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特許7567280液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/175 501
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B41J2/14 301
B41J2/175 111
B41J2/015 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020139936
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035536
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸上 利裕
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-155278(JP,A)
【文献】特開2008-209701(JP,A)
【文献】特開2016-43529(JP,A)
【文献】特開2019-1080(JP,A)
【文献】特開2015-66689(JP,A)
【文献】特開2017-164975(JP,A)
【文献】特開2016-153199(JP,A)
【文献】特開2015-47716(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、
前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、
制御装置と、
前記ヘッド、前記タンク、前記循環流路及び前記背圧調整部を収容する筐体と、
前記筐体内の温度を検出する温度検出器と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、
前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行し、
前記情報取得処理において、前記温度検出器により検出された前記温度、及び、前記ヘッドから前記液体が吐出される単位時間当たりの回数に基づいて前記液体の粘度情報を取得する、液体吐出装置。
【請求項2】
前記温度検出器は、第2温度検出器であって、
前記液体の温度を検出する第1温度検出器を備え、
前記制御装置は、前記情報取得処理において、前記第1温度検出器により検出された前記液体の温度に基づいて前記液体の粘度情報を取得する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、
前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、
前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行し、
前記調整処理において、前記背圧が前記第1所定圧力に達した場合、前記背圧を、前記第2所定圧力に上昇させ、且つ、前記駆動電圧を低下させる、液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記調整処理において、前記背圧の上昇を開始させる動作と、前記駆動電圧を低下させる動作とを同時に行わない、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記調整処理において、前記背圧の上昇を停止させる動作と、前記駆動電圧を低下させる動作とを同時に行わない、請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記調整処理において、前記背圧が前記第1所定圧力から前記第2所定圧力に上昇している間において、前記背圧が前記第1所定圧力よりも前記第2所定圧力に近いときに、前記駆動電圧を低下させる動作を行う、請求項3~5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記背圧調整部は、前記タンクの内部に連通する吸排気ポンプを含んでいる、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、
前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、
前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行し、
前記背圧調整部は、前記タンクの内部空間から液体の貯留空間を仕切る仕切り、及び、前記仕切りを移動させる第1駆動部を有している、液体吐出装置。
【請求項9】
ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、
前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、
前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行し、
前記背圧調整部は、前記タンク内の前記液体に浸漬される浸漬部、及び、前記浸漬部を移動させる第2駆動部を有している、液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
印刷データに基づいて前記ヘッドから前記液体を吐出する印刷処理と、
前記印刷データに基づいて前記印刷処理の時間が所定時間以上か否かを判定する判定処理と、を実行し、
前記判定処理により前記印刷処理の時間が前記所定時間以上と判定した場合、前記調整処理を実行する、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
被印刷媒体を搬送路に搬送する搬送装置と、
前記搬送路における前記被印刷媒体を検出する被印刷媒体検出部と、を備え、
前記制御装置は、
前記被印刷媒体検出部による前記被印刷媒体の検出結果に基づいて前記被印刷媒体のジャムを検出するジャム検出処理を実行し、
前記ジャム検出処理により前記ジャムが検出された場合、前記調整処理において前記駆動電圧を上昇させる、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、
前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、
制御装置と、
被印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送装置を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、
前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行し、
印刷データに基づいて前記ヘッドから前記液体を前記被印刷媒体に吐出する印刷処理を実行し、
前記被印刷媒体は、前記搬送方向において互いに隣り合って、前記印刷処理により印刷される第1画像領域及び第2画像領域を有するロール紙であり、
前記第1画像領域と前記第2画像領域との間隔は、前記搬送方向において前記ヘッドの複数の前記駆動素子のうち互いに前記駆動電圧が同じ前記駆動素子の範囲よりも狭い、液体吐出装置。
【請求項13】
ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、
前記タンク内の前記液体に浸漬される浸漬部、及び、前記浸漬部を移動させる駆動部を有し、前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、
制御装置と、を備えた液体吐出装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、
前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行する、液体吐出装置の制御方法。
【請求項14】
ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、
前記タンク内の前記液体に浸漬される浸漬部、及び、前記浸漬部を移動させる駆動部を有し、前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、
制御装置と、を備えた液体吐出装置に、
前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、
前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行させる、プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出装置として、例えば、特許文献1のインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタでは、インクを吐出するインクジェットヘッド、インクが貯留されたインクタンク、インクジェットヘッドとインクタンクとの間においてインクが循環するインク循環路、及び、インクタンクに接続されたバキュームポンプを備えている。このバキュームポンプによりノズルにおけるインクの圧力を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-157362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のインクジェットプリンタのような装置では、インクは温度によりその粘度が変化するため、吐出されるインクの量が変化する。よって、吐出されたインクにより形成される画像に濃度ムラが生じ、画質が低下してしまう。
【0005】
これに対し、インクジェットヘッドから液体を吐出するための駆動電圧をインクの粘度に応じて制御することが考えられる。しかしながら、駆動電圧を変化させる分解能が少ないと、濃度ムラを十分に低減することができない。
【0006】
本発明はこのような事態に鑑み、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る液体吐出装置は、ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、前記液体を貯留するタンクと、前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行する。
【0008】
本発明のある態様に係る液体吐出装置の制御方法は、ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、前記液体を貯留するタンクと、前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、制御装置と、を備えた液体吐出装置の制御方法であって、前記制御装置は、前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行する。
【0009】
本発明のある態様に係るプログラムは、ノズル、及び、前記ノズルに通じる流路内の液体に吐出圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、前記液体を貯留するタンクと、前記ヘッドと前記タンクとの間を前記液体が循環する循環流路と、前記ノズルにおける前記液体の背圧を調整する背圧調整部と、制御装置と、を備えた液体吐出装置に、前記ノズルにおける前記液体の粘度情報を取得する情報取得処理と、前記ノズルから吐出される前記液体の量が前記液体の粘度に応じて変化しないように、前記粘度情報に基づいて前記背圧を、第1所定圧力と前記第1所定圧力よりも高い第2所定圧力との間で調整し、かつ、前記粘度情報に基づく前記液体の粘度が低いほど、前記駆動素子の駆動電圧を低くする調整処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液体吐出装置、その制御方法及びプログラムは、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る液体吐出装置を上方から視た概略図である。
図2図1のヘッドを下方から視た概略図である。
図3図2のヘッドを概略的に示す断面図である。
図4図2のヘッド、タンク及び液体容器を概略的に示す図である。
図5図1の液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。
図6図5の制御装置、ヘッド駆動回路及びヘッドを示す機能ブロック図である。
図7図7(a)は、液体の温度Tと駆動素子の駆動電圧Vとの関係を示すグラフである。図7(b)は、液体の温度Tと背圧Pとの関係を示すグラフである。
図8図1の液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図9】変形例1に係る液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。
図10図10(a)は、変形例5に係る液体吐出装置のタンク及び背圧調整部を概略的に示す図である。図10(b)は、仕切りを図10(a)の位置よりも左側に移動した概略図である。
図11図11(a)は、変形例6に係る液体吐出装置のタンク及び背圧調整部を概略的に示す図である。図11(b)は、浸漬部を図11(a)の位置よりも下方に移動した概略図である。
図12】変形例7に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図13】変形例9に係る液体吐出装置のヘッドを下方から視た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施の形態に係る液体吐出装置10は、図1に示すように、例えば、インク等の液体を被印刷媒体Aに吐出するインクジェットプリンタである。液体吐出装置10は、筐体11、プラテン12、供給トレイ13、排出トレイ14、液体容器15、タンク16、第1温度検出器17、1つ又は複数(例えば、4本)のヘッド20、搬送装置30及び制御装置40を備えている。なお、制御装置40の詳細については後述する。
【0013】
なお、プラテン12よりもヘッド20側を上と称し、その反対側を下と称する。また、搬送装置30により被印刷媒体Aを搬送する方向を前と称し、その反対側を後と称する。上下方向及び前後方向に交差(例えば、直交)する方向を左右方向と称する。但し、液体吐出装置10の配置方向はこれに限定されない。
【0014】
筐体11は、プラテン12、搬送装置30、ヘッド20、液体容器15及び制御装置40をその内部空間に収容している。筐体11は、前部開口及び後部開口後口を有して、その内部空間が前部開口及び後部開口を介して外部に連通している。供給トレイ13はプラテン12の後に配置されており、後部開口から後方に突出している。排出トレイ14はプラテン12の前に配置されており、前部開口から前方に突出している。プラテン12は、供給トレイ13と排出トレイ14との間に配置されており、被印刷媒体Aが載置される上面を有している。
【0015】
搬送装置30は、一対の搬送ローラ31及び搬送モータ32(図3)を有している。一対の搬送ローラ31は、前後方向において互いの間にヘッド20を挟むように配置されており、その中心軸が左右方向に延びている。搬送モータ32は、搬送ローラ31に連結されており、搬送ローラ31を回転させる。これにより、搬送装置30は、供給トレイ13からプラテン12を介して排出トレイ14へ至る搬送路において被印刷媒体Aを前方へ搬送する。
【0016】
ヘッド20は、筐体11に固定されており、矩形状であって、左右方向に被印刷媒体Aよりも長く延びている。ヘッド20の下面は、プラテン12の上面に対向している。4本のヘッド20は、前後方向に一列に並べられている。なお、ヘッド20の詳細については後述する。
【0017】
液体容器15は、例えば、筐体11に脱着可能なインクカートリッジであって、ヘッド20と同数が設けられている。複数の液体容器15は、互いに異なる種類の液体(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの液体)を貯留して、対応するタンク16にチューブ15aにより接続されている。なお、タンク16の詳細については後述する。
【0018】
第1温度検出器17は、ヘッド20内の液体の温度を間接的に又は直接的に検出するよう、液体吐出装置10内又はヘッド20に配置されている。第1温度検出器17は、制御装置40に接続されており、検出した温度を制御装置40に出力する。
【0019】
<ヘッドの構成>
ヘッド20は、図2に示すように、保持台21及び複数のチップ22を有している。保持台21は、例えば、直方体形状であって、その下面にチップ22の下面(吐出面22a)が現れるようにチップ22を保持している。
【0020】
チップ22は、複数のノズル23を有している。複数のノズル23は、例えば、左右方向において互いに間隔を空けて並べられて列を成し、ノズル列23aを形成している。複数のチップ22は、1つずつ前後方向に互い違いになるようにして左右方向に並べられている。複数のチップ22における複数のノズル列23aが左右方向において被印刷媒体Aよりも長く延びるように、複数のノズル23が配列されている。
【0021】
チップ22は、図3に示すように、ノズル23、流路形成体24、駆動素子25及び振動板26を有している。流路形成体24は複数のプレートの積層体であり、各プレートには大小様々な孔及び溝が形成されている。各プレートが積層された積層体において、孔及び溝が組み合わされて、複数の液体流路が形成される。
【0022】
この液体流路は、複数のノズル23、複数の個別流路27、供給マニホールド28及び帰還マニホールド29を有している。供給マニホールド28は、左右方向に延びて、その端に供給口28a(図4)を有している。帰還マニホールド29は、左右方向に延びて、その端に帰還口29a(図4)を有している。
【0023】
ノズル23は、流路形成体24の下面(吐出面22a)に開口している。個別流路27は、供給マニホールド28からノズル23を介して帰還マニホールド29に至り、この間に供給絞り流路27a、圧力室27b、連通路27c及び帰還絞り流路27dを有し、これらはこの順に接続されている。ここで、ノズル23は、連通路27cに接続し、連通路27cを介して圧力室27bに連通している。
【0024】
振動板26は、流路形成体24上に配置され、圧力室27bの上側開口を覆っている。駆動素子25は、例えば、圧電素子であって、圧力室27b上の振動板26に配置されている。駆動素子25は、制御装置40(図1)に接続されており、制御装置40からの駆動信号が印加されると伸縮する。これに応じて、振動板26は変形して圧力室27bの容積を変更する。これにより、圧力室27bの液体に圧力が付与され、ノズル23から液体が吐出される。
【0025】
このような構成において、液体は、液体容器15からタンク16を介して供給マニホールド28に供給される。そして、液体は、供給マニホールド28から個別流路27に流入し、ここで供給絞り流路27a、圧力室27b及び連通路27cの順で流れて、ノズル23に供給される。
【0026】
そして、駆動素子25の駆動により、圧力室27bの液体に圧力が付与されると、ノズル23から液体が吐出される。このノズル23から吐出されずに残った液体は、帰還絞り流路27dから帰還マニホールド29に流入し、帰還マニホールド29を流れて、帰還マニホールド29からタンク16に帰還する。
【0027】
<タンク>
図4に示すように、ヘッド20の供給マニホールド28(図3)の供給口28aが供給管28bによりタンク16に接続され、供給管28bには供給ポンプ28cが設けられている。また、帰還マニホールド29(図3)の帰還口29aは帰還管29bによりタンク16に接続され、帰還管29bには帰還ポンプ29cが設けられている。
【0028】
タンク16は、密閉容器であって、ヘッド20上に配置されている。タンク16における供給管28bの接続口は、上下方向におけるタンク16の中央位置より下側であって、例えば、タンク16の底に設けられている。また、タンク16は、チューブ15aにより液体容器15に接続されていると共に、背圧調整部50が設けられている。なお、背圧調整部50の詳細については後述する。
【0029】
タンク16は、液体容器15からチューブ15aを介して供給された液体を貯留する。供給ポンプ28cは、タンク16に貯留された液体が供給マニホールド28に流れるように、供給管28bの液体に圧力を付与する。帰還ポンプ29cは、液体が帰還マニホールド29からタンク16に流れるように、帰還管29bの液体に圧力を付与する。
【0030】
これにより供給ポンプ28c及び帰還ポンプ29cを駆動すると、液体は、タンク16から供給管28bにより供給マニホールド28(図3)に供給され、個別流路27(図3)を介してノズル23(図3)に供給される。そして、ノズル23により吐出されずに残った液体は、個別流路27を介して帰還マニホールド29を流れ、帰還口29aから帰還管29bを介してタンク16に戻る。このようにして、液体は、タンク16、供給管28b、供給マニホールド28、個別流路27、帰還マニホールド29、帰還管29b及びタンク16と、この順で循環する。このため、タンク16、供給管28b、供給マニホールド28、個別流路27、帰還マニホールド29及び帰還管29bが、ヘッド20とタンク16との間を液体が循環する循環流路60を形成する。つまり、循環流路60により、ヘッド20とタンク16との間を液体が循環する。
【0031】
<背圧調整部>
背圧調整部50は、図4に示すように、空気管51及び吸排気ポンプ52を有しており、ノズル23における液体の圧力(背圧P)を調整する。空気管51は、一端がタンク16の上部に接続され、他端が大気に開放されており、タンク16の内部空間及び外部に連通している。
【0032】
吸排気ポンプ52は、空気管51に設けられており、タンク16内の圧力を調整する。例えば、吸排気ポンプ52は、タンク16内の空気を空気管51を介して外部に放出するよう駆動することによりタンク16内の圧力を下げる。一方、吸排気ポンプ52は、タンク16内に空気を外部から吸引するよう駆動することによりタンク16内の圧力を上げる。そして、吸排気ポンプ52は、その駆動率(放出量及び吸引量)を調整することにより、タンク16内の圧力の程度を調整する。
【0033】
タンク16は、供給管28b、供給マニホールド28及び個別流路27を介してノズル23に接続されている。このため、吸排気ポンプ52によってタンク16内の圧力が調整されることにより、ノズル23における液体の背圧Pも調整される。吸排気ポンプ52は、ノズル23の開口におけるメニスカスが個別流路27側(内側)に窪むように、液体の背圧Pを負圧に調整している。さらに、吸排気ポンプ52は、液体の粘度に応じて背圧Pの程度を調整する。この調整処理の詳細については後述する。
【0034】
<制御装置>
制御装置40は、図5に示すように、演算部41、記憶部42、波形生成部43及びインターフェース44を有している。インターフェース44はコンピュータ及びネットワーク等の外部装置Bに接続され、制御装置40は外部装置Bから印刷データ等の各種データをインターフェース44を介して受信する。印刷データは、被印刷媒体Aに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。
【0035】
記憶部42は、演算部41にアクセス可能であって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データ、及び、演算部41により変換されたデータが例示される。ROMは、プログラム及び各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、プログラムは、外部装置Bから取得されたものであってもよく、また、他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0036】
演算部41は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部41は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子25、供給ポンプ28c、帰還ポンプ29c、吸排気ポンプ52及び搬送モータ32を制御して、各種処理を行う。例えば、制御装置40は、印刷処理、情報取得処理及び調整処理を実行する。
【0037】
波形生成部43は、駆動素子25に出力される駆動信号の波形を規定する波形信号を生成する。波形生成部43は、専用の回路であってもよく、演算部41及び記憶部42により構成されていてもよい。波形信号は、例えば、パルス信号であって、吐出波形信号及び非吐出波形信号を含んでいる。吐出波形信号は、吐出される液体の量が異なる複数種類の波形信号を含んでいる。
【0038】
演算部41は、例えば、複数種類の波形信号から1種類の波形信号を、印刷データに基づいた1滴ごとの液体量に応じてノズル23毎及び駆動周期毎に選択し、波形選択データを生成する。ここで、演算部41は、印刷する画像において濃度が高いほど、液体量が多い波形信号を選択するように、波形選択データを生成する。
【0039】
また、演算部41は、情報取得処理を実行する。情報取得処理では、演算部41は、第1温度検出器17から検出温度を取得し、検出温度からノズル23における液体の粘度情報を取得する。液体の粘度情報は、液体の粘度に関する情報であって、粘度に相関する情報(例えば、液体の温度)を含んでいる。
【0040】
ここで、第1温度検出器17がノズル23の液体の温度を直接的に検出する場合には、演算部41は、第1温度検出器17による検出温度を液体の粘度情報として取得し記憶部42に記憶する。また、第1温度検出器17がノズル23の液体の温度を間接的に検出する場合には、第1温度検出器17による検知温度とノズル23の液体の温度との所定の対応関係は、記憶部42に記憶されている。このため、演算部41は、この所定の対応関係を参照して、第1温度検出器17による検知温度に応じたノズル23の液体の温度を取得し、これを液体の粘度情報として記憶部42に記憶する。
【0041】
さらに、演算部41は、情報取得処理により取得された粘度情報に基づいて調整処理を実行する。この調整処理にて、演算部41は粘度情報に基づいて駆動信号の電圧選択データを生成する。この調整処理の詳細については後述する。
【0042】
制御装置40は、ヘッド駆動回路45を介して駆動素子25に接続されている。制御装置40は、波形信号、波形選択データ及び電圧選択データをヘッド駆動回路45に出力し、ヘッド駆動回路45はこれらの信号及びデータから駆動信号を生成して駆動素子25に出力する。これにより、駆動素子25が駆動信号に応じて駆動し、圧力室27bの容積が変化して、圧力室27bの液体に圧力が付与され、液体がノズル23から吐出される。なお、ヘッド駆動回路45の詳細については、後述する。
【0043】
また、制御装置40は搬送駆動回路33を介して搬送モータ32に接続されており、印刷データに基づいて搬送モータ32の制御データを搬送駆動回路33に出力する。これにより、制御装置40は、搬送モータ32の駆動タイミング、回転速度、回転量等を制御し、印刷データに応じて被印刷媒体Aを搬送路において前方に搬送する。
【0044】
このように、制御装置40は、駆動素子25による吐出された液体により画像を被印刷媒体Aに記録する記録動作、及び、搬送モータ32による被印刷媒体Aの搬送動作を実行する。この記録動作及び搬送動作を並行して実行することにより、ノズル23から吐出された液体によって形成される画像が被印刷媒体Aにおいて搬送方向に形成されていき、印刷処理が進んでいく。
【0045】
さらに、制御装置40は、供給ポンプ駆動回路28dを介して供給ポンプ28cに接続されており、供給ポンプ28cの制御データを供給ポンプ駆動回路28dに出力する。制御装置40は、帰還ポンプ駆動回路29dを介して帰還ポンプ29cに接続されており、帰還ポンプ29cの制御データを帰還ポンプ駆動回路29dに出力する。これにより、制御装置40は、供給ポンプ28c及び帰還ポンプ29cの駆動率及び駆動タイミング等を制御して、所定流量の液体を循環流路60において循環させる。
【0046】
また、制御装置40は、吸排気ポンプ駆動回路55を介して吸排気ポンプ52に接続されており、液体の粘度情報に基づいた吸排気ポンプ52の駆動率を含む制御データを吸排気ポンプ駆動回路55に出力する。これにより、制御装置40は、吸排気ポンプ52の駆動率及び駆動タイミングを制御して、粘度情報に応じてノズル23における液体の背圧Pを調整する。この吸排気ポンプ52の駆動率と液体の背圧Pとの関係は予め対応付けられており、この所定の背圧対応関係は記憶部42に記憶されている。
【0047】
<ヘッド駆動回路>
ヘッド駆動回路45は、一つのチップ22に対応して一つ設けられている。図6に示すように、ヘッド駆動回路45は、FPGA等のコントローラ46、複数(例えば、4個)の電源回路47、ヘッドドライバIC48を備えている。
【0048】
複数の電源回路47は、互いに異なる所定の電圧を出力する。例えば、複数の電源回路47は、21Vの電圧を出力する21V電源回路47a、22Vの電圧を出力する22V電源回路47b、23Vの電圧を出力する23V電源回路47c、24Vの電圧を出力する24V電源回路47dを有している。但し、電源回路47の数は複数であれば、4個に限定されない。また、電源回路47の出力電圧は21V~24Vに限定されない。
【0049】
電源回路47は、例えば、DC/DCコンバータを含んでおり、外部電源からの入力電力を所定の電圧に変換して電力を出力する。電源回路47は、ヘッドドライバIC48と接続されている。なお、電源回路47は、D/Aコンバータ等を介してコントローラ46に接続されていてもよい。
【0050】
ヘッドドライバIC48は、電源回路47に加えて、コントローラ46及び複数の駆動素子25に接続されている。ヘッドドライバIC48は、複数の電源切換器48a、複数の波形選択器48b及び複数の駆動信号生成回路48cを有している。電源切換器48a、波形選択器48b及び駆動信号生成回路48cのそれぞれは、チップ22の駆動素子25に一対一で対応して設けられている。また、波形選択器48bは、制御装置40の波形生成部43に接続されている。
【0051】
このようなヘッド駆動回路45において、コントローラ46は、印刷データに基づいた波形選択データ及び電圧選択データを制御装置40から取得してヘッドドライバIC48に出力する。また、ヘッドドライバIC48の波形選択器48bには、制御装置40の波形生成部43から複数の波形信号が入力されている。
【0052】
このヘッドドライバIC48において、波形選択器48bは波形選択データに基づいて複数の波形信号から1つの波形信号を選択する。また、電源切換器48aは電圧選択データに基づいて複数の電源回路47から1つの電源回路47を選択する。そして、駆動信号生成回路48cは、選択された波形信号に基づいて、選択された電源回路47から電圧を受けて、駆動信号を生成し、駆動素子25に出力する。これにより、駆動素子25が駆動信号に応じて駆動し、ノズル23から液体を吐出する。
【0053】
<調整処理>
液体の粘度が低くなるほど、液体の吐出量が多くなり、吐出された液体により形成される画像に濃度ムラが生じ、画質が低下してしまう。そこで、制御装置40は、液体の粘度情報に基づいて調整処理を実行する。調整処理では、制御装置40は、ノズル23から吐出される液体の量が液体の粘度に応じて変化しないように、粘度情報に基づいて背圧Pを、第1所定圧力P1と第1所定圧力P1よりも高い第2所定圧力P2との間で調整し、かつ、粘度情報に基づく液体の粘度が低いほど、駆動素子25の駆動電圧Vを低くする。
【0054】
具体的には、液体の粘度情報(例えば、液体の温度)、駆動素子25の駆動電圧V及び液体の背圧Pの関係は予め対応付けられており、この所定の対応関係は記憶部42に記憶されている。例えば、図7(a)に示すように、液体の温度Tの上昇(粘度の低下)に伴い駆動素子25の駆動電圧Vが段階的に低くなるように、液体の温度Tと駆動電圧Vとの関係が記憶部42に記憶されている。また、図7(b)に示すように、図7(a)の駆動電圧Vが一定の範囲では、液体の温度Tの上昇(粘度の低下)に伴い、液体の背圧Pが第2所定圧力P2から、第2所定圧力P2よりも低い第1所定圧力P1に一定の割合で直線的に低くなるように、液体の温度Tと背圧Pとの関係が記憶部42に記憶されている。
【0055】
制御装置40は、この所定の対応関係を参照して、液体の温度T1に対する駆動素子25の駆動電圧V(第1所定電圧V1)及び液体の背圧P(第2所定圧力P2)を記憶部42から取得する。そして、制御装置40は、第1所定電圧V1に応じた電圧選択データをヘッド駆動回路45に出力する。ヘッド駆動回路45は、複数の電源回路47から第1所定電圧V1の電源回路47を選択して、第1所定電圧V1の駆動信号を駆動素子25に出力する。
【0056】
また、制御装置40は、第2所定圧力P2に応じた吸排気ポンプ52の駆動率の制御データを吸排気ポンプ駆動回路55に出力する。吸排気ポンプ駆動回路55は吸排気ポンプ52に駆動信号を出力し、第2所定圧力P2に応じた駆動効率で吸排気ポンプ52を駆動させる。ここで、供給ポンプ28c及び帰還ポンプ29cにより循環流路60において液体が循環されると、ノズル23における液体に第2所定圧力P2が作用する。
【0057】
このように、ノズル23における液体に第2所定圧力P2の背圧Pが作用した状態で、第1所定電圧V1の駆動信号により駆動素子25が駆動し、ノズル23の液体に圧力(吐出圧力)が付与される。これにより、背圧P及び吐出圧力に応じた量の液体がノズル23から吐出される。この吐出圧力は、駆動電圧Vが低いほど小さくなり、駆動電圧Vに相関している。このため、液体の吐出量は背圧P及び駆動電圧Vが小さいほど少なくなる。
【0058】
よって、制御装置40は、温度T1~T2では駆動電圧Vを第1所定電圧V1に一定にした状態で、液体の温度の上昇に伴って背圧Pを第2所定圧力P2から第1所定圧力P1に低下させていく。これにより、ノズル23における液体の背圧Pが低下し、吐出量が減少する。このため、粘度の低下に応じてノズル23から吐出される液体の量が増加し易い状態であっても、粘度の低下に起因した吐出量の増加を低減し、印刷データに基づいた量の液体を吐出することができる。
【0059】
それから、温度T2にて背圧Pが第1所定圧力P1に達すると、制御装置40は、背圧Pを第1所定圧力P1から第2所定圧力P2に上昇させ、駆動電圧Vを第1所定電圧V1からこれよりも低い第2所定電圧V2に低下させる。これにより、ノズル23の液体に作用する背圧Pは高くなるが、駆動素子25による吐出圧力が低下する。この第2所定電圧V2及び第2所定圧力P2は、第1所定電圧V1及び第1所定圧力P1と液体の吐出量が同じになるように設定されている。このため、粘度の低下に起因した吐出量の増加を低減し、印刷データに基づいた量の液体を吐出することができる。
【0060】
さらに、制御装置40は、温度T2~T3では駆動電圧Vを第2所定電圧V2に一定にした状態で、液体の温度の上昇に伴って背圧Pを第2所定圧力P2から第1所定圧力P1に低下させていく。温度T2にて背圧Pが第1所定圧力P1に達すると、制御装置40は、背圧Pを第1所定圧力P1から第2所定圧力P2に上昇させ、駆動電圧Vを第2所定電圧V2からこれよりも低い第3所定電圧V3に低下させる。
【0061】
このように、制御装置40は、液体の温度上昇に応じて駆動電圧Vの段階的に低下させ、且つ、駆動電圧Vが変化しない一定範囲では背圧Pを液体の温度上昇に応じて連続的に第2所定圧力P2から第1所定圧力P1に低下させる。これにより、駆動電圧Vを変化させる分解能が少ない場合であっても、これよりも多くの分解能で液体の粘度に応じて液体の吐出量を調整し、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0062】
<液体吐出装置の制御方法>
液体吐出装置10の制御方法は、図8のフローチャートの一例に示すように、制御装置40により実行される。制御装置40は、印刷データを取得すると(ステップS1)、印刷処理を実行する(ステップS2)。また、制御装置40は、情報取得処理を実行し、第1温度検出器17の検出温度からノズル23における液体の粘度情報を取得する(ステップS3)。
【0063】
液体の温度が低くなるほど、液体の粘度が高くなるように、液体の流動抵抗が高くなる。このため、液体の吐出量が少なく、吐出された液体により形成される画像に濃度ムラが生じ、画質が低下してしまう。そこで、制御装置40は、粘度情報に基づいて調整処理を実行する(ステップS5)。この印刷データに基づいた印刷処理が終了するまで(ステップS5:NO)、制御装置40は印刷処理、情報取得処理及び調整処理を実行する(ステップS2、S3、S4)。
【0064】
調整処理では、制御装置40は、所定の対応関係を参照し、粘度情報に応じた駆動素子25の駆動電圧V及び背圧Pを記憶部42から取得する。そして、制御装置40は、この背圧Pに対応する駆動率にて吸排気ポンプ52を駆動しつつ、印刷データに応じて駆動電圧Vの駆動信号により駆動素子25を駆動する。これにより、粘度情報に応じた背圧P及び吐出圧力がノズル23における液体に作用し、印刷データに応じた量の液体がノズル23から吐出される。よって、ノズル23から吐出される液体の量が液体の粘度に応じて変化せず、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0065】
<変形例1>
変形例1に係る液体吐出装置10は、上記実施の形態において、図4及び図9に示すように、ヘッド20、タンク16、循環流路60及び背圧調整部50を収容する筐体11と、筐体11内の温度を検出する第2温度検出器18と、を備えている。制御装置40は、情報取得処理において、第2温度検出器18により検出された温度、及び、ヘッド20から液体が吐出される単位時間当たりの回数(吐出頻度)に基づいて液体の粘度情報を取得する。
【0066】
具体的には、第2温度検出器18は、筐体11内に配置されており、制御装置40に接続されている。第2温度検出器18は、筐体11内の温度(気温)を検出し、検出した温度を制御装置40に出力する。
【0067】
液体吐出装置10の制御方法は、図8のフローチャートに沿って制御装置40により実行される。このステップS2の印刷処理では、制御装置40は、印刷データに基づいて、印刷する画像の濃度に応じた波形信号をノズル23毎及び駆動周期毎に選択する。そして、制御装置40は、波形選択データを出力する順に並べ、これを記憶部42に記憶する共に、ヘッド駆動回路45に出力する。
【0068】
ヘッド駆動回路45は、波形選択データに基づいて駆動信号を生成して駆動素子25に出力する。ここで、駆動素子25は、吐出波形信号に基づいた駆動信号に応じて駆動してノズル23から液体を吐出させ、非吐出波形信号に基づいた駆動信号に対しては駆動せずにノズル23から液体を吐出させない。
【0069】
このように、駆動素子25が駆動すると発熱し、この熱が液体に伝わって液体の温度が上昇し、液体の粘度は低下する。また、筐体11内の温度が高いと、液体の温度も高くなり、液体の粘度た低下する。
【0070】
このため、ステップS3の情報取得処理において、制御装置40は、第2温度検出器18の検出温度及び吐出頻度を液体の粘度情報として取得する。ここで、制御装置40は、現時点から過去に遡って所定時間における波形選択データを参照し、所定時間内の吐出波形信号の数を積算し、単位時間当たりの吐出波形信号の数(吐出回数)を吐出頻度として算出して記憶部42に記憶する。
【0071】
この液体の粘度情報(第2温度検出器18の検出温度及び吐出頻度)、駆動素子25の駆動電圧V及び液体の背圧Pの関係は予め対応付けられており、この所定の対応関係は記憶部42に記憶されている。ステップS4の調整処理にて、制御装置40は、この所定の対応関係を参照し、粘度情報に応じた駆動素子25の駆動電圧V及び背圧Pを取得する。そして、制御装置40は、この背圧Pに対応する駆動率にて吸排気ポンプ52を駆動しつつ、この駆動電圧Vの駆動信号により印刷データに応じて駆動素子25を駆動する。
【0072】
これにより、粘度情報に応じた背圧P及び吐出圧力がノズル23における液体に作用し、印刷データに応じた量の液体がノズル23から吐出される。よって、ノズル23から吐出される液体の量が液体の粘度に応じて変化せず、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0073】
<変形例2>
変形例2に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1において、制御装置40は、調整処理において、背圧Pの上昇を開始させる開始動作と、駆動電圧Vを低下させる低下動作とを同時に行わないように構成されている。
【0074】
例えば、図8のフローチャートのステップS4の調整処理において、制御装置40は、粘度情報に応じて駆動電圧V及び背圧Pを調整している。ここで、例えば、図7(a)及び図7(b)に示すように、温度T2において、制御装置40は、背圧Pが第1所定圧力P1に達する。
【0075】
この際、制御装置40は、第1所定電圧V1の電圧選択データから第2所定電圧V2の電圧選択データに代えて制御データを出力する。この低下動作によって、駆動素子25の駆動電圧Vが第1所定電圧V1から第2所定電圧V2に低下する。また、制御装置40は、第1所定圧力P1に対応する駆動率から第2所定圧力P2に対応する駆動率に代えて制御データを出力している。この開始動作によって、循環流路60における液体の流量が増加し、背圧Pの上昇が開始する。
【0076】
制御装置40は、この駆動電圧Vの低下動作と背圧Pの上昇開始動作とを同時に行わない。例えば、制御装置40は、背圧Pの上昇開始動作後に駆動電圧Vの低下動作を行う、又は、駆動電圧Vの低下動作後に背圧Pの上昇開始動作をおこなう。これにより、背圧Pの上昇開始により液体の流れの加速の変化が大きい状態において駆動電圧Vを低下させないため、液体の流れが安定した状態で液体を吐出することができる。
【0077】
<変形例3>
変形例3に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1、2において、制御装置40は、調整処理において、前記背圧Pの上昇を停止させる停止動作と、前記駆動電圧Vを低下させる動作とを同時に行わないように構成されている。
【0078】
例えば、図8のフローチャートのステップS4の調整処理にて、図7(a)及び図7(b)に示すように、温度T2において、制御装置40は、背圧Pが第1所定圧力P1に達する。この際、制御装置40は、第1所定圧力P1に対応する駆動率から第2所定圧力P2に対応する駆動率に代えて制御データを出力する開始動作の後、停止動作を行う。
【0079】
この停止動作では、制御装置40は、第2所定圧力P2に対応する駆動率の制御データを維持する、又は、温度上昇(粘度低下)に応じて第2所定圧力P2よりも低い背圧Pに対応する駆動率を下げる制御データを出力する。このように、吸排気ポンプ52の駆動率を上昇させないことにより、背圧Pの上昇が停止する。
【0080】
制御装置40は、この背圧Pの上昇停止動作と駆動電圧Vの低下動作とを同時に行わない。例えば、制御装置40は、背圧Pの上昇停止動作後に駆動電圧Vの低下動作を行う、又は、駆動電圧Vの低下動作後に背圧Pの上昇停止動作を行う。これにより、背圧Pの上昇停止により液体の流れの減速の変化が大きい状態において駆動電圧Vを低下させないため、液体の流れが安定した状態で液体を吐出することができる。
【0081】
<変形例4>
変形例4に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1~3において、制御装置40は、調整処理において、背圧Pが第1所定圧力P1から第2所定圧力P2に上昇している間において、背圧Pが第1所定圧力P1よりも第2所定圧力P2に近いときに、駆動電圧Vを低下させる低下動作を行う。
【0082】
例えば、図8のフローチャートのステップS4の調整処理にて、図7(a)及び図7(b)に示すように、温度T2において、制御装置40は、背圧Pが第1所定圧力P1に達する。ここで、制御装置40が吸排気ポンプ52の駆動率を上昇させると、循環流路60における流量が増加して、ノズル23における液体の背圧Pが上昇する。
【0083】
この駆動率を上昇させてから背圧Pが上昇するまでに時間を要する。この背圧Pが第1所定圧力P1から第2所定圧力P2に上昇している間において、背圧Pが第1所定圧力P1よりも第2所定圧力P2に近い時点において、駆動電圧Vを低下させる低下動作を行う。これにより、液体の流れがさらに安定した状態で液体を吐出することができる。
【0084】
<変形例5>
変形例5に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1~4において、図10(a)に示すように、背圧調整部50は、タンク16の内部空間から液体の貯留空間16aを仕切る仕切り56、及び、仕切り56を移動させる第1駆動部57を有している。
【0085】
仕切り56は、平板形状であって、タンク16内に配置されている。仕切り56は、タンク16の内部空間をその一方側(例えば、左側)の空間及び他方側(例えば、右側)の空間に水密的に仕切る。タンク16の左側の空間は、液体が貯留される貯留空間16aであって、右側の空間には液体は貯留されない空気空間である。
【0086】
タンク16の左側にチューブ15a、供給管28b及び排出管が接続されている。貯留空間16aはチューブ15aを介して液体容器15に連通し、供給管28b及び排出管を介してヘッド20の液体流路に連通している。
【0087】
また、タンク16の右側の上部に大気開放菅53が接続されており、空気空間は大気開放菅53を介して外部に連通可能である。大気開放菅53には開閉弁54が設けられている。開閉弁54は、制御装置40(図5図9)に接続されており、その駆動は制御装置40により制御されている。
【0088】
仕切り56は、第1駆動部57に接続されている。第1駆動部57は、例えば、直動アクチュエータ等であって、仕切り56をタンク16内において左右方向において直線的に移動する。第1駆動部57は、制御装置40(図5図9)に接続されており、その駆動は制御装置40により制御されている。
【0089】
図10(b)に示すように、仕切り56が左側に移動することにより、貯留空間16aが小さくなり、貯留空間16aにおける液面が高くなる。これにより、循環流路60における液体の圧力が増し、循環流路60に接続するノズル23における液体の背圧Pが増加する。この際、大気開放菅53の開閉弁54を開けることにより、空気が大気開放菅53を通じて空気空間に流入する。このため、仕切り56は、空気空間が大きくなるように左へスムーズに移動することができる。そして、仕切り56が停止した状態では、開閉弁54を閉じる。
【0090】
一方、仕切り56が右側に移動することにより、貯留空間16aが大きくなり、貯留空間16aにおける液面が低くなる。これにより、循環流路60における液体の圧力が下がり、循環流路60に接続するノズル23における液体の背圧Pが低下する。この際、大気開放菅53の大気開放弁を開けることにより、空気が大気開放菅53を通じて空気空間から流出する。このため、仕切り56は、空気空間が小さくなるように右へスムーズに移動することができる。
【0091】
図8のフローチャートのステップS4の調整処理において、制御装置40は粘度情報に基づいて駆動素子25の駆動電圧V及び背圧Pを調整する。ここで、制御装置40は、第1駆動部57により仕切り56を左右方向に移動させて、駆動電圧Vが変化しない一定範囲において粘度低下に応じて背圧Pを低下させる。これにより、粘度変化に応じた液体の吐出量の変化を低減し、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0092】
<変形例6>
変形例6に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1~4において、図11に示すように、背圧調整部50は、タンク16内の液体に浸漬される浸漬部58、及び、浸漬部58を移動させる第2駆動部59を有している。
【0093】
タンク16は、上部に浸漬部58の通過口を有している。浸漬部58は、例えば、角柱又は円柱等の柱形状であって、気密的に通過口を介してタンク16内に抜き差し可能に配置されている。浸漬部58は、第2駆動部59に接続されている。第2駆動部59は、例えば、直動アクチュエータ等であって、浸漬部58を上下方向において直線的に移動することが可能である。第2駆動部59は、制御装置40(図5図9)に接続されており、その駆動は制御装置40により制御されている。
【0094】
また、タンク16の上部に大気開放菅53が接続されており、タンク16の内部空間は大気開放菅53を介して外部に連通可能である。大気開放菅53には開閉弁54が設けられている。開閉弁54は、制御装置40(図5図9)に接続されており、その駆動は制御装置40により制御されている。
【0095】
浸漬部58が下に移動することにより、タンク16内に貯留されている液体に浸漬し、その浸漬した体積に応じて液面が高くなる。これにより、循環流路60における液体の圧力が増し、循環流路60に接続するノズル23における液体の背圧Pが増加する。この際、大気開放菅53の開閉弁54を開けることにより、空気が大気開放菅53を通じてタンク16内に流入する。このため、浸漬部58は、下へスムーズに移動することができる。そして、浸漬部58が停止した状態では、開閉弁54を閉じる。
【0096】
一方、浸漬部58が上に移動することにより、貯留された液体から貯留空間16aが大きくなり、貯留空間16aにおける液面が低くなる。これにより、循環流路60における液体の圧力が下がり、循環流路60に接続するノズル23における液体の背圧Pが低下する。この際、大気開放菅53の開閉弁54を開けることにより、空気が大気開放菅53を通じてタンク16内から流出する。このため、浸漬部58は、上へスムーズに移動することができる。
【0097】
図8のフローチャートのステップS4の調整処理において、制御装置40は粘度情報に基づいて駆動素子25の駆動電圧V及び背圧Pを調整する。ここで、制御装置40は、第2駆動部59により浸漬部58を上下方向に移動させて、駆動電圧Vが変化しない一定範囲において粘度低下に応じて背圧Pを低下させる。これにより、粘度変化に応じた液体の吐出量の変化を低減し、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0098】
<変形例7>
変形例7に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1~6において、制御装置40は、印刷データに基づいて前記ヘッド20から液体を吐出する印刷処理と、印刷データに基づいて印刷処理の時間が所定時間以上か否かを判定する判定処理と、を実行し、判定処理により印刷処理の時間が所定時間以上と判定した場合、調整処理を実行する。
【0099】
例えば、制御装置40は、図12のフローチャートで示す液体吐出装置10の制御方法を実行する。ここでは、図8のステップS2とS3の間において、S6の処理を実行する。
【0100】
具体的には、制御装置40は、印刷データを取得すると(ステップS1)、印刷処理を実行する(ステップS2)。そして、制御装置40は、印刷処理を開始時刻からの経過時間(印刷時間)を計測し記憶部42に記憶する。
【0101】
制御装置40は、判定処理を実行し、印刷時間が所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS6)。印刷時間が長くなるほど、液体の温度が上昇し、液体の粘度が低下するため、液体の吐出量が印刷データに基づいた量よりも少なくなるおそれがある。そこで、印刷時間が所定時間以上であれば(ステップS6:YES)、制御装置40は、情報取得処理を実行して粘度情報を取得し(ステップS3)、この粘度情報に基づいて調整処理を実行する(ステップS4)。これにより、粘度変化に応じた液体の吐出量の変化を低減し、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0102】
一方、印刷時間が所定時間未満であれば(ステップS6:NO)、液体の粘度低下に起因する液体の吐出量の増加が大きくない。このため、制御装置40は、情報取得処理及び調整処理を実行せずに、印刷処理が終了するまで(ステップS5:NO)、印刷処理を継続する(ステップS2)。
【0103】
<変形例8>
変形例8に係る液体吐出装置10は、上記実施の形態及び変形例1~7において、図5及び図9に示すように、被印刷媒体Aを搬送路に搬送する搬送装置30と、搬送路における被印刷媒体Aを検出する被印刷媒体検出部19と、を備えている。制御装置40は、被印刷媒体検出部19による被印刷媒体Aの検出結果に基づいて被印刷媒体Aのジャムを検出するジャム検出処理と、ジャム検出処理によりジャムが検出された場合、調整処理において駆動電圧Vを上昇させる。
【0104】
具体的には、被印刷媒体検出部19は、例えば、発光部及び受光部を有し、制御装置40に接続されている。被印刷媒体検出部19は、発光部及び受光部が、搬送装置30により搬送されている被印刷媒体Aを互いの間に挟むように、被印刷媒体Aが搬送装置30により搬送される搬送路に設けられている。
【0105】
発光部からの光が被印刷媒体Aにより遮られ、受光部が発光部の光を受光しないと、被印刷媒体検出部19は搬送路の被印刷媒体Aを検知して、検知信号を制御装置40に出力する。一方、受光部が発光部からの光を受光すると、搬送路に被印刷媒体Aがないとして、被印刷媒体検出部19は検知信号を制御装置40に出力しない。なお、受光部が発光部からの光を受光する場合、被印刷媒体検出部19は、被印刷媒体Aが搬送路にないとの信号を制御装置40に出力してもよい。
【0106】
変形例8に係る液体吐出装置10は、図8及び図12のフローチャートの一例に示す制御方法を実行する。このステップS2において、被印刷媒体Aが搬送装置30により搬送されながら、ヘッド20から被印刷媒体Aに液体が吐出されて、印刷処理が進んでいく。また、制御装置40は、ステップS3の情報取得処理において粘度情報を取得し、この粘度情報に基づいてステップS4にて調整処理を実行する。
【0107】
この調整処理において、制御装置40は、被印刷媒体検出部19により被印刷媒体Aが検出されていない状態から検出された状態に変化すると、被印刷媒体Aの前端が被印刷媒体検出部19に到達したと判定する。また、制御装置40は、被印刷媒体検出部19により被印刷媒体Aが検出されている状態から検出されない状態に変化すると、被印刷媒体Aの後端が被印刷媒体検出部19を通過したと判定する。
【0108】
制御装置40は、被印刷媒体Aの前端到達タイミングと後端通過のタイミングとの間の搬送時間を計時する。制御装置40は、搬送時間が所定時間未満であれば、被印刷媒体Aは搬送路を円滑に搬送されており、ジャムは発生していないと判定する。一方、制御装置40は、搬送時間が所定時間に達すると、被印刷媒体Aが搬送されておらず、ジャムが発生したと判定する。また、被印刷媒体Aは、ジャムの発生を判定した後、被印刷媒体検出部19が被印刷媒体Aを検出しなくなったら、被印刷媒体Aが搬送路から除去され、ジャムが解消したと判定する。
【0109】
そして、制御装置40は、ジャムの発生を判定したとき、駆動素子25の駆動電圧Vを上昇させる。例えば、図7(a)の温度T3とT4との間では駆動電圧Vは第3所定電圧V3に設定されている。ここで、ジャムが発生した場合、制御装置40は駆動電圧Vを第3所定電圧V3から第1所定電圧V1に上昇させる。それから、制御装置40は、ジャムが発生していないと判定されると、印刷処理を再開する。そして、制御装置40は、調整によりにおいて粘度低下に応じて駆動電圧Vを第1所定電圧V1から段階的に低下していく。
【0110】
このように、ジャムの発生により印刷再開までに液体の温度が低下し粘度が上昇するため、駆動電圧Vを上昇させても画像の濃度ムラの発生を低減することができる。また、駆動電圧Vを上昇させることにより、駆動電圧Vの低下可能範囲を広げることができる。このため、今後の粘度の低下に対応することができる。
【0111】
<変形例9>
変形例9に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1~8において、図1及び図13に示すように、被印刷媒体Aは、搬送方向において互いに隣り合って、印刷処理により印刷される第1画像領域C及び第2画像領域Dを有するロール紙である。第1画像領域Cと前記第2画像領域Dとの間隔Eは、搬送方向においてヘッド20の複数の駆動素子25のうち互いに駆動電圧Vが同じ前記駆動素子25の範囲Fよりも狭い。
【0112】
具体的には、被印刷媒体Aは、その前後方向の寸法が左右方向に長く、筒形状のロール状に巻かれている。ロール状の被印刷媒体Aは、供給トレイ13に配置されており、先端が前方に引き出されて、プラテン12上に配置される。ここで、被印刷媒体Aは、搬送装置30により前方に搬送されながら、ヘッド20から吐出された液体によって画像が印刷される。
【0113】
例えば、被印刷媒体Aは、印刷データに基づいて複数の画像が印刷される。この画像の印刷領域は、第1画像領域C及び第2画像領域Dを含んでいる。第1画像領域Cは、第2画像領域Dよりも先に印刷され、間隔Eを空けて第2画像領域Dよりも前方に配置されている。
【0114】
また、ヘッド20において複数のノズル23が左右方向に並んでノズル列23aを形成し、4本のノズル列23aが互いに平行に前後方向に並んでいる。ノズル23に対応して駆動素子25が配置されており、ノズル列23aに対応して駆動素子列25aが並んでいる。
【0115】
例えば、このうち、前から2列目の第2ノズル列23a2に対応する第2駆動素子列25a2の駆動素子25の駆動電圧(第2駆動電圧V)と、前から3列目の第3ノズル列23a3に対応する第3駆動素子列25a3の駆動素子25の駆動電圧(第3駆動電圧V)とは、互いに等しく設定されている。第2駆動電圧V及び第3駆動電圧Vは、前から1列目の第1ノズル列23a1に対応する第1駆動素子列25a1の駆動電圧(第1駆動電圧V)、及び、前から4列目の第4ノズル列23a4に対応する第4駆動素子列25a4の駆動電圧(第4駆動電圧V)とは異なる。
【0116】
この場合、第2駆動素子列25a2の駆動素子25及び第3駆動素子列25a3の駆動素子25の範囲Fが、互いに同じ駆動電圧Vであり、前後方向のおける寸法Gを有している。この範囲Fの寸法Gは、第1画像領域Cと第2画像領域Dとの間隔Eよりも大きい。このため、この間隔Eにおいて範囲Fの駆動素子25を一体的に液体の粘度に応じて駆動電圧に変更することができない。これに対し、液体の粘度に応じて背圧P及び駆動電圧Vを変更することにより、画像の濃度ムラを低減することができる。
【0117】
<その他の変形例>
なお、図4の例では、背圧調整部50は、吸排気ポンプ52を用いたが、ポンプはこれに限定されない。例えば、背圧調整部50は、排気ポンプ、大気開放菅53及び開閉弁54をさらに有していてもよい。この場合、開閉弁54を閉じると、タンク16が密閉状態になる。この状態で排気ポンプを駆動すると、タンク16内の圧力が低下する。一方、開閉弁54を開くと、タンク16が大気に開放されて、タンク16内に空気が外部から流入することにより、タンク16内の圧力が上昇する。この排気ポンプの駆動率及び開閉弁54の開度を調整することにより、タンク16内の圧力の程度を調整することができる。
【0118】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の液体吐出装置、その制御方法及びプログラムは、液体の粘度変化に起因する画質の低下を抑制することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラム等として有用である。
【符号の説明】
【0120】
10 :液体吐出装置
11 :筐体
16 :タンク
16a :貯留空間
17 :第1温度検出器
18 :第2温度検出器
19 :被印刷媒体検出部
20 :ヘッド
23 :ノズル
25 :駆動素子
30 :搬送装置
40 :制御装置
50 :背圧調整部
52 :吸排気ポンプ
56 :仕切り
57 :第1駆動部
58 :浸漬部
59 :第2駆動部
60 :循環流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13