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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】人工皮革
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
D06N3/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020149755
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044227
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮原 駿一
(72)【発明者】
【氏名】土本 貴大
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123444(JP,A)
【文献】特開2020-090752(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003866(WO,A1)
【文献】特開昭57-106763(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181319(WO,A1)
【文献】特開2009-001945(JP,A)
【文献】特開昭60-194185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維からなる不織布に織物が絡合一体化されてなる繊維絡合体と、高分子弾性体とからなる人工皮革であって、以下の要件(1)~(3)を満たす、人工皮革。
(1)前記人工皮革の、前記織物に近い側の面と、該織物から近い側の面の反対側の面の両表面が、立毛を有する表面である
(2)前記立毛を有する表面のうち、前記織物に近い側の面の平均立毛長が50μm以上150μm以下かつ立毛長のCV値が30%以下である
(3)前記立毛を有する面のうち、前記織物に近い側の面の反対側の面に樹脂層が形成されており、該織物に近い側の面の反対側の面の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、人工皮革の面積に対する樹脂部分の面積の割合を算出することで得られる樹脂部分の表面に占める割合(面積)が10%以上90%以下である。
【請求項2】
前記高分子弾性体がポリカーボネート系ポリウレタンである、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項3】
前記樹脂層を構成する樹脂がポリカーボネート系ポリウレタンである、請求項1または2に記載の人工皮革。
【請求項4】
前記不織布がポリエステル系樹脂からなり、前記ポリエステル系樹脂中に1,2-プロパンジオール由来の成分を1ppm以上500ppm以下含有する、請求項1~3のいずれかに記載の人工皮革。
【請求項5】
ISO16620(2015)で規定されるバイオマスプラスチック度が、10%以上100%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の人工皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細繊維からなる不織布に織物が絡合一体化された繊維絡合体と高分子弾性体とからなり、摩擦や揉みに対する繊維脱落が少ない人工皮革に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とからなる天然皮革調の人工皮革は、耐久性の高さや品質の均一性などの天然皮革対比で優れた特徴を有している。そのため、衣料用素材、車両内装材、インテリアや靴および衣料など様々な分野で使用される。特に、天然皮革対比での手入れのしやすさ(イージーケア性)やストレッチ性などの機能性付与が可能な点、柔軟な風合いなどの観点から、衣料用素材として好適に用いられることが多くなっており、衣料用として好適に用いられる人工皮革を得る方法が提案されている(特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-261082号公報
【文献】国際公開2017/033702号
【文献】特開2020―090752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術においては、人工皮革は伸縮性を有しており、ジャケット等に好適に用いられる人工皮革を得ることができる。また、特許文献2に開示された技術においては、拭き取り性能に優れる人工皮革を袖部に有する衣料を得ることができる。衣料として人工皮革を用いる場合に、イージーケア性の観点からは、人工皮革に汚れが付着した場合にドライクリーニング等により汚れを除去することができる。しかしながら、一般的な人工皮革をより簡便な汚れ除去を目的に、洗濯機により水洗した場合、摩擦や揉みによる繊維の脱落や、高分子弾性体の劣化が促進されるため、外観や物性の低下が大きく、他の衣料用素材と比較すると依然として手入れが難しいものである。
【0005】
また、特許文献3に開示された技術においては、人工皮革の立毛面にポリウレタンを偏在させることで、人工皮革の耐摩耗性をある程度向上させ、衣料等に好適に用いられる人工皮革を得ることができる。しかしながら、人工皮革の表面のうち、ポリウレタンを偏在させていない面については依然として耐摩耗性が低く、摩擦や揉みによる繊維脱落が多いものである。
【0006】
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、極細繊維からなる不織布に織物が絡合一体化された繊維絡合体と高分子弾性体とからなり、摩擦や揉みに対する繊維脱落が少なく、特に洗濯機による水洗を行った場合でも、外観や物性の低下が少ない人工皮革を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、織物を構成成分として含む人工皮革において、人工皮革の表面のうち、織物に近い面側の極細繊維は、織物から遠い面側の極細繊維に比べて極細繊維同士の絡合が弱く、摩擦や揉みを加えた際の繊維脱落が多くなることを見出した。また、特に織物から近い面側の表面に極細繊維からなる立毛を有する場合には、立毛長が長すぎたり、立毛長のバラツキが大きすぎたりすると、摩擦や揉みを加えた際の繊維脱落が多くなることを見出した。
【0008】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0009】
すなわち、本発明の人工皮革は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維からなる不織布に織物が絡合一体化されてなる繊維絡合体と、高分子弾性体とからなる人工皮革であって、以下の要件(1)~(3)を満たす。
(1)前記人工皮革の、前記織物に近い側の面と、該織物から近い側の面の反対側の面の両表面が、立毛を有する表面である
(2)前記立毛を有する表面のうち、前記織物に近い側の面の平均立毛長が50μm以上150μm以下かつ立毛長のCV値が30%以下である
(3)前記立毛を有する面のうち、前記織物に近い側の面の反対側の面に樹脂層が形成されており、該織物に近い側の面の反対側の面の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、人工皮革の面積に対する樹脂部分の面積の割合を算出することで得られる樹脂部分の表面に占める割合(面積)が10%以上90%以下である。
【0010】
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の高分子弾性体がポリカーボネート系ポリウレタンである。
【0011】
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の樹脂層を構成する樹脂がポリカーボネート系ポリウレタンである。
【0012】
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の不織布がポリエステル系樹脂からなり、前記のポリエステル系樹脂中に1,2-プロパンジオール由来の成分を1ppm以上500ppm以下含有する。
【0013】
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、ISO16620(2015)で規定されるバイオマスプラスチック度が、10%以上100%以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の人工皮革によれば、摩擦や揉みに対する繊維脱落が少なく、特に洗濯機による水洗を行った場合でも、外観や物性の低下が少ない人工皮革を得ることができる。さらに、本発明の人工皮革は、天然皮革調の優美な外観と柔軟な触感を有しており、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができるが、特にその手入れのしやすさの観点から、衣料用途に好適に用いられるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の人工皮革は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維からなる不織布に織物が絡合一体化されてなる繊維絡合体と、高分子弾性体とからなる人工皮革であって、以下の要件(1)~(3)を満たす。
(1)前記人工皮革の、前記織物に近い側の面と、該織物から近い側の面の反対側の面の両表面が、立毛を有する表面である
(2)前記立毛を有する表面のうち、前記織物に近い側の面の平均立毛長が50μm以上150μm以下かつ立毛長のCV値が30%以下である
(3)前記立毛を有する面のうち、前記織物に近い側の面の反対側の面に樹脂層が形成されており、該織物に近い側の面の反対側の面の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、人工皮革の面積に対する樹脂部分の面積の割合を算出することで得られる樹脂部分の表面に占める割合(面積)が10%以上90%以下である。
【0016】
[不織布]
本発明の人工皮革に係る不織布は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維からなる。極細繊維を構成する成分としては、耐久性、特には機械的強度等の観点から、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂が好ましく用いられ、耐熱性に優れるポリエステル系樹脂を用いることがより好ましい。
【0017】
前記のポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレ-ト、およびポリエチレン-1,2-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレート等が挙げられる。中でも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレート、または主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体が好適に使用される。
【0018】
極細繊維を構成する成分としてポリエステル系樹脂を用いた場合には、人工皮革を熱成型する際の耐熱性や、耐摩耗性を向上させるため、ポリエステル系樹脂を構成するポリエステル中に1,2-プロパンジオール由来の成分を1ppm以上500ppm以下含有することが好ましい。
【0019】
ここでいう1,2-プロパンジオール由来の成分とは、実施例の項に記載した方法でポリエステルを分解して分析した際に検出される1,2-プロパンジオールの総量によりその濃度は求められるのであって、ポリマー鎖中に共重合されている1,2-プロパンジオール由来の構造と、ポリマー間に混在している1,2-プロパンジオールの総量と考えられる。すなわち、この1,2-プロパンジオールは、ポリエステル主鎖中に一部共重合されていてもよく、共重合されずに単体として含有されていることも許容される。なお、繊維中にポリエステル以外の高分子が含有されていたときは1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールやオルソクロロフェノール等の溶媒を用いてポリエステルを選択的に抽出し、溶媒を留去した後に実施例の項に記載した方法によりその濃度は求められる。
【0020】
極細繊維を構成する成分には、種々の目的に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化チタン等の無機粒子、潤滑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤および抗菌剤等を添加することができる。
【0021】
極細繊維の断面形状としては、加工操業性の観点から、丸断面にすることが好ましいが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型、中空型、Y型、T型、およびU型などの異形断面の断面形状を採用することもできる。
【0022】
本発明に係る極細繊維の平均単繊維直径は、1μm以上10μm以下である。極細繊維の平均単繊維直径を1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上とすることにより、染色後の発色性や耐光および摩擦堅牢性、紡糸時の安定性に優れた効果を奏する。一方、10.0μm以下、好ましくは6.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下とすることにより、緻密でタッチの柔らかい表面品位に優れた人工皮革が得られる。
【0023】
本発明において極細繊維の平均単繊維直径とは、人工皮革断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の極細繊維をランダムに10本選び、単繊維直径(μm)を測定して10本の算術平均値を計算して、小数点以下第二位で四捨五入することにより算出されるものとする。ただし、異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積(μm)を測定し、当該断面を円形と見立てた場合の直径、すなわち、円相当径を算出することによって単繊維の直径(μm)を求めるものとする。
【0024】
さらに、本発明の人工皮革は、前記の極細繊維からなる不織布を構成要素として有すること、すなわち、人工皮革において、極細繊維の集合体が不織布の形態をなしている。不織布とすることにより、表面を起毛した際に均一で優美な外観を得ることができるだけでなく、柔軟な風合いを有する人工皮革を得ることができる。
【0025】
不織布の形態としては、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布などの長繊維不織布、あるいは、一定長の繊維から構成される短繊維不織布のいずれも採用できるが、製品面の立毛本数が多く優美な外観を得やすいことから、短繊維不織布であることが好ましい態様である。
【0026】
短繊維不織布とした際の極細繊維の繊維長は、好ましくは25~90mmである。繊維長を90mm以下、より好ましくは80mm以下、さらに好ましくは70mm以下とすることにより、得られる人工皮革は良好な品位と風合いとなる。一方、繊維長を25mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上とすることにより、耐摩耗性に優れた人工皮革とすることができる。
【0027】
[織物]
本発明の人工皮革に係る織物を構成する繊維の種類としては、フィラメントヤーン、紡績糸、フィラメントヤーンと紡績糸の混合複合糸などを用いることが好ましく、耐久性、特には機械的強度等の観点から、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂からなるマルチフィラメントを用いることがより好ましい。
【0028】
織物を構成する繊維の平均単繊維直径は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。織物を構成する繊維の平均単繊維直径を50.0μm以下、より好ましくは15.0μm以下、さらに好ましくは13.0μm以下とすることにより、柔軟性に優れた人工皮革が得られる。一方、平均単繊維直径を1.0μm以上、より好ましくは8.0μm以上、さらに好ましくは9.0μm以上とすることにより、人工皮革としての製品の形態安定性が向上する。
【0029】
本発明において織物を構成する繊維の平均単繊維直径は、人工皮革断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、織物を構成する繊維をランダムに10本選び、その繊維の単繊維直径を測定して10本の算術平均値を計算して、小数点以下第二位で四捨五入することにより算出されるものとする。ただし、異型断面の繊維を採用した場合には、不織布を構成する極細繊維の平均単繊維直径の測定・算出の場合と同様に、まず繊維の断面積(μm)を測定し、当該断面を円形と見立てた場合の直径、すなわち、円相当径を算出することによって繊維の直径(μm)を求めるものとする。
【0030】
織物を構成する繊維がマルチフィラメントである場合、そのマルチフィラメントの総繊度は、JIS L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.3 繊度」の「8.3.1 正量繊度 b) B法(簡便法)」で測定され、30dtex以上170dtex以下であることが好ましい。
【0031】
織物を構成するマルチフィラメントの総繊度を170dtex以下、より好ましくは150dtex以下とすることにより、柔軟性に優れた人工皮革が得られる。一方、総繊度を30dtex以上とすることにより、人工皮革としての製品の形態安定性が向上するだけでなく、不織布と織物をニードルパンチ等で絡合一体化させる際に、織物を構成する繊維が人工皮革の表面に露出しにくくなるため好ましい。このとき、経糸と緯糸のマルチフィラメントの総繊度は同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
さらに、前記の織物を構成するマルチフィラメントである場合、撚数を1000~4000T/mとすることが好ましい。撚数を4000T/m以下、より好ましくは3500T/m以下、さらに好ましくは3000T/m以下とすることにより、柔軟性に優れた人工皮革が得られ、撚数を1000T/m以上、より好ましくは1500T/m以上、さらに好ましくは2000T/m以上とすることにより、不織布と織物をニードルパンチ等で絡合一体化させる際に、織物を構成する繊維の損傷を防ぐことができ、人工皮革の機械的強度が優れたものとなるため好ましい。
【0033】
織物の基本組織は、ツイルやサテンを用いても良いが、目ずれなどが発生しにくい平組織を好ましく用いることができる。
【0034】
織物の織密度は、人工皮革において、経糸と緯糸の両方が40本/2.54cm~200本/2.54cmになるように調整することが好ましい。人工皮革を構成する織物の織密度を40本/2.54cm以上、より好ましくは60本/2.54cm以下にすることにより、形態安定性に優れた人工皮革を得ることができる。一方、人工皮革を構成する織物の織密度を200本/2.54cm以下、より好ましくは150本/2.54cm以下とすることにより、人工皮革の風合いを柔軟にすることができるだけでなく、不織布と織物を絡合一体化させる際に不織布の繊維同士の絡合を阻害することがなく、結果として人工皮革の繊維脱落を抑制することができる。
【0035】
[高分子弾性体]
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、人工皮革において、前記の極細繊維を把持するバインダーの役割を果たすものである。そのため、人工皮革がより柔軟な風合いを奏するように、高分子弾性体としては、ポリウレタン、ポリウレタン、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)およびアクリル樹脂などを用いることが好ましい。中でも、ポリウレタンを主成分として用いることがより好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えた人工皮革を得ることができる。なお、本発明でいう「主成分である」とは、高分子弾性体全体の質量に対してポリウレタンの質量が50質量%より多いことをいう。
【0036】
本発明においてポリウレタンを用いる場合には、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。また、ポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
【0037】
本発明においてポリウレタンを用いる場合には、用いられるポリマージオールとしては、平均分子量500以上3000以下のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、あるいはポリエステルポリエーテルジオールなどのポリマージオールなどから選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールを用いることができるが、ポリウレタンが繰り返しの洗濯に対してバインダーとして機能を損ないにくい、耐加水分解性に優れるポリカーボネートジオールを含むことが好ましい。
【0038】
また、高分子弾性体には、目的に応じて各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、「リン系、ハロゲン系および無機系」などの難燃剤、「フェノール系、イオウ系およびリン系」などの酸化防止剤、「ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系」などの紫外線吸収剤、「ヒンダードアミン系やベンゾエート系」などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤および染料などを含有させることができる。
【0039】
一般に、人工皮革における高分子弾性体の含有量は、使用する高分子弾性体の種類、高分子弾性体の製造方法および風合いや物性を考慮して、適宜調整することができるが、本発明においては、高分子弾性体の含有量は、不織布の質量に対して20質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。前記の高分子弾性体の含有量を20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、とすることで、人工皮革の耐摩耗性を向上させることができる。一方、前記の高分子弾性体の含有量を50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下とすることで、人工皮革をより柔軟性の高いものとすることができる。
【0040】
[樹脂層]
本発明における樹脂層で用いられる樹脂とは、伸び縮みするゴム弾性を有している高分子化合物であり、例えば、ポリウレタン、SBR、NBRおよびアクリル樹脂などを用いることが好ましい。中でも、ポリウレタンを主成分として用いることがより好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えた人工皮革を得ることができる。
【0041】
本発明においてポリウレタンを用いる場合には、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。また、ポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
【0042】
ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオールおよびフッ素系ジオールや、これらを組み合わせた共重合体を用いることができる。中でも、耐光性、耐加水分解性の観点から、ポリカーボネート系ジオールを用いることが好ましい。
【0043】
ポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、または、ホスゲンもしくはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
【0044】
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、などの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0045】
本発明では、それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネートジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールのいずれも用いることができる。
【0046】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いることができる。中でも、耐久性や耐熱性を重視する場合には、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、耐光性を重視する場合には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0047】
鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミンやメチレンビスアニリン等のアミン系鎖伸長剤、エチレングリコール等のジオール系鎖伸長剤、さらにはポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを用いることができる。
【0048】
本発明における樹脂層で用いられる樹脂は、耐摩耗性や風合いを損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂およびエチレン-酢酸ビニル樹脂などを含有させることができる。また、これらの樹脂には、各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤、および染料などを含有させることができる。
【0049】
本発明においては、樹脂部分の表面に占める割合(面積)が10~90%である。樹脂部分の表面に占める割合(面積)を10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上とすることで、人工皮革の、立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の反対側の面からの繊維脱落を抑制することができる。一方、樹脂部分の表面に占める割合(面積)を90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下とすることで、人工皮革の触感が優れたものとなる。
【0050】
本発明において、樹脂部分の表面に占める割合(面積)は人工皮革の樹脂層を有する面の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、人工皮革の面積に対する樹脂部分の面積の割合を算出することで得られる。
【0051】
[人工皮革]
本発明の人工皮革は、前記の繊維絡合体と、高分子弾性体とからなり、人工皮革の、前記織物に近い側の面と、該織物から近い側の面の反対側の面の両表面が立毛を有する表面である。まず、この立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面について説明する。なお、本発明において、立毛を有する表面とは、表面を指でなぞることによって、いわゆるフィンガーマークが発現する程度に、長さと方向柔軟性を備えた極細繊維の起毛層を有する表面のことを指し、織物に近い側とは、人工皮革の断面写真を撮影した際に、織物の厚み方向の最上点と最下点の中心点である、織物の中心から立毛を有する表面までの距離が近い側の面のことを指す。
【0052】
前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の平均立毛長は、50μm以上150μm以下である。平均立毛長が50μm以上、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上であることによって、当該織物に近い側の面の摩擦を小さくすることができ、人工皮革を揉んだ際に発生する極細繊維の脱落を抑制することができる。一方、平均立毛長が150μm以下、好ましくは130μm以下、より好ましくは120μm以下とすることによって、人工皮革を揉んだ際に立毛された極細繊維が絡まるのを抑制し、ダマになって繊維脱落してしまうのを抑制することができる。
【0053】
また、前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の立毛長のCV値(Coefficient of Variation)は30%以下である。立毛長のCV値が30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下であることによって、立毛長の長い繊維と短い繊維が混在することで長い繊維のみが絡まり、その結果、極細繊維が脱落してしまうことを抑制することができる。なお、立毛長のCV値の下限は特に制限されないが、工程安定性や生産性の観点から5%以上であることが好ましい。
【0054】
次に、前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の反対の面について説明する。前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の反対の面の立毛は、優美な外観が得られるように、平均立毛長が100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。一方で、摩擦時の繊維脱落を抑制するために、400μm以下であることが好ましく、350μm以下であることがより好ましい。
【0055】
本発明において、平均立毛長および立毛長のCV値は、リントブラシ等を用いて人工皮革の立毛を逆立てた状態で人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率50倍で撮影し、立毛部(極細繊維のみからなる層)の高さを10点測定してその平均値およびCV値を算出する。
【0056】
さらに、本発明の人工皮革は、人工皮革の厚み方向断面において、以下の式(i)を満たすことが好ましい。
【0057】
B>A/2 ・・・(i)
ここで、Aは前記織物の厚み(μm)であり、Bは前記織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離(μm)である。AとBとが式(i)を満たすことは、織物を被覆する不織布の層が薄いことを指し、製造時において織物に近い側の面の立毛を形成する際に、織物の層が損傷しにくくなるため、機械的強度の高い人工皮革とすることができる。さらに、万が一、表面の繊維が脱落した場合であっても、織物が表面に露出しにくくすることができるため、長期使用時にも外観品位が損なわれることのない人工皮革を得ることができるようになる。
【0058】
なお、上記の式(i)は好ましくは、以下の式(i’)を満たす。
【0059】
A>B ・・・(i’)
本発明において、織物の厚みA(μm)は、人工皮革の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製「VE-7800」など)により倍率50~200倍で撮影し、織物の高さを10点測定してその平均値を算出する。また、織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離B(μm)も、Aの算出に用いた画像を用いて、織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面までの距離(立毛部を含む)を10点測定してその平均値を算出する。
【0060】
本発明の人工皮革は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.1 厚さ(ISO法)」の「6.1.1 A法」で測定される人工皮革の厚みが、0.2mm以上1.0mm以下の範囲であることが好ましい。人工皮革の厚みを、0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上とすることで、製造時の加工性に優れるだけでなく、充実感のある、風合いに優れたものとなる。一方、厚みを1.0mm以下、より好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下とすることで、成型性に優れた、柔軟な人工皮革とすることができる。
【0061】
さらに、本発明の人工皮革は、カーボンニュートラルの観点から、ISO16620(2015)で規定されるバイオマスプラスチック度が、10%以上であることが好ましい。バイオマスプラスチック度は、環境負荷の低減の観点から、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
【0062】
また、本発明の人工皮革は、ISO6330(2012)C4N法に従う洗濯試験時において、前記の人工皮革1枚の洗濯試験を実施し、試験後に排水ホースに取り付けた捕集袋に付着した繊維屑を、メンブレンフィルターを用いて捕集した場合の繊維屑量が10.0(mg/人工皮革100cm)以下であることが好ましい。中でも、8.0(mg/人工皮革100cm)以下、より好ましくは6.0(mg/人工皮革100cm)以下、さらに好ましくは5.0(mg/人工皮革100cm)以下であることによって、人工皮革が洗濯時に繊維脱落が少なく、環境負荷の少ないものとなる。
【0063】
なお、本発明において、ISO6330(2012)C4N法に従う洗濯試験時において、前記人工皮革1枚の洗濯試験を実施し、試験後に排水ホースに取り付けた捕集袋に付着した繊維屑を、メンブレンフィルターを用いて捕集した場合の繊維屑量は、以下のように手順で測定し、算出される値を指す。
(1) 人工皮革から試験片100cmを採取する。
(2) 洗濯機に被洗物、洗剤を入れずにISO6330(2012)C4N法に従い、洗濯を行い、洗濯機を洗浄する。
(3) 洗濯機の排水ホースに目開き10μmの「ナイロンスクリーン」(「NY10-HC」(フロン工業株式会社製))を用いて製造した捕集袋を取り付けた状態で、評価する試験片1枚を洗濯機に入れ、ISO6330(2012)C4N法に従い、洗濯を行う。ただし、洗剤と負荷布は使用しないものとする。
(4)洗濯後、「ナイロンスクリーン」に付着した繊維屑を、あらかじめ質量を測定したポリカーボネートメンブレン(「K040A047A」 (アドバンテック東洋株式会社製))を用いて吸引濾過する。
(5)濾過後のポリカーボネートメンブレンと繊維屑を105℃で1時間乾燥し、残渣の質量を測定し、濾過前の質量との差を洗濯時の繊維屑量とする。
【0064】
また、本発明の人工皮革はJIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の「8.19 摩耗強さ及び摩擦変色性」の「8.19.5 E法(マーチンデール法)」で測定される耐摩耗試験において、押圧荷重を12.0kPaとし、20000回の回数を摩耗した後の人工皮革の質量減が人工皮革の両面において、10mg以下であることが好ましく、8mg以下であることがより好ましく、6mg以下であることがさらに好ましい。人工皮革の両面の質量減が10mg以下であることで、実使用時の毛羽落ちによる汚染や洗濯時の繊維脱落を防ぐことができる。
【0065】
[人工皮革の製造方法]
本発明の人工皮革の製造方法は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維からなる不織布に織物を絡合一体化させた繊維絡合体と、高分子弾性体とからなるシート状物の両表面に立毛を形成させる人工皮革の製造方法であって、前記の織物に近い側の面の平均立毛長を50μm以上150μm以下かつ立毛調のCV値を30%以下とし、前記の人工皮革を製造するものである。以下に、本発明の人工皮革の製造方法について、詳細をさらに説明する。
【0066】
本発明の人工皮革の製造方法に用いられる繊維絡合体は、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維からなる不織布に織物が絡合一体化されて得られるものである。織物と絡合一体化させる前の不織布を構成する繊維としては、平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維を用いても、後の工程で極細繊維化することで平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現することができる極細繊維発現型繊維を用いても良いが、好ましくは極細繊維発現型繊維を用いることで、不織布同士を絡合させる時、あるいは、や不織布と織物とを絡合させる時に極細繊維の損傷を防ぐことができる。
【0067】
極細繊維発現型繊維を用いる場合には、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、前記の海成分を、溶剤などを用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を、繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。
【0068】
中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって、島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるため、人工皮革の風合いや表面品位の観点からも好ましく用いられる。
【0069】
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体を用いる方式と、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な単繊維繊度の極細繊維が得られるという観点から、高分子相互配列体を用いる方式による海島型複合繊維が好ましく用いられる。
【0070】
海島型複合繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸などを用いることができる。その中でも、製糸性や易溶出性等の観点から、ポリスチレンや共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
【0071】
上記の海島型複合繊維を用いる場合には、その島成分繊維の強度が、0.3cN以上である海島型複合繊維を用いることが好ましい。島成分繊維の強度が0.3cN以上、より好ましくは0.35cN以上、さらに好ましくは0.4cN以上であることによって、人工皮革の耐摩耗性を向上させることができる。
【0072】
なお、本発明において、海島型複合繊維の島成分繊維の強度は以下の方法により算出されるものとする。
(1) 長さ20cmの海島型複合繊維を10本束ねる。
(2) (1)の試料から海成分を溶解除去したのちに、風乾する。
(3) JIS L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.5 引張強さ及び伸び率」の「8.5.1 標準時試験」にて、つかみ長さ5cm、引張速度5cm/分、荷重2Nの条件にて10回試験する(N=10)。
(4) (3)で得られた試験結果の算術平均値(cN)を小数点以下第三位で四捨五入して得られる値を、海島型複合繊維の島成分繊維の強度とする。
【0073】
次に、得られた極細繊維発現型繊維をクロスラッパー等により繊維ウェブとし、絡合させることにより不織布を得る。繊維ウェブを絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等を用いることができる。
【0074】
不織布の形態としては、前述のように短繊維不織布でも長繊維不織布でも用いることができるが、短繊維不織布であると、人工皮革の厚さ方向を向く極細繊維が長繊維不織布に比べて多くなり、起毛した際の人工皮革の表面に高い緻密感を得ることができるため好ましい。
【0075】
なお、短繊維不織布とする場合は、得られた極細繊維発現型繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカットしてから不織布化する。この際、捲縮加工やカット加工は、公知の方法を用いることができる。
【0076】
不織布に織物を絡合一体化させるには、不織布の片面もしくは両面に織物を積層するか、あるいは複数枚の不織布ウェブの間に織物を挟んだ後に、ニードルパンチ処理やウォータージェットパンチ処理等によって不織布と織物の繊維同士を絡ませる方法を採ることができる。
【0077】
ニードルパンチ処理が用いられる場合において、ニードルパンチのニードルのバーブ方向は、不織布と織物との進行方向に対して好ましくは直行する90±25°とすることにより、損傷しやすい織物の緯糸を引掛けにくくなる。
【0078】
また、ウォータージェットパンチ処理が用いられる場合において、ウォータージェットパンチ処理の水は柱状流の状態で行うことが好ましい。具体的には、直径0.05~1.0mmのノズルから圧力1~60MPaで水を噴出させることが好ましい態様である。
【0079】
ニードルパンチ処理あるいはウォータージェットパンチ処理後の繊維絡合体の見掛け密度は、0.15g/cm3以上0.45g/cm3以下とすることが好ましい。見掛け密度を好ましくは0.15g/cm3以上とすることにより、優れた形態安定性と寸法安定性を有する人工皮革が得られる。一方、見掛け密度を好ましくは0.45g/cm3以下とすることにより、高分子弾性体を付与するための十分な空間を形成することができる。
【0080】
不織布の片面もしくは両面に織物を積層する場合には、不織布を構成する繊維によって織物が完全に被覆されるように絡合一体化させることが好ましい。より具体的には、不織布に織物を絡合一体化させた繊維絡合体において、織物が繊維絡合体の表面に露出していないことが好ましい。
【0081】
前記の繊維絡合体には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチームによる熱収縮処理を施すことも好ましい態様である。
【0082】
さらに、前記の繊維絡合体に水溶性樹脂の水溶液を含浸し、乾燥することにより水溶性樹脂を付与することもできる。繊維絡合体に水溶性樹脂を付与することにより、繊維が固定されて寸法安定性が向上される。なお、ここで言う水溶性樹脂とは、親水性基を有し、水に溶解させた際に溶液が粘調な液体となる性質を有する樹脂のことであり、具体的には、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略することがある。)やポリビニルピロリドン(以下、PVPと略することがある。)が挙げられる。
【0083】
また、不織布を構成する繊維として、極細繊維発現型繊維を用いた場合には、得られた繊維絡合体を溶剤で処理して、極細繊維発現型繊維から平均単繊維直径が1μm以上10μm以下の極細繊維を発現させる。極細繊維の発現処理は、後述する高分子弾性体の付与後に行うこともできる。
【0084】
極細繊維発現型繊維が海島型複合繊維の場合、海成分を溶解除去する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの場合には、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いることができる。また、海成分が共重合ポリエステルやポリ乳酸の場合には、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができる。また、海成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の場合には、熱水を用いることができる。
【0085】
そして、不織布に織物を絡合一体化させた繊維絡合体に高分子弾性体の溶液を含浸し固化して、高分子弾性体を付与する。この際には、高分子弾性体を不織布に固定する方法として、高分子弾性体の溶液を繊維絡合体に含浸させた後、水などの凝固液に浸して凝固を行う湿式凝固法、または、加熱により高分子弾性体の溶液中の溶媒を除去し凝固を行う乾式凝固法があり、使用する高分子弾性体の種類により適宜これらの方法を選択することができる。
【0086】
高分子弾性体としてポリウレタンを付与させる際に用いられる溶媒としては、N,N’-ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等が好ましく用いられる。また、ポリウレタンを水中にエマルジョンとして分散させた水分散型ポリウレタン液を用いてもよい。
【0087】
不織布の両面に織物を積層した繊維絡合体を用いている場合には、得られたシートを厚み方向に半裁することが好ましい態様である。
【0088】
さらに、前記の繊維絡合体と高分子弾性体とからなるシート状物(これを半裁したものも含む)に起毛処理を行い、立毛を形成させ、立毛シートを得る。この起毛処理は、サンドペーパーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤や帯電防止剤を付与することも好ましい態様である。
【0089】
サンドペーパーを用いて起毛処理を行う場合には、織物に近い側の面の起毛処理において、立毛長を所定の範囲にし、かつ織物の損傷を防ぐために、サンドペーパーの目の粗さや研削抵抗等により調整することが好ましい。
【0090】
さらに、上記の立毛シートは、少なくとも前記織物に近い側の面に対してシャーリング加工を施すことが好ましい。シャーリング加工を施すことで、織物に近い側の面の立毛長をより均一化させ、得られる人工皮革の立毛長のCV値を容易に30%以下とすることができる。
【0091】
上記の立毛シートは、必要に応じて染色処理を施すことができる。この染色処理としては、例えば、ジッガー染色機や液流染色機を用いた液流染色処理、連続染色機を用いたサーモゾル染色処理等の浸染処理、あるいはローラー捺染、スクリーン捺染、インクジェット方式捺染、昇華捺染および真空昇華捺染等による立毛面への捺染処理等を用いることができる。中でも、柔軟な風合いが得られること等から、品質や品位面から液流染色機を用いることが好ましい。
【0092】
さらに、上記の立毛シートの織物に近い側の面の反対側の面に樹脂層を形成し、人工皮革とする。
【0093】
本発明における樹脂層の形成方法としては、例えば、フラットスクリーンやロータリースクリーン等のスクリーン法やグラビアコーティング法等での塗布後に乾燥して樹脂層を形成する方法や、離型紙等の支持基材上に非連続状の樹脂膜を形成した後、その樹脂膜の表面に接着剤を塗布し、基材となる表面に貼り合わせて接着し、離型紙を剥離することによって樹脂層を形成する方法等が挙げられる。
【0094】
人工皮革には、必要に応じてその表面に意匠性を施すことができる。例えば、パーフォレーション等の穴開け加工、エンボス加工、レーザー加工、ピンソニック加工、およびプリント加工等の後加工処理を施すことができる。
【実施例
【0095】
次に、実施例を用いて本発明の人工皮革についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。次に、実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。ただし、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0096】
[測定方法および評価用加工方法]
(1)洗濯時の繊維屑量
人工皮革から10cm×10cm(100cm)の試験片を切り出し、前記の方法にて洗濯試験を実施し、繊維屑量を算出した。測定は2回行い、その平均値を洗濯時の繊維屑量とした。
【0097】
(2)樹脂部分の表面に占める割合(面積)
人工皮革の表面(樹脂層を有する面)を、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社キーエンス製、「VE-7800」)を用いて倍率100倍で観察した。得られた観察像から3cm×3cmの範囲を切り出し、樹脂部分の総面積の割合を算出した。測定は3回行い、その平均値を樹脂部分の表面に占める割合とした。
【0098】
(3)ポリエステル中の1,2-プロパンジオール由来の成分の含有量
始めに1,2-ブタンジオールの1000μg/ml水溶液を調製し、これを内部標準液Aとした。試料0.1gをバイアルに秤量し、これに内部標準液Aを0.015mlと、アンモニア水1mlを加えて密栓し、150℃の温度で3時間加熱した後、室温(25℃)まで放冷した。続いて、メタノール2mlと、テレフタル酸2.0gを加えた後、15分間振とうし、4000Gで3分間遠心分離した。上澄み液を取り出し、ガスクロマトグラフ(Hewlett Packard社製5890 seriesII、注入口:スプリット/スプリットレス注入口、検出器:水素炎イオン化検出器)において、次の設定条件で測定し、後述する検量線を用いて含有量を求めた。
・インジェクタ温度:220℃
・カラムヘッド圧:20psi
・キャリアガス:ヘリウム
・試料導入方法:分割(線流速 25ml/分)
・隔壁パージ:ヘリウム 3.0ml/分
・試料導入量:1.0μl
・ディテクタ温度:220℃
・ガス流量:水素40ml/分,空気400ml/分,窒素40ml/分
・オーブン昇温開始温度:60℃(保持時間2分)
・オーブン昇温停止温度:220℃(保持時間2分)
・オーブン昇温速度:20℃/分(直線傾斜)。
【0099】
1,2-プロパンジオールの検量線は、次の手順で作成した。1,2-プロパンジオールの1000μg/ml水溶液を調製し標準母液Bとした後、5mlメスフラスコ中に標準母液Bを0.003~0.08mlと、内部標準液Aを0.025ml加え、混合溶媒(メタノール:精製水=2:1、エチレングリコール1.1%含有)で定容してなる標準液Cを、標準母液Bの量を変化させて7種類調製した。なお、加える標準母液Bの量は試料の測定に十分な1,2-プロパンジオール濃度となるよう選ばれる。調製した標準液Cを、それぞれガスクロマトグラフィにおいて、前記の条件で測定した後、得られた1,2-プロパンジオールと内部標準物質のピーク面積比と標準液C中の1,2-プロパンジオールと内部標準物質の濃度比を、グラフにプロットすることにより、1,2-プロパンジオールの検量線を作成した。
【0100】
(4)織物の厚み(A)および織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離(B)
人工皮革の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社キーエンス製、「VE-7800」)を用いて倍率100倍で観察し、前記の方法にて織物の厚み(A)および織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離(B)を算出した。測定は3回行い、その平均値をそれぞれ織物の厚み(A)および織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離(B)とした。
【0101】
[実施例1]
<繊維絡合体を製造する工程>
島成分として固有粘度(IV値)が0.73で、バイオマス資源由来のエチレングリコールを重合成分とし、1、2-プロパンジオール由来の成分を15ppm含むポリエチレンテレフタレート(PET A)を用い、また海成分としてMFRが65のポリスチレンを用い、島数が16島/ホールの海島型複合用口金を用いて、紡糸温度が285℃、島/海質量比率が80/20、吐出量が1.2g/分・ホール、紡糸速度が1100m/分の条件で溶融紡糸した。次いで、90℃の温度の紡糸用の油剤液浴中で2.7倍に延伸し、押し込み型捲縮機を用いて捲縮加工処理し、その後、51mmの長さにカットし、海島型複合繊維の原綿を得た。
【0102】
次に、上記の海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成し、さらに固有粘度(IV値)が0.65で、バイオマス資源由来のエチレングリコールを重合成分とするポリエチレンテレフタレートを原料とするマルチフィラメント(平均単繊維直径:11μm、総繊度:84dtex)に2500T/mの撚りを施した撚糸を、緯糸と経糸の両方に用いた、織密度が経95本/2.54cm、緯76本/2.54cmの平織物(目付75g/m)を前記の積層ウェブの上下に積層し、2500本/cmのパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が700g/mで、厚みが3.0mmの繊維絡合体を得た。
【0103】
上記のようにして得られた繊維絡合体を96℃の温度の熱水で収縮処理させた後、これに、鹸化度が88%で、5質量%のPVA水溶液を含浸後にロールで絞り、温度120℃の熱風で10分間PVAをマイグレーションさせながら乾燥させ、繊維絡合体の質量に対するPVA質量が7.5質量%のPVA付シートを得た。
【0104】
上記のようにして得られたPVA付シートをトリクロロエチレンに浸漬させて、マングルによる搾液と圧縮を10回行うことによって、海成分の溶解除去とPVA付シートの圧縮処理を行い、極細繊維不織布とPVAとからなる脱海PVA付シートを得た。
【0105】
<高分子弾性体を付与する工程>
上記のようにして得られた脱海PVA付シートを、固形分濃度11.3%に調整したポリウレタン(PU A、ポリカーボネート系)のジメチルホルムアミド(以下、DMFと略することがある。)溶液に浸漬後にロールで絞り、次いでDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、厚みが2.4mmで、繊維絡合体の質量に対するポリウレタン質量が27質量%のポリウレタン付シートを得た。
【0106】
上記のようにして得られたポリウレタン付シートを厚さ方向に垂直に半裁し、厚みが1.2mmの半裁シートを得た。
【0107】
<シート状物の両表面に立毛を形成させる工程>
上記のようにして得られた半裁シートの、織物に近い側の面をサンドペーパー番手320番のエンドレスサンドペーパーで研削し、織物に近い側の反対側の面をサンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで研削し立毛面を形成させ、厚み0.9mmの起毛シートを得た。
【0108】
上記のようにして得られた起毛シートを、液流染色機を用いて、120℃の温度条件下で分散染料を用いて黒色に染色し、乾燥、幅セットを行い、染色された立毛シートを得た。
【0109】
<樹脂層を付与する工程>
上記のようにして得られた染色された立毛シートの、織物に近い側の面の反対側の面に、ポリカーボネート系ポリウレタンをロータリーコーティング手法を用いて非連続的に付与し、さらに、織物に近い側の面にシャーリング加工を行い、人工皮革を得た。結果を表1に示す。得られた人工皮革は極細繊維の平均繊維直径が4.2μmで厚み1.0mm、目付300g/mで、前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の平均立毛長は95μm、立毛長のCV値は14%、織物の厚みは290μm、前記織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離は170μmであった。この人工皮革の樹脂部分の表面に占める割合は80%であり、洗濯時の繊維屑量が1.5(mg/人工皮革100cm)と、洗濯時の繊維脱落が極めて少ないものであった。
【0110】
[実施例2]
<繊維絡合体を製造する工程>
島成分として固有粘度(IV値)が0.73で、石油資源由来のエチレングリコールを重合成分とし、1、2-プロパンジオール由来の成分を含まないポリエチレンテレフタレート(PET B)を用いた以外は実施例1と同様にして、海島型複合繊維の原綿を得た。
【0111】
次に、上記の海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成し、さらに固有粘度(IV値)が0.65で、石油資源由来のエチレングリコールを重合成分とするポリエチレンテレフタレートを原料とするマルチフィラメント(平均単繊維直径:11μm、総繊度:84dtex)に2500T/mの撚りを施した撚糸を、緯糸と経糸の両方に用いた、織密度が経95本/2.54cm、緯76本/2.54cmの平織物(目付75g/m)を前記の積層ウェブの上下に積層し、2500本/cmのパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が700g/m2で、厚みが3.0mmの繊維絡合体を得た。
【0112】
上記のようにして得られた繊維絡合体を用いた以外は実施例1と同様にして、脱海PVA付シートを得た。
【0113】
<高分子弾性体を付与する工程~樹脂層を付与する工程>
上記のようにして得られた脱海PVA付シート半裁シートを用いた以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。結果を表1に示す。得られた人工皮革は極細繊維の平均繊維直径が4.2μmで厚み1.0mm、目付300g/mで、前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の平均立毛長は94μm、立毛長のCV値は16%、織物の厚みは294μm、前記織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離は166μmであった。この人工皮革の樹脂部分の表面に占める割合は80%であり、洗濯時の繊維屑量が2.1(mg/人工皮革100cm)と、洗濯時の繊維脱落が少ないものであった。
【0114】
[実施例3]
<繊維絡合体を製造する工程~高分子弾性体を付与する工程>
実施例1と同様にして、厚みが1.2mmの半裁シートを得た。
【0115】
<シート状物の両表面に立毛を形成させる工程~樹脂層を付与する工程>
上記のようにして得られた半裁シートを、織物に近い側の面にシャーリング加工を行わなかった以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。結果を表1に示す。得られた人工皮革は極細繊維の平均繊維直径が4.2μmで厚み1.0mm、目付300g/mで、前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の平均立毛長は133μm、立毛長のCV値は24%、織物の厚みは290μm、前記織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離は170μmであった。この人工皮革の樹脂部分の表面に占める割合は80%であり、洗濯時の繊維屑量が3.2(mg/人工皮革100cm)と、洗濯時の繊維脱落が少ないものであった。
【0116】
[比較例1]
<繊維絡合体を製造する工程~高分子弾性体を付与する工程>
実施例1と同様にして、厚みが1.2mmの半裁シートを得た。
【0117】
<シート状物の両表面に立毛を形成させる工程~樹脂層を付与する工程>
上記のようにして得られた半裁シートの、織物に近い側の面をサンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで研削し、さらに織物に近い側の面にシャーリング加工を行わなかった以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。結果を表1に示す。得られた人工皮革は極細繊維の平均繊維直径が4.2μmで厚み1.0mm、目付300g/mで、前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面の平均立毛長は172μm、立毛長のCV値は35%、織物の厚みは287μm、前記織物と前記立毛を有する表面のうち、織物に近い側の面との間の距離は191μmであった。この人工皮革は洗濯時の繊維屑量が8.8(mg/人工皮革100cm)と、洗濯時の繊維脱落が多いものであった。
【0118】
【表1】