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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】造形装置、及び、再利用材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/357 20170101AFI20241008BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241008BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20241008BHJP
   B29C 64/379 20170101ALI20241008BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241008BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241008BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C64/357
B29C64/209
B29C64/321
B29C64/379
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020111324
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010642
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-214555(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107498860(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0198243(US,A1)
【文献】米国特許第10611085(US,B1)
【文献】特開2005-118997(JP,A)
【文献】国際公開第2020/094391(WO,A1)
【文献】特開平07-205156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
B29D
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の少なくとも一部を可塑化する可塑化部を有する吐出部と、
ステージ上の第1成形製品、又は、前記第1成形製品に造形材料が付加されて形成され
た中間部品を切削する切削部と、
前記切削部を制御して、前記第1成形製品又は前記中間部品を切削して、前記材料とな
る再利用材料を造形する制御部と、を備える、造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の造形装置であって、
前記制御部は、前記切削部を制御して、射出成形装置で使用され熱可塑性樹脂を含む成
形型である前記第1成形製品、又は、前記成形型に前記造形材料が付加されて形成された
前記中間部品を切削して、前記再利用材料を造形する、造形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の造形装置であって、
前記吐出部は、ノズルを有し、
前記制御部は、
前記吐出部を制御して、前記再利用材料を可塑化させ、可塑化した前記再利用材料を
前記ノズルから前記ステージに向けて吐出させ、
前記切削部を制御して、前記ステージ上に吐出された可塑化された前記再利用材料の
一部を切削させることによって、前記第1成形製品とは異なる第2成形製品を造形する、
造形装置。
【請求項4】
請求項1から3の少なくともいずれか一項に記載の造形装置であって、
前記再利用材料を前記可塑化部に向けて輸送する輸送部を備える、造形装置。
【請求項5】
請求項1から4の少なくともいずれか一項に記載の造形装置であって、
前記再利用材料の大きさを選別する選別部を備える、造形装置。
【請求項6】
再利用材料の製造方法であって、
切削部によって、ステージ上の第1成形製品、又は、前記第1成形製品に造形材料が付
加されて形成された中間部品を切削して、材料の少なくとも一部を可塑する可塑化部に供
給される前記材料となる再利用材料を造形する、再利用材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、造形装置、及び、再利用材料の製造方法関する。
【背景技術】
【0002】
造形物を造形する装置に関して、特許文献1には、発泡剤から造形物を造形した後に、その造形物を粉砕し、消失させる技術が開示されている。また、溶解剤によって造形物を溶解することで、その造形物を消失させるとともに、新たな造形物を造形するための原料として再利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-17632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、造形物を粉砕によって消失させた場合には、造形物を原料として再利用することができない。また、造形物を原料として再利用する場合には、造形物を溶解して得られた液材から、溶解剤を分離する工程を要する。そのため、造形物を簡易に再利用できる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、造形装置が提供される。この造形装置は、ステージ上の第1成形製品、又は、前記第1成形製品に造形材料が付加されて形成された中間部品を切削する切削部と、前記切削部を制御して、前記第1成形製品又は前記中間部品を切削して、前記第1成形製品および前記中間部品とは異なる造形物を造形する制御部と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、切削部によって、ステージ上の第1成形製品、又は、前記第1成形製品に造形材料が付加されて形成された中間部品を切削して、前記第1成形製品および前記中間部品とは異なる前記造形物を造形する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】造形装置の概略構成を示す図。
図2】吐出部の概略構成を示す説明図。
図3】ローターの下面側の構成を示す概略斜視図。
図4】バレルの上面側の構成を示す概略平面図。
図5】事前造形処理を示す工程図。
図6】事前造形処理において、造形材料が吐出される様子を示す図。
図7】第1実施形態における造形処理を示す工程図。
図8】第1実施形態の造形処理において第1成形製品が切削される様子を示す図。
図9】第2実施形態における造形処理を示す工程図。
図10】第1成形製品に造形材料が付加された様子を示す図。
図11】第2実施形態の造形処理によって造形された第2成形製品を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態における造形装置10の概略構成を示す図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸およびY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。以下の説明において、向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。
【0009】
造形装置10は、吐出部100と、切削部200と、ステージ300と、移動機構400と、制御部500と、輸送部130と、選別部170とを、備えている。造形装置10は、制御部500の制御下で、切削部200に取り付けられた切削工具210を回転させつつ、移動機構400を駆動して、切削工具210とステージ300との相対的な位置を変化させることによって、ステージ300上の、成形製品である第1成形製品SP1、又は、第1成形製品SP1に造形材料が付加されて形成された中間部品を切削し、第1成形製品SP1および中間部品とは異なる造形物である造形物OBを造形する。
【0010】
成形製品とは、その形状を利用することを目的として成形された部分を有する完成品や、部品等を指す。成形製品は、例えば、射出成形等に用いられる成形型、デザイン検討に用いられる模型、各種の機械部品や意匠品等であり、例えば、本実施形態の造形装置、射出成形装置や他の造形装置等によって成形される。造形物とは、成形製品だけではなく、加工されて用いられることを目的として生成された、いわゆる材料や原料等のことをも指す。従って、例えば、「制御部500が第1成形製品SP1を切削して造形物OBを造形する」と言う場合、制御部500は、造形物OBとして第1成形製品SP1と異なる成形製品を造形してもよいし、造形物OBとして材料や原料等を造形してもよい。
【0011】
「造形物OBが、第1成形製品SP1と異なる」と言う場合、造形物OBの形状または構成材料が、第1成形製品SP1の形状または構成材料と異なっていればよい。例えば、造形物OBが第1成形製品SP1から造形された材料である場合、造形物OBの形状と第1成形製品SP1との形状が異なるため、造形物OBと第1成形製品SP1とは異なる。また、第1成形製品SP1の一部が切削によって除去されて造形物OBとして成形製品が造形された場合、両者の形状が異なるため、両者は異なる。更に、第1成形製品SP1の一部が切削され、かつ、切削された部分に切削された部分を構成する材料とは異なる材料が付加され、第1成形製品SP1と同一形状の造形物OBが造形された場合、両者の構成材料が異なるため、両者は異なる。第1成形製品SP1と造形物OBとの形状が異なり、かつ、両者の構成材料が異なる場合もまた、両者は異なる。なお、「造形物OBが中間部品と異なる」と言う場合も、上記と同様である。
【0012】
また、本実施形態における造形装置10は、制御部500の制御下で、吐出部100に設けられたノズル61から、ステージ300上の造形面310に向かって造形材料を吐出させつつ、移動機構400を駆動して、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させることによって、ステージ300上に造形材料を積層する。
【0013】
切削部200は、ヘッド先端の軸に取り付けられた切削工具210を回転させて、ステージ300上の第1成形製品を切削する切削装置である。切削工具210としては、例えば、フラットエンドミルや、ボールエンドミル、フェイスミル等を用いることができる。本実施形態の切削部200は、図示しない自動工具交換装置(ATC)によって、例えば、切削対象や切削目的等に応じて、複数の切削工具210を交換可能に構成されている。切削部200は、一般的な位置検出センサーによって切削工具210の先端の位置を検出し、検出結果を制御部500に送信する。制御部500は、この検出結果を用いて、後述する移動機構400によって、切削工具210と積層された造形材料との相対的な位置関係を制御して切削を行う。尚、切削部200は、イオナイザー等の除電器を備えていてもよい。
【0014】
移動機構400は、吐出部100および切削部200と、ステージ300との、それぞれを移動させることによって、吐出部100および切削部200と、ステージ300との相対的な位置を変更する。これによって、吐出部100に設けられたノズル61、および、切削部200の、ステージ300の造形面310に対する相対的な位置が変化する。なお、造形面310に対するノズル61の相対的な位置の変化を、単にノズル61の移動と呼ぶこともある。同様に、造形面310に対する切削部200の相対的な位置の変化を、単に切削部200の移動と呼ぶこともある。
【0015】
本実施形態における移動機構400は、3つのモーターの駆動力によって、吐出部100および切削部200をX方向およびZ方向に沿って移動させ、ステージ300をY方向に沿って移動させる。各モーターは、制御部500の制御下にて駆動する。尚、移動機構400は、吐出部100および切削部200を移動させずにステージ300を移動させる構成であってもよい。また、ステージ300を移動させずに吐出部100や切削部200を移動させる構成であってもよい。
【0016】
図2は、本実施形態における吐出部100の概略構成を示す説明図である。吐出部100は、材料供給部20と、可塑化部30と、ノズル61とを、備えている。
【0017】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が投入される。材料としては、市販の材料や、後述する再利用材料が用いられる。本実施形態では、市販の材料としては、ペレット状のABS樹脂が用いられる。なお、造形装置10において使用可能な材料の詳細については後述する。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。材料供給部20と可塑化部30との間は、材料供給部20の下方に設けられた連通路22によって接続されている。材料供給部20に投入された材料は、連通路22を介して、可塑化部30に供給される。
【0018】
可塑化部30は、ローターケース31と、駆動モーター32と、ローター40と、バレル50と、ヒーター58とを備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を可塑化して流動性を有するペースト状の造形材料にして、ノズル61に供給する。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。なお、ローター40のことを、スクロールや、フラットスクリュー、又は、単にスクリューと呼ぶこともある。
【0019】
ローターケース31は、ローター40を収容している。ローターケース31の上面には、駆動モーター32が固定されている。駆動モーター32の回転軸は、ローター40の上面41に接続されている。なお、駆動モーター32は、直接、ローター40と接続されていなくてもよい。例えば、ローター40と駆動モーター32とは、減速機を介して接続されていてもよい。この場合、例えば、遊星歯車機構を有する減速機の遊星ギアに駆動モーター32が接続され、太陽ギアにローター40が接続されていてもよい。
【0020】
ローター40は、中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。ローター40は、中心軸RXがZ方向に平行になるように、ローターケース31内に配置されている。ローター40は、駆動モーター32の回転によって生じるトルクによって、ローターケース31内にて、中心軸RXを中心に回転する。
【0021】
ローター40は、中心軸RXに沿った方向における上面41とは反対側に溝形成面48を有している。溝形成面48には、溝42が形成されている。ローター40の溝形成面48の詳細な形状は、図3を用いて後述する。
【0022】
バレル50は、ローター40の下方に設けられている。バレル50は、ローター40の溝形成面48に対向する対向面52を有している。対向面52の中心には、連通孔56が設けられている。可塑化部30によって生成された造形材料は、連通孔56を介してノズル61へと供給される。尚、対向面52の詳細な形状については、図4を用いて後述する。
【0023】
ヒーター58は、ローター40とバレル50との間に供給された材料を加熱する。本実施形態のヒーター58は、バレル50に埋設されている。ヒーター58の出力は、制御部500によって制御される。他の実施形態では、ヒーター58は、例えば、バレル50に埋設されることなくバレル50に接して設けられていてもよいし、ローター40等に設けられていてもよい。
【0024】
ノズル61は、バレル50の下方に設けられている。ノズル61には、ノズル流路65と、ノズル孔66とが形成されている。ノズル流路65は、可塑化部30の連通孔56に連通する。ノズル孔66は、ノズル流路65の大気に連通する側の端部に設けられた流路断面が縮小された部分である。可塑化部30からノズル流路65に供給された造形材料は、ノズル孔66から吐出される。
【0025】
図3は、ローター40の下面側の構成を示す概略斜視図である。ローター40の下面とは、上述した溝形成面48のことを指す。図3には、ローター40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。バレル50に対向するローター40の下面には、溝42が設けられている。
【0026】
ローター40の溝形成面48の中央部45は、溝42の一端が接続されている凹部として構成されている。中央部45は、バレル50の連通孔56に対向する。中央部45は、中心軸RXと交差している。
【0027】
ローター40の溝42は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝42は、中央部45から、ローター40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝42は、インボリュート曲線状や螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面48には、溝42の側壁部を構成し、各溝42に沿って延びている凸条部43が設けられている。溝42は、ローター40の側面に形成された材料流入口44まで連続している。この材料流入口44は、材料供給部20の連通路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0028】
図3には、3つの溝42と、3つの凸条部43と、を有するローター40の例が示されている。ローター40に設けられる溝42や凸条部43の数は、3つには限定されない。ローター40には、1つの溝42のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝42が設けられていてもよい。また、溝42の数に合わせて任意の数の凸条部43が設けられてもよい。
【0029】
図3には、材料流入口44が3箇所に形成されているローター40の例が図示されている。ローター40に設けられる材料流入口44の数は、3箇所に限定されない。ローター40には、材料流入口44が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0030】
図4は、バレル50の上面側の構成を示す概略平面図である。バレル50の上面とは、上述した対向面52である。対向面52は、略円形状を有する。対向面52の中心には、上述した連通孔56が形成されている。対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56から対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、バレル50には、案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0031】
ローター40が回転すると、材料流入口44から供給された材料が、溝42に誘導されて、溝42内において、加熱されながら中央部45に向かって移動する。このとき、材料は、ヒーター58の熱によって、中央部45に近づくほど可塑化され、造形材料へと転化する。中央部45に集められた造形材料は、中央部45で生じる内圧により連通孔56を介してノズル61に流出する。このように、可塑化部30は、ローター40とバレル50との間において、ローター40の回転によって連通孔56に向かって材料を搬送しつつ、ヒーター58の熱によって材料を可塑化できる。従って、例えば、インラインスクリューと比較して、材料の剪断によって生じる熱が小さくても安定して材料を可塑化しやすい。そのため、例えば、材料が微粉状であっても、可塑化部30によって安定して材料を可塑化できる。
【0032】
輸送部130は、後述する再利用材料を可塑化部30に向けて輸送する。図1に示すように、輸送部130は、ブロアー135と、コンベアー部140と、回収部150と、圧送部160とを、備え、ステージ300上で形成された切削粉等を、可塑化部30に向けて輸送可能に構成されている。なお、輸送部130は、再利用材料を可塑化部30に向けて輸送可能に構成されていればよく、他の実施形態では、例えば、上記の構成の一部を備えていなくてもよいし、上記の構成と異なる輸送装置等を備えていてもよい。
【0033】
ブロアー135は、ステージ300に向かって空気を吹き付ける送風機によって構成されている。コンベアー部140は、ステージ300の+X方向および-X方向に設けられた2つのコンベアーによって構成されている。回収部150は、コンベアー部140の-Y方向に隣接するように設けられた、X方向に細長い形状を有する箱状の容器である。回収部150は、コンベアー部140より下方に設けられ、+Z方向に開口している。圧送部160は、本体部161と、第1チューブ162と、第2チューブ163とを有する。本体部161は、回収部150から切削粉等を吸引する吸引機と、圧縮空気とともに材料供給部20へと切削粉等を圧送するコンプレッサーとを、有する。第1チューブ162は、回収部150と本体部161とを接続する可撓性のチューブである。第2チューブ163は、本体部161と材料供給部20とを接続する可撓性のチューブである。なお、例えば、第2チューブ163と材料供給部20との接続部に、圧縮空気をパージする機構が設けられていてもよい。
【0034】
選別部170は、後述する再利用材料の大きさを選別する部材である。本実施形態の選別部170は、輸送部130の一部として、圧送部160の本体部161内に設けられている。選別部170は、フィルターを有している。切削粉等は、回収部150から材料供給部20へと圧送される際、このフィルターを通過することによって、フィルターの目の大きさに応じて、その大きさを選別される。選別部170には、例えば、複数のフィルターが設けられていてもよい。また、選別部170は、本体部161内に設けられていなくてもよく、例えば、コンベアー部140の途中に設けられてもよいし、輸送部130と独立して設けられてもよい。更に、選別部170は、例えば、気流による遠心力や、フィルターと気流による遠心力の組み合わせ等によって切削粉等の大きさを選別してもよい。
【0035】
制御部500は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、造形処理を含む種々の機能を発揮する。尚、制御部500は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0036】
造形処理とは、造形物OBを製造するための処理を指す。造形処理は、造形装置10に設けられた操作パネルや、造形装置10に接続されたコンピューターに対して、ユーザーによる造形処理の開始操作が行われた場合に、制御部500によって実行される。
【0037】
本実施形態では、制御部500は、造形処理を実行することによって、造形物OBとして、再利用材料を造形する。再利用材料とは、第1成形製品SP1又は中間部品を切削することによって得られる材料である。また、制御部500は、造形処理の実行に先立って、第1成形製品SP1を造形するために事前造形処理を実行し、第1成形製品SP1を造形する。
【0038】
図5は、事前造形処理を示す工程図である。ステップS102にて、制御部500は、吐出部100を制御して、ステージ300上に造形材料を積層させる。具体的には、制御部500は、可塑化部30を制御して、材料としてペレット状のABS樹脂を可塑化して造形材料を生成させ、生成された造形材料をノズル61からステージ300に向けて吐出させて固化させつつ、ステージ300上に造形材料を積層する。造形材料の固化とは、吐出部100から吐出された造形材料が流動性を失うことを指す。本実施形態では、造形材料は、冷えることによって熱収縮するとともに可塑性を失って固化する。
【0039】
図6は、ステップS102において、造形材料が吐出される様子を示す図である。図6に示すように、ステップS102が実行されることによって、ステージ300上に造形材料が積層され、造形材料の層MLが形成される。
【0040】
ステップS104にて、制御部500は、切削部200を制御して、ステージ300上の造形材料の一部を切削させる。ステップS104では、例えば、図6に示した造形材料の層MLの側面等が切削される。
【0041】
本実施形態の制御部500は、ステップS102およびステップS104のように、吐出部100および切削部200を制御して成形製品を造形する際、吐出データおよび切削データに従って成形製品を造形する。従って、制御部500は、ステップS102やステップS104の実行に先立って、例えば、造形装置10に接続された他のコンピューター等から、吐出データや切削データを取得する。吐出データは、造形材料を吐出しながら移動するノズル61移動経路である吐出パスが表されたデータである。吐出データには、例えば、吐出パスにおける造形材料の線幅データ等が含まれる。切削データは、造形された造形材料を切削しながら移動する切削工具210の移動経路である切削パスが表されたデータである。切削パスデータには、例えば、切削工具210の回転数の目標値や、切削工具210の送り速度の目標値等が含まれる。なお、制御部500は、例えば、造形する成形製品の形状データから、吐出パスや切削パスを生成してもよい。この場合、造形装置10は、制御部500とは別に、吐出パスや切削パスを生成するコンピューター等を備えていてもよい。
【0042】
ステップS102とステップS104とが実行されることによって、第1成形製品SP1が造形される。なお、制御部500は、例えば、ステップS102とステップS104とを適宜繰り返し実行することによって第1成形製品SP1を造形してもよい。また、造形装置10が、例えば、吐出された造形材料を加熱するヒーター等の加熱部や、吐出された造形材料を冷却する送風機等の冷却部を備える場合、制御部500は、加熱部や冷却部を制御して造形材料を加熱または冷却することで、造形材料の流動性を調整しつつ、造形材料の積層や切削を行ってもよい。
【0043】
本実施形態では、第1成形製品SP1として、射出成形装置で使用される成形型が造形される。従って、本実施形態の第1成形製品SP1には、例えば、射出成形装置によって成形される成形物の形状を定めるキャビティーを形成するための、凹凸形状等が形成される。また、本実施形態の第1成形製品SP1は、上述したように、ABS樹脂によって造形される。すなわち、第1成形製品SP1は、熱可塑性樹脂を含む。
【0044】
図7は、本実施形態における造形処理を示す工程図である。上述したように、本実施形態では、造形処理は、図5に示した事前造形処理の後に実行される。なお、造形処理は、第1成形製品SP1の造形の直後に実行されなくてもよく、例えば、第1成形製品SP1が、射出成形装置において成形型として使用された後等に実行されてもよい。この場合、第1成形製品SP1は、例えば、ユーザー等によって、ステップS110に先立ってステージ300上に載置される。また、このときの第1成形製品SP1は、例えば、熱劣化していてもよいし、その一部が破損等していてもよい。
【0045】
ステップS110にて、制御部500は、切削部200を制御して、第1成形製品SP1を切削し、造形物OBとして、再利用材料を造形する。なお、本実施形態では、制御部500は、ステップS110において、第1成形製品SP1の全てを切削するが、他の実施形態では、第1成形製品SP1の一部のみを切削して再利用材料を造形してもよい。また、制御部500は、ステップS110において、中間部品の全てまたは一部を切削して、再利用材料を造形してもよい。この場合、制御部500は、例えば、ステップS110に先立って、第1成形製品SP1に造形材料を付加し、中間部品を形成する。
【0046】
図8は、造形処理のステップS110において第1成形製品SP1が切削される様子を示す図である。本実施形態の制御部500は、切削部200を制御して、第1成形製品SP1を切削することによって、再利用材料である再利用ペレットRMを造形する。本実施形態では、制御部500は、図5のステップS104に示したような成形製品の造形と、図7のステップS110に示した再利用材料の造形とでは、異なる態様で切削部200を制御する。具体的には、制御部500は、ステップS110においては、切削データを用いることなく、切削部200に設けられた位置センサーによって切削工具210と第1成形製品SP1との間の距離を測定しつつ、切削工具210を移動させ、一定のストロークで切削工具210を第1成形製品SP1に接触させて切削を行う。これによって、第1成形製品SP1から再利用ペレットRMが削り取られて造形され、かつ、造形される再利用ペレットRMの大きさや形状のばらつきが抑制される。
【0047】
制御部500は、例えば、成形製品の造形と再利用材料の造形とで異なる切削工具210を使用してもよい。この場合、例えば、成形製品の切削においてフラットエンドミルが使用され、再利用材料の造形においてボールエンドミルが使用されてもよい。また、切削中に複数の切削工具210を使い分けてもよい。また、他の実施形態では、制御部500は、例えば、図7のステップS110において、図5のステップS104と同様に、切削データに従って再利用材料を造形してもよい。この場合、制御部500は、例えば、ATCによって切削部200のヘッド先端に装着したタッチプローブを用いて第1成形製品SP1のZ座標を検出した後、ATCによってヘッド先端にフェイスミル等の切削工具210を装着し、検出した第1成形製品SP1のZ座標と切削データとに基づいて、切削工具210をZ方向に一定のストロークで動作させて、再利用ペレットRMを造形してもよい。
【0048】
ステップS120にて、制御部500は、輸送部130を制御して、再利用材料である再利用ペレットRMを可塑化部30に向けて輸送する。なお、図8では、輸送部130による再利用ペレットRMの輸送経路が、実線矢印によって示されている。具体的には、制御部500は、まず、ブロアー135を制御して、ステップS110にて造形された再利用ペレットRMを、コンベアー部140へと吹き飛ばす。次に、制御部500は、コンベアー部140を制御して駆動させ、再利用ペレットRMを運搬し、回収部150へと投入する。更に、制御部500は、圧送部160の本体部161を制御して、第1チューブ162を介して再利用ペレットRMを本体部161に吸引し、本体部161に吸引された再利用ペレットRMを、第2チューブ163を介して材料供給部20へと圧送する。そして、材料供給部20へと供給された再利用ペレットRMは、図2に示した連通路22を介して可塑化部30に供給される。なお、本実施形態では、制御部500は、造形処理中、常時、輸送部130を駆動させることによって、再利用材料を可塑化部30に向けて輸送する。他の実施形態では、制御部500は、例えば、再利用材料が造形されるタイミングに応じて適宜、輸送部130を駆動させてもよい。
【0049】
ステップS120において、再利用材料は、可塑化部30へ輸送される間に、上述した選別部170によって、その大きさを選別される。具体的には、本実施形態では、選別部170のフィルターの目より小さい寸法を有する再利用ペレットRMは可塑化部30へと輸送されやすく、フィルターの目より大きい寸法を有する再利用ペレットRMはフィルターに捕集されやすい。従って、選別部170が設けられることによって、可塑化部30に輸送される再利用ペレットRMの寸法やアスペクト比が一定の値以下に保たれやすく、可塑化部30において再利用ペレットRMが安定して可塑化されやすくなる。選別部170によって選別する再利用材料の大きさは、例えば、再利用材料が可塑化されるまでに通過する経路の寸法に応じた大きさや、可塑化部30における再利用材料の可塑化が安定する大きさ等として、実験等によって定められる。なお、選別部170は、例えば、再利用材料の大きさを、一定の大きさ以下に選別するだけでなく、一定の大きさ以上かつ一定の大きさ以下の範囲に選別するように構成されていてもよい。また、選別部170によって捕集された再利用材料は、例えば、回収されることによって、他の成形製品の造形処理や、他の造形装置等における造形に使用されてもよい。
【0050】
ステップS130にて、制御部500は、可塑化部30を制御して、再利用材料を可塑化させる。具体的には、ステップS120において可塑化部30へと輸送された再利用ペレットRMが、可塑化部30によって可塑化され、再利用造形材料が生成される。なお、ステップS130において再利用造形材料が生成される際には、少なくとも再利用材料が可塑化されていればよく、例えば、再利用材料が可塑化される際に、再利用材料とは別の市販の材料等が可塑化されてもよい。すなわち、ステップS130において生成される再利用造形材料は、例えば、再利用材料が可塑化されて生成されるものと、市販の材料等が可塑化されて生成されるものとを含んでいてもよい。
【0051】
ステップS140にて、制御部500は、再利用造形材料を使用して、第2成形製品SP2を造形する。第2成形製品SP2とは、第1成形製品SP1とは異なる成形製品である。本実施形態では、ステップS110において造形される再利用材料に加え、ステップS140において再利用材料を用いて造形される第2成形製品SP2もまた、造形物OBであると言うこともできる。なお、実際には、ステップS130とステップS140とは並行して実行される。
【0052】
制御部500は、ステップS140において、吐出部100を制御して、ステップS130において生成された再利用造形材料を、ステージ300に向けて吐出させ、切削部200を制御して、ステージ300上に吐出された再利用造形材料の一部を切削させる。これによって、図6に示した造形材料の層と同様に、再利用造形材料の層が形成され、第2成形製品SP2が造形される。なお、ステップS140では、制御部500は、吐出部100から、少なくとも再利用造形材料を吐出させればよく、例えば、再利用造形材料と市販の材料等から生成された造形材料とを吐出させてもよい。すなわち、ステップS140において造形される第2成形製品SP2の少なくとも一部が、再利用材料から生成された造形材料によって形成されていればよい。
【0053】
以上で説明した造形装置10によれば、ステージ300上の第1成形製品SP1、又は、第1成形製品SP1に造形材料が付加されて形成された中間部品を切削して、第1成形製品SP1および中間部品とは異なる造形物OBを造形する切削部200を備える。そのため、切削部200によって第1成形製品SP1を造形物OBに作り替え、簡易に再利用できる。
【0054】
また、本実施形態では、第1成形製品SP1は、射出成形装置で使用される成形型であり、熱可塑性樹脂を含んでいる。そのため、成形型としての第1成形製品SP1を造形物OBに作り替え、簡易に再利用できる。また、第1成形製品SP1に形成されたキャビティーに関する形状等を切削によって除去することで、第1成形製品SP1を簡易に再利用しつつ、第1成形製品SP1を用いて成形される成形物の形状情報を秘匿できる可能性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態では、制御部500は、切削部200を制御して、造形物OBとして、再利用材料を造形する。そのため、第1成形製品SP1を再利用材料に作り替え、簡易に再利用できる。
【0056】
また、本実施形態では、可塑化部30は、ローター40と、バレル50と、ローター40とバレル50との間に供給された材料を加熱するヒーター58とを、備える。そのため、再利用材料が微粉状であっても、可塑化部30によって、安定して再利用材料を可塑化できる。
【0057】
また、本実施形態では、制御部500は、再利用材料を可塑化させて生成した再利用造形材料をノズル61からステージ300に向けて吐出させ、ステージ300上に吐出された再利用造形材料の一部を切削することによって、第1成形製品SP1とは異なる第2成形製品SP2を造形する。そのため、第1成形製品SP1を再利用材料に作り替えて再利用し、更に、再利用材料を使用して第1成形製品SP1とは異なる第2成形製品SP2を造形できる。
【0058】
また、本実施形態では、再利用材料を可塑化部30に向けて輸送する輸送部130を備える。そのため、輸送部130を駆動させることによって、造形された再利用材料を可塑化部30に向けて効率的に輸送し、可塑化部30によって再利用材料を効率的に生成できる。
【0059】
また、本実施形態では、再利用材料の大きさを選別する選別部170を備える。そのため、第2成形製品SP2の造形に際し、選別部170によって選別された再利用材料を用いることで再利用造形材料の可塑化状態を安定させ、第2成形製品SP2の造形品質を高めることができる。
【0060】
なお、第1実施形態では、造形処理において切削される第1成形製品SP1は、造形装置10によって予め造形されている。これに対して、他の実施形態では、第1成形製品SP1は、造形装置10によって造形されなくてもよい。すなわち、造形処理に先立って、事前造形処理が実行されなくてもよい。この場合、例えば、他の造形装置等によって造形された第1成形製品SP1が、図7に示したステップS110に先立って、ユーザー等によってステージ300上に載置されてもよい。
【0061】
また、第1実施形態では、制御部500は、造形処理において、再利用材料を用いて、第2成形製品SP2を造形している。これに対して、他の実施形態では、制御部500は、造形処理において、第2成形製品SP2を造形しなくてもよく、例えば、第1成形製品SP1から造形物OBとして再利用材料を造形した時点で、造形処理を終了させてもよい。この場合、造形物OBとして造形された再利用材料は、例えば、造形装置10における別の造形処理において使用されてもよいし、他の造形装置等において使用されてもよい。また、この場合、再利用材料は、例えば、輸送部130によって可塑化部30へ輸送されることなく、選別部170によってその大きさが選別されてもよい。
【0062】
ここで、上述した造形装置10において用いられる材料について説明する。造形装置10では、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として成形製品を造形することができる。ここで、「主材料」とは、成形製品の形状を形作っている中心となる材料を意味し、成形製品において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0063】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化部30において、当該材料が可塑化することによって、造形材料が生成される。
【0064】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0065】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、ローター40の回転とヒーター58の加熱とによって可塑化されて溶融した状態に転化される。
【0066】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から吐出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂を用いる場合、ノズル61からの吐出時には約200℃であることが望ましい。
【0067】
造形装置10では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、材料MRとして可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0068】
造形装置10においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ300上に吐出された造形材料は焼結によって硬化されてもよい。
【0069】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0070】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0071】
その他に、材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂あるいはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)あるいはその他の熱可塑性樹脂。
【0072】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態における、造形物OBの造形処理を示す工程図である。本実施形態では、制御部500は、造形処理を実行することによって、造形物OBとして、再利用材料を造形するのではなく、第1成形製品SP1および中間部品とは異なる成形製品である第3成形製品SP3を造形する。すなわち、第3成形製品SP3は、第1実施形態における第2成形製品SP2とは異なり、再利用材料を使用して造形されるのではなく、第1成形製品SP1や中間部品に対して切削や造形材料の付加が行われることによって、第1成形製品SP1や中間部品から直接、造形される。なお、第2実施形態の造形装置10の構成のうち、特に説明しない点については、第1実施形態と同様である。
【0073】
ステップS210にて、制御部500は、吐出部100を制御して、ステージ300上の第1成形製品SP1に対して造形材料を吐出して、第1成形製品SP1に造形材料を付加することによって、中間部品Mを形成する。
【0074】
図10は、ステップS210において、第1成形製品SP1に造形材料が付加された様子を示す図である。ステップS210が実行されることによって、図10に示すように、第1成形製品SP1に造形材料が付加されることによって、第1成形製品SP1に付加部分Adが形成され、中間部品Mが形成される。
【0075】
ステップS220にて、制御部500は、切削部200を制御して、ステージ300上の中間部品Mの一部を切削する。
【0076】
図11は、第2実施形態の造形処理によって造形された第3成形製品SP3を示す図である。図11に示すように、ステップS220が実行されることによって、ステップS210において形成された中間部品Mの一部である切削部分Pが切削され、造形物OBとして、第3成形製品SP3が造形される。なお、本実施形態では、切削部分Pは、付加部分Adとは異なる部分である。
【0077】
なお、他の実施形態では、例えば、制御部500は、中間部品Mの一部として、付加部分Adの一部のみや、付加部分Adの一部と付加部分Adとは異なる部分の一部とを切削することによって、第3成形製品SP3を造形してもよい。また、例えば、ステップS220に相当する第1成形製品SP1の切削が、ステップS210に相当する第1成形製品SP1への造形材料の付加に先立って実行されてもよい。この場合、第1成形製品SP1の一部が切削されることによって、一部が切削された第1成形製品SP1が形成され、この一部が切削された第1成形製品SP1に造形材料の付加が行われることによって、第3成形製品SP3が造形される。また、例えば、ステップS210と、ステップS220とが適宜繰り返し実行されることによって、第3成形製品SP3が造形されてもよい。
【0078】
更に、例えば、ステップS220において切削された第1成形製品SP1の切削粉が、材料として再利用されてもよい。この場合、切削粉は、例えば、第1実施形態と同様に、輸送部130によって可塑化部30へと輸送されてもよい。また、切削粉の大きさは、選別部170によって選別されてもよい。
【0079】
以上で説明した第2実施形態の造形装置10によっても、第1成形製品SP1を新たな造形物に作り替え、簡易に再利用できる。特に、本実施形態では、制御部500は、吐出部100を制御して、ステージ300上の第1成形製品SP1に造形材料を付加することで中間部品Mを形成する。そのため、第1成形製品SP1に造形材料を付加して中間部品Mに形成した後に、中間部品Mを造形物OBに作り替えることによって、第1成形製品SP1を簡易に再利用できる。
【0080】
なお、他の実施形態では、制御部500は、中間部品Mを切削するのではなく、ステージ300上の第1成形製品SP1を切削することによって、第3成形製品SP3を造形してもよい。この場合、制御部500は、例えば、図9のステップS210を実行することなく、ステップS220を実行することによって、ステージ300上の第1成形製品SP1を切削し、第3成形製品SP3を造形してもよい。
【0081】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態では、第1成形製品SP1は、射出成形装置で使用される成形型であり、熱可塑性樹脂を含んでいる。これに対して、第1成形製品SP1は、射出成形装置で使用される成形型でなくてもよく、また、熱可塑性樹脂を含んでいなくてもよい。
【0082】
(C-2)上記実施形態では、造形装置10は、吐出部100を備えている。これに対して、造形装置10は、吐出部100を備えていなくてもよい。従って、造形装置10は、例えば、切削部200による第1成形製品SP1の切削のみによって、造形物OBを造形するように構成されていてもよい。
【0083】
(C-3)上記実施形態では、可塑化部30は、ローター40とバレル50とを備えている。これに対して、可塑化部30は、ローター40とバレル50とを備えていなくてもよい。例えば、可塑化部30は、モーターの駆動力によって回転するインラインスクリューを備えていてもよい。この場合、可塑化部30は、バレル50を有していなくてもよい。
【0084】
(C-4)上記実施形態では、造形装置10は、輸送部130を備えている。これに対して、造形装置10は、輸送部130を備えていなくてもよい。この場合、例えば、再利用材料は、ユーザーによって、材料供給部20を介して可塑化部30へと供給されてもよい。
【0085】
(C-5)上記実施形態では、造形装置10は、選別部170を備えている。これに対して、造形装置10は、選別部170を備えていなくてもよい。
【0086】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0087】
(1)本開示の第1の形態によれば、造形装置が提供される。この造形装置は、ステージ上の第1成形製品、又は、前記第1成形製品に造形材料が付加されて形成された中間部品を切削する切削部と、前記切削部を制御して、前記第1成形製品又は前記中間部品を切削して、前記第1成形製品および前記中間部品とは異なる造形物を造形する制御部と、を備える。
このような形態によれば、第1成形製品を、切削部によって第1成形製品とは異なる造形物に作り替え、簡易に再利用できる。
【0088】
(2)上記形態の造形装置において、前記制御部は、前記切削部を制御して、射出成形装置で使用され熱可塑性樹脂を含む成形型である前記第1成形製品、又は、前記成形型に前記造形材料が付加されて形成された前記中間部品を切削して、前記造形物を造形してもよい。このような形態によれば、第1成形製品に形成されたキャビティーに関する形状等を切削によって除去することで、第1成形製品を簡易に再利用しつつ、第1成形製品を用いて成形される成形物の形状情報を秘匿できる可能性を高めることができる。
【0089】
(3)上記形態の造形装置において、前記造形材料を前記ステージに向けて吐出する吐出部を備え、前記制御部は、前記吐出部を制御して前記ステージ上の前記第1成形製品に前記造形材料を付加することで前記中間部品を形成してもよい。このような形態によれば、第1成形製品に造形材料を付加して中間部品を形成した後に、中間部品を造形物に作り替えることによって、第1成形製品を簡易に再利用できる。
【0090】
(4)上記形態の造形装置において、前記造形材料を前記ステージに向けて吐出する吐出部を備え、前記吐出部は、材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料を生成する可塑化部を有し、前記制御部は、前記切削部を制御して、前記造形物として、前記材料となる再利用材料を造形してもよい。このような形態によれば、第1成形製品を再利用材料に作り替え、簡易に再利用できる。
【0091】
(5)上記形態の造形装置において、前記可塑化部は、溝が形成された溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記対向面に連通孔が形成されたバレルと、前記ローターと前記バレルとの間に供給された前記材料を加熱するヒーターと、を備えていてもよい。このような形態によれば、再利用材料が微粉状であっても、可塑化部によって、安定して再利用材料を可塑化できる。
【0092】
(6)上記形態の造形装置において、前記制御部は、前記吐出部を制御して、前記再利用材料を可塑化させ、可塑化した前記再利用材料を前記ステージに向けて吐出させ、前記切削部を制御して、前記ステージ上に吐出された可塑化された前記再利用材料の一部を切削させることによって、前記第1成形製品とは異なる第2成形製品を造形してもよい。このような形態によれば、第1成形製品を再利用材料に作り替えて再利用し、更に、再利用材料を使用して第1成形製品とは異なる第2成形製品を造形できる。
【0093】
(7)上記形態の造形装置において、前記再利用材料を前記可塑化部に向けて輸送する輸送部を備えていてもよい。このような形態によれば、輸送部を駆動させることによって、造形された再利用材料を可塑化部に向けて効率的に輸送し、可塑化部によって再利用材料を効率的に可塑化できる。
【0094】
(8)上記形態の造形装置において、前記再利用材料の大きさを選別する選別部を備えていてもよい。このような形態によれば、第2成形製品の造形に際し、選別部によって選別された再利用材料を用いることで、可塑化された再利用材料の可塑化状態を安定させ、第2成形製品の造形品質を高めることができる。
【0095】
(9)本開示の第2の形態によれば、造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、切削部によって、ステージ上の第1成形製品、又は、前記第1成形製品に造形材料が付加されて形成された中間部品を切削して、前記第1成形製品および前記中間部品とは異なる前記造形物を造形する。
このような形態によれば、第1成形製品を、切削部によって第1成形製品とは異なる造形物に作り替え、簡易に再利用できる。
【0096】
本開示は、上述した造形装置や造形物の製造方法としての形態に限らず、種々の態様で実現可能である。例えば、造形装置の制御方法や、造形物を造形するためのコンピュータープログラム等として実現可能である。
【符号の説明】
【0097】
10…造形装置、20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…ローターケース、32…駆動モーター、40…ローター、41…上面、42…溝、43…凸条部、44…材料流入口、45…中央部、48…溝形成面、50…バレル、52…対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、61…ノズル、65…ノズル流路、66…ノズル孔、100…吐出部、130…輸送部、135…ブロアー、140…コンベアー部、150…回収部、160…圧送部、161…本体部、162…第1チューブ、163…第2チューブ、170…選別部、200…切削部、210…切削工具、300…ステージ、310…造形面、400…移動機構、500…制御部
図1
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