(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
H02S 10/30 20140101AFI20241008BHJP
【FI】
H02S10/30
(21)【出願番号】P 2020118959
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 明信
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 泰蔵
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05942047(US,A)
【文献】国際公開第2016/042749(WO,A1)
【文献】特開平09-055529(JP,A)
【文献】特開2019-054637(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017205763(DE,A1)
【文献】国際公開第2010/102634(WO,A2)
【文献】米国特許第05551992(US,A)
【文献】特開2000-068545(JP,A)
【文献】特表2018-528751(JP,A)
【文献】米国特許第06372979(US,B1)
【文献】米国特許第05647916(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0349698(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0024359(US,A1)
【文献】特開2001-196622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
前記筐体を貫通する燃焼管と、
前記筐体の内部に設置された少なくとも一つの光電変換素子と、を備
え、
前記燃焼管は、前記燃焼管の内部に導入された燃料の燃焼熱で熱せられて熱輻射光を放射し、
前記光電変換素子は、前記開口部および前記燃焼管に受光面を向けて配置され、前記開口部からの太陽光と、前記燃焼管からの熱輻射光とを受光して発電する発電装置。
【請求項2】
前記燃焼管の外側表面を被覆する波長選択性熱放射体を有する請求項
1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記波長選択性熱放射体は、空孔を有するセラミックスである請求項
2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記セラミックスは、R
3Ga
5O
12(R:希土類元素)およびR
3Al
5O
12のいずれかの組成からなる請求項
3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記開口部を覆う蓋を備える請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記蓋は、前記燃焼管からの熱輻射光を反射する反射面を有する請求項
5に記載の発電装置。
【請求項7】
前記蓋は、ヒンジによって前記筐体に開閉可能に設置される請求項
5または6に記載の発電装置。
【請求項8】
前記蓋には、前記蓋が前記開口部を覆っている状態において、前記燃焼管に受光面が向くように配置された少なくとも一つの前記光電変換素子が設置される請求項
5乃至7のいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項9】
前記開口部の上方または前記筐体に接する箇所に、貯液槽が設置される請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子を用いた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱光起電力発電は、光電変換素子を用いて、熱源からの熱輻射光を電力に変換する技術である。熱光起電力発電によれば、熱放射スペクトルを制御することによって、高効率な発電を実現できる。熱光起電力発電は、種々の熱源を利用できるために応用範囲が広く、重量当たりのエネルギー密度が大きい発電技術として注目されている。熱光起電力発電では、太陽電池となり得る光電変換素子を用いて、エミッタからの熱輻射光を利用して発電する。そのため、熱光起電力発電に用いられる光電変換素子は、太陽光が照射されている環境下では、太陽光によって発電できる。
【0003】
特許文献1には、太陽光および燃焼熱の両方を利用可能な熱光起電力システムについて開示されている。特許文献1のシステムは、太陽光を集光してエミッタを加熱してその熱輻射光で発電する機構と、エミッタを燃焼熱で加熱してその熱輻射光で発電する機構とを兼ね備えた構造を有する。
【0004】
特許文献2には、夜間や曇天においても発電可能な全天候型受光発電装置について開示されている。特許文献2の装置は、ガス燃焼バーナーの火炎によって発光物質を加熱発光させ、円筒状物体の内面に沿って設けられた太陽電池パネルを用いて発電する。特許文献2の装置は、昼間陽光時には、円筒状物体を天開させて、太陽光パネルで太陽を受光して発電できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-512160号公報
【文献】特開平09-055529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシステムによれば、熱輻射光と太陽光を利用した2種類の熱光起電力発電が可能である。特許文献1のシステムは、太陽光をエミッタに集光する構造を有する。そのため、特許文献1のシステムには、発電に寄与できる光電変換素子の面積が小さく、発電可能な電力に限界があった。すなわち、特許文献1のシステムでは、熱輻射光と太陽光を効率的に併用した効率的な発電を実現できなかった。
【0007】
特許文献2の装置は、バーナーの先端から噴射された燃焼炎で発光用の媒体を発光させ、その発光で太陽電池パネルを発電させる。特許文献2の装置は、バーナーの先端の一点から噴射された燃焼炎で媒体を発光させるため、設置できる太陽電池パネルの数や面積に限りがあった。すなわち、特許文献2のシステムでは、熱輻射光と太陽光を効率的に併用した効率的な発電を実現できなかった。
【0008】
本発明の目的は、熱輻射光と太陽光を併用する効率的な熱光起電力発電を実現できる発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の発電装置は、開口部を有する筐体と、筐体を貫通する燃焼管と、筐体の内部に設置された少なくとも一つの光電変換素子と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱輻射光と太陽光を併用する効率的な熱光起電力発電を実現できる発電装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る発電装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る発電装置の一例を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る発電装置の別の一例を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る発電装置のさらに別の一例を示す断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る発電装置の発電方式の一例について説明するための概念図である。
【
図6】第1の実施形態に係る発電装置の燃焼管の周囲に波長選択性熱放射体を設置する一例を示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態に係る発電装置の燃焼管の周囲に波長選択性熱放射体の構造の一例を示す概念図である。
【
図8】第2の実施形態に係る発電装置の一例を示す断面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る発電装置の一例を示す断面図である。
【
図10】第3の実施形態に係る発電装置の一例の別の状態を示す断面図である。
【
図11】第4の実施形態に係る発電装置の一例を示す断面図である。
【
図12】第5の実施形態に係る発電装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る発電装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の発電装置は、光電変換素子を用いて、熱輻射光と太陽光を併用する熱光起電力発電を行う以下において、熱輻射光とは、温度に応じて物体から放射する光を意味する。また、太陽光とは、太陽から放射された光に限らず、外部からの光(外光とも呼ぶ)を意味する。
【0014】
図1は、本実施形態の発電装置10の構成の一例を示す斜視図である。発電装置10は、筐体11、燃焼管13、および光電変換素子15を備える。
図1は、本実施形態の発電装置10の一例であって、本実施形態の発電装置10の外観を限定するものではない。
【0015】
筐体11は、側面の一部(開口部とも呼ぶ)が開放された柱状体である。例えば、筐体11は、円柱や多角柱の側面の一部を開放させた形状を有する。筐体11の内部には、開口部から、太陽光が進入可能である。筐体11の形状については、筐体11の内部に外部から太陽光が進入しやすい形状であれば、特に限定を加えない。
【0016】
筐体11の材質には、特に限定を加えない。筐体11の材質は、燃焼管13の発熱に耐えうる耐熱性の材料で構成することが好ましい。また、燃焼管13の発熱による温度上昇を緩和するために、筐体11は、熱伝導率の高い材質で構成することが好ましい。例えば、筐体11は、金属やセラミックス等の耐熱性の優れた材料で構成される。例えば、筐体11は、ステンレスや、インコネル、ジルコニア等で形成される。例えば、筐体11は、金属にセラミックウールや耐熱レンガを組み合わせて構成されてもよい。
【0017】
燃焼管13は、筐体11を貫通する。燃焼管13は、内部が空洞の管状体である。燃焼管13の大きさには、特に限定を加えない。燃焼管13の大きさは、筐体11の内部に設置された光電変換素子15に太陽光が十分に照射されるように、光電変換素子15の一辺の長さよりも燃焼管13の直径が小さい方が好ましい。燃焼管13は、光電変換素子15に太陽光が届きやすいように、低体積な円筒状の外形を有する。なお、燃焼管13の断面形状は、円ではなく、楕円や多角形等であってもよい。
【0018】
燃焼管13の内部には、燃料が供給される。燃焼管13の内部に供給された燃料は、燃焼管13の内部で燃焼する。燃焼管13の内部で燃焼した成分は、燃焼管の外部に排気される。例えば、燃焼管13には、燃料を燃焼させるための着火部(図示しない)が構成される。着火部は、燃焼管13の内部に構成されてもよいし、燃焼管13の外部に設置されてもよい。また、着火部は、筐体11の内側に設置されてもよいし、筐体11の外側に設定されてもよい。
【0019】
燃焼管13の材質には、特に限定を加えない。燃焼管13は、燃焼管13の内部における燃料の燃焼熱に耐えうる耐熱性の材料で形成することが好ましい。例えば、燃焼管13は、インコネル等が好適である。
【0020】
燃焼管13の内部で燃料が燃焼すると、燃焼熱によって燃焼管13の温度が上昇する。燃焼管13は、温度に応じた熱輻射光を放射する。燃焼管13から放射された熱輻射光のうち少なくとも一部は、光電変換素子15向けて放射される。
【0021】
光電変換素子15は、光を電力に変換する素子である。光電変換素子15は、光を受光する受光面を有する。例えば、光電変換素子15には、シリコン半導体や化合物半導体等が用いられる。本実施形態においては、熱光起電力発電を行うので、光電変換素子15には、ガリウム-アンチモン(GaSb)系や、インジウム‐ガリウム‐ヒ素‐アンチモン(InGaAsSb)系の化合物半導体が好適である。光電変換素子15によって発電された電力は、図示しない配線を介して集電される。
【0022】
筐体11の内部には、電圧や電力量に応じた数の光電変換素子15が設置される。光電変換素子15は、開口部と燃焼管13に受光面が向くように配置される。例えば、設定された電圧値を得るために、複数の光電変換素子15は、設定された電圧値に合わせた段数で直列接続される。例えば、いずれかの光電変換素子15に不具合が生じても安定して発電できるように、直列に接続された複数の光電変換素子15からなるユニットが、いくつか並列で接続される。ただし、光電変換素子15の大きさや数には、特に限定を加えない。
【0023】
図2~
図4は、いくつかの断面形状の筐体11-1~3の断面図である。
図2~
図4は、燃焼管13の延伸方向に垂直な平面によって、光電変換素子15が配置された位置で筐体11-1~3を切断した際の断面図である。なお、
図2~
図4の断面形状は、一例であって、本実施形態の筐体11の断面形状を限定するものではない。
【0024】
図2は、断面形状が円弧状の筐体11-1を有する発電装置10-1である。
図2のように、筐体11-1の開口部から進入する太陽光は、複数の光電変換素子15の受光面で受光される。また、燃焼管13から放射される熱輻射光は、複数の光電変換素子15の受光面で受光される。複数の光電変換素子15の各々は、受光した光を電気に変換する。複数の光電変換素子15によって変換された電気は、複数の光電変換素子15の接続状態に応じた電圧/電力で出力される。
【0025】
図3は、断面形状が台形の筐体11-2を有する発電装置10-2である。筐体11-2は、三つの側面を有し、そのうち開口部に接する二つの側面に光電変換素子15が設置される。
図3のように、筐体11-2の開口部から進入する太陽光は、二つの側面に設置された複数の光電変換素子15の受光面で受光される。また、燃焼管13から放射される熱輻射光は、二つの側面に設置された複数の光電変換素子15の受光面で受光される。複数の光電変換素子15の各々は、受光した光を電気に変換する。複数の光電変換素子15によって変換された電気は、複数の光電変換素子15の接続状態に応じた電圧/電力で出力される。
【0026】
図4は、断面形状が台形の筐体11-3を有する発電装置10-3である。筐体11-3は、三つの側面を有し、全ての側面に光電変換素子15が設置される。
図4のように、筐体11-3の開口部から進入する太陽光は、全ての側面に設置された複数の光電変換素子15の受光面で受光される。また、燃焼管13から放射される熱輻射光は、全ての側面に設置された複数の光電変換素子15の受光面で受光される。複数の光電変換素子15の各々は、受光した光を電気に変換する。複数の光電変換素子15によって変換された電気は、複数の光電変換素子15の接続状態に応じた電圧/電力で出力される。
【0027】
図5は、熱輻射光を利用する熱光起電力発電において、熱が電力に変換されることについて説明するための概念図である。エミッタ140に供給された熱は、エミッタ140において熱輻射光(赤外線)に変換される。エミッタ140の表面からは、変換後の熱輻射光が放射される。エミッタ140から放射された熱輻射光は、光電変換素子150によって電気に変換される。光電変換素子150は、特定の波長帯の光に感度を有し、光電変換できる光の波長帯を有する。そのため、燃焼管13から放射される熱輻射光の波長帯は、光電変換素子150の感度が高い領域と一致することが好ましい。
【0028】
図6は、燃焼管13の表面を波長選択性熱放射体14で被覆させた構造の断面図である。波長選択性熱放射体14は、光電変換素子15の感度の高い特定の波長帯の光を選択的に放射する。波長選択性熱放射体14は、波長選択性エミッタとして機能する。
図6のように、光電変換素子15の感度の高い特定の波長帯の光を選択的に放射する材料で波長選択性熱放射体14を構成すれば、発電装置10の熱輻射光を利用した熱光起電力発電の発電効率を向上できる。
【0029】
波長選択性熱放射体14には、金属フォトニック結晶、金属あるいは窒化チタン(TiN)と誘電体から成るメタマテリアル、セラミックス等の材料が適している。特に、製造性や耐熱性、コストの観点から、波長選択性熱放射体14の材質にはセラミックスが適している。セラミックスの組成には、特に限定を加えない。セラミックスは、希土類元素(以下、Rと記載する)や、ニオブNb、タンタルTa、カルシウムCa、アルミニウムAl、ジルコニウムZr、ガリウムGa等を含む複合酸化物が好適である。例えば、波長選択性熱放射体14には、CaRAlO4、RTO4、R3TO7、R2Ti2O7、R4Zr3O12、R3Al5O12、R3Ga5O12等のセラミックスが好適である(Tは、NbまたはTi)。特に、波長選択性熱放射体14には、R3Al5O12またはR3Ga5O12等のセラミックスが好適である。
【0030】
また、波長選択性熱放射体14をセラミックスで構成する場合、空孔の分散された材料を用いることによって、波長選択性が向上する。
図7は、母材141に空孔143が分散された波長選択性熱放射体14-2の構造の一例を示す概念図である。波長選択性熱放射体14-2の空孔143のサイズについては、特に限定を加えない。空孔143のサイズは、0.1~10マイクロメートルの範囲内であることが望ましい。波長選択性熱放射体14-2の空孔率については、特に限定を加えない。波長選択性熱放射体14-2の空孔率は、20~40パーセントの範囲内であることが望ましい。波長選択性熱放射体14-2の厚みについては、特に限定を加えない。波長選択性熱放射体14-2の厚みは、20マイクロメートル以上あることが好ましく、100マイクロメートル以上あることがより好ましい。また、母材141に分散された空孔143は、互いに連結されてもよいが、厚み方向において貫通孔がないことが望ましい。
【0031】
以上のように、本実施形態の発電装置は、筐体、燃焼管、および少なくとも一つの光電変換素子を備える。筐体は、開口部を有する。燃焼管は、筐体を貫通する。燃焼管は、燃焼管の内部に導入された燃料の燃焼熱で熱せられて熱輻射光を放射する。光電変換素子は、筐体の内部に設置される。光電変換素子は、開口部および燃焼管に受光面を向けて配置される。光電変換素子は、開口部からの太陽光と、燃焼管からの熱輻射光とを受光して発電する。
【0032】
特許文献2(特開平09-055529号公報)には、燃焼管で燃料ガスを輸送し、その燃焼管の先端のバーナーで燃料ガスを燃焼させて媒体を発光させ、その発光を利用して太陽電池パネルを発電させる方法が開示されている。特許文献2の手法では、燃焼管の先端の一点における発光を利用して太陽電池パネルを発電させるため、設置できる太陽電池パネルの数に限りがあり、発電効率が小さい。
【0033】
それに対し、本実施形態の手法では、燃焼管の内部で燃焼した燃料の燃焼熱で熱せられた燃焼管の側面から放射される熱輻射光を利用して熱光起電力発電することができる。そのため、本実施形態によれば、設置できる光電変換素子の数を増やすことができるので、発電効率を向上できる。すなわち、本実施形態によれば、熱輻射光と太陽光を併用する効率的な熱光起電力発電を実現できる。
【0034】
本実施形態の一態様において、発電装置は、燃焼管の外側表面を被覆する波長選択性熱放射体を有する。例えば、波長選択性熱放射体は、空孔を有するセラミックスである。例えば、セラミックスは、R3Ga5O12(R:希土類元素)およびR3Al5O12のいずれかの組成からなる。本態様によれば、波長選択性熱放射体がエミッタ(発行体)として機能するため、熱輻射光を用いた熱光起電力発電をより効率的に実現できる。
【0035】
本実施形態の発電装置は、熱輻射光と太陽光を用いる熱光起電力発電を任意に切り替えることができる。そのため、本実施形態によれば、状況に応じて、熱輻射光と太陽光のうち最適な方式を選択できる。また、本実施形態の発電装置は、複数の光電変換素子を実装できるため、熱輻射光と太陽光のいずれの方式においても十分な発電量が得られる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る発電装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の発電装置の筐体や、燃焼管、光電変換素子の構造は、第1の実施形態の発電装置と同様である。本実施形態の発電装置は、開口部を覆う蓋を備える点において、第1の実施形態の発電装置とは異なる。
【0037】
図8は、本実施形態の発電装置20の構成の一例について説明するための概念図である。発電装置20は、筐体21、燃焼管23、光電変換素子25、および蓋27を備える。
図8は、断面形状が台形の筐体21を有する発電装置20の一例である。発電装置20は、複数の光電変換素子25を有する。複数の光電変換素子25は、互いに電気的に接続されてもよいし、電気的に接続されていなくてもよい。
【0038】
図8は、燃焼管23の延伸方向に垂直な平面によって、光電変換素子25が配置された位置で筐体21を切断した際の断面図である。なお、筐体21の形状は、一例であって、
図8の形状に限定されない。例えば、発電装置20の筐体21は、第1の実施形態の筐体11-1や筐体11-3の形状であってもよい。筐体21、燃焼管23、および光電変換素子25の各々は、第1の実施形態の発電装置10の筐体11、燃焼管13、および光電変換素子15の各々と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
筐体21の開口部には、蓋27が載置される。蓋27の一方の面は、反射面26を有する。蓋27は、燃焼管23に反射面26が向くように、筐体21に載置される。反射面26は、燃焼管23の発熱によって放射される赤外線を反射する材料で構成される。例えば、反射面26は、金Auや白金Pt、タンタルTa等の材質で構成される。本実施形態においては、蓋27が反射面26を有する例を挙げるが、蓋27に反射面26を設けなくてもよい。
【0040】
蓋27は、筐体21から取り外し可能である。蓋27を載置させた状態で燃焼管23の内部の燃料を燃焼させると、燃焼管23から反射面26側に放射された熱輻射光が反射面26で反射される。反射面26で反射された熱輻射光は、光電変換素子25の受光面に受光され、光電変換素子25によって電力に変換される。なお、太陽光を用いる熱光起電力発電を行わない場合は、蓋27と筐体21を接合させてもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態の発電装置は、筐体、燃焼管、光電変換素子、および蓋を備える。筐体は、開口部を有する。燃焼管は、筐体を貫通する。燃焼管は、燃焼管の内部に導入された燃料の燃焼熱で熱せられて熱輻射光を放射する。光電変換素子は、筐体の内部に設置される。光電変換素子は、開口部および燃焼管に受光面を向けて配置される。光電変換素子は、開口部からの太陽光と、燃焼管からの熱輻射光とを受光して発電する。蓋は、開口部を覆う。蓋は、燃焼管からの熱輻射光を反射する反射面を有する。
【0042】
本実施形態の発電装置においては、燃焼管から開口部に向けて放射された熱輻射光が、蓋に設けられた反射面で反射されて光電変換素子の受光面に照射される。光電変換素子の受光面に照射された光は、電力に変換される。本実施形態によれば、開口部から外部に向けて放出される熱輻射光が、蓋の反射面で反射されて光電変換素子の受光面に照射されるので、第1の実施形態と比べて、エネルギーの変換効率が向上する。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る発電装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の発電装置の筐体や、燃焼管、光電変換素子の構造は、第1の実施形態の発電装置と同様である。本実施形態の発電装置は、熱光発電素子が設置された開閉可能な蓋を備える点において、第1の実施形態の発電装置とは異なる。
【0044】
図9~
図10は、本実施形態の発電装置30の構成の一例について説明するための概念図である。発電装置30は、筐体31、燃焼管33、光電変換素子35、蓋37、およびヒンジ38を備える。発電装置30は、複数の光電変換素子35を有する。複数の光電変換素子35は、互いに電気的に接続されてもよいし、電気的に接続されていなくてもよい。
【0045】
筐体31の開口部には、蓋37が設置される。蓋37は、ヒンジ38によって筐体31に開閉可能に接続される。蓋37の一方の面には、光電変換素子35が設置される。蓋37は、蓋37が閉じた状態で燃焼管33の向きに光電変換素子35の受光面が向くように、筐体31に設置される。また、蓋37を開けると、蓋37に設置された光電変換素子35の受光面が外部に向けられる。例えば、蓋37を開けた際に、蓋37に設置された光電変換素子35の受光面が上方に向けた状態で静止するように、ヒンジ38の回転角度を設定してもよい。例えば、筐体31の内部や、蓋37の光電変換素子35が設置された面に、燃焼管から放射される熱輻射光を反射する反射面を設けてもよい。
【0046】
図9は、蓋37を開けた状態である。
図10は、蓋37を閉じた状態である。
図9~
図1
0は、断面形状が台形の筐体31を有する発電装置30の一例である。
図9~
図10は、燃焼管33の延伸方向に垂直な平面によって、光電変換素子35が配置された位置で筐体31を切断した際の断面図である。なお、筐体31の形状は、一例であって、
図9~
図10の形状に限定されない。例えば、発電装置30の筐体31は、第1の実施形態の筐体11-1や筐体11-2の形状であってもよい。筐体31、燃焼管33、および光電変換素子35の各々は、第1の実施形態の発電装置10の筐体11、燃焼管13、および光電変換素子15の各々と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0047】
図9のように、蓋37が開いた状態では、蓋37に設置された光電変換素子35の受光面が外部に向かう。蓋37が開いた状態では、蓋37に設置された光電変換素子35は太陽光によって発電でき、筐体31の内部に設置された光電変換素子35も太陽光によって発電できる。蓋37が開いた状態で燃焼管33の内部の燃料を燃焼させると、筐体31の内部に設置された光電変換素子35は、太陽光とともに、燃焼管33から放射される熱輻射光によって発電する。
【0048】
図10のように、蓋37を閉じた状態では、蓋37に設置された光電変換素子35の受光面が燃焼管33に向かう。蓋37を閉じた状態で燃焼管33の内部の燃料を燃焼させると、燃焼管33から放射される熱輻射光によって、蓋37に設置された光電変換素子35と、筐体31に設置された光電変換素子35との両方が発電する。
【0049】
以上のように、本実施形態の発電装置は、筐体、燃焼管、光電変換素子、蓋、およびヒンジを備える。筐体は、開口部を有する。燃焼管は、筐体を貫通する。燃焼管は、燃焼管の内部に導入された燃料の燃焼熱で熱せられて熱輻射光を放射する。光電変換素子は、筐体の内部に設置される。光電変換素子は、開口部および燃焼管に受光面を向けて配置され、開口部からの太陽光と、燃焼管からの熱輻射光とを受光して発電する。蓋は、ヒンジによって筐体に開閉可能に設置される。蓋には、蓋が開口部を覆っている状態において、燃焼管に受光面が向くように配置された少なくとも一つの光電変換素子が設置される。
【0050】
本実施形態の発電装置は、蓋が開けられた状態では、筐体および蓋に設置された光電変換素子の受光面が外部に向けられるため、太陽光等の太陽光によって効率的に発電できる。また、本実施形態の発電装置は、蓋が開けられた状態でも、筐体の内部に設置された光電変換素子の受光面が燃焼管に向けられるため、燃焼管からの熱輻射光によって効率的に発電できる。一方、本実施形態の発電装置は、蓋が閉じられた状態では、筐体および蓋に設置された光電変換素子の受光面が燃焼管に向けられるため、燃焼管からの熱輻射光によって効率的に発電できる。
【0051】
本実施形態の発電装置は、太陽光が十分に得られれば、蓋を開けて、太陽光を用いた熱光起電力発電をすることによって、燃焼管の内部で燃料を燃焼させなくても発電ができる。一方、本実施形態の発電装置は、太陽光が十分で得られない場合、蓋を閉じて、燃焼管の内部で燃料を燃焼させて、熱輻射光を利用した熱光起電力発電に切り替えられる。すなわち、本実施形態の発電装置によれば、熱輻射光と太陽光を併用する効率的な熱光起電力発電を実現できる。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る発電装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の発電装置の筐体や、燃焼管、光電変換素子の構造は、第1の実施形態の発電装置と同様である。本実施形態の発電装置は、筐体に接して設置された温水化装置(貯液槽とも呼ぶ)を備える点において、第1の実施形態の発電装置とは異なる。
【0053】
図11は、本実施形態の発電装置40の構成の一例について説明するための概念図である。発電装置40は、筐体41、燃焼管43、光電変換素子45、蓋47、および温水化装置49を備える。発電装置40は、複数の光電変換素子45を有する。複数の光電変換素子45は、互いに電気的に接続されてもよいし、電気的に接続されていなくてもよい。
【0054】
図11は、断面形状が台形の筐体41を有する発電装置40の一例である。
図11は、燃焼管43の延伸方向に垂直な平面によって、光電変換素子45が配置された位置で筐体41を切断した際の断面図である。なお、筐体41の形状は、一例であって、
図11の形状に限定されない。例えば、発電装置40の筐体41は、第1の実施形態の筐体11-1や筐体11-3の形状であってもよい。筐体41、燃焼管43、および光電変換素子45の各々は、第1の実施形態の発電装置10の筐体11、燃焼管13、および光電変換素子15の各々と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
筐体41の開口部には、蓋47が載置される。蓋47の一方の面には、反射面46が設けられる。蓋47は、燃焼管43に反射面46が向くように、筐体41に載置される。反射面46は、燃焼管23の発熱によって放射される赤外線を反射する材料で構成される。例えば、反射面46は、金Auや白金Pt、タンタルTa等の材質で構成される。
【0056】
蓋47は、取り外し可能であってもよいし、筐体41に接合されてもよい。燃焼管43の内部の燃料を燃焼させると、燃焼管43から反射面46側に放射された熱輻射光が、反射面46で反射される。反射面46で反射された熱輻射光は、光電変換素子45の受光面に受光され、光電変換素子45によって電力に変換される。
【0057】
蓋47の上面には、温水化装置49が載置される。
図11は、温水化装置49に水400が貯められた状態である。温水化装置49は、燃焼管43の燃焼に伴って発生する熱を受熱できれば、いずれの位置に配置されてもよい。例えば、温水化装置49は、筐体41の側面や底面に設置されてもよい。例えば、温水化装置49は、光電変換素子45が設置された面の反対面に設置されてもよい。
【0058】
燃焼管43の内部で燃料が燃焼されると、燃焼熱に起因する熱の一部が燃焼管43の外部に放出される。燃焼管43の外部に放出された熱は、筐体41を介して温水化装置49に伝わり、温水化装置49に貯められた水400が温められる。温水化装置49に貯められた水400は、温められることよって、種々の用途に用いられる。例えば、温水化装置49に貯められた水を温めることを効率的に温める場合、蓋47を省略してもよい。
【0059】
温水化装置49は、内部に液体を貯められればよい。例えば、温水化装置49は、水400ではない液体が貯められてもよい。すなわち、温水化装置49は、貯液槽であればよい。また、筐体41や蓋47に接する箇所に、温水化装置49の替わりに、気体や液体を流通させる配管を設置してもよい。例えば、配管の内部を流通する気体や液体は、筐体41や蓋47に接する箇所で温められ、発電装置の系外に放出される。例えば、配管の内部を流通する気体や液体は、発電装置40を冷却する冷媒であってもよい。
【0060】
以上のように、本実施形態の発電装置は、筐体、燃焼管、少なくとも一つの光電変換素子、および温水化装置(貯液槽とも呼ぶ)を備える。筐体は、開口部を有する。燃焼管は、筐体を貫通する。燃焼管は、燃焼管の内部に導入された燃料の燃焼熱で熱せられて熱輻射光を放射する。光電変換素子は、筐体の内部に設置される。光電変換素子は、開口部および燃焼管に受光面を向けて配置され、開口部からの太陽光と、燃焼管からの熱輻射光とを受光して発電する。貯液槽は、開口部の上方または筐体に接する箇所に設置される。
【0061】
本実施形態によれば、貯液槽を併設し、外部に放出される熱で貯液槽に貯められた液体を温めて利用することにより、より効率的にエネルギーを利用できる。
【0062】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る発電装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の発電装置は、第1~第4の実施形態の発電装置を簡略化した構成である。
【0063】
図12は、本実施形態の発電装置50の一例を示す概念図である。発電装置50は、筐体51、燃焼管53、および少なくとも一つの光電変換素子55を備える。筐体51は、開口部を有する。燃焼管53は、筐体51を貫通する。少なくとも一つの光電変換素子55は、筐体51の内部に設置される。少なくとも一つの光電変換素子55は、互いに電気的に接続されてもよいし、電気的に接続されていなくてもよい。
【0064】
図12は、断面形状が台形の筐体51を有する発電装置50の一例である。
図12は、燃焼管53の延伸方向に垂直な平面によって、光電変換素子55が配置された位置で筐体51を切断した際の断面図である。なお、筐体51の形状は、一例であって、
図12の形状に限定されない。例えば、発電装置50の筐体51は、第1の実施形態の筐体11-1や筐体11-3の形状であってもよい。
【0065】
本実施形態の発電装置によれば、熱輻射光と太陽光を併用する効率的な熱光起電力発電を実現できる。
【0066】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0067】
10、20、30、40、50 発電装置
11、21、31、41、51 筐体
13、23、33、43、53 燃焼管
15、25、35、45、55 光電変換素子
46、46 反射面
27、37、47 蓋
38 ヒンジ
49 温水化装置