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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】プレフィルドシリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20241008BHJP
   A61M 5/19 20060101ALI20241008BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61M5/31 532
A61M5/19
A61M5/315 580
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020152937
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047173
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 亮
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 満
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕真
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082796(JP,A)
【文献】国際公開第2005/089837(WO,A1)
【文献】特開2007-090083(JP,A)
【文献】米国特許第04792329(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/19
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された筒状容器と、
前記筒状容器内に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な先端ガスケットと、
前記先端ガスケットとともに前記筒状容器内に空間を規定するように前記筒状容器内における前記先端ガスケットの後方に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な後端ガスケットと、
前記空間が、前記先端ガスケットに接する前室と前記後端ガスケットに接する後室とに区画されるように前記筒状容器内における前記先端ガスケットと前記後端ガスケットとの間に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な中間ガスケットと、
前記前室に収容された薬剤と、
前記後室に収容された薬液と、
前記後端ガスケットに接続されており、前記軸方向に沿って前記後端ガスケットを前記筒状容器の先端側に向けて押圧可能なプランジャと、を備え、
前記筒状容器は、
前記先端ガスケット、前記後端ガスケット及び前記中間ガスケットを収容可能なバレルと、
前記バレルの先端部に接続されたノズル部と、を有し、
前記バレルは、
前記先端ガスケットの外周面、前記中間ガスケットの外周面及び前記後端ガスケットの外周面に接触する内周面と、
前記内周面から前記軸方向と直交する方向に突出するとともに前記軸方向に沿って延びる形状を有する突出内側面と、を有し、
前記中間ガスケットの外周面には、前記中間ガスケットが前記突出内側面と対向する位置において前記前室と前記後室とを連通させる溝が形成されており、
前記先端ガスケットは、前記軸方向における後端部に形成されており、前記バレルの前記内周面に圧接する後端圧接部を有し、
前記ノズル部は、前記先端ガスケットを収容可能な収容部を有し、
前記収容部は、
前記軸方向に前記先端ガスケットを受ける受け面を有する底壁と、
前記底壁の縁部から起立する周壁と、
前記周壁の内周面のうち前記軸方向に前記受け面から離間した部位に設けられており、前記先端ガスケットの先端部を支持可能な支持部と、を有し、
前記後端圧接部は、前記薬液が前記前室に流入しており、かつ、前記先端ガスケットの先端部が前記支持部に当接した当接状態において、前記バレルの前記内周面に圧接しており、
前記支持部の先端部の内径は、前記支持部の後端部の内径よりも小さく、
前記支持部の後端部の内径は、前記周壁の後端部の内径よりも小さく、
前記軸方向と平行な方向における前記支持部の後端部及び前記支持部の先端部間の長さに対して前記支持部がその後端部から先端部に向かって縮径する割合は、前記軸方向と平行な方向における前記周壁の後端部及び前記支持部の後端部間の長さに対して前記周壁がその後端部から前記支持部の後端部に向かって縮径する割合よりも大きい、プレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記当接状態における前記後端圧接部と前記バレルとの重なり量は、前記バレルの先端部が上を向く姿勢において、前記前室内の前記薬液が前記後端圧接部と前記バレルとの隙間を通じて前記収容部に至るのが規制され、かつ、前記前室内の気体が前記後端圧接部と前記バレルとの隙間を通じて前記収容部に至るのを許容する量に設定されている、請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記先端ガスケットは、前記後端圧接部につながる凹部を有し、
前記凹部は、前記バレルの径方向における内向きに凸となるように湾曲するとともに、前記バレルの方向に環状につながる形状を有する、請求項1又は2に記載のプレフィルドシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内において薬剤と薬液とを混合可能なプレフィルドシリンジが知られている。例えば、国際公開第2015/079874号には、筒状容器と、前端側ガスケットと、後端側ガスケットと、中間ガスケットと、プランジャと、を備えるプレフィルドシリンジが開示されている。筒状容器は、各ガスケットを収容する筒状部と、筒状部の先端に取り付けられたノズル部と、を有している。ノズル部は、前端側ガスケットを収容可能な収容部を有している。ノズル部の前端には、注射針ユニットが取り付けられている。各ガスケットは、筒状部内を摺動可能である。筒状部内のうち前端側ガスケットと中間ガスケットとの間に形成される前室には、薬剤が収容されており、筒状部内のうち後端側ガスケットと中間ガスケットとの間に形成される後室には、液剤が収容されている。プランジャは、後端側ガスケットに接続されており、後端側ガスケットを前端側に向けて押し込み可能である。筒状部は、径方向外側に向けて突設されたバイパス部を有している。中間ガスケットの外周面には、中間ガスケットがバイパス部と対向する位置において前室と後室とを連通させる溝が形成されている。
【0003】
プランジャが押されていない状態では、中間ガスケットがバイパス部よりも後端側に位置しており、前室と後室とが中間ガスケットによって区画されている。プランジャが押されることによって中間ガスケットがバイパス部と対向すると、前室と後室とが連通するため、後端側ガスケットに押されることによって後室に収容された液剤が中間ガスケットの溝部を経由して前室に向けて移動する。液剤の前室への流入に伴って前室の内圧が上昇するため、前端側ガスケットは、収容部に収容される。これにより、収容部と前室とが連通するため、前端側ガスケットによる前室の密閉が解除される。そして、液剤の液面が筒状部の先端に到達しないような位置までプランジャが押し込まれ、薬剤が分散する程度の力でプレフィルドシリンジが振とうされる。これにより、薬剤と液剤とが混合される。この状態からプランジャがさらに押し込まれることにより、薬剤と液剤との混合液が前端側ガスケット及び収容部間に形成された流路を通じて注射針ユニットに排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/079874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国際公開第2015/079874号に記載されるプレフィルドシリンジでは、薬剤と薬液とが混合するようにプレフィルドシリンジが振とうされる際、前端側ガスケットと筒状部との隙間を通じて液剤の一部が収容部に至る懸念がある。振とう時に液剤の一部が収容部に至った場合、プライミング時に前記液剤の一部が注射針から漏れるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、振とう時における前室からの液漏れを抑制可能なプレフィルドシリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一局面に従ったプレフィルドシリンジは、筒状に形成された筒状容器と、前記筒状容器内に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な先端ガスケットと、前記先端ガスケットとともに前記筒状容器内に空間を規定するように前記筒状容器内における前記先端ガスケットの後方に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な後端ガスケットと、前記空間が、前記先端ガスケットに接する前室と前記後端ガスケットに接する後室とに区画されるように前記筒状容器内における前記先端ガスケットと前記後端ガスケットとの間に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な中間ガスケットと、前記前室に収容された薬剤と、前記後室に収容された薬液と、前記後端ガスケットに接続されており、前記軸方向に沿って前記後端ガスケットを前記筒状容器の先端側に向けて押圧可能なプランジャと、を備え、前記筒状容器は、前記先端ガスケット、前記後端ガスケット及び前記中間ガスケットを収容可能なバレルと、前記バレルの先端部に接続されたノズル部と、を有し、前記バレルは、前記先端ガスケットの外周面、前記中間ガスケットの外周面及び前記後端ガスケットの外周面に接触する内周面と、前記内周面から前記軸方向と直交する方向に突出するとともに前記軸方向に沿って延びる形状を有する突出内側面と、を有し、前記中間ガスケットの外周面には、前記中間ガスケットが前記突出内側面と対向する位置において前記前室と前記後室とを連通させる溝が形成されており、前記先端ガスケットは、前記軸方向における後端部に形成されており、前記バレルの前記内周面に圧接する後端圧接部を有し、前記ノズル部は、前記先端ガスケットを収容可能な収容部を有し、前記収容部は、前記軸方向に前記先端ガスケットを受ける受け面を有する底壁と、前記底壁の縁部から起立する周壁と、前記周壁の内周面のうち前記軸方向に前記受け面から離間した部位に設けられており、前記先端ガスケットの先端部を支持可能な支持部と、を有し、前記後端圧接部は、前記薬液が前記前室に流入しており、かつ、前記先端ガスケットの先端部が前記支持部に当接した当接状態において、前記バレルの前記内周面に圧接している。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、振とう時における前室からの液漏れを抑制可能なプレフィルドシリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のプレフィルドシリンジの使用前の状態を示す斜視図である。
図2】使用前の状態におけるプレフィルドシリンジの断面図である。
図3】先端ガスケットの断面図である。
図4】ノズル部の近傍の断面斜視図である。
図5】リブの近傍の断面図である。
図6】当接状態における先端ガスケットの近傍の断面図である。
図7】押込み完了状態におけるプレフィルドシリンジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態のプレフィルドシリンジの斜視図である。図2は、プレフィルドシリンジの断面図である。このプレフィルドシリンジ1は、薬液10及び薬剤20の容器としての機能と、注射器としての機能と、を有している。図1及び図2に示されるように、プレフィルドシリンジ1は、薬液10と、薬剤20と、筒状容器100と、プランジャ200と、注射針ユニット300と、先端ガスケット400と、後端ガスケット500と、中間ガスケット600と、キャップ700と、を備えている。なお、図1及び図2は、使用前の状態におけるプレフィルドシリンジ1を示している。
【0012】
筒状容器100は、薬液10と薬剤20とが互いに分離された状態で薬液10と薬剤20とを収容している。つまり、筒状容器100は、薬液10及び薬剤20の容器としての機能を有している。筒状容器100は、バレル110と、ノズル部120と、フランジ部130と、を有している。
【0013】
バレル110は、薬液10と薬剤20とを収容している。図2に示されるように、バレル110の先端部(図2における上側の端部)及び後端部(図2における下側の端部)は、開口している。バレル110は、バレル本体112と、突出部114と、を有している。
【0014】
バレル本体112は、筒状に形成されている。具体的に、バレル本体112は、円筒状に形成されている。
【0015】
突出部114は、バレル本体112からバレル本体112の径方向の外向きに膨出するとともにバレル本体112の軸方向(図2における上下方向)に沿って延びる形状を有している。突出部114の内側面は、突出内側面114S(図2を参照)を構成している。突出内側面114Sは、バレル本体112の内周面112Sから前記軸方向と直交する方向に突出するとともに前記軸方向に沿って延びる形状を有している。
【0016】
バレル本体112には、ストップリングRが設けられている。ストップリングRは、プランジャ200の筒状容器100に対する押込み量の目安を示すものである。ストップリングRは、バレル本体112のうち突出部114よりも先端側の部位に設けられている。
【0017】
先端ガスケット400は、筒状容器100内に設けられている。具体的に、図1及び図2に示されるように、先端ガスケット400は、プレフィルドシリンジ1の使用前において、バレル本体112内のうち突出部114よりも先端側に収容されている。先端ガスケット400は、バレル本体112の内周面112Sに密着している。先端ガスケット400は、前記軸方向に沿ってバレル本体112及び収容部122に対して摺動可能である。本実施形態では、前記軸方向における先端ガスケット400の長さは、7.0mmに設定されている。先端ガスケット400の先端面400S1の径は、14.45mmに設定されている。
【0018】
図3に示されるように、先端ガスケット400は、後端圧接部410と、凹部420と、を有している。
【0019】
後端圧接部410は、先端ガスケット400の後端部に形成されている。後端圧接部410は、バレル本体112の内周面112Sに圧接している。後端圧接部410の後端は、先端ガスケット400の後端面400S2につながっている。この後端面400S2は、平坦に形成されている。後端圧接部410は、径方向(図3における左右方向)における外向きに凸となるように湾曲するとともに、周方向に環状につながる形状を有している。後端圧接部410の頂部の外径d1(図3を参照)は、14.45mmに設定されている。
【0020】
凹部420は、後端圧接部410につながっている。凹部420は、径方向における内向きに凸となるように湾曲するとともに、周方向に環状につながる形状を有している。凹部420の底部の外径d2(図3を参照)は、13.4mmに設定されている。後端面400S2から凹部420の底部まで部位の厚みt(図3を参照)は、2.1mmに設定されている。
【0021】
後端ガスケット500は、先端ガスケット400とともに筒状容器100内に空間を規定するように筒状容器100内における先端ガスケット400の後方に設けられている。後端ガスケット500は、バレル本体112の内周面112Sに密着している。後端ガスケット500は、前記軸方向に沿ってバレル本体112に対して摺動可能である。図2に示されるように、後端ガスケット500には、雌ネジ部510が形成されている。
【0022】
中間ガスケット600は、前記空間が前室と後室とに区画されるように筒状容器100のバレル本体112内における先端ガスケット400と後端ガスケット500との間に設けられている。図2に示されるように、中間ガスケット600は、プレフィルドシリンジ1の使用前において、バレル本体112内のうち突出部114よりも後端側に収容されている。
【0023】
前室は、先端ガスケット400に接する空間である。より詳細には、前室は、先端ガスケット400と中間ガスケット600とバレル110とにより区画される空間である。前室には、薬剤20が収容されている。
【0024】
後室は、後端ガスケット500に接する空間である。より詳細には、後室は、後端ガスケット500と中間ガスケット600とバレル110とにより区画される空間である。後室には、薬液10が収容されている。
【0025】
中間ガスケット600は、バレル本体112の内周面112Sに密着している。中間ガスケット600は、前記軸方向に沿ってバレル本体112に対して摺動可能である。中間ガスケット600の外周面には、中間ガスケット600が突出内側面114Sと対向する位置において前室と後室とを連通させる溝610が形成されている。
【0026】
ノズル部120は、バレル本体112の先端部に接続されている。ノズル部120は、収容部122と、取付部126と、吐出部128と、を有している。
【0027】
収容部122は、先端ガスケット400を収容可能である。収容部122は、バレル本体112の先端側に位置している。図1に示されるように、収容部122には、保護部材800が取り付けられている。図4に示されるように、収容部122は、底壁122Aと、周壁122Bと、リブ122Cと、を有している。
【0028】
底壁122Aは、前記軸方向に先端ガスケット400の先端部を受ける受け面122aを有している。
【0029】
周壁122Bは、底壁122Aの縁部から起立している。周壁122Bは、円筒状に形成されている。周壁122Bの先端B1(図5を参照)の内径は、周壁122Bの後端B2(図5を参照)の内径よりも小さい。本実施形態では、前記先端B1の内径は、13.5mmに設定されており、前記後端B2の内径は、14.3mmに設定されている。
【0030】
リブ122Cは、周壁122Bの内周面に設けられている。リブ122Cは、周壁122Bの内周面から周壁122Bの径方向における内向きに突出するとともに、前記軸方向に沿って延びる形状を有している。リブ122Cの先端は、底壁122Aの受け面122aにつながっている。リブ122Cは、周壁122Bの周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0031】
図4及び図5に示されるように、リブ122Cは、支持部122cを有している。支持部122cは、先端ガスケット400の先端部を支持可能な部位である。支持部122cは、前記軸方向におけるリブ122Cの中間部に形成されている。すなわち、支持部122cは、周壁122Bの内周面のうち前記軸方向に受け面122aから離間した部位に設けられている。支持部122cは、リブ122Cのうち当該支持部122cよりも後方の部位から周壁122Bの径方向における内向きに突出する段部で構成されている。図5に示されるように、支持部122cは、前記軸方向における先端に向かうにしたがって次第に縮径する形状を有している。
【0032】
周壁122Bの後端B2及び支持部122cの先端部c1間の距離L1(図5を参照)は、6.2mmに設定されている。周壁122Bの後端B2及び支持部122cの後端部c2間の距離L2(図5を参照)は、5.9mmに設定されている。支持部122cの先端部c1の内径は、13.9mmに設定されている。支持部122cの後端部c2の内径は、14mmに設定されている。
【0033】
支持部122cの後端部c2は、周壁122Bの径方向における外向きに凸となるように湾曲する形状を有している。本実施形態では、前記後端部c2の曲率半径は、0.7mmに設定されている。
【0034】
周壁122Bの内周面及び底壁122Aの受け面122aには、薬液10と薬剤20との混合液を排出するための流路122fが形成されている。この流路122fは、周壁122Bの内周面及び受け面122aのうち流路122f以外の部位から窪む形状を有している。流路122fは、周壁122Bの内周面のうちリブ122Cが設けられている部位とは異なる部位に設けられている。
【0035】
取付部126は、バレル本体112の先端部に取り付けられる部位である。取付部126は、収容部122の後端部から後方に向かって延びる形状を有している。取付部126は、円筒状に形成されている。
【0036】
吐出部128は、底壁122Aの先端から先方に向かって延びる形状を有している。吐出部128内は、流路122fとつながっている。
【0037】
注射針ユニット300は、吐出部128に接続されている。注射針ユニット300は、吐出部128に接続された基体310と、基体310に保持された穿刺針320と、を有している。プレフィルドシリンジ1が注射器として使用される前は、穿刺針320は、キャップ700(図1を参照)で覆われている。
【0038】
フランジ部130は、バレル本体112の後端部に接続されている。フランジ部130は、取付け筒部132と、張出部134と、を有している。
【0039】
取付け筒部132は、バレル本体112の後端部に取り付けられる部位である。取付け筒部132は、円筒状に形成されている。
【0040】
張出部134は、取付け筒部132の後端部から径方向の外向きに張り出す形状を有している。
【0041】
プランジャ200は、後端ガスケット500に接続されている。プランジャ200は、前記軸方向に沿って後端ガスケット500を筒状容器100の先端側に向けて押圧可能である。図2に示されるように、プランジャ200は、軸部210と、押圧部220と、接続部230と、を有している。
【0042】
接続部230は、後端ガスケット500に接続されている。接続部230は、後端ガスケット500の雌ネジ部510に螺合する雄ネジ部を有している。
【0043】
押圧部220は、接続部230の後端部に接続されている。押圧部220は、後端ガスケット500を押圧する。押圧部220は、円板状に形成されている。
【0044】
軸部210は、押圧部220の後端面からバレル110の軸方向に沿って後方に向かって延びる形状を有している。
【0045】
図6は、薬液10が前室に流入しており、かつ、先端ガスケット400の先端部(先端面400S1)が支持部122cに当接した当接状態におけるプレフィルドシリンジ1の先端ガスケット400の近傍の断面図である。なお、当接状態では、中間ガスケット600の先端部は、ストップリングRの位置に位置している。
【0046】
図6に示されるように、当接状態において、先端ガスケット400の後端圧接部410は、バレル110の内周面112Sに圧接している。当接状態における先端ガスケット400とバレル110との重なり量L(図6を参照)は、バレル110の先端部が上を向く姿勢において、前室内の薬液10が後端圧接部410とバレル110との隙間を通じて収容部122に至るのが規制され、かつ、前室内の気体(例えば空気)が後端圧接部410とバレル110との隙間を通じて収容部122に至るのを許容する量に設定されている。重なり量Lは、0.5mm以上2.2mm以下に設定されることが好ましい。本実施形態では、重なり量Lは、1.1mmに設定されている。
【0047】
図7は、押込み完了状態(先端ガスケット400が受け面122aに接触し、中間ガスケット600が先端ガスケット400に接触し、かつ、後端ガスケット500が中間ガスケット600に接触するまでプランジャ200が筒状容器100に対して押し込まれた状態)における断面図である。
【0048】
図7に示されるように、先端ガスケット400の先端面400S1が収容部122の受け面122aに接触した状態では、先端ガスケット400は、バレル本体112から離脱している。この状態において、前記混合液は、流路122fを通じて排出される。
【0049】
次に、プレフィルドシリンジ1の使用方法について説明する。
【0050】
まず、図2に示されるように、注射針ユニット300が上向きになるようにプレフィルドシリンジ1の姿勢を調整する。この状態において、筒状容器100に対してプランジャ200を上向きに押し込む。
【0051】
そして、中間ガスケット600の溝610が突出内側面114Sと対向すると、前室と後室とが連通するため、後端ガスケット500に押されることによって後室内の薬液10が中間ガスケット600の溝610と突出内側面114Sとの隙間を経由して前室に向けて移動する。このとき、プランジャ200は、図6に示されるように、中間ガスケット600の先端面600SがストップリングRに一致するまで押し込まれる。このプランジャ200の押し込みによって前室の内圧が上昇するため、先端ガスケット400は、リブ122Cの支持部122cに当接するまで(当接状態となるまで)前記軸方向に移動する。
【0052】
そして、先端ガスケット400の先端面400S1が支持部122cに当接した当接状態では、図6に示されるように、先端ガスケット400の後端圧接部410は、バレル本体112の内周面112Sに圧接している。この当接状態において、薬液10と薬剤20とを混合させるためにプレフィルドシリンジ1が振とうされる。これにより、薬液10と薬剤20とが混合される。
【0053】
この振とう時、薬液10の一部が先端ガスケット400の後端面400S2に向けて移動することがあるものの、本実施形態では、先端ガスケット400の後端圧接部410がバレル本体112の内周面112Sに圧接しているため、前室から収容部122への液漏れが有効に抑制される。一方、振とう時、前室内の気体は、後端圧接部410とバレル本体112との隙間を通じて収容部122に抜ける。
【0054】
その後、プランジャ200がさらに押し込まれる。そうすると、先端ガスケット400がバレル本体112から離脱するとともに、先端ガスケット400の先端面400S1が受け面122aに当接する。その状態からプランジャ200がさらに押し込まれることにより、流路122f及び穿刺針320を通じて混合液が排出される。そして、図7に示される押込み完了状態に至ると、混合液の排出が終了する。
【0055】
以上に説明したように、このプレフィルドシリンジ1では、当接状態において、先端ガスケット400の後端圧接部410がバレル110の内周面112Sに圧接しているため、薬剤20と薬液10とを混合させるためにプレフィルドシリンジ1を振とうさせる際における前室から収容部122への液漏れが有効に抑制される。
【0056】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0057】
この開示の一局面に従ったプレフィルドシリンジは、筒状に形成された筒状容器と、前記筒状容器内に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な先端ガスケットと、前記先端ガスケットとともに前記筒状容器内に空間を規定するように前記筒状容器内における前記先端ガスケットの後方に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な後端ガスケットと、前記空間が、前記先端ガスケットに接する前室と前記後端ガスケットに接する後室とに区画されるように前記筒状容器内における前記先端ガスケットと前記後端ガスケットとの間に設けられており、前記筒状容器の軸方向に沿って前記筒状容器に対して摺動可能な中間ガスケットと、前記前室に収容された薬剤と、前記後室に収容された薬液と、前記後端ガスケットに接続されており、前記軸方向に沿って前記後端ガスケットを前記筒状容器の先端側に向けて押圧可能なプランジャと、を備え、前記筒状容器は、前記先端ガスケット、前記後端ガスケット及び前記中間ガスケットを収容可能なバレルと、前記バレルの先端部に接続されたノズル部と、を有し、前記バレルは、前記先端ガスケットの外周面、前記中間ガスケットの外周面及び前記後端ガスケットの外周面に接触する内周面と、前記内周面から前記軸方向と直交する方向に突出するとともに前記軸方向に沿って延びる形状を有する突出内側面と、を有し、前記中間ガスケットの外周面には、前記中間ガスケットが前記突出内側面と対向する位置において前記前室と前記後室とを連通させる溝が形成されており、前記先端ガスケットは、前記軸方向における後端部に形成されており、前記バレルの前記内周面に圧接する後端圧接部を有し、前記ノズル部は、前記先端ガスケットを収容可能な収容部を有し、前記収容部は、前記軸方向に前記先端ガスケットを受ける受け面を有する底壁と、前記底壁の縁部から起立する周壁と、前記周壁の内周面のうち前記軸方向に前記受け面から離間した部位に設けられており、前記先端ガスケットの先端部を支持可能な支持部と、を有し、前記後端圧接部は、前記薬液が前記前室に流入しており、かつ、前記先端ガスケットの先端部が前記支持部に当接した当接状態において、前記バレルの前記内周面に圧接している。
【0058】
このプレフィルドシリンジでは、薬液が前室に流入しており、かつ、先端ガスケットの先端部が収容部の支持部に当接した当接状態において、先端ガスケットの後端圧接部がバレルの内周面に圧接しているため、薬剤と薬液とを混合させるためにプレフィルドシリンジを振とうさせる際における前室から収容部への液漏れが有効に抑制される。
【0059】
また、前記当接状態における前記後端圧接部と前記バレルとの重なり量は、前記バレルの先端部が上を向く姿勢において、前記前室内の前記薬液が前記後端圧接部と前記バレルとの隙間を通じて前記収容部に至るのが規制され、かつ、前記前室内の気体が前記後端圧接部と前記バレルとの隙間を通じて前記収容部に至るのを許容する量に設定されていることが好ましい。
【0060】
このようにすれば、当接状態でプレフィルドシリンジを振とうさせる際における前室から収容部への液漏れの抑制と、プライミング時における前室からの有効な気体抜きと、が両立される。
【0061】
また、前記先端ガスケットは、前記後端圧接部につながる凹部を有し、前記凹部は、前記バレルの径方向における内向きに凸となるように湾曲するとともに、前記バレルの方向に環状につながる形状を有することが好ましい。
【0062】
このようにすれば、当接状態でのプレフィルドシリンジの振とう時に後端圧接部とバレルとの隙間を通じて前室内の気体が収容部に抜けることが促進される。
【0063】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 プレフィルドシリンジ、10 薬液、20 薬剤、100 筒状容器、110 バレル、112 バレル本体、112S 内周面、114 突出部、114S 突出内側面、120 ノズル部、122 収容部、122A 底壁、122a 受け面、122B 周壁、122C リブ、122c 支持部、122f 流路、126 取付部、128 吐出部、130 フランジ部、132 取付け筒部、134 張出部、200 プランジャ、210 軸部、220 押圧部、230 接続部、300 注射針ユニット、310 基体、320 穿刺針、400 先端ガスケット、410 後端圧接部、420 凹部、500 後端ガスケット、510 雌ネジ部、600 中間ガスケット、610 溝、700 キャップ、800 保護部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7