(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20241008BHJP
G01S 17/42 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/42
(21)【出願番号】P 2020125659
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2022-09-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 貴祥
(72)【発明者】
【氏名】水野 文明
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049892(WO,A1)
【文献】特開2011-112503(JP,A)
【文献】特開2017-015448(JP,A)
【文献】特開2013-113670(JP,A)
【文献】特開2019-045288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0306043(US,A1)
【文献】特開2018-063222(JP,A)
【文献】特開2005-221333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測距部(10A,10B,10F,10L,10R)と、
前記複数の測距部を制御するように構成される制御部(20)と、
を備え、
前記複数の測距部のそれぞれは、レーザ光を偏向する偏向部材(13)を備え、前記偏向部材を回転又は揺動させることにより、照射する前記レーザ光の照射方位を変化させて所定の測距領域内で周期的に前記レーザ光による走査を行って、前記照射方位と同一の方位から受光される反射光に基づいて前記照射方位に存在する物体との距離を測定する、測距処理を実行可能に構成され、
前記複数の測距部は、前記測距領域の一部が互いに重複する第1の測距部及び第2の測距部を備え、
前記制御部は、前記第1の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第1の通過領域と前記第2の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第2の通過領域とが前記測距領域内で干渉しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを並行して実行させる構成を備え、
前記距離の測定が行われる周期である測距周期には、前記距離の測定が行われる期間である測距期間と、前記距離の測定が行われない期間である非測距期間と、が含まれ、
前記制御部は、前記干渉しないようにする構成として、前記第1の測距部及び前記第2の測距部が共に前記測距期間の状態である共測距状態において前記第1の通過領域と前記第2の通過領域とが前記測距領域内で干渉しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記第1の測距部又は前記第2の測距部が備える前記偏向部材の回転軸の方向から見た平面視で、前記第1の測距部により照射される前記レーザ光の前記照射方位と、前記第2の測距部により照射される前記レーザ光の前記照射方位と、の共通の基準方位に対する角度の大小関係が逆転しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記測距周期が同じになるように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記レーザ光を走査する方向である走査方向、及び、前記測距期間における前記偏向部材の回転又は揺動の角速度である測距角速度が、それぞれ同じになるように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させ、
前記第1の測距部及び前記第2の測距部は、前記第1の測距部の前記偏向部材の回転軸が前記第2の測距部の前記偏向部材の回転軸よりも前記走査方向側になるように、前記走査方向に沿って並んで配置され、
前記第1の測距部が前記レーザ光の走査を開始するタイミングに対する前記第2の測距部が前記レーザ光の走査を開始するタイミングが、前記第1の測距部が前記レーザ光の走査を開始する前記照射方位である第1の開始方位と前記第2の測距部が前記レーザ光の走査を開始する前記照射方位である第2の開始方位とがなす角度を前記測距角速度で回転移動するのに必要な時間を表す値であって前記第1の開始方位が前記第2の開始方位よりも前記走査方向側を向く場合には符号をマイナスとする値を下限値とし、前記第2の測距部の前記非測距期間を表す値を上限値とする範囲内である、
測距装置。
【請求項2】
複数の測距部(10A,10B,10F,10L,10R)と、
前記複数の測距部を制御するように構成される制御部(20)と、
を備え、
前記複数の測距部のそれぞれは、レーザ光を偏向する偏向部材(13)を備え、前記偏向部材を回転又は揺動させることにより、照射する前記レーザ光の照射方位を変化させて所定の測距領域内で周期的に前記レーザ光による走査を行って、前記照射方位と同一の方位から受光される反射光に基づいて前記照射方位に存在する物体との距離を測定する、測距処理を実行可能に構成され、
前記複数の測距部は、前記測距領域の一部が互いに重複する第1の測距部及び第2の測距部を備え、
前記制御部は、前記第1の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第1の通過領域と前記第2の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第2の通過領域とが前記測距領域内で干渉しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを並行して実行させる構成を備え、
前記距離の測定が行われる周期である測距周期には、前記距離の測定が行われる期間である測距期間と、前記距離の測定が行われない期間である非測距期間と、が含まれ、
前記制御部は、前記干渉しないようにする構成として、前記第1の測距部及び前記第2の測距部が共に前記測距期間の状態である共測距状態において前記第1の通過領域と前記第2の通過領域とが前記測距領域内で干渉しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記第1の測距部又は前記第2の測距部が備える前記偏向部材の回転軸の方向から見た平面視で、前記第1の測距部により照射される前記レーザ光の前記照射方位と、前記第2の測距部により照射される前記レーザ光の前記照射方位と、の共通の基準方位に対する角度の大小関係が逆転しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記距離の測定が行われる期間における前記偏向部材の回転又は揺動の角速度である測距角速度が互いに異なるように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記測距周期、及び、前記レーザ光を照射する方向である走査方向が、それぞれ同じになるように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させ、
前記第1の測距部及び前記第2の測距部は、前記第1の測距部の前記偏向部材の回転軸が前記第2の測距部の前記偏向部材の回転軸よりも前記走査方向側になるように、前記走査方向に沿って並んで配置され、
前記共測距状態となる期間が、前記共測距状態の開始時における前記第1の測距部と前記第2の測距部との前記照射方位のなす角度を前記共測距状態における前記第2の測距部と前記第1の測距部の前記測距角速度の差分で割った値以下である、
測距装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の測距装置であって、
前記偏向部材を揺動させる測距装置の場合に、前記測距期間に前記偏向部材を所定の回転移動方向に移動させ、前記非測距期間に前記偏向部材を前記回転移動方向と逆方向に移動させる、
測距装置。
【請求項4】
複数の測距部(10A,10B,10F,10L,10R)と、
前記複数の測距部を制御するように構成される制御部(20)と、
を備え、
前記複数の測距部のそれぞれは、レーザ光を偏向する偏向部材(13)を備え、前記偏向部材を回転又は揺動させることにより、照射する前記レーザ光の照射方位を変化させて所定の測距領域内で周期的に前記レーザ光による走査を行って、前記照射方位と同一の方位から受光される反射光に基づいて前記照射方位に存在する物体との距離を測定する、測距処理を実行可能に構成され、
前記複数の測距部は、前記測距領域の一部が互いに重複する第1の測距部及び第2の測距部を備え、
前記制御部は、前記第1の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第1の通過領域と前記第2の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第2の通過領域とが前記測距領域内で干渉しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを並行して実行させる構成を備え、
前記距離の測定が行われる周期である測距周期には、前記距離の測定が行われる期間である測距期間と、前記距離の測定が行われない期間である非測距期間と、が含まれ、
前記制御部は、前記干渉しないようにする構成として、前記第1の測距部及び前記第2の測距部が共に前記測距期間の状態である共測距状態において前記第1の通過領域と前記第2の通過領域とが前記測距領域内で干渉しないように、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記干渉が生じないように、前記第1の測距部の前記偏向部材の回転又は揺動の時間とともに変化する角度を示す波形の種類と、前記第2の測距部の前記偏向部材の回転又は揺動の時間とともに変化する角度を示す波形の種類とを、異なるように調整する構成を有する、
測距装置。
【請求項5】
複数の測距部(10A,10B,10F,10L,10R)と、
前記複数の測距部を制御するように構成される制御部(20)と、
を備え、
前記複数の測距部のそれぞれは、レーザ光を偏向する偏向部材(13)を備え、前記偏向部材を回転又は揺動させることにより、照射する前記レーザ光の照射方位を変化させて所定の測距領域内で周期的に前記レーザ光による走査を行って、前記照射方位と同一の方位から受光される反射光に基づいて前記照射方位に存在する物体との距離を測定する、測距処理を実行可能に構成され、
前記複数の測距部は、前記測距領域の一部が互いに重複する第1の測距部及び第2の測距部を備え、
前記制御部は、前記第1の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第1の通過領域と前記第2の測距部により照射される前記レーザ光が通る領域である第2の通過領域とが前記測距領域内で干渉しないように(但し、前記第1の測距部の前記レーザ光の走査と前記第2の測距部の前記レーザ光の走査とを同期させて同じ照射方位とする制御を除く)、前記第1の測距部による前記測距処理と前記第2の測距部による前記測距処理とを並行して実行させる構成を備え、
更に、前記制御部は、前記干渉が生じないように、前記第1の測距部の前記偏向部材の回転又は揺動の時間とともに変化する角度を示す波形の種類と、前記第2の測距部の前記偏向部材の回転又は揺動の時間とともに変化する角度を示す波形の種類とを、異なるように調整する構成を有する、
測距装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか1項に記載の測距装置であって、
前記第1の測距部及び前記第2の測距部は、それぞれ前記レーザ光を照射する投光部(11)と前記レーザ光の前記反射光を受光する受光部(14)とを備え、
それぞれの前記受光部は、同じ前記測距部の前記投光部から照射された前記レーザ光の前記照射方位と同一の方位からの前記反射光を受光するように配置された、
測距装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の測距装置であって、
前記照射方位と同一の方位からの前記反射光は、前記レーザ光を偏向する前記偏向部材にて反射して、前記受光部にて受光するように構成された、
測距装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7までのいずれか1項に記載の測距装置であって、
前記制御部は、前記偏向部材の回転又は揺動の角速度を変化させるタイミングが前記複数の測距部で互いに異なるように、前記複数の測距部を制御する、
測距装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
8までのいずれか1項に記載の測距装置であって、
前記制御部は、前記偏向部材の回転又は揺動の角速度が最も速い期間の少なくとも一部が前記複数の測距部で互いに重ならないように、前記複数の測距部を制御する、
測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光の反射光に基づいて物体との距離を測定するライダ装置が知られている。ライダ装置は、偏向部材を回転又は揺動させることにより、照射するレーザ光の照射方位を変化させて所定の測距領域内でレーザ光を走査し、照射方位と同一の方位から受光される反射光に基づいて照射方位に存在する物体との距離を測定する、測距処理を実行する。
【0003】
特許文献1には、車両にライダ装置を搭載し、車両の周辺に存在する物体までの距離を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0011544号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測距処理を実行する測距部を、測距領域の一部が互いに重複するように複数配置することで、広い範囲において物体を漏れなく検出可能とすることが考えられる。
しかしながら、発明者による詳細な検討の結果、複数の測距部のうちの1つにより照射されたレーザ光が、測距領域の重複する部分に存在する物体で反射され、別の測距部で受光されると、物体との距離が誤って測定される場合があるという課題が見出された。
【0006】
本開示の一局面は、測距領域の一部が互いに重複する複数の測距部により物体との距離が誤って測定されることを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、測距装置であって、複数の測距部(10A,10B,10F,10L,10R)と、制御部(20)と、を備える。制御部は、複数の測距部を制御するように構成される。複数の測距部のそれぞれは、レーザ光を偏向する偏向部材を備え、偏向部材を回転又は揺動させることにより、照射するレーザ光の照射方位を変化させて所定の測距領域内でレーザ光を走査し、照射方位と同一の方位から受光される反射光に基づいて照射方位に存在する物体との距離を測定する、測距処理を実行可能に構成される。複数の測距部は、測距領域の一部が互いに重複する第1の測距部及び第2の測距部を備える。制御部は、第1の測距部により照射されるレーザ光が通る領域である第1の通過領域と第2の測距部により照射されるレーザ光が通る領域である第2の通過領域とが測距領域内で干渉しないように、第1の測距部による測距処理と第2の測距部による測距処理とを並行して実行させる。
【0008】
このような構成によれば、測距領域の一部が互いに重複する複数の測距部により物体との距離が誤って測定されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】偏向部材の回転角度の周期的な変化を示す図である。
【
図6】複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉している状態を示す図である。
【
図7】複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が干渉する領域内に物体境界面が存在した状態を示す図である。
【
図8】他の測距部により照射されたレーザ光の反射光を受光した状態を示す図である。
【
図10】2つの測距部の配置関係に応じた開始タイミングの条件を示す図である。
【
図11】第1の配置例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図12】第1の配置例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図13】第1の配置例の他の例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図14】第2の配置例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図15】第2の配置例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図16】第3の配置例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図17】第3の配置例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図18】第3の配置例の他の例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図19】第3の配置例の他の例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図20】第4の配置例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図21】第4の配置例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図22】第4の配置例の他の例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図23】第4の配置例の他の例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図24】第5の配置例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図25】第5の配置例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図26】第6の配置例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図27】第6の配置例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図28】第6の配置例の他の例における各測距部の配置関係を示す図である。
【
図29】第6の配置例の他の例における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図30】複数の測距部の走査タイミングを分散しない場合における電流の変化を示す図である。
【
図31】複数の測距部の走査タイミングを分散した場合における電流の変化を示す図である。
【
図32】第2実施形態における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図33】各測距部が偏向部材の回転軸の方向に沿って並んで配置された状態を示す図である。
【
図34】波形が正弦波の場合における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図35】波形の種類が互いに異なる場合における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【
図36】回転移動に周期性が無い場合における各測距部の偏向部材の回転角度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1及び
図2に示すように、本実施形態の測距装置1は、車両100に搭載され、車両100の周辺における前方側に存在する物体との距離を測定する装置である。測距装置1は、3つの測距部、具体的には、右測距部10R、前測距部10F及び左測距部10Lと、制御部20と、を備える。
【0011】
右測距部10R、前測距部10F及び左測距部10Lのそれぞれは、後述する偏向部材13を回転又は揺動させることにより、照射するレーザ光の照射方位を変化させて所定の測距領域内でレーザ光を走査し、照射方位と同一の方位から受光される反射光に基づいて照射方位に存在する物体との距離を測定する、測距処理を実行可能に構成される。
【0012】
測距領域とは、設計上定められている物体を検出する範囲であり、例えば、測距期間においてレーザ光が走査される角度範囲と、物体の検出を許容する最長距離と、により特定される。
【0013】
右測距部10Rは、車両100の右前方の測距領域内でレーザ光を走査するように構成される。前測距部10Fは、車両100の前方の測距領域内でレーザ光を走査するように構成される。左測距部10Lは、車両100の左前方の測距領域内でレーザ光を走査するように構成される。各測距部は、隣に配置される他の測距部と測距領域の一部が互いに重複するように配置される。本実施形態では、右測距部10R及び左測距部10Lは、それぞれ前測距部10Fと測距領域の一部が互いに重複するように配置される。
【0014】
[1-2.測距部の構成]
右測距部10R、前測距部10F及び左測距部10Lは、基本的な構成が共通している。各測距部の構成を、
図3を用いて説明する。
【0015】
各測距部は、投光部11と、駆動部12と、偏向部材13と、受光部14と、を備える。
投光部11は、レーザ光を照射するための光源である。本実施形態のレーザ光はパルス状のレーザ光である。投光部11は、制御部20からの指示に従い、偏向部材13へレーザ光を照射するように構成される。
【0016】
駆動部12は、偏向部材13を回転又は揺動させるためのアクチュエータである。駆動部12は、棒状の軸部材12aを備え、軸部材12aを回転又は揺動させる。本実施形態では、駆動部12は、軸部材12aを揺動させるモータである。軸部材12aの、回転タイミング、回転移動方向及び角速度は、制御部20により制御される。
【0017】
偏向部材13は、レーザ光を偏向するための偏向部材である。本実施形態では、偏向部材13は、ミラーである。偏向部材13は、駆動部12の軸部材12aに固定され、軸部材12aと共に揺動する。偏向部材13が揺動することにより、投光部11の照射したレーザ光が偏向部材13によりその回転角度に応じた方向へ偏向され、測距領域内で走査される。また、走査されたレーザ光が測距領域に存在する物体で反射した反射光が、偏向部材13によりその回転角度に応じた方向へ偏向され、受光部14で受光される。
【0018】
受光部14は、レーザ光を受光するためのセンサである。受光部14は、偏向部材13が走査したレーザ光の照射方位と同一の方位から受光される反射光が、偏向部材13により偏向されて入射する位置に設けられる。受光部14は、受光したレーザ光を電気信号に変換して制御部20へ出力する。
【0019】
[1-3.制御部の構成]
図2に示す制御部20は、図示しないCPU、ROM及びRAMを備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。CPUは、非遷移的実体的記録媒体であるROMに格納されたプログラムを実行する。当該プログラムが実行されることで、当該プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御部20は、1つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。また、制御部20の機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の機能は、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は、デジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現されてもよい。
【0020】
制御部20は、右測距部10R、前測距部10F及び左測距部10Lを制御し、車両100の周辺に存在する物体との距離を測定する。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は偏向部材13の揺動の角度範囲の中心を0とした偏向部材13の回転角度を示す。偏向部材13が揺動する周期は、測距部による距離の測定が行われる周期である。以下では、距離の測定が行われる周期を測距周期ともいう。また、測距周期における距離の測定が行われる期間を測距期間ともいい、距離の測定が行われない期間を非測距期間ともいう。本実施形態では、測距周期における測距期間の割合を高くするため、非測距期間における偏向部材13の角速度が測距期間における偏向部材13の角速度よりも速くなるように測距部が制御される。測距期間における偏向部材13の角速度を測距角速度ともいう。
図5には、測距期間における偏向部材13の回転移動方向R1、及び、非測距期間における偏向部材13の回転移動方向R2が、それぞれ矢印で示される。
図5の例では、測距部がレーザ光を走査する方向は、
図5において左から右へ向かう方向である。本実施形態では、説明が複雑になることを避けるため、偏向部材13が回転移動方向R1に回転している期間全体を測距期間とする。以下では、測距部がレーザ光を走査する方向を走査方向ともいう。
【0021】
本実施形態において、制御部20は、走査方向、測距周期及び測距角速度がそれぞれ同じになるように、各測距部による測距処理を実行させる。すなわち、各測距部による測距処理は、一定の方向へ所定の角速度で周期的にレーザ光が走査されるように実行される。具体的には、偏向部材13は一定の周期で揺動し、偏向部材13が一定の方向へ回転移動する期間において、投光部11から偏向部材13へレーザ光が照射される。言い換えると、偏向部材13が一定の方向とは反対の方向へ回転移動する期間は、投光部11から偏向部材13へレーザ光が照射されない。
【0022】
[1-4.測距領域の重複に起因する誤測定を抑制するための構成]
上述のように、各測距部は、それぞれ測距領域の一部が互いに重複するように配置される。これは、死角となる領域を無くし、物体を漏れなく検出可能とするためである。しかしながら、このような構成では、複数の測距部のうちの1つにより照射されたレーザ光が、測距領域の重複する部分に存在する物体で反射され、別の測距部で受光されることにより、物体との距離が誤って測定される場合がある。
【0023】
本発明者は、次の3つの条件が重なった場合に誤測距が発生することを見出した。
第1の条件:
図1に例示されるように、複数の測距部の測距領域の少なくとも一部が互
いに重複すること。
【0024】
第2の条件:複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉すること。
図6に示す例では、右測距部10Rにより照射されるレーザ光の通過領域と前測距部10Fにより照射されるレーザ光の通過領域とが図示しない測距領域内で干渉している。
【0025】
第3の条件:照射されるレーザ光の通過領域の干渉する領域内に物体境界面が存在すること。
図7に示す例では、右測距部10Rにより照射されるレーザ光の通過領域と前測距部10Fにより照射されるレーザ光の通過領域とが干渉する領域内に物体境界面Cが存在する。
図7において、レーザ光の通過領域は簡易的に直線で図示されている。
【0026】
測距部により照射されるレーザ光の通過領域とは、レーザ光の照射方位に沿って延びる領域であって、レーザ光が照射された場合にレーザ光が通る領域、つまり、レーザ光と同じ幅を有する領域である。例えばパルス状のレーザ光が照射される場合、パルス波のオン期間だけでなくオフ期間においても当該領域は特定される。
【0027】
上記3つの条件が重なった場合、複数の測距部のうちの1つにより照射されたレーザ光が、測距領域の重複する部分に存在する物体で反射されると、別の測距部で受光される場合がある。例えば、
図8は、右測距部10Rにより受光されるレーザ光の受光波形を示している。
図8において、横軸は前測距部10Fがレーザ光を照射したタイミングを0とした時間を示し、縦軸は受光した反射光の強度を示す。この例では、前測距部10Fは、右測距部10Rにより照射されたレーザ光の反射光を先に受光しているため、前測距部10Fにより照射されたレーザ光の反射光の受光波形W
Fよりも前に右測距部10Rにより照射されたレーザ光の反射光の受光波形W
Rが検出されている。物体との距離は、レーザ光が照射されたタイミングと反射光が受光されたタイミングとの差により測定されるため、この場合、前測距部10Fは物体との距離を実際よりも短く誤測距してしまう。
【0028】
上記3つの条件のうち、上記第1の条件は、設計上の理由により避けることが困難である。また、上記第3の条件は、外的な要因のため対策が困難である。そこで、本実施形態の測距装置1では、上記第2の条件が成立しないように、制御部20が各測距部を制御する。具体的には、制御部20は、複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉しないように、各測距部がレーザ光の走査を開始する開始タイミングを制御する。開始タイミングの条件は、各測距部の配置関係に応じて異なる。
【0029】
以下、2つの測距部の配置関係に応じた開始タイミングの条件について説明する。
図9に示す測距部10A及び測距部10Bは、車両100に搭載される3つの測距部のうち、測距領域の一部が互いに重複するように配置された任意の2つの測距部である。
図9に示す符号の意味は次のとおりであり、位置及び角度は測距部10A又は測距部10Bが備える偏向部材13の回転軸の方向から見た平面視で特定される。本実施形態では、測距部10A及び測距部10Bが備える偏向部材13の回転軸は平行である。ただし、回転軸の向きは、必ずしも平行である必要はなく、例えば平行に近い向きであってもよい。
【0030】
DA…測距部10Aの基準方位
DB…測距部10Bの基準方位
SA…測距部10Aによるレーザ光の走査の開始方位
SB…測距部10Bによるレーザ光の走査の開始方位
PA…測距部10Aの偏向部材13におけるレーザ光を偏向する点である起点位置
PB…測距部10Bの偏向部材13におけるレーザ光を偏向する点である起点位置
LA…起点位置PAを通り基準方位DAに平行な直線
γA…基準方位DAを0とする開始方位SAの角度である開始角度
γB…基準方位DBを0とする開始方位SBの角度である開始角度
γd…基準方位DAを0とする基準方位DBの角度である配置ずれ角度
γB_A…基準方位DAを0とする開始方位SBの角度である開き角度
測距部の基準方位とは、設計上基準として定められた方位である。例えば、レーザ光を透過する透過窓が設けられている場合、透過窓の正面の方向、具体的には、透過窓表面における中心又はその近傍部分の法線の方向となることが一般的である。本実施形態では、基準方位は、測距期間においてレーザ光が走査される角度範囲の中心の方位と一致する。
【0031】
開始角度γA,γB、配置ずれ角度γd及び開き角度γB_Aは、測距部10Aの走査方向側を向くほど値が大きくなり、それぞれの基準方位よりも走査方向側でプラスの値、走査方向側とは反対側でマイナスの値をとる。
【0032】
図10に示すように、開始タイミングの条件は、測距部10A及び測距部10Bの配置関係に応じて、6つの条件に分類される。以下、これら6つの条件について、6種類の配置例に基づき説明する。
【0033】
(第1の配置例)
図11に示すように、第1の配置例は、起点位置P
Bが基準直線L
Aよりも測距部10Aの走査方向の反対側であり、開始角度γ
Aと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A<γ
Aとなるように測距部10A及び測距部10Bが配置された例である。なお、
図11に示す第1の配置例では、基準方位D
Aと基準方位D
Bとが平行となるように測距部10A及び測距部10Bが配置されているが、これは第1の配置例の条件ではない。
【0034】
図12は、第1の配置例における、測距部10Aの偏向部材13の回転角度θ
A及び測
距部10Bの偏向部材13の回転角度θ
B_Aの変化を示す。回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aはいずれも、基準方位D
Aへレーザ光が照射される回転角度を0とする角度で表される。また、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの値は、測距期間において上昇し、非測距期間において下降する。測距部10A及び測距部10Bの非測距期間は、それぞれ非測距期間α及び非測距期間βで示される。
【0035】
制御部20は、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉することを抑制するために、測距部10A又は測距部10Bが備える偏向部材13の回転軸の方向から見た平面視で、測距部10Aにより照射されるレーザ光の照射方位と、測距部10Bにより照射されるレーザ光の照射方位と、の共通の基準方位DAに対する角度の大小関係が逆転しないように、測距部10Aによる測距処理と測距部1
0による測距処理とを実行させる。角度の大小関係が逆転するとは、2つの角度をそれぞれθ1,θ2とした場合、θ1>θ2の状態からθ1<θ2の状態になること、又は、θ1<θ2の状態からθ1>θ2の状態になることをいう。θ1=θ2の状態からθ1>θ2又はθ1<θ2の状態になること、及び、θ1>θ2又はθ1<θ2の状態からθ1=θ2の状態になることは、角度の大小関係が逆転する事象に含まれない。
【0036】
測距部10A及び測距部10Bそれぞれにより照射されるレーザ光の照射方位の基準方位D
Aに対する角度は、測距期間における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aで示されるた
め、制御部20は、測距部10A及び測距部10Bが共に測距期間の状態である共測距状態において回転角度θ
Aと回転角度θ
B_Aとの値の大小関係が逆転しないように、測距部10Aによる測距処理と測距部10による測距処理とを実行させる。起点位置P
Bが基準直
線L
Aよりも測距部10Aの走査方向の反対側である場合、
図12に示すように、共測距
状態において回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aの値が上回らなければよい。回転角度θ
Aに対
する回転角度θ
B_Aの大きさは、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに
対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングが早いほど大きくなる。ただし、第1の配置例では、開き角度γ
B_Aが開始角度γ
Aよりも小さい。このため、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを上回らない限度で、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを早くすることができる。一方、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを遅くしすぎることにより、測距部10Bの測距期間が終了する前に測距部10Aの測距期間が開始すると、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを上回ってしまう。そのため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングの遅れが、測距部10Bの非測距期間βよりも大きくならないようにする必要がある。
【0037】
そこで、第1の配置例では、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングtを、-Φ≦t≦βの範囲に制御する。ここで、Φは、開始方位SAと開始方位SBとがなす角度を上記測距角速度で回転移動するのに必要な期間である。これにより、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0038】
なお、
図9に示す配置例は、第1の配置例の他の例である。
図11に示す第1の配置例では、基準方位D
Aと基準方位D
Bとが平行であるが、
図9に示す第1の配置例では、基準方位D
Aが基準方位D
Bよりも測距部10Aの走査方向側を向いている。
【0039】
図13は、
図9に示す第1の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。
図11に示す第1の配置例と同様、共測距状態において、回転角度θ
Aと回転角度
θ
B_Aとの値の大小関係が逆転しないためには、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを上回らな
ければよい。したがって、
図11に示す第1の配置例と同様、制御部20は、タイミングtを-Φ≦t≦βの範囲に制御することで、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0040】
(第2の配置例)
図14に示すように、第2の配置例は、起点位置P
Bが基準直線L
Aよりも測距部10Aの走査方向の反対側であり、開始角度γ
Aと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A=γ
Aとなるように測距部10A及び測距部10Bが配置された例である。
【0041】
図15は、第2の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。第2の配置例では、開き角度γ
B_Aが開始角度γ
Aと等しい。このため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングと同時又はそれよりも遅くする必要がある。一方、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを遅くしすぎることにより、測距部10Bの測距期間が終了する前に測距部10Aの測距期間が開始すると、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを上回ってしまう。そのため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングの遅れが、測距部10Bの非測距期間βよりも大きくならないようにする必要がある。
【0042】
そこで、第2の配置例では、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングtを、0≦t≦βの範囲に制御する。これにより、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0043】
(第3の配置例)
図16に示すように、第3の配置例は、起点位置P
Bが基準直線L
Aよりも測距部10Aの走査方向の反対側であり、開始角度γ
Aと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A>γ
Aとなるように測距部10A及び測距部10Bが配置された例である。なお、
図16に示す第3の配置例では、基準方位D
Aが基準方位D
Bよりも測距部10Aの走査方向側を向くように測距
部10A及び測距部10Bが配置されているが、これは第3の配置例の条件ではない。
【0044】
図17は、第3の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。第3の配置例では、開き角度γ
B_Aが開始角度γ
Aよりも大きい。このため、回転角度θ
B_Aが
回転角度θ
Aを上回らないように、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミング
を遅くする必要がある。一方、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを遅くしすぎることにより、測距部10Bの測距期間が終了する前に測距部10Aの測距期間が開始すると、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを上回ってしまう。そのため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングの遅れが、測距部10Bの非測距期間βよりも大きくならないようにする必要がある。
【0045】
そこで、第3の配置例では、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングtを、Φ≦t≦βの範囲に制御する。これにより、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0046】
なお、
図18に示す配置例は、第3の配置例の他の例である。
図16に示す第3の配置例では、基準方位D
Aが基準方位D
Bよりも測距部10Aの走査方向側を向いているが、
図18に示す第3の配置例では、基準方位D
Bが基準方位D
Aよりも測距部10Aの走査方向側を向いている。
【0047】
図19は、
図18に示す第3の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。
図16に示す第3の配置例と同様、制御部20は、タイミングtをΦ≦t≦βの範囲に制御することで、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0048】
(第4の配置例)
図20に示すように、第4の配置例は、起点位置P
Bが基準直線L
Aよりも測距部10Aの走査方向側であり、開始角度γ
Aと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A<γ
Aとなるように測距部10A及び測距部10Bが配置された例である。なお、
図20に示す第4の配置例では、基準方位D
Aと基準方位D
Bとが平行となるように測距部10A及び測距部10Bが配置されているが、これは第4の配置例の条件ではない。
【0049】
制御部20は、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉することを抑制するために、測距部10A又は測距部10Bが備える偏向部材13の回転軸の方向から見た平面視で、測距部10Aにより照射されるレーザ光の照射方位と、測距部10Bにより照射されるレーザ光の照射方位と、の共通の基準方位DAに対する角度の大小関係が逆転しないように、測距部10Aによる測距処理と測距部1
0による測距処理とを実行させる。具体的には、制御部20は、共測距状態において回転角度θAと回転角度θB_Aとの値の大小関係が逆転しないように、測距部10Aによる測距処理と測距部10による測距処理とを実行させる。
【0050】
図21は、第4の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。起点位置P
Bが基準直線L
Aよりも測距部10Aの走査方向側である場合、
図21に示すように、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを下回らなければよい。第4の配置例では、開き角度γ
B_Aが開始角度γ
Aよりも大きい。このため、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを下回らないように、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを早くする必要がある。一方、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを早くしすぎることにより、測距部10Aの測距期間が終了する前に測距部10Bの測距期間が開始すると、回転角度θ
B_A
が回転角度θ
Aを下回ってしまう。そのため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始する
タイミングのリードが、測距部10Aの非測距期間αよりも大きくならないようにする必要がある。
【0051】
そこで、第4の配置例では、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングtを、-α≦t≦-Φの範囲に制御する。これにより、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0052】
なお、
図22に示す配置例は、第4の配置例の他の例である。
図20に示す第4の配置例では、基準方位D
Aと基準方位D
Bとが平行であるが、
図22に示す第4の配置例では、基準方位D
Aが基準方位D
Bよりも測距部10Aの走査方向側を向いている。
【0053】
図23は、
図22に示す第4の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。
図20に示す第4の配置例と同様、制御部20は、タイミングtを-α≦t≦-Φの範囲に制御することで、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0054】
なお、第4の配置例は、第3の配置例における測距部10A及び測距部10Bの配置を入れ替えた配置例と捉えることもできる。つまり、第4の配置例は、第3の配置例と実質的に同一である。
【0055】
(第5の配置例)
図24に示すように、第5の配置例は、起点位置P
Bが基準直線L
Aよりも測距部10Aの走査方向側であり、開始角度γ
Aと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A=γ
Aとなるように測距部10A及び測距部10Bが配置された例である。
【0056】
図25は、第5の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。第5の配置例では、開き角度γ
B_Aが開始角度γ
Aと等しい。このため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングと同時又はそれよりも早くする必要がある。一方、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを早くしすぎることにより、測距部10Aの測距期間が終了する前に測距部10Bの測距期間が開始すると、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを下回ってしまう。そのため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングのリードが、測距部10Aの非測距期間αよりも大きくならないようにする必要がある。
【0057】
そこで、第5の配置例では、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングtを、-α≦t≦0の範囲に制御する。これにより、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0058】
なお、第5の配置例は、第2の配置例における測距部10A及び測距部10Bの配置を入れ替えた配置例と捉えることもできる。つまり、第5の配置例は、第2の配置例と実質的に同一である。
【0059】
(第6の配置例)
図26に示すように、第6の配置例は、起点位置P
Bが基準直線L
Aよりも測距部10Aの走査方向側であり、開始角度γ
Aと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A>γ
Aとなるように測距部10A及び測距部10Bが配置された例である。なお、
図26に示す第6の配置例では、開始角度γ
Bと配置ずれ角度γ
dと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A=γ
B-γ
dとなるよ
うに測距部10A及び測距部10Bが配置されているが、これは第6の配置例の条件ではない。
【0060】
図27は、第6の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。第6の配置例では、開き角度γ
B_Aが開始角度γ
Aよりも小さい。このため、回転角度θ
B_Aが
回転角度θ
Aを下回らない限度で、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミング
を遅くすることができる。一方、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを早くしすぎることにより、測距部10Aの測距期間が終了する前に測距部10Bの測距期間が開始すると、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを下回ってしまう。そのため、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングのリードが、測距部10Aの非測距期間αよりも大きくならないようにする必要がある。
【0061】
そこで、第6の配置例では、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングtを、-α≦t≦Φの範囲に制御する。これにより、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0062】
なお、
図28に示す配置例は、第6の配置例の他の例である。
図26に示す第6の配置例では、開始角度γ
Bと配置ずれ角度γ
dと開き角度γ
B_Aとの関係がγ
B_A=γ
B-γ
dであるが、
図28に示す配置例は、開始角度γ
Bと配置ずれ角度γ
dと開き角度γ
B_Aとの関係
がγ
B_A=γ
d-γ
Bである。
【0063】
図29は、
図28に示す第6の配置例における、回転角度θ
A及び回転角度θ
B_Aの変化を示す。
図26に示す第6の配置例と同様、制御部20は、タイミングtを-α≦t≦Φの範囲に制御することで、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制することができる。
【0064】
なお、第6の配置例は、第1の配置例における測距部10A及び測距部10Bの配置を入れ替えた配置例と捉えることもできる。つまり、第6の配置例は、第1の配置例と実質的に同一である。
【0065】
[1-5.複数の測距部の走査タイミングを分散するための構成]
本実施形態の制御部20は、上述したように誤測距を抑制するだけでなく、複数の測距部の走査タイミングを分散するように、各測距部を制御する。具体的には、制御部20は、偏向部材13の角速度を変化させるタイミングが各測距部で互いに異なるように、各測距部を制御する。また、制御部20は、偏向部材13の角速度が最も速い期間の少なくとも一部が各測距部で互いに重ならないように、各測距部を制御する。なお、以下では、測距部が2つの場合を前提に説明しているが、測距部が3つ以上の場合も同様である。
【0066】
[1-5-1.複数の測距部の切替タイミングを異ならせるための構成]
本実施形態の測距処理においては、測距期間と非測距期間とが交互に繰り返される。そのため、
図30に示すように、測距部10Aの偏向部材13の回転角度θ
A及び測距部1
0Bの偏向部材13の回転角度θ
Bは、測距期間において上昇し、非測距期間において下
降する。回転角度θ
Bは、基準方位D
Bへレーザ光が照射される回転角度を0とする角度で表される。制御部20が偏向部材13の角速度を変化させるタイミング、換言すれば、測距期間と非測距期間とが切り替わるタイミングである切替タイミングでは、測距部10Aの駆動部12に流れる電流の値I
A及び測距部10Bの駆動部12に流れる電流の値I
Bが、瞬間的に大きくなる。このため、
図30に示すように、複数の測距部の切替タイミングが重なり、瞬時電流のピークが重なると、車両100全体での瞬時電流が増加し、受光部14により出力される電気信号等にノイズが発生する原因になる。また、車両100全体
の電源設計においても、重なった瞬時電流をベースに冗長な設計がされることになる。
【0067】
そこで、
図31に示すように、制御部20は、切替タイミングが複数の測距部で互いに異なるように、つまり、切替タイミングがずれるように、複数の測距部を制御する。このような制御により、瞬時電流のピークが重なりにくくなり、車両100全体での瞬時電流の増加が抑制される。
【0068】
[1-5-2.偏向部材の角速度が最も速い期間を重なりにくくするための構成]
偏向部材13の角速度が最も速い期間には、測距部10Aの駆動部12に流れる電流の値I
A及び測距部10Bの駆動部12に流れる電流の値I
Bが他の期間よりも大きくなる。
図30に示すように、本実施形態では、非測距期間における偏向部材13の角速度が測距角速度よりも速くなるように測距部が制御される。つまり、本実施形態では、非測距期間が、偏向部材13の角速度が最も速い期間である。この場合、非測距期間においては、測距部10Aの駆動部12に流れる電流の値I
A及び測距部10Bの駆動部12に流れる電
流の値I
Bが、測距期間よりも大きくなる。このため、例えば
図30に示すように、複数
の測距部の非測距期間が重なると、車両100全体での電流が増加し、受光部14により出力される電気信号等にノイズが発生する原因になる。また、車両100全体の電源設計においても、重なった瞬時電流をベースに冗長な設計がされることになる。
【0069】
そこで、
図31に示すように、本実施形態では、制御部20は、非測距期間の少なくとも一部が複数の測距部で互いに重ならないように、複数の測距部を制御する。例えば、2つの測距部で非測距期間の長さが互いに異なる場合、長い方の非測距期間の少なくとも一部が短い方の非測距期間と重ならないことは必然である。したがって、このような例では、短い方の非測距期間の少なくとも一部も長い方の非測距期間と重ならないことを意味する。このような制御により、車両100全体での電流の増加が抑制される。
【0070】
[1-6.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)測距装置1は、複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉しないように、各測距部による測距処理を実行する。このような構成によれば、測距領域の一部が互いに重複する複数の測距部により物体との距離が誤って測定されることを抑制することができる。特に、測距装置1は、各測距部による測距処理を並行して実行するため、各測距部による測距処理が並行しないように順に実行される構成と比較して、全ての測距領域についての測距処理を完了するまでに要する時間を短くできる。
【0071】
(1b)測距装置1は、測距部10A又は測距部10Bが備える偏向部材13の回転軸の方向から見た平面視で、測距部10Aにより照射されるレーザ光の照射方位と、測距部10Bにより照射されるレーザ光の照射方位と、の共通の基準方位DAに対する角度の大
小関係が逆転しないように、測距部10Aによる測距処理と測距部10による測距処理とを実行させる。このような構成によれば、複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉することを抑制することができる。
【0072】
(1c)測距装置1は、測距周期が同じになるように、各測距部による測距処理を実行させる。このような構成によれば、例えばレーザ光の走査を開始するタイミングを制御することにより、測距部10Aにより照射されるレーザ光の照射方位と、測距部10Bにより照射されるレーザ光の照射方位と、の共通の基準方位DAに対する角度の大小関係が逆
転しないように各測距部による測距周期の位相差を設定することができる。
【0073】
(1d)測距周期には、非測距期間が含まれる。このような構成によれば、複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉することを抑制しつつ、例え
ばレーザ光の走査を開始するタイミングといったパラメータの設計の自由度を高めることができる。
【0074】
(1e)測距装置1は、測距領域の一部が互いに重複するように配置された2つの測距部のうち、走査方向側に配置された測距部の偏向部材13の回転角度を、走査方向側とは反対側に配置された測距部の偏向部材13の回転角度が上回らないように、各測距部がレーザ光の走査を開始するタイミングを制御する。このような構成によれば、複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉することを抑制することができる。
【0075】
(1f)測距装置1は、切替タイミングが複数の測距部で互いに異なるように、複数の
測距部を制御する。このような構成によれば、瞬時電流のピークの重なりを抑制し、車両100全体での瞬時電流の増加を抑制することができる。
【0076】
(1g)測距装置1は、偏向部材13の角速度が最も速い期間の少なくとも一部が複数の測距部で互いに重ならないように、複数の測距部を制御する。このような構成によれば、瞬時電流のピークの重なりを抑制し、車両100全体での電流の増加を抑制することができる。
【0077】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する本明細書中の記載及び図面を参照する。
【0078】
第2実施形態では、第1実施形態と同様、制御部20は、走査方向及び測距周期がそれぞれ同じになるように、各測距部による測距処理を実行させる。ただし、第2実施形態では、制御部20は、測距角速度が異なるように各測距部による測距処理を実行させる。
【0079】
第2実施形態では、
図9に示すように測距部10A及び測距部10Bが配置されている。ただし、測距部10Aの測距角速度ω
Aよりも測距部10Bの測距角速度ω
Bの方が大きい。測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉することを抑制するために、
図32に示すように、共測距状態となる期間TAにおいて、回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aを上回らないようにする必要がある。
図32において、測距角速度ω
A及び測距角速度ω
Bは、測距部10A及び測距部10Bそれぞれの測距期間におけるθ
A及びθ
B_Aの値を示す直線の傾きで示される。回転角度θ
Aと回転角度θ
B_Aとの差は、測距部10Aの測距角速度ω
Aに対する測距部10Bの測距角速度ω
Bが速いほど、急速に縮まる。加えて、共測距状態となる期間TAが長いほど回転角度θ
Aと回
転角度θ
B_Aとの差が縮まっていく。
【0080】
そこで、制御部20は、共測距状態となる期間TAが、共測距状態の開始時における測距部10Aと測距部10Bとの照射方位のなす角度を共測距状態における第2の測距部と第1の測距部との測距角速度の差分で割った値以下となるように、測距部10Aの測距角速度ωA及び測距部10Bの測距角速度ωBを制御する。
【0081】
また、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを遅くしすぎることにより、測距部10Bの測距期間が終了する前に測距部10Aの測距期間が開始すると、回転角度θB_Aが回転角度θAを上回ってしまう。さらに、測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングを早くしすぎることにより、測距部10Aの測距期間が終了する前に測距部10Bの測距期間が開始しても、回転角度θB_Aが回転角度θAを上回ってしまう。
【0082】
そこで、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングが、測距部10Aの非測距期間を表す値を下限値とし、測距部10Bの非測距期間を表す値を上限値とする範囲内であるように制御する。つまり、制御部20は、測距部10Aがレーザ光の走査を開始するタイミングに対する測距部10Bがレーザ光の走査を開始するタイミングtを、α≦t≦βの範囲に制御する。
【0083】
例えば測距部10A及び測距部10Bでレーザ光の走査を開始するタイミングを同時にする場合、制御部20は、測距角速度ωA及び測距角速度ωBの関係がTA≦|γB_A-
γA|/(ωB-ωA)となるように、測距部10Aの測距角速度ωA及び測距部10B
の測距角速度ωBを制御する。
【0084】
これにより、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内で干渉することを抑制することができる。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0085】
(3a)上記各実施形態では、少なくとも走査方向及び測距周期がそれぞれ同じになるように、各測距部による測距処理が実行される構成を例示したが、これらのうち少なくとも1つが異なっていてもよい。例えば、測距周期が異なっていてもよい。
【0086】
(3b)上記各実施形態では、制御部20が、各測距部それぞれの動作を制御する機能及び各測距部による測距処理を統括的に制御する機能の両方を有する構成を例示したが、制御部20の構成はこれに限定されるものではない。例えば、各測距部それぞれの動作を制御する機能を、各測距部に分散させてもよい。例えばこの場合、各測距部による測距処理を統括的に制御する機能は、各測距部がそれぞれ備える制御部間において通信することで実現されてもよいし、それらの制御部とは別の制御部が制御を実行することで実現されてもよい。
【0087】
(3c)上記各実施形態では、各測距部は、走査方向に並んで配置されていたが、
図33に示すように、測距部10A及び測距部10Bが、偏向部材13の回転軸の方向に沿って並んで配置されてもよい。この場合、各測距部は、隣に配置される他の測距部と測距領域の一部が偏向部材13の回転軸の方向で互いに重複するように配置される。
図33に示す例では、各測距部は、断面形状Fが走査方向と垂直な方向に沿って長いレーザ光を走査する。制御部20は、複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域の重複する部分で干渉しないように、各測距部による測距処理を実行させる。例えば、走査方向、測距周期及び測距角速度がそれぞれ同じである場合には、回転角度θ
Aと回転角度θ
B_Aとを異ならせればよい。具体的には、測距期間においてレーザ光が走査される角度範囲が同じである場合、走査タイミングをずらせばよい。また、測距期間においてレーザ光が走査される角度範囲が異なる場合、走査タイミングが一致しない範囲内で走査タイミングを調整すればよい。
【0088】
(3d)上記第2実施形態では、測距部10A及び測距部10Bのうち測距部10Bが測距部10Aの走査方向側とは反対側に配置され、測距角速度ωAよりも測距角速度ωBが大きい構成を例示したが、各測距部の配置及び測距角速度の大小関係はこれに限定されるものではない。例えば、測距部10A及び測距部10Bのうち測距部10Bは測距部10Aの走査方向側に配置されてもよいし、測距角速度ωBよりも測距角速度ωAの方が大きくてもよい。
【0089】
(3e)上記各実施形態では、例えば
図12に示すように、駆動部12が、回転角度の変化を示す波形が共に周期性のある波形となるように測距部10A及び測距部10Bの偏向部材13を回転移動させる構成を例示した。具体的には、波形の種類が、測距期間と非測距期間とが交互に繰り返される三角波となるように回転移動させる構成を例示したが、偏向部材13の回転移動はこれに限定されるものではない。例えば
図34に示すように、駆動部12は、回転角度の変化を示す波形の種類が正弦波となるように偏向部材13を回転移動させてもよい。この例では、測距周期の全体が測距期間である。例えば、測距周期を同じにする場合、測距部10A及び測距部10Bの偏向部材13の回転角度の変化を示す正弦波はそれぞれ、下式(1)及び下式(2)で表される。
【0090】
【0091】
ここで、ωは測距部10A及び測距部10Bの偏向部材13の角速度ωであり、tは時間であり、θはθ
A及びθ
B_Aの位相差θである。
図9に示すように測距部10A及び測距部10Bが配置される場合、測距部10A及び測距部10Bにより照射されるレーザ光の通過領域が干渉することを抑制するためには、共測距状態において回転角度θ
B_Aが回転角度θ
Aの値が上回らなければよい。したがって、下式(3)の関係が満たされればよく、ゆえに、下式(4)の関係が満たされるようにθが設定されればよい。
【0092】
【0093】
また例えば
図35に示すように、駆動部12は、回転角度の変化を示す波形の種類が互いに異なるように測距部10A及び測距部10Bの偏向部材13を回転移動させてもよいし、
図36に示すように、周期性が無いように回転移動させてもよい。
【0094】
(3f)上記各実施形態では、駆動部12は、偏向部材13を揺動させる構成であるが、偏向部材13を回転させる構成でもよい。
(3g)上記各実施形態では、複数の測距部により照射されるレーザ光の通過領域が測距領域内のみならず測距領域外においても干渉しないように制御が実行される構成を例示したが、レーザ光の通過領域が測距領域外で干渉することは許容してもよい。
【0095】
(3h)上記各実施形態では、3つの測距部がそれぞれ車両100の周囲の前方に測距
領域を持つように配置される構成を例示したが、測距部の数及び配置はこれに限定されるものではない。例えば、測距部の数は2つ又は4つ以上でもよく、また、車両100の周囲の後方に測距領域を持つように各測距部が配置されてもよい。
【0096】
(3i)上記各実施形態では、車両100に搭載される測距装置1を例示したが、測距装置の用途はこれに限定されない。例えば、車両以外の移動体、具体的にはドローンなどの飛行体に測距装置が搭載されてもよい。
【0097】
(3j)上記各実施形態では、駆動部12がモータである構成を例示したが、駆動部12の構成はこれに限定されるものではない。例えば、駆動部12はMEMSでもよい。MEMSとは、Micro-electrical-mechanical systemの略である。
【0098】
(3k)上記各実施形態では、偏向部材13としてミラーを用いる構成を例示したが、レーザ光を偏向可能な他の偏向部材、例えばプリズムが用いられてもよい。
(3l)
図3に示した測距部の構成は一例であり、他の構成であってもよい。例えば、投光部11からのレーザ光がハーフミラーを透過して偏向部材13へ照射され、偏向部材13からの反射光については当該ハーフミラーで反射されて受光部14で受光されるように、測距部が構成されていてもよい。
【0099】
(3m)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…測距装置、10A,10B…測距部、10F…前測距部、10L…左測距部、10R…右測距部、11…投光部、12…駆動部、13…偏向部材、14…受光部、20…制御部。