(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】校正回路、リモートユニット装置、無線基地局システムおよび校正方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20241008BHJP
H04B 17/12 20150101ALI20241008BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20241008BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20241008BHJP
H01Q 3/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H04B7/06 982
H04B17/12
H04B7/08 982
H01Q21/06
H01Q3/30
(21)【出願番号】P 2020122667
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田和 憲明
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198192(WO,A1)
【文献】特開2013-201556(JP,A)
【文献】特開2002-353724(JP,A)
【文献】特開2002-111558(JP,A)
【文献】特表2007-536808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04L 1/02-1/06
H04B 17/12
H01Q 21/06
H01Q 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムにおける校正回路であって、
前記リモートユニット部の局部発振器から出力され、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、
前記検波された結果に基づいて、前記リモートユニット部からそれぞれ前記複数のケーブルを介して出力する複数の局部発振信号の位相を調整する位相調整部と、
を備え
、
前記局部発振信号は、パルス信号またはステップ信号であり、
前記検波部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号を検波するとともに、前記反射された局部発振信号を検波し、
前記位相調整部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号の検波結果と前記反射された局部発振信号の検波結果との時間差に基づいて、前記位相を調整する校正回路。
【請求項2】
前記反射された複数の局部発振信号の中から、前記
検波部に入力する
1つの局部発振信号を選択する選択部をさらに備える、
請求項
1に記載の校正回路。
【請求項3】
無線基地局システムにおいて、それぞれ複数のケーブルを介して複数の分散アンテナ装置と接続されたリモートユニット装置であって、
局部発振信号を生成する局部発振器と、
前記局部発振信号を前記複数のケーブルのそれぞれに出力する複数の可変位相器と、
前記複数の可変位相器を制御する校正回路とを備え、
前記校正回路は、
前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ
装置からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、
前記検波された結果に基づいて、前記複数の可変位相器の位相変化量を調整する位相調整部と、
を備え、
前記局部発振信号は、パルス信号またはステップ信号であり、
前記検波部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号を検波するとともに、前記反射された局部発振信号を検波し、
前記位相調整部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号の検波結果と前記反射された局部発振信号の検波結果との時間差に基づいて、前記位相を調整する、
リモートユニット装置。
【請求項4】
無線基地局システムにおいて、それぞれ複数のケーブルを介して複数の分散アンテナ装置と接続されたリモートユニット装置であって、
局部発振信号を生成する局部発振器と、
前記局部発振信号を前記複数のケーブルのそれぞれに出力する複数の可変位相器と、
前記複数の可変位相器を制御する校正回路と、
前記局部発振器から出力された局部発振信号を前記複数のケーブルに分配する分配器と、
前記分配器と前記複数の可変位相器との間で、
前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ装置からそれぞれ反射された複数の局部発振信号をそれぞれ前記校正回路へ分配する複数のカプラと、
を備え、
前記校正回路は、
前記反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、
前記検波された結果に基づいて、前記複数の可変位相器の位相変化量を調整する位相調整部と、
を備えるリモートユニット装置。
【請求項5】
リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムであって、
前記リモートユニット部は、
局部発振信号を生成する局部発振器と、
前記局部発振信号を前記複数のケーブルのそれぞれに出力する複数の可変位相器と、
前記複数の可変位相器を制御する校正回路とを備え、
前記校正回路は、
前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、
前記検波された結果に基づいて、前記複数の可変位相器の位相変化量を調整する位相調整部と、
を備え、
前記局部発振信号は、パルス信号又はステップ信号であり、
前記検波部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号を検波するとともに、前記反射された局部発振信号を検波し、
前記位相調整部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号の検波結果と前記反射された局部発振信号の検波結果との時間差に基づいて、前記位相を調整する、
無線基地局システム。
【請求項6】
リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムにおける校正方法であって、
前記リモートユニット部の局部発振器から出力され、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波し、
前記検波された結果に基づいて、前記リモートユニット部からそれぞれ前記複数のケーブルを介して出力する複数の局部発振信号の位相を調整する
校正方法であって、
前記局部発振信号は、パルス信号またはステップ信号であり、
前記局部発振器から出力された局部発振信号を検波するとともに、前記反射された局部発振信号を検波し、
前記局部発振器から出力された局部発振信号の検波結果と前記反射された局部発振信号の検波結果との時間差に基づいて、前記位相を調整する、
校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は校正回路、リモートユニット装置、無線基地局システムおよび校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信や無線LANサービスで実用化されているMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術に関して、さらなる通信容量の増大及び通信の安定を図ることを目的として、複数の分散した基地局アンテナ部により構成されるシステムを運用する分散MIMO(D-MIMO:Distributed MINO)技術を適用する取組が行われている。
【0003】
一般的なMIMO(C-MIMO:Co-lоcated-MIMO)技術では、デジタル信号をアナログ信号に変換するRU(Remote Unit)部と、DL(Down Link)/UL(Up Link)信号を送受信するアンテナ部との距離は近く、一つの筐体に格納される。これに対してD-MIMOは複数のアンテナ部を分散して設置するシステムであるため、RU部とDA(Distributed Antenna)部を繋ぐ同軸ケーブル長の違いによって、各DA部の送受信信号に遅延や位相差が生じる。そのため、各DA部は外部測定器を用いて個別に送受信特性の校正がなされる。特許文献1には、通信装置の校正回路に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、D-MIMOにおいてはDA部の設置位置が分散しており、装置設置後に外部測定器を用いて校正を行う必要がある。そのため、各DA部は外部測定器を用いて個別に送受信特性の校正がなされる。特許文献1には遅延や位相を補正する校正回路に関する技術が開示されている。しかし、特許文献1に開示された技術では、DA部を設置した後に装置ごとに外部測定器を用いて校正しなければならないという問題がある。
【0006】
本開示はこのような問題点を解決するためになされたものであり、無線通信システムで複数のアンテナ部を分散して配置できる装置において、複数アンテナ部の位相校正を、外部測定器を用いずに校正を実施できる校正回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる校正回路は、リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムにおける校正回路であって、前記リモートユニット部の局部発振器から出力され、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、前記検波された結果に基づいて、前記リモートユニット部からそれぞれ前記複数のケーブルを介して出力する複数の局部発振信号の位相を調整する位相調整部とを備えるものである。
【0008】
本開示にかかるリモートユニット装置は、無線基地局システムにおいて、それぞれ複数のケーブルを介して複数の分散アンテナ装置と接続されたリモートユニット装置であって、局部発振信号を生成する局部発振器と、前記局部発振信号を前記複数のケーブルのそれぞれに出力する複数の可変位相器と、前記複数の可変位相器を制御する校正回路とを備え、前記校正回路は、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、前記検波された結果に基づいて、前記複数の可変位相器の位相変化量を調整する位相調整部と、備えるものである。
【0009】
本開示にかかる無線基地局システムは、リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムであって、前記リモートユニット部は、局部発振信号を生成する局部発振器と、前記局部発振信号を前記複数のケーブルのそれぞれに出力する複数の可変位相器と、前記複数の可変位相器を制御する校正回路とを備え、前記校正回路は、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、前記検波された結果に基づいて、前記複数の可変位相器の位相変化量を調整する位相調整部とを備えるものである。
【0010】
本開示にかかる校正方法は、リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムにおける校正方法であって、前記リモートユニット部の局部発振器から出力され、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波し、前記検波された結果に基づいて、前記リモートユニット部からそれぞれ前記複数のケーブルを介して出力する複数の局部発振信号の位相を調整するとを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
無線通信システムで複数のアンテナ部を分散して配置できる装置において、複数アンテナ部の位相校正を、外部測定器を用いずに校正を実施できる校正回路を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示における実施形態1にかかる無線基地局システムの構成図である。
【
図2】本開示における実施形態2にかかる無線基地局システムの構成図である。
【
図3】本開示における実施形態2にかかる校正回路周辺の構成の図である。
【
図4】本開示における実施形態2にかかるDL信号のフロー図である。
【
図5】本開示における実施形態2にかかるUL信号のフロー図である。
【
図6】本開示における実施形態2にかかるLO信号の校正フロー図である。
【
図7】本開示における実施形態3にかかる校正回路周辺の構成の図である。
【
図8】本開示における実施形態3にかかるLO信号の校正フロー図である。
【
図9】本開示における実施形態3にかかるLO IF信号の測定結果を示す図である。
【
図10】本開示における実施形態4にかかる無線基地局システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む。)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む。)についても同様である。
【0016】
<実施形態1>
本実施形態における無線基地局システム1の構成を、
図1に示す。本実施形態における無線基地局システム1は、リモートユニット部(以下、「RU部」と呼ぶ。)と、RU部10と複数のケーブル19を介して接続された複数の分散アンテナ部(以下、「DA部」と呼ぶ。)で構成される。
【0017】
RU部10は、校正回路2を備える。また、RU部はダウンリンク(以下、「DL」と呼ぶ。)信号及びアップリンク(以下、「UL」と呼ぶ。)信号を送受信する。
【0018】
校正回路2は、検波部2aと、位相調整部2bを備える。検波部2aは、前記リモートユニット部の局部発振器から出力され、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する。位相調整部2bは、検波部2aが検波した結果に基づいて、RU部10からそれぞれ複数のケーブル19を介して出力する複数の局部発振信号の位相を調整する。
【0019】
<実施形態2>
実施形態2における無線基地局システムの構成例を
図2に示す。本実施形態における無線基地局システムは、D-MIMO装置のRU部10と複数のDA部20-1~20-Nを備える。本実施形態において、無線基地局システム1はDA部20をN箇所備えるものとする(n:2以上の整数)。本実施形態における無線基地局システム1は、例えばTDD(Time Division Duplex)方式やTDMA(Time Division Multiple Access)方式を使用するが、これに限らず様々な多重アクセス方式を使用できる。以下、本実施形態において説明する無線基地局システム1は、TDD方式を使用する。
【0020】
RU部10は、送受信する情報をアナログデジタル変換した上で送受信し、各DA部20-1~20-Nが受信したUL信号間の位相や遅延の調整を行う。また、DA部20は分散して設置され、DL信号のアップコンバートと、UL信号のダウンコンバートが行われる。
【0021】
RU部10は、DL/UL信号送受信回路11と、第一のバンドパスフィルタ12-1~12-Nと、局部発振器13と、分配器14と、カプラ15-1~15-Nと、可変位相器16-1~16-Nと、第二のバンドパスフィルタ17-1~17-N及び校正回路とを備える。本実施形態及び実施形態3及び実施形態4において、以下、校正回路は遅延・位相調整回路18として説明する。また、RU部10は各DA部20とそれぞれケーブル19-1~19-Nで接続される。ケーブル19は、中間周波数帯域のDL信号と、UL信号と、LO信号とを伝送する。ケーブル19は、例えば同軸ケーブルなど、様々な通信ケーブルが使用される。ケーブル19は、それぞれの長さが異なってもよい。
なお、以下DA部20-1~20-N、第一のバンドパスフィルタ12-1~12-N、カプラ15-1~15-N、可変位相器16-1~16-N、第二のバンドパスフィルタ17-1~17-N及びケーブル19-1~19-Nは、特に区別する必要がなければ単に、DA部20、第一のバンドパスフィルタ12、カプラ15、可変位相器16、第二のバンドパスフィルタ17及びケーブル19と表記する。
【0022】
DL/UL信号送受信回路11は、アナログデジタル変換機能を備える。また、DL/UL信号送受信回路11は、中間周波数帯域のDL信号(以下、「DL IF信号」と呼ぶ。)を生成し、中間周波数帯域UL信号(以下、「UL IF信号」と呼ぶ。)を受信する。
【0023】
第一のバンドパスフィルタ12は、DL/UL信号送受信回路11において生成されたDL IF信号の中間周波数信号帯域の信号のみを透過させる。また、第一のバンドパスフィルタ12は、局部発振器13で発振された中間周波数帯域の局部発振信号(以下、「LO IF信号」と呼ぶ。)が、DL/UL信号送受信回路11に入ることを防ぐことが好ましい。
【0024】
局部発振器13は、LO IF信号を生成する。生成されたLO IF信号は、各DA部20においてDL IF信号を搬送波周波数帯域にアップコンバートするために使用される。また、LO IF信号は、受信したUL信号を中間周波数帯域にダウンコンバートするために使用される。さらに、LO IF信号は、各DA部20で逓倍し、周波数を上げて使用される。
【0025】
分配器14は、局部発振器13で生成されたLO IF信号を分配する。分配されたLO IF信号は、カプラ(方向性結合器)15を通過する。LO IF信号は、局部発振器13から各DA部20に送信されるため、遅延・位相調整回路18には伝達されないことが好ましい。カプラ15はカプラの代わりにサーキュレータを用いてもよい。
【0026】
可変位相器16は、LO IF信号の位相を変化させる。本実施形態においては、可変位相器16が変化させる位相量の範囲は0~2πとする。可変位相器16によってRU部10と各DA部20とを接続するケーブル19の長さの違いを補正し、LO IF信号の位相が各DA部20で一致するように変化させる位相量を調整する。
【0027】
第二のバンドパスフィルタ17は、可変位相器16によって位相が調整されたLO IF信号の帯域外の信号を除去する。第二のバンドパスフィルタ17は、DL IF信号及びDA部20からのUL IF信号が局部発振器13に入ることを防ぐことが好ましい。
【0028】
遅延・位相調整回路18は、LO IF信号の反射波を解析して、LO IF信号の遅延量または位相量を調整する。後に遅延・位相調整回路18の詳細を説明する。
【0029】
各DA部20はそれぞれ、第一のスイッチ21-1~21-Nと、第三のバンドパスフィルタ22-1~22-nと、逓倍器23-1~23-Nと、第一のミキサ24-1~24-Nと、第二のミキサ25-1~25-Nと、第四のバンドパスフィルタ26-1~26-Nと、第二のスイッチ27-1~27-Nと、第三のスイッチ28-1~28-Nと、第五のバンドパスフィルタ29-1~29-Nと及びアンテナ30-1~30-Nを備える。各DA部20の構成は同じである。なお、以下特に区別する必要がなければ、単に第一のスイッチ21、第三のバンドパスフィルタ22、逓倍器23、第一のミキサ24、第二のミキサ25、第四のバンドパスフィルタ26、第二のスイッチ27、第三のスイッチ28、第五のバンドパスフィルタ29及びアンテナ30と表記する。
【0030】
各DA部20では、ケーブル19で伝送したLO信号を用いて、DL/UL信号の周波数変換(アップコンバート及びダウンコンバート)が行われる。本実施形態において各DA部20は、任意の場所に分散して設置される。そのため、各DA部20とRU部10とを接続するケーブル19の長さはそれぞれ異なる。各DA部20はRU部10からのDL信号をUE(User Equipment)に送信し、UEからの信号を受信しRU部10に伝送する。
【0031】
第一のスイッチ21は、通常運用時は第三のバンドパスフィルタ22側の経路の信号が伝送されるように設定される。通常運用時とは、RU部10及び各DA部20が、UEと通信が可能である状態をいう。
【0032】
第三のバンドパスフィルタ22は、LO IF信号の帯域外の信号を除去する。第三のバンドパスフィルタ22を通過したLO IF信号は、逓倍器23で逓倍され、第一のミキサ24又は第二のミキサ25に伝送される。以下、逓倍されたLO IF信号をLO信号と呼ぶ。
【0033】
第四のバンドパスフィルタ26は、DL IF信号及びUL IF信号の帯域の信号を通過させる。DA部20に伝送されたDL IF信号は、第三のバンドパスフィルタ22を通過できないため、逓倍器23を通過できない。そのため、DL IF信号は第四のバンドパスフィルタ26を通過し、第二のスイッチ27に伝送される。
【0034】
他方、LO IF信号は第四のバンドパスフィルタ26を通過できない。そのため、第三のバンドパスフィルタ22を通過し、逓倍器23に伝送される。
【0035】
第二のスイッチ27及び第三のスイッチ28は、DL期間中、DL IF信号を第一のミキサ24側の経路を通過させ、UL期間中、UL IF信号を第二のミキサ25側の経路を通過させるよう設定される。第一のミキサ24に入力されたDL IF信号は、同じく第一のミキサ24に入力されたLO信号と乗算され、DL IF信号を搬送波周波数帯域にアップコンバートされる。搬送波周波数帯域にアップコンバートされたDL IF信号を、DL信号と呼ぶ。また、DA部20が受信したUL IF信号の搬送波周波数帯域であるUL信号は、第二のミキサ25に入力されたLO信号と乗算され、中間周波数帯域にダウンコンバートされる。
【0036】
第五のバンドパスフィルタ29は、DL信号の帯域外の信号を除去する。帯域外の信号を除去されたDL信号はアンテナ30を介して無線端末に送信される。また、アンテナ30で受信されたUL信号は、第五のバンドパスフィルタ29で、UL信号の帯域外の信号を除去される。
【0037】
受信され、ダウンコンバートされたUL IF信号は、DL IF信号と逆向きに伝送され、RU部10のDL/UL信号送受信回路11に入力される。DL/UL信号送受信回路11に入力されたUL IF信号はベースバンド帯域にダウンコンバートされ、復調される。
【0038】
ここで、RU部10の遅延・位相調整回路18について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態における遅延・位相調整回路18の構成図である。遅延・位相調整回路18は、LO IF信号の反射波を解析して、LO IF信号の遅延量または位相量を調整する。遅延・位相調整回路18は、可変アッテネータ41-1~41-Nと、第四のスイッチ42-1~42-Nと、加算器43と、検波器44及び位相調整部45を備える。なお、以下特に区別する必要がなければ単に可変アッテネータ41、第四のスイッチ42と表記する。
【0039】
可変利得増幅器41は、戻入されたLO IF信号の電力を調整する。第四のスイッチ42によって選択されたLO IF信号が加算器43に入力される。入力されたLO IF信号は、検波器44で電力が測定される。可変利得増幅器41の減衰量は、加算器43に入力されるLO IF信号の電力が各系で等しくなるように調整される。
【0040】
可変位相器16の設定は、いずれかの系を基準とする。例えば以下、可変位相器16の設定を1系を基準にするものとして説明する。まず、第四のスイッチ42-1をONにし、他の第四のスイッチ42-2~42-Nのいずれか一つのスイッチをONにする。このとき、加算器43には二つのLO IF信号が入力され、加算される。検波器44は、加算されたLO IF信号の信号レベルを測定し、信号レベルが最小になるように可変位相器16が変化させる信号の位相量を調整する。信号間の位相差が少なければ加算された信号レベルが最小になるからである。
【0041】
<実施形態2における計算式を用いた信号の流れの説明>
まず、DL信号の送信について、
図4を用いて説明する。
図4はDL信号の流れを示すフロー図である。DL/UL信号送受信回路11で生成された、n系のDA部20-nに送るDL IF信号D
IFn(t)は式(1)のように表される。なお、D
BBn(t)はn系のDL信号のベースバンド信号であり、ω
IFはDL IF信号の角周波数である。jは虚数、tは時間を表す。
【数1】
【0042】
中間周波数のLO信号(LO IF)は局部発振器13で生成される(ステップ100)。LO IF信号は、各DA部20においてDL IF信号を搬送波周波数帯域にアップコンバートするためと、受信したUL信号を中間周波数帯域にダウンコンバートするために使用する。LO IF信号は、各DA部20で逓倍し、周波数を上げて使用する。この逓倍数をkとし、実施形態2ではkは偶数とする。
【0043】
局部発振器13で生成されたLO IF信号は、分配器14でN個に分配される(ステップ101)。分配されたn系のLO IF信号L
IFn(t)は以下のように表される。
【数2】
【0044】
LO IF信号の減衰は簡単のため本説明では省略し、振幅は常に1とする。ω
LOはLO IF信号をk逓倍後の角周波数である。ω
LOは以下の関係を満たす。なお、ω
RFは搬送波周波数の角周波数である。
【数3】
【0045】
可変位相器16はLO IF信号の位相を変化させる(ステップ102)。可変位相器16で調整できる位相量φnの範囲は0~2πとする。可変位相器16によって、RU部10と各DA部20を接続するケーブル19の長さの違いを補正し、LO IF信号の位相が各DA部20で一致するように調整する。位相量φnは後述する方法で決定する。
【0046】
RU部10から出力されたn系のLO IF信号L
IFn(t)は、ケーブル19-nを通じてDA部20-nに伝送される(ステップ103)。DA部20-nでのLO IF信号L‘
IFn(t)は以下のように表せる。なお、θ
nはケーブル19-nの伝送による遅延位相量である。
【数4】
【0047】
第三のバンドパスフィルタ22-nを通過したLO IF信号は、逓倍器23-nでk倍に逓倍される(ステップ104)。逓倍されたLO IF信号をLO信号と呼ぶこととする。n系のLO信号L
RFn(t)は以下のように表せる。
【数5】
【0048】
DL信号送信時、第一のミキサ24-nに入力されたDL IF信号は、同じく第一のミキサ24-nに入力されたLO信号と乗算され、DL IF信号を搬送波周波数帯域にアップコンバートする(ステップ105)。搬送波周波数帯域にアップコンバートされたDL IF信号をDL信号と呼ぶ。n系のDL信号D
RFn(t)はLO信号とDL IF信号の乗算によって求められるから、式(1)及び式(5)により式(6)のとおりである。式(6)では、DL IF信号のケーブル19-nによる位相変化は簡単のため無視する。
【数6】
【0049】
次に、UL信号の受信について、
図5を用いて説明する。
図5はUL信号の流れを示すフロー図である。アンテナ30で受信されたUL信号は(ステップ200)、第五のバンドパスフィルタ29によって帯域外成分を除去される。
【0050】
UL信号が通信されているとき、第二のスイッチ27と第三のスイッチ28は、第二のミキサ25の経路が選択になるように切り替えられている。UL信号は第二のミキサ25で、LO信号と乗算され、中間周波数帯域にダウンコンバートされる(ステップ201)。n系のUL IF信号U
IFn(t)は以下のように表せる。
【数7】
【0051】
URFn(t)はアンテナ30-nで受信されたUL信号、UBBn(t)はUL信号のベースバンド成分を表す。式(7)より、可変位相器16-nによる位相φnと、ケーブル19-nによる伝送によって生じた位相θnの寄与が、式(6)の場合と正負が逆になることが示される。
【0052】
UL IF信号はDL IF信号と同じ経路を、逆向きに伝達される。UL IF信号は、DA部20からRU部10に送信される(ステップ202)。DL/UL信号送受信回路11に入力される(ステップ203)。DL/UL信号送受信回路11に入力されたUL IF信号は、同様にベースバンド帯域にダウンコンバートされ、復調される。
【0053】
MIMO伝送技術によるDL信号の空間多重は、受信したUL信号から伝搬チャネルを推測し、DL信号にプリコーディングをかけることで適用する。本件のようなD-MIMO装置では、伝搬チャネル推定において、伝搬チャネルとケーブルによるLO IF信号の遅延の影響は分離できず、ケーブル19による遅延も含んだ補正値がプリコーディングされる。しかし、式(6)と式(7)のように、ケーブル19によるLO IF信号の遅延の影響はULとDLで正負が逆のため、プリコーディングで補正されず、DL信号の空間多重が実現されない問題がある。一方、DL/UL信号のケーブルによる影響は、UEとD-MIMO装置間の電波伝搬の一部とみなせ、プリコーディングにより補正される。よって、ケーブル19によるLO IF信号の遅延を補正し、各DA部でのLO信号の位相を一致させればよい。このとき、LO信号の位相は可変位相器16で調整される。
【0054】
以下、LO信号の位相を一致させるための校正方法について、
図6を用いて説明する。
図6はLO信号の校正の流れを示すフロー図である。校正時、DA部20の第一のスイッチ21は接地側に接続するように切り替えられる(ステップ300)。これにより、ケーブル19を伝送してきたLO IF信号は接地側に接続される部分で反射し、RU部に戻入される(ステップ301)。本実施例では、校正時に設置に接続するようにしたが、各DA部20のケーブル19接続箇所や第一のスイッチ21付近で信号線を開放してLO IF信号を反射させてもよい。
【0055】
本実施形態では、ケーブル19に重畳する信号は、UL IF信号とDL IF信号とLO IF信号としたが、これらに加えて電源やTDDなどの制御信号を重畳する場合がある。この場合は、例えば、各DA部20のケーブル19接続箇所と第一のスイッチ21それぞれの間にコンデンサ(不図示)などを追加する。上記コンデンサの静電容量は、LO IF信号やDL IF信号、UL IF信号は通過させるが、電源や制御信号は通過させないように設定することが好ましい。電源や制御信号は、各DA部20のケーブル19接続箇所とコンデンサの経路間で抽出する。これにより、第一のスイッチ21が接地側に接続された場合でも、電源や制御信号は変わらず利用できる。
【0056】
また本実施形態では、第一のスイッチ21は各DA部20のケーブル19接続箇所に設置したが、例えば、第三のバンドパスフィルタ22と逓倍器23それぞれの間に設置しても良い。
【0057】
反射されたLO IF信号は第二のバンドパスフィルタ17と可変位相器16をそれぞれ通過し、カプラ15により、遅延・位相調整回路18に入力される(ステップ302)。
【0058】
ここで、RU部10の遅延・位相調整回路18において入出力される信号について説明する。遅延・位相調整回路18の詳細は、
図3に示すとおりである。遅延・位相調整回路18に入力された戻入LO IF信号は、可変利得増幅器41によって電力を調整される(ステップ303)。そして、第四のスイッチ42によって選択された戻入LO IF信号が加算器43に入力される(ステップ304)。
【0059】
遅延・位相調整回路18の加算器43に入力されたm(m:2~Nの整数)系のLO IF信号L“
IFm(t)は以下のように表される。ここで、戻入LO IF信号はDA部20で反射する。そのため、LO IF信号は可変位相器16とケーブル19を2度通過する。よって、位相変化量は、DAに伝達されたLO IF信号(式(4))の2倍になる。ここで、φ
mは、m系の可変位相器16-mで調整する位相量である。また、θ
mはm系におけるケーブル19の伝送による遅延位相量である。
【数8】
「2φ
m+2θ
m」の部分は、位相変化量を示す。
【0060】
検波器44では、加算器43により加算されたLO IF信号の信号レベルを測定し(ステップ305)、信号レベルが最小になるように可変位相器16-mの位相を調整する(ステップ306)。このとき1系と、m系の位相は次の式(9)の条件を満たす。なお、Mod(A、B)はA/Bの剰余を示す。剰余を用いたのは、使用したケーブル19がLO IF信号の波長に比べて十分に長く、位相が複数回回転していると考えられるためである。右辺の-πは、信号を打ち消すように位相φ
mを設定したため、1系に対して位相が反転したことを示す。
【数9】
【0061】
校正時、基準とした1系の可変位相器16-1の位相φ
1をπ/2に設定したとすると、m系の可変位相器16-mの位相量φ
mは以下となる。なお、floorは小数点以下の切り捨てを表す。
【数10】
【0062】
式(10)のように可変位相器16-mの位相φ
mを設定した場合、各DA部20のケーブル19接続箇所でのm系のLO IF信号は、式(4)より以下に示す式(11)となる。
【数11】
【0063】
運用時、基準とした1系の位相φ
1は0に設定する。1系においては式(10)よりa
1=0となる。その場合、各DA部20のケーブル19接続箇所での1系のLO IF信号は、式(11)より以下に示す式(12)となる。
【数12】
【0064】
式(11)と式(12)より、amは整数のため、m系のLO IF信号の位相は1系のLO IF信号の位相に対して、πの倍数だけ異なる。よって、m系のLO IF信号と1系のLO IF信号は位相が合致しているか、反転しているかのいずれかである。
【0065】
位相を調整したLO IF信号を式(5)と同様に逓倍器23で逓倍した場合、LO信号は式(11)より以下の式(13)となる。なお、本実施例では逓倍数kは偶数すなわち2の倍数であるため、ka
mπは2πの整数倍となり、無視できる。
【数13】
【0066】
同様に校正において基準とした1系のLO IF信号を逓倍したLO信号を表す式を求める。上述のとおりa
1=0である。したがって、式(13)より、LO信号は以下の式(14)のとおりであり、m系のLO信号と位相が一致する。
【数14】
【0067】
上記の校正はまず、装置を運用場所に設置した後、運用開始までに行うことが好ましい。校正の後、前回校正からの経過時間や温度変動などを契機に再度校正を行うこともできる。また、DL信号の通信品質はUL信号の受信信号レベルに相関することが一般的であるため、UL信号の受信信号レベルに対するDL信号の通信品質について閾値を設け、これを超えた場合に再度校正を実施する方法を採用することも可能である。
【0068】
本実施形態において説明した無線基地局システム1のように、TDD方式の場合、DLとULの周波数が等しいため、例えば受信したUL信号から通信路の状態を示す伝搬チャネルを推測することができる。この伝搬チャネルを利用し、最大比合成や空間多重技術を用いることで、通信品質や通信容量を向上させることができる。
【0069】
本実施形態により、D-MIMO装置を運用場所に設置後、外部測定器を用いずに装置の校正を行うことができる。これにより、各DA部20でのLO信号の位相を一致させることができる。
【0070】
<実施形態3>
実施形態2において説明した無線基地局システム1は、LO信号の逓倍器の逓倍数が偶数の場合についてのみ利用できる。これに対して本実施形態では、逓倍数が奇数・偶数どちらの場合でも利用できる。本実施形態における遅延・位相調整回路18の周辺の構成を
図7に示す。無線基地局システム1のうち、
図7に示した箇所以外の構成は、実施形態2と同様の構成である。
【0071】
本実施形態では、実施形態2と異なり、遅延・位相調整回路18内のLO IF信号の経路上、それぞれ2つのスイッチである、第五のスイッチ47及び第六のスイッチ48を備える。また、第五のスイッチ47及び第六のスイッチ48に、それぞれ第一のカプラ15-1_1~15-1_N及び第二のカプラ15-2_1~15-2_Nを接続する。なお、特に区別する必要がなければ、以下単に第一のカプラ15-1及び第二のカプラ15-2と表記する。可変位相器16の位置は、分配器14と第二のカプラ15-2の間でも、2つのカプラ15-1、15-2の間でもよい。さらに本実施形態の遅延・位相調整回路18では、スイッチ47,48と可変位相器16の間に遅延測定部46が追加されている。遅延測定部46は2個の検波器46-2、46-3を備える。
【0072】
運用時は、実施形態2と同様に、可変位相器16に、各DA部20でのLO信号の位相が揃うように位相量を設定する。以下では、その位相量の決定方法について
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態におけるLO信号の校正の流れを示すフロー図である。
【0073】
局部発振器13は、実施形態2と同様にLO IF信号を生成する。校正時、第七のスイッチ50はONとOFFを繰り返すことで、LO IF信号のパルス信号を生成する(ステップ400)。本実施形態においてパルス信号を用いることとして説明するが、ステップ信号を用いてもよい。LO IF信号のパルス信号は、分配器14で分配される(ステップ401)。また、第二のカプラ15-2により分配されたLO IF信号の一部が第五のスイッチ47に入力され、遅延・位相調整回路18に受信される(ステップ402)。
【0074】
校正時、DA部20の第一のスイッチ21は、実施形態2と同様に接地側に接続され、第一のスイッチ21に伝送されたLO IF信号は反射される。反射されたLO IF信号はRU部10に戻り(ステップ403)、第一のカプラ15-1により、戻入したLO IF信号の一部が第五のスイッチ47に入力され、遅延・位相調整回路18に受信される(ステップ404)。
【0075】
n系の信号を校正する場合、スイッチ47,48はn系からの信号を通すように設定される。τ
nは、n系のケーブル19-nを信号が伝達するのに要する遅延時間とする。このとき、τ
nはθ
n=(ω
LO/k)τ
nを満たす。n系の可変位相器16-nによる位相φ
nは校正時、ゼロにする。そのため、遅延・位相調整回路18に戻入したLO IF信号は以下の式(15)ように表せる。
【数15】
【0076】
スイッチ47、48を通過したパルス状のLO IF信号を、それぞれ検波器46-2,46-3で測定し、LO IF信号が検波器46-2,46-3に到達する時間差を測定する(ステップ405)。このとき、検波器46-2、46-3におけるLO IF信号の波形は、
図9に示すような測定結果として得られる。検波器46-2、46-3で得られたLO IF信号の到達時間の差は式(15)の遅延時間2τ
nである。
【0077】
各DA部20でのLO信号の位相を一致させるための、可変位相器16-nの位相量φ
nは以下の式(16)により算出される(ステップ406)。
【数16】
【0078】
この位相量φ
nを設定した場合、式(4)で示したDA部20でのLO IF信号L´
IFnは、式(17)のとおりとなり、系によらず、各DA部20で位相の揃ったLO IF信号が得られる。
【数17】
【0079】
<実施形態4>
本実施形態における無線基地局システム1の構成を
図10に示す。本実施形態における無線基地局システム1は、実施形態2と同じくRU部10と複数のDA部20を備える。
【0080】
本実施形態では、RU部10とDA部20とを接続するケーブル19は2本という点で、実施形態2と異なる。すなわち、RU部10でDL/UL IF信号とLO IF信号とを重畳せず、それぞれ異なるケーブル19-1a~19-Na、19-1b~19-Nbで伝送する。なお、以下特に区別する必要がなければ単に、ケーブル19-1a、19-1bと表記する。その他の構成については、実施形態2及び実施形態3と同様である。すなわち、本実施形態における遅延・位相調整回路18は実施形態2及び実施形態3と同様である。
【0081】
以上、図面を参照して、本開示の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。
【0082】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムにおける校正回路であって、
前記リモートユニット部の局部発振器から出力され、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、
前記検波された結果に基づいて、前記リモートユニット部からそれぞれ前記複数のケーブルを介して出力する複数の局部発振信号の位相を調整する位相調整部と、
を備える校正回路。
(付記2)
前記反射された複数の局部発振信号を加算する加算器をさらに備え、
前記検波部は、前記加算された局部発振信号の信号レベルを検波し、
前記位相調整部は、前記検波された信号レベルに基づいて前記位相を調整する、
付記1に記載の校正回路。
(付記3)
前記位相調整部は、前記信号レベルが最小になるように前記位相を調整する、
付記2に記載の校正回路。
(付記4)
前記加算器に入力される複数の局部発振信号の信号レベルが等しくなるように調整するレベル調整部をさらに備える、
付記2または3に記載の校正回路。
(付記5)
前記反射された複数の局部発振信号の中から、前記加算器に入力する2つの局部発振信号を選択する選択部をさらに備える、
付記2または3に記載の校正回路。
(付記6)
前記局部発振信号は、パルス信号またはステップ信号である、
付記1に記載の校正回路。
(付記7)
前記検波部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号を検波するとともに、前記反射された局部発振信号を検波し、
前記位相調整部は、前記局部発振器から出力された局部発振信号の検波結果と前記反射された局部発振信号の検波結果との時間差に基づいて、前記位相を調整する、
付記6に記載の校正回路。
(付記8)
前記反射された複数の局部発振信号の中から、前記検波部に入力する1つの局部発振信号を選択する選択部をさらに備える、
付記7に記載の校正回路。
(付記9)
無線基地局システムにおいて、それぞれ複数のケーブルを介して複数の分散アンテナ装置と接続されたリモートユニット装置であって、
局部発振信号を生成する局部発振器と、
前記局部発振信号を前記複数のケーブルのそれぞれに出力する複数の可変位相器と、
前記複数の可変位相器を制御する校正回路とを備え、
前記校正回路は、
前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、
前記検波された結果に基づいて、前記複数の可変位相器の位相変化量を調整する位相調整部と、
備えるリモートユニット装置。
(付記10)
前記局部発振器から出力された局部発振信号を前記複数のケーブルに分配する分配器と、
前記分配器と前記複数の可変位相器との間で、前記反射された複数の局部発振信号をそれぞれ前記校正回路へ分配する複数のカプラと、
を備える付記9に記載のリモートユニット装置。
(付記11)
前記複数の分散アンテナ装置とダウンリンク信号及びアップリンク信号を送受信する送受信回路をさらに備える、
付記10に記載のリモートユニット装置。
(付記12)
前記ダウンリンク信号及び前記アップリンク信号は、MIMO伝送用の信号である、
付記11に記載のリモートユニット装置。
(付記13)
前記局部発振信号は、前記複数のケーブルにおいて前記ダウンリンク信号及び前記アップリンク信号と重畳される、
付記11または12に記載のリモートユニット装置。
(付記14)
前記局部発振信号と、前記ダウンリンク信号及び前記アップリンク信号とは、異なるケーブルを介して伝送される、
付記11または12に記載のリモートユニット装置。
(付記15)
前記局部発振信号は、前記複数のケーブルにおいて電源または制御信号と重畳される、
付記13または14に記載のリモートユニット装置。
(付記16)
リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムであって、
前記リモートユニット部は、
局部発振信号を生成する局部発振器と、
前記局部発振信号を前記複数のケーブルのそれぞれに出力する複数の可変位相器と、
前記複数の可変位相器を制御する校正回路とを備え、
前記校正回路は、
前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波する検波部と、
前記検波された結果に基づいて、前記複数の可変位相器の位相変化量を調整する位相調整部と、
備える無線基地局システム。
(付記17)
複数の分散アンテナ部は、前記局部発振信号を反射させる動作を切り替えるスイッチを備える、
付記16に記載の無線基地局システム。
(付記18)
前記スイッチは、前記局部発振信号を反射させる場合、前記ケーブルをグランドに短絡する、
付記17に記載の無線基地局システム。
(付記19)
前記スイッチは、前記局部発振信号を反射させる場合、前記ケーブルの終端を開放する、
付記17に記載の無線基地局システム。
(付記20)
前記スイッチは、前記局部発振信号を反射させる動作と、前記局部発振信号を用いてダウンリンク信号及びアップリンク信号を端末装置との間で送受信する動作とを切り替える、
付記17乃至19のいずれか一項に記載の無線基地局システム。
(付記21)
前記局部発振信号は、前記複数のケーブルにおいて前記ダウンリンク信号及び前記アップリンク信号と重畳され、
前記局部発振信号を逓倍した逓倍信号と、前記ケーブルから受信したダウンリンク信号または前記端末装置から受信したアップリンク信号とを乗算する信号処理回路をさらに備え、
前記スイッチは、前記ダウンリンク信号及び前記アップリンク信号を送受信する場合、前記ケーブルと前記信号処理回路とを接続する、
付記20に記載の無線基地局システム。
(付記22)
前記局部発振信号と、前記ダウンリンク信号及び前記アップリンク信号とは、異なるケーブルを介して伝送され、
前記局部発振信号を逓倍する逓倍器と、
前記逓倍された逓倍信号と、前記ケーブルから受信したダウンリンク信号または前記端末装置から受信したアップリンク信号とを乗算する乗算器とをさらに備え、
前記スイッチは、前記ダウンリンク信号及び前記アップリンク信号を送受信する場合、前記ケーブルと前記逓倍器とを接続する、
付記20に記載の無線基地局システム。
(付記23)
前記局部発振信号は、前記複数のケーブルにおいて電源または制御信号とさらに重畳され、
前記ケーブルと前記スイッチとの間に、前記重畳された信号から前記電源または前記制御信号を抽出する回路と、前記重畳された信号から前記局部発振信号を抽出する回路と、を備える、
付記21または22に記載の無線基地局システム。
(付記24)
リモートユニット部と、前記リモートユニット部にそれぞれ複数のケーブルを介して接続された複数の分散アンテナ部とを備えた無線基地局システムにおける校正方法であって、
前記リモートユニット部の局部発振器から出力され、前記複数のケーブルを介して前記複数の分散アンテナ部からそれぞれ反射された複数の局部発振信号を検波し、
前記検波された結果に基づいて、前記リモートユニット部からそれぞれ前記複数のケーブルを介して出力する複数の局部発振信号の位相を調整する、
校正方法。
【符号の説明】
【0083】
1 無線基地局システム
2 校正回路
2a 検波部
2b 位相調整部
10 RU部
11 DL/UL信号送受信回路
13 局部発振器
18 遅延・位相調整回路
19 ケーブル
20-1~20-n DA部
43 加算器
44 検波器
45 位相調整部