(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/60 20060101AFI20241008BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20241008BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65H29/60 C
G03G21/16 195
G03G21/16 147
G03G15/00 463
(21)【出願番号】P 2020125613
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 竜司
(72)【発明者】
【氏名】一ノ▲瀬▼ 裕一郎
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106618(JP,A)
【文献】特開2017-223801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/60
G03G 21/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部から搬送される用紙が排出される排紙トレイを有する筐体と、
前記画像形成部から搬送される用紙を前記排紙トレイに導く排紙経路を有する第1搬送部と、
前記排紙経路から分岐する再搬送経路を有する第2搬送部と、
前記排紙経路の少なくとも一部を形成する閉止位置と、前記排紙経路を開放する開放位置との間で回動可能に前記筐体に支持される保持部材と、
前記保持部材に回動可能に保持されており、前記保持部材が前記閉止位置にあるときに用紙を前記排紙経路に案内する第1姿勢と、前記用紙を前記再搬送経路に案内する第2姿勢とに、前記保持部材に対する相対的な姿勢が変化可能な切替部材と、
前記保持部材が前記閉止位置にあるときに前記切替部材に当接することにより、前記切替部材を前記第1姿勢と前記第2姿勢とに変化させる当接部材と、
前記当接部材の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記保持部材は、前記排紙経路の一部を構成する第2ガイド面と、前記再搬送経路の一部を構成する第3ガイド面とを有し、
前記第1搬送部は、前記排紙経路の一部を構成し、前記第2ガイド面と対向する第1ガイド面を有し、
前記第3ガイド面は、前記第2ガイド面を挟んで前記第1ガイド面の反対側に位置し、
前記第1姿勢にある前記切替部材の回動先端は、前記第2姿勢にある前記切替部材の回動先端よりも、前記第1ガイド面から離間しており、
前記保持部材が前記閉止位置から前記開放位置に移動すると、前記第2ガイド面は前記第1ガイド面から離間し、
前記当接部材は、前記切替部材を前記第1姿勢に変化させる第1動作位置と、前記第1姿勢にある前記切替部材を押圧することにより前記第2姿勢に変化させる第2動作位置とに変位可能であり、
前記制御部は、前記保持部材を開放位置へ回動させる必要があると判断したときに、前記当接部材を前記第1動作位置に変位させ、
前記切替部材は、前記保持部材が前記閉止位置から前記開放位置へ回動するのに伴って、前記保持部材に対する相対的な姿勢が第3姿勢に変化し、
また、前記保持部材が前記開放位置に回動したときに前記当接部材から離間して、自重により前記第3姿勢に変化し、
前記第3姿勢にある前記切替部材の回動先端は、前記第2姿勢にある前記切替部材の前記回動先端に対して、前記第1姿勢にある前記切替部材の前記回動先端よりも離れており、かつ、当該第3姿勢の前記切替部材は前記排紙経路内の用紙と干渉しない
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1搬送部は、
前記第1ガイド面を有し、前記切替部材と対向するガイド部材を有し、
前記切替部材の回動中心は、前記保持部材の前記閉止位置から前記開放位置への回動に伴って、前記ガイド部材から離れる方向に移動する
請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記切替部材の前記回動先端と前記回動中心とは、前記保持部材の回動中心を挟んで反対側に位置している請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記当接部材は前記筐体に支持されている請求項
1~請求項
3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記筐体と前記保持部材との間に設けられ、前記保持部材が前記閉止位置と前記開放位置との間で回動する際に、前記保持部材に摺動抵抗を付与して前記保持部材の回動動作を規制する規制部材を備え、
前記規制部材は、前記保持部材の用紙搬送方向と直交する幅方向における一端側および他端側の一方に位置し、
前記当接部材は、前記保持部材の前記幅方向における一端側および他端側の他方に位置する
請求項
1~請求項
4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、搬送される用紙を排紙トレイに導く排紙経路、排紙経路から分岐する再搬送経路、および用紙を排紙経路に案内する第1姿勢と用紙を再搬送経路に案内する第2姿勢とに移動可能な切替部材を備えた画像形成装置が知られている。切替部材は、例えば排紙経路の一部を形成する保持部材に支持されている。
【0003】
このような画像形成装置においては、保持部材を、排紙経路の一部を形成する閉止位置と、排紙経路を開放する開放位置との間で回動可能なように画像形成装置の筐体に設けることで、排紙経路内に用紙が詰まった際に保持部材を開放位置に回動させて、詰まった用紙を容易に取り除くことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の構成において、例えば切替部材が第1姿勢に移動した状態で保持部材が開放位置に回動する場合、保持部材に対する切替部材の姿勢が保持されたまま保持部材が回動すると、切替部材が排紙経路内の用紙と干渉して、用紙を取り除くことが困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、保持部材が開放位置に回動した際に、切替部材が排紙経路内の用紙と干渉することを抑制可能な画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する画像形成装置は、以下の特徴を有する。
【0008】
即ち、画像形成装置は、画像形成部から搬送される用紙が排出される排紙トレイを有する筐体と、前記画像形成部から搬送される用紙を前記排紙トレイに導く排紙経路を有する第1搬送部と、前記排紙経路から分岐する再搬送経路を有する第2搬送部と、前記排紙経路の少なくとも一部を形成する閉止位置と、前記排紙経路を開放する開放位置との間で回動可能に前記筐体に支持される保持部材と、前記保持部材に回動可能に保持されており、前記保持部材が前記閉止位置にあるときに用紙を前記排紙経路に案内する第1姿勢と、前記用紙を前記再搬送経路に案内する第2姿勢とに、前記保持部材に対する相対的な姿勢が変化可能な切替部材と、を備え、前記切替部材は、前記保持部材が前記閉止位置から前記開放位置へ回動するのに伴って、前記保持部材に対する相対的な姿勢が第3姿勢に変化し、前記第3姿勢にある前記切替部材の回動先端は、前記第2姿勢にある前記切替部材の前記回動先端に対して、前記第1姿勢にある前記切替部材の前記回動先端よりも離れており、かつ、当該第3姿勢の前記切替部材は前記排紙経路内の用紙と干渉しない。
【0009】
これにより、保持部材が開放位置に回動した際に、切替部材が排紙経路内の用紙と干渉することを抑制できる。
【0010】
また、前記保持部材が前記閉止位置にあるときに前記切替部材に当接することにより、前記切替部材を前記第1姿勢と前記第2姿勢とに変化させる当接部材を備え、前記切替部材は、前記保持部材が前記開放位置に回動したときに前記当接部材から離間して、自重により前記第3姿勢に変化する。
【0011】
このように、保持部材が開放位置に回動したときに切替部材が当接部材から離間することで、切替部材は、当接部材の状態にかかわらず第3姿勢に変化することができる。
【0012】
また、前記第1搬送部は、前記切替部材と対向するガイド部材を有し、前記切替部材の回動中心は、前記保持部材の前記閉止位置から前記開放位置への回動に伴って、前記ガイド部材から離れる方向に移動する。
【0013】
このように、切替部材の回動中心が、保持部材の閉止位置から開放位置への回動に伴ってガイド部材から離れる方向に移動するため、切替部材が排紙経路内の用紙と干渉しない第3姿勢に変化することが容易となる。
【0014】
また、前記切替部材の前記回動先端と前記回動中心とは、前記保持部材の回動中心を挟んで反対側に位置している。
【0015】
このように、切替部材の回動先端と回動中心とが保持部材の回動中心を挟んで反対側に位置している場合でも、切替部材が第3姿勢に変化することで、保持部材が開放位置に回動した際に、切替部材が排紙経路内の用紙と干渉することを抑制できる。
【0016】
また、前記当接部材の動作を制御する制御部を備え、前記当接部材は、前記切替部材を前記第1姿勢に変化させる第1動作位置と、前記第1姿勢にある前記切替部材を押圧することにより前記第2姿勢に変化させる第2動作位置とに変位可能であり、前記制御部は、前記保持部材を開放位置へ回動させる必要があると判断したときに、前記当接部材を前記第1動作位置に変位させる。
【0017】
これにより、開放位置に回動した保持部材が閉止位置に戻ったときの、当接部材による切替部材の押圧量が小さくなり、切替部材が適切な姿勢に位置し易くなる。
【0018】
また、前記当接部材は前記筐体に支持されている。
【0019】
これにより、保持部材が開放位置に回動したときに、切替部材と当接部材とを容易に離間させることができる。
【0020】
また、前記筐体と前記保持部材との間に設けられ、前記保持部材が前記閉止位置と前記開放位置との間で回動する際に、前記保持部材に摺動抵抗を付与して前記保持部材の回動動作を規制する規制部材を備え、前記規制部材は、前記保持部材の用紙搬送方向と直交する幅方向における一端側および他端側の一方に位置し、前記当接部材は、前記保持部材の前記幅方向における一端側および他端側の他方に位置する。
【0021】
このように、当接部材と規制部材とが保持部材の幅方向における反対側に配置されているため、当接部材と切替部材との幅方向における重なりが大きくなって、当接部材が切替部材を押圧する力を切替部材に伝達し易くなる。これにより、当接部材による切替部材の第1姿勢と第2姿勢との変化をより円滑に行うことができる。
【0022】
また、前記保持部材に正逆回転可能に支持されるスイッチバックローラと、前記スイッチバックローラに一体的に回転可能に支持されるローラギアと、前記筐体に回転可能に支持され、前記ローラギアとかみ合って前記ローラギアに正転方向の駆動力および逆転方向の駆動力を伝達する駆動ギアとを備え、前記駆動ギアの回転中心は、前記保持部材の回動中心と前記ローラギアの回転中心とを結ぶ第1直線に直交する第2直線上に位置する。
【0023】
これにより、駆動ギアがローラギアに正転方向の駆動力を伝達するときと、逆転方向の駆動力を伝達するときとの両方において、保持部材が閉止位置側へ向けて回動する側の力をローラギアに作用させることが容易となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、保持部材が開放位置に回動した際に、切替部材が排紙経路内の用紙と干渉することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】保持部材が閉止位置にある状態の搬送部を示す側面断面図である。
【
図3】保持部材が開放位置にある状態の搬送部を示す側面断面図である。
【
図4】保持部材が開放位置にある状態の搬送部を示す側面断面図であって、保持部材の右端側に設けられる当接部材および電磁ソレノイドを表した側面断面図である。
【
図5】右端側に当接部材および電磁ソレノイドが設けられた保持部材を右後側から見た斜視図である。
【
図7】第1姿勢にある切替部材を示す側面断面図である。
【
図8】第2姿勢にある切替部材を示す側面断面図である。
【
図9】第3姿勢にある切替部材を示す側面断面図である。
【
図10】制御部に接続された電磁ソレノイド、シートセンサ、および駆動モータを示すブロック図である。
【
図11】左端側に規制部材が設けられた保持部材を左後側から見た斜視図である。
【
図12】保持部材および規制部材を示す側面図である。
【
図13】スイッチバックローラの駆動機構を示す側面図である。
【
図14】スイッチバックローラの駆動機構における駆動ギアおよびローラギアを示す側面図である。
【
図15】(a)は駆動ギアがローラギアに正転方向の駆動力を伝達するときに、ローラギアに作用する駆動ギアからの荷重F1を示す側面図であり、(b)は駆動ギアがローラギアに逆転方向の駆動力を伝達するときに、ローラギアに作用する駆動ギアからの荷重F2を示す側面図である。
【
図16】保持部材を閉止位置に保持するためのストッパを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0027】
[画像形成装置の全体構成]
図1に示す画像形成装置1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態であり、電子写真方式により用紙Sに複数色の現像剤像の重ね合わせによる画像を形成するカラーレーザプリンタに構成されている。但し、画像形成装置1は、単色の現像剤像による画像を用紙に形成するモノクロレーザプリンタに構成することも可能である。また、本実施形態では、画像形成装置1はレーザ方式の画像形成装置に構成されているが、これに限定しない。つまり、画像形成装置1は、他の画像形成方式、例えば、LEDプリンタ、インクジェットプリンタ、およびサーマル方式のプリンタなどに適用してもよい。
【0028】
以下の説明においては、
図1における「左側」、「右側」、「紙面奥側」、及び「紙面手前側」を、それぞれ画像形成装置1の「前側」、「後側」、「左側」、及び「右側」と規定する。また、
図1における「上側」及び「下側」を、それぞれ画像形成装置1の「上側」及び「下側」と規定する。
【0029】
画像形成装置1は、筐体2と、用紙Sを供給する給紙部3と、搬送される用紙Sに画像を形成する画像形成部5と、画像形成部5から搬送される用紙Sを搬送する搬送部7とを備えている。筐体2は、略直方体形状に形成される箱体であり、給紙部3、画像形成部5、および搬送部7を収容している。筐体2は、後面に開口する第1開口部2Aと、第1開口部2Aに対して開閉可能なリアカバー21とを備えている。
【0030】
リアカバー21は、下端部に左右方向に延びる回動軸心21aを有しており、回動軸心21aを中心として筐体2に対して回動することにより開閉可能に構成されている。本実施形態における左右方向は、用紙搬送方向と直交する幅方向の一例である。第1開口部2Aは、リアカバー21を開いた状態では開放され、リアカバー21を閉じた状態では閉塞される。
【0031】
また、筐体2の上方は上面カバー23により覆われている。上面カバー23には、前側から後側へ向かって下り傾斜するように凹む排紙トレイ23aが形成されている。排紙トレイ23aには、画像形成部5から搬送される用紙Sが排出される。
【0032】
給紙部3は、シートカセット31と、第1給紙ローラ32と、分離ローラ33と、分離パッド33aと、第1搬送ローラ対34と、レジストローラ対35とを備えている。筐体2内には、シートカセット31から画像形成部5内を経由する用紙Sの本体搬送経路P1が構成されている。
【0033】
シートカセット31は、複数枚の用紙Sを積層状態で支持している。シートカセット31に支持される用紙Sは、第1給紙ローラ32、分離ローラ33および分離パッド33aにより1枚ずつ搬送経路P1に送り出される。搬送経路P1に送り出された用紙Sは、搬送ローラ対34およびレジストローラ対35により画像形成部5に向けて搬送される。
【0034】
また、筐体2は前面に開口する第2開口部2Bと、第2開口部2Bに対して開閉可能なフロントカバー29とを備えている。フロントカバー29は、下端部に左右方向に延びる回動軸心29aを有しており、回動軸心29aを中心として筐体2に対して回動することにより開閉可能に構成されている。第2開口部2Bは、フロントカバー29を開いた状態では開放され、フロントカバー29を閉じた状態では閉塞される。
【0035】
給紙部3は、第2給紙ローラ38と、第2搬送ローラ対39とを備えている。フロントカバー29が開かれた状態においてフロントカバー29上に載置された用紙Sは、第2給紙ローラ38が下方に移動することによって送り出され、第2搬送ローラ対39により搬送され、搬送経路P1に合流される。搬送経路P1に合流された用紙Sは、レジストローラ35により画像形成部5に向けて搬送される。
【0036】
画像形成部5は給紙部3の上方に配置されており、前後方向に並設される4つのドラムユニット51を備えている。各ドラムユニット51は、ブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンの各色に対応して設けられている。各ドラムユニット51は感光ドラム51a、帯電器51b、および現像ローラ51cを備えている。
【0037】
また、画像形成部5は、スキャナユニット52および定着ユニット60を備えている。スキャナユニット52は、筐体2内の上部に設けられ、画像データに基づくレーザ光が、ポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを通って、各色に対応する感光ドラム51の表面上に高速走査にて照射される。定着ユニット60は、用紙Sの搬送方向における最も下流側の感光ドラム51aよりもさらに下流側に配置されている。
【0038】
画像形成部5の搬送経路P1を挟んだ下方には転写ベルト40が配置されている。転写ベルト40は、駆動ローラ41aと駆動ローラ41aの前方に配置される従動ローラ41bとの間に掛け渡されている。転写ベルト40を挟んだ各感光ドラム51aに対向する位置には、それぞれ転写ローラ42が配置されている。
【0039】
画像形成部5においては、帯電器51bによって一様に帯電された感光ドラム51aが、それぞれスキャナユニット52によって選択的に露光される。この露光により、感光ドラム51aの表面から電荷が選択的に除去され、感光ドラム51aの表面に静電潜像が形成される。
【0040】
現像ローラ51cには現像バイアスが印加されており、感光ドラム51aに形成された静電潜像が現像ローラ51cに対向すると、静電潜像と現像ローラ51cとの間の電位差により、現像ローラ51cから静電潜像にトナーが供給される。これによって、感光ドラム51aの表面にトナー像が形成される。
【0041】
画像形成部5へ向けて搬送された用紙Sが転写ベルト40上に搬送されると、転写ベルト40により搬送されて、転写ベルト40と各感光ドラム51aとの間を順次通過する。そして、感光ドラム51aの表面上のトナー像は、用紙Sと対向したときに、転写ローラ42に印加された転写バイアスによって用紙Sに転写される。
【0042】
トナー像が転写された用紙Sは定着ユニット60に搬送される。定着ユニット60は、用紙Sを加熱する加熱ローラ61と、加熱ローラ61と対向して配置される加圧ローラ62とを備えている。定着ユニット60に搬送された用紙Sは、互いに圧接した加熱ローラ61と加圧ローラ62との間を通過することによりトナー像が熱定着される。
【0043】
トナー像が熱定着された用紙Sは、搬送部7により画像形成部5の下流側へ搬送される。搬送部7は第1搬送部71および第2搬送部72を有している。第1搬送部71は、画像形成部5から搬送された用紙Sを排紙トレイ23aに排紙する排紙機能を備えている。第2搬送部72は、画像形成部5から搬送された用紙Sを再び画像形成部5に搬送する再搬送機能を備えている。
【0044】
なお、第2搬送部72は、本実施形態においては再搬送機能を有しているが、これに限らず、画像形成部5から搬送された用紙Sを画像形成装置1の上部に装着されたオプション装置に向けて搬送する機能等を備えていてもよい。画像形成装置1に装着するオプション装置としては、例えば多段のシートトレイを有したメールボックスを挙げることができる。
【0045】
画像形成装置1においては、用紙Sの両面に画像を形成する場合、画像形成部5にて一面に画像が形成されて定着ユニット60から排出された用紙Sが第2搬送部72によって反転されて再び画像形成部5へ搬送され、画像形成部5により他面に画像が形成された後、第1搬送部71によって排紙トレイ23aに排出される。この場合、画像形成装置1は用紙Sを反転させて再び画像形成部5へ搬送するための専用の第2搬送部72を有しているため、用紙Sを第1搬送部71のみで反転させる画像形成装置と比較して、両面印刷時における単位時間あたりの用紙の搬送枚数を増やすことが可能となっている。なお、印刷モードによっては、第1搬送部71のみで用紙Sを反転させることもでき、その場合、第2搬送部72を用いずに用紙Sを反転させて、再び画像形成部5に用紙Sを搬送することとなる。
【0046】
[搬送部]
図1~
図4に示すように、搬送部7は、第1搬送部71と、第2搬送部72と、切替部材73と、保持部材25と、シートセンサ92とを有している。
【0047】
第1搬送部71は、用紙搬送方向における定着ユニット60の下流側に配置され用紙Sを搬送する中間排紙ローラ対711と、中間排紙ローラ対711の下流側に配置され用紙Sを搬送して排紙トレイ23aに排出する排紙ローラ対712とを有している。中間排紙ローラ対711および排紙ローラ対712は、筐体2に支持されている。
【0048】
第1搬送部71は、定着ユニット60から排紙トレイ23aへ至るまで用紙Sが案内される排紙経路P2を有している。排紙経路P2は、画像形成部5から搬送される用紙Sを排紙トレイ23aに導く経路である。
【0049】
排紙経路P2は、定着ユニット60から後斜め上方に向けて延びたあと上方へ延びて中間排紙ローラ対711に達し、その後、排紙トレイ23aへ向かうように前斜め上方に向けて延びている。中間排紙ローラ対711は排紙経路P2の途中部に配置されており、排紙ローラ対712は排紙経路P2の下流側端部に配置されている。
【0050】
画像形成装置1においては、画像形成部5から搬送された用紙Sを排紙トレイ23aに排出する場合、定着ユニット60にてトナー像が熱定着された用紙Sを中間排紙ローラ対711により排紙経路P2に沿って搬送した後、排紙ローラ対712によって排紙トレイ23aに排出する。
【0051】
第2搬送部72は、第1搬送経路P2から分岐して画像形成部5から搬送された用紙Sを再び画像形成部5に搬送する再搬送経路P3を有している。再搬送経路P3は分岐位置Psにおいて排紙経路P2から分岐している。分岐位置Psは、用紙搬送方向において定着ユニット60の下流側であって排紙ローラ対712の上流側に位置している。
【0052】
再搬送経路P3は、分岐位置Psから後斜め上方に向けて延び、画像形成部5から搬送される用紙Sを搬送する第1経路P31と、第1経路P31から分岐して反転した用紙を再び画像形成部5へ向けて搬送するために下方に延びる第2経路P32とを有している。第1経路P31は、筐体2の上端部まで延びている。第2経路P32は、第1経路P31から分岐して下方に延びた後、前方へ延びて第1搬送ローラ34に達している。
【0053】
第2搬送部72は、再搬送経路P3の第1経路P31上に配置されるスイッチバックローラ721とピンチローラ722とを有している。スイッチバックローラ721は正逆回転方向へ駆動可能に構成されており、ピンチローラ722はスイッチバックローラ721に当接して従動回転するように構成されている。
【0054】
そして、スイッチバックローラ721が正転方向へ回転することで、ピンチローラ722とスイッチバックローラ721とに挟まれた用紙Sが筐体2から排出される方向へ搬送される。また、スイッチバックローラ721が逆転方向へ回転することで、ピンチローラ722とスイッチバックローラ721とに挟まれた用紙Sが筐体2内へ引き込まれる方向へ搬送される。従って、スイッチバックローラ721の下方において、第2経路P32は第1経路P31から分岐している。
【0055】
保持部材25は、リアカバー21の前方に配置されている。保持部材25は、下端部に回動軸心21aと平行な回動軸心25aを有しており、筐体2に回動軸心25aを中心として回動可能に支持されている。
【0056】
保持部材25は、排紙経路P2の少なくとも一部を形成する閉止位置(
図2に示す位置)と、排紙経路P2を開放する開放位置(
図3に示す位置)との間で回動可能に構成されている。保持部材25は、リアカバー21が開いた状態にあるときに、開放位置に回動することが可能である。保持部材25は、スイッチバックローラ721およびピンチローラ722を支持している。スイッチバックローラ721は、保持部材25に正逆回転可能に支持されている。
【0057】
保持部材25の回動軸心25aは、リアカバー21の回動軸心21aよりも上側に配置されており、リアカバー21および保持部材25を開いたときに、保持部材25がリアカバー21よりも上方に位置するように構成されている。
【0058】
切替部材73は、リアカバー21が閉じた状態において、排紙経路P2と再搬送経路P3との分岐位置Psの近くに位置するように配置されている。切替部材73は、側面視における上側の端部に回動軸心21aと平行な回動軸心73aを有し、回動軸心73aとは反対側の端部である下側の端部に先端部73bを有している。先端部73bは、切替部材の回動先端の一例である。
【0059】
切替部材73は、回動軸心73aを中心として回動可能なように保持部材25に保持されている。回動軸心73aは、切替部材の回動中心の一例である。回動軸心73aは、分岐位置Psよりも上方に位置している。また、回動軸心73aは、保持部材25の回動軸心25aよりも上方かつ後方に位置している。切替部材73の先端部73bと回動軸心73aとは、保持部材25の回動軸心25aを挟んで反対側に位置している。切替部材73は、前ガイド面73Aと後ガイド面73Bと、を有している。
【0060】
切替部材73は、保持部材25が閉止位置にあるときに、回動軸心73aを中心として回動することで、画像形成部5の定着ユニット60の加熱ローラ61と加圧ローラ62との間を通過した用紙Sを排紙経路P2に案内する第1姿勢(
図2において実線で示した切替部材73-1の姿勢)と、画像形成部5から搬送される用紙Sを再搬送経路P3の第1経路P31に案内する第2姿勢(
図2において2点鎖線で示した切替部材73-2の姿勢)とに、保持部材25に対する相対的な姿勢が変化可能に構成されている。
【0061】
切替部材73は、第1姿勢にあるときには、排紙経路P2を開放するとともに再搬送経路P3の第1経路P31を遮る。また、切替部材73は、第2姿勢にあるときには、排紙経路P2を遮るとともに再搬送経路P3の第1経路P31を開放する。切替部材73が第2姿勢に移動しているときの先端部73bは、切替部材73が第1姿勢に移動しているときの先端部73bよりも上方に位置している。
【0062】
また、切替部材73は、保持部材25が開放位置にあるときには、保持部材25に対する相対的な姿勢が第1姿勢および第2姿勢とは異なる第3姿勢(
図3に示した切替部材73-3の姿勢)に変化する。ここで、第3姿勢は、切替部材73が排紙経路P2内の用紙Sと干渉しない姿勢である。また、切替部材73は、保持部材25が閉止位置から解放位置に回動するのに伴って、第1姿勢または第2姿勢にある状態から保持部材25に対する相対的な姿勢が変化して第3姿勢となる。
【0063】
第1搬送部71は、筐体2に支持されるガイド部材27を備えている。ガイド部材27は、排紙経路P2の一部を構成する第1ガイド面271を有している。保持部材25および切替部材73は、ガイド部材27の後方に位置しており、ガイド部材27の第1ガイド面271と対向している。
【0064】
保持部材25は、第2ガイド面251と第3ガイド面252とを有している。第2ガイド面251は、排紙経路P2の一部を構成している。第3ガイド面252は、第2ガイド面251よりも後方に位置しており、第2搬送部72における再搬送経路P3の一部を構成している。リアカバー21は、第3ガイド面252よりも後方に位置し、再搬送経路P3の一部を構成する第4ガイド面211を有している。切替部材73が第1姿勢であるときに、第1ガイド面271と第2ガイド面251と前ガイド面73Aとにより、排紙経路P2を通過する用紙Sを案内し、切替部材73が第2姿勢であるときに、第3ガイド面252と第4ガイド面211と後ガイド面73Bとにより、再搬送経路P3を通過する用紙Sを案内する。
【0065】
保持部材25は、閉止位置に回動したときに第1搬送部71における排紙経路P2の一部を構成し、開放位置に回動したときに排紙経路P2を開放するように構成されている。保持部材25は、リアカバー21が開いた状態にあるときに閉止位置から開放位置に回動することが可能であり、排紙経路P2内で用紙Sのジャムが発生した場合に、保持部材25を開放位置に回動させることにより排紙経路P2を開放して、用紙Sのジャムを容易に解消することが可能となっている。
【0066】
切替部材73の回動軸心73aは、保持部材25が回動軸心25aを中心として回動するのに伴って、保持部材25の回動方向に沿って移動する。例えば、回動軸心73aは、保持部材25が閉止位置から開放位置側へ向かって回動するときには、ガイド部材27から離れる方向へ移動し、保持部材25が開放位置から閉止位置側へ向かって回動するときには、ガイド部材27に近づく方向へ移動する。
【0067】
シートセンサ92は、排紙経路P2に沿って搬送される用紙Sを検知するセンサであり、用紙搬送方向において定着ユニット60と分岐点Psとの間に配置されている。
【0068】
[切替部材の駆動部]
図4~
図6に示すように、切替部材73は、左右方向の右側端部において、回動軸心73aから先端部73b側とは反対側に延出する操作レバー73cを有している。
【0069】
切替部材73は、用紙Sの搬送方向と直交する幅方向における中央部に配置される第1フラッパ部731と、第1フラッパ部731よりも幅方向における端部側に配置される第2フラッパ部732とを有している。第2フラッパ部732は、第1フラッパ部731の左右両側において複数並設されている。幅方向において隣接する第1フラッパ部731と第2フラッパ部732、および第2フラッパ部732と第2フラッパ部732とは、それぞれ接続部733により接続されている。
【0070】
回動軸心73aの軸方向からみた場合、第2フラッパ部732の回動軸心73aから先端部732bまでの長さは、第1フラッパ部731の回動軸心73aから先端部731bまでの長さよりも短く形成されている。
【0071】
画像形成装置1は、保持部材25が閉止位置にあるときに切替部材73に当接することにより、切替部材73を第1姿勢と第2姿勢とに変化させる当接部材75と、当接部材75を駆動する電磁ソレノイド74とを備えている。電磁ソレノイド74および当接部材75は、保持部材25の用紙搬送方向と直交する幅方向における右端側に位置しており、筐体2に支持されている。
【0072】
当接部材75は、下端部の揺動軸75aを中心として揺動可能であり、上端部に切替部材73の操作レバー73cに当接可能な当接部75bを有している。当接部材75の当接部75bと切替部材73の操作レバー73cとは幅方向において重なっており、互いに当接可能に構成されている。当接部材75は、
図6(a)に示すように切替部材73を第1姿勢に変化させる第1動作位置と、
図6(b)に示すように切替部材73を第2姿勢に変化させる第2動作位置とに変位可能である。
【0073】
電磁ソレノイド74は伸縮可能なプランジャ74aを有しており、プランジャ74aは当接部材75に接続されている。電磁ソレノイド74は、励磁状態と非励磁状態とに切替可能であり、非励磁状態のときにプランジャ74aが伸長し、励磁状態のときに縮小するように構成されている。当接部材75は、電磁ソレノイド74のプランジャ74aが伸長すると第1動作位置に変位し、プランジャ74aが縮小すると第2動作位置に変位する。
【0074】
図7に示すように、保持部材25が閉止位置にあるとともに、電磁ソレノイド74が非励磁状態となって当接部材75が第1動作位置に変位した状態では、当接部材75の当接部75bが切替部材73の操作レバー73cに当接して、切替部材73は第1姿勢に変化する。この場合、保持部材25の回動軸心25aとスイッチバックローラ721の回転中心721aとを結ぶ第1直線L1と、切替部材73の回動軸心73aと先端部73bとを結ぶ第3直線L3とは、第1角度θ1を成している。なお、第1角度θ1は、第1直線L1と第3直線L3とが、第1直線L1および第3直線L3の後ろ側において成す角度である。
【0075】
一方、
図8に示すように、保持部材25が閉止位置にあるとともに、電磁ソレノイド74が励磁状態となって当接部材75が第2動作位置に変位した状態では、当接部材75の当接部75bが切替部材73の操作レバー73cに当接して、切替部材73は第2姿勢に変化する。この場合、第1直線L1と第3直線L3とは、第1角度θ1よりも大きな第2角度θ2を成している。なお、第2角度θ2は、第1直線L1と第3直線L3とが、第1角度θ1と同じ側において成す角度である。
【0076】
また、電磁ソレノイド74が非励磁状態にあって切替部材73が第1姿勢に変化している状態から、電磁ソレノイド74が励磁状態に切り替わると、第1動作位置に変位していた当接部材75が第2動作位置に変位して、第1姿勢にある切替部材73の操作レバー73cを押圧することにより第2姿勢に変化させる。
【0077】
逆に、電磁ソレノイド74が励磁状態にあって、切替部材73が第2姿勢に変化している状態から、電磁ソレノイド74が非励磁状態に切り替わると、第2動作位置に変位していた当接部材75が第1動作位置に変位して、当接部材75の当接部75bが切替部材73の操作レバー73cから離れる方向に移動するため、切替部材73は自重により第2姿勢から第1姿勢に変化する。
【0078】
図9に示すように、保持部材25が開放位置にあるときには、保持部材25が閉止位置にあるときよりも、切替部材73の回動軸心73aがガイド部材27から離れる方向に移動しており、切替部材73は当接部材75から離間している。このように、保持部材25が開放位置にあって、切替部材73が当接部材75から離間している状態では、切替部材73は、自重により第3姿勢に変化する。
【0079】
切替部材73が第3姿勢にある状態では、第1直線L1と第3直線L3とは、第1角度θ1および第2角度θ2よりも小さな第3角度θ3を成している。なお、第3角度θ3は、第1直線L1と第3直線L3とが、第1角度θ1および第2角度θ2と同じ側において成す角度である。切替部材73が第3姿勢にあるときに、第1直線L1と第3直線L3とが第3角度θ3を成すことにより、第3角度θ3よりも大きな角度を成している場合に比べて切替部材73の先端部73bが下方に下がった状態となり、切替部材73が排紙経路P2内の用紙Sと干渉することを抑制可能となっている。つまり、保持部材25が開放位置にある場合に、切替部材73が第1姿勢または第2姿勢のままの状態よりも、第3姿勢となることにより、切替部材73が第1ガイド面271から離れるとともに、排紙経路P2から遠ざかることができる。このとき、第3姿勢の切替部材73の先端部73bは、第2姿勢の切替部材73の先端部73bに対して、第1姿勢の切替部材73の先端部73bよりも離れた位置となっている。
【0080】
また、保持部材25が閉止位置にある状態から開放位置へ回動すると、切替部材73が当接部材75から離間して、切替部材73に当接部材75からの押圧力が作用しなくなるため、第1姿勢または第2姿勢にある切替部材73は自重により第1直線L1と第3直線L3との成す角度が小さくなる方向に回動して第3姿勢に変化する。このように、保持部材25が閉止位置から開放位置へ回動するのに伴って、切替部材73の保持部材25に対する相対的な姿勢が第3姿勢に変化することで、保持部材25が開放位置に回動した際に、切替部材73が排紙経路P2内の用紙Sと干渉することを抑制可能となる。
【0081】
また、保持部材25が開放位置に回動したときに切替部材73が当接部材75から離間することで、切替部材73は、当接部材75が第1動作位置にあるか、または第2動作位置にあるかといったような、当接部材75の状態にかかわらず、自重により第3姿勢に変化することが可能である。さらに、第3姿勢に変化した切替部材73は、当接部材75の状態にかかわらず第3姿勢を維持することができる。
【0082】
また、切替部材73の回動軸心73aは、保持部材25の閉止位置から開放位置への回動に伴ってガイド部材27から離れる方向に移動するため、保持部材25が開放位置へ回動する際に切替部材73が全体的にガイド部材27から離れる方向へ移動することとなる。これにより、切替部材73が排紙経路P2内の用紙Sと干渉しない第3姿勢に変化することが容易となっている。
【0083】
また、切替部材73の先端部73bと回動軸心73aとは、保持部材25の回動軸心25aを挟んで反対側に位置しているが、このような場合でも、切替部材73が第3姿勢に変化することで、保持部材25が開放位置に回動した際に、切替部材73が排紙経路P2内の用紙と干渉することを抑制することが可能となっている。
【0084】
さらに、当接部材75は筐体2に支持されていて保持部材25が回動しても移動しないため、保持部材25が開放位置に回動したときに、切替部材73と当接部材75とを容易に離間させることが可能である。
【0085】
[制御部]
図10に示すように、画像形成装置1は、電磁ソレノイド74の励磁状態と非励磁状態との切り替えを制御する制御部9を備えている。制御部9は、電磁ソレノイド74の励磁状態と非励磁状態との切り替えを制御することにより、当接部材75の動作を制御することが可能である。つまり、制御部9は、当接部材75の第1動作位置および第2動作位置への変位を制御することが可能である。制御部9には、電磁ソレノイド74およびシートセンサ92が接続されている。
【0086】
制御部9は、保持部材25を開放位置へ回動させる必要があると判断したときに、当接部材75を第1動作位置に変位させるように構成されている。ここで、保持部材25を開放位置へ回動させる必要がある場合とは、例えば排紙経路P2に沿って搬送される用紙Sにジャムが発生したため、保持部材25を開放位置へ回動させて排紙経路P2を開放し、詰まった用紙を排紙経路P2から取り除く必要がある場合等である。なお、制御部9は、例えば定着ユニット60の下流側においてシートセンサ92による用紙Sの検出が所定時間以上継続されている場合に、排紙経路P2においてジャムが発生していると判断することができる。
【0087】
排紙経路P2を開放するために保持部材25を開放位置へ回動させた場合は、切替部材73と当接部材75とは離間しているが、保持部材25を開放位置から閉止位置に戻したときには、切替部材73と当接部材75とが当接することとなる。この場合、当接部材75が第2動作位置に変位している状態よりも当接部材75が第1動作位置に変位している状態の方が、当接部材75による切替部材73に対する押圧度合が小さくなる。
【0088】
従って、制御部9が保持部材25を開放位置へ回動させる必要があると判断したときに、当接部材75を第1動作位置に変位させることで、開放位置に回動した保持部材25が閉止位置に戻ったときの、当接部材75による切替部材73の押圧量が小さくなり、切替部材73が適切な姿勢に位置し易くなる。
【0089】
[規制部材]
図11、
図12に示すように、画像形成装置1は、保持部材25が閉止位置と開放位置との間で回動する際に、保持部材25に摺動抵抗を付与して保持部材25の回動動作を規制する規制部材26を備えている。規制部材26は、筐体2と保持部材25との間に設けられており、保持部材25の用紙搬送方向と直交する幅方向における左端側に位置している。
【0090】
保持部材25は、保持部材25の左端面から左方へ向けて突出する係合突起253を有している。規制部材26は、回動支持部261と、係合穴部262とを有している。筐体2は左右方向に延出する支持軸28を有しており、回動支持部261は支持軸28に回動可能に支持されている。係合穴部262は、第1端部262aと、第2端部262bと、一対の長辺部262cとを有している。
【0091】
第1端部262aおよび第2端部262bは円弧形状に形成されている。第1端部262aと第2端部262bとは互いに離間して配置されており、第1端部262aは第2端部262bよりも回動支持部261の近くに位置している。第1端部262aは、回動支持部261に接続されている。
【0092】
一対の長辺部262cは、第1端部262aと第2端部262bとを接続しており、第1端部262aと第2端部262bと一対の長辺部262cとで、第1端部262aと第2端部262bとの離間方向に長い長孔を形成している。係合突起253は係合穴部262に摺動可能に係合しており、保持部材25が閉止位置にあるときには、係合突起253は係合穴部262の第1端部262a側に位置している。
【0093】
一対の長辺部262cは、第1端部262aと第2端部262bとの離間方向に沿って延出しており、延出方向における途中部が両端部よりも互いに近づく方向へ湾曲している。長辺部262cは弾性を有しており、一対の長辺部262cの延出方向における途中部は、互いに係合突起253の外径よりも小さな距離で離間している。
【0094】
閉止位置にある保持部材25が開放位置側へ回動すると、係合突起253が係合穴部262内を第2端部262b側へ向けて摺動する。この場合、係合突起253は長辺部262cの内面に摺接しながら移動するため、係合突起253には摺動抵抗が付与される。このように、保持部材25が開放位置側へ回動するときに、規制部材26によって保持部材25の係合突起253に摺動抵抗が付与されるため、保持部材25の回動動作が規制され、保持部材25が開放位置側へ向けて急激に回動することを抑制可能となっている。
【0095】
ここで、規制部材26を保持部材25の左端部と筐体2との間に設けると、保持部材25には、保持部材25を幅方向における保持部材25と筐体2とが離れる側に移動させる力が作用する。この場合、保持部材25に作用する力は、規制部材26と当接部材75とを幅方向における同じ側に配置すると、当接部材75の当接部75bと切替部材73の操作レバー73cとの幅方向における重なりが小さくなる方向の力となる。逆に、規制部材26と当接部材75とを幅方向における反対側に配置すると、当接部材75の当接部75bと切替部材の操作レバー73cとの幅方向における重なりが大きくなる方向の力となる。
【0096】
画像形成装置1においては、当接部材75は保持部材25の右端側に配置され、規制部材26は保持部材25の左端側に配置されており、当接部材75と規制部材26とが保持部材25の幅方向における反対側に配置されている。
【0097】
従って、当接部材75の当接部75bと切替部材73の操作レバー73cとの幅方向における重なりが大きくなって、当接部75bが操作レバー73cを押圧する力を操作レバー73cに伝達し易くなる。これにより、当接部材75による切替部材73の第1姿勢と第2姿勢との変化をより円滑に行うことが可能となっている。
【0098】
なお、本実施形態においては、当接部材75は保持部材25の幅方向における右端側に配置され、規制部材26は保持部材25の幅方向における左端側に配置されているが、当接部材75を保持部材25の幅方向における左端側に配置し、規制部材26を保持部材25の幅方向における右端側に配置することもできる。
【0099】
[スイッチバックローラの駆動機構]
図13、
図14に示すように、画像形成装置1は、スイッチバックローラ721を駆動するための駆動機構10を備えている。スイッチバックローラ721の駆動機構10は、ローラギア127と、駆動ギア126と、駆動モータ95と、駆動力伝達経路11とを有している。
【0100】
ローラギア127は、スイッチバックローラ721に一体的に回転可能に支持されている。ローラギア127とスイッチバックローラ721とは同軸に配置されており、ローラギア127の回転中心127aとスイッチバックローラ721の回転中心721aとは一致している。駆動ギア126は、筐体2に回転可能に支持され、ローラギア127とかみ合ってローラギア127に正転方向の駆動力および逆転方向の駆動力を伝達する。
【0101】
駆動モータ95は、正逆回転方向への駆動力を出力可能な駆動源である。
図10に示すように、駆動モータ95は制御部9に接続されており、制御部9は駆動モータ95の動作を制御可能である。駆動力伝達経路11は、駆動モータ95からの駆動力を駆動ギア126に伝達可能に構成されている。
【0102】
駆動力伝達経路11は、駆動モータ95に取り付けられたプーリ111と、プーリ111の上方に配置されたプーリ112と、プーリ111およびプーリ112に架け渡されたベルト113とを有している。また、駆動力伝達経路11は、プーリ112に一体的回転可能に固定されたプーリ121と、プーリ121の上方に配置され駆動ギア126に一体的回転可能に固定されたプーリ122と、プーリ121とプーリ122との間に配置されたプーリ123と、プーリ121、プーリ122、およびプーリ123に架け渡されたベルト124とを有している。
【0103】
駆動モータ95からの駆動力は、ベルト113およびベルト124を介して駆動ギア126に伝達される。駆動力が駆動ギア126に伝達されることにより、駆動ギア126は正転方向または逆転方向に回転する。駆動ギア126が回転すると、駆動ギア126とかみ合うローラギア127に正転方向の駆動力または逆転方向の駆動力が伝達される。これにより、スイッチバックローラ721が正転方向または逆転方向に回転する。
【0104】
図14に示すように、駆動ギア126は、駆動ギア126の回転中心126aが、保持部材25の回動軸心25aとローラギア127の回転中心127aとを結ぶ第1直線L1に直交する第2直線L2上に位置するように配置されている。なお、ローラギア127の回転中心127aとスイッチバックローラ721の回転中心721aとは一致しているため、保持部材25の回動軸心25aとローラギア127の回転中心127aとを結ぶ直線、および保持部材25の回動軸心25aとスイッチバックローラ721の回転中心721aとを結ぶ直線は、共に第1直線L1である。
【0105】
図15(a)に示すように、駆動ギア126が、ローラギア127に正転方向の駆動力を伝達するとき、つまりスイッチバックローラ721が正転方向へ回転する方向に駆動されたときには、ローラギア127には駆動ギア126からの荷重F1が作用する。荷重F1は、後斜め下方に向かう力である。
【0106】
荷重F1は、X方向成分F1xと、Y方向成分F1yとに分解することができる。この場合、X方向とは、ローラギア127の歯における駆動ギア126とのかみ合い面に沿った方向であり、Y方向とは、ローラギア127の歯における駆動ギア126とのかみ合い面と直交する方向である。荷重F1におけるY方向成分F1yと、第2直線L2との成す角度θf1は、90°未満となっている。つまり、Y方向成分F1yは、第2直線L2に沿った方向において駆動ギア126に近づく側へ傾斜しており、保持部材25を開放位置側から閉止位置側へ向かって引き込む方向の力となっている。
【0107】
一方、
図15(b)に示すように、駆動ギア126が、ローラギア127に逆転方向の駆動力を伝達するとき、つまりスイッチバックローラ721が逆転方向へ回転する方向に駆動されたときには、ローラギア127には駆動ギア126からの荷重F2が作用する。荷重F2は、後斜め上方に向かう力である。
【0108】
荷重F2は、X方向成分F2xと、Y方向成分F2yとに分解することができる。この場合のX方向およびY方向は、荷重F1の場合と同様である。荷重F2におけるY方向成分F2yと、第2直線L2との成す角度θf2は、90°未満となっている。つまり、Y方向成分F2yは、第2直線L2に沿った方向において駆動ギア126に近づく側へ傾斜しており、保持部材25を開放位置側から閉止位置側へ向かって引き込む方向の力となっている。
【0109】
図16に示すように、筐体2における保持部材25の左右端部と対向する部分には、後方から前方へ向かうにつれて左右外側へ傾斜する傾斜面24が形成されている。なお、
図16には、保持部材25の左端部側の部分のみ示している。
【0110】
図14~
図16に示すように、保持部材25の左右端部かつ上端部には、ストッパ254が設けられている。ストッパ254は、保持部材25に回動可能に支持される支持部254aと、傾斜面24に係合可能な係合部254bとを有している。保持部材25とストッパ254との間にはバネ255が設けられており、ストッパ254はバネ255により係合部254bが傾斜面24に押圧される方向に付勢されている。
【0111】
係合部254がバネ255により傾斜面24に押圧されることで、保持部材25には、保持部材25の上端部が前方へ移動する方向の力が作用する。つまり、ストッパ254と筐体2の傾斜面24とが係合することで、保持部材25に開放位置側から閉止位置側へ向けて引き込む方向の力が作用し、この力によって保持部材25が閉止位置に保持されている。
【0112】
ここで、駆動ギア126が駆動された際にローラギア127に作用する、荷重F1、F2のY方向成分F1y、F2yと第2直線L2との成す角度θf1、θf2が90°を超えていると、保持部材25には、ローラギア127を介して保持部材25を閉止位置側から開放位置側へ向かって押し出す方向の力が作用することとなる。
【0113】
このように、保持部材25に開放位置側へ向かって押し出す方向の力が作用すると、保持部材25は、ストッパ254による閉止位置側へ向かう力に抗して、開放位置側へ回動するおそれがある。保持部材25が開放位置側へ回動すると、駆動ギア126とローラギア127とのかみ合いが浅くなって、駆動ギア126からローラギア127への駆動力の伝達が円滑に行われなくなるおそれがあり、好ましくない。
【0114】
しかし、本実施形態においては、荷重F1、F2のY方向成分F1y、F2yは共に90°未満となっており、駆動ギア126が正転方向に駆動された場合および逆転方向に駆動された場合の両方おいて、保持部材25には閉止位置側へ向かって引き込む方向の力が作用する。これにより、駆動ギア126の駆動時には、駆動ギア126とローラギア127とのかみ合いが深くなり、駆動ギア126からローラギア127への駆動力の伝達が円滑に行われることとなっている。
【0115】
また、画像形成装置1においては、駆動ギア126の回転中心126aが第1直線L1に直交する第2直線L2上にあるため、荷重F1の作用する方向と荷重F2の作用する方向とが、第2直線L2を挟んで対象となっている。
【0116】
従って、駆動ギア126がローラギア127に正転方向の駆動力を伝達するときと、逆転方向の駆動力を伝達するときとで、ローラギア127に作用する保持部材25の回動方向の力を均等にすることができる。また、荷重F1のY方向成分F1yにおける角度θf1と、荷重F2のY方向成分F2yにおける角度θf2との一方が他方よりも大きくなることがなく、角度θf1と角度θf2とを同じ大きさにすることができる。
【0117】
これにより、駆動ギア126がローラギア127に正転方向の駆動力を伝達するときと、逆転方向の駆動力を伝達するときとの両方において、角度θf1、θf2を90°未満とし、保持部材25を閉止位置側へ向けて回動させる方向の力をローラギア127に作用させることが容易となっている。
【0118】
本実施形態では、切替部材73の姿勢を、保持部材25の回動軸心25aとスイッチバックローラ721の回転中心721aとを結ぶ第1直線L1と、切替部材73の回動軸心73aと先端部73bとを結ぶ第3直線L3とが成す角度によって特定していたが、これに限定しない。例えば、保持部材25の第3ガイド面252と切替部材73の前ガイド面73Aとの成す角度によって、第1姿勢、第2姿勢、および第2姿勢を特定してもよい。また、前ガイド面73Aではなく、切替部材73の先端部73bと保持部材25の第3ガイド面252との距離によって、第1姿勢、第2姿勢、および第2姿勢を特定してもよい。すなわち、保持部材25の特定位置と、切替部材73の特定位置との角度や距離といった位置関係などに基づいて、切替部材73の保持部材25に対する相対的な姿勢を特定することができる。
【0119】
また、本実施形態では、切替部材73は、第3姿勢へ自重によって変化するように構成していたが、これに限定しない。例えば、別の駆動部材などを用いて切替部材73の姿勢を変化させることにより、切替部材73が第3姿勢に変化するように構成してもよい。さらに、当接部材75は筐体2に支持されておらず、保持部材25に支持されていてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 画像形成装置
2 筐体
5 画像形成部
7 搬送部
9 制御部
23a 排紙トレイ
25 保持部材
25a 回動軸心
26 規制部材
27 ガイド部材
71 第1搬送部
72 第2搬送部
73 切替部材
73a 回動軸心
73b 先端部
75 当接部材
126 駆動ギア
126a 回転中心
127 ローラギア
127a 回転中心
721 スイッチバックローラ
L1 第1直線
L2 第2直線
P2 排紙経路
P3 再搬送経路
S 用紙