(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/10 20060101AFI20241008BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20241008BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F25B9/00 Z
F25B9/00 311
F28F1/40 J
(21)【出願番号】P 2020133028
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 智行
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】河内 達磨
(72)【発明者】
【氏名】小原 邦男
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-057736(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F25B 9/00 - 11/04
F28F 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に取り付けられ、前記配管内の流体と熱交換を行う熱交換器であって、
円筒部と、
前記円筒部の内部に配された互いに平行で板状の複数のフィンであって、前記円筒部の中心軸と平行に配されている複数のフィンと、を備え、
前記複数のフィンのそれぞれの一端は、前記円筒部の内面に固定されており、
前記複数のフィンは、
前記円筒部の前記中心軸を挟んだ両側の前記内面から、互いに他方の前記内面に向かって伸びており、
前記複数のフィンに含まれる一つのフィンの
他端と、前記他端に対して、前記一端から前記他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある
他のフィンとが、前記熱交換器の使用において想定されている最大の温度まで前記複数のフィンの温度が上昇した際に、接触しない間隔を有するように、設けられて
おり、
向かい合う一対のフィンの端同士の前記間隔の、前記向かい合う一対のフィンの長さの合計に対する割合は、前記最大の温度と、前記熱交換器が配置される環境における前記熱交換器を使用していないときの温度と、の差に応じて定められた値である、熱交換器。
【請求項2】
請求項
1に記載の熱交換器であって、
前記複数のフィンは、前記複数のフィンに含まれる一つのフィンの前記他端と、前記他端に対して、前記一端から前記他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成と、の間隔が、前記一つのフィンが長いほど大きくなるように、構成されている、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管内を流通する流体との間で熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管内を流通する流体との間で熱交換を行う熱交換器が存在する。特許文献1においては、加熱器内において、互いに平行な複数の内部フィンが、管内で両端を支持されて管の軸に沿って並べられている加熱器が記載されている(特許文献1の
図5参照)。また、特許文献1においては、外管内壁と外管外壁との間に複数の内部フィンが管の中心軸に向かって放射状に配置された加熱器が記載されている(特許文献1の
図2参照)。この態様においては、内部フィンは、管の中心軸近傍に位置する部分を有さない。このため、内部フィンには、管の壁からの距離が長いために外部からの熱が伝導しにくい部分が、ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-145006号公報
【文献】国際公開第2020/045675号
【文献】特開2010-071559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の
図5に示されるような、加熱器内に、互いに平行な複数の内部フィンが、管内で両端を支持されて管の軸に沿って並べられている態様においては、内部フィンの温度が上昇すると、フィンが熱膨張し、管内で湾曲する。その結果、隣り合う内部フィン同士が接触して、管の一部を塞ぐ。このため、配管内の流体の流通を阻害してしまう。よって、熱交換の効率が低下する。
【0005】
また、特許文献1の
図2に示されるような、外管内壁と外管外壁との間に複数の内部フィンが放射状に配置された態様においては、外周近傍の部分においては、内側の部分に比べてフィン同士の間隔が広くなる。このため、フィンが平行に配されている態様に比べて、管内におけるフィンの配置の密度が低くなる。よって、効率的に熱交換を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
配管に取り付けられ、前記配管内の流体と熱交換を行う熱交換器であって、
円筒部と、
前記円筒部の内部に配された互いに平行で板状の複数のフィンであって、前記円筒部の中心軸と平行に配されている複数のフィンと、を備え、
前記複数のフィンのそれぞれの一端は、前記円筒部の内面に固定されており、
前記複数のフィンは、
前記円筒部の前記中心軸を挟んだ両側の前記内面から、互いに他方の前記内面に向かって伸びており、
前記複数のフィンに含まれる一つのフィンの他端と、前記他端に対して、前記一端から前記他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある他のフィンとが、前記熱交換器の使用において想定されている最大の温度まで前記複数のフィンの温度が上昇した際に、接触しない間隔を有するように、設けられており、
向かい合う一対のフィンの端同士の前記間隔の、前記向かい合う一対のフィンの長さの合計に対する割合は、前記最大の温度と、前記熱交換器が配置される環境における前記熱交換器を使用していないときの温度と、の差に応じて定められた値である、熱交換器。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、配管に取り付けられ、前記配管内の流体と熱交換を行う熱交換器が提供される。この熱交換器は、円筒部と、前記円筒部の内部に配された互いに平行で板状の複数のフィンであって、前記円筒部の中心軸と平行に配されている複数のフィンと、を備える。前記複数のフィンのそれぞれの一端は、前記円筒部の内面に固定されており、前記複数のフィンのそれぞれの他端は、他の構成に接続されていない。
このような態様において、板状の各フィンは、他端が固定されていない。このため、フィンの温度が上昇してフィンが熱膨張しても、フィンが湾曲しにくい。よって、各フィンの両端が固定されている態様に比べて、フィンが加熱された際に、隣り合うフィン同士が接触して、フィン間の流体の流通が阻害される可能性が低い。
また、このような態様において、板状の各フィンは、平行に配されている。このため、複数のフィンが放射状に配されている態様に比べて、高密度に複数のフィンを構成することができる。その結果、熱交換の効率が高い。
(2)上記形態の熱交換器において、前記複数のフィンは、前記円筒部の前記中心軸を挟んだ両側の前記内面から、互いに他方の前記内面に向かって伸びている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、すべてのフィンが、円筒部の中心軸に対する一方の側から、他方の側に向かって伸びる態様に比べて、円筒部内において、少ない偏りで流体と熱交換を行うことができる。
(3)上記形態の熱交換器において、前記複数のフィンは、前記複数のフィンに含まれる一つのフィンの前記他端と、前記他端に対して、前記一端から前記他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成とが、前記熱交換器の使用において想定されている最大の温度まで前記複数のフィンの温度が上昇した際に、接触しない間隔を有するように、設けられている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、熱交換器が使用される状態において、向かい合うフィンの先端同士が接触して、フィンが湾曲することがない。このため、熱膨張によるフィン同士の接触のために、隣り合うフィン間を流れる流体の流通が阻害されることがない。
(4)上記形態の熱交換器において、前記複数のフィンは、前記複数のフィンに含まれる一つのフィンの前記他端と、前記他端に対して、前記一端から前記他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成と、の間隔が、前記一つのフィンが長いほど大きくなるように、構成されている、態様とすることもできる。
フィンが長いほど、同程度の温度上昇があった場合のフィンの伸び量も大きくなる。このため、上記のような態様とすれば、複数のフィンのそれぞれについて、熱膨張によって他の構成と接触しにくいように、構成することができる。
【0008】
本開示は、熱交換器以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、熱交換器を備えた原動機、または熱交換器を備えたヒートポンプ、またはそれらを備えた熱音響装置等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の熱音響装置TAの概略構成を示す説明図である。
【
図3】原動機PMの第1熱交換器40の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】第1熱交換器40のフィンモジュール44の平面図である。
【
図5】最高温度Tmaxまで複数のフィン48の温度が上昇した場合のフィンモジュール44の平面図である。
【
図6】第2実施形態におけるフィンモジュール45の平面図である。
【
図7】最高温度Tmaxまで複数のフィン48の温度が上昇した場合のフィンモジュール45の平面図である。
【
図8】他の実施形態2におけるフィンモジュール41の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A1.熱音響装置TAの構成:
図1は、第1実施形態の熱音響装置TAの概略構成を示す説明図である。なお、
図1は、熱音響装置TAの各構成要素の形状を正確に示すものではない。熱音響装置TAは、ループ管型の熱音響装置である。熱音響装置TAは、熱源HSと冷却対象COとに接続されている。熱音響装置TAは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、冷却対象COを冷却することができる。
【0011】
熱音響装置TAは、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1,LT2と、を備える。原動機PMの一端とヒートポンプHPの一端とは、ループ管LT1によって接続されている。原動機PMの他端とヒートポンプHPの他端とは、ループ管LT2によって接続されている。その結果、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1,LT2とは、輪状の配管構造PAを構成している。この輪状の配管構造PA内には、流体FL1が満たされている。本実施形態において、流体FL1は、空気である。輪状の配管構造PAは、内部の流体FL1が、輪状の配管構造PA内を流通可能であるように構成されている。
【0012】
原動機PMは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、音波を発生させる(
図1の下段左部参照)。原動機PMは、第1熱交換器40と、第2熱交換器20と、蓄熱器30と、を備える。
【0013】
図2は、原動機PMの概略構成を示す説明図である。
図3は、原動機PMの第1熱交換器40の概略構成を示す斜視図である。なお、
図2および
図3は、原動機PMの各構成要素の形状を正確に示すものではない。
【0014】
第1熱交換器40は、原動機PMの一端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されている(
図2の下段参照)。第1熱交換器40は、さらに、熱源HSに接続されている。本実施形態において、熱源HSは、抵抗加熱方式の棒状のヒータである(
図3の下段参照)。第1熱交換器40は、熱源HSとしての8本の棒状のヒータに接続されている。第1熱交換器40は、熱源HSから熱を供給されて、配管構造PA内の流体FL1であって、第1熱交換器40に接する流体FL1に、熱を付与する。
【0015】
第1熱交換器40は、伝熱リング43と、フィンモジュール44と、を備える(
図2の下段および
図3参照)。伝熱リング43は、熱源HSに接続されており、熱源HSから熱を受け取る。フィンモジュール44は、伝熱リング43の中央の穴に配されている。フィンモジュール44は、多数のフィンを備えている。フィンモジュール44における隣り合うフィンの間隙は、流体FL1を流通させる流路42を構成する。フィンモジュール44は、伝熱リング43から熱を受け取って、流路42を流れる流体FL1に熱を与える。
【0016】
第2熱交換器20は、原動機PMの他端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されている(
図2の上段参照)。第2熱交換器20は、図示しないチラーを備える。第2熱交換器20は、チラーによって温度を一定に保たれている。第2熱交換器20は、配管構造PA内の流体FL1であって、第2熱交換器20に接する流体FL1を、あらかじめ定められた範囲の温度に制御する。
【0017】
第2熱交換器20は、ジャケット23と、フィンモジュール24と、を備える(
図2の上段参照)。ジャケット23は、流体FL2を流通させる流路26を構成する環状の構造物である。ジャケット23は、チラーに接続され、チラーによって流体FL2を流通される。フィンモジュール24は、ジャケット23の中央の穴に配されている。フィンモジュール24は、多数のフィンを備えている。フィンモジュール24における隣り合うフィンの間隙は、流体FL1を流通させる流路22を構成する。フィンモジュール24は、ジャケット23との間で熱交換を行う。チラーによる流体FL2の流通によって、ジャケット23およびフィンモジュール24は、あらかじめ定められた範囲の温度に制御される。その結果、流路22を流れる流体FL1は、あらかじめ定められた範囲の温度に制御される。
【0018】
蓄熱器30は、第1熱交換器40と第2熱交換器20との間の部位に設置されている(
図1の下段左部および
図2参照)。蓄熱器30は、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、流体FL1を流通させる流路32を構成する。蓄熱器30は、流体FL1を流通可能であるように第1熱交換器40および第2熱交換器20と接続されている。蓄熱器30は、温度勾配を形成されて、ループ管LT1内に音波を発生させる。
【0019】
原動機PMは、以下のように動作する。第1熱交換器40によって加熱された流体FL1が、蓄熱器30の一端38およびその近傍の部分に熱を与えることにより、蓄熱器30の一端38の近傍が高温となる。第2熱交換器20によって一定の温度に保たれている流体FL1が、蓄熱器30の他端39およびその近傍の部分から熱を奪うことにより、蓄熱器30の他端39の近傍が、一端38の近傍に対して低温となる。その結果、蓄熱器30に、温度勾配が形成される。すると、蓄熱器30は、熱音響自励振動を起こし、流路32内で定常波を発生させる。蓄熱器30が発生させた定常波の音波は、ループ管LT1内の流体FL1を介して、原動機PMの一端からヒートポンプHPの一端に伝えられる(
図1の矢印K1参照)。
【0020】
ヒートポンプHPは、原動機PMから音波を供給されて、冷却対象COを冷却する(
図1の上段右部参照)。ヒートポンプHPは、原動機PMと略同様の構成を有する。ヒートポンプHPは、第3熱交換器90と、第4熱交換器70と、蓄熱器80と、を備える。第4熱交換器70が、第1熱交換器40に対応する。第3熱交換器90が、第2熱交換器20に対応する。蓄熱器80が、蓄熱器30に対応する。
【0021】
第3熱交換器90は、ヒートポンプHPの一端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されている(
図1の上段右部参照)。第3熱交換器90は、図示しないチラーを備える。第3熱交換器90は、チラーによって流体を流通されて、温度を一定に保たれている。第3熱交換器90は、配管構造PA内の流体FL1であって、第3熱交換器90に接する流体FL1を、あらかじめ定められた範囲の温度に制御する。
【0022】
第4熱交換器70は、ヒートポンプHPの他端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されている(
図1の上段右部参照)。第4熱交換器70は、さらに、冷却対象COに接続されている。第4熱交換器70は、配管構造PA内の流体FL1であって、第4熱交換器70に接する流体FL1から熱を奪われて、冷却対象COから熱を奪う。その結果、冷却対象COが冷却される。
【0023】
蓄熱器80は、第4熱交換器70と第3熱交換器90との間の部位に設置されている(
図1の上段右部参照)。蓄熱器80は、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、流体FL1を流通させる流路82を構成する。蓄熱器80は、流体FL1を流通可能であるように第4熱交換器70および第3熱交換器90と接続されている。蓄熱器80は、ループ管LT1内の流体FL1によって伝達される定常波の音波によって、温度勾配を形成される。
【0024】
ヒートポンプHPは、以下のように動作する。蓄熱器80の流路82内において、流体FL1は定常波で振動する。流体FL1が蓄熱器80の一端88の近傍から他端89の近傍に向かう向きに移動する際に、流体FL1は断熱膨張する。その結果、流体FL1の温度が低下する。流体FL1は、蓄熱器80の他端89の近傍において、第4熱交換器70から熱を奪う。第4熱交換器70を介して、冷却対象COが冷却される。
【0025】
流体FL1が蓄熱器80の他端89の近傍から一端88の近傍に向かう向きに移動する際に、流体FL1は断熱圧縮される。その結果、流体FL1の温度が上昇する。流体FL1は、蓄熱器80の一端88の近傍において、第3熱交換器90に熱を与える。第3熱交換器90に与えられた熱は、第3熱交換器90のチラーを介して、外部に放出される。
【0026】
A2.第1熱交換器40のフィンモジュール44の構成:
図4は、第1熱交換器40のフィンモジュール44の平面図である。
図4は、20℃におけるフィンモジュール44の形状を示す。フィンモジュール44は、銅合金で構成される。フィンモジュール44は、円筒部46と、複数のフィン48と、を有する。円筒部46は、ループ管LT1,LT2とほぼ同じの内径を有する環状の部材である(
図2の下段および
図3参照)。
図4において、円筒部46の内面のうち、中心軸CAを挟んだ一方の側の内面をISLとして示し、他方の側の内面をISRとして示す。
【0027】
複数のフィン48は、円筒部46の内部に配されている。複数のフィン48は、互いに平行で板状の複数のフィンである。複数のフィン48の厚さおよび幅は、同じである。複数のフィン48は、円筒部46の中心軸CAと平行に配されている。複数のフィン48は、いわゆるストレートフィンである。本実施形態において、フィン48の厚さは、0.5mmである。また、並んで配されるフィン48のうち隣り合うフィン48の間隔は、0.5mmである。複数のフィン48は、円筒部46の中心軸CAを通る直線SAに対して対称の形状を有する。
図4において、向かい合うフィン同士の間隔をd1として示す。間隔d1は、向かい合うフィンの対によって異なっている。
【0028】
複数のフィン48を構成するそれぞれのフィンとして、
図4において、例示的に、フィンF1~F6に符号を付して示す。フィンF1の両端のうち、円筒部46に接続され基部として機能する端をF1Bで示し、先端をF1Tで示す。F2~F6についても、基部である端は、各フィンの符号の末尾にBを付した符号で示し、先端は、各フィンの符号の末尾にTを付した符号で示す。
【0029】
フィンF1,F2は、円筒部46の中心軸CAを挟んで向かい合う位置に配されている。すなわち、フィンF1,F2は、円筒部46の直径Dmに沿って配されている。フィンF1,F2は、複数のフィン48のうち最も長いフィンである。フィンF3,F4は、直線SAを挟んで向かい合う位置に配されている。フィンF5,F6は、直線SAを挟んで向かい合う位置に配されている。フィンF3,F4,F5,F6は、複数のフィン48のうち最も短いフィンである。
【0030】
複数のフィン48のそれぞれの一端は、円筒部46の内面ISLまたは内面ISRに固定されている。複数のフィン48のそれぞれの他端は、他の構成に接続されていない。たとえば、フィンF1,F3,F5のそれぞれの一端F1B,F3B,F5Bは、円筒部46の内面ISRに固定されている。フィンF1,F3,F5の他端は、他の構成に接続されていない自由端である。フィンF2,F4,F6のそれぞれの一端F2B,F4B,F6Bは、円筒部46の内面ISLに固定されている。フィンF2,F4,F6の他端は、他の構成に接続されていない自由端である。
【0031】
本実施形態の第1熱交換器40においては、板状の各フィン48は、先端が固定されていない。このため、各フィン48の両端が固定されている態様とは異なり、フィン48の温度が上昇してフィン48が熱膨張しても、円筒部46内においてフィン48が湾曲しにくい。よって、各フィン48の両端が固定されている態様に比べて、フィン48が加熱された際に、隣り合うフィン48同士が接触して流路42の一部を塞ぎ、フィン48間の流体FL1の流通が阻害される可能性が低い。このため、フィン48の温度が上昇しても、蓄熱器30で生成される音響を阻害することなく、かつ、高い効率で熱交換を行うことができる。
【0032】
また、本実施形態の第1熱交換器40においては、板状の各フィン48は、平行に配されている。このため、円筒部46内において高密度に複数のフィン48を配することができる。その結果、熱交換の効率が高い。
【0033】
複数のフィン48は、円筒部46の中心軸CAを挟んだ両側の内面ISL,ISRから、互いに他方の内面ISL,ISRに向かって伸びている。
【0034】
このような構成とすることにより、円筒部46内において、少ない偏りで流体FL1と熱交換を行うことができる。これに対して、すべてのフィン48が、円筒部46の内面ISLから、内面ISRに向かって伸びる態様においては、内面ISRの近傍において、フィンが配されないことから、内面ISRの近傍における熱交換の効率が、内面ISLの近傍および中心軸CA近傍における熱交換の効率よりも、低くなる。
【0035】
また、このような構成とすることにより、フィン48が熱膨張して、それぞれ長手方向に伸びても、フィンの先端で囲まれた空間の中心位置がずれることがない。よって、フィン48の温度が上昇しても、円筒部46内において、少ない偏りで流体FL1と熱交換を行うことができる。
【0036】
複数のフィン48は、第1熱交換器40の使用において想定されている最高温度Tmaxまで複数のフィン48の温度が上昇した際にも、複数のフィン48に含まれる一つのフィンF1の他端F1Tと、他端F1Tに対して、一端F1Bから他端F1Tに向かう方向ARにある他の構成であってもっとも近くにある構成F2とが、接触しない間隔を有するように、設けられている。向かい合うフィンF3,F4、ならびに向かい合うフィンF5,F6についても、同様である。
【0037】
フィンの先端同士の間隔をこのような間隔とすることにより、第1熱交換器40が使用される状態において、向かい合うフィンの先端同士が接触して、円筒部46内においてフィン48が湾曲するということがない。
【0038】
複数のフィン48は、20℃の環境下で、熱音響装置TAが使用されていない状態において、複数のフィン48に含まれる一つのフィンの他端と、他端に対して、一端から他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成と、の間隔d1が、一つのフィンが長いほど大きくなるように、構成されている。本実施形態においては、向かい合う一対のフィンの先端同士の間隔d1は、その向かい合う一対のフィンの長さの合計の3%である。その結果、並んで配される複数のフィン48の対は、並びの方向について、中央に近いフィンの対ほど、先端同士の間隔d1が大きい。
【0039】
厚さおよび幅が同じ複数のフィンにおいては、フィンが長いほど、同じ温度上昇があった場合のフィンの伸び量も大きくなる。このため、上記のような構成とすることにより、複数のフィン48のそれぞれについて、熱膨張によって他の構成、すなわち本実施形態においては向かい合うフィンの先端と、接触しにくいように、構成されることができる。
【0040】
図5は、第1熱交換器40の使用において想定されている最高温度Tmaxまで複数のフィン48の温度が上昇した場合のフィンモジュール44の平面図である。
図5の状態においては、向かい合う各フィンの先端の間隔d1hは、すべてのフィンの対について、ほぼ等しい。そして、この状態においても、向かい合う各フィンの先端同士は接触していない。このような態様とすることにより、各フィン48が熱応力を受けないため、長期間使用しても、フィン48が破損しにくい。
【0041】
B.第2実施形態:
第2実施形態においては、第1熱交換器40のフィンモジュール45の形状が、第1実施形態のフィンモジュール44とは異なる。複数のフィン48は、複数のフィン48に含まれる一つのフィンの他端と、他端に対して、一端から他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成と、の間隔d2は、フィンの対によらず一定である。第2実施形態の他の点は、第1実施形態と同じである。
【0042】
図6は、第2実施形態におけるフィンモジュール45の平面図である。
図6は、20℃におけるフィンモジュール45の形状を示す。
図6および
図7において、フィンモジュール45が有する構成であって、
図4のフィンモジュール44が有する構成と対応するフィンの構成については、フィンモジュール44が有するフィンの構成の符号中の「F」に代えて「G」を付して示す。フィンモジュール45は、円筒部47と、複数のフィン49と、を有する。円筒部47の構成は、第2実施形態の円筒部46の構成と同じである。
【0043】
図7は、最高温度Tmaxまで複数のフィン48の温度が上昇した場合のフィンモジュール45の平面図である。フィンが長いほど熱膨張によるフィンの伸び量が大きい。このため、
図7の状態においては、間隔d1hは、対の各フィンが長いほど小さい。この状態においても、向かい合う各フィンの先端同士は接触していない。
【0044】
C.他の実施形態:
C1.他の実施形態1:
(1)上記第1実施形態においては、向かい合う一対のフィンの先端同士の間隔d1は、その向かい合う一対のフィンの長さの合計の3%である(
図4参照)。しかし、向かい合う一対のフィンの先端同士の間隔d1の、向かい合う一対のフィンの長さの合計Lsに対する割合(d1/Ls)は、第1熱交換器40の使用時の最高温度Tmaxと、第1熱交換器40が配置される環境の第1熱交換器40を使用していないときの温度Teと、の差(Tmax-Te)に応じて定めることができる。間隔d1は、熱交換器の使用時のフィンの熱膨張量よりも大きく設定されることが好ましい。
【0045】
向かい合う一対のフィンの先端同士の間隔は、第2実施形態に示したように一定とすることもできる(
図6のd1h参照)。さらに、複数のフィン48の向かい合う一対のフィンの先端同士の隙間の概形が、円筒部46の中心軸CAを重心とする菱形を構成するように、複数のフィン48を構成してもよい。複数のフィンは、向かい合う一対のフィンの先端同士が接触しないように構成されていることが好ましい。
【0046】
(2)上記実施形態においては、第1熱交換器40は、熱音響装置TAの原動機PMの高温側において使用される熱交換器である(
図1の下段左部参照)。しかし、上記開示の技術は、燃焼後の廃棄から熱を回収するために使用される熱交換器など、使用時に温度が上昇する他の熱交換器に適用することもできる。
【0047】
C2.他の実施形態2:
図8は、他の実施形態2におけるフィンモジュール41の平面図である。
図8は、20℃におけるフィンモジュール41の形状を示す。上記実施形態においては、複数のフィン48,49は、円筒部46,47の中心軸CAを挟んだ両側の内面ISL,ISRから、互いに他方の内面ISL,ISRに向かって伸びている(
図4および
図6参照)。しかし、複数のフィンは、すべてのフィンが、円筒部の一方の内面ISLから、他方の内面ISRに向かって伸びる態様とすることもできる。
【0048】
そのような構成においては、フィンの先端に対して、円筒部の一方の内面ISLに固定された一端から先端に向かう方向ALにある他の構成であってもっとも近くにある構成は、円筒部の他方の内面ISRである。すなわち、フィンの先端に対して、円筒部の一方の内面に固定された一端から先端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成は、フィンモジュールの形状に応じて様々な部位であり得る。
【0049】
C3.他の実施形態3:
上記第1実施形態においては、複数のフィン48は、以下のように構成されている。すなわち、第1熱交換器40の使用において想定されている最高温度Tmaxまで複数のフィン48の温度が上昇した際にも、複数のフィン48に含まれる一つのフィンの他端と、他端に対して、一端から他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成とが、接触しない間隔を有する(
図5および
図4参照)。しかし、最高温度Tmaxまで複数のフィン48の温度が上昇した際に、フィンの他端が他の構成に接触する態様とすることもできる。ただし、複数のフィンは、フィンの他端が他の構成に接触しフィンが湾曲しても、隣のフィンに接触しないように構成されることが好ましい。
【0050】
C4.他の実施形態4:
複数のフィン48は、複数のフィン48に含まれる一つのフィンの他端と、他端に対して、一端から他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成と、の間隔d1が、一つのフィンが長いほど大きくなるように、構成されている(
図4参照)。しかし、向かい合う一対のフィンの先端同士の間隔d1は、第2実施形態に示したように一定とすることもできる。さらに、複数のフィン48は、複数のフィン48に含まれる一つのフィンの他端と、他端に対して、一端から他端に向かう方向にある他の構成であってもっとも近くにある構成と、の間隔d1が、一つのフィンが長いほど小さくなるように、構成することもできる。
【0051】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
20…第2熱交換器、22…流路、23…ジャケット、26…流路、24…フィンモジュール、30…蓄熱器、32…流路、39…蓄熱器の他端、38…蓄熱器の一端、40…第1熱交換器、42…流路、43…伝熱リング、44…フィンモジュール、45…フィンモジュール、70…第4熱交換器、80…蓄熱器、82…流路、89…蓄熱器の他端、88…蓄熱器の一端、90…第3熱交換器、46…円筒部、47…円筒部、48…フィン、49…フィン、AL…フィンの基部である一端から先端に向かう向きを示す矢印、AR…フィンの基部である一端から先端に向かう向きを示す矢印、CA…中心軸、CO…冷却対象、FL1…流体、FL2…流体、F1…フィン、F1B…フィンの基部である一端、F1T…フィンの先端、F2…フィン、F2B…フィンの基部である一端、F2T…フィンの先端、F3…フィン、F3B…フィンの基部である一端、F3T…フィンの先端、F4…フィン、F4B…フィンの基部である一端、F4T…フィンの先端、F5…フィン、F5B…フィンの基部である一端、F5T…フィンの先端、F6…フィン、F6B…フィンの基部である一端、F6T…フィンの先端、G1…フィン、G1B…フィンの基部である一端、G1T…フィンの先端、G2…フィン、G2B…フィンの基部である一端、G2T…フィンの先端、G3…フィン、G3B…フィンの基部である一端、G3T…フィンの先端、G4…フィン、G4B…フィンの基部である一端、G4T…フィンの先端、G5…フィン、G5B…フィンの基部である一端、G5T…フィンの先端、G6…フィン、G6B…フィンの基部である一端、G6T…フィンの先端、HP…ヒートポンプ、HS…熱源、ISL…円筒部46の内面、ISR…円筒部46の内面、K1…音波の進行方向を示す矢印、LT1…ループ管、LT2…ループ管、PA…配管構造、PM…原動機、SA…対称の軸である直線、TA…熱音響装置、d1…フィンの先端間の間隔、d1h…フィンの先端間の間隔