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特許7567215繊維構造体製造装置、繊維構造体製造方法、繊維構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】繊維構造体製造装置、繊維構造体製造方法、繊維構造体
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/736 20120101AFI20241008BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20241008BHJP
   D04H 1/542 20120101ALI20241008BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20241008BHJP
【FI】
D04H1/736
B32B5/26
D04H1/542
D04H1/732
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020096685
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021188206
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山上 利昭
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 洋一
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-116513(JP,A)
【文献】特開2001-018314(JP,A)
【文献】特開平09-220709(JP,A)
【文献】特開平08-311755(JP,A)
【文献】特開2018-016908(JP,A)
【文献】特開2019-131910(JP,A)
【文献】特開2015-037842(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018317(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/736
B32B 5/26
D04H 1/542
D04H 1/732
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含有する繊維原料を粉砕して解繊する解繊部と、
前記解繊部で解繊された解繊物を搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送される前記解繊物に溶融材料を混入する溶融材料混入部と、
前記溶融材料が混入された混合物を堆積させて繊維状ウエブを成形する繊維状ウエブ成
形部と、
前記繊維状ウエブ成形部に形状維持シートを供給するシート供給部と、
前記形状維持シートと積層した前記繊維状ウエブを加熱加圧して繊維構造体を形成する
加熱加圧機構と、を有し、
前記シート供給部は、前記形状維持シートの前記繊維状ウエブと接する側の表面毛羽
った前記形状維持シートを供給する、ことを特徴とする繊維構造体製造装置。
【請求項2】
前記シート供給部は、前記形状維持シートの前記表面を毛羽立たせる毛羽立たせ部を有
する請求項1に記載の繊維構造体製造装置。
【請求項3】
繊維を含有する繊維原料を粉砕で解繊し、
解繊された解繊物を搬送し、搬送される前記解繊物に溶融材料を混入し、
前記溶融材料が混入された混合物を堆積させて繊維状ウエブを成形し、
前記繊維状ウエブと接触させる側の表面を毛羽立たせた形状維持シートを、成形された
前記繊維状ウエブに積層し、
前記形状維持シートが積層した前記繊維状ウエブを加熱加圧して繊維構造体を成形する
、ことを特徴とする繊維構造体製造方法。
【請求項4】
繊維を含有する繊維原料を粉砕で解繊し、
解繊された解繊物を搬送し、搬送される前記解繊物に溶融材料を混入し、
表面を毛羽立たせた第1形状維持シートの前記表面上に、前記溶融材料が混入された混
合物を堆積させて繊維状ウエブを成形し、
記繊維状ウエブを加熱加圧して繊維構造体を成形する、ことを特徴とする繊維構造体
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維構造体製造装置、繊維構造体製造方法、及び繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、古紙を乾式で解繊した解繊物と熱可塑性樹脂とを混合して連続したウエブを形成し、形成されたウエブを、金属製の網状ベルト等の通気性運送用支持体で挟んだ状態で加熱することで古紙ボードを製造する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-1513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の製造方法では、単にウエブを挟んで加熱加圧するのみなので、古紙ボードの表面部分の繊維がほぐれ易く、型崩れを起こしてしまう、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
繊維構造体製造装置は、繊維を含有する繊維原料を粉砕して解繊する解繊部と、前記解繊部で解繊された解繊物を搬送する搬送部と、前記搬送部で搬送される前記解繊物に溶融材料を混入する溶融材料混入部と、前記溶融材料が混入された混合物を堆積させて繊維状ウエブを成形する繊維状ウエブ成形部と、前記繊維状ウエブに形状維持シートを供給するシート供給部と、前記形状維持シートが供給された前記繊維状ウエブを加熱加圧して繊維構造体を形成する加熱加圧機構と、を有し、前記シート供給部は、前記形状維持シートの前記繊維状ウエブと接する側の表面を毛羽立たせて前記形状維持シートを供給する。
【0006】
繊維構造体製造方法は、繊維を含有する繊維原料を粉砕で解繊し、解繊された解繊物を搬送し、搬送される前記解繊物に溶融材料を混入し、前記溶融材料が混入された混合物を堆積させて繊維状ウエブを成形し、前記繊維状ウエブと接触させる側の表面を毛羽立たせた形状維持シートを、前記繊維状ウエブに供給し、前記形状維持シートが供給された前記繊維状ウエブを加熱加圧して繊維構造体を成形する。
【0007】
繊維構造体製造方法は、繊維を含有する繊維原料を粉砕で解繊し、解繊された解繊物を搬送し、搬送される前記解繊物に溶融材料を混入し、表面を毛羽立たせた第1形状維持シートの前記表面上に、前記溶融材料が混入された混合物を堆積させて繊維状ウエブを成形し、前記繊維状ウエブに対して、前記第1形状維持シートが配置された側と反対側に、表面を毛羽立たせた第2形状維持シートの前記表面が前記繊維状ウエブに接触するように、前記第2形状維持シートを供給し、前記第1形状維持シートの毛羽立たせた前記表面と、前記第2形状維持シートの毛羽立たせた前記表面と、で挟まれた状態の前記繊維状ウエブを加熱加圧して繊維構造体を成形する。
【0008】
繊維構造体は、上記繊維構造体製造方法により製造される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】繊維構造体の製造方法を示すフローチャート。
図2】繊維構造体製造装置の概略構成を示す模式図。
図3】毛羽立ち状態を示す模式図。
図4】毛羽立たせ部の構成を示す概略図。
図5A】繊維構造体の構成を示す模式図。
図5B】繊維構造体の構成を示す模式図。
図6】ピーリングテストの試験方法を示す概略図。
図7】ピーリングテストの試験結果を示す図。
図8】他の毛羽立たせ部の構成を示す概略図。
図9】他の毛羽立たせ部の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る繊維構造体Mの製造方法を示すフローチャートである。図2は本発明の実施形態に係る繊維構造体製造装置1の概略構成を示す模式図である。本実施形態に係る繊維構造体製造装置1は、水を極力利用しない乾式によって、古紙を新たな繊維構造体Mに再生する技術に基づくものである。
【0011】
なお、製造された繊維構造体Mは、音を吸収する吸音材、外部からの衝撃を吸収する緩衝材(梱包材)、としても使用することが可能である。吸音材としての繊維構造体Mは、各種家電製品などの内部に配設されることで、装置外部への動作音を抑制することが可能である。また、家電製品のみならず各種建材、あるいは、音響調整のためコンサートホールなどに配設される吸音材として利用することも可能である。
【0012】
本発明の実施形態に係る繊維構造体Mの製造方法は、繊維を含有する繊維原料を粉砕で解繊する解繊工程(ステップS11)と、解繊された解繊物を搬送し、搬送される解繊物に溶融材料を混入する混入工程(ステップS12)と、表面を毛羽立たせた第1形状維持シートN1の表面上に、溶融材料が混入された混合物を堆積させて繊維状ウエブSを成形する繊維状ウエブ成形工程(ステップS13)と、繊維状ウエブSに対して、第1形状維持シートN1が配置された側と反対側に、表面を毛羽立たせた第2形状維持シートN2の表面が繊維状ウエブSに接触するように、第2形状維持シートN2を供給する第2形状維持シート供給工程(ステップS14)と、第1形状維持シートN1の毛羽立たせた表面と、第2形状維持シートN2の毛羽立たせた表面と、で挟まれた状態の繊維状ウエブSを加熱加圧して繊維構造体Mを成形する成形工程(ステップS15)と、を含む。
以下、繊維構造体Mを製造可能な繊維構造体製造装置1の構成について説明する。
【0013】
本実施形態に係る繊維構造体製造装置1に供給する繊維を含有するシート原料Saとしては、環境面を考慮して古紙、例えば使用済み段ボールや、古新聞紙も使用可能だが、リサイクルルートが十分確立されていないオフィス古紙を、たとえば、オフィスで現在主流となっているA4サイズの一般古紙や、機密古紙などを用いることを想定している。このような繊維を含有するシート原料Saを繊維構造体製造装置1の粗砕機10に投入することで、粗砕機10の粗砕刃11によって繊維を含有するシート原料Saを数センチ角の紙片に分断する。また、このような粗砕機10には、繊維を含有するシート原料Saを連続的に投入するための自動送り機構5が設けられていることが好ましい。自動送り機構5における投入速度は生産性を考えると高いほうがよい。
【0014】
粗砕機10における粗砕刃11は通常のシュレッダーの刃の切断幅を広げたような装置とすることで対応が可能である。粗砕刃11で数センチ角に分断された粗砕片(紙片)は、定量供給機50を通じてホッパー12から粗砕片(紙片)導入管20を経て次工程である解繊工程へと導入されてもよい。
【0015】
定量供給機50は、解繊機に定量的に材料が投入されれば、いずれの方法でもよいが、振動フィーダーが好適である。
【0016】
振動フィーダーでは、軽い紙片は静電気などに影響され、搬送が一定にならない傾向があるので、前工程の粗砕機10で重送等することで、ブロック状にしておくことが好ましい。ブロックのサイズは一個あたり0.5~2gにしておくのが好適である。
【0017】
振動フィーダーには、粗砕機10から連続でもよいが、フレキシブルコンテナーに一回貯めて供給してもよい。このときフレキシブルコンテナーがバッファーになり、古紙回収の増減による製造装置への影響を少なくすることができる。フレキシブルコンテナーによる供給は、生産量にもよるが、1時間程度生産できる量がよい。フレキシブルコンテナーから一度に大量に振動フィーダーに供給されると、振動フィーダーの振動に影響がでるので、フレキシブルコンテナーからも徐々に投入することがよい。徐々に投入する方法は、フレキシブルコンテナーを傾斜させたり、モーター等で揺動を与えたり、エアシリンダーで部分的に突っつく方法等がとれる。
【0018】
粗砕紙(紙片)導入管20は乾式解繊機30の導入口31に連通しており、導入口31から乾式解繊機30内に導かれた粗砕紙(紙片)は、回転するローター34と、ステーター33と間で解繊される。乾式解繊機30は気流も発生する機構となっており、解繊された繊維はこの気流に乗って排出口32から搬送部を構成する搬送管40へと導かれる。
【0019】
ここで、解繊部を構成する乾式解繊機30の具体例につき説明する。乾式解繊機30には、例えば、ディスクリファイナーや、ターボミル(フロイントターボ株式会社製)、セレンミラー(増幸産業業株式会社製)、特開平6-93585号公報で開示されているような、風発生機構を備えた乾式古紙解繊装置等を利用することができる。このような乾式解繊機30へ投入する紙片のサイズは、通常のシュレッダーにより排出されるものでもよいが、製造される繊維構造体M(例えば、再生紙)の強度を考慮すると、大きすぎると乾式解繊機30への投入が困難になるので、粗砕機10から排出される粗砕片(紙片)サイズは、数センチ角になったものが望ましい。
【0020】
また、風発生機構を備える乾式解繊機30においては、自らの発生する気流によって、導入口31から、粗砕片(紙片)を気流と共に吸引し、解繊処理し、排出口32側へと搬送する。解繊機は、投入された粗砕片(紙片)を綿状に解繊する。
【0021】
例えば、ターボミル形式である、インペラーミル250(株式会社セイシン企業製)では、出口側に12枚のブレードを設置することで、8000rpm(周速約100m/s)のとき、約3m3/minの風量を発生することができる。このときの導入口31側での風速は約4m/sでありこの気流に乗って粗砕片(紙片)は導入される。導入された粗砕片(紙片)は、高速回転するブレードと、ステーターの間で解繊され、排出口32から排出される。排出速度は排出管径φ100で約6.5m/sである。
【0022】
なお、風発生機構を備えていない乾式解繊機30を用いる場合には、粗紙片(紙片)を導入口31に導く気流を発生させるブロア等別途設けるようにすればよい。
【0023】
乾式解繊機30における解繊工程では、粗砕片(紙片)の形がなくなるまでパルプを繊維状に解繊することが、後の工程において成形される繊維構造体Mのムラがなくなるので好ましい。このとき、印刷されたインクやトナー、にじみ防止剤等の紙への塗工・添加材料(製紙用薬剤)等も粉砕され、数十μm以下の粒となるまで粉砕される(以下、インク粒・製紙用薬剤)。したがって、乾式解繊機30からのアウトプットは、粗砕片(紙片)の解繊により得られる繊維とインク粒・製紙用薬剤である。
【0024】
また、乾式解繊機30として、例えば、ディスクリファイナーを用いる場合には、円盤状の面に半径方向に刃が形成されているが、円周にふちのある刃が望ましい。また、ローター34側の回転刃と、ステーター33側の固定刃のギャップは紙片の厚さ程度、例えば100~150μm程度に維持することが望ましい。このとき解繊物は回転刃の発生する気流により外周に移動し、排出口32から排出される。
【0025】
乾式解繊機30から排出(φ100で断面積約78cm2)された解繊物(解繊繊維)は、搬送管40及び搬送管60を通過して、繊維状ウエブ成形機100へと導かれる。
【0026】
搬送管60からは、溶融材料搬送管61が枝分かれしている。
溶融材料ホッパー13から投入される溶融材料は、溶融材料調整バルブ65によってその分量が調整され、この溶融材料搬送管61を経て搬送管60に供給され、溶融材料混入部を構成する搬送管60で搬送されている解繊繊維に溶融材料を混入させることができるようになっている。搬送量は、供給機を秤にのせその減量分を測定しバルブ開度を調整する方法で、精度をあげることもできる。
【0027】
溶融材料搬送管61の管径は搬送管60の管径より小さくすることが望ましい。風速が向上し気流中で溶融材料が分散しやすくなるからである。
【0028】
溶融材料は、解繊繊維により繊維構造体Mを成形したときに成形体としての強度を保ったり、紙粉・繊維の飛散を防止に寄与したりするものである。溶融材料は、解繊繊維中に添加され、加熱されることで、解繊繊維と融着する。溶融材料は、搬送性から室温+20℃で個体であり、加熱工程により溶融するものなら、繊維状、粉状どのようなものでもよいが、200℃以下で溶融するものが紙の黄変等がなくよい。さらに、エネルギー的に160℃以下で溶融するものがよい。
【0029】
また、溶融材料は、加熱成形時に溶融する熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。さらには、解繊綿繊維と絡みやすい繊維状が低密度品を作成する場合のぞましい。さらに、芯鞘構造の複合繊維が望ましい。芯鞘構造の溶融材料は、鞘部が低温で溶融し接着機能を発揮し、芯部が繊維状となって残留し形状を維持するので好ましい。例えば、ESファイバービジョン株式会社製ETC、INTACKシリーズ、帝人ファイバー株式会社製乾式不織布用ポリエステルファイバー テトロン(商標)等がよい。
【0030】
また、溶融繊維の線径は、0.5以上2.0dtex以下がよい。この線径より太いと十分な第1シートN1(第2シートN2)と繊維状ウエブ(解繊綿シート)Sとの間の接着強度が十分に得られず、また、細いと繊維の製造上芯鞘構造の場合、芯と鞘の中心のずれや、また、繊維の直線排出が困難な点、工程中解繊繊維径以下の径になるので、静電気による影響が大きい、混合にムラがでる等の問題がある。
【0031】
また、溶融樹脂繊維の長さとしては、1mmから10mm程度がよい、1mm以下では、接着強度が不足し繊維構造体Mの形状維持が困難になり、10mm以上では、気流中で繊維同士が糸玉をつくり、分散性を落とすからである。
【0032】
また、搬送管60においては、溶融材料搬送管61が枝分かれしている下方で、機能材料搬送管62が枝分かれしている。製品内に使われる部材としては、難燃剤粉が好適に使用される。ホッパー14から投入される機能材料としての難燃剤粉は、機能材料調整バルブ66によってその分量が調整され、この機能材料搬送管62を経て、搬送管60に供給され、搬送管60で搬送されている、溶融材料が混入された解繊繊維に難燃剤粉を混入させることができるようになっている。搬送量は、供給機を秤にのせその減量分を測定しバルブ開度を調整する方法で、精度をあげることもできる。
【0033】
機能材料搬送管62の管径は搬送管60の管径より小さくすることが望ましい。風速が向上し気流中で機能材料が分散しやすくなるからである。
【0034】
難燃剤は、解繊繊維により繊維状ウエブSを成形したときに、繊維状ウエブSに難燃性を付与するために添加されるものであり、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の水酸化物、ホウ酸やホウ酸アンモニウム等のホウ酸化合物、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル等のリン系の有機材料、メラミン、イソシアヌレート等の窒素含有物等のものを用いることができる。中でもメラミンリン酸系の複合剤がよい。
【0035】
難燃剤としては、固体の難燃剤が望ましい。固体難燃剤の平均粒径は1μm以上50μm以下であることが望ましい。平均粒径が1μmより小さいと、後のサクション工程で繊維状ウエブSとして堆積させる際、気流で搬送しにくくなる。また、50μmより大きくなると繊維への付着力が小さくなり脱落しやすくなり、ムラとなり、十分な難燃性を発揮できない。
【0036】
搬送管60を経て、溶融材料、機能材料が混入された解繊繊維は、繊維状ウエブ成形部を構成する繊維状ウエブ成形機100に導入される。
【0037】
第1形状維持シート供給部を構成する第1シート供給ローラー81からは、第1シート(第1形状維持シート)N1が繊維状ウエブ成形機100に供給される。この第1シート供給ローラー81から供給される第1シートN1は、毛羽立たせ部200により繊維状ウエブS側の面が毛羽立たせられ、繊維状ウエブ成形機100で形成される繊維状ウエブSの底面(第1面)の土台部となる。
【0038】
ここで、本発明における第1シートN1は、例えば、織布や不織布のいずれも利用することができる。サクション装置110による気流が第1シートN1を介して作用し、第1シートN1上に混合した解繊物と溶融材料や機能材料とが適切に堆積することができる。このサクションにより、乾式解繊機30によって細かくなった、古紙添加物、印刷インク粒が混合解繊材料から除去される。シートの目開きは、100μ以下が望ましい。第1シートN1は、製品の外観になるもので、着色されていてもよい。このように第1シートN1として、本実施形態においては、スパンボンド法によって製造されたポリエステル長繊維不織布である東洋紡株式会社製エクーレ(登録商標)3151Aを用いた。
【0039】
繊維状ウエブ成形機100の概略について説明する。繊維状ウエブ成形機100は、概略、解繊した繊維を気中(例えば、空気)に均一に分散させる分散機構と、これにより分散された解繊繊維をメッシュベルト122上に吸引する機構と、を有している。
【0040】
分散機構はフォーマードラムを有しており、回転するフォーマードラム内に混合解繊材料と混合気体(混合空気)が同時に供給される。フォーミングドラム101の表面には小孔スクリーンが設けられており、これから、溶融材料、機能材料が混入された解繊繊維が吐出されるようになっている。ドラムメッシュ孔径は混合解繊材料のサイズにもよるが、円形でもよいが、5mm×25mm程度の長孔が生産性と均一性を両立でき望ましい。
【0041】
混合気体(混合空気)は、解繊材料と、溶融材料、機能材料と、を混合させて、均一化し、フォーマードラムの穴を通過させる。
【0042】
フォーマードラム下には、整流板が設置され、幅方向の均一性を調整することができる。整流板の下には、張架ローラー121によって張架されるメッシュが形成されているエンドレスのメッシュベルト122が配されている。サクションボックスを介して、搬送気体(搬送空気)と混合気体(混合空気)を吸引する。「吸引気体量」>「搬送気体量+混合気体量」にしておくことで、解繊時に発生した紙粉や材料の吹き出しを防ぐことができる。吸引気体には、第1シートN1とメッシュベルト122を通過した、微粉(廃粉)が混じっているので、分離するために、下流にサイクロンや、フィルター集塵機を設置することが望ましい。
【0043】
繊維状ウエブ成形機100の下方においては、張架ローラー121のうちの少なくとも1つが駆動回転することで、このメッシュベルト122は図中矢印に示す方向に移動するようになっている。また、メッシュベルト122はこれに当接するクリーニングブレード123によって表面の汚れ等が除去される。クリーニングはエアーに因るクリーニングを行ってもよい。
【0044】
メッシュベルト122は吸引空気量を確保し、材料を保持できる強度をもっていれば金属製でも、樹脂製でも、どのようなものでもよいが、メッシュの穴径が大きすぎると繊維状ウエブSを成形したときの凸凹になるので、前記穴径は60~125μ程度が望ましい。また、60μ以下では、サクション装置110による安定した気流を形成しづらい。
【0045】
第1シート供給ローラー81からは、第1シートN1が、このメッシュベルト122の移動と同じ速度で移動するように、メッシュベルト122上に供給される。サクション装置110はメッシュベルト122下に所望のサイズの窓を開けた密閉箱を形成し、窓以外から気体(例えば、空気)を吸引し箱内を真空にすることで形成することができる。
【0046】
以上のような構成において、搬送管60によって搬送された解繊繊維は、繊維構造体Mを成形するための繊維状ウエブ成形機100に導入される。フォーミングドラム101表面の小孔スクリーンを通過し、サクション装置110による吸引力によって、メッシュベルト122上の第1シートN1に堆積される。このとき、メッシュベルト122と第1シートN1とを移動させることにより、第1シートN1上に均一なシート状の解繊繊維を堆積させて繊維状ウエブSを構成することができる。この解繊繊維の堆積物(繊維状ウエブ)Sが加熱・加圧されてシート状の繊維構造体Mとなる。
【0047】
繊維状ウエブ成形機100において、解繊繊維を堆積するときの堆積量と後のプレス工程で、完成する繊維構造体Mの密度が決定される。例えば、10mm厚の密度0.1~0.15程度の繊維構造体Mを得るときには、約40~60mm程度堆積させる。
【0048】
なお、本実施形態においては、溶融樹脂繊維及び難燃剤を、搬送管60で搬送されている解繊繊維に混入するために、それぞれを個別に供給する搬送管を溶融材料搬送管61及び機能材料搬送管62として設けてそれぞれ搬送管60に接続しているが、溶融材料及び機能材料を混合してから一つの搬送管で解繊繊維を搬送する搬送管60に接続して供給してもよいし、繊維状ウエブ成形機100において設けるようにしてもよい。このような場合、例えば、フォーミングドラム101内に、定量した溶融樹脂繊維及び難燃剤を混入させるようにする。
【0049】
また、水分噴霧器130を設け、これにより噴霧する水分に、機能材料としての水溶性の難燃剤(例えば、株式会社三和ケミカル製 アピノン145)を添加することで、成形された繊維状ウエブSに難燃性を付与することもできる。
【0050】
第2形状維持シート供給部を構成する第2シート供給ローラー82からは、第2シート(第2形状維持シート)N2が、繊維状ウエブ成形機100・水分噴霧器130の後工程に供給される。この第2シート供給ローラー82から供給される第2シートN2は、毛羽立たせ部210により繊維状ウエブSの上面に当たる側を毛羽立たせ、繊維状ウエブ成形機100で形成される繊維状ウエブSの上面(第2面)のカバー部となる。
【0051】
ここで、本発明における第2シートN2は、例えば、織布や不織布のいずれも利用することができる。本実施形態においては、第2シートN2として、第1シートN1と同様の、スパンボンド法によって製造されたポリエステル長繊維不織布である東洋紡株式会社製エクーレ(登録商標)3151Aを用いた。
【0052】
なお、本実施形態においては、第1シート供給ローラー81から第1シートN1を繊維状ウエブ成形機100に供給し、第1シートN1上に繊維状ウエブSを形成した後に、第2シート供給ローラー82から第2シートN2を供給し、繊維状ウエブSの上面をカバーするような工程が採用されているが、繊維状ウエブ成形機100の後段(下流側)に、第1シート供給ローラー81及び第2シート供給ローラー82を設けておき、繊維状ウエブ成形機100で形成された繊維状ウエブSを第1シートN1と第2シートN2とでサンドイッチ状に挟むような工程を採用することもできる。
【0053】
第2シート供給ローラー82から供給された第2シートN2によって、その第2面側をカバーされた繊維状ウエブSは、その後、加熱加圧機構150に到達する。
【0054】
加熱加圧される前段階の繊維構造体Mは、繊維状ウエブSの第1面部に第1シートN1が配され、繊維状ウエブSの第2面部に第2シートN2が配された状態となる。図3に、第1シートN1と繊維状ウエブSとの界面の拡大模式図を示す。第1シートN1側から繊維状ウエブSに向けて、毛羽立ちした部分Fが侵入する形態になる。この侵入部分は、繊維状ウエブS、とりわけ溶融繊維と絡むと融着し、アンカー効果をもたらし、シートの剥離強度を上げる。
毛羽立たせ部200,210における毛羽立たせ方式は、いくつかあるが、図4にその一形態を模式的に示す。返しのついたニードル220を複数本設置(1本/cm2程度)したもので、例えば、パンチングメタル上に支持された第1及び第2シートN1,N2を貫通させ引き抜くことで、引き抜き側に毛羽立たせることが可能となる、ニードル220の本数を増やすことで毛羽立ちを多くすることができるが、第1及び第2シートN1,N2そのものの強度が低下するので、適度に合わせる必要がある。
【0055】
続いて、繊維状ウエブSは加熱加圧機構150へと搬送される。加熱加圧機構150は、第1基板151と、昇降可能に構成された第2基板152とで、搬送物である繊維状ウエブSを挟み、繊維状ウエブSを加熱と同時に加圧するようになっている。第1基板151及び第2基板152には、ヒーターが内蔵されており、これにより、第1基板151及び第2基板152に挟まれる繊維状ウエブSを加熱させることができるようになっている。
【0056】
繊維状ウエブSは加熱加圧機構150で加圧・加熱されることで、混入されている溶融材料が加熱され、解繊繊維と密接に融着することで、繊維構造体Mとしての強度保持、形状維持、繊維構造体からの繊維の飛散防止に寄与する。
【0057】
また、溶融材料が溶融し、固化することで、繊維状ウエブSの第1面部において第1シートN1が繊維状ウエブSに接着され、繊維状ウエブSの第2面部において第2シートN2が繊維状ウエブSに接着される。この接着強度は、シート界面を毛羽立たせることで、アンカー効果により一層強固なものにすることができる。
【0058】
また、加熱加圧機構150での加圧・加熱により、繊維状ウエブSはさらに繊維構造体Mとしての強度を向上させることができる。
【0059】
加熱工程と加圧工程とを分離して行うこととしてもよいが、加熱加圧は材料に同時に加えることが望ましい。加熱時間は、材料の芯付近の溶融繊維が溶融できる温度まで上昇する時間を確保することが望ましい。また、加熱加圧はバッチ処理のため、加熱時間を確保するために、前段にバッファーを設けることが望ましい。バッファーは、いわゆるダンサーローラー(架橋ローラー)141を上下させることで実現することができる。第2シートN2の供給の前に設置してもよい。
【0060】
加熱加圧が終了した後は、素早く繊維構造体Mを移動させ、次の加圧材料をセットする必要がある。そのために、加熱加圧の出口に針を侵入させて保持し引っ張り出す機構を設けることが好適である。加熱加圧表面は、繊維の付着の発生の可能背があるため、付着しにくいPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:Poly Tetra Fluoro Ethylene)等のシートで覆うことが好適である。また、表層クリーニング機構を有しているのがなお良い。または、一定時間ごとにPTFEシートを一定時間毎に巻き取る方法が良い。また、装置が稼働していないときは、加熱加圧の機構は搬送方向と交差した方向に移動して退避した状態となっている。
【0061】
なお、本実施形態では、加熱加圧機構150を第1基板151と、昇降可能に構成された第2基板152とで構成したが、加熱・加圧ローラーで構成するようにしてもよい。加熱・加圧ローラーでは、連続作成が可能になるので、バッファーは必要ではない。
【0062】
上記のようにして再生されて得られた繊維構造体Mのシートは、裁断機160によって所望のサイズ・形状にカットされ、原反としスタッカー170などに積載され冷却される。裁断機160は超音波カッター等が好適にもちいられる。超音波カッターの切断は、繊維構造体Mの幅方向の一方向に切断してもよいし、一方向と逆方向の往復で切断してもよい。また、超音波カッター以外には、ロータリーカッターや八角のロータリーカッター等を用いてもよい。原反はその後トムソン型等で型抜きされ、所望のサイズ・形状に成形され再生繊維構造体Mとなり、音を吸音する吸音材、衝撃(外力)を吸収する緩衝材(梱包材)、成形型の材料等として好適に利用することができる。
【0063】
図5A及び図5Bには、本発明の実施形態に係る繊維構造体Mの製造過程での変化の様子が示されている。図5Aは、加熱加圧機構150にて熱、圧力が加えられる前の繊維構造体Mの状態が、図5Bは、完成後、すなわち、加熱加圧機構150にて熱、圧力が加えられた後の繊維構造体Mの状態が示されている。
加熱加圧される前の繊維構造体Mは、繊維状ウエブSの第1面部に第1シートN1が配され、繊維状ウエブSの第2面部に第2シートN2が配された状態となる。繊維状ウエブS中に示される糸状のものは、溶融材料である溶融樹脂繊維を示している。機能材料である難燃剤は、図示省略し、繊維状ウエブS中に示していない。
【0064】
どちらの繊維構造体Mも第1シートN1と第2シートN2に挟持された繊維状ウエブSの層構造を有する点には変わりないが、図5Bでは加熱加圧機構150による熱と圧力の印加により、その厚さHが、印加前の厚さH1の約1/10程度となっている。本実施形態では、このように第1シートN1、第2シートN2で挟持したことで、製造後の繊維構造体Mの表面の毛羽立ちを抑え、扱いやすさの向上が図られている。なお、これら第1シートN1、第2シートN2の少なくとも一方を有さない形態としてもよい。
【0065】
ここで、繊維状ウエブSと、第1シートN1、第2シートN2それぞれの間の接着強度について試験を行い、溶融樹脂繊維の繊維径として適切なものを選定したので、これについて詳述する。
【0066】
図6は繊維状ウエブSと、第1シートN1(又は、第2シートN2)との間の接着強度の強さを定量化するために行われたピーリングテストの試験方法の概略を示す図である。図6において、サンプルとして用いた繊維構造体Mは、幅が約20mm、長さが約120mmである。繊維構造体Mはその一端を台T1と抑え板T2とで挟持し、他端において第1シートN1を15mm程度剥ぎ、第1シートN1の剥いだ部分をクランプT3で挟み、このクランプT3に錘T4を吊り下げ、連続してピールされる最小錘重量を測定した。そして、最小錘重量(kg)×9.8/幅mmにより、単位幅当たりの剥離強さ(N/m)を計算した。
【0067】
図7は、ピーリングテストの試験結果を示し、毛羽立たせのニードル220の配置濃度を10本/cm2にしたもの1回処理、半ピッチずらして2回処理(20本/cm2)、毛羽立ち処理なし、の各条件における剥離強さ(N/m)を示す。図7に示すように、ニードル220を用いて毛羽立たせ処理を行った方が、毛羽立たせ処理なしに比べて剥離強さが向上することがわかる。具体的には、毛羽立たせ処理を行った方が、毛羽立たせ処理なしに比べて約4倍から5倍剥離強さが高くなった。
【0068】
次に本発明の他の実施形態を説明する。図8は、他の毛羽立たせ部230の構成を示す。図8に示すように、毛羽立たせ部230は、第1シートN1を支持する支持台231と、支持された第1シートN1を搬送方向に搬送する搬送ローラー232a,232bと、支持された第1シートN1の表面に接触可能な回転ローラー233と、を備える。回転ローラー233の表面は凹凸部234を備える。そして、第1シートN1を支持台231の上に通過させるときに、回転ローラー233の表面を第1シートN1に押し当てる。回転ローラー233は、搬送ローラー232a,232bによる第1シートN1の搬送方向に抵抗になるように回転する。これにより、第1シートN1を毛羽立たせることができる。なお、回転ローラー233の表面は、カーディングに使われるような、フック状の細い金属ワイヤーで覆われたものが好適である。また、第2シートN2に対しても同様の処理を施すことができる。
【0069】
さらに本発明の他の実施形態を説明する。図9は支持台のない構成で、他の毛羽立たせ部240の構成を示す。図9に示すように、毛羽立たせ部240は、第1シートN1を搬送方向に搬送する搬送ローラー242a,242bと、搬送ローラー242a,242bに対して搬送方向の上流側に設けられ、第1シートN1を搬送方向に搬送する搬送ローラー243a,243bと、搬送方向の搬送ローラー242a,242bと搬送ローラー243a,243bとの間に配置され、搬送ローラー242a,242bと搬送ローラー243a,243bとによって支持された第1シートN1の表面に接触可能な回転ローラー245と、を備える。回転ローラー245の表面は返しの付いたフック部246を備える。回転ローラー245は自重で第1シートN1の表面に接触する。
【0070】
そして、搬送ローラー242a,242bで第1シートN1をニップした状態で搬送ローラー243a,243bの第1シートN1への保持力を弱める。これにより、自重で回転ローラー245が降下する。これに伴い、搬送ローラー243a,243b側から第1シートN1が供給され、搬送ローラー242a,242bと搬送ローラー243a,243bとの間で第1シートN1が弛んだ状態となる。
次いで、所定のタイミングで搬送ローラー243a,243bで第1シートN1をニップする。その後、搬送ローラー242a,242bを駆動させ、第1シートN1を搬送方向に搬送させる。このとき、回転ローラー245は、搬送ローラー242a,242bによる第1シートN1の搬送方向に抵抗になるように回転する。そして、搬送ローラー242a,242bと搬送ローラー243a,243bとの間で第1シートN1が張った状態となっていく。巻きかけが多くなる分、引っ掛かりが多くなり、毛羽立たせしやすくなる。次いで、所定のタイミングで搬送ローラー242a,242bの駆動を停止する。以降、上記の間欠動作を繰り返し行う。
なお、搬送ローラー242a,242bと搬送ローラー243a,243bとを同時に駆動させ、一定速度で搬送される第1シートN1に対して回転ローラー245を接触させて毛羽立たせてもよい。また、第1シートN1の搬送速度や回転ローラー245の回転速度を変化させることで動脈駆動させてもよい。
【0071】
本発明の繊維構造体Mとして要求される繊維構造体製造装置1、繊維構造体Mとして要求される繊維構造体製造方法は、溶融樹脂繊維が混入された繊維状ウエブSの第1面と、第1面と対向する第2面に形状維持シート(第1シートN1、第2シートN2)を毛羽立たせて供給し、形状維持シート(第1シートN1、第2シートN2)が供給された繊維状ウエブSを加熱すると同時に加圧し、形状維持シート(第1シートN1、第2シートN2)を繊維状ウエブSに接着するので、本発明の繊維構造体製造装置1、繊維構造体製造方法によれば、シートの接着強度が向上し型崩れなどを起こすことなくハンドリング性に優れると共に、繊維構造体Mとして様々な用途において要求される特性を確保することができる。
【0072】
また、本発明の繊維構造体製造装置1及び繊維構造体製造方法によれば、極力水分を使わない(大量な水資源を消費しない)構成であるので、水処理設備の軽減が可能で装置構成が簡便となり、さらに、水分を乾燥させるための大規模なヒーターなどが不要なり、古紙のリサイクルにおけるエネルギー効率が高い。
【0073】
なお、上記繊維構造体製造方法では、第1シートN1及び第2シートN2を供給したがこれに限定されない。他の繊維構造体製造方法として、繊維を含有する繊維原料を粉砕で解繊し、解繊された解繊物を搬送し、搬送される解繊物に溶融材料を混入し、溶融材料が混入された混合物を堆積させて繊維状ウエブSを成形し、繊維状ウエブSと接触させる側の表面を毛羽立たせた形状維持シートを、繊維状ウエブSに供給し、形状維持シート(例えば、第1シートN1)が供給された繊維状ウエブSを加熱加圧して繊維構造体Mを成形する製造方法であってもよい。すなわち、第1シートN1及び第2シートN2のうちいずれか一方のシートを供給する構成であってもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…繊維構造体製造装置、30…乾式解繊機、40…搬送管、60…搬送管、81…第1シート供給ローラー、82…第2シート供給ローラー、100…繊維状ウエブ成形機、150…加熱加圧機構、200…毛羽立たせ部、210…毛羽立たせ部、220…ニードル、230…毛羽立たせ部、231…支持台、232a…搬送ローラー、232b…搬送ローラー、233…回転ローラー、234…凹凸部、240…毛羽立たせ部、242a,242b,243a,243b…搬送ローラー、245…回転ローラー、246…フック部、S…繊維状ウエブ、N1…第1シート(第1形状維持シート)、N2…第2シート(第2形状維持シート)、M…繊維構造体。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9