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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両のシャッタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20241008BHJP
   B60R 19/52 20060101ALI20241008BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20241008BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60K11/04 K
B60K11/04 J
B60R19/52 M
F01P11/10 F
F01P5/06 509
F01P11/10 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020140854
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036574
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】前田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】設楽 悠起朗
(72)【発明者】
【氏名】山中 大明
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-223905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0308763(US,A1)
【文献】特開2013-86630(JP,A)
【文献】特開2017-39368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229598(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110435411(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0110944(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04,
B60R 19/52,
F01P 11/10, 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル開口部(2)から導入される空気と熱交換を行う熱交換器(5,6)を有する車両(C)に搭載され、前記グリル開口部から導入される空気を前記熱交換器に導く空気導入路(7)において前記グリル開口部よりも前記熱交換器寄りに配置されるシャッタ装置(10)であって、
前記空気導入路を開閉する開閉部(30)と、
前記開閉部の開閉状態に関わらず前記グリル開口部から導入される空気を常に前記熱交換器に導くことが可能な常時開口部(100,101,102,102a,102b,102c,103,104)と、
枠状に形成され、前記空気導入路を流れる空気が枠内の空間を流れるフレーム(20)と、
前記フレームにより回転可能に支持され、前記フレームの枠内の空間を開閉することにより前記開閉部として機能する複数のブレード(30)と、
複数の前記ブレードを開閉させるアクチュエータ装置(40)と、を備え
複数の前記ブレードは所定のピッチで配置されており、
前記所定のピッチで配置可能な複数の前記ブレードのうち、少なくとも一つのブレードが取り除かれており、
前記ブレードが取り除かれた部分に形成される隙間により前記常時開口部(102,102a,102b,102c)が形成されている
車両のシャッタ装置。
【請求項2】
前記開閉部は、前記空気導入路における空気の流れ方向において前記熱交換器の前又は後に配置されている
請求項1に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項3】
前記常時開口部は、前記フレームの枠内の空間に均一に複数設けられている
請求項1又は2に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項4】
前記常時開口部は、前記フレームの枠内の空間に不均一に複数設けられている
請求項1又は2に記載の車両のシャッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両のシャッタ装置がある。この特許文献1に記載の車両には、グリル開口部からエンジンルームまで延びる空気流路の途中に2つの熱交換器が配置されている。特許文献1に記載のシャッタ装置は、この2つの熱交換器の間に配置されている。熱交換器は、例えばラジエータや、空調装置の冷凍サイクルに用いられるコンデンサである。シャッタ装置は、フレームと、複数のブレードと、アクチュエータ装置とを備えている。フレームは枠状に形成されている。フレームの枠内の空間には、車両のグリル開口部から導入される空気が流れる。複数のブレードは、フレームにより回転可能に支持されている。アクチュエータ装置は複数のブレードを開閉動作させる。
【0003】
このシャッタ装置では、複数のブレードが開状態である場合、車両の走行風がグリル開口部及び熱交換器を介してエンジンルームに流れる。そのため、熱交換器としてラジエータが用いられている場合にはラジエータでエンジン冷却水を冷却することができる。また、熱交換器としてコンデンサが用いられている場合にはコンデンサで冷媒を放熱することができる。一方、複数のブレードが閉状態である場合には、グリル開口部から熱交換器を介してエンジンルームに向かう空気の流れを遮断することができるため、例えば車両の空気抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-15426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるようなシャッタ装置を車両に搭載する場合、車両の空気抵抗を最大限に低減させるためには、熱交換器の全面を覆うようにシャッタ装置を設ければよい。これにより、シャッタ装置の複数のブレードが閉状態になった際に、熱交換器に空気が流れなくなるため、熱交換器からエンジンルームに向かう空気の流れを完全に遮断することができる。結果的に、空気抵抗を最大限に低減させることができる。
【0006】
しかしながら、シャッタ装置に何らかの異常が生じることにより複数のブレードが閉状態のまま動作しなくなった場合、車両の走行風が熱交換器に供給されなくなる。そのため、例えば熱交換器としてラジエータが用いられている場合には、そのラジエータに車両の走行風が供給されなくなると、エンジン冷却水を冷却することができなくなるため、エンジンがオーバーヒートするおそれがある。また、熱交換器としてコンデンサが用いられている場合には、そのコンデンサに車両の走行風が供給されなくなると、冷媒を冷却することができなくなるため、空調装置が冷房運転で動作できなくなるおそれがある。さらに、熱交換器として、電動車両のインバータ装置を流れる冷却水を冷却するためのラジエータが用いられている場合には、そのラジエータに車両の走行風が供給されなくなると、インバータ装置に熱異常が生じることにより、電動車両が走行できなくなるおそれがある。
【0007】
このように、複数のブレードが閉状態のまま動作しなくなるような異常がシャッタ装置に生じると、熱交換器の正常な動作を維持することができなくなる結果、車両に様々な異常が生じる懸念がある。
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のブレードが閉状態のまま動作しなくなるような異常が生じた場合であっても、熱交換器を機能させることが可能な車両のシャッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両のシャッタ装置(10)は、グリル開口部(2)から導入される空気と熱交換を行う熱交換器(5,6)を有する車両(C)に搭載され、グリル開口部から導入される空気を熱交換器に導く空気導入路(7)においてグリル開口部よりも熱交換器寄りに配置される。シャッタ装置は、空気導入路を開閉する開閉部(30)と、開閉部の開閉状態に関わらずグリル開口部から導入される空気を常に熱交換器に導くことが可能な常時開口部(100,101,102,102a,102b,102c,103,104)と、枠状に形成され、空気導入路を流れる空気が枠内の空間を流れるフレーム(20)と、フレームにより回転可能に支持され、フレームの枠内の空間を開閉することにより開閉部として機能する複数のブレード(30)と、複数のブレードを開閉させるアクチュエータ装置(40)と、を備える。複数のブレードは所定のピッチで配置されており、所定のピッチで配置可能な複数のブレードのうち、少なくとも一つのブレードが取り除かれており、ブレードが取り除かれた部分に形成される隙間により常時開口部(102,102a,102b,102c)が形成されている。
【0009】
この構成によれば、何らかの異常により開閉部が閉状態のまま動作しなくなった場合であっても、グリル開口部から導入される空気が常時開口部を通じて熱交換器に導入されるため、熱交換器を機能させることができる。
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の車両のシャッタ装置によれば、複数のブレードが閉状態のまま動作しなくなるような異常が生じた場合であっても、熱交換器を機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、車両の概略構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のシャッタ装置の斜視構造を示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態の上側ブレードの正面構造を示す正面図である。
図4図4は、第1実施形態の上側ブレード、フレーム、及びリンク部材の連結部分の断面構造を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態の下側ブレードの正面構造を示す正面図である。
図6図6は、第1実施形態のシャッタ装置におけるリンク部材及びシャフトの連結部分周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図7図7は、第1実施形態のシャッタ装置におけるアクチュエータ装置を取り外した状態のフレーム周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図8図8は、第1実施形態のシャッタ装置におけるアクチュエータ装置周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図9図9は、第1実施形態のシャッタ装置におけるシャフトの上端部周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図10図10は、第1実施形態のシャッタ装置におけるシャフトの校正部周辺の断面構造を示す断面図である。
図11図11は、第1実施形態のシャッタ装置及びラジエータの正面構造を模式的に示す図である。
図12図12は、第1実施形態の変形例のシャッタ装置及びラジエータの正面構造を模式的に示す図である。
図13図13は、第1実施形態のシャッタ装置及びラジエータの平面構造を模式的に示す図である。
図14図14は、第2実施形態のシャッタ装置及びラジエータの正面構造を模式的に示す図である。
図15図15は、第2実施形態のシャッタ装置及びラジエータの平面構造を模式的に示す図である。
図16図16は、第2実施形態の第1変形例のシャッタ装置及びラジエータの正面構造を模式的に示す図である。
図17図17は、第2実施形態の第2変形例のシャッタ装置及びラジエータの正面構造を模式的に示す図である。
図18図18は、第3実施形態のシャッタ装置におけるシャフトの校正部周辺の断面構造を示す断面図である。
図19図19は、第3実施形態の上側ブレード、フレーム、及びリンク部材の連結部分の断面構造を示す断面図である。
図20図20は、第3実施形態の変形例のシャッタ装置におけるリンク部材の端部の周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図21図21は、第4実施形態の上側ブレード、フレーム、及びリンク部材の連結部分の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車両のシャッタ装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、第1実施形態のシャッタ装置が搭載される車両の概略構成について説明する。
【0013】
図1に示されるように、車両Cのボディ1の前方にはグリル開口部2が設けられている。グリル開口部2は、車両Cの走行風をエンジンルーム3に導入するために設けられている。矢印Wで示される方向は、グリル開口部2から導入される空気の流れ方向を示している。グリル開口部2とエンジンルーム3との間にはコンデンサ5及びラジエータ6が配置されている。コンデンサ5はラジエータ6よりも空気流れ方向Wの上流側に配置されている。グリル開口部2から導入される空気は空気導入路7を通じてコンデンサ5及びラジエータ6に導かれる。コンデンサ5は、車両Cに搭載される空調装置の冷凍サイクルの構成要素であって、冷凍サイクル内を循環する冷媒と、グリル開口部2から導入される空気との間で熱交換を行うことにより冷媒の放熱を行う。ラジエータ6は、エンジン4を冷却する冷却水と、グリル開口部2から導入される空気との間で熱交換を行うことにより冷却水の放熱を行う。本実施形態ではコンデンサ5及びラジエータ6が熱交換器に相当する。また、コンデンサ5の内部を流れる冷媒、及びラジエータ6の内部を流れるエンジン冷却水が熱交換媒体に相当する。
【0014】
コンデンサ5とラジエータ6との間にはシャッタ装置10が設けられている。すなわち、シャッタ装置10は、空気流れ方向Wにおいてコンデンサ5の直後に配置され、且つラジエータ6の直前に配置されている。シャッタ装置10は、空気導入路7を開閉させることにより、コンデンサ5、ラジエータ6、及びエンジンルーム3における空気の流れ状態を変化させる。具体的には、シャッタ装置10は、グリル開口部2から導入される空気がコンデンサ5,ラジエータ6、及びエンジンルーム3に流れる開状態と、それらへの空気の流れを遮断する閉状態とに切り替え可能に構成されている。シャッタ装置10は、例えばエンジン4の冷間始動時に閉状態になることによりエンジン4の早期の暖機を可能とする。また、シャッタ装置10は、例えば車両Cの高速走行時に閉状態になることにより車両Cの空気抵抗を低減させて、その空力性能を向上させる。
【0015】
次に、シャッタ装置10の具体的な構造について説明する。
図2に示されるように、シャッタ装置10は、フレーム20と、複数のブレード30と、アクチュエータ装置40とを備えている。
【0016】
フレーム20は、矩形枠状に形成されたフレーム本体部21と、フレーム本体部21の枠内に十字状に配置される縦フレーム補強部22及び横フレーム補強部23とを有している。
フレーム本体部21は、上側フレーム片210、下側フレーム片211、左側フレーム片212、及び右側フレーム片213を有している。フレーム本体部21の枠内の空間には、図1に示されるグリル開口部2から導入される空気が矢印Yで示される方向に流れる。
【0017】
以下では、上側フレーム片210及び下側フレーム片211の長手方向を幅方向Xと称し、左側フレーム片212及び右側フレーム片213の長手方向を高さ方向Zと称する。また、幅方向Xの一方向であるX1方向を「右方向」と称し、幅方向Xの他方向であるX2方向を「左方向」と称する。さらに、高さ方向Zの一方向であるZ1方向を「上方向」と称し、高さ方向Zの他方向であるZ2方向を「下方向」と称する。また、幅方向X及び高さ方向Zの両方に直交する方向Yを「空気流れ方向Y」と称する。
【0018】
縦フレーム補強部22はフレーム本体部21の上側フレーム片210の中間部分と下側フレーム片211の中間部分との間を架け渡すように設けられている。縦フレーム補強部22はフレーム本体部21を補強するために設けられている。横フレーム補強部23はフレーム本体部21の右側フレーム片213の中間部分と左側フレーム片212の中間部分との間を架け渡すように設けられている。横フレーム補強部23はフレーム本体部21を補強し、且つブレード30を保持するために設けられている。縦フレーム補強部22及び横フレーム補強部23により、フレーム本体部21の枠内の空間が4つの開口領域A11~A14に区画されている。
【0019】
なお、図1に示されるグリル開口部2は、高さ方向Zにおいてアッパグリル開口部とロアグリル開口部とに分けられていることがある。この場合、フレーム本体部21の枠内に区画される4つの開口領域のうち、横フレーム補強部23よりも上方に配置される2つの上側開口領域A11,A12は空気流れ方向Yにおいてアッパグリル開口部に対向するように配置され、横フレーム補強部23よりも下方に配置される2つの下側開口領域A13,A14は空気流れ方向Yにおいてロアグリル開口部に対向するように配置される。
【0020】
複数のブレード30は、フレーム20の枠内の4つの領域A11~A14にそれぞれ配置されている。フレーム20の枠内の4つの領域A11~A14において、複数のブレード30は、高さ方向Zに長手方向を有するように配置されるとともに、幅方向Xに並べて配置されている。本実施形態では、複数のブレード30が開閉部に相当する。
【0021】
以下では、便宜上、複数のブレード30のうち、フレーム本体部21の上側開口領域A11,A12に配置されるブレード30を「上側ブレード31」と称し、下側開口領域A13,A14に配置されるブレード30を「下側ブレード32」と称する。
図3に示されるように、上側ブレード31は、平板部310と、平板部310の下端部に設けられる下側回転軸311及び動力伝達軸312と、平板部310の上端部に設けられる上側回転軸313とを有している。各回転軸311,313は、高さ方向Zにおいて同軸上に配置されている。下側回転軸311は横フレーム補強部23により回転可能に支持される。具体的には、図4に示されるように、横フレーム補強部23には、幅方向Xに所定のピッチPaで複数の溝230が形成されている。これらの溝230に複数の上側ブレード31のそれぞれの下側回転軸311が挿入されることにより、上側ブレード31の下端部が横フレーム補強部23により回転可能に支持されている。また、リンク部材80にも、同様に幅方向Xに所定のピッチPaで複数の溝81が形成されている。これらの溝81には複数の上側ブレード31のそれぞれの動力伝達軸312が挿入されている。なお、図示は省略するが、上側ブレード31の上側回転軸313は、図2に示されるフレーム本体部21の上側フレーム片210により回転可能に支持されている。
【0022】
図5に示されるように、下側ブレード32も、上側ブレード31と同様に、平板部320と、平板部320の上端部に設けられる上側回転軸321及び動力伝達軸322と、平板部320の下端部に設けられる下側回転軸323とを有している。下側ブレード32の上側回転軸321及び動力伝達軸322は、上側ブレード31の下側回転軸311及び動力伝達軸312と同様に、横フレーム補強部23及びリンク部材80にそれぞれ連結されている。また、下側ブレード32の下側回転軸323は、図2に示されるフレーム本体部21の下側フレーム片211により回転可能に支持されている。
【0023】
図2に示されるように、リンク部材80は、フレーム本体部21の横フレーム補強部23に沿って幅方向Xに延びるように形成された板状の部材からなる。
図6に示されるように、フレーム本体部21の右側フレーム片213には、横フレーム補強部23との連結部分から上方に延びるようにシャフト70が配置されている。シャフト70の下端部は、リンク部材80の右端部に連結されている。図7に示されるように、シャフト70の上端部は、上側フレーム片210の一端部の上面210aから突出している。このシャフト70の上端部には歯車71が設けられている。
【0024】
図8に示されるように、アクチュエータ装置40は、上側フレーム片210の一端部の上面210aに組み付けられて固定されている。アクチュエータ装置40は、シャフト70の歯車71に歯合される駆動軸を有しており、電力の供給に基づいて駆動軸から歯車71を介してシャフト70にトルクを付与することによりシャフト70を回転させる。シャフト70の回転により、図4に示されるリンク部材80が横フレーム補強部23に対して幅方向Xに相対変位することにより、リンク部材80から上側ブレード31及び下側ブレード32のそれぞれの動力伝達軸312、322に幅方向Xの外力が付与される。これにより上側ブレード31及び下側ブレード32に回転力が付与されて、上側ブレード31及び下側ブレード32が回転動作する。上側ブレード31及び下側ブレード32の回転動作により、フレーム本体部21の枠内の空間が開閉される。
【0025】
具体的には、リンク部材80が右方向に変位すると、複数のブレード30は開状態となる方向に変位する。複数のブレード30が開状態であるとき、各ブレード30の間に隙間が形成されるため、その隙間を通じて、グリル開口部2から導入される空気がコンデンサ5及びラジエータ6に供給される。
【0026】
一方、リンク部材80が左方向に変位すると、複数のブレード30は閉状態となる方向に変位する。複数のブレード30が閉状態であるとき、各ブレード30の間の隙間が閉塞されるため、コンデンサ5及びラジエータ6への空気の供給が遮断される。
図9に示されるように、シャフト70には、歯車71の基端部にあたる位置に、歯車71の外形よりも大きい外形を有する円盤部72が形成されている。円盤部72の外周面には、その径方向外側に突出するように校正部73が形成されている。校正部73は、上側フレーム片210に形成された円弧状の切欠き部210b内に配置されている。校正部73の移動範囲は、切欠き部210bの一端に設けられる第1内壁面210dから、切欠き部210bの他端部に設けられる第2内壁面210eまでの範囲に規制されている。校正部73が第1内壁面210dに接触する位置までシャフト70が回転することにより、複数のブレード30が全開状態となる。校正部73が第2内壁面210eに接触する位置までシャフト70が回転することにより、複数のブレード30が全閉状態となる。
【0027】
また、本実施形態のシャッタ装置10では、例えば車両Cのイグニッションスイッチがオン操作された際に、アクチュエータ装置40のキャリブレーションを行う。
具体的には、車両Cのイグニッションスイッチがオン操作されたとき、アクチュエータ装置40は、図9に矢印D1で示される方向、すなわち校正部73が切欠き部210bの第2内壁面210eに接触する方向にシャフト70を回転させる。シャフト70が矢印D1で示される方向に回転すると、ブレード30は閉状態の方向に変位する。アクチュエータ装置40は、シャフト70を矢印D1で示される方向に回転させて、校正部73が切欠き部210bの第2内壁面210eに接触したときの駆動軸の位置を初期位置として記憶する。本実施形態では、このときのシャフト70の位置が、ブレード30が全閉状態となる位置に対応している。全閉状態とは、図4に示されるように、ブレード30がフレームの枠内の空間を最も閉じている状態である。
【0028】
また、アクチュエータ装置40は、シャフト70の閉状態の初期位置を学習させた後、シャフト70を、図9に矢印D1で示される方向とは逆方向の矢印D2で示される方向に回転させる。シャフト70が矢印D2で示される方向に回転すると、ブレード30は開状態の方向に変位する。アクチュエータ装置40は、シャフト70を矢印D2で示される方向に回転させて、校正部73が切欠き部210bの第1内壁面210dに接触したときの駆動軸の位置を記憶する。本実施形態では、このときのシャフト70の位置が、ブレード30が全開状態となる位置に対応している。
【0029】
ところで、このようなシャッタ装置10では、ブレード30が全閉状態になっている際にアクチュエータ装置40に何らかの異常が生じたような場合、ブレード30が全閉状態に保持されたまま、シャッタ装置10が作動しなくなる可能性がある。これにより、グリル開口部2から導入される空気がラジエータ6に供給されなくなると、ラジエータ6が熱交換器として機能しなくなる可能性がある。ラジエータ6が熱交換器として機能しなくなると、エンジン冷却水を冷却することができなくなるため、エンジン4がオーバーヒートする等の不具合が発生するおそれがある。
【0030】
そこで、本実施形態のシャッタ装置10では、図11に示されるように、シャッタ装置10の開閉状態に関わらず、グリル開口部2から導入される空気を常にラジエータ6に供給することが可能な常時開口部100を設けるようにしている。なお、図11では、シャッタ装置10及びラジエータ6のそれぞれの構造が模式的に示されている。
【0031】
図11に示されるように、ラジエータ6は、コア部60と、タンク61,62とを備えている。コア部60は、高さ方向Zに所定の隙間を有して配置される複数のチューブ600と、隣り合うチューブの間に配置される複数のフィン601とを有している。チューブ600は、偏平筒状をなしており、幅方向Xに延びるように形成されている。フィン601は、薄い金属板を波状に屈曲させることにより形成される、いわゆるコルゲートフィンからなる。タンク61,62は、コア部60の複数のチューブ600の両端部にそれぞれ接続されている。タンク61,62は筒状に形成されており、複数のチューブ600にエンジン冷却水を分配する部分として、あるいは複数のチューブ600を流れたエンジン冷却水を集合させる部分として機能する。ラジエータ6では、コア部60において、チューブ600の内部を流れるエンジン冷却水と、その外部を流れる空気との間で熱交換が行われることにより、エンジン冷却水の熱が空気に吸収されて、エンジン冷却水が冷却される。
【0032】
シャッタ装置10は、空気流れ方向Yにおいてラジエータ6のコア部60に対向するように配置されている。より詳しくは、シャッタ装置10のフレーム20は、その空気流れ方向Yから見た時の外縁がラジエータ6のコア部60の外縁よりも小さくなるように形成されている。したがって、空気流れ方向Yから見たときに、フレーム20の外縁とラジエータ6のコア部60の外縁との間には隙間100が形成されている。隙間100は、空気流れ方向Yに直交する方向である幅方向Xにおけるフレーム20の一端部に隣り合うように設けられている。
【0033】
この構成によれば、シャッタ装置10のブレード30の開閉状態に関わらず、ラジエータ6のコア部60のうち、隙間100に対向する部分には空気が常に供給可能である。したがって、仮にブレード30が全閉状態に保持されたままシャッタ装置10が作動しなくなった場合であっても、隙間100を通じてラジエータ6のコア部60に空気が供給されるため、ラジエータ6が熱交換器として動作することが可能である。このように、本実施形態のシャッタ装置10では、フレーム20の外縁とラジエータ6のコア部60の外縁との間に形成される隙間100が、ブレード30の開閉状態に関わらず空気を常に熱交換器に導く常時開口部として機能する。
【0034】
以上説明した本実施形態のシャッタ装置10によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)シャッタ装置10は、空気導入路7を開閉する複数のブレード30と、ブレード30の開閉状態に関わらずグリル開口部2から導入される空気を常にラジエータ6に導くことが可能な常時開口部100とを備える。この構成によれば、何らかの異常により複数のブレード30が閉状態のまま動作しなくなった場合であっても、ラジエータ6を機能させることができる。
【0035】
(2)シャッタ装置10は、空気流れ方向Yにおいてコンデンサ5の直後であって、且つラジエータ6の直前に配置されている。この構成によれば、コンデンサ5とラジエータ6との間に形成される隙間にシャッタ装置10を配置できるため、シャッタ装置10を設置するためのスペースを別途設ける必要がない。そのため、省スペース化を図ることができる。
【0036】
(3)常時開口部100は、空気流れ方向Yから見たときにフレーム20の外縁とラジエータ6のコア部60の外縁との間に設けられる隙間として形成されている。この構成によれば、ラジエータ6のコア部60の外形に合わせてフレーム20の外形を設定するだけで常時開口部100を容易に形成することができる。
【0037】
(4)常時開口部100は、幅方向Xのフレーム20の一端部に配置されている。この構成は、ラジエータ6のコア部60の全領域のうち、タンク61側の領域で空気と熱交換を行った方が、他の領域で空気と熱交換を行うよりも熱交換効率を高めることができる場合に有効である。
【0038】
(変形例)
次に、第1実施形態のシャッタ装置10の変形例について説明する。
図12に示されるように、本変形例のシャッタ装置10では、幅方向Xのフレーム20の両端部に隣り合うように常時開口部100,101がそれぞれ形成されている。
【0039】
ラジエータ6のコア部60では、その構造上、空気との熱交換を一部の部分だけで行うよりも、複数の部分で行った方が熱交換効率を高めることができる場合が多い。よって、図12に示されるように、フレーム20の両端部にそれぞれ隣り合うように常時開口部100,101が配置されていれば、図11に示されるようにフレーム20の一端部にのみ常時開口部100が配置されている構造と比較すると、ラジエータ6のコア部60における熱交換効率を高めることができる。結果的に、より少ない風量でエンジン冷却水を冷却することが可能となる。
【0040】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のシャッタ装置10について説明する。以下、第1実施形態のシャッタ装置10との相違点を中心に説明する。
図11に示されるような第1実施形態のシャッタ装置10では、ラジエータ6のコア部60において空気との熱交換が効率的に行われない可能性がある。具体的には、図11に示されるようにフレーム20の一端部にのみ常時開口部100が形成されている場合、ブレード30が閉状態のまま保持された際に、図13に矢印Y1,Y2で示されるように、常時開口部100を介してラジエータ6のコア部60の一端部にのみ空気が流れ易くなる。すなわち、ラジエータ6のコア部60では、その一端部のみで熱交換が行われる一方、その他の大部分では熱交換が行われないため、熱交換効率が著しく低下する。そのため、ラジエータ6においてエンジン冷却水を、予め要求される温度まで低下させようとすると、ラジエータ6に供給される空気量を増加させる必要がある。この場合、車両Cの空気抵抗が増加して空力性能が低下するため、好ましくない。
【0041】
そこで、本実施形態のシャッタ装置10では、ブレード30が閉状態のまま保持された際に、できる限りラジエータ6のコア部60の全領域に空気が導入されるようにすることで、車両Cの空力性能とラジエータ6の冷却性能との両立を図るようにしている。
具体的には、図14に示されるように、本実施形態のシャッタ装置10のフレーム20は、その空気流れ方向Yから見た時の外縁がラジエータ6のコア部60の外縁と略同一となるように形成されている。すなわち、空気流れ方向Yから見たときに、ラジエータ6のコア部60の全領域がシャッタ装置10のフレーム20及びブレード30により覆われている。
【0042】
シャッタ装置10では、フレーム本体部21の枠内に形成される4つの領域A11~A14のそれぞれにおいて、幅方向Xに所定のピッチPaでブレード30を配置可能となっている。ブレード30を配置可能な複数の設置箇所のうち、図14に点ハッチングで示される複数の箇所のブレード30を一つ取り除くことにより、それらの箇所に常時開口部102がそれぞれ設けられている。すなわち、本実施形態のシャッタ装置10では、ブレード30を間引いて配置することで常時開口部102を形成するようにしている。
【0043】
以上説明した本実施形態のシャッタ装置10によれば、上記の(1)及び(2)に示される作用及び効果に加え、以下の(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
(5)シャッタ装置10では、所定のピッチPaで配置可能な複数のブレード30のうち、少なくとも一つのブレード30が取り除かれており、そのブレード30が取り除かれた部分に形成される隙間により常時開口部102が形成されている。この構成によれば、常時開口部102をフレーム20の枠内の空間に均一に複数設けることができる。そのため、図15に示されるように、複数の常時開口部102のそれぞれを通過する空気がラジエータ6のコア部60に供給されることにより、ラジエータ6のコア部60の全体に空気を供給することができる。これにより、図11に示されるようにラジエータ6のコア部60の一端部のみに空気が供給される場合と比較すると、ラジエータ6のコア部60における熱交換効率を高めることができるため、より少ない空気量でエンジン冷却水を冷却することが可能となる。結果的に、車両Cの空力性能とラジエータ6の冷却性能との両立を図ることができる。
【0044】
(第1変形例)
次に、第2実施形態のシャッタ装置10の第1変形例について説明する。
第2実施形態のシャッタ装置10は、図16に示されるように、点ハッチングで示される箇所のブレード30を二つ取り除くことにより、それらの箇所に常時開口部102が形成されている。このような構成によれば、より大きい常時開口部102を形成することができるため、ブレード30が閉状態のまま保持された際に、ラジエータ6の熱交換効率を高めることができる。
【0045】
(第2変形例)
次に、第2実施形態のシャッタ装置10の第2変形例について説明する。
車両Cでは、グリル開口部2の付近に配置される障害物により、グリル開口部2を通過可能な空気の風量が部分的に異なる。例えばグリル開口部2が高さ方向Zにおいてアッパグリル開口部とロアグリル開口部とに分けられている場合、アッパグリル開口部には、車両Cのエンブレムや各種センサ等が配置されることがある。そのため、エンブレムやセンサ等が配置されている部分では、それらが障害物となって空気の風量が減少する。結果的に、アッパグリル開口部では空気の風量分布が不均一になることがある。一方、ロアグリル開口部では、そのような障害物が配置される事が少ないため、空気の風量分布が均一になり易い。
【0046】
一方、アッパグリル開口部において空気の風量分布が不均一になると、シャッタ装置10の上側開口領域A11,A12を流れる空気の風速分布が不均一になる。具体的には、上側開口領域A11,A12のうち、空気流れ方向Yの上流側に障害物が配置されていない領域では、空気の風速が速くなり易い。これに対し、空気流れ方向Yの上流側にセンサ等が配置されている領域では空気の風速が若干遅くなる。さらに、空気流れ方向Yの上流側にエンブレムが配置されている領域では空気の風速が更に遅くなる。このようにして空気の風速分布が不均一になると、ラジエータ6のコア部60に供給される空気量にばらつきが生じるため、ラジエータ6の熱交換効率を悪化させるおそれがある。
【0047】
そこで、本変形例のシャッタ装置10では、このような空気の風速分布の差異に応じて、複数の常時開口部のそれぞれの開度を変化させるようにしている。具体的には、図17に示されるように、上側開口領域A11,A12のうち、空気の風速が相対的に速い領域A110,A120では、点ハッチングで示される箇所において一つのブレード30が取り除かれることにより常時開口部102aが形成されている。また、空気の風速が相対的に若干遅くなる領域A111,A121では、点ハッチングで示される箇所において2つのブレード30が取り除かれることにより常時開口部102bが形成されている。さらに、空気の風速が相対的に最も遅くなる領域A112,A122では、点ハッチングで示される箇所において3つのブレードが取り除かれることにより常時開口部102cが形成されている。このように、本実施形態のシャッタ装置10では、常時開口部102a~102cがフレーム20の枠内の空間に不均一に設けられている。
【0048】
一方、空気の風速分布が均一になり易い下側開口領域A13,A14には、点ハッチングで示される複数の箇所において一つのブレード30が取り除かれることにより常時開口部102が形成されている。
図17に示されるようなシャッタ装置10の構造によれば、空気の風速が遅い部分には、より広い常時開口部102cが形成されているため、常時開口部を通過する空気の風量を増加させることができる。一方、空気の風速が速い部分には、より狭い常時開口部が形成されているため、常時開口部102aを通過する空気の風量を減少させることができる。結果的に、ラジエータ6に供給される空気の風量分布を均一化させることができるため、ラジエータ6の熱交換効率を向上させることができる。
【0049】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態のシャッタ装置10について説明する。以下、第1実施形態のシャッタ装置10との相違点を中心に説明する。
本実施形態のシャッタ装置10では、全開状態になっているときのブレード30の開度を「100[%]」とし、全閉状態になっているときのブレード30の開度を「0[%]」とするとき、シャッタ装置10の構造上、ブレード30が「5[%]」や「10[%]」までしか閉じない構造とすることにより、常時開口部を形成する。
【0050】
具体的には、本実施形態のシャッタ装置10では、図18に示されるように、上側フレーム片210の切欠き部210bに形成される第2内壁面210eが、図10に示される位置よりも矢印D2で示される方向にずれて、すなわちブレード30が開状態となる方向にずれて設けられている。このシャッタ装置10では、アクチュエータ装置40がシャフト70を矢印D1で示される方向に回転させた際に、校正部73が切欠き部210bの第2内壁面210eに接触すると、それ以上シャフト70は物理的に回転することができない。よって、図10に示されるように校正部73が切欠き部210bの第2内壁面210eに接触しているときのシャフト70の位置でブレード30の開度が「0[%]」に設定されているとすると、図18に示されるように第2内壁面210eの位置を変更すれば、ブレード30が、「5[%]」や「10[%]」等、全閉状態よりも所定量だけ開いた所定の開度までしか閉じない構造とすることができる。アクチュエータ装置40は、そのキャリブレーションの際に、校正部73が切欠き部210bの第2内壁面210eに接触したときの駆動軸の位置を閉状態の初期位置として学習する。
【0051】
図18に示されるようにブレード30が閉状態となる方向に最も変位した際にブレード30が所定の開度までしか閉じない構造であれば、仮にブレード30が閉状態に保持されたままシャッタ装置10が作動しなくなったとしても、図19に示されるようにブレード30の開度は所定の開度に維持される。すなわち、ブレード30が所定の開度だけ常時開口した状態となる。本実施形態のシャッタ装置10では、この各ブレード30の間に形成される隙間103が常時開口部となる。
【0052】
以上説明した本実施形態のシャッタ装置10によれば、上記の(1)及び(2)に示される作用及び効果に加え、以下の(6)に示される作用及び効果を得ることができる。
(6)アクチュエータ装置40が複数のブレード30を閉状態となる方向に最も変位させた際に、複数のブレード30は、全閉状態よりも所定の開度だけ開いた開度まで変位する。この構成によれば、ブレード30の開閉状態に関わらずグリル開口部2から導入される空気を常にラジエータ6に導くことが可能な常時開口部103を容易に形成することができる。
【0053】
(変形例)
次に、第3実施形態のシャッタ装置10の変形例について説明する。
本変形例のシャッタ装置10では、シャフト70の校正部73と切欠き部210bの第2内壁面210eとを接触させることでキャリブレーションを行うという方法に加えて、あるいはその方法に代えて、リンク部材80とフレーム20とを接触させることでキャリブレーションを行うという方法を用いている。
【0054】
具体的には、図20に示されるように、フレーム本体部21の左側フレーム片212には、幅方向Xにおいてリンク部材80の端面82に対向するように校正面212aが形成されている。アクチュエータ装置40は、そのキャリブレーションの際に、リンク部材80を左方向に変位させる。そして、アクチュエータ装置40は、リンク部材80の端面82が校正面212aに接触したときの駆動軸の位置を閉状態の初期位置として学習する。
【0055】
本変形例のシャッタ装置10では、リンク部材80の端面82に対する校正面212aの相対的な位置を変更することにより、ブレード30が「5[%]」や「10[%]」等の予め設定された所定の開度までしか閉じない構造とすることができる。したがって、第3実施形態のシャッタ装置10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0056】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態のシャッタ装置10について説明する。以下、第1実施形態のシャッタ装置10との相違点を中心に説明する。
図21に示されるように、本実施形態のリンク部材80には、大多数の溝81がピッチPaで形成される一方、その中の一部の溝81aが右方向寄りに配置されている。したがって、溝81aは、その右方向に隣り合う溝81bに対して距離Pbだけ離れて位置するとともに、その左方向に隣り合う溝81cに対して距離Pcだけ離れて位置している。「Pa」、「Pb」、及び「Pc」の間には、「Pb<Pa<Pc」の関係が成立する。
【0057】
このような溝81aがリンク部材80に形成されることにより、図21に示されるように、上側ブレード31のうちの大部分のブレード31aが全閉状態に保持されたままシャッタ装置10が作動しなくなった場合であっても、溝81aに動力伝達軸312が挿入されるブレード31bは、全閉状態よりも若干開いた状態となる。これにより、ブレード31bと、その両隣のブレード31aとの間に隙間104が形成されるため、この隙間104が常時開口部となって、ラジエータ6に空気を供給することができる。
【0058】
なお、図21では、上側ブレード31のみについて説明したが、下側ブレード32に関しても同様の構造が採用されている。
以上説明した本実施形態のシャッタ装置10によれば、上記の(1)及び(2)に示される作用及び効果に加え、以下の(7)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0059】
(7)アクチュエータ装置40が複数のブレード30を閉状態となる方向に最も変位させた際に、複数のブレード31には、全閉状態まで変位可能な第1ブレード31aと、全閉状態よりも所定の開度だけ開いた開度まで変位する第2ブレード31bとが含まれている。この構成によれば、常時開口部104を容易に形成することができる。
【0060】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態のシャッタ装置10では、高さ方向Zにおけるフレーム20の両端部又は一端部に隣り合うように常時開口部100,101が設けられていてもよい。
【0061】
・各実施形態のシャッタ装置10の位置は適宜変更可能である。例えば、シャッタ装置10は、空気流れ方向Wにおいてコンデンサ5の前、あるいはラジエータ6の後に配置されていてもよい。なお、「前」には「直前」が含まれ、「後」には直後が含まれる。要は、シャッタ装置10は、図1に示されるグリル開口部2からコンデンサ5までの空気導入路7においてグリル開口部2よりもラジエータ6寄りに配置されていればよい。
【0062】
・空気導入路7に配置される熱交換器としては、コンデンサ5やラジエータ6に代えて、例えば電動車両においてインバータ装置を循環する冷却水を放熱するためのラジエータ等、任意の熱交換器を用いることが可能である。
・各実施形態のシャッタ装置10は、上下に2本に分割されたブレードが左右方向に複数併設される構成からなるものであった。これに代えて、シャッタ装置10は、上下に3本以上に分割されたブレードが左右方向に複数併設される構成、あるいは上下に分割されていない一本のブレードが左右方向に複数併設される構成からなるものであってもよい。
【0063】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0064】
C:車両
2:グリル開口部
5:コンデンサ(熱交換器)
6:ラジエータ(熱交換器)
7:空気導入路
10:シャッタ装置
20:フレーム
30:ブレード(開閉部)
31a:第1ブレード
31b:第2ブレード
40:アクチュエータ装置
60:コア部
100,101,102,102a,102b,102c,103,104:常時開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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