(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】眼科画像処理装置および眼科画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/13 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61B3/13
(21)【出願番号】P 2020143787
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】濱口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】冨安 美希
(72)【発明者】
【氏名】杉本 善彦
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 みゆき
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-233469(JP,A)
【文献】特開2017-153751(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008323(WO,A1)
【文献】特表2017-517362(JP,A)
【文献】特開2019-042304(JP,A)
【文献】特表2020-524061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
A61F 9/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の隅角画像を処理する眼科画像処理装置であって、
前記被検眼の隅角の治療手法を少なくとも選択的レーザ線維柱帯形成術または低侵襲緑内障手術から選択する治療手法選択手段と、
前記被検眼の第1隅角画像を取得する第1取得手段と、
前記第1隅角画像における治療部位を示す指標を、
前記治療手法選択手段が選択した前記治療手法に応じて、前記第1隅角画像に重畳させる重畳位置を設定する設定手段と、
前記重畳位置に基づいて、前記第1隅角画像に前記指標を重畳させた第2隅角画像を取得する第2取得手段と、
前記第2隅角画像を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項2】
請求項1の眼科画像処理装置において、
前記第1隅角画像における前記治療部位を検出する検出手段を備え、
前記設定手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記指標の前記重畳位置を設定することを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項3】
被検眼の隅角画像を処理する眼科画像処理装置にて用いる眼科画像処理プログラムであって、
前記眼科画像処理装置のプロセッサに実行されることで、
前記被検眼の隅角の治療手法を少なくとも選択的レーザ線維柱帯形成術または低侵襲緑内障手術から選択する治療手法選択ステップと、
前記被検眼の第1隅角画像を取得する第1取得ステップと、
前記第1隅角画像における治療部位を示す指標を、前記治療手法選択ステップが選択した前記治療手法に応じて、前記第1隅角画像に重畳させる重畳位置を設定する設定ステップと、
前記重畳位置に基づいて、前記第1隅角画像に前記指標を重畳させた第2隅角画像を取得する第2取得ステップと、
前記第2隅角画像を出力する出力ステップと、
を前記眼科画像処理装置に実行させることを特徴とする眼科画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科画像処理装置、眼科画像処理プログラム、および眼科システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の隅角を撮影することができる眼科撮影装置が知られている(特許文献1)。緑内障の診断および治療においては、隅角の観察が有用となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緑内障は、選択的レーザ線維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty:SLT)、低侵襲緑内障手術(Micro Invasive Gulaucoma Surgery:MIGS)、等により治療される。検者は、隅角を観察した際に治療部位を覚えておく必要があり、その後、治療部位に対して各々の手術を行わなければならず、改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、隅角の治療を効率的に行うことができる眼科画像処理装置、眼科画像処理プログラム、および眼科システムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示の第1態様に係る眼科画像処理装置は、被検眼の隅角画像を処理する眼科画像処理装置であって、前記被検眼の隅角の治療手法を少なくとも選択的レーザ線維柱帯形成術または低侵襲緑内障手術から選択する治療手法選択手段と、前記被検眼の第1隅角画像を取得する第1取得手段と、前記第1隅角画像における治療部位を示す指標を、前記治療手法選択手段が選択した前記治療手法に応じて、前記第1隅角画像に重畳させる重畳位置を設定する設定手段と、前記重畳位置に基づいて、前記第1隅角画像に前記指標を重畳させた第2隅角画像を取得する第2取得手段と、前記第2隅角画像を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示の第2態様に係る眼科画像処理プログラムは、被検眼の隅角画像を処理する眼科画像処理装置にて用いる眼科画像処理プログラムであって、前記眼科画像処理装置のプロセッサに実行されることで、前記被検眼の隅角の治療手法を少なくとも選択的レーザ線維柱帯形成術または低侵襲緑内障手術から選択する治療手法選択ステップと、前記被検眼の第1隅角画像を取得する第1取得ステップと、前記第1隅角画像における治療部位を示す指標を、前記治療手法選択ステップが選択した前記治療手法に応じて、前記第1隅角画像に重畳させる重畳位置を設定する設定ステップと、前記重畳位置に基づいて、前記第1隅角画像に前記指標を重畳させた第2隅角画像を取得する第2取得ステップと、前記第2隅角画像を出力する出力ステップと、を前記眼科画像処理装置に実行させることを特徴とする眼科画像処理プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】隅角撮影装置の制御系と光学系の構成図である。
【
図5】反射画像を合成した全周画像を示す図である。
【
図8】光干渉断層計の制御系と光学系の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施例>
本実施形態の一実施例について説明する。
【0012】
図1は、検眼システムの一例である。本実施形態の検眼システム1は、眼科撮影装置Aと、治療用観察装置Bと、を少なくとも備えていてもよい。
【0013】
被検眼の隅角を治療する際は、まず、眼科撮影装置Aが用いられる。眼科撮影装置Aは、被検眼の隅角の反射画像を隅角画像として撮影する隅角撮影装置であってもよい。眼科撮影装置Aにて撮影された隅角画像には、隅角の治療部位を示す指標を重畳させることが可能である(詳細は後述する)。このような、指標を含む隅角画像は、モニタへの表示、メモリへの保存、プリンタを利用した印刷、治療用観察装置Bへの送信、等の種々な形態で出力される。
【0014】
次に、治療用観察装置Bが用いられる。治療用観察装置Bは、被検眼を観察するための観察系を備えた、被検眼にレーザ光を照射するレーザ治療装置(例えば、スリットランプ、等)であってもよい。治療用観察装置Bでは、指標を含む隅角画像を利用することで、隅角の観察および治療が効率よく行われる。
【0015】
なお、本実施形態の検眼システム1は、指標を隅角画像に重畳させるための機能(言い換えると、眼科画像処理装置としての機能)を眼科撮影装置Aが兼用しているが、この機能は治療用観察装置Bが兼用してもよい。また、本実施形態の検眼システム1は、眼科撮影装置Aあるいは治療用観察装置Bとは別に、眼科画像処理装置として用いられるコンピュータ等を備えてもよい。
【0016】
以下、眼科撮影装置Aとして隅角撮影装置100を例に挙げて、詳細に説明する。隅角撮影装置100は、被検眼の隅角を部分的に撮影するものであり、互いに異なる位置にて撮影された複数枚の反射画像を合成することによって、隅角の全周画像を生成することができる。
【0017】
図2は、隅角撮影装置100の外観図である。隅角撮影装置100の左右方向はX方向、上下方向はY方向、前後方向はZ方向で表している。
【0018】
隅角撮影装置100は、基台3、移動台4、アライメント機構5、顔支持部6、操作部7、表示部8、光学ユニット10(後述)、制御部170(後述)、等を有する。
【0019】
基台3は、移動台4、顔支持部6、等を支持する。基台3の上には、移動台4が配置される。
【0020】
アライメント機構5は、基台3に対して移動台4をX方向、Y方向、およびZ方向の少なくともいずれかの方向へと移動させる。結果として、被検眼Eに対して光学ユニット10がXYZ方向へ移動され、被検眼Eと光学ユニット10との位置関係が調整される。例えば、アライメント機構5は、モータ、ギヤ、ガイドレール、等を有したスライド機構であってもよい。
【0021】
操作部7は、光学ユニット10を移動させるための信号を入力する。例えば、操作部7を傾倒させることで、移動台4をYZ方向へと移動させるための信号が入力される。例えば、操作部7の図示なきノブを回転させることで、移動台4をY方向へと移動させるための信号が入力される。
【0022】
表示部8は、被検眼Eに関する情報、被検眼Eの隅角を撮影した隅角画像、等を画面に表示する。なお、表示部8は、操作部7を兼ねたタッチパネルとして機能する。表示部8の操作によって、各種の設定を行うための信号、撮影の開始や終了を指示するための信号、光学ユニット10を移動させるための信号、等を入力することができる。
【0023】
図3は、隅角撮影装置100の制御系と光学系の構成図である。
【0024】
<制御部>
制御部170は、各部の制御処理や演算処理を行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部170は、一般的なCPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、隅角撮影装置100における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、隅角撮影装置100の動作を制御するための各種プログラムが記憶される。なお、制御部170は、便宜上、隅角撮影装置100にて得られた各種画像の画像処理を行うものとする。換言すれば、制御部170が画像処理部を兼用する。
【0025】
制御部170には、操作部7、表示部8、光学系が備える光源や撮像素子、記憶部171、等が電気的に接続される。記憶部171は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる、非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、記憶部171は、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等でもよい。
【0026】
<光学ユニット>
光学ユニット10は、固視光軸L1に対して傾斜した撮影光軸L2を有する。アライメントが適正な状態において、撮影光軸L2は、隅角の角度分割線に沿って配置される。光学ユニット10は、撮影光軸L2に沿って隅角領域からの反射光の受光を行い、これにより、隅角についての反射画像を撮影する。
【0027】
光学ユニット10は、撮影光学系100aを有する。撮影光学系100aは、隅角の反射画像を撮影するための光学系である。例えば、撮影光学系100aによって撮影された反射画像が、制御部170によって加工され、その結果として全周画像が形成される。
【0028】
撮影光学系100aは、対物反射部140と、切換部130と、撮像素子160と、を、少なくとも有する。隅角撮影装置100は、光源110およびフォーカス調整部150を、更に有していてもよい。
【0029】
光源110は、隅角に照射される照明光の光源である。本実施例において、光源110は、可視光を出射する。以下の説明では、隅角画像をカラー画像として得るために、波長域が異なる複数色の光(例えば、白色光)を少なくとも出射可能であるものとする。
【0030】
光源110からの照明光は、ビームスプリッタ120によって反射され、切換部130に向かう。このとき、照明光の反射光は、固視光軸L1に沿って切換部130に導かれる。なお、ビームスプリッタ120は、撮影光学系100aにおける照明光の投光経路と受光経路とを分離する。ビームスプリッタ120としては、ハーフミラー、穴開きミラー等が用いられてもよい。
【0031】
切換部130は、隅角の全周の中で反射画像の撮影位置を変位させるユニットである。切換部130が設けられていることで、隅角の全周における複数の撮影位置において隅角の反射画像を撮影できる。本実施例において、切換部130は、ミラー131,132と、モータなどの図示なき駆動源と、を有する。切換部130は、制御部170からの制御信号に基づいて駆動され、その結果として、撮影光軸L2が固視光軸L1周りに回転される。
【0032】
図3に示した2枚のミラー131,132は、平行に配置されており、照明光の光路中心を固視光軸L1に対して所定間隔だけ、シフトする。図示なき駆動源によって、ミラー131,132が固視光軸L1を中心に回転されることで、切換部130から対物反射部140への照明光の照射光路の位置が変位される。
【0033】
ここで、対物反射部140は、照明光を、固視光軸L1側に折り曲げる反射面を持つ。反射面によって反射された照明光の光軸を、固視光軸L1に対して大きく傾斜するように折り曲げて、装置外部に導く。このとき、装置外部へ導かれる光軸が、撮影光軸L2として利用される。
【0034】
本実施例において、対物反射部140には、複数の反射面が、固視光軸L1の周りに並んで形成されている。本実施例では、対物反射部140の具体例として、正多角形を底面に持つ錐台形状のプリズムが利用される。より詳細には、底面は、正16角形であり、16枚の側面を有するプリズムが利用される。本実施形態では、被検眼Eからみて、0°、22.5°、45°、67.5°、90°・・・(中略)…337.5°の各方向に、固視光軸L1に向けられた反射面が配置されている。なお、各々の角度は、固視光軸L1を基準とした角度である。また、説明の便宜上、0°は、水平面上(より詳細には、隅角撮影装置100から見て、水平面上の右側)とする。
【0035】
制御部170は、切換部130が照明光を導く面を、16枚の反射面のうちいずれか1つに選択することで、隅角全周において各々の反射面と対応する撮影位置へ照明光を導くことができる。
【0036】
隅角領域からの反射光は、対物反射部140,切換部130を遡って、ビームスプリッタ120に導かれる。ビームスプリッタ120を撮像素子160側に通過した照明光は、フォーカスレンズ151を経由して、撮像素子160によって受光される。その結果、隅角の反射画像(
図4参照)が撮影される。
【0037】
フォーカスレンズ151は、隅角撮影装置100におけるフォーカス調整部の一部である。フォーカスレンズ151を光軸に沿って移動させる駆動部152が、隅角撮影装置100には設けられている。駆動部152は、例えば直動アクチュエータを含んでいてもよい。隅角において所望する組織に応じて、フォーカスレンズ151の位置が調整されることによって、所望する組織が含まれる隅角の画像が、撮像素子160からの受光信号に基づいて撮影される。本実施例では、フォーカスレンズ151を移動させることによってフォーカス調整が行われるが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、撮像素子160を光軸方向へ移動させることでフォーカス調整が行われてもよい。
【0038】
なお、本実施例において、隅角画像はマルチフォーカス画像(深度合成画像)であってもよい。例えば、マルチフォーカス画像は、広範囲に焦点が合った画像である。これについての詳細は、特開2019-42304号公報を参照されたい。
【0039】
<制御動作>
隅角撮影装置100の制御動作を説明する。
【0040】
<隅角画像の取得>
検者は、被検者へ、顔を顔支持部6に乗せるように指示を出す。制御部170は、被検者の顔が顎台に載置されたことを図示なき検出器により検出し、被検眼Eと光学ユニット10とのアライメント調整を自動的に開始してもよい。
【0041】
また、検者は、表示部8を操作して、被検眼Eの隅角の撮影を開始する。制御部170は、表示部8からの信号に応じて、隅角の所定の撮影位置を撮影し、その反射画像を取得する。
【0042】
図4および
図5は、被検眼Eの隅角画像の一例である。
図4は、所定の撮影位置の反射画像50を示している。
図5は、互いに撮影位置が異なる反射画像50を合成した全周画像60を示している。例えば、隅角の撮影位置は、隅角の全周に対して予め16箇所に設定されている。制御部170は、隅角の撮影位置を順に変更することで、各箇所での反射画像50を撮影する。
【0043】
また、制御部170は、各箇所での反射画像50を画像処理し、線維柱帯を検出する。線維柱帯は、虹彩と角膜の間に存在する。角膜は虹彩に比べて可視光を反射しやすく、このために線維柱帯の近傍では輝度の変化が大きく現れる。例えば、制御部170は、反射画像50の輝度情報を利用して、線維柱帯の画素位置を特定してもよい。
【0044】
さらに、制御部170は、各箇所での反射画像50を合成することで、隅角の全周画像60を生成する。例えば、制御部170は、各箇所での反射画像50を円環状に配置し、各々に含まれる線維柱帯を繋ぎ合わせることによって、全周画像60を生成する。例えば、全周画像60は、表示部8に表示されるとともに、記憶部171へ記憶されてもよい。
【0045】
検者は、隅角の反射画像50および全周画像60を観察して、被検眼Eの緑内障を診断する。また、検者は、緑内障の治療が必要と判断した場合、隅角の治療方法を決定する。なお、隅角の治療方法によって、治療部位は異なる。例えば、選択的レーザ線維柱帯形成術(SLT)を行う際には、線維柱帯の色素沈着部位が治療部位とされる。例えば、低侵襲緑内障手術(MIGS)を行う際には、線維柱帯、毛様体、等が治療部位とされる。
【0046】
<治療方法の設定と第1指標の表示>
図6は、表示部8の画面の一例である。例えば、表示部8の初期状態においては、被検眼Eの左右方向および上下方向と、全周画像60の左右方向および上下方向と、が一致するように、全周画像60が表示される。すなわち、全周画像60は正立像として表示される。
【0047】
検者は、被検眼Eの治療方法を決定すると、表示部8を操作して、治療方法を設定するためのスイッチ81を選択する。制御部170は、スイッチ81からの信号に応じて、治療方法に応じた部位であり、後述の治療部位として選択することが可能な部位を表す第1指標91を、全周画像60上へ表示させる。
【0048】
例えば、検者は、治療方法としてSLTを選択し、スイッチ81を操作する。例えば、制御部170は、SLTにて治療される線維柱帯に沿って、第1指標91を全周画像60上へ重畳表示させる。一例としては、線維柱帯の半周または全周にわたって、第1指標91を全周画像60上へ重畳表示させる。より詳細には、前述の反射画像50における線維柱帯の画素位置に基づき、全周画像60に含まれる線維柱帯の画素位置を特定する。また、全周画像60において特定した線維柱帯の画素位置に、第1指標91を重畳表示させる。
【0049】
なお、各々の第1指標91は、予め設定された個数(例えば、一般的なSLTのレーザ照射発数)で配置されてもよい。また、各々の第1指標91は、等間隔で互いに重ならないように配置されてもよい。
【0050】
<治療部位の指定と第2指標の表示>
図7は、全周画像60の一部(
図6に示す点線部)を拡大した図である。検者は、全周画像60上に第1指標91が重畳表示されると、表示部8を操作して、任意の第1指標91を選択する。これによって、隅角の治療部位を示す第2指標92を、全周画像60上に重畳させる重畳位置Pが指定される。制御部170は、全周画像60において第1指標91が表示された画素位置を、第2指標92の重畳位置Pとして設定する。また、制御部170は、全周画像60において設定した重畳位置Pに、第2指標92を重畳表示させる。
【0051】
本実施例では、検者が第1指標91を選択することにより、制御部170が第1指標91を第2指標92へと切り換える。第1指標91と第2指標92は、互いに区別できるように、その表示形態が異なっていてもよい。例えば、色彩、形状、大きさ、透過率、等の少なくともいずれかが異なっていてもよい。もちろん、第1指標91と第2指標92は切り換え表示に限定されず、第1指標91に第2指標92が重ねて表示されてもよい。
【0052】
<全周画像の向きの設定>
検者は、隅角の所望の治療部位を指定すると(所望の第1指標91を第2指標92に切り換えると)、表示部8を操作して、全周画像60の向きを設定するためのスイッチ82を選択する。制御部170は、スイッチ82からの信号に応じて、全周画像60の向きを変更する。
【0053】
スイッチ82には、全周画像60を正立像とするか、正立像を反転させた反転像(正立像に対する鏡像または倒立像)とするか、を変更するための反転スイッチ82aが含まれてもよい。検者が反転スイッチ82aを操作すると、制御部170は反転スイッチ82aからの信号に応じて、全周画像60の正立表示と反転表示を切り換える。このとき、全周画像60に重畳された第1指標91および第2指標92は、全周画像60の正立表示および反転表示に合わせて、ともに変更される。
【0054】
また、スイッチ82には、全周画像60を回転させるための回転スイッチ82bが含まれてもよい。検者が回転スイッチ82bを操作すると、制御部170は回転スイッチ82bからの信号に応じて、全周画像60を所定の向きに所定の角度ずつ回転表示させる。一例として、左まわりに90度ずつ回転表示させる。このとき、全周画像60に重畳された第1指標91および第2指標92は、全周画像60の回転表示に合わせて、ともに変更される。
【0055】
検者は、反転スイッチ82aおよび回転スイッチ82bの少なくともいずれかを選択することで、被検眼Eの治療の際に確認しやすい全周画像60の向きを指定することができる。例えば、被検者に対する立ち位置(頭側、右側、左側、等)、被検眼に対する隅角の観察方向、等を考慮した全周画像60の向きを指定することができる。
【0056】
<全周画像の出力>
検者は、全周画像60の向きを選択すると、表示部8を操作して、全周画像60を出力するためのスイッチ83を選択する。制御部170は、スイッチ83からの信号に応じて、全周画像60を出力する。
【0057】
本実施例では、制御部170により、全周画像60が図示なきプリンタ等へ送信される。このとき、第1指標91は全周画像60から削除され、第2指標92のみが全周画像60に重畳された状態で、全周画像60が送信されてもよい。もちろん、第1指標91と第2指標92がいずれも全周画像60に重畳された状態で、全周画像60が送信されてもよい。図示なきプリンタの制御部は、全周画像60を受信すると、これを印刷する。
【0058】
<隅角の治療>
検者は、治療用観察装置Bとしてレーザ治療装置を用いて、被検眼Eの隅角を治療する。レーザ治療装置は、被検眼Eを観察するための観察光学系、被検眼Eに照明光を投光するための照明光学系、被検眼Eにレーザ光を照射するための照射光学系、等を備えてもよい。
【0059】
検者は、レーザ治療装置の操作部を操作して、隅角を観察する。例えば、レーザ治療装置の制御部が、被検眼Eに対して照明光を投光することにより、観察画像が得られる。また、検者は、レーザ治療装置の操作部を操作して、レーザ光の照準を治療部位に合わせる。このとき、検者は、印刷された全周画像60を確認することで、レーザ光の照射開始位置や照射範囲を容易に把握できるようになる。検者がレーザ光の照射スイッチを操作すると、制御部はレーザ光を所望の治療部位へと照射させる。
【0060】
以上、説明したように、例えば、本実施例における眼科画像処理装置は、被検眼の第1隅角画像に治療部位を示す指標を重畳させる重畳位置を設定し、第1隅角画像に指標を重畳させた第2隅角画像を取得し、その第2隅角画像を出力する。検者は、このような第2隅角画像を利用することで、隅角の治療を効率よく進めることができる。例えば、隅角の治療部位を事前に把握した状態で、治療を行うことができる。
【0061】
また、例えば、本実施例における眼科画像処理装置は、隅角の治療手法を取得し、治療手法に応じた指標の重畳位置を設定する。このため、指標がSLTやMIGSに応じた適切な部位に重畳される。検者は、第2隅角画像を確認することで、治療すべき部位を容易に把握することができる。
【0062】
また、例えば、本実施例における眼科画像処理装置は、指標の重畳位置を指定するための操作部を有し、検者による操作部の操作にて指定された位置に、指標の重畳位置を設定する。検者は、検者が所望する任意の位置を重畳位置として指定することができ、これによって得られる第2隅角画像を用いて、治療すべき部位を容易に把握することができる。
【0063】
また、例えば、本実施例における眼科画像処理装置は、第2隅角画像の向きを切り換える切換指示に応じて、第2隅角画像に回転および反転の少なくともいずれかの処理を加えて出力する。検者が被検眼を治療する際の立ち位置、検者が被検眼を観察する観察方向、等に合わせて、第2隅角画像を任意の向きに変更できるため、治療や観察がしやすくなる。
【0064】
<変容例>
なお、本実施例では、隅角の全周画像60に対し、第1指標91および第2指標92を重畳させて出力する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、隅角の反射画像50に対し、第1指標91および第2指標92を、同様に重畳させて出力する構成としてもよい。
【0065】
なお、本実施例では、隅角の全周画像60に対し、第1指標91および第2指標92を予め設定された表示形態にて重畳させて出力する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、第1指標91および第2指標92の少なくともいずれかの表示形態を変更可能な構成としてもよい。
【0066】
この場合、表示部8には、指標の表示形態を変更するためのスイッチが設けられてもよい。検者がこのようなスイッチを操作することにより、第1指標91および第2指標92の表示形態が自由に変更できてもよい。例えば、これらの指標の表示形態としては、線幅、色彩、形状、大きさ、透過率、等の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
【0067】
例えば、このように、本実施例における眼科画像処理装置は、第1隅角画像に重畳させる指標の形態を変更可能である。このため、例えば、検者は、検者が識別しやすい色彩や形状に、指標を適宜変更することができる。また、例えば、検者は、指標の透過率を変化させ、指標が重畳されることで隠れてしまう部位を把握できるように、適宜変更することができる。
【0068】
なお、本実施例では、隅角の全周画像60に対し、第1指標91を重畳させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、必ずしも治療部位として選択することが可能な部位を重畳させる必要はなく、少なくとも、全周画像60に対して治療部位(第2指標92)を重畳させる構成であればよい。
【0069】
この場合、検者によって、全周画像60における任意の画素位置が、第2指標92の重畳位置Pに指定されてもよい。例えば、検者による操作部7の操作で指定された重畳位置Pに基づき、第2指標92が重畳されてもよい。一例としては、検者に指定された重畳位置Pに、第2指標92としての記号(図形、文字、数字、等)が重畳されてもよい。また、例えば、検者による操作部7の操作に連動して変化する重畳位置Pに基づき、第2指標92が重畳されてもよい。一例としては、検者に指定された重畳位置Pに、第2指標92としての描画が重畳されてもよい。すなわち、全周画像60上に、線や円を自由に書き込むことができてもよい。
【0070】
なお、本実施例では、治療用観察装置Bとしてレーザ治療装置を用いているが、これに限定されない。本実施例では、治療用観察装置Bとして、被検眼の治療部位を観察する手術顕微鏡を用いてもよい。また、本実施例では、治療用観察装置Bとして、ウェアラブルデバイス(例えば、ヘッドマウントディスプレイ、スマートグラス、等)を用いてもよい。
【0071】
なお、本実施例では、隅角撮影装置100にて撮影し、治療部位(第2指標92)を重畳させた全周画像60を、印刷する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、隅角撮影装置100にて撮影し、治療部位を重畳させた全周画像60を、レーザ治療装置へと送信してもよい。この場合、レーザ治療装置は表示部を備えていてもよく、表示部に全周画像60を表示させてもよい。また、この場合、レーザ治療装置は、全周画像60と観察画像とを対応付けることで、全周画像60にて指定された治療部位を、観察画像に重畳させてもよい。
【0072】
例えば、レーザ治療装置の制御部は、隅角の観察画像が全周画像60のいずれの領域に相当するものであるかを、観察画像と全周画像60との比較により特定する。一例としては、観察画像と全周画像60との倍率を一致させて、テンプレートマッチング、特徴点抽出、等の画像処理を行ってもよい。
【0073】
また、制御部は、観察画像の画素位置と、全周画像60において特定された領域の画素位置と、を対応付ける。これによって、全周画像60が含む第2指標92に相当する第3指標であり、隅角の治療部位を示す第3指標を、観察画像に重畳させる重畳位置が決定される。なお、観察画像および全周画像60の画素数の関係は、設計上、既知である。制御部は、観察画像において設定した重畳位置に、第3指標を重畳表示させる。
【0074】
例えば、検者は、このような観察画像を確認しながら、レーザ光の照準を治療部位(第3指標)に一致させるように、被検眼Eに対するレーザ治療装置の位置合わせを手動で行ってもよい。あるいは、レーザ治療装置の制御部が、レーザ光の照射光軸と治療部位(第3指標)とのずれ量に基づいて、被検眼Eに対するレーザ治療装置の位置合わせを自動で行ってもよい。
【0075】
なお、本実施例では、眼科撮影装置Aとして隅角撮影装置100を用いているが、これに限定されない。本実施例では、眼科撮影装置Aとして光干渉断層計を用いることもできる。
【0076】
これについて、眼科撮影装置Aとしての偏光感受OCT(Polarization Sensitive OCT:PS-OCT)の機能と、眼科画像処理装置Bの機能と、を兼ね備えた光干渉断層計を例に挙げて説明する。光干渉断層計は、被検眼Eの前眼部にて測定光を走査し、前眼部のOCTデータを取得することができる。例えば、測定光の走査範囲は隅角(あるいは、隅角を含む隅角周辺)におよび、OCTデータとしての断面情報、偏光特性データ、等を取得することができる。
【0077】
図8は、光干渉断層計200の制御系と光学系の一例である。制御部270は、各部の制御処理や演算処理を行う電子回路を有するプロセッサであり、CPU、RAM、ROM、等で構成される。制御部270には、光源210、カップラー230、検出器220、参照光学系240、走査部250、記憶部271、等が電気的に接続される。制御部270は、画像処理部を兼用する。
【0078】
OCT光学系200aは、PS-OCTの機能とともに、スペクトラルドメイン式OCT(SD-OCT)の機能を有した、PS-SD-OCTでもよい。また、OCT光学系200aは、PS-OCTの機能とともに、波長掃引式OCT(SS-OCT)の機能を有した、PS-SS-OCTでもよい。
【0079】
本実施例では、OCT光学系200aがPS-SD-OCTである場合を例に挙げる。OCT光学系200aは、光源210、検出器220、カップラー230、参照光学系240、走査部250、対物レンズ260、等を有していてもよい。
【0080】
光源210からの光は、カップラー230によって、測定光と参照光とに分割される。測定光は、走査部250の動作に応じて、前眼部上を走査される。なお、走査部250が対物レンズ260の焦点またはその近傍に配置されることで、測定光は固視光軸L1に対して略テレセントリックに照射され、前眼部に到達する。前眼部に照射された測定光の戻り光と参照光との干渉信号は、検出器220によって検出および出力される。
【0081】
制御部270は、検出器220から出力される干渉信号に基づいて、被検眼Eの眼軸に沿う方向を深さ方向とした、前眼部のOCTデータを取得する。なお、ここでは、被検眼Eに対する測定光の走査範囲に、隅角が含まれるものとする。つまり、測定光を隅角に対して走査することで、隅角のOCTデータを取得することができる。
【0082】
OCT光学系200aは、隅角へ照射された光の戻り光を、偏光が互いに異なる第1偏光成分の光と第2の偏向成分の光に分割してもよい。制御部270は、各々の偏光成分の光に基づいて、偏光特性データを取得することができる。例えば、偏光特性データは、偏光特性に関する解析結果であってもよく、隅角領域の複屈折性に関する情報(複屈折情報)、隅角領域の偏光一様性(DOPU)に関する情報、隅角領域の偏光軸回転(Axis-Orientation)に関する情報、等の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0083】
制御部270は、隅角の偏光特性データを処理することで、強度OCTデータでは検出できない特徴部を検出することができる。一例として、隅角においては、色素、線維柱帯、シュレム管、等が検出される。このため、例えば、隅角撮影装置100と同様に、偏光特性データにおいて線維柱帯上に治療部位として選択することが可能な部位(第1指標91)を示すことで、治療部位(第2指標92)を容易に選択することができる。
【0084】
なお、本実施例では、隅角の全周画像60あるいは偏光特性データに対し、第1指標91を予め設定された配置で重畳表示させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、治療部位として選択することが可能な部位を検出した結果に基づいて、第1指標91を配置する構成としてもよい。
【0085】
これについて、光干渉断層計200を用いる場合を例に挙げて説明する。例えば、制御部270は、偏光特性データに基づき、線維柱帯における色素沈着部を検出してもよい。色素沈着部では偏光解消(偏光スクランブル)が生じるため、色素沈着部は偏光解消に基づいて特徴的に検出することができる。
【0086】
一例として、制御部270は、スペクトル波形において、色素沈着部と対応する波長域、および、その前後の波長域での振幅変化率を、位置毎に求め、閾値を超える振幅変化率が確認される場合には、そのスペクトル波形と対応する位置に色素沈着部が存在するものとして、推定してもよい。また、色素沈着部が検出される領域を、複数の小領域に分割し、分割された領域毎に、スペクトル波形の分散(例えば、スペクトル波形の評価値の分散)を求め、色素沈着部を、分散に基づいて検出してもよい。すなわち、スペクトル波形のばらつきは、色素沈着が多いほど大きくなると考えられる。なお、分散は、包絡線で比較されてもよいし、波長毎に比較されてもよい。
【0087】
制御部270は、偏光特性データに含まれる色素沈着部に第1指標91を重畳表示させてもよい。つまり、制御部270は、治療部位として選択することが可能な部位を色素沈着部として、第1指標91を重畳表示させてもよい。
【0088】
検者は、偏光特性データ上に第1指標91が重畳表示されると、任意の第1指標91を選択することによって、第2指標92を重畳させる重畳位置Pを指定することができる。制御部270は、偏光特性データにおいて第1指標91が表示された画素位置を、第2指標92の重畳位置として設定し、第2指標92を重畳表示させる。
【0089】
もちろん、偏光特性データ上に含まれる色素沈着部には、第1指標91の重畳表示を介さず、第2指標92が重畳表示されてもよい。すなわち、色素沈着部に第2指標92の重畳位置Pを設定してもよい。制御部270は、偏光特性データにおいて設定した重畳位置Pに、第2指標92を重畳表示させる。
【0090】
例えば、このように、本実施例における眼科画像処理装置は、隅角画像における治療部位を検出し、その検出結果に基づいて、指標の重畳位置を設定する。これによって、指標は、治療部位として適切な位置に重畳される。例えば、検者による手動での治療部位の選択や制御部による自動での治療部位の選択がガイドされるため、装置の操作性が向上される。
【0091】
また、本実施例における眼科画像処理装置は、隅角画像に含まれる色素情報に基づいて治療部位を検出し、指標の重畳位置を設定する。例えば、隅角画像に含まれる色素沈着部位を治療部位として検出し、指標の重畳位置を設定する。例えば、SLTでは、隅角の線維柱帯に存在する色素沈着部位に対してレーザ光を照射することで、隅角の治療が行われる。隅角画像に含まれる色素情報から、隅角の色素沈着部位を検出することで、治療すべき部位が容易に選択される。
【0092】
なお、本実施例では、検者が被検眼に対してSLTを行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。もちろん、検者は被検眼に対してMIGSを行ってもよい。この場合、制御部170は、MIGSにて治療される線維柱帯において、集合管が存在する部位(例えば、鼻側の部位)に、第1指標91を重畳させてもよい。例えば、集合管が存在する部位は、予め全周画像60に対応付けられていてもよい。一例としては、集合管が存在する部位を反射画像50の撮影位置に対応付けておくことで、反射画像50を合成した全周画像60にて、その位置が特定される。検者は、任意の第1指標91を選択することで、隅角の治療部位を示す第2指標92を、全周画像60上に重畳表示させることができる。
【0093】
なお、第1指標91および第2指標92は、任意の点を指定可能とするものに限らず、任意の領域を指定可能とするものであってもよい。例えば、線維柱帯に対して、所定の角度毎(一例として、90度毎)に分割された、帯状の指標として重畳表示されるものであってもよい。
【0094】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種の記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU、等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
8 表示部
10 光学ユニット
50 反射画像
60 全周画像
100 隅角撮影装置
170 制御部