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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G01R15/00 500
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020130993
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027164
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章人
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-018759(JP,A)
【文献】特表2013-536424(JP,A)
【文献】特開2017-208474(JP,A)
【文献】特開2015-145813(JP,A)
【文献】特開2008-039571(JP,A)
【文献】特開2020-145365(JP,A)
【文献】特開2018-160675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャント抵抗(20)を有する電流検出装置であって、
一面(101a、102a)および前記一面と反対側の他面(101b、102b)を有する平板状とされ、前記一面側に端子部(31、32)が備えられた第1部材(101)および第2部材(102)を有するバスバー(10)と、
一面(20a)および前記一面と反対側の他面(20b)を有する平板状とされ、前記第1部材と前記第2部材との間に、当該他面が前記第1部材および前記第2部材の他面と平行となる状態で配置されると共に、前記バスバーより抵抗温度係数の小さい材料で構成される前記シャント抵抗と、を有し、
前記第1部材および前記第2部材には、前記一面のうちの前記端子部を挟んで前記シャント抵抗と反対側に位置する部分に溝部(50)が形成されており、
前記シャント抵抗は、前記シャント抵抗の一面が、前記第1部材の一面および前記第2部材の一面よりも凹んだ状態となっており、
前記溝部は、前記一面に対する法線方向において、前記端子部を通り、前記第1部材、前記第2部材、前記シャント抵抗の配列方向と交差する方向であって、前記第1部材および前記第2部材の一面と平行な方向に延びた仮想線(K)と交差するように延設されており、
さらに、前記溝部は、前記第1部材および前記第2部材のうちの前記シャント抵抗側の端部まで延設されている電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗を有する電流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャント抵抗を有する電流検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この電流検出装置では、平板状の第1部材および第2部材を有するバスバーを有し、シャント抵抗を挟むように第1部材および第2部材が配置されている。そして、第1部材および第2部材には、外部回路と接続される端子部がそれぞれ備えられている。なお、この電流検出装置では、第1部材および第2部材に突出部が形成されており、各端子部は、突出部に備えられている。このため、この電流検出装置では、端子部とシャント抵抗との間に段差が形成された状態となっている。また、シャント抵抗は、バスバーよりも抵抗温度係数の小さい材料で構成されている。
【0003】
このような電流検出装置では、シャント抵抗と端子部とを結ぶ経路に電流が流れ難くなる。つまり、シャント抵抗と端子部との間に位置する抵抗温度係数の大きい第1部材および第2部材を電流が流れ難くなる。このため、上記電流検出装置では、シャント抵抗と端子部との間の電位差を小さくできる。したがって、抵抗温度係数の小さいシャント抵抗を挟むように配置された端子部間の電圧を測定することにより、電流検出装置に流れる電流を高精度に検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第2474008号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような電流検出装置では、第1部材および第2部材に突出部を形成することによって大型化し易い。特に、このような電流検出装置を車両に搭載する場合には、搭載スペースの縮小を図ることができるように、電流検出装置を小型化することが望まれる。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、大型化することを抑制しつつ、検出精度の向上を図ることができる電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1では、シャント抵抗(20)を有する電流検出装置
であって、一面(101a、102a)および一面と反対側の他面(101b、102b
)を有する平板状とされ、一面側に端子部(31、32)が備えられた第1部材(101
)および第2部材(102)を有するバスバー(10)と、一面(20a)および一面と
反対側の他面(20b)を有する平板状とされ、第1部材と第2部材との間に、当該他面
が第1部材および第2部材の他面と平行となる状態で配置されると共に、バスバーより抵
抗温度係数の小さい材料で構成されるシャント抵抗と、を有し、第1部材および第2部材
には、一面のうちの端子部を挟んでシャント抵抗と反対側に位置する部分に溝部(50)
が形成されており、シャント抵抗は、シャント抵抗の一面が、第1部材の一面および第2
部材の一面よりも凹んだ状態となっており、溝部は、一面に対する法線方向において、端子部を通り、第1部材、第2部材、シャント抵抗の配列方向と交差する方向であって、第1部材および第2部材の一面と平行な方向に延びた仮想線(K)と交差するように延設されており、さらに、溝部は、第1部材および第2部材のうちのシャント抵抗側の端部まで延設されている
【0008】
これによれば、溝部を形成することにより、シャント抵抗と端子部との間を繋ぐ経路に電流が流れ難くなる。つまり、シャント抵抗と端子部との間に位置する抵抗温度係数の大きい第1部材および第2部材を電流が流れ難くなる。このため、上記電流検出装置では、シャント抵抗と端子部との間の電位差を小さくできる。したがって、抵抗温度係数の小さいシャント抵抗を挟むように配置された端子部間の電圧を測定することにより、電流検出装置に流れる電流を高精度に検出できる。
【0009】
また、溝部を形成することで検出精度が低下することを抑制できるため、大型化することも抑制できる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における電流検出装置の斜視図である。
図2】第1実施形態における電流検出装置の平面図である。
図3図2中のIII-III線に沿った断面図である。
図4】電流検出装置に流れる電流のシミュレーション結果を示す図である。
図5A】第1実施形態の変形例における電流検出装置の平面図である。
図5B】第1実施形態の変形例における電流検出装置の平面図である。
図6】第2実施形態における電流検出装置の平面図である。
図7A】第2実施形態の変形例における電流検出装置の平面図である。
図7B】第2実施形態の変形例における電流検出装置の平面図である。
図7C】第2実施形態の変形例における電流検出装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の電流検出装置は、電気自動車等を駆動するモータ電流等を検出するのに利用されると好適である。
【0014】
本実施形態の電流検出装置は、図1図3に示されるように、バスバー10、シャント抵抗20、一対の端子部31、32を有する構成とされている。バスバー10は、一面101aおよび一面101aと反対側の他面101bを有する平板状とされた第1部材101と、一面102aおよび一面102aと反対側の他面102bを有する平板状とされた第2部材102とを有している。なお、第1部材101および第2部材102は、例えば、銅等で構成されており、厚さが等しくされている。
【0015】
シャント抵抗20は、一面20aおよび一面20aと反対側の他面20bを有する平板状とされ、バスバー10よりも抵抗温度係数が小さいマンガニン(登録商標)等で構成されている。また、本実施形態では、シャント抵抗20は、厚さが第1部材101および第2部材102の厚さよりも薄くされている。
【0016】
そして、シャント抵抗20は、第1部材101および第2部材102との間に配置され、溶接等によって第1部材101および第2部材102と一体化されている。具体的には、シャント抵抗20、第1部材101、および第2部材102は、それぞれの他面20b、101b、102bが同一平面上に位置するように一体化されている。このため、シャント抵抗20の一面20aは、第1部材101の一面101aおよび第2部材102の一面102aよりも凹んだ状態となっている。つまり、本実施形態の電流検出装置は、シャント抵抗20が備えられている部分に凹部40が形成された状態となっている。
【0017】
端子部31、32は、銅等で構成された棒状とされており、シャント抵抗20を挟むように、第1部材101の一面101aおよび第2部材102の一面102aにそれぞれ備えられている。なお、端子部31、32は、溶接、リベット、はんだづけ等によって第1部材101および第2部材102に備えられている。
【0018】
以上が本実施形態における電流検出装置の基本的な構成である。このような電流検出装置は、端子部31、32が外部回路と接続され、端子部31、32間の電圧に基づいて流れる電流が検出される。
【0019】
そして、本実施形態の電流検出装置では、第1部材101および第2部材102に溝部50が形成されている。ここで、以下では、第1部材101、第2部材102、シャント抵抗20の配列方向をX方向とし、X方向と直交すると共に第1部材101等の面方向と平行となる方向をY方向とする。
【0020】
そして、本実施形態の溝部50は、第1部材101および第2部材102の一面101a、102aにおいて、端子部31、32を挟んでシャント抵抗20と反対側となる位置に、Y方向に沿って形成されている。なお、本実施形態の溝部50は、例えば、プレス成型等によって形成され、断面形状が三角形状とされている。但し、溝部50の断面形状は、これに限定されるものではなく、矩形状とされていてもよい。
【0021】
また、本実施形態の溝部50は、第1部材101および第2部材102を貫通するようには形成されていない。つまり、溝部50は、第1部材101および第2部材102内に底面を有するように構成されている。
【0022】
以上説明した本実施形態によれば、第1部材101の一面101aおよび第2部材102の一面102aにおいて、端子部31、32を挟んでシャント抵抗20と反対側に溝部50が形成されている。このため、電流検出装置に電流が流れる際、図3および図4に示されるように、端子部31、32とシャント抵抗20との間を繋ぐ経路に電流が流れ難くなる。つまり、端子部31、32とシャント抵抗20との間に位置する抵抗温度係数の大きい第1部材101および第2部材102を電流が流れ難くなる。このため、このような電流検出装置では、端子部31、32とシャント抵抗20との間に電位差が発生することを抑制でき、検出精度が低下することを抑制できる。
【0023】
また、本実施形態では、第1部材101および第2部材102に溝部50を形成することにより、検出精度が低下することを抑制するようにしている。このため、電流検出装置が大型化することも抑制できる。また、溝部50は、第1部材101および第2部材102に突出部等を形成する場合と比較して、プレス成型等によって容易に形成されるため、製造工程が複雑化したり、歩留まりが低くなることも抑制できる。
【0024】
さらに、本実施形態では、シャント抵抗20の一面20aが凹んで配置された構成とされており、端子部31、32は、第1部材101および第2部材102の一面101a、102a側に配置されている。このため、シャント抵抗20の一面20aが第1部材101および第2部材102の一面101a、102aと同一面上に位置する場合と比較して、第1部材101および第2部材102のうちの溝部50が形成される部分と、シャント抵抗20との間で電流が第1部材101および第2部材102の厚さ方向に広がることが抑制される。つまり、第1部材101および第2部材102のうちの端子部31、32が備えられる部分の近傍に電流が流れることをさらに抑制できる。したがって、さらに検出精度が低下することを抑制できる。
【0025】
また、溝部50は、第1部材101および第2部材102を貫通するようには形成されていない。このため、溝部50が第1部材101および第2部材102を貫通するように形成されている(すなわち、貫通孔が形成されている)場合と比較して、第1部材101および第2部材102の電流が流れる範囲が小さくなることを抑制でき、発熱が大きくなることを抑制できる。
【0026】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態の変形例について説明する。例えば、図5Aに示されるように、溝部50は、第1部材101および第2部材102に2本ずつ形成されていてもよい。また、特に図示しないが、溝部50は、第1部材101および第2部材102に3本ずつ形成されていてもよい。さらに、溝部50は、第1部材101に形成される本数と第2部材102に形成される本数とが異なっていてもよい。
【0027】
また、図5Bに示されるように、溝部50は、上記第1実施形態と比較して、X方向に沿った長さ(すなわち、幅)が長くされていてもよい。このように溝部50を形成しても、溝部50が形成されていることによって端子部31、32近傍に電流が流れ難くなるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、溝部50の形状を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
本実施形態では、図6に示されるように、溝部50は、第1部材101等の面方向に対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、端子部31、32を通り、Y方向に延びた仮想線Kと交差するように延設されている。なお、第1部材101等の面方向に対する法線方向とは、第1部材101等の面方向に対する法線方向から視たときということもできる。
【0030】
本実施形態の溝部50は、仮想線Kと交差する部分を有するように、略V字状とされている。また、本実施形態の溝部50は、第1部材101および第2部材102におけるシャント抵抗20側の端部に達するように形成されている。
【0031】
これによれば、上記第1実施形態と比較すると、第1部材101および第2部材102の端子部31、32が備えられる部分に対してY方向から回り込む電流を少なくできる。したがって、さらに検出精度が低下することを抑制できる。
【0032】
(上記第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態において、図7Aに示されるように、溝部50は、法線方向において、略U字状とされていてもよい。なお、図7Aでは、溝部50が2つの角部を有する略U字状とされているが、溝部50は、角部を有しない湾曲部のみで構成された略U字状とされていてもよい。
【0033】
また、図7Bおよび図7Cに示されるように、溝部50は、法線方向において、第1部材101および第2部材102におけるシャント抵抗20側の端部に達しないように形成されていてもよい。つまり、溝部50は、第1部材101および第2部材102内で終端するように形成されていてもよい。
【0034】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0035】
例えば、上記各実施形態において、溝部50は、第1部材101および第2部材102の一方にのみ形成されていてもよい。また、上記各実施形態において、シャント抵抗20は、第1部材101の一面101aおよび第2部材102の102aと同一平面上に位置するように配置され、他面20b側が凹んだ状態とされていてもよい。さらに、シャント抵抗20は、厚さが第1部材101および第2部材102と同じ厚さとされていてもよい。これらのような電流検出装置としても、溝部50が形成されていることにより、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、上記各実施形態において、端子部31、32の形状は適宜変更可能である。例えば、第1部材101および第2部材102の所定領域を端子部31、32とし、当該端子部31、32をボンディングワイヤ等で外部回路と接続するようにしてもよいし、当該端子部31、32をはんだ等で外部回路としてのプリント基板と接続するようにしてもよい。つまり、端子部31、32は、第1部材101および第2部材102の一部で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 バスバー
20 シャント抵抗
31、32 端子部
50 溝部
101 第1部材
101a 一面
101b 他面
102 第2部材
102a 一面
102b 他面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C