(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光走査装置、画像形成装置、光走査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/47 20060101AFI20241008BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20241008BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241008BHJP
H04N 1/113 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/47 101D
B41J2/47 101M
G03G15/04 111
G03G15/00 303
H04N1/113
(21)【出願番号】P 2020144334
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】水谷 秀次
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-180747(JP,A)
【文献】特開2009-031729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/47
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/04 - 15/043
H04N 1/04 - 1/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光線を出力する光源部と、
前記複数の光線の各々を走査することで、画像形成部に1以上の基準色と1以上の非基準色とを含む複数色に対応する複数の静電潜像を形成させる走査部と、
前記複数の光線のうち前記基準色に対応する基準光線
についてのみ、前記基準光線の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えることにより前記基準光線の走査線の歪みを補正する第1補正部と、
前記光源部を制御することにより前記複数の光線のうち前記非基準色に対応する非基準光線の走査線の歪みを補正する第2補正部と、を備える、
光走査装置。
【請求項2】
前記第1補正部は、前記機械的外力を調整するための操作を受け付ける調整部を有し、
前記調整部は、前記光源部及び前記走査部が使用可能な状態で操作可能な位置にある、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第1補正部は、前記第2補正部による補正量が所定の条件を満たすように、前記基準光線の走査線の歪みを補正する、
請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第2補正部は、前記第1補正部により補正された前記基準光線の走査線を基準に、前記非基準光線の走査線の歪みを補正する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記基準光線の走査線と前記非基準光線の走査線とのずれを表す評価情報を出力する出力部を更に備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光源部を制御することにより前記基準光線の走査線の歪みを補正する第3補正部を更に備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光走査装置と、
前記光走査装置から出力される光線によって前記静電潜像が形成される像担持体と、を備える、
画像形成装置。
【請求項8】
光源部に複数の光線を出力させることと、
前記複数の光線の各々を走査することで、画像形成部に1以上の基準色と1以上の非基準色とを含む複数色に対応する複数の静電潜像を形成させることと、
前記複数の光線のうち前記基準色に対応する基準光線
についてのみ、前記基準光線の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えることにより前記基準光線の走査線の歪みを補正することと、
前記光源部を制御することにより前記複数の光線のうち前記非基準色に対応する非基準光線の走査線の歪みを補正することと、を有する、
光走査方法。
【請求項9】
光源部に複数の光線を出力させることと、
前記複数の光線の各々を走査することで、画像形成部に1以上の基準色と1以上の非基準色とを含む複数色に対応する複数の静電潜像を形成させることと、
前記複数の光線のうち前記基準色に対応する基準光線
についてのみ、前記基準光線の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えることにより前記基準光線の走査線の歪みを補正することと、
前記光源部を制御することにより前記複数の光線のうち前記非基準色に対応する非基準光線の走査線の歪みを補正することと、
を1以上のプロセッサーに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、画像形成装置、光走査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、複数の画像形成ユニットを有し、搬送ベルト上に保持された記録材上に順次異なる色の像を転写する、タンデム型の電子写真方式の画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る画像形成装置の光走査装置(偏向走査装置)は、主走査方向の傾き、及び走査線の湾曲等の歪みについて、電気的な補正を可能とする。つまり、関連技術では、上記傾き及び歪み等を検出し、検出された傾き及び歪み等を補正するようなタイミング及び露光量で光線(光ビーム)を露光することにより、転写後の複数の像のレジストレーションずれを抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記関連技術の方法では、補正量(つまり傾き量、歪み量等)が大きくなると、形成される像の精細度が低下し、画質の劣化につながる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、補正量が大きくなっても画質の劣化が生じにくい光走査装置、画像形成装置、光走査方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面に係る光走査装置は、光源部と、走査部と、第1補正部と、第2補正部と、を備える。前記光源部は、複数の光線を出力する。前記走査部は、前記複数の光線の各々を走査することで、画像形成部に1以上の基準色と1以上の非基準色とを含む複数色に対応する複数の静電潜像を形成させる。前記第1補正部は、前記複数の光線のうち前記基準色に対応する基準光線の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えることにより前記基準光線の走査線の歪みを補正する。前記第2補正部は、前記光源部を制御することにより前記複数の光線のうち前記非基準色に対応する非基準光線の走査線の歪みを補正する。
【0007】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、前記光走査装置と、前記光走査装置から出力される光線によって前記静電潜像が形成される像担持体と、を備える。
【0008】
本発明の他の局面に係る光走査方法は、光源部に複数の光線を出力させることと、前記複数の光線の各々を走査することで、画像形成部に1以上の基準色と1以上の非基準色とを含む複数色に対応する複数の静電潜像を形成させることと、前記複数の光線のうち前記基準色に対応する基準光線の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えることにより前記基準光線の走査線の歪みを補正することと、前記光源部を制御することにより前記複数の光線のうち前記非基準色に対応する非基準光線の走査線の歪みを補正することと、を有する。
【0009】
本発明の他の局面に係るプログラムは、光源部に複数の光線を出力させることと、前記複数の光線の各々を走査することで、画像形成部に1以上の基準色と1以上の非基準色とを含む複数色に対応する複数の静電潜像を形成させることと、前記複数の光線のうち前記基準色に対応する基準光線の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えることにより前記基準光線の走査線の歪みを補正することと、前記光源部を制御することにより前記複数の光線のうち前記非基準色に対応する非基準光線の走査線の歪みを補正することと、を1以上のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補正量が大きくなっても画質の劣化が生じにくい光走査装置、画像形成装置、光走査方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る画像形成装置の概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る画像形成装置の画像形成部の概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る画像形成装置の光走査装置の概略図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る画像形成装置の概略ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る光走査装置の第1補正部周辺の概略図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る光走査方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る光走査装置で得られるチャートの概念図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の比較例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る光走査装置の効果の例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る画像形成装置の概略ブロック図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る光走査装置の効果の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0013】
(実施形態1)
[1]画像形成装置の全体構成
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置10の全体構成について説明する。
【0014】
説明の便宜上、画像形成装置10が使用可能な設置状態(
図1に示す状態)で鉛直方向を上下方向D1と定義する。また、
図1に示す画像形成装置10の紙面左側の面を正面(前面)として前後方向D2を定義する。また、設置状態の画像形成装置10の正面を基準として左右方向D3を定義する。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置10は、一例として、原稿から画像データを読み取るスキャン機能、画像データに基づいて画像を形成するプリント機能、ファクシミリ機能、及びコピー機能等の複数の機能を有する複合機である。画像形成装置10は、画像を形成する機能を有していればよく、プリンター、ファクシミリ装置、及びコピー機等であってもよい。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置10は、自動原稿搬送装置1と、画像読取部2と、画像形成部3と、光走査装置4と、給紙部5と、操作表示部6と、を備える。つまり、本実施形態に係る光走査装置4は、画像形成部3等と共に画像形成装置10を構成する。自動原稿搬送装置1は、ADF(Auto Document Feeder)であるので、以下の説明では「ADF1」と称する。
【0017】
ADF1は、画像読取部2によって画像が読み取られる原稿を搬送する。ADF1は、原稿セット部、複数の搬送ローラー、原稿押さえ及び排紙部等を有する。
【0018】
画像読取部2は、原稿から画像を読み取り、読み取られた画像に対応する画像データを出力する。画像読取部2は、原稿台、光源、複数のミラー、光学レンズ及びCCD(Charge Coupled Device)等を有する。
【0019】
画像形成部3は、電子写真方式でカラー又はモノクロの画像をシートに形成することで、プリント機能を実現する。画像形成部3は、画像読取部2から出力される画像データに基づいて、シートに画像を形成する。また、画像形成部3は、パーソナルコンピューター等の、画像形成装置10の外部の情報処理装置から入力される画像データに基づいて、シートに画像を形成する。
【0020】
給紙部5は、画像形成部3にシートを供給する。給紙部5は、給紙カセット、手差しトレイ、シート搬送路及び複数の搬送ローラー等を有する。画像形成部3は、給紙部5から供給されるシートに画像を形成する。
【0021】
操作表示部6は、画像形成装置10におけるユーザーインターフェイスである。操作表示部6は、統括制御部7(
図4参照)からの制御指示に応じて各種の情報を表示する液晶ディスプレー等の表示部、及びユーザーの操作に応じて統括制御部7に各種の情報を入力するスイッチ又はタッチパネル等の操作部を有する。
【0022】
また、画像形成装置10は、統括制御部7、記憶部及び通信部等を更に備える。統括制御部7は、画像形成装置10を統括的に制御する。統括制御部7は、1以上のプロセッサー及び1以上のメモリーを有するコンピューターシステムを主構成とする。画像形成装置10では、1以上のプロセッサーがプログラムを実行することにより、統括制御部7の機能が実現される。プログラムはメモリーに予め記録されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード又は光学ディスク等の、コンピューターシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。記憶部は、1以上の不揮発性のメモリーを含んでおり、統括制御部7に各種の処理を実行させるための制御プログラム等の情報が予め記憶されている。通信部は、画像形成装置10と、例えば、インターネット又はLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークを介して接続される外部装置との間で、データ通信を実行するインターフェイスである。
【0023】
[2]画像形成部の構成
次に、
図1及び
図2を参照しつつ、画像形成部3の構成についてより詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、画像形成部3は、4つの画像形成ユニット31~34、中間転写装置36、二次転写ローラー37、定着装置38及び排紙トレイ39を有している。
【0025】
画像形成ユニット31は、Y(イエロー)のトナー像を形成する。
図2に示すように、画像形成ユニット31は、感光体ドラム311と、帯電ローラー312と、現像ローラー313Aを含む現像装置313と、一次転写ローラー314と、ドラム清掃部315と、を有している。また、画像形成ユニット31は、トナーコンテナ316(
図1参照)を更に有する。
【0026】
画像形成ユニット32は、C(シアン)のトナー像を形成する。画像形成ユニット32は、
図2に示すように、感光体ドラム321と、帯電ローラー322と、現像ローラー323Aを含む現像装置323と、一次転写ローラー324と、ドラム清掃部325と、を有している。また、画像形成ユニット32は、トナーコンテナ326(
図1参照)を更に有する。
【0027】
画像形成ユニット33は、M(マゼンタ)のトナー像を形成する。画像形成ユニット33は、
図2に示すように、感光体ドラム331と、帯電ローラー332と、現像ローラー333Aを含む現像装置333と、一次転写ローラー334と、ドラム清掃部335と、を有している。また、画像形成ユニット33は、トナーコンテナ336(
図1参照)を更に有する。
【0028】
画像形成ユニット34は、Bk(ブラック)のトナー像を形成する。画像形成ユニット34は、
図2に示すように、感光体ドラム341と、帯電ローラー342と、現像ローラー343Aを含む現像装置343と、一次転写ローラー344と、ドラム清掃部345と、を有している。また、画像形成ユニット34は、トナーコンテナ346(
図1参照)を更に有する。
【0029】
このように、複数(ここでは4つ)の画像形成ユニット31~34は、それぞれY(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)及びBk(ブラック)の4色に対応しており、基本的には共通の構成を採用している。つまり、本実施形態に係る画像形成装置10は、複数色に一対一で対応する複数の感光体(感光体ドラム)を有する、タンデム型の装置である。したがって、以下では、特に断りがない限り、画像形成ユニット34について説明する構成は、他の画像形成ユニット31~33についても同様の構成を有している。
【0030】
感光体ドラム341には、静電潜像が形成される。感光体ドラム341は、感光体ドラム341、帯電ローラー342及びドラム清掃部345を収容するユニット筐体によって、左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に支持されている。感光体ドラム341は、例えば、モーターから供給される駆動力を受けて、
図2に示す回転方向D5へ回転する。
【0031】
帯電ローラー342は、感光体ドラム341の表面(外周面)を正極性に帯電させる。具体的には、帯電ローラー342は、電源回路と電気的に接続されており、電源回路から高圧(高電圧)の印加を受けることで、感光体ドラム341の表面を帯電させる。ただし、帯電ローラー342は、感光体ドラム341の表面を正極性に帯電させる構成に限らず、負極性に帯電させてもよい。
【0032】
帯電ローラー342によって帯電された感光体ドラム341の表面には、光走査装置4から画像データに基づく光線B4(
図3参照)が照射される。これにより、感光体ドラム341の表面に静電潜像が形成される。すなわち、本実施形態では、感光体ドラム341が、光走査装置4から出力される光線B4によって静電潜像が形成される「像担持体」の一例である。
【0033】
現像装置343は、感光体ドラム341の表面に形成された静電潜像を現像する。例えば、現像装置343は、ケース、一対の撹拌部材、マグネットローラー及び現像ローラー343Aを含んでいる。ケースは、一対の撹拌部材、マグネットローラー及び現像ローラー343Aを、左右方向D3に延びる回転軸を中心として回転可能に支持する。また、ケースは、Bk(ブラック)のトナー及びキャリアを収容する。一対の撹拌部材は、ケースに収容されたトナー及びキャリアを撹拌して、トナーを帯電させる。本実施形態では、トナーは正極性に帯電する。ただし、トナーの帯電極性は正極性に限らず、負極性であってもよい。マグネットローラーは、一対の撹拌部材によって撹拌されたトナー及びキャリアをくみ上げて、そのうちのトナーを現像ローラー343Aの表面(外周面)に供給する。
【0034】
現像ローラー343Aは、帯電したトナーを用いて、感光体ドラム341に形成された静電潜像を現像する。具体的には、現像ローラー343Aと感光体ドラム341との間に、電源回路にて高圧の現像バイアスが印加されることにより、現像電界が形成され、電荷を有するトナーは、現像ローラー343Aから感光体ドラム341に移動する。これにより、感光体ドラム341の表面にトナー像が形成される。
【0035】
一次転写ローラー344は、現像装置343によって感光体ドラム341の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト361(
図2参照)の外周面に転写する。具体的には、感光体ドラム341と一次転写ローラー344との間に、電源回路にて高圧の転写バイアスが印加されることにより、転写電界が形成され、電荷を有するトナーは、感光体ドラム341から中間転写ベルト361に移動する。これにより、中間転写ベルト361の外周面にトナー像が形成(転写)される。
【0036】
ドラム清掃部345は、一次転写ローラー344によるトナー像の転写後の感光体ドラム341の表面を清掃する。例えば、ドラム清掃部345は、ブレード状のクリーニング部材及び搬送部材を有する。クリーニング部材は、感光体ドラム341の表面に接触して表面に付着したトナーを除去する。搬送部材は、クリーニング部材によって除去されたトナーをトナー収容容器へ搬送する。
【0037】
トナーコンテナ346は、現像装置343のケースにトナーを供給する。Bk(ブラック)のトナー像を形成する画像形成ユニット34においては、トナーコンテナ346は、Bk(ブラック)のトナーを供給する。
【0038】
複数(ここでは4つ)の画像形成ユニット31~34の各々で形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト361の外周面に重ねて転写される。これにより、中間転写ベルト361の外周面にカラー画像(トナー像)が形成される。
【0039】
中間転写装置36は、
図2に示すように、中間転写ベルト361、駆動ローラー362、張架ローラー363、ベルト清掃部364及び濃度検出部365を含む。中間転写装置36は、中間転写ベルト361を用いて、画像形成ユニット31~34によって形成されたトナー像を、二次転写ローラー37による転写位置P1(
図2参照)へと搬送する。
【0040】
中間転写ベルト361は、感光体ドラム311,321,331,341の各々から各色のトナー像が転写される無端ベルトである。
図2に示すように、中間転写ベルト361は、画像形成装置10の前後方向D2において互いに離間して配置される駆動ローラー362及び張架ローラー363に掛けまわされる。駆動ローラー362は、モーターから供給される駆動力を受けて回転する。これにより、中間転写ベルト361は、
図2に示す回転方向D4へ回転する。中間転写ベルト361の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト361の回転に伴って二次転写ローラー37による転写位置P1へ搬送される。ベルト清掃部364は、転写位置P1でトナー像が転写された後の中間転写ベルト361の外周面を清掃する。
【0041】
二次転写ローラー37は、中間転写ベルト361の外周面に形成されたトナー像を給紙部5によって供給されるシートに転写する。
図2に示すように、二次転写ローラー37は、中間転写ベルト361を挟んで張架ローラー363と対向する位置に、中間転写ベルト361の外周面と接触するように配置される。二次転写ローラー37は、付勢部材によって張架ローラー363側へ押し付けられている。二次転写ローラー37は、電源回路と電気的に接続されており、電源回路から高圧の印加を受けることで、中間転写ベルト361の外周面に形成されたトナー像を二次転写ローラー37と中間転写ベルト361とが接触する転写位置P1を通過するシートに転写する。
【0042】
定着装置38は、二次転写ローラー37によってシートに転写されたトナー像をそのシートに溶融定着させる。例えば、定着装置38は、定着ローラー及び加圧ローラーを含む。定着ローラーは、加圧ローラーと接触するように配置され、シートに転写されたトナー像を加熱してシートに定着させる。加圧ローラーは、定着ローラーとの間で形成される接触部を通過するシートを加圧する。
【0043】
排紙トレイ39には、画像形成後のシートが排出される。
【0044】
本実施形態では、画像形成部3は、レジストセンサー300(
図2参照)を更に備える。レジストセンサー300は、画像形成部3の転写体に形成されるパッチ画像を検知する、光学式のセンサである。本開示でいう「パッチ画像」は、光走査装置4からの光線B1~B4(
図3参照)の走査線の歪み又は傾きを検出するために用いられるトナー像であって、基本的には、シートには転写されない。ここで、本実施形態では、トナー像は、まず感光体ドラム341の表面に形成され、感光体ドラム341から中間転写ベルト361に転写され、さらに中間転写ベルト361からシートに転写される。そのため、感光体ドラム341又は中間転写ベルト361は、パッチ画像が形成される「転写体」の一例である。本実施形態では特に、中間転写ベルト361が「転写体」であることと仮定する。
【0045】
したがって、レジストセンサー300は、転写体としての中間転写ベルト361の外周面に対向して配置される。具体的には、レジストセンサー300は、
図2に示すように、中間転写ベルト361の回転方向D4における画像形成ユニット34の下流側であって、二次転写ローラー37の上流側に配置される。これにより、レジストセンサー300は、中間転写ベルト361の外周面に形成されるパッチ画像を、画像形成ユニット34と二次転写ローラー37との間で検知可能である。
【0046】
[3]光走査装置の構成
次に、
図1、
図3~
図5を参照しつつ、光走査装置4の構成についてより詳細に説明する。
【0047】
光走査装置4は、4つの画像形成ユニット31~34の感光体ドラム311,321,331,341の各々に静電潜像を形成する。そのため、光走査装置4は、
図3に示すように、感光体ドラム311,321,331,341の各々に対応する光線B1,B2,B3,B4を出力する。光線B1は、Y(イエロー)の画像データの入力に応じて感光体ドラム311に照射され、像担持体である感光体ドラム311に静電潜像を形成する。光線B2は、C(シアン)の画像データの入力に応じて感光体ドラム321に照射され、像担持体である感光体ドラム321に静電潜像を形成する。光線B3は、M(マゼンタ)の画像データの入力に応じて感光体ドラム331に照射され、像担持体である感光体ドラム331に静電潜像を形成する。光線B4は、Bk(ブラック)の画像データの入力に応じて感光体ドラム341に照射され、像担持体である感光体ドラム341に静電潜像を形成する。
【0048】
このように、光走査装置4は、複数色(ここでは4色)に対応する複数(ここでは4つ)の画像形成ユニット31~34に対して、それぞれ静電潜像を形成するための複数(ここでは4つ)の光線B1~B4を出力(照射)可能に構成されている。本実施形態では、光路の異なるこれら複数(ここでは4つ)の光線B1~B4を、1つの光走査装置4から出力する。ただし、これら複数(ここでは4つ)の光線B1~B4を、1つの光走査装置4から出力することは必須ではなく、例えば、光線B1,B2を出力する光走査装置4と、光線B3,B4を出力する光走査装置4と、が別々に設けられてもよい。
【0049】
本実施形態では、光走査装置4は、
図3に示すように、光源部41と、走査部42と、を備える。走査部42は、偏向器43と、複数のミラー421と、複数の走査レンズ422と、を有する。光源部41は光線B1~B4を出力する。走査部42は、光線B1~B4を走査することで、画像形成部3に静電潜像を形成させる。
図3は、各部材の構成を模式的に示しているのであって、各部材の形状及び位置関係を厳密に示す訳ではない。
【0050】
光源部41は、偏向器43に対して光を照射する。本実施形態では、光源部41は、発光モジュールとして半導体レーザーを有し、レーザー光を出力する。光源部41は、発光モジュールを複数(ここでは4つ)有し、これら複数の発光モジュールの各々から、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)及びBk(ブラック)の各色に対応する静電潜像を形成するためのレーザー光を出力する。よって、光源部41は、複数の光線B1~B4を出力する。
【0051】
具体的には、光源部41における各発光モジュールは、発光素子として、半導体に電流を流してレーザー発振させる半導体レーザー(LD:Laser Diode)を用いている。本実施形態では、各発光モジュールは、複数の光線を出力可能なマルチビーム構造である。つまり、各発光モジュールは、パッケージ内に、半導体レーザーからなる発光素子を2つ以上有し、これら複数の発光素子を個別に発光させることができる。このように、各発光モジュールがマルチビーム化されることで、光走査装置4は、静電潜像の形成に関して、高速化と高精細化とを両立可能とする。
【0052】
偏向器43は、本実施形態では一例として、ポリゴンミラースキャナーであって、ポリゴンミラー431及びスキャナーモーター432を有する。つまり、偏向器43は、スキャナーモーター432にて、ポリゴンミラー431を回転させることにより、光源部41からの光を左右方向D3に沿った主走査方向に走査する。ただし、偏向器43は、ポリゴンスキャナーに限らず、例えば、音響光学素子、ホログラムスキャナー、ガルバのミラー、又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いたマイクロミラースキャナー等であってもよい。また、偏向器43は、光源部41と一体化されていてもよい。
【0053】
ミラー421は、偏向器43からの光を反射する。走査レンズ422は、fθレンズ等を含む。本実施形態では、走査部42にて光線B1~B4を走査する走査方向、つまり主走査方向は左右方向D3に沿った方向である。そのため、ミラー421及び走査レンズ422は、いずれも主走査方向である左右方向D3に長さを有する長尺状に形成されている。上記構成により、光走査装置4では、光源部41からの光を、偏向器43、ミラー421及び走査レンズを経て、画像形成ユニット31~34に向けて出力する。ここで、光走査装置4は、複数(ここでは4つ)の光線B1~B4を出力可能であって、各光線B1~B4を主走査方向に走査することで、各色に対応する静電潜像を形成する。
【0054】
要するに、偏向器43で偏向された光線B1~B4は、1以上のミラー421で反射され、かつ1以上の走査レンズ422を通して、画像形成部3の感光体ドラム311,321,331,341に向けて照射される。そのため、ミラー421及び走査レンズ422は、光源部41から出力される光線B1~B4の光路上に位置する「光学素子」の一例である。
【0055】
このように、走査部42は、光源部41から出力される複数(ここでは4つ)の光線B1~B4の各々を走査することで、画像形成部3に複数色(ここでは4色)に対応する複数(ここでは4つ)の静電潜像を形成させる。つまり、走査部42にて走査される複数の光線B1~B4は、「複数色」と一対一で対応する。本実施形態では、光線B1はY(イエロー)に対応し、光線B2はC(シアン)に対応し、光線B3はM(マゼンタ)に対応し、光線B4はBk(ブラック)に対応する。
【0056】
また、本実施形態に係る光走査装置4は、制御部44(
図4参照)及び記憶部を更に備える。制御部44は、光源部41及び走査部42等の光走査装置4の各部位を制御する。具体的には、制御部44は、光源部41を制御することで、光源部41から任意のタイミング及び光量で光線B1~B4を個別に出力させる。つまり、制御部44は、光源部41に含まれる複数の発光モジュールをそれぞれ任意のタイミングで点灯/消灯させ、かつ光量についても発光モジュールごとに個別に制御する。制御部44は、走査部42の偏向器43(スキャナーモーター432)を制御することで、走査部42にて光源部41からの光線B1~B4を走査させる。
【0057】
制御部44は、1以上のプロセッサー及び1以上のメモリーを有するコンピューターシステムを主構成とする。光走査装置4では、1以上のプロセッサーがプログラムを実行することにより、制御部44の機能が実現される。プログラムはメモリーに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード又は光学ディスク等の、コンピューターシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。記憶部は、1以上の不揮発性のメモリーを含んでおり、制御部44に各種の処理を実行させるための制御プログラム等の情報が予め記憶されている。制御部44は、画像形成装置10の統括制御部7と一体化されていてもよい。
【0058】
ところで、関連技術として、複数の画像形成ユニットを有し、搬送ベルト上に保持された記録材上に順次異なる色の像を転写する、タンデム型の電子写真方式の画像形成装置が知られている。関連技術に係る光走査装置は、主走査方向の傾き、及び走査線の湾曲等の歪みについて、電気的な補正を可能とする。つまり、関連技術では、上記傾き及び歪み等を検出し、検出された傾き及び歪み等を補正するようなタイミング及び露光量で光線(光ビーム)を露光することにより、転写後の複数の像のレジストレーションずれを抑える。
【0059】
しかし、上記関連技術の方法では、補正量(つまり傾き量、歪み量等)が大きくなると、形成される像の精細度が低下し、画質の劣化につながる可能性がある。
【0060】
これに対し、本実施形態では、以下に説明する構成により、補正量が大きくなっても画質の劣化が生じにくい、光走査装置4を実現する。
【0061】
すなわち、本実施形態に係る光走査装置4では、
図4に示すように、光源部41及び走査部42に加えて、第1補正部81と、第2補正部82と、を備える。走査部42は、複数の光線B1~B4の各々を走査することで、画像形成部3に1以上の基準色と1以上の非基準色とを含む複数色に対応する複数の静電潜像を形成させる。第1補正部81は、複数の光線B1~B4のうち基準色に対応する基準光線の走査線の歪みを補正する。第2補正部82は、複数の光線B1~B4のうち非基準色に対応する非基準光線の走査線の歪みを補正する。本実施形態では一例として、第2補正部82及び後述する出力部45は、制御部44の一機能として制御部44に設けられている。
【0062】
本開示でいう「走査線」は、光線B1~B4の各々を主走査方向に走査した際に生じる線を意味する。つまり、光走査装置4が、光線B1~B4の各々を主走査方向(左右方向D3)に走査することで、4つの画像形成ユニット31~34の感光体ドラム311,321,331,341の各々に、走査線が生じる。走査線は、理想的には、各感光体ドラム311,321,331,341の回転軸に平行な直線、つまり主走査方向(左右方向D3)に延びる直線である。また、本開示でいう「走査線の歪み」は、ボウ(Bow)と呼ばれる走査線の曲がり(湾曲)を意味する。つまり、走査線は、例えば、光線B1~B4の光路上に位置する「光学素子」の個体ばらつき、変形又は取付位置ばらつき等に起因して、理想的な直線から、部分的に副走査方向(感光体ドラム311,321,331,341の回転方向D5)のずれを生じ得る。第1補正部81及び第2補正部82は、このような走査線の歪みを補正する。
【0063】
要するに、本実施形態では、走査部42にて走査される複数の光線B1~B4と一対一で対応する「複数色」は、1以上の「基準色」と1以上の「非基準色」とを含む。本実施形態では一例として、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)及びBk(ブラック)の4色のうち、Bk(ブラック)を「基準色」とし、Y(イエロー)、C(シアン)及びM(マゼンタ)を「非基準色」とする。ここで、基準色の「基準」は、単にラベルとして付しているだけであって、基準色を実際に「基準」になる色に限定する趣旨ではない。非基準色についても同様に、非基準色を実際に「基準」にならない色に限定する趣旨ではない。
【0064】
第1補正部81は、基準光線の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えることにより、基準光線の走査線の歪みを補正する。ここで、「基準光線」は、複数の光線B1~B4のうち基準色に対応する光線である。本実施形態では「基準色」はBk(ブラック)であるので、Bk(ブラック)に対応する光線B4が「基準光線」となる。したがって、本実施形態において、第1補正部81は、光学素子(ミラー421及び/又は走査レンズ422)のうち、基準光線(光線B4)の光路上に位置する光学素子に機械的外力を加えられるように構成される。
【0065】
本実施形態では一例として、第1補正部81は、
図3及び
図5に示すように、光線B4の光路上に位置するミラー421に対して、機械的外力F1(
図5参照)を加えることで、基準光線の走査線の歪みを補正する。具体的には、第1補正部81は、主走査方向である左右方向D3に長さを有する長尺状のミラー421の、長手方向(左右方向D3)の中央部に対し、裏面側(斜め下後方)から表面側(斜め上前方)に向けて機械的外力F1を印加する。ミラー421の長手方向(左右方向D3)の両端部は、固定台423(
図5参照)にて固定されている。そのため、ミラー421は、機械的外力F1の大きさに応じて、長手方向(左右方向D3)の中央部を斜め上前方に凸とするように撓む形で変形する。これにより、第1補正部81は、光線B4について、走査線を部分的に副走査方向に変位させることができ、走査線の歪みを補正できる。第1補正部81は、このようなミラー421の変形によって、ミラー421で反射される基準光線(光線B4)の走査線の歪みを補正するメカニカルな補正手段(補正機構)であって、ハードウェア的に走査線の歪みを補正する。以下では、第1補正部81で行われるようなハードウェア的な補正を「メカニカル補正」ともいう。
【0066】
第2補正部82は、光源部41を制御することにより、非基準光線の走査線の歪みを補正する。ここで、「非基準光線」は、複数の光線B1~B4のうち非基準色に対応する光線である。本実施形態では「非基準色」はY(イエロー)、C(シアン)及びM(マゼンタ)の3色であるので、これら3色に対応する光線B1~B3が「非基準光線」となる。したがって、本実施形態において、第2補正部82は、光源部41からの非基準光線(光線B1~B3)の出力を制御するよう光源部41を制御することで、非基準光線(光線B1~B3)の走査線の歪みを補正する。
【0067】
本実施形態では一例として、第2補正部82は、光線B1~B3について、出力のタイミングと光量との少なくとも一方を個別に制御することにより、非基準光線である光線B1~B3の走査線の歪みを個別に補正する。つまり、第2補正部82は、例えば、光源部41において光線B1を出力する発光モジュールについて、点灯/消灯のタイミング及び/又は光量を調整することにより、光線B1の走査線の歪みを補正する。一例として、第2補正部82は、主走査方向のある走査位置において光線B1の出力のタイミングを遅らせることにより、光線B1の当該走査位置における走査線を部分的に副走査方向に変位させることができ、光線B1の走査線の歪みを補正できる。第2補正部82は、このような光源部41の制御によって、非基準光線(光線B1~B3)の走査線の歪みを補正する電気的な補正手段であって、ソフトウェア的に走査線の歪みを補正する。以下では、第2補正部82で行われるようなソフトウェア的な補正を「発光制御補正」ともいう。
【0068】
このように、本実施形態に係る光走査装置4では、基準光線の走査線の歪みについては第1補正部81にてメカニカル補正により補正し、非基準光線の走査線の歪みについては第2補正部82にて発光制御補正により補正する。したがって、本実施形態では、上記関連技術のように、複数の光線B1~B4の全てについて発光制御補正により走査線の歪みを補正する構成に比較して、発光制御補正による補正量を小さく抑え、形成される像の精細度の低下を抑制できる。結果的に、本実施形態によれば、補正量が大きくなっても画質の劣化が生じにくい、光走査装置4を実現できる。
【0069】
また、複数の光線B1~B4の全てについてメカニカル補正により走査線の歪みを補正する構成に比較して、本実施形態では、メカニカル補正のための機構の個数を抑えることができる。これにより、光走査装置4及び画像形成装置10の小型化を図りやすくなる。
【0070】
以下、第1補正部81及び第2補正部82について、より詳細に説明する。
【0071】
本実施形態では、第1補正部81は、機械的外力F1の大きさをユーザーが手動で調整する手動タイプの機構を採用する。そして、第1補正部81による機械的外力F1の調整は、光走査装置4が画像形成装置10に組み込まれた状態でも可能である。すなわち、第1補正部81は、機械的外力F1を調整するための操作を受け付ける調整部811を有する。調整部811は、光源部41及び走査部42が使用可能な状態で操作可能な位置にある。より詳細には、第1補正部81は、
図3及び
図5に示すように、ねじ式の調整部811を有し、調整部811が回転させられることにより、調整部811の送り量を調整して機械的外力F1の大きさを調整する。ここで、調整部811の一端部は、
図3に示すように、光走査装置4の外郭を構成する筐体から露出している。特に、本実施形態では、4つの画像形成ユニット31~34のうち、端(後端)に位置する画像形成ユニット34に対応する光線B4を基準光線とするので、調整部811は筐体における後端部から露出することになる。したがって、光走査装置4が画像形成装置10に組み込まれた状態、つまり光源部41及び走査部42が使用可能な状態であっても、ユーザーは調整部811にアクセス可能となり、調整部811の操作が可能となる。
【0072】
ここにおいて、本実施形態に係る画像形成装置10は、複数色の画像(トナー像)を重ねたカラー画像を形成可能である。そのため、各色に対応する複数の光線B1~B4間において走査線同士のずれがあると、(カラー)レジストレーション(registration)にずれが生じて、画像形成装置10で形成される画像の色ずれ(レジストレーションずれ)につながる。そこで、本実施形態では、複数の光線B1~B4間での走査線のずれを低減するように、第1補正部81及び第2補正部82での走査線の歪みの補正を実施する。
【0073】
すなわち、第2補正部82は、第1補正部81により補正された基準光線の走査線を基準に、非基準光線の走査線の歪みを補正する。具体的には、第1補正部81による補正後の基準光線(光線B4)の走査線に非基準光線(光線B1~B3)の走査線を近づけるように、第2補正部82は、非基準光線(光線B1~B3)の走査線の歪みを補正する。これにより、光走査装置4では、複数の光線B1~B4間での走査線のずれを低減でき、画像形成装置10で形成される画像の色ずれ(レジストレーションずれ)の低減を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、第1補正部81は、第2補正部82による補正量が所定の条件を満たすように、基準光線の走査線の歪みを補正する。ここでいう「所定の条件」は、第2補正部82による補正量に関して課される条件であって、例えば、非基準光線(光線B1~B3)かつ主走査位置ごとに用いられる補正量の最大値を最小とすることを含む。他の例として、「所定の条件」は、非基準光線(光線B1~B3)かつ主走査位置ごとに用いられる補正量のピークトゥーピーク(peak to peak)を最小とすること等でもよい。つまり、第1補正部81での補正量(機械的外力F1の大きさ)は、第2補正部82による補正量が所定の条件を満たすように決定される。これにより、光走査装置4では、第2補正部82での発光制御補正による非基準光線(光線B1~B3)の走査線の補正量を小さく抑えやすい。
【0075】
また、出力部45は、基準光線の走査線と非基準光線の走査線とのずれを表す評価情報を出力する。本実施形態では一例として、出力部45は、例えば、評価情報を反映したチャートG1(
図7参照)の画像を画像形成装置10に形成させることにより、評価情報を出力する。出力部45による評価情報の出力の態様は、チャートG1の画像の形成に限らず、例えば、評価情報の表示部への表示、外部装置への送信、コンピューターシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体への書き込み等であってもよい。これにより、光走査装置4では、例えば、基準光線の走査線と非基準光線の走査線とのずれを小さくするように、第1補正部81又は第2補正部82による補正を行いやすくなる。
【0076】
[4]光走査方法
次に、
図6~
図9を参照しつつ、本実施形態に係る光走査装置4の動作である光走査方法について説明する。ここで、
図6におけるステップS1、S2・・・は、光走査装置4により実行される処理手順(ステップ)の番号を表している。光走査方法は、例えば、画像形成装置10の初期設定等において、所定のキャリブレーション実行指示が入力された場合に実行される。また、ここでは、Bk(ブラック)についての光走査方法を例示するが、光走査装置4は、Y(イエロー)、C(シアン)及びM(マゼンタ)についても同様の処理を実行する。
【0077】
<ステップS1>
まず、ステップS1において、光走査装置4は、出力部45(制御部44)にて、評価情報を反映するチャートG1の画像を画像形成装置10に形成させる。
図7に示すチャートG1は、目視用のチャートの一例であって、各色ごとに複数本の横線が等間隔で並べて描かれている。チャートG1では、基準色であるBk(ブラック)の横線と、非基準色であるY(イエロー)、C(シアン)又はM(マゼンタ)の横線とが対となるように、横並びで描かれており、両横線の相対位置が評価情報に相当する。
図7の例では、一部拡大して示すように、Bk(ブラック)の横線に対して、M(マゼンタ)の横線(点線で示す)が、「-2」の位置で一致しているので、M(マゼンタ)の走査線がBk(ブラック)の走査線に対して「-2」単位ずれていることを表す。このようなチャートG1から、ユーザーは目視でずれ量を確認する。
【0078】
ただし、
図7は、チャートG1の一例に過ぎず、出力部45は、例えば、目視用ではなく、スキャナー読取用のチャートを出力してもよい。この場合、チャートを画像読取部2にて読み取らせることで、制御部44にて、ずれ量を自動的に算出可能となる。
【0079】
<ステップS2>
ステップS2においては、走査線の歪みの補正の要否を判断する。つまり、走査線の歪みの補正が必要である場合には(S2:Yes)、光走査装置4は、処理をステップS3に移行させる。一方、走査線の歪みの補正が必要でなければ(S2:No)、光走査装置4は、ステップS3,S4をスキップして一連の処理を終了する。ここで、目視用のチャートG1であれば、走査線の歪みの補正の要否はユーザー(人)が判断し、判断結果を操作表示部6にて入力する。スキャナー読取用のチャートであれば、走査線の歪みの補正の要否は制御部44が判断する。
【0080】
<ステップS3>
ステップS3においては、第1補正部81にて、基準光線(光線B4)の走査線の歪みをメカニカル補正により補正する。本実施形態では、第1補正部81は手動であるので、ユーザーが調整部811を操作することで、メカニカル補正を実施する。このとき、第1補正部81による補正量、つまり機械的外力F1の大きさは、第2補正部82による補正量が所定の条件を満たすように決定される。ここでは一例として、非基準光線(光線B1~B3)かつ主走査位置ごとに用いられる補正量の最大値を最小とすることを所定の条件として、当該所定の条件を満たすように、第1補正部81による補正量が決定されることとする。
【0081】
このような所定の条件を満たすような第1補正部81による補正量は、例えば、出力部45により出力される評価情報(一例としてチャートG1)に基づいて、算出可能である。あるいは、画像形成部3の転写体(中間転写ベルト361)パッチ画像を形成させ、レジストセンサー300の出力に基づいて、第1補正部81による補正量が算出されてもよい。この場合、第1補正部81による補正量の算出についても自動化できる。
【0082】
<ステップS4>
ステップS4においては、第2補正部82にて、非基準光線(光線B1~B3)の走査線の歪みを発光制御補正により補正する。つまり、第2補正部82は、光線B1~B3について、出力のタイミング及び/又は光量を個別に制御することにより、非基準光線である光線B1~B3の走査線の歪みを個別に補正する。このとき、第2補正部82による補正量は、非基準光線(光線B1~B3)の走査線を第1補正部81による補正後の基準光線(光線B4)の走査線に近づけるように決定される。
【0083】
以上説明した光走査方法の手順は一例に過ぎず、
図6のフローチャートに示す処理の順番が適宜入れ替わったり、処理が追加されたりしてもよい。
【0084】
次に、
図8及び
図9を参照して、本実施形態に係る光走査装置4で期待し得る効果について説明する。
図8及び
図9では、いずれも上段に各色に対応する光線B1~B4ごとの走査線の歪み量のグラフを示し、下段に非基準色に対応する光線B1~B3ごとの補正量のグラフを示す。これらのグラフは、いずれも横軸を主走査方向の走査位置とし、縦軸を副走査方向の走査位置とする。そして、
図8及び
図9では、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線の歪み量は同一であって、かついずれも非基準色に対応する光線B1~B3の走査線を基準色に対応する光線B4の走査線に近づけるように補正することを前提とする。
図8は、基準光線(光線B4)の走査線の歪みについてメカニカル補正をしない場合の、非基準光線(光線B1~B3)の走査線の歪みの補正量を示す。
図9は、基準光線(光線B4)の走査線の歪みについてメカニカル補正をする場合の、非基準光線(光線B1~B3)の走査線の歪みの補正量を示す。ただし、ここでは走査線の傾き(Skew)成分については無いことと仮定する。
【0085】
すなわち、基準色(Bk)に対応する基準光線(光線B4)の走査線について、第1補正部81でのメカニカル補正がされていない場合、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線の補正量は、
図8の下段に示すように、比較的大きくなる。つまり、
図8の上段に示すグラフにおいて、基準色に対応する光線B4の走査線に、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線を近づけるには、
図8の下段に示すように、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線を比較的大きく補正する必要がある。この場合の発光制御補正による補正量の最大値は、主走査方向の走査位置「0」におけるM(マゼンタ)の「-0.013mm」である。
【0086】
これに対して、本実施形態のように、基準色(Bk)に対応する基準光線(光線B4)の走査線について、第1補正部81でのメカニカル補正が行われることで、
図9の下段に示すように、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線の補正量を小さくできる。ここでは、非基準光線(光線B1~B3)かつ主走査位置ごとに用いられる補正量の最大値を最小とすることを所定の条件として、第1補正部81による基準光線(光線B4)の走査線の補正量が決定されている。具体的には、主走査方向の中央(走査位置「0」)において、基準光線の副走査方向の走査位置が、3つの非基準光線の副走査方向の走査位置の最大値(0.006mm)と最小値(0.001mm)との中間値となるように、基準光線の走査線の歪みを補正する。
【0087】
この場合、
図9の上段に示すグラフにおいて、基準色に対応する光線B4の走査線に、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線を近づけるには、
図9の下段に示すように、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線が補正される。この場合の発光制御補正による補正量の最大値は、主走査方向の走査位置「-110」におけるC(シアン)、又は走査位置「110」におけるY(イエロー)の「0.0045mm」である。よって、本実施形態のように、基準光線(光線B4)の走査線についてメカニカル補正がされることで、当該メカニカル補正がされない場合に比較して、非基準光線(光線B1~B3)の発光制御補正による補正量は小さくなる。その結果、画質の劣化が生じにくい。
【0088】
[5]変形例
画像形成装置10に含まれる複数の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、画像読取部2と画像形成部3とは、別の筐体に設けられていてもよい。
【0089】
また、実施形態1では、Bk(ブラック)を「基準色」とし、Y(イエロー)、C(シアン)及びM(マゼンタ)を「非基準色」とするが、この例に限らない。例えば、Y(イエロー)、C(シアン)及びM(マゼンタ)のいずれかを「基準色」としてもよいし、Bk(ブラック)を「非基準色」としてもよい。さらに、基準色及び非基準色はそれぞれ1以上あればよく、基準色及び/又は非基準色は2色以上であってもよい。例えば、Bk(ブラック)及びY(イエロー)の2色を基準色とし、C(シアン)及びM(マゼンタ)の2色を非基準色としてもよい。さらに、実施形態1では、Y、C、M及びBkの4色を想定するが、これ以外の色が採用されてもよい。
【0090】
また、第1補正部81は、手動タイプに限らず、例えば、電気信号により動力を発生するアクチュエーターを用いて機械的外力F1を発生する電動タイプであってもよい。この場合、第1補正部81にユーザーがアクセスできなくても、例えば、操作表示部6に対する操作に応じて第1補正部81がメカニカル補正を実行可能である。さらに、第1補正部81は、光学素子を変形させる機能に加えて又は代えて、光学素子に機械的外力F1を加えて光学素子を変位させる機能を有してもいてもよい。例えば、光学素子に機械的外力F1を加えて光学素子を平行移動させることでも、メカニカル補正は実現可能である。
【0091】
(実施形態2)
本実施形態に係る画像形成装置10は、
図10に示すように、光走査装置4Aが第3補正部83を備える点で、実施形態1に係る画像形成装置10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して説明を適宜省略する。
【0092】
第3補正部83は、光源部41を制御することにより基準光線の走査線の歪みを補正する。本実施形態では一例として、第3補正部83は、制御部44の一機能として制御部44に設けられている。第3補正部83は、基準光線(光線B4)について、第2補正部82と同様に発光制御補正による走査線の歪みを補正する。つまり、第3補正部83は、光線B4について、出力のタイミングと光量との少なくとも一方を制御することにより、基準光線である光線B4の走査線の歪みを補正する。発光制御補正では、メカニカル補正に比較して、主走査方向における局所的な補正が可能であるため、光走査装置4Aは、第3補正部83を備えることで、発光制御補正による補正量を更に小さく抑えることができる。
【0093】
次に、
図11を参照して、本実施形態に係る光走査装置4Aで期待し得る効果について説明する。
図11では、
図8及び
図9と同様に、上段に各色に対応する光線B1~B4ごとの走査線の歪み量のグラフを示し、下段に非基準色に対応する光線B1~B3ごとの補正量のグラフを示す。
図11及び
図9では、非基準色に対応する光線B1~B3の走査線の歪み量は同一であって、かついずれも非基準色に対応する光線B1~B3の走査線を基準色に対応する光線B4の走査線に近づけるように補正することを前提とする。
【0094】
すなわち、本実施形態のように、基準光線(光線B4)について、第1補正部81でのメカニカル補正に加えて第3補正部83での発光制御補正が行われることで、
図11の下段に示すように、光線B1~B3の走査線の補正量をより小さくできる。この場合の発光制御補正による光線B1~B3の走査線の補正量の最大値は、主走査方向の走査位置「0」におけるY(イエロー)の「0.0025mm」、又はM(マゼンタ)の「-0.0025mm」である。よって、本実施形態のように、基準光線(光線B4)の走査線についても発光制御補正がされることで、非基準光線(光線B1~B3)の発光制御補正による補正量はより小さくなり、画質の劣化が生じにくくなる。
【符号の説明】
【0095】
3 画像形成部
4,4A 光走査装置
10 画像形成装置
41 光源部
42 走査部
45 出力部
81 第1補正部
82 第2補正部
83 第3補正部
421 ミラー(光学素子)
422 走査レンズ(光学素子)
311,321,331,341 感光体ドラム(像担持体)
811 調整部
B1~B3 光線(非基準光線)
B4 光線(基準光線)
F1 機械的外力