(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20241008BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20241008BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
F17C13/04 301Z
F16K27/00 Z
(21)【出願番号】P 2020107928
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩本 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 一志
(72)【発明者】
【氏名】石原 知宏
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-238280(JP,A)
【文献】特開2014-001772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00
F17C 13/04
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に向けて開口するタンク側開口部と、外部に向けて開口するバルブ側開口部とを連通するガス流路を有するボディと、
前記ボディに搭載され、前記ガス流路を開閉する電磁弁と、
前記ボディに搭載され、前記ガス流路を手動操作によって開閉する手動弁と、を有するバルブ装置であって、
前記ガス流路は、前記バルブ側開口部を含む第1流路と、前記タンク側開口部を含む第2流路を有するとともに、
前記第1流路の中心軸線である第1中心軸線と前記第2流路の中心軸線である第2中心軸線とが交差する交差部を有しており、
前記電磁弁の弁体の軸線と一致する中心軸線は、前記第1中心軸線の延長線に一致するとともに、前記手動弁の弁体の軸線と一致する中心軸線は、前記第2中心軸線の延長線に一致して
おり、
前記ガス流路において、前記第1流路は前記タンクに対するガスの充填時に前記第2流路の上流側となり、前記電磁弁は、前記ガスの充填時には前記ガス流路を開くとともに、前記ガスの充填終了時には前記ガス流路を閉じ、前記電磁弁の弁体が接離する弁座は、前記交差部よりも反第2流路側となる前記第1流路に配置されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記バルブ側開口部には、前記タンクへの
前記ガスの充填時、及び前記タンクからの前記ガスの供給時に共通して前記ガスが流れる配管が接続される請求項1に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧のガスを収容するタンクの口金にはバルブ装置が取り付けられる。バルブ装置は、タンクに対するガスの給排を制御する。バルブ装置は、ガスが流れるガス流路を有するボディと、ボディに搭載される各種バルブとを一体に備える。
【0003】
例えば特許文献1の弁装置は、ボディとしての本体と、本体に設けられたガス流路と、ガス流路を開閉する複数の弁を備える。弁としての第1の逆止弁は、本体の横方向の一側に設けられ、本体の横方向の他側には閉鎖部材が設けられている。また、弁としての開閉弁及び第2の逆止弁は、本体の縦方向の一側に設けられ、弁としての電磁弁は、本体の縦方向の他側に設けられている。弁装置の第1の逆止弁のコネクタ部には燃料ガス供給用の供給管が接続され、第2の逆止弁のコネクタ部には燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給管が接続される。
【0004】
特許文献1の弁装置において、例えば、車載ガスタンクに対する燃料ガスの充填は、開閉弁を手動操作して開閉させるとともに、電磁弁を開閉させることによって行われる。また、燃料電池に対する車載ガスタンクからの燃料ガスの供給は、電磁弁を開閉させることによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の弁装置において、例えば、弁装置のメンテナンスの際には、開閉弁を工具によって手動操作するが、このとき、工具が燃料ガス供給管等の周辺装置に干渉して作業性が低下してしまうことがある。
【0007】
本発明の目的は、手動弁の手動操作を伴う作業の作業性の低下を抑制できるバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するためのバルブ装置は、タンク内に向けて開口するタンク側開口部と、外部に向けて開口するバルブ側開口部とを連通するガス流路を有するボディと、前記ボディに搭載され、前記ガス流路を開閉する電磁弁と、前記ボディに搭載され、前記ガス流路を手動操作によって開閉する手動弁と、を有するバルブ装置であって、前記ガス流路は、前記バルブ側開口部を含む第1流路と、前記タンク側開口部を含む第2流路を有するとともに、前記第1流路の中心軸線である第1中心軸線と前記第2流路の中心軸線である第2中心軸線とが交差する交差部を有しており、前記電磁弁の中心軸線は、前記第1中心軸線の延長線に一致するとともに、前記手動弁の中心軸線は、前記第2中心軸線の延長線に一致していることを要旨とする。
【0009】
これによれば、ガス流路が交差部を有することで、第1流路と第2流路が交差している。そして、第1流路の第1中心軸線の延長線に電磁弁の中心軸線が一致し、第2流路の第2中心軸線の延長線に手動弁の中心軸線が一致することで、電磁弁の中心軸線と手動弁の中心軸線とが交差することになる。その結果、手動弁の中心軸線に沿ってバルブ装置を見た軸方向視において、ボディにおける手動弁が取り付けられた面には電磁弁及びバルブ側開口部が位置しない。このため、手動弁を工具によって手動操作する際、電磁弁やバルブ側開口部への接続部材に工具が干渉することがなく、手動弁の手動操作を伴う作業の作業性の低下を抑制できる。
【0010】
また、バルブ装置について、前記バルブ側開口部には、前記タンクへのガスの充填時、及び前記タンクからの前記ガスの供給時に共通して前記ガスが流れる配管が接続されていてもよい。
【0011】
これによれば、例えば、バルブ側開口部に、タンクへのガス充填用の配管と、タンクからのガスの供給用の配管とが別々に接続される場合と異なり、バルブ側開口部に接続される接続部材を減らすことができ、工具による手動弁の手動操作の妨げとなる接続部材を減らすことができる。
【0012】
また、バルブ装置について、前記ガス流路において、前記第1流路は前記タンクに対するガスの充填時に前記第2流路の上流側となり、前記電磁弁は、前記ガスの充填時には前記ガス流路を開くとともに、前記ガスの充填終了時には前記ガス流路を閉じ、前記電磁弁の弁体が接離する弁座は、前記交差部よりも反第2流路側となる前記第1流路に配置されていてもよい。
【0013】
これによれば、交差部は、ガス流路におけるタンク内と弁座との間に位置する部位のうち、弁座よりもタンク内寄りに位置する。このため、交差部に作用するのは常にタンク内の圧力であり、交差部に作用する圧力の変化が小さい。よって、ガス充填及びガス供給が行われる毎に、第1流路と第2流路の交差部に発生する圧力変動による負荷を小さく抑えることができ、ガス流路への耐圧疲労寿命の悪影響が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、手動弁の手動操作を伴う作業の作業性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】燃料電池自動車のガスタンク、バルブ装置、及び燃料電池を示す概略図。
【
図4】手動弁によってタンク側開口部を閉じた状態を示す断面図。
【
図5】電磁弁を開弁位置に位置させた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、バルブ装置を具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態のバルブ装置10は、燃料電池自動車Vに搭載される。燃料電池自動車Vは、燃料電池12で発電した電力により走行する車両である。燃料電池自動車Vには、燃料電池12と、燃料電池12に供給する燃料ガスを貯留するタンクとしてのガスタンク11と、ガスタンク11に取り付けられるバルブ装置10と、が搭載されている。本実施形態では、ガスタンク11内の貯留室には燃料ガスとして、高圧の水素ガスが貯留されている。
【0017】
ガスタンク11、燃料電池12及びバルブ装置10は、燃料電池自動車Vの後部のフロアパネルの下に搭載されている。ただし、ガスタンク11、燃料電池12及びバルブ装置10の搭載場所は、燃料電池自動車Vの後部のフロアパネルの下に限らず適宜変更してもよく、例えば、燃料電池自動車Vの前部や、トランクルームの下方などであってもよい。また、本実施形態では、バルブ装置10は、燃料電池自動車Vの車体Fの下方からメンテナンスを行えるように、バルブ装置10の下面側を車体Fの下から露出させて搭載されている。
【0018】
図2に示すように、バルブ装置10は、ガスステーション13からガスタンク11への燃料ガスの充填、及びガスタンク11から燃料電池12への燃料ガスの供給を制御する。バルブ装置10は、ボディ20と、ボディ20が有するガス流路30を開閉する電磁弁40と、ガス流路30を手動操作によって開閉する手動弁70と、を有する。本実施形態では、ボディ20の第1方向を車両前後方向Xとし、第1方向に直交する第2方向を車両左右方向Yとし、第1方向及び第2方向に直交する第3方向を車両上下方向Zとする。
【0019】
ボディ20は、例えば、アルミ合金製のブロック状である。ボディ20は、第1方向の第1端面としての前端面20aに第1取付孔21を有し、第1方向の第2端面としての後端面20bに第2取付孔22を有する。また、ボディ20は下端面20cに第3取付孔23を有する。
【0020】
バルブ装置10において、電磁弁40は第1取付孔21に取り付けられることでボディ20に搭載されている。また、手動弁70は、第3取付孔23に取り付けられることでボディ20に搭載されている。第2取付孔22には、継手24が取り付けられている。なお、継手24には配管28が接続されている。配管28からは充填用配管29aと供給配管29bが分岐している。充填用配管29aにはガスステーション13が接続可能であり、供給配管29bには減圧弁14を介して燃料電池12が接続されている。また、ボディ20は、第2方向の端面としての右端面に、後述するタンク側開口部33bを有し、タンク側開口部33bはガスタンク11に向けて開口している。
【0021】
図2又は
図3に示すように、第1取付孔21は、段付き孔である。第1取付孔21は、ボディ20の前端面20aに開口する大径孔21bと、大径孔21bよりもボディ20の後端面20b寄りに位置する小径孔21aとを有し、小径孔21aは大径孔21bよりも小径である。小径孔21aと大径孔21bは同軸上に位置する。
【0022】
小径孔21aの内底面21cには、第1接続流路31の軸線方向の両端のうち小径孔21a寄りの第1端が弁孔31aとして開口している。また、第1接続流路31の軸線方向の両端のうち、弁孔31aとは反対側の端である第2端はバルブ側開口部31bとして第2取付孔22の内底面22aに開口している。第1接続流路31は、車両前後方向Xに直線状に延びる流路である。このため、第1接続流路31の中心軸線V1は、車両前後方向Xに直線状に延びている。小径孔21aの底部には弁座26が設けられている。弁座26は、弁孔31aの内周面を、小径孔21aの内底面21cに向けて拡径する形状に形成して構成されている。
【0023】
大径孔21bの内周面には雌ねじが形成されている。つまり、大径孔21bは雌ねじ孔であり、大径孔21bを有する第1取付孔21は、内周面の一部に雌ねじを有する雌ねじ孔であるといえる。そして、大径孔21bには、電磁弁40をボディ20に取り付けるための取付部材38が螺合され、取付部材38によって電磁弁40がボディ20に取り付けられている。
【0024】
ここで、電磁弁40について説明する。電磁弁40は、スリーブ41と、スリーブ41内に固定された固定鉄心47と、スリーブ41内を摺動する可動鉄心49と、可動鉄心49の動作により移動する弁体51と、可動鉄心49を駆動させるソレノイド55と、可動鉄心49を付勢する付勢部材50とを有する。
【0025】
スリーブ41は、円筒状である。スリーブ41の中心軸線Nの延びる方向をスリーブ41の軸線方向とする。なお、スリーブ41の中心軸線Nは、電磁弁40の中心軸線でもある。本実施形態では、スリーブ41の中心軸線Nは車両前後方向Xに延び、スリーブ41の軸線方向は車両前後方向Xに一致する。スリーブ41の軸線方向の両端のうち、第1取付孔21寄りの端を第1端41bとし、第1端41bと反対側の端を第2端41cとする。スリーブ41は、軸線方向の第1端41b及び第2端41cにおいて開口する。スリーブ41は、軸線方向に延びる摺動孔41aを内部に備える。
【0026】
スリーブ41は、第1端41bを含む挿入部42と、挿入部42よりも第2端41c側に位置する円板状のスリーブ側規制部43と、スリーブ側規制部43よりも第2端41c側に位置する筒状のスリーブ本体44と、を有する。なお、スリーブ41の第2端41cは環状の蓋部45によって構成されている。スリーブ41の内径は、蓋部45を除く部分では軸線方向に一定であり、スリーブ41の外径は、部位によって異なる。
【0027】
具体的には、挿入部42の外径は、スリーブ側規制部43の外径より小さく、かつスリーブ本体44の外径より大きい。なお、本実施形態では、挿入部42の外径をスリーブ本体44の外径より大きくしたが、これに限らず、挿入部42の外径は、スリーブ本体44の外径と同じ又は小さくてもよい。
【0028】
そして、挿入部42の外径は、小径孔21aの内径より僅かに小さく、挿入部42は大径孔21bを介して小径孔21aに挿入されている。挿入部42の外周面にはOリング等のシール部材46が装着されている。シール部材46は、挿入部42の外周面と小径孔21aの内周面に密接し、挿入部42の外周面と小径孔21aの内周面との間を気密にシールする。
【0029】
スリーブ41の第1端41bと小径孔21aの内底面21cとは、スリーブ41の軸線方向に離間している。そして、スリーブ41の第1端41bと、小径孔21aの内周面と、小径孔21aの内底面21cとの間で囲まれる空間には、後述する弁体51が収容される弁室Sが画成されている。弁室Sには、弁孔31aが連通可能であるとともに、弁座26が面している。
【0030】
スリーブ側規制部43は、挿入部42及びスリーブ本体44よりも径方向外側へ突出する円板状である。スリーブ側規制部43の外径は、小径孔21aの内径よりも大きく、かつ大径孔21bの内径より小さい。スリーブ側規制部43は、小径孔21aには挿入されず、大径孔21b内に位置している。スリーブ本体44の一部は大径孔21b内に位置し、その他の部分がボディ20の外側に突出している。
【0031】
固定鉄心47は、スリーブ41内に固定されている。固定鉄心47は、摺動孔41aのうちスリーブ本体44に位置する部分に圧入される円柱状の圧入部47aと、蓋部45を貫通する軸部47bとを有する。圧入部47aにおいて、軸部47b寄りの端面は、蓋部45の内面に接触し、この接触により、スリーブ41から固定鉄心47が抜け出ることが防止されている。
【0032】
圧入部47aの外周面には、Oリング等のシール部材48が装着されている。シール部材48は、圧入部47aの外周面とスリーブ41の内周面に密接し、圧入部47aの外周面とスリーブ41の内周面との間を気密にシールする。軸部47bは外周面に雄ねじを有する。軸部47bは、蓋部45を貫通してスリーブ41の第2端41cよりもスリーブ41の外に突出している。軸部47bにはナット63が螺合されている。
【0033】
ここで、電磁弁40をボディ20に取り付けるための取付部材38について説明する。取付部材38は、スリーブ本体44が挿入される環状である。取付部材38は、外周面に雄ねじを有するナットである。取付部材38の雄ねじが、大径孔21bの雌ねじに螺合されることにより、スリーブ41がボディ20に取り付けられる。
【0034】
取付部材38は、内周部にナット側規制部38aを有する。取付部材38の中心軸線Rが延びる方向を取付部材38の軸線方向とする。ナット側規制部38aは、取付部材38の軸線方向における第1取付孔21内に位置する端面から環状に凹むように形成されている。なお、ナット側規制部38aの内周面での取付部材38の内径は、スリーブ側規制部43の外径より僅かに大きい。スリーブ側規制部43は、ナット側規制部38aの内側に配置される。ナット側規制部38aの内底面は、取付部材38の径方向へ平坦に延びる環状面である。そして、ナット側規制部38aの内底面には、スリーブ側規制部43における第2端41c寄りの環状面が接触する。
【0035】
取付部材38は、軸線方向におけるボディ20の外側にフランジ39を有する。フランジ39での取付部材38の外径は、雄ねじでの取付部材38の外径より大きく、かつ大径孔21bの内径より大きい。取付部材38は、フランジ39がボディ20の前端面20aに接触するまで大径孔21bに螺合されている。
【0036】
フランジ39がボディ20の前端面20aに接触するまで取付部材38が大径孔21bに螺合されることにより、スリーブ41がボディ20に取り付けられ、電磁弁40がボディ20に取り付けられる。また、ナット側規制部38aの内底面は、スリーブ側規制部43の環状面に接触し、この接触により、スリーブ41の取付部材38からの抜け出しが防止されている。
【0037】
スリーブ41の摺動孔41aには、可動鉄心49がスリーブ41の軸線方向へ摺動可能に収容されている。可動鉄心49は円柱状である。可動鉄心49の外径は、スリーブ41の内径より僅かに小さい。可動鉄心49は、固定鉄心47に対向する端面から円柱状に凹むように形成された収容部49aを有する。収容部49a内には付勢部材50が収容されている。付勢部材50としては、例えばコイルばねが挙げられるが、その他にも板ばねやゴムでもよい。要は、可動鉄心49を弁座26に向けて付勢できれば、付勢部材50の構成は適宜変更してもよい。
【0038】
付勢部材50の第1端は、収容部49aの内底面に接触し、付勢部材50の第2端は、固定鉄心47の圧入部47aに接触している。付勢部材50は、圧縮状態で可動鉄心49と固定鉄心47の間に配置され、圧縮状態からの復帰力を付勢力として可動鉄心49を弁座26に向けて付勢している。本実施形態では、付勢部材50の付勢力は、ガスステーション13からの燃料ガスの供給圧力による荷重より小さくなるように設定されている。
【0039】
スリーブ41の摺動孔41aには、可動鉄心49に取着された弁体51の一部が嵌挿されている。弁体51は、可動鉄心49の軸線方向の両端部のうち、収容部49aの設けられた端部とは反対側の端部に取着されている。弁体51は、円筒状の本体部52と、本体部52から弁座26に向けて円錐状に突出するシール部53と、を有する。
【0040】
本体部52の外径は、スリーブ41の内径より僅かに小さい。本体部52の内側には、可動鉄心49から弁体51に向けて突出する連結部49bが挿入されている。連結部49bと本体部52は支持ピン64によって連結されている。本体部52には、支持ピン64が遊挿され、可動鉄心49に弁体51が取着されている。そして、弁体51は、可動鉄心49の動作により移動可能に構成されている。
【0041】
シール部53は、可動鉄心49の動作により弁座26に接離する。シール部53は、スリーブ41の軸線方向に沿って本体部52からシール部53の先端に向かうに従い縮径する。シール部53の外周面は円錐状のシール面である。シール部53の先端での直径は、弁孔31aの直径より僅かに小さく、シール部53の先端は、弁孔31a内に挿入される。シール部53の先端が弁孔31a内に挿入され、シール面が弁座26に接することにより、弁孔31aが閉じられ、バルブ側開口部31bと弁室Sとの連通が遮断される。電磁弁40において、付勢部材50の付勢力によってシール部53が弁座26に着座し、弁体51によって弁孔31aが閉じられる位置を閉弁位置K1とする。
【0042】
一方、後述するソレノイド55に電力が供給され、
図5に示すように、可動鉄心49が付勢部材50の付勢力に抗して固定鉄心47に接触するまで移動すると、可動鉄心49とともに弁体51が弁座26から離れる。すると、シール部53が弁座26から離れ、弁孔31aが開かれる。電磁弁40において、シール部53が弁座26から離れ、弁孔31aが開かれる位置を開弁位置K2とする。開弁位置K2では、バルブ側開口部31bと弁室Sが連通する。つまり、電磁弁40は、弁孔31aを開閉する。
【0043】
ソレノイド55は、電力が供給されることにより、可動鉄心49を駆動させるための動力を発生させるものである。ソレノイド55は、スリーブ本体44の外周側に配置される円筒状のボビン56と、ボビン56の外周に設けられる巻線57と、を有する。
【0044】
電磁弁40は、ソレノイド55を含むスリーブ本体44を覆うカバー58を有する。カバー58の軸線方向の両端のうち、ボディ20から離れた端を第1端とし、ボディ20寄りの端を第2端とする。カバー58は、筒状の外周壁59と、外周壁59における第1端に設けられる天板60と、外周壁59の内側で二重筒構造を形成し、かつ外周壁59における第2端に連続する内周壁61とを有する。
【0045】
カバー58は、外周壁59の第2端にて開口する筒状である。カバー58は、天板60の中央部に貫通孔60aを有する。また、カバー58の内周壁61の内周面には、巻線57の巻かれたボビン56が一体化されている。このため、カバー58にはソレノイド55が一体化されている。
【0046】
カバー58の貫通孔60aには、スリーブ41の蓋部45を貫通した固定鉄心47の軸部47bが貫通している。カバー58を貫通した軸部47bの雄ねじには上記したようにナット63が螺合されている。軸部47bに対するナット63の螺合により、カバー58が電磁弁40に取り付けられるとともに、カバー58によってソレノイド55が覆われている。
【0047】
ボディ20において、第2取付孔22は内周面に雌ねじが形成された雌ねじ孔である。第2取付孔22には、継手24が螺着されている。継手24は、第2取付孔22に螺合される雄ねじを外周面に有する接続部24aと、接続部24aからボディ20の外に向けて突出するコネクタ部24bとを有する。また、継手24は、当該継手24の中心軸線Lに沿って延びる継手内流路24cを有する。継手内流路24cの軸線方向の両端のうち、ボディ20寄りの端を第1端とし、第1端とは反対側の端を第2端とする。継手内流路24cの第1端は、第1接続流路31のバルブ側開口部31bに連通し、継手内流路24cの第2端は、コネクタ部24bの端面から外部に向けて開口している。したがって、バルブ側開口部31bは外部に開口しているといえる。コネクタ部24bには、インレット及びアウトレット共用の配管28が接続され、配管28の内部は継手内流路24cに連通している。
【0048】
ボディ20において、第3取付孔23は、段付き孔である。第3取付孔23は、ボディ20の下端面20cに開口する締結孔23bと、締結孔23bより奥に位置するガイド孔23aと、を有する。締結孔23bはガイド孔23aより大径である。ガイド孔23aと締結孔23bは同軸上に設けられている。ガイド孔23aは、手動弁70の移動を案内するための孔である。ガイド孔23aの内周面の周方向の一部にはタンク側開口部33bが開口している。
【0049】
締結孔23bは内周面に雌ねじが形成された雌ねじ孔である。締結孔23bには、手動弁70をボディ20に取り付けるための締結部材80が螺合され、締結部材80によって手動弁70がボディ20に取り付けられている。
【0050】
手動弁70は、直接には手動弁装置の弁体を構成している。手動弁70は、ガイド孔23aに挿入されるガイド部71と、ガイド部71の中心軸線Jの延びる軸線方向の両端のうち、ガイド孔23a寄りの第1端から突出する弁部72と、ガイド部71の軸線方向の両端のうち、第1端とは反対側の第2端から突出する螺子部73と、を有する。さらに、手動弁70は、螺子部73からガイド部71とは反対側へ突出する操作部74を有する。
【0051】
ガイド部71は、円柱状である。ガイド部71は、ガイド孔23a内を摺動する。弁部72は、弁室Sに連通する第2接続流路32の第2端32bを開閉する。なお、第2接続流路32は、第1取付孔21の小径孔21aと、第3取付孔23のガイド孔23aとを接続する。第2接続流路32の軸線方向の両端のうち、小径孔21a寄りの端を第1端32aとし、ガイド孔23a寄りの端を第2端32bとする。第1端32aは小径孔21aの内周面に開口し、第2端32bは、第3取付孔23の内底面23cに開口している。第2接続流路32は、車両上下方向Zに直線状に延びる流路である。このため、第2接続流路32の中心軸線V2は、車両上下方向Zに直線状に延びている。
【0052】
螺子部73は外周面に雄ねじを有する。螺子部73の外径は、ガイド部71より大きい。操作部74は、螺子部73より小径であり、六角柱状である。操作部74は、工具としてのスパナによって手動操作される部位である。なお、操作部74の形状は適宜変更してもよく、操作部74の形状に応じて、操作部74を手動操作するための工具の形状も変更される。
【0053】
締結部材80は、環状である。締結部材80は内周面に雌ねじ孔を有するとともに、外周面に雄ねじを有するナットである。締結部材80は、締結孔23bに締結されている。締結部材80の内側には、手動弁70の螺子部73が螺着されている。
【0054】
そして、操作部74を手動操作して螺子部73を締結部材80に対し螺進又は螺退させることにより、ガイド部71をガイド孔23a内で摺動させて弁部72を第2接続流路32の第2端32bに対し接離させることができる。そして、第2接続流路32の第2端32bを弁部72によって開閉して、タンク側開口部33bを介して第2接続流路32とガスタンク11内を連通又は遮断させることができる。つまり、操作部74の手動操作によって、タンク側開口部33bを開閉させることができる。
【0055】
ボディ20内のガス流路30は、バルブ側開口部31bとタンク側開口部33bとを連通する流路である。ガス流路30は、第1接続流路31及び弁室Sを含む第1流路A1と、弁室S、第2接続流路32、及びガイド孔23aを含む第2流路A2とを有する。第1接続流路31はバルブ側開口部31bを有するため、第1流路A1はバルブ側開口部31bを含む。また、ガイド孔23aは、タンク側開口部33bを有するため、第2流路A2はタンク側開口部33bを含む。
【0056】
第1流路A1の中心軸線を第1中心軸線L1とすると、第1中心軸線L1は、第1接続流路31の中心軸線V1と一致する。第1中心軸線L1をバルブ側開口部31bとは反対側へ延長した位置にある弁室Sの一部は、第1接続流路31に含まれているといえる。また、第2流路A2の中心軸線を第2中心軸線L2とすると、第2中心軸線L2は、第2接続流路32の中心軸線V2と一致する。第2中心軸線L2をガイド孔23aとは反対側へ延長した位置にある弁室Sの一部は、第2接続流路32に含まれているといえる。
【0057】
そして、ガス流路30は、第1流路A1の第1中心軸線L1と第2流路A2の第2中心軸線L2とが相互に交差する交差部Aを有している。本実施形態では、交差部Aは弁室Sに位置している。そして、電磁弁40の弁体51が接離する弁座26は、交差部Aよりも反第2流路A2側となる第1流路A1に配置されている。
【0058】
また、第1流路A1の第1中心軸線L1をバルブ側開口部31bとは反対側へ延長した延長線は、電磁弁40の中心軸線となるスリーブ41の中心軸線Nに一致する。つまり、第1流路A1の第1中心軸線L1を車両前後方向Xに延長した位置に、電磁弁40が位置している。一方、第2流路A2の第2中心軸線L2の延長線は、手動弁70の中心軸線となるガイド部71の中心軸線Jと一致する。つまり、第2流路A2の第2中心軸線L2を車両上下方向Zに延長した位置に、手動弁70が位置している。電磁弁40と手動弁70は、ガス流路30上におけるバルブ側開口部31b側から電磁弁40及び手動弁70の順に配置されている。
【0059】
上記したように、第1流路A1と第2流路A2とは弁室Sにて交差し、その第1流路A1の第1中心軸線L1の延長線上に電磁弁40が位置し、第2流路A2の第2中心軸線L2の延長線上に手動弁70が位置していることから、電磁弁40と手動弁70は、ボディ20の同一面に存在しない。つまり、電磁弁40と手動弁70は、ボディ20の異なる面に配置されている。具体的には、電磁弁40は、ボディ20の前端面20aに配置され、手動弁70は、ボディ20の下端面20cに配置されている。また、手動弁70の操作部74は、燃料電池自動車Vにおける車体Fの下面から露出し、車体Fの下方から工具による操作が可能になっている。
【0060】
さらに、継手24は、ボディ20の後端面20bに配置されている。継手24と電磁弁40と手動弁70は、ボディ20の一つの面に存在しない。つまり、継手24と電磁弁40と手動弁70は、ボディ20の異なる面に配置されている。
【0061】
ガス流路30は、ガスステーション13からガスタンク11への燃料ガスの充填時は、充填流路として機能し、ガスタンク11から燃料電池12への燃料ガスの供給時は、供給流路として機能する。
【0062】
ここで、第1流路A1の圧力を圧力P1とする。また、ガスタンク11の貯留室の圧力をタンク圧P2とし、弁室Sの圧力を弁室圧P3とする。
図3に示すように、電磁弁40が閉弁位置K1にあり、かつ手動弁70によってタンク側開口部33bと第2流路A2が連通した状態では、圧力P1は、タンク圧P2より小さい(P1<P2)。このとき、弁室Sは、第2接続流路32、ガイド孔23a及びタンク側開口部33bを介してガスタンク11の貯留室に連通しているため、弁室圧P3はタンク圧P2と等しくなる(P3=P2)。
【0063】
ガスタンク11に燃料ガスを充填する場合には、手動弁70によってタンク側開口部33bを第2接続流路32に連通させた状態でガスステーション13から燃料ガスが供給されると、第1流路A1の圧力P1が燃料ガスの供給圧力となり、付勢部材50の付勢力に抗して、弁体51のシール部53が弁座26から離れる。すなわち、電磁弁40が開弁位置K2を取り、弁孔31aが開かれる。
【0064】
すると、燃料ガスは、弁室Sを介して第2接続流路32、ガイド孔23a、及びタンク側開口部33bを流れてガスタンク11の貯留室に貯留される。したがって、ガスタンク11に対する燃料ガスの充填時、第1流路A1は、第2流路A2の上流側となる。
【0065】
そして、燃料ガスの充填が終了し、燃料ガスの供給が停止されると、第1流路A1の圧力P1が低下し、付勢部材50の付勢力により、弁体51のシール部53が弁座26に着座する。すなわち、電磁弁40が閉弁位置K1を取る。つまり、電磁弁40は、ガスタンク11に対する燃料ガスの充填時にはガス流路30を開くとともに、燃料ガスの充填終了時にはガス流路30を閉じる。
【0066】
ガスタンク11の貯留室の燃料ガスを燃料電池12に供給する場合、手動弁70によってタンク側開口部33bを第2接続流路32に連通させた状態で電磁弁40のソレノイド55が励磁される。この励磁により、可動鉄心49が付勢部材50の付勢力に抗して固定鉄心47に引き寄せられ、可動鉄心49が固定鉄心47に接触する。すると、可動鉄心49に取着された弁体51が弁座26から離れ、シール部53が弁座26から離れる。すなわち、電磁弁40が開弁位置K2を取り、弁孔31aが開かれる。
【0067】
すると、ガスタンク11の貯留室の燃料ガスは、タンク側開口部33b、ガイド孔23a、第2接続流路32を流れ、弁室Sを介して第1接続流路31に流れる。そして、燃料ガスは、継手内流路24c、配管28、及び供給配管29bを介して減圧弁14によって減圧された後、燃料電池12に供給される。ソレノイド55が消磁すると、付勢部材50の付勢力等により、弁体51のシール部53が弁座26に着座する。すなわち、電磁弁40が閉弁位置K1を取る。
【0068】
次に、バルブ装置10の作用を説明する。
燃料電池自動車Vにバルブ装置10を搭載する際、継手24には配管28が接続される。その後、配管28の気密検査などを行う場合、手動弁70が手動操作される。燃料電池自動車Vの車体Fの下方からバルブ装置10の手動弁70にアクセスし、操作部74を手動工具によって操作する。例えば、
図4に示すように、操作部74を手動操作し、弁部72によって第2接続流路32の第2端32bを閉じる。また、電磁弁40を閉弁位置K1に位置させる。そして、電磁弁40及び手動弁70の双方を閉弁状態として気密検査を行う。気密検査の終了後、操作部74を手動操作し、弁部72によって第2接続流路32の第2端32bを開く。
【0069】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)バルブ装置10において、第1流路A1と第2流路A2とは弁室Sにて交差し、その第1流路A1の第1中心軸線L1の延長線と電磁弁40の中心軸線Nが一致し、第2流路A2の第2中心軸線L2の延長線と手動弁70の中心軸線Jが一致している。つまり、電磁弁40は、ボディ20の前端面20aに配置され、手動弁70は、ボディ20の下端面20cに配置されている。このため、手動弁70の中心軸線Jに沿ってバルブ装置10を下方から見た軸方向視において、下端面20cには電磁弁40や配管28といった接続部材などの周辺装置が位置しない。このため、手動弁70を工具によって手動操作する際、電磁弁40や配管28に工具が干渉することがなく、手動弁70の手動操作を伴う作業の作業性の低下を抑制できる。
【0070】
(2)バルブ側開口部31bには継手24を介して配管28が接続される。配管28は、ガスタンク11への燃料ガスの充填時、及びガスタンク11からの燃料ガスの供給時に共通して燃料ガスが流れる共用の配管である。例えば、バルブ側開口部31bに、ガスタンク11へのガス充填用の配管と、ガスタンク11からのガスの供給用の配管とが別々に接続される場合と異なり、バルブ側開口部31bに接続される配管を減らすことができ、工具による手動弁70の手動操作の妨げとなる接続部材を減らすことができる。
【0071】
(3)第1流路A1と第2流路A2の交差部Aは、ガス流路30におけるガスタンク11内と弁座26との間に位置する部位のうち、弁座26よりもガスタンク11内寄りに位置する。このため、交差部Aに作用するのは常にガスタンク11内の圧力であり、交差部Aに作用する圧力の変化が小さい。よって、ガス充填及びガス供給が行われる毎に、交差部Aに発生する圧力変動による負荷を小さく抑えることができ、ガス流路30への耐圧疲労寿命の悪影響が抑制される。
【0072】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・
図6に示すように、ボディ20には複数のガスタンク11が並設されていてもよい。この場合、ボディ20には、各ガスタンク11のタンク側開口部33bが連通する共通流路が設けられるとともに、この共通流路が手動弁70によって開閉される。
【0073】
・バルブ装置10は、手動弁70の操作部74を手動操作可能であれば、車体Fへの搭載の向きは適宜変更してもよい。
・ボディ20の前端面20aや後端面20bに安全弁や他の配管が接続されていてもよい。
【0074】
・バルブ側開口部31bには、分岐継手を介して複数の配管が接続されていてもよい。
・バルブ装置10は、ボディ20の第1方向が車両左右方向となり、第2方向が車両前後方向となるように燃料電池自動車Vに搭載されていてもよい。
【0075】
・電磁弁40がボディ20の後端面20bに搭載され、継手24がボディ20の前端面20aに搭載されるように、バルブ装置10が燃料電池自動車Vに搭載されていてもよい。
【0076】
・弁体51は、可動鉄心49の一部に形成されていてもよい。
・ガスとして水素ガスを記載したが、水素以外のガス(例えば、メタン、プロパン、LPG)や天然ガスであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
A…交差部
A1…第1流路
A2…第2流路
L1…第1中心軸線
L2…第2中心軸線
N,J…中心軸線
11…タンクとしてのガスタンク
10…バルブ装置
20…ボディ
26…弁座
28…配管
30…ガス流路
31b…バルブ側開口部
33b…タンク側開口部
40…電磁弁
51…弁体
70…手動弁