(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光電変換素子及び光電変換層形成用組成物
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20241008BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20241008BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241008BHJP
C07D 209/88 20060101ALI20241008BHJP
C07D 209/86 20060101ALI20241008BHJP
C07D 209/08 20060101ALN20241008BHJP
C07D 215/54 20060101ALN20241008BHJP
C07C 229/60 20060101ALN20241008BHJP
C07C 321/26 20060101ALN20241008BHJP
C07C 321/10 20060101ALN20241008BHJP
C07C 321/04 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K30/40
H10K85/60
C07D209/88
C07D209/86
C07D209/08
C07D215/54
C07C229/60
C07C321/26
C07C321/10
C07C321/04
(21)【出願番号】P 2020106206
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀一
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/116511(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1687019(KR,B1)
【文献】特開2020-066733(JP,A)
【文献】特表2018-529214(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109868132(CN,A)
【文献】特開2020-095936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0067006(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0075877(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
H10K 50/00-50/88
H10K 59/00-59/95
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に光電変換層を有してなる光電変換素子であって、光電変換層が、表面処理剤と半導体粒子とを含んでなり、表面処理剤が、
下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される構造を有し、半導体粒子が、波長700~2500nmの電磁波を吸収し得る光電変換素子。
一般式(1)
【化1】
[一般式(1)中、X
1
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアシル基であり、R
1
~R
8
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、X
1
及びR
1
~R
8
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基又はスルファニル基を有する基である。]
一般式(2)
【化2】
[一般式(2)中、R
11
~R
25
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、R
11
~R
25
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基又はスルファニル基を有する基である。]
一般式(3)
【化3】
[一般式(3)中、X
2
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基(ただしフェニル基を除く)、又は置換基を有してもよいアシル基であり、R
26
~R
35
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアシル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、X
2
及びR
26
~R
35
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【請求項2】
一般式(1)において、X
1
及びR
1
~R
8
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基であり、
一般式(2)において、R
11
~R
25
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基であり、
一般式(3)において、X
2
及びR
26
~R
35
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
一般式(1)において、X
1
及びR
1
~R
8
の内、少なくとも一つが、スルファニル基を有するアルキル基またはスルファニル基を有するアシル基であり、
一般式(2)において、R
11
~R
25
の内、少なくとも一つが、スルファニル基を有するアルキル基またはスルファニル基を有するアシル基であり、
一般式(3)において、X
2
及びR
26
~R
35
の内、少なくとも一つが、スルファニル基を有するアルキル基またはスルファニル基を有するアシル基である請求項1又は2記載の光電変換素子。
【請求項4】
半導体粒子が、PbS、PbSe及びAg
2Sからなる群より選ばれる一種以上を含んでなる請求項1~3いずれか記載の光電変換素子。
【請求項5】
表面処理剤と半導体粒子とを含んでなる光電変換層形成用組成物
であって、表面処理剤が、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される構造を有し、半導体粒子が、波長700~2500nmの電磁波を吸収し得る光電変換層形成用組成物。
一般式(1)
【化1】
[一般式(1)中、X
1
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアシル基であり、R
1
~R
8
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、X
1
及びR
1
~R
8
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基又はスルファニル基を有する基である。]
一般式(2)
【化2】
[一般式(2)中、R
11
~R
25
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、R
11
~R
25
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基又はスルファニル基を有する基である。]
一般式(3)
【化3】
[一般式(3)中、X
2
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基(ただしフェニル基を除く)、又は置換基を有してもよいアシル基であり、R
26
~R
35
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアシル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、X
2
及びR
26
~R
35
の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及び光電変換層形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーを電気エネルギーに変える光電変換素子は、太陽電池、光センサー、複写機などに利用されている。これらの内、光エネルギーとして近赤外光を使用した光センサーは、暗視、測距、セキュリティ、半導体ウエハ検査等への用途展開が注目されている。量子ドットは、ナノサイズの半導体粒子であり、ブロードな吸収スペクトル示し、粒径の大きさにより吸収端の波長を制御できることから、近年、光電変換素子や太陽電池等の光電変換の材料に用いた研究が行われている。特に、光電変換素子の特性を向上するために量子ドット表面に配位するリガンドの検討が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、PbSeからなる量子ドット表面のリガンドをオレイン酸から1,3-ベンゼンジチオールに替えることよって、量子ドット同士が近接化し、光活性層の電気伝導性が増大することが報告されている。
また、特許文献2では、ベンゼンチオール、ベンゼンジチオール、3-メルカプトプロピオン酸、エチレンジアミン、テトラブチルアンモニウムのハライド塩等をリガンドとして用いることで、量子ドットのエネルギーレベルを制御し、光電変換素子特性が向上することが開示されている。
また、非特許文献1には、桂皮酸、4-シアノ桂皮酸、4-トリフルオロメチル桂皮酸、3,5-ジフルオロ桂皮酸、2,6-ジフルオロ桂皮酸、4-メトキシ桂皮酸、4-ジメチルアミノ桂皮酸をリガンドとして用いることで、量子ドットのエネルギーレベルを制御し、光電変換素子特性が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-532301号公報
【文献】特表2017-516320号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Daniel M.Kropaら著、「Tuning colloidal quantum dot band edge position through solution-phase surface chemistry modification」(NATURE COMMUNICATIONS | DOI:10.1038/noomms15257)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の技術では、量子ドットを用いて作成した素子性能の経時安定性に 乏しく耐久性が劣ることが問題となっていた。したがって、本発明が解決しようとする 課題は、耐久性に優れた光電変換素子と光電変換層形成用組成物を提供することにある 。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、一対の電極間に光電変換層を有してなる光電変換素子であって、光電変換層が、表面処理剤と半導体粒子とを含んでなり、表面処理剤が、ジアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基とを有する光電変換素子に関する。
【0008】
また、本発明は、表面処理剤が、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で 表される構造を有する上記光電変換素子に関する。
一般式(1)
【0009】
【0010】
[一般式(1)中、X1は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアシル基であり、R1~R8は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、X1及びR1~R8の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
一般式(2)
【0011】
【0012】
[一般式(2)中、R11~R25は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、R11~R25の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
一般式(3)
【0013】
【0014】
[一般式(3)中、X2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基(ただしフェニル基を除く)、又は置換基を有してもよいアシル基であり、R26~R35は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアシル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、X2及びR26~R35の内、少なくとも一つが、カルボキシル基、スルファニル基、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0015】
また、本発明は、半導体粒子が、波長700~2500nmの電磁波を吸収し得る請求 項1又は2記載の光電変換素子に関する。
【0016】
また、本発明は、半導体粒子が、PbS、PbSe及びAg2Sからなる群より選ばれ る一種以上を含んでなる上記光電変換素子に関する。
【0017】
また、本発明は、ジアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群 から選ばれる少なくとも一種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からな る群から選ばれる少なくとも一種の基とを有する表面処理剤と半導体粒子とを含んでな る光電変換層形成用組成物に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐久性に優れる光電変換素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
<光電変換層>
光電変換層は、電荷分離に寄与し、電磁波(主として光)の吸収によって生じた電子及び正孔をそれぞれ反対方向の電極に向かって輸送する機能を有しているが、本発明に用いられる光電変換層は、ジアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基とを有する表面処理剤と半導体粒子とを含んでなる。
【0020】
<半導体粒子>
光電変換層は、半導体粒子を含有する。本明細書における半導体粒子とは、半導体からなる平均粒径0.5nm~100nmの粒子を指す。半導体粒子の平均粒径は、安定性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは1.5nm以上、更に好ましくは2nm以上であり、成膜性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。尚、本明細書における半導体粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって測定した数値である。半導体粒子は、化合物半導体を含有することが好ましい。化合物半導体としては、周期表1族元素、2族元素、10族元素、11族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素及び17族元素からなる群から選ばれる少なくとも2種以上の元素を含む化合物からなる半導体であることが好ましい。半導体粒子は、波長700~2500nmの電磁波を吸収し得ることが好ましい。波長700~2500nmの電磁波は、一般に近赤外光(近赤外線ともいう)と呼称され、半導体粒子が波長700~2500nmの電磁波を吸収し得るためには、半導体粒子が波長700~2500nmの電磁波を吸収し得る化合物半導体を含有することが好ましい。波長700~2500nmの電磁波を吸収し得る化合物半導体としては、例えば、ペロブスカイト結晶構造を有する化合物半導体や金属カルコゲナイド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物、及びテルル化物など)が挙げられる。ペロブスカイト結晶構造を有する化合物半導体としては、具体的には、CH3NH3PbF3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbI3、CsPbF3、CsPbCl3、CsPbBr3、CsPbI3、RbPbF3、RbPbCl3、RbPbBr3、RbPbI3、KPbF3、KPbCl3、KPbBr3、KPbI3などが挙げられる。また、金属カルコゲナイドとしては、具体的には、PbS、PbSe、PbTe、CdS、CdSe、CdTe、Sb2S3、Bi2S3、Ag2S、Ag2Se、Ag2Te、Au2S、Au2Se、Au2Te、Cu2S、Cu2Se、Cu2Te、Fe2S、Fe2Se、Fe2Te、In2S3、SnS、SnSe、SnTe、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、EuS、EuSe、EuTeなどが挙げられる。これらの中でも、PbS、PbSe、Ag2Sが好ましい。
【0021】
<表面処理剤>
本発明における表面処理剤は、ジアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基とを有する。ここで、カルボキシル基及びスルファニル基は、半導体粒子表面に対する吸着部位として作用する。表面処理剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。上記ジアリールアミン骨格は、更にアミン窒素原子上にアリール基を有するトリアリールアミン骨格や、アリール基同士が結合して環を形成したカルバゾール骨格を包含する。
【0022】
表面処理剤は、光電変換素子の経時での耐久性から、ジアリールアミン骨格を有することが好ましい。より好ましくは、一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される構造を有する表面処理剤である。これは、半導体粒子を劣化させる酸素や水への遮蔽効果に優れているものと推測される。
【0023】
以下に、上記一般式(1)~(3)における置換基について説明する。
アルキル基は、直鎖、分岐のアルキル基であり、組成物中における半導体微粒子の含有率を高めることが可能となる点から、処理剤の分子量は小さいことが好ましく、アルキル基の炭素数が1~30であることが好ましい。 上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、ドデシル基、エイコシル基等の直鎖アルキル基;2-エチルヘキシル基等の分岐アルキル基が挙げられる。
【0024】
アリール基は、芳香炭化水素環から形式的に水素原子を1つ取り除いた残基であり、より好ましくは、炭素数6から30の芳香炭化水素環から形式的に水素原子を1つ取り除いた残基である。芳香炭化水素環としては例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピレン環ビフェニル基、ターフェニル基等を挙げることができる。
【0025】
アルコキシ基は、酸素原子上にアルキル基が結合した基であり、当該アルキル基としては、上記アルキル基と同義である。組成物中における半導体粒子の含有率を高めるためには、表面処理剤の分子量は小さいことが好ましく、アルキル基の炭素数は1~6であることが好ましい。
【0026】
アリールオキシ基は、酸素原子上にアリール基が結合した基であり、当該アリール基としては、上記アリール基と同義である。組成物中における半導体粒子の含有率を高めるためには、表面処理剤の分子量は小さいことが好ましく、アリール基の数は1~2であることが好ましい。
【0027】
アシル基は、カルボニル基を介してアルキル基又はアリール基が結合した基であり、当該アルキル基及びアリール基としては、上記アルキル基及びアリール基と同義である。組成物中における半導体粒子の含有率を高めるためには、表面処理剤の分子量は小さいことが好ましく、アルキル基の場合には、炭素数は1~6であることが好ましい。また、アリール基の場合には、アリール基の数は1~2であることが好ましい。
【0028】
置換基を有してもよいアミノ基としては、アミノ基及び置換アミノ基が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基又はアシル基が挙げられる。上記アルキル基、アリール基及びアシル基は、上記アルキル基、アリール基又はアシル基と同義である。組成物中における半導体粒子の含有率を高めるためには、表面処理剤の分子量は小さいことが好ましく、アルキル基及びアシル基を構成するアルキル基は、炭素数が1~4であることが好ましい。また、アリール基の及びアシル基を構成するアリール基は、アリール基数が1~2であることが好ましい。
【0029】
また、一般式(1)~(3)におけるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アリールオキシ基及びアシル基は、置換基を有していてもよい。有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲノ基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、シロキシ基、アルコノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシアルコノイル基、アミノ基、アニリノ基、アルコノイルアミノ基、カルバモイルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、カルバモイルアリールアミノ基、スルファニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、シロキサン結合を含む基、カルボキシル基、スルファニル基等が挙げられる。
本発明における有してもよい置換基は、上述の一価の置換基と、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、エステル基、スルフィド基、カルボニル基、イミノ基等の二価の連結基とが結合した一価の基であってもよい。
【0030】
また、カルボキシル基又はスルファニル基を有する基としては、置換基としてカルボキシル基又はスルファニル基を有する、アルキル基、アルキレン基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の一価の基が挙げられる。
【0031】
カルボキシル基を有するアルキル基、又はカルボキシル基を有するアリール基としては、例えば、2-カルボキシルエチル基、2,2-ジカルボキシルエチル基、2-カルボキシルエテニル基、2-シアノ-2-カルボキシルエテニル基、2-トリフルオロメチル-2-カルボキシルエテニル基、2-フルオロ-2-カルボキシルエテニル基等が挙げられる。
カルボキシル基は、ジアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格に直接結合しているか、又は、カルボキシル基がジアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格と共役可能な位置に結合していることが好ましい。
【0032】
スルファニル基を有するアルキル基、スルファニル基を有するアリール基、又はスルファニル基を有するアシル基としては、例えば、[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]エチル基、[(2-スルファニルアセチル)オキシ]エチル基、4-(スルファニルメチル)フェニル基、[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]プロピル基、3-スルファニル[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]エチル基、{[(2-スルファニルエトキシ)プロパノイル]オキシ}エチル基等が挙げられる。組成物中における半導体粒子の含有率を高めるためには、表面処理剤の分子量は小さいことが好ましく、スルファニル基を有するアルキル基、スルファニル基を有するアリール基、又はスルファニル基を有するアシル基の分子量は、200以下であることが好ましい。
【0033】
表面処理剤は、シス型及びトランス型の幾何異性体が存在する場合には、シス型であってもよく、トランス型であってもよく、シス型及びトランス型の異性体混合物であってもよい。シン-アンチの幾何異性についても同様である。
【0034】
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、一対の電極間に上記光電変換層を有するものである。本発明の光電変換素子において、公知の光電変換素子の構成を適用することができる。また、本発明の光電変換素子は、光電変換層以外は公知の方法で製造することができる。
【0035】
ここで、本発明の光電変換層形成用組成物を用いて作成することができる光電変換素子について詳細に説明する。一般的に、半導体粒子を用いた光電変換素子は、少なくとも一対の電極と光電変換層から構成される。光電変換効率の向上などを目的に、電極と半導体粒子のエネルギー的なマッチングや半導体粒子から成る光電変換層の作製方法などによってさまざまな形の素子構造が提案されている。例えば、本発明の光電変換層形成用組成物を用いて以下に示す公知の構成からなる光電変換素子を作製することができる。
【0036】
1.ショットキー型光電変換素子
電子供与性(p型)又は電子受容性(n型)の半導体粒子と電極との界面において形成されるショットキー障壁を利用し、光起電力を得る光電変換素子である。例えば、p型の光電変換層を用いた場合には、一対の電極の内仕事関数が小さいほうの電極との界面にショットキー障壁が形成され、その界面に電荷分離が生じ光電変換が行われる。
【0037】
2.バイレイヤーヘテロ接合型光電変換素子
一対の電極の間に、電子供与性(p型)及び電子受容性(n型)の半導体粒子やその他の半導体材料を個々に形成し、pn接合界面に光電荷分離を生じさせ光電流を得る光電変換素子である。
【0038】
3.バルクヘテロ接合型光電変換素子
一対の電極の間に、電子供与性(p型)及び電子受容性(n型)の半導体粒子やその他の半導体材料を任意の比率で混合させ有機半導体層を形成する。この際、p型及びn型の材料は均一に分散していても、不均一であっても構わない。個々のp型材料、n型材料が形成する界面で光電荷分離が起こるため、バイレイヤーヘテロ接合型よりもpn接合を広く形成させることが出来る。
【0039】
<電極>
光電変換素子を構成する一対の電極の内、少なくとも一つは光を透過することが好ましい。具体的な例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、白金、クロム、ニッケル、リチウム、インジウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物などが挙げられる。
【0040】
電極の形状としては、フラットな形状が一般的であるが、エネルギー変換効率を向上させるために、波型、ピラミッド型、くし型等の形状であっても良い。これら電極の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法、化学反応法(ゾルゲル法など)、キャスト法、スプレーコーティング法、インクジェット法、スピンコート法などを挙げることができる。
光電変換素子は、一対の電極の間に光電変換層以外の層を備えていてもよく、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び/又は、電子注入層を有していてもよい。
【0041】
<正孔注入層>
正孔注入層には、光電変換層に対して優れた正孔注入効果を示し、かつ陽極界面との密着性と薄膜形成性に優れた正孔注入層を形成できる正孔注入材料が用いられる。また、このような材料を多層積層させ、正孔注入効果の高い材料と正孔輸送効果の高い材料とを多層積層させた場合、それぞれに用いる材料を正孔注入材料、正孔輸送材料と呼ぶことがある。これら正孔注入材料や正孔輸送材料は、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい必要がある。このような正孔注入層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、更に正孔の移動度が、例えば104~1
06V/cmの電界印加時に、少なくとも10-6cm2/V・秒であるものが好ましい。正孔注入材料及び正孔輸送材料としては、上記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0042】
このような正孔注入材料や正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37-16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45-555号公報、同51-10983号公報、特開昭51-93224号公報、同55-17105号公報、同56-4148号公報、同55-108667号公報、同55-156953号公報、同56-36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55-88064号公報、同55-88065号公報、同49-105537号公報、同55-51086号公報、同56-80051号公報、同56-88141号公報、同57-45545号公報、同54-112637号公報、同55-74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51-10105号公報、同46-3712号公報、同47-25336号公報、特開昭54-53435号公報、同54-110536号公報、同54-119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49-35702号公報、同39-27577号公報、特開昭55-144250号公報、同56-119132号公報、同56-22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56-46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54-110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54-59143号公報、同55-52063号公報、同55-52064号公報、同55-46760号公報、同55-85495号公報、同57-11350号公報、同57-148749号公報、特開平2-311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61-210363号公報、同第61-228451号公報、同61-14642号公報、同61-72255号公報、同62-47646号公報、同62-36674号公報、同62-10652号公報、同62-30255号公報、同60-93455号公報、同60-94462号公報、同60-174749号公報、同60-175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2-204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2-282263号公報)、特開平1-211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等が挙げられる。
【0043】
また、正孔注入材料や正孔輸送材料として、ポルフィリン化合物(特開昭63-2956965号公報)、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53-27033号公報、同54-58445号公報、同54-149634号公報、同54-64299号公報、同55-79450号公報、同55-144250号公報、同56-119132号公報、同61-295558号公報、同61-98353号公報、同63-295695号公報等参照)を用いることもできる。例えば、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する4,4’-ビス(N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ)ビフェニル等や、特開平4-308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”-トリス(N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン等をあげることができる。また、正孔注入材料として銅フタロシアニンや水素フタロシアニン等のフタロシアニン誘導体も挙げられる。更に、その他、芳香族ジメチリデン系化合物、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料や正孔輸送材料として使用することができる。
【0044】
更に、正孔注入層に使用できる材料としては、酸化モリブデン(MnOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化ルテニウム(RuOx)、酸化銅(CuOx)、酸化タングステン(WOx)、酸化イリジウム(IrOx)等の無機酸化物及びそれらのドープ体も挙げられる。
【0045】
芳香族第三級アミン化合物の具体例としては、例えば、N,N’-ジフェニル-N,N’-(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N,N’,N’-(4-メチルフェニル)-1,1’-フェニル-4,4’-ジアミン、N,N,N’,N’-(4-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-(メチルフェニル)-N,N’-(4-n-ブチルフェニル)-フェナントレン-9,10-ジアミン、N,N-ビス(4-ジ-4-トリルアミノフェニル)-4-フェニル-シクロヘキサン、N,N’-ビス(4’-ジフェニルアミノ-4-ビフェニリル)-N,N’-ジフェニルベンジジン、N,N’-ビス(4’-ジフェニルアミノ-4-フェニル)-N,N’-ジフェニルベンジジン、N,N’-ビス(4’-ジフェニルアミノ-4-フェニル)-N,N’-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N’-ビス(4’-フェニル(1-ナフチル)アミノ-4-フェニル)-N,N’-ジフェニルベンジジン、N,N’-ビス(4’-フェニル(1-ナフチル)アミノ-4-フェニル)-N,N’-ジ(1-ナフチル)ベンジジン等があげられ、これらは正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも使用することができる。
正孔注入材料として、特に好ましい例を表1及び2に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
正孔注入層を形成するには、上述の化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、ラングミュア-ブロジェット法(LB法)等の公知の方法により薄膜化する。正孔注入層の膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm~5μmである。
【0049】
<電子注入層>
電子注入層には、光電変換層に対して優れた電子注入効果を示し、かつ陰極界面との密着性と薄膜形成性に優れた電子注入層を形成できる電子注入材料が用いられる。そのような電子注入材料の例としては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、カルシウムアセチルアセトナート、酢酸ナトリウム等が挙げられる。また、セシウム等の金属をバソフェナントロリンにドープした無機/有機複合材料(高分子学会予稿集,第50巻,4号,660頁,2001年発行)や、第50回応用物理学関連連合講演会講演予稿集、No.3、1402頁、2003年発行記載のBCP、TPP、T5MPyTZ等も電子注入材料の例として挙げられるが、素子作成に必要な薄膜を形成し、陰極からの電子を注入できて、電子を輸送できる材料であれば、特にこれらに限定されるものではない。
【0050】
上記電子注入材料の中で好ましいものとしては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体が挙げられる。好ましい金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体が好適である。8-ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(4-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5-フェニル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)(2-ナフトラート)アルミニウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)(4-シアノ-1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(4-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(5-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)(2-ナフトラート)アルミニウム、ビス(5-フェニル-8-ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(5-シアノ-8-ヒドロキシキノリナート)(4-シアノ-1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)クロロアルミニウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)(o-クレゾラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(4-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(5-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2-メチル-5-フェニル-8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)(1-ナフトラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)(2-ナフトラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)(4-シアノ-1-ナフトラート)ガリウム、ビス(2、4-ジメチル-8-ヒドロキシキノリナート)(1-ナフトラート)ガリウム、ビス(2、5-ジメチル-8-ヒドロキシキノリナート)(2-ナフトラート)ガリウム、ビス(2-メチル-5-フェニル-8-ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2-メチル-5-シアノ-8-ヒドロキシキノリナート)(4-シアノ-1-ナフトラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物の他、8-ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物が挙げられる。
【0051】
また、好ましい含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体があげられ、具体的には、2,5-ビス(1-フェニル)-1,3,4-オキサゾール、2,5-ビス(1-フェニル)-1,3,4-チアゾール、2,5-ビス(1-フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-(4’-tert-ブチルフェニル)-5-(4”-ビフェニル)1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,4-ビス[2-(5 -フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4-ビス[2-(5-フェニルオキサジアゾリル)-4-tert-ブチルベンゼン]、2-(4’-tert- ブチルフェニル)-5-(4”-ビフェニル)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-チアジアゾール、1,4-ビス[2-(5-フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2-(4’-tert-ブチルフェニル)-5-(4”-ビフェニル)-1,3,4-トリアゾール、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-トリアゾール、1,4-ビス[2-(5-フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0052】
更に、電子注入層に使用できる材料としては、酸化亜鉛(ZnOx)、酸化チタン(TiOx)、等の無機酸化物及びそれらのドープ体も挙げられる。
【0053】
特に好ましいオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体及びシロール誘導体の具体例を下記に示す。尚、表中のPhはフェニル基を表わす。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
光電変換素子は、紫外線等による光劣化を防止するために紫外線遮断層を設けてもよい。
光電変換素子は、外部からの衝撃に対して光電変換層を保護する目的で、保護膜を備えていても良い。保護膜は、例えば、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンポリビニルアルコール共重合体等のポリマー膜、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化膜や窒化膜、アルミニウム等の金属板もしくは金属箔、あるいはこれらの積層膜などにより構成することができる。なお、これらの保護膜の材料は、一種のみを用いてもよく、二種以上を用いても良い。
【0058】
一般に半導体粒子は、空気中の水分や酸素により劣化を招くといわれている。それを防ぐため、バリア膜を備えていても良い。例えば、金属又は無機酸化物が好ましく、Ti、Al、Mg、Zr、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化窒化珪素、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化カルシウム等を挙げることができる。これら各種機能性膜を積層させる順番は特になく、これらの機能を併せ持つ機能性膜を用いても良い。
【0059】
<光電変換層形成用組成物>
本発明の光電変換層形成用組成物は、上述の表面処理剤、半導体粒子を含んでなり、さらに溶媒を含有しても良い。光電変換層形成用組成物が含んでもよい溶媒は、半導体粒子を分散させ、ガラス基板等の基板上に本発明の光電変換層形成用組成物を乾燥膜厚が所望の膜厚になるように塗布することを容易にするために用いられる。
【0060】
(溶媒)
溶媒としては、特に制限されず、例えば、1,2,3-トリクロロプロパン、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、m-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、N-メチルピロリドン、トルエン、オクタン、ノナン、ヘキサン、o-キシレン、o-クロロトルエン、o-ジエチルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、P-クロロトルエン、P-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ターシャルターシャルブタノール、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、及び二塩基酸エステル等が挙げられる。これらの溶剤は、一種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で二種以上混合して用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。なお、特に断りのない限り、全ての測定は25℃で行った。実施例に用いた表面処理剤の構造を表6と表7に、比較例に用いた表面処理剤の構造を表8に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
<半導体粒子PbS-0の調製>
まず、硫黄源溶液として、単体硫黄0.40部とオレイルアミン6.0部を反応容器中、窒素雰囲気下、120℃に加熱して均一な溶液をした後、25℃に冷却した。次に、鉛源溶液として、塩化鉛0.32部、オレイルアミン6.0部を別の反応容器中、窒素雰囲気下、120℃に加熱した。その後、鉛源溶液を40℃に調製した後、上記の硫黄源溶液1.8部を一気に加えた。30秒間反応させた後、容器を氷浴に漬けて急冷した後、ヘキサン13部で希釈した。遠心分離(4000rpm、5分間)を行って未反応の原料を除去した後、ブタノール:メタノール=2:1(体積比)からなる混合液を12部加えて半導体粒子を沈降させ、遠心分離(4000rpm、5分間)を行い半導体粒子を回収した。その後、ヘキサン:オレイン酸=1:2(体積比)からなる混合液を24部加えて30分間攪拌し、遠心分離を行い、上澄みを回収した。半導体粒子沈降、再分散、不純物沈降を更に2回繰り返し、最後に半導体粒子を沈降させ、真空乾燥した後、n-オクタンを用いて固形分濃度5%に調製し、半導体粒子PbS-0を得た(平均粒径3.5nm)。
【0066】
<半導体粒子PbSe-0の合成>
鉛源溶液として、酸化鉛0.22部、オレイン酸0.73部、1-オクタデセン10部を反応容器中、窒素雰囲気下、150℃に加熱した。その後、1M-トリオクチルホスフィン-セレン溶液を2.5部とジフェニルホスフィン0.028部からなる混合物を素早く加え、反応溶液を180℃に加熱した後、160℃に保温し、2分間反応させた後、反応溶液を急冷した。10部のヘキサンで希釈した後、アセトンで沈殿させた。沈殿物をアセトンで5回洗浄し、真空乾燥させて半導体粒子PbSe-0を得た(平均粒径2.7nm)。
【0067】
<半導体微粒子Ag2S-0の合成>
0.04部のオレイン酸銀と、8部のオクタンチオールと、4部のドデシルアミンとを反応容器中、Ar雰囲気下、200℃で0.5時間加熱した。この溶液を室温に放冷した後、40部の無水エタノールを添加した。得られた混合物を遠心分離し、真空乾燥させて半導体粒子Ag2S-0を得た(平均粒径2.5nm)。
【0068】
<光電変換層形成用組成物の調製>
<実施例1>
半導体粒子PbS-0を固形分濃度1%のトルエン溶液に調製した。調製した溶液1部と5%表面処理剤1のトルエン溶液1部とを混合した後、12時間撹拌した。トルエンとエタノールを用いて再沈殿法で精製を行った。沈殿を真空乾燥し、n‐オクタンの5質量%溶液として、光電変換形成用組成物PbS-1を調製した。
【0069】
<実施例2~25、比較例1~7>
表面処理剤1を表9に示す表面処理剤に変更した以外は、実施例1と同様にしてPbS-2~26、PbSe-1~3、Ag2S-1~3をそれぞれ調製した。この内、PbS-2~21、PbSe-1及び2、Ag2S-1及び2は、本発明の光電変換層形成用組成物であり、PbS-22~26、PbSe-3、Ag2S-3は、本発明の光電変換層形成用組成物ではない組成物である。
【0070】
【0071】
<実施例101>
(光電変換素子の作製)
以下に光電変換素子の作製と評価について説明する。蒸着は、10-6Torrの真空中にて基板の加熱や冷却等の温度制御は行わない条件下で行った。素子の評価は、素子面積2mm×2mmの光電変換素子を用いて測定した。まず、洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ)-2,5-チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Heraeus社製CLEVIOUS(登録商標) PVP CH8000)をスピンコート法にて塗工し、110℃にて20分間乾燥させて、厚み35nmの正孔注入層を得た。正孔注入層上に、光電変換層形成用組成物PbS-1をスピンコート法で塗工し、厚み150nmの光電変換層を形成した。 次いで、光電変換層上に、Avantama社製ZnO分散液N-10をスピンコートで製膜して厚み50nmの電子輸送層を形成した。次いで、電子輸送層上に、厚み200nmでアルミニウム(以下、Al)を蒸着して電極を形成し、光電変換素子を得た。
【0072】
(光電変換素子の評価)
得られた素子について、以下に示す方法によって耐久性を評価した。素子の保存前後のI-V曲線を測定し、測定値の比を算出することにより、耐久性を算出した。セルのI-V曲線は、キセノンランプ白色光を光源(ペクセル・テクノロジーズ株式会社製、PEC―L01)とし、太陽光(AM1.5)相当の光強度(100 mW/cm2)にて、光照射面積0.0363cm2(2mm角)のマスク下、I-V特性計測装置(ペクセル・テクノロジーズ株式会社製、PECK2400-N)を用いて走査速度0.1V/sec(0.01Vstep)、電圧設定後待ち時間50 msec、測定積算時間50msec、開始
電圧-0.1V、終了電圧1.1Vの条件で測定した。耐久性は、光電変換素子を保存前(素子作製直後)、及び遮光、25℃、湿度60%の条件下で4日間保存した後のI―V曲線を測定し、保存前(素子作製直後)の変換効率に対する保存後の変換効率の比として算出した。
(評価基準)
◎:比が95%以上 :良好
○:比が90%以上95%未満 :実用上使用可能
△:比が80%以上90%未満 :実用上使用不可
×:比が80%未満 :不良
【0073】
<実施例102~125>
実施例101で使用したPbS-1の替わりに、PbS-2~21、PbSe-1、2、Ag2S-1、2をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして光電変換素子をそれぞれ作製、評価した。結果を表10に示した。
【0074】
<比較例101~107>
実施例101で使用したPbS-1の替わりに、PbS-22~26、PbSe-3、Ag2S-3をそれぞれ使用した以外は、実施例101と同様にして光電変換素子をそれぞれ作製、評価した。結果を表10に示した。
【0075】
【0076】
本発明の光電変換素子(実施例101~125)は、いずれも比較例の素子よりも経時 での耐久性に優れていることが明らかとなった。実施例101~125で用いた表面処 理剤1~21は、カルボキシル基又はスルファニル基が半導体粒子表面への吸着が可能 であり、多くの芳香環を分子中に有する。その結果、芳香環の遮蔽効果により、酸素、 水等による半導体粒子表面への攻撃により引き起こされる劣化が抑制され、素子の耐久 性が向上したのではないかと推察される。実施例101~110、112~114、1 16~125では、特に高い耐久性が認められた。これは、表面処理剤1~10、12 ~14、16~21は、ジフェニルアミノ骨格を有しており、特に、遮蔽効果が有効に 働いた結果と推察される。