と雌部材22からなり、雄部材21、雌部材22はともにおもて面フィルム1の内面にヒートシールにより接合される。このとき、雄部材21と雌部材22の間に遮熱板(図示省略)を介在させることにより、雄部材21と雌部材22の熱融着を防止する。
【0028】
本実施形態では、第1基部21aと第2基部22aは、1つの連続する部材(テープ)で構成されている。この連続する部材には、薄肉部20bが存在し、薄肉部20bを最も第2縁部5寄りにして折り返すことにより、嵌合具20の第2縁部5寄りの端部20aを形成する。この端部20aは、第1基部21aと第2基部22aの境界となっている。
【0029】
おもて面フィルム1の外面の所定の位置には、嵌合具20が存在すること、および嵌合具20の使用の方法を印刷しておくことができる。例えば、「ここまでチャックを閉めて電子レンジにかけて下さい。」、「この部分は閉じないで電子レンジにかけて下さい。」というようなメッセージを印刷しておくことができる。このようなメッセージは、おもて面フィルム1の第2部分1bに形成しておくことが好ましい。
【0030】
雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bは、互いに嵌合することができる形状であれば、特に形状は限定されない。上述のように、雄型嵌合部21bは、1本の柱部21baとその柱部21baの延伸方向と交差する両方向にそれぞれ突出する外方突起部21bb、21bbを有している。また、雌型嵌合部22bは、2本の柱部22ba、22baと、各柱部22baについて、雌型嵌合部22bの内方に向かって突出する内方突起部22bbを有している。
【0031】
嵌合具20においては、雄型嵌合部21bにおいて外方突起部21bbが外方に突出しており、雌型嵌合部22bにおいて内方突起部22bbが内方に突出している。そして、それぞれ対応する外方突起部21bbと内方突起部22bbが、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bが対向する方向(おもて面フィルム1と裏面フィルム2が対向する方向)において重複して位置している。このため、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合を外そうとする場合、対応する外方突起部21bbと内方突起部22bbが押し合うため、弱い力では嵌合が外れない。
【0032】
本実施形態では、収容部11内の圧力が高まった場合に、比較的弱い力で雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合が外れるようにするため、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの形状に工夫を施している。具体的には、図4(c)に示すように、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bを嵌合させた状態で、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bが対向する方向における、対応する外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dが所定の距離以上であるように形成している。対応する外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dが所定の距離以上であることにより、対応する外方突起部21bbと内方突起部22bbの間に所定の大きさの空間(隙間)が生じる。対応する外方突起部21bbと内方突起部22bbの間に所定の大きさの空間が存在することにより、パウチが加熱された場合に、この空間の圧力が高まる。そして、外方突起部21bbと内方突起部22bbは、この空間から互いに離れる方向に向けて力が働き、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合が外れ易くなる。
【0033】
外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dとしては、0.3mm以上1mm以下とすることが好ましい。この距離Dが0.3mm未満であると、加熱による圧力の高まりで嵌合が外れることが困難であり、距離Dが1mmを超えると、十分に加熱される前に嵌合が外れ易くなるためである。特に、外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dが0.3mm以上であると、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの、パウチの内側から加わる力に対する内側嵌合強度(詳しくは後述する)が所定の範囲となる。このため、適度に加熱した場合に、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合が外れることになる。外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dは、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの内側嵌合強度が3N以上40N以下となるように設定することが好ましい。
【0034】
図5の例では、収容部11に内容物(調味料など)の充填後、第1縁部シール部14で封止する。その後、嵌合具20の嵌合を外すことにより、スリット8から収容部11への開口が生じ、利用者が、調味料をスリット8から加えることも可能となる。
【0035】
図4(c)に示すように、本実施形態では、外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dを調整することにより、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合力である内側嵌合強度が3N以上40N以下となるように設定している。このため、パウチの加熱により収容部11内の圧力が高まった場合に、収容部の内部を十分に蒸らした後、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合が外れて、外部に蒸気が抜けていく。このように、開閉機構である嵌合具20に蒸気抜き機構として備えることにより、フィルムどうしを接合するシール部に蒸気抜き機構を設ける必要がなくなる。このため、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3として用いる積層フィルムにイージーピールやシール後退し易いシーラント層を用いる必要がなくなる。したがって、従来のパウチよりも強度面で優れたパウチを提供することができる。
【0036】
おもて面フィルム1と接合される雄部材21の第1基部21aは、第1縁部4と第2縁部5を結ぶ方向において、中央部分で雄型嵌合部21bと連接されており、この中央部分より第1縁部4側と、中央部分より第2縁部5側においては、雄型嵌合部21bと連接されていないリブとなっている。実際には、このリブの部分だけがおもて面フィルム1に接合されているが、図4の例では、図面が煩雑になるのを避けるため、第1基部21aの第1部分21aa全体がおもて面フィルム1の内面に接する状態で示している。
【0037】
一例として、第1縁部4と第2縁部5を結ぶ方向における、第1部分21aaの長さL4=13mmで、その内訳が雄型嵌合部21bとの連接部分3mm、第1縁部4側、第2縁部5側のリブがそれぞれ5mmとすることができる。
【0038】
嵌合具20は雄部材21と雌部材22が嵌合により開口が閉じられているだけであり、接合されて密封されているわけではない。そのため、収容部11内の圧力が高まって、嵌合具20に圧力が加わった場合に、雄部材21と雌部材22の嵌合が外れて、スリット8を開口端とする開口が生じ、スリット8から蒸気が抜ける。
【0039】
<フィルムの詳細>
パウチのおもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3としては、積層フィルムを用いることができる。積層フィルムは、少なくとも、外側から、基材層、シーラント層を含む積層体である。例えば、積層フィルムは、外側から順に、基材層、印刷層、他の層(例えばバリア層)、シーラント層を積層して形成されている。印刷層、他の層は必須ではない。また、これらの各層を積層するために接着剤層を用いることもできる。シーラント層は、パウチの最内面を構成する層である。本実施形態に係るパウチは、熱に対する耐性を必要とされる。このため、基材層は、耐熱性をもつ材料からなることが好ましい。例えば、基材層の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。厚みは、10μm~50μm程度である。基材層は、二軸延伸されていることが好ましい。
【0040】
また、積層フィルムは、複数の基材層を備えていてもよい。複数の基材層として第1基材層、第2基材層を備えることができる。第1基材層、第2基材層としては、上記材料の中から、適宜組み合わせて採用することができる。例えば、最外層である第1基材層としてポリエチレンテレフタレートを用い、内層(シーラント層側)である第2基材層としてポリアミドを用いることができる。第2基材層は、一方の側縁から他方の側縁に向かって延伸されている。第2基材層としては、例えば、バリア性に優れたMXD(メタキシレンジアミン)を含む、ユニチカ株式会社製「エンブレム(登録商標)NC」を用いることができる。また、第2基材層として、ユニチカ株式会社製「エンブレット(登録商標)PC」や、ユニチカ株式会社製「エンブレット(登録商標)PCBC」などのポリエステルを用いてもよい。第1基材層と第2基材層は、例えばドライラミネート法を用いて積層することができる。
【0041】
印刷層は、商品内容を表示したり美感を付与したりカット部分を表示したりするために設けられる。印刷層は、バインダーと顔料を含む印刷インキにより形成される。シーラント層は、積層フィルムのうち、製袋してパウチとするときの最も容器の内方となる側に配置される。シーラント層の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂などが採用できる。シーラント層の厚みは、30μm以上150μm以下である。シーラント層は未延伸であることが好ましい。
【0042】
積層フィルムは、他の層を含んでいてもよい。他の層は、基材層の外側に設けられていてもよいし、基材層とシーラント層の間に設けられていてもよい。他の層としては、水蒸気その他のガスバリア性、遮光性など、必要とされる機能に応じて、適切なものが選択される。例えば、他の層がガスバリア層の場合、酸化アルミニウムなどの金属酸化物や酸化珪素などの無機酸化物の蒸着層が設けられる。蒸着層は、基材層に積層してもよいし、シーラント層に蒸着してもよい。その他にも、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)や、ナイロンMXD6などの芳香族ポリアミドなどの、ガスバリア性を有する樹脂層を設けてもよい。各層は、ドライラミネート法や溶融押し出し法などを用いて積層することができる。
【0043】
積層フィルムの層構成の具体例としては、例えば、基材層が1層のものとして以下のようなものが挙げられる。もちろん以下に限定されるものではない。
【0044】
・透明蒸着延伸ナイロン(ONY)15μm/印刷層(インキ)/接着剤/直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)60μm(総厚79μm)
・透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/印刷層/接着剤/LLDPE80μm(総厚96μm)
また、基材層が2層のものとして以下のようなものが挙げられる。
・透明蒸着PET12μm/印刷層/接着剤/ONY15μm/接着剤/LLDPE50μm(総厚81μm)
・ONY15μm/印刷層/接着剤/透明蒸着PET12μm/接着剤/LLDPE80μm(総厚111μm)
・透明蒸着PET12μm/印刷層/接着剤/ONY15μm/接着剤/CPP50μm(総厚81μm)
・PET12μm/印刷層/接着剤/透明蒸着PET12μm/接着剤/CPP60μm(総厚88μm)
【0045】
透明蒸着がなされた基材層は、バリア層としても機能する。積層フィルムの総厚は特に限定されないが、適度な蒸気抜きを行うためには、75μm以上130μm以下であることが好ましい。
【0046】
<製造方法>
図1に示したような本実施形態に係るパウチの製造方法について説明する。図6は、開閉機構である嵌合具20を構成するフィルムの断面図である。上述のように、嵌合具20は、雄部材21と雌部材22が薄肉部20bにおける端部20aで折り返されて形成されている。嵌合具20は、雄部材21と雌部材22が連続する1枚のフィルムとして形成されている。この1枚のフィルムは単層構造であってもよいし、複数層からなる積層フィルムであってもよい。
【0047】
まず、図6に示したような嵌合具20を用意する。具体的には、樹脂成形加工を行って、所定の位置に雄部材21と雌部材22を形成し、雄部材21と雌部材22の間に、薄肉部20bを形成する。薄肉部20bは、押罫により形成することもできるし、金型を用いて押し出し成形により、形成することもできる。次に、おもて面フィルム1を用意し、おもて面フィルムの所定の位置にスリット8を形成する。そして、嵌合具部材20Aを、薄肉部20bにおける所定の位置を端部20aとして折り返す。さらに、第1基部21aの第1部分21aaと第2基部22aの第1部分22aaを、スリット8を挟む位置にそれぞれヒートシールして、おもて面フィルム1に嵌合具20を接合する。
【0048】
次に、図3に示すようにして、裏面フィルム2と底面フィルム3を、おもて面フィルム1に対して所定の位置に配置する。この後、底部シール部15、第3縁部シール部16、第4縁部シール部17をヒートシールにより形成する。第1縁部4側は未シールとし、内容物の充填のための開口が形成された状態とする。第3縁部シール部16と第4縁部シール部17の間で切断することにより、各個体が連続フィルムから分離され、図1図2に示したようなパウチが得られる。
【0049】
図1図2に示したようなパウチは、第1縁部4が未シールの状態で、販売等で流通される場合もある。さらに、未シールの状態の第1縁部4の開口から収容部11に内容物の収容を行った後、第1縁部4に第1縁部シール部14を形成してパウチを封止する。これにより、図5に示したような封止されたパウチが得られる。なお、実際には、内容物が収容された状態で封止されるが、図5においては、図示の都合上、内容物を省略している。
【0050】
<使用方法>
図5に示したような本実施形態に係るパウチの使用方法について説明する。封止された状態では、第1の内容物が収容部11に収容されている。この状態で、おもて面フィルム1に形成されたスリット8から指を入れて、おもて面フィルム1のスリット8より第2縁部5寄りの部分である第2部分1bを外方に引っ張り、嵌合具20の雄部材21と雌部材22の嵌合を外す。さらに、この引っ張る力により、嵌合具20の薄肉部20bに位置する端部20aにおいて、雄部材21と雌部材22が分離する。図8は開閉機構である嵌合具20により開封した状態のパウチの断面図である。図8に示すように、雄部材21と雌部材22が分離することにより、スリット8から収容部11が連通し、パウチが開封され、外部から食材の投入が可能となる。そして、スリット8から、例えば固形物、乾燥食品(乾燥麺、乾燥食材、粉末調味料、ドライフルーツ)、冷凍食品等の内容物が収容された収容部11内に、水や調味料を第2の内容物として加える。そして、パウチを再封する。すなわち雄部材21と雌部材22を嵌合させて、スリット8から繋がる開口を閉じる。
【0051】
第2の内容物である水や調味料を投入して再封した後、第2縁部5を下方にして電子レンジ内に載置する。そして、電子レンジによる加熱を行う。これによって、収容部11内の温度が高くなり、収容部11内の水分が蒸発して収容部11内の圧力が増加する。
【0052】
収容部11内の圧力が増加すると、収容部11内から受ける力によっておもて面フィルム1及び裏面フィルム2が外側に膨らむ。この際、収容部11においては、収容部11を画成する第3縁部シール部16、第4縁部シール部17、第1底部シール部15a、開閉機構である嵌合具20に、収容部11の中心から外側に向かう方向からの力が加わる。特に、図4(c)に示したように、外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dが所定の距離以上である場合、外方突起部21bbと内方突起部22bbに挟まれた空間内の圧力が高まり、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合を外す方向に力が働く。
【0053】
この状態から、電子レンジによる加熱が続き、収容部11内の圧力が高くなると、収容部11から受ける力によって、おもて面フィルム1及び裏面フィルム2が外側にさらに膨らむ。ここで本実施形態のパウチでは、外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dが所定の距離以上である場合、外方突起部21bbと内方突起部22bbに挟まれた空間内の圧力が高まり、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合を外す方向に力が働く。そして、十分な加熱が行われた後、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bの嵌合が外れ、蒸気が抜け出す。外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dが所定の距離以上であって、空間を設けた場合であっても、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bは嵌合しているため、ある程度の内側嵌合強度は備えている。このため、収容部11内では、蒸気が充満した状態が長く続き、食材を十分に蒸らすことができる。
【0054】
所定時間の加熱後、適度な水分を吸収した食材は、適度な弾力を備え、ほどよい食感となる。上記のように、本実施形態に係るパウチの使用方法は、開閉機構である嵌合具20を開けてパウチを開封した後、スリット8を介して第2の内容物を収容する工程と、開閉機構である嵌合具20を閉じた後、電子レンジを用いて加熱する工程と、を含む。これにより、簡単に内容物である食材の調理を行うことが可能となる。
【0055】
<実施例1>
基材層として厚み12μmの透明蒸着PETフィルム、シーラント層として厚み60μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを用いた。具体的には、まず、基材層となる厚み12μmの透明蒸着PETフィルムの内面側に印刷層を形成した。印刷層としては、嵌合具20が存在すること、および嵌合具20の使用の方法を示す印刷も含むことができる。その後、接着剤層を介して印刷層側の面に厚み15μmの延伸ナイロン(ONY)フィルムを貼り合わせた。さらに、接着剤層を介してONYフィルム側の面と厚み60μmのCPPフィルムを貼り合わせた。この結果、透明蒸着PET/印刷層/接着剤層/ONY15μm/接着剤層/CPP60μmの層構成となる積層フィルムである包装材料が得られた。接着剤層は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物である。
【0056】
得られた包装材料である積層フィルムを、160mm×160mmに切り出しておもて面フィルム1と裏面フィルム2を形成した。続いて、積層フィルムを、160mm×70mmに切り出して底面フィルム3を形成した。さらに、シーラント層であるCPPと相溶性を有するポリプロピレン製の嵌合具20を用意した。嵌合具20の幅L4は13mmとした。また、この嵌合具20における外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dは0.35mmであった。そして、雄部材21と雌部材22の間に遮熱板(図示省略)を介在させてヒートシールして、おもて面フィルム1の内面側に第1基部21aの第1部分21aa、第2基部の第1部分22aaをそれぞれ接合した。第1基部21aの第1部分21aaは、スリット8より第1縁部4寄りの位置に、第2基部22aの第1部分22aaは、スリット8より第2縁部5寄りの位置に、それぞれ接合した。
【0057】
続いて、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3を用いて図1に示した第1の実施形態に係るパウチ(第1縁部シール部14が形成されていない状態のパウチ)を形成した。その後、第1縁部4側から収容部11に内容物として麻婆豆腐の素150gを充填した。
【0058】
そして、第1縁部シール部14を形成して、図5に示すパウチを形成した。第1縁部シール部14のシール幅を10mm、第1底部シール部15aと第2縁部5の距離が最短となる位置のシール幅を5mm、第3縁部シール部16、第4縁部シール部17のシール幅を6mmとした。折込部3aからパウチの第2縁部5までの距離H1は35mm、第1縁部4からスリット8までの距離H2は30mm、第1縁部4と第2縁部5の距離H3(パウチの高さ)は160mm、第3縁部6と第4縁部7の距離W(パウチの幅)は160mm、とした。
【0059】
<実施例2>
外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dを0.5mmとした嵌合具20を用いた以外は、実施例1と同様にして、本実施形態に係るパウチを形成した。
【0060】
<実施例3>
外方突起部21bbと内方突起部22bbの距離Dを0.7mmとした嵌合具20を用いた以外は、実施例1と同様にして、本実施形態に係るパウチを形成した。
【0061】
<加熱実験>
実施例と比較例のパウチについて、さらに、第1の内容物である麻婆豆腐の素150gを収容して封止したパウチを冷凍した。冷凍ミールキットとして利用する際の条件に合わせるためである。本実施形態に係るパウチは、おもて面フィルム1にスリット8が形成されているが、冷凍して流通させる場合は、内容物の漏れの可能性が少ない。冷凍後、加熱実験を行った。まず、冷凍した状態の麻婆豆腐の素150gを500Wで1分加熱して半解凍した。半解凍後、第2の内容物である豆腐を投入するため、パウチを開封した。具体的には、おもて面フィルム1に形成されたスリット8から指を入れて、おもて面フィルム1のスリット8より第2縁部5寄りの部分を外方に引っ張り、雄部材21と雌部材22の嵌合を外した。さらに、この引っ張る力により、端部20aにおいて、雄部材21と雌部材22が分離した。これにより、スリット8から収容部11が連通し、パウチが開封された。そして、外部から食材の投入が可能となった。
【0062】
続いて、パウチを自立させ、麻婆豆腐の素が入っている収容部11に、カットした豆腐200gを加えた。そして、雄部材21と雌部材22を嵌合して開口を閉じることによりパウチを再封した。その後、第2縁部5を下方にした状態で電子レンジ内に載置し、500Wで3分間加熱した。加熱後、蒸気抜けについて上手く抜けているか否かについて、パウチの膨らみの程度を目視確認するとともに、雄部材21と雌部材22の嵌合状態について、雄部材21と雌部材22の嵌合が外れているか否かを目視確認した。嵌合が外れている場合は〇とし、嵌合が外れてない場合は×として評価した。
【0063】
また、実施例、比較例1、2に用いた嵌合具20の内側嵌合強度について試験を行った。内側嵌合強度とは、パウチの内側から加わる力に対する強度である。試験として、具体的には、嵌合具20の雄部材21の雄型嵌合部21bの延伸方向にS1mm、雄型嵌合部21bの延伸方向と直交する方向に第1基部21aがS2mm延伸している雄部材21と、雌型嵌合部22bの延伸方向にS1mm、雄型嵌合部21bの延伸方向と直交する方向に第2基部22aがS2mm延伸している雌部材22を用意して、雄型嵌合部21bと雌型嵌合部22bを嵌合させた試験片Sを形成する。本引張試験ではS1=50、S2=40とした。図7(a)は第1基部21aと第2基部22aを広げた状態における試験片Sの平面図である。
【0064】
図7(b)のように雌部材22の第1部分を雄部材21と雌部材22を嵌合させた状態で、引張試験装置により試験片Sの第1基部21a、第2基部22aを一対のチャック40、40で引っ張り、雄部材21と雌部材22の嵌合が外れるまで引張荷重を加え、その間の最大荷重を内側嵌合強度(単位N/50mm)とした。試験片Sの幅は50mmとした。引張試験装置としてはオリエンテック社製「テンシロン万能試験機RTF」を用い、チャック間距離L:20mm、引張試験速度:500mm/minとした。内側嵌合強度については、各実施例、比較例について、それぞれ5回測定し、平均値も記録した。評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示したように、内側嵌合強度が比較的弱い実施例1では、加熱により高まった圧力により、嵌合が外れ、内部の蒸気が外部に抜け出た。内側嵌合強度が比較的強い実施例2、3では、嵌合力が加熱により高まった圧力に勝り、嵌合が外れず、内部の蒸気が外部に抜け出なかった。嵌合が外れない場合、内部の圧力が高まり過ぎてしまうという不具合もあるが、加熱時間を調節することにより利用は可能である。加熱した際に、適度な圧力で嵌合が外れるようにするためには、実施例1の5.8Nより大きく、実施例3の45.0Nより小さい範囲に内側嵌合強度の上限を設定しておくことが好ましい。具体的には、内側嵌合強度の上限は40Nとすることが好ましい。また、通常使用時に嵌合が外れないようにするため、下限は3Nとすることが好ましい。したがって、内側嵌合強度を3N以上40N以下とすることが好ましい。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、底面フィルム3を備え、底部ガセット部9を設けるようにしたが、必ずしも底部ガセット部9を設ける必要はなく、おもて面フィルム1、裏面フィルム2により収容部11が構成される、いわゆる平パウチの形態であってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、おもて面フィルム1と裏面フィルム2は、説明の便宜上、「おもて」と「裏」を定めている。おもて面フィルム1と裏面フィルム2は、互いに対称であるため、どちらを「おもて」として、どちらを「裏」としてもよい。第3縁部6と第4縁部7も互いに対称であるため、どちらを第3縁部とし、どちらを第4縁部としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3を、それぞれ3枚の別体のフィルムとしてパウチを構成するようにしたが、2枚や1枚のフィルムで構成してもよい。例えば、おもて面フィルム1と底面フィルム3と裏面フィルム2が連設された1枚のフィルムを用いてもよいし、おもて面フィルム1を構成するフィルムと、裏面フィルム2と底面フィルム3が連設されたフィルムの計2枚のフィルムを用いてもよい。おもて面フィルム1と底面フィルム3と裏面フィルム2が連設された1枚のフィルムを用いた場合、第2縁部5においてシール部を形成せず、1枚のフィルムを第2縁部5で2回、折込部3aで1回折り返すことにより、底部ガセット部9を形成することができる。この場合、第1縁部4側の開口から内容物を充填した後、第1縁部シール部14を形成してパウチを封止する。
【符号の説明】
【0070】
1・・・おもて面フィルム
2・・・裏面フィルム
3・・・底面フィルム
3a・・・折込部
3f・・・底面フィルムの第1部分
3g・・・底面フィルムの第2部分
4・・・第1縁部
5・・・第2縁部
6・・・第3縁部
7・・・第4縁部
8・・・スリット
9・・・底部ガセット部
9a・・・第1ひだ部
9b・・・第2ひだ部
11・・・収容部
14・・・第1縁部シール部
14a・・・第1縁部シール予定部
15・・・底部シール部
15a・・・第1底部シール部
15b・・・第2底部シール部
16・・・第3縁部シール部
17・・・第4縁部シール部
20・・・嵌合具(開閉機構)
20a・・・(嵌合具の)端部
20b・・・(嵌合具の)薄肉部
21・・・雄部材
21a・・・第1基部
21aa・・・(第1基部21aの)第1部分
21ab・・・(第1基部21aの)第2部分
21b・・・雄型嵌合部
21ba・・・(雄型嵌合部21bの)柱部
21bb・・・(雄型嵌合部21bの)外方突起部
22・・・雌部材
22a・・・第2基部
22aa・・・(第2基部22aの)第1部分
22ab・・・(第2基部22aの)第2部分
22b・・・雌型嵌合部
22ba・・・(雌型嵌合部22bの)柱部
22bb・・・(雌型嵌合部22bの)内方突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8