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  • 特許-不織布構造体およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】不織布構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 5/06 20060101AFI20241008BHJP
   D04H 1/4209 20120101ALI20241008BHJP
   D04H 1/4291 20120101ALI20241008BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20241008BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20241008BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20241008BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20241008BHJP
   D04H 3/105 20120101ALI20241008BHJP
【FI】
D04H5/06
D04H1/4209
D04H1/4291
D04H1/435
D04H1/4374
D04H3/007
D04H3/011
D04H3/105
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020143698
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038957
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂樹
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196933(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066913(WO,A1)
【文献】特開2006-160237(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129169(WO,A1)
【文献】特開2014-232281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 5/06
D04H 1/4209
D04H 1/4291
D04H 1/435
D04H 1/4374
D04H 3/007
D04H 3/011
D04H 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル及び又はオレフィン樹脂によって構成される長繊維不織布と、
無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維が混合した短繊維不織布とが熱融着した不織布構造体であって、
目付が100~4000g/m2であり、見かけ密度が0.4~1.3g/cm3であることを特徴とする不織布構造体。
【請求項2】
前記長繊維不織布を構成する長繊維は芯鞘型繊維であり、以下の(1)又は(2)のいずれか1つの特徴を有する請求項1に記載の不織布構造体。
(1)前記熱可塑性樹脂繊維の樹脂がポリエステルであり、長繊維の鞘成分がポリエステルである、または
(2)前記熱可塑性樹脂繊維の樹脂がポリオレフィンであり、長繊維の鞘成分がポリオレフィンである
【請求項3】
前記無機繊維は炭素繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の不織布構造体。
【請求項4】
前記長繊維不織布の当該不織布構造体全体に対する重量比は30%~85%であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不織布構造体。
【請求項5】
長繊維不織布をニードルパンチ法により交絡する工程と、
前記交絡した長繊維不織布に、無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維が混合した短繊維不織布を積層し、140~255℃、圧力0.1~5MPaにて熱処理する工程と、含むこと特徴とする不織布構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布構造体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形性と機械的強度特性とに優れた不織布は、工業資材用途、建材用途、自動車用途などに好適に用いられる。特に、自動車のアンダーカバーやダッシュサイレンサーなどの軽量かつ成形後の剛性に優れた成形体不織布として利用する場合に、吸音性能やクッション性能や凸凹状の突起などの成形型の形状に追随しやすく軽量であり、自動車の軽量化による省エネや作業性を大幅に改善することが可能である。また、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とが混合した不織布は特に高い曲げ剛性が期待でき、金属材料の一部を代替することも可能となる。
【0003】
従来知られている高目付成形性不織布は主に短繊維より形成されており、熱接着性繊維を多く使用する必要があり、耐熱性やコスト面で課題があった。また、引張強度や引裂き強度などの機械的強度の高い不織布は、繊維の交絡が高すぎるために成形性(熱時の伸び率)に劣り、一方、成形性の高い不織布は概して剛性に劣る。
【0004】
そこで、特許文献1には、芯鞘型複合長繊維からなる不織布で、低目付で厚みが低いにも関わらず、伸張性および成形性に優れたものが開示されている。特許文献2には、芯鞘型複合長繊維のウェブをニードルパンチ処理して三次元交絡させた緻密な自動車装備材用半製品の製造法が提案されており、加熱及び圧縮成型する際に加熱温度の範囲が広くなることが開示されている。また、特許文献3には、炭素繊維と熱成型性樹脂繊維を含むプリプレグシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-241054号公報
【文献】特開2018-9256号公報
【文献】特開2017-95662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、剛性の高い不織布を得ることが難しく、また、層間剥離を防ぐためには長時間の予熱が必要である。また、特許文献2では、具体的な剛性については明記されておらず、また、特殊な成分が必要となりコスト性に劣り、自動車で汎用品として用いられるポリプロピレンなどとの接着が容易ではない。特許文献3においては、単層で高い目付のシートを製造するのは難しく、低い目付の不織布を積層する必要があり、剛直性の高い炭素繊維を含む不織布はハンドリングの際に繊維の脱落や繊維の折れが問題となり、作業性がよくない。これからわるように、従来、軽量性と剛性に優れ、かつ高い成形性を合せ持つ高密度不織布構造体は、提案されていない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされ、その目的は、高い成形性を有し、かつ機械的強度特性に優れた不織布構造体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、以下の構成を有する本発明を完成するに至った。
1.長繊維不織布と、無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維が混合した短繊維不織布とが熱融着した不織布構造体であって、目付が100~4000g/mであり、見かけ密度が0.4~1.3g/cmであることを特徴とする不織布構造体。
2.前記長繊維不織布を構成する長繊維は芯鞘型繊維であり、芯成分がポリエステルから成り、鞘成分が前記熱可塑性樹脂からなることを特徴とする1に記載の不織布構造体。
3.前記無機繊維は、炭素繊維であることを特徴とする1または2に記載の不織布構造体。
4.前記長繊維不織布の当該不織布構造体全体に対する重量比は30%~85%であることを特徴とする1から3のいずれか1つに記載の不織布構造体。
5.長繊維不織布をニードルパンチ法により交絡する工程と、前記交絡した長繊維不織布に、無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維が混合した短繊維不織布を積層し、140~255℃、圧力0.1~5MPaにて熱処理する工程と、含むこと特徴とする不織布構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布構造体は、上記構成により、高い成形性を有し、かつ機械的強度特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】三点曲げ試験測定装置の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の不織布構造体は、長繊維不織布と、無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維が混合した短繊維不織布とが熱融着した不織布構造体であって、目付が100~4000g/mであり、見かけ密度が0.4~1.3g/cmである。
【0012】
本発明の不織布構造体のトータルの目付は最終製品に必要な機械強度特性を考慮し適宜設定することができるが、100~4000g/mである必要がある。目付が低すぎると軽量にはなるが高い剛性を期待することが難しくなる。目付が大きいほど高い剛性が期待されるが、必要とされる設置スペースが大きくなるため適正に設定する必要がある。
【0013】
長繊維不織布は不織布構造体全体に対する重量分率は、30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。また、重量分率は、85%以下が好ましい。85%を超えるとであれば、本発明の目的とする剛性の改善効果が小さくなる場合がある。長繊維不織布は熱性形成のよい長繊維を用いることができる、長繊維不織布の構成繊維の少なくとも一部が芯鞘型繊維であることが好ましい。また、捲縮の無い長繊維は、不織布中で折り曲り点が少ない状態で緩みや撓みなく配置されることが多く、その結果繊維一本一本の強度が不織布強度に直接寄与するために高い剛性を期待することができる。長繊維不織布は繊維が厚み方向ではなく二次元面内方向に主に配列していることにより、曲げ剛性や初期モジュラスを高くすることが容易になると考えられる。
【0014】
次に、長繊維不織布は単層で用いてもよいが、2層以上の不織布を積層して用いてもよい。長繊維不織布を単層で用いる際には、層内の層間剥離を防止するために厚み方向に配列された繊維が多くする必要がある。また、単層では繊維の拘束点の数が多くなり成形性が低下する可能性があるので注意を要する。長繊維不織布に積層する不織布は長繊維不織布であっても短繊維不織布であってもよい。
【0015】
不織布を積層する場合は、単一成分の不織布を積層してもよいが、一例として、単一成分の不織布と芯鞘型繊維不織布との2つ以上の層を積層してもよい。芯鞘型繊維不織布を単一成分の不織布で挟む3つの層としても好ましい。積層した不織布は、ウォーターパンチ法やニードルパンチ法で芯鞘型繊維不織布から水流やニードルを貫入させ交絡させることが好ましい。長繊維不織布は不織布中の繊維の自由度が小さいために、ニードルパンチ加工後であっても剥離等の問題が起こる場合がある。ニードル密度(ペネ数)や針深は使用するニードルの種類、得たい機械強力特性や各層の目付により適宜設定する必要があり、限定されるものではない。少なくとも片側に芯鞘型繊維不織布を用いて、中間層に単一成分の不織布が存在すると、一回の熱成形で表層部分の剛性が高く部分、内層に柔軟な繊維構造体の複合構造を形成することが可能であり、内層によりタッピング音を小さくしつつ、表層により摩耗などを抑制することが可能となる。また、優れた吸音性能も期待できる。好ましい積層方法として、複数の層をあらかじめニードルパンチ法などによりゆるく繊維交絡をしておき、最後に積層体をニードルパンチ法で1層に仕上げることができる。これにより適度な繊維拘束を持たせて層間剥離を防止しつつ高い成形性を得ることが容易となる。単層当たりの目付が小さいほど、繊維が面内方向に配列されることにより曲げ剛性を高くすることが可能となる。
【0016】
長繊維不織布を構成する長繊維に用いられる樹脂としては、ポリエステル、ポリオレフィンやポリアミドが好ましく、汎用熱可塑性樹脂で安価なポリエステルやポリオレフィンが特に好ましい。ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステルおよびそれらの共重合ポリエステルなどが例示できる。また、ポリオレフィンではポリエチレン(PB)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などが例示できる。ナイロン6(NY6)やナイロン66などのポリアミド系繊維も使用可能である。また、通常使用される添加剤、例えば、塗料、顔料、艶消剤、制電剤、難燃剤、強化粒子を含んでも良い。また、本発明の目的を損なわない範囲での少量の他のポリマー、例えばナイロン、オレフィンなどを混合することも可能である。また、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維を用いることが好ましい。特には、PP/PET、共重合PET/PET、PBT/PET、PE/PPの組み合わせが好ましい。自動車用途では、PP/PET系およびNY6/PET系、共重合PET/PETなどの複合繊維の使用が特に好適である。
【0017】
長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は特に限定されないが、生産性及び機械強度特性を得やすいことから、1dtexから10dtex好ましくは2.5dtexから7dtexが好ましい。
【0018】
次に、本発明の不織布構造体における短繊維不織布について説明する。短繊維不織布は、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維とが混合した混合繊維から成る。無機繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、バザルト繊維などを用いることができ、2~10cmの長さの繊維が好適に用いられる。無機繊維は主に剛性を改善するために使用され、繊維が長いほど高い剛性を期待できる傾向にあるが、10cmを超えるとその改善効果は少なく、むしろ短繊維不織布の製造が難しくなる。また、長い繊維を用いても短繊維不織布の製造工程(特に混繊工程)で折れてしまうことが多い。
【0019】
熱可塑性樹脂繊維としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、PTFE等を用いることが可能である。熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、例えば、2~10cmが挙げられるが限定されない。短繊維不織布と長繊維不織布との複合強度を上げるために、熱可塑性樹脂繊維は長繊維不織布を構成する長繊維の素材成分と同等あるいは類似の成分であることがデラミネーション(層間剥離)防止の観点から特に好ましい。同等あるいは類似であるとは、ポリエステル系など同じ化学分類で論じることが可能であることや互いに反発する分子官能基が少ないなどの一般常識として理解される。これにより、長繊維不織布と短繊維不織布とを特別な接着剤を使用することなく熱接着することが可能となり、界面での剥離の問題を解決する。
【0020】
本発明の不織布構造体において、短繊維不織布に無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維が混合した複合繊維を用いることで、例えば、不織布構造体を自動車フェンダーカバーやアンダーカバーに用いた際に、タイヤ等で跳ね上がった小石等により生じる摩耗やクラック等の問題を予防することも可能となる。また、不織布構造体を、金属やエンジニアリングプラスチック等を代替する構造体としても用いることが可能となる。
【0021】
次に、本発明の不織布構造体の製造方法について説明する。長繊維不織布は、通常の製法で製造することができるが、繊維が面内方向(2次元面方向)に配列され曲げ剛性を高くすることが容易であり、機械強度特性を得やすいとの観点から、スパンボンド法が好ましく用いられる。短繊維不織布は、カーディング法やエアーレイド法などにより混繊して製造することが可能である。必要に応じてニードルパンチ法や水流交絡法などで一体化処理をしてもよい。短繊維不織布は補強層とすることができ、無機繊維として、例えば、リサイクルされた炭素繊維を用いてもよい。この場合、短繊維不織布の製造において、カーディング法を用いる場合は、炭素繊維の折れが発生しないように加工速度を低めに設定するなどの配慮が必要である。
【0022】
次に、長繊維不織布と短繊維不織布との熱接着方法について説明する。接着には、通常の加熱プレス加工のいずれをも用いることができる。例えば単板シートのプレス加工でもよいし、長尺反の製造が可能な加熱金属プレスロール(たとえば由利ロール株式会社カレンダー加工設備など)の間を通して加工しても、高温メタルベルトプレス機を用いて加工してもよい。短繊維不織布に含まれる熱可塑性樹脂に応じて条件を設定するが、140~330℃、圧力0.1~5MPaの条件でプレス加工することで不織布構造体の見かけ密度をコントロールすることができる。また、不織布構造体を一度平板状に作成して後に、再度プレス機により三次元成形して3次元構造体とすることも好ましい。
【実施例
【0023】
以下に本発明の実施例を示す。本発明は実施例に限定されるものではない。初めに、後段の実施例及び比較例で作製した試料に関する物性値の測定方法について説明する。
【0024】
<目付>
試料を20cm角に切り出してその重量を測定し、1mあたりの質量に換算して目付(g/m)とした。
【0025】
<見かけ密度>
試料の厚みを、JIS L1913(2010)に準拠して、20g/cmの荷重下で測定した。見かけ密度(g/cm)は、上記で測定した目付を上記測定した厚みで割って求めた。
【0026】
<剥離>
試料を幅5cm×長さ30cmに切り出して、手で長手方向を90度前後まで折り曲げる動作を20回繰り返して、剥離が生じるかどうかを目視で評価した。
【0027】
<曲げ剛性>
JIS K717に準拠して、三点曲げ試験を行った(図1参照)。試料を幅22m
m×長さ6cmの大きさに採取し、支持幅32mm、圧子半径5mm、速度1mm/分に
て測定した。短繊維不織布が片面のみに積層された場合には、短繊維不織布が下方になる
ように設置して測定を行った。
【0028】
(実施例1)
繊度5.0dtexのポリエチレンテレフタレート長繊維から成る目付250g/mの長繊維不織布(東洋紡株式会社製ボランス(登録商標))を4層積層して、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数32、針深11mmで2度ニードルパンチ加工を行い長繊維ウェッブを得た。得られた長繊維ウェッブの換算した見かけ密度は約0.09g/cmであった。
次に、カーディング法により、炭素繊維(平均繊維長5cm、平均直径約5μm)と共重合ポリエステル短繊維(繊度3.3dTex)とポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度4.4dTex)とを重量比50%、25%、25%にて混繊し、目付250g/mの短繊維不織布を2枚作成した。
その後、長繊維ウェッブの両面に短繊維不織布を積層してメタルベルトプレス機(KBKスチールプロダクツ株式会社製)により220℃、圧力0.1MPaでプレス加工を行い、不織布構造体を得た。得られた不織布構造体の物性を表1に示す。その後、成形性の試験を行った。
【0029】
(実施例2)
繊度5.0dtexのポリエチレンテレフタレート長繊維から成る目付180g/mの長繊維不織布(東洋紡株式会社製ボランス(登録商標))を、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数50、針深11mmでニードルパンチ加工を行い長繊維ウェッブを得た。得られた長繊維ウェッブの換算した見かけ密度は0.91g/cmであった。
次に、カーディング法により、炭素繊維(平均繊維長5cm、平均直径約5μm)と共重合ポリエステル短繊維(繊度3.3dTex)とポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度4.4dTex)とを重量比50%、25%、25%にて混繊し、目付180g/mの短繊維不織布を2枚作成した。
その後、長繊維ウェッブの両面に短繊維不織布を積層してメタルベルトプレス機(KBKスチールプロダクツ株式会社製)により220℃、圧力0.1MPaでプレス加工を行い、不織布構造体を得た。得られた不織布構造体の物性を表1に示す。その後、成形性の試験を行った。
【0030】
(実施例3)
繊度5.0dtexのポリエチレンテレフタレート長繊維から成る目付250g/mの長繊維不織布(東洋紡株式会社製ボランス(登録商標))を6枚積層して、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数70、針深11mmでニードルパンチ加工を2度行うことで長繊維ウェッブを得た。得られた長繊維ウェッブの換算した見かけ密度は約0.10g/cmであった。
次に、カーディング法により炭素繊維(平均繊維長5cm、平均直径約5μm)と共重合ポリエステル短繊維(繊度3.3dTex)とポリエチレンテレフタレート短繊維(繊度4.4dTex)とを重量比50%、25%、25%にて混繊して目付250g/mの短繊維不織布を2枚作成した。
その後、長繊維ウェッブの両面に短繊維不織布を積層してメタルベルトプレス機(KBKスチールプロダクツ株式会社製)により220℃、圧力0.1MPaでプレス加工を行い、不織布構造体を得た。得られた不織布構造体の物性を表1に示す。その後、成形性の試験を行った。
【0031】
(実施例4)
芯成分がポリエチレンテレフタレートで鞘成分がポリプロピレン(長繊維中の重量比50/50)の繊度5.5dtexの長繊維から成る目付250g/mの長繊維不織布(東洋紡株式会社製)を5枚積層して、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数32、針深11mmでニードルパンチ加工を2度行うことで長繊維ウェッブを得た。得られた長繊維ウェッブの換算した見かけ密度は0.09g/cmであった。
次に、カーディング法により炭素繊維(平均繊維長5cm、平均直径約5μm)とポリプロピレン短繊維(平均直径20μm)とを重量比50%、50%にて混繊して目付250g/mの短繊維不織布を1枚作成した。
その後、長繊維ウェッブに短繊維不織布を積層してメタルベルトプレス機(KBKスチールプロダクツ株式会社製)により190℃、圧力0.1MPaでプレス加工を行い、不織布構造体を得た。得られた不織布構造体の物性を表1に示す。その後、成形性の試験を行った。実施例4では、成形性の試験ではIR加熱処理は200℃で90秒行った
【0032】
(比較例1)
繊度5.0dtexのポリエチレンテレフタレート長繊維から成る目付250g/mの長繊維不織布(東洋紡株式会社製ボランス(登録商標))を6枚積層して、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数38、針深12mmでニードルパンチ加工を2度行うことで長繊維ウェッブを得た。得られた長繊維ウェッブの換算した見かけ密度は0.09g/cmであった。
その後、長繊維ウェッブにメタルベルトプレス機(KBKスチールプロダクツ株式会社製)により190℃、圧力0.1MPaでプレス加工を行い不織布構造体を得た。得られた不織布構造体の物性を表1に示す。その後、成形性の試験を行った。比較例1では、成形性の試験ではIR加熱処理は250℃で45秒行った。
【0033】
(比較例2)
繊度5.0dtexのポリエチレンテレフタレート長繊維から成る目付80g/mの長繊維不織布(東洋紡株式会社製ボランス)をオルガンFPD220(40SM)を用いペネ数38、針深11mmでニードルパンチ加工を行って長繊維ウェッブを得た。得られた長繊維ウェッブの換算した見かけ密度は0.10g/cmであった。
その後、長繊維ウェッブにメタルベルトプレス機(KBKスチールプロダクツ株式会社製)により190℃、圧力0.1MPaでプレス加工を行い不織布構造体を得た。得られた不織布構造体の物性を表1に示す。その後、成形性の試験を行った。比較例2では、成形の試験ではIR加熱処理は250℃で45秒行った。
【0034】
(比較例3)
繊度5.0dtexのポリエチレンテレフタレート長繊維から成る目付250g/mの長繊維不織布(東洋紡株式会社製ボランス(登録商標))に、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数38、針深11mmでニードルパンチ加工を1度行い、このニードルパンチした長繊維不織布を8枚重ねて、2度目のニードルパンチ加工を1度目と同様の条件で行うことで長繊維ウェッブを得た。得られた長繊維ウェッブの、換算した見かけ密度は0.10g/cmであった。
次に、カーディング法により、炭素繊維(平均繊維長5cm、直径約5μm)とポリプロピレン短繊維(直径約20μm)とを重量比50%、50%にて混繊して目付250g/mの短繊維不織布を1枚作成した。
その後、長繊維ウェッブに短繊維不織布を積層し、メタルベルトプレス機(KBKスチールプロダクツ株式会社製)により190℃、圧力0.1MPaでプレス加工を行い不織布構造体を得た。得られた不織布構造体の物性を表1に示す。その後、成形性の試験を行った。比較例3では、成形性の試験ではIR加熱処理は250℃で45秒行った。
【0035】
【表1】
【0036】
以上から、実施例は比較例よりも、高い曲げ剛性と優れた成形性を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により得られる不織布構造体は、軽量で剛性が高いことから建築材や工業資材、また自動車のアンダーカバー、フェンダーライナー、フードサイレンサー、トノボードなどの自動車部品、吸音材、遮音材などとして有効に活用することが可能である。また、無機繊維が引張剛性が高い炭素繊維やガラス繊維などである場合は、強力を必要とする構造部材などに使用できる。さらに、本発明は、熱硬化樹脂を使用したCFRPより取り出されたリサイクル炭素繊維を有効に活用することができる。以上より、本発明は、産業上の貢献が大きいと考えられる。
図1