(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/50 20100101AFI20241008BHJP
B62J 45/411 20200101ALI20241008BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20241008BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B62M6/50
B62J45/411
B62M6/55
G01L3/10 301A
G01L3/10 301J
(21)【出願番号】P 2020155207
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大寺 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小野 潤司
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 晃大
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-236589(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208687(WO,A1)
【文献】特開2018-112451(JP,A)
【文献】特開2018-100086(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107117252(CN,A)
【文献】国際公開第2018/007404(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0305879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/40 - 6/75
B62J 45/411
B62J 45/42 - 45/421
B62M 6/55
G01L 3/00 - 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸、及び、前記クランク軸の周囲に該クランク軸と同期した回転を可能に支持された駆動側スプロケットを有するクランクと、
前記クランク軸の軸方向両側の端部にそれぞれ加わるトルクを測定可能に構成された一対のトルクセンサと、
を備え
、
前記一対のトルクセンサのそれぞれが、前記クランク軸又は前記クランク軸に支持固定された部材に生じる逆磁歪効果を利用して、前記クランク軸又は前記クランク軸に支持固定された部材に加わるトルクを測定可能な磁歪式トルクセンサにより構成されており、
前記一対のトルクセンサのそれぞれの検出部が、前記クランク軸の中心軸を中心とする一部の円周方向範囲にのみ配置されており、
前記クランク軸又は前記クランク軸に支持固定された部材は、外周面のうち、前記一対のトルクセンサのそれぞれの前記検出部が対向する軸方向範囲であって、かつ、円周方向に関する一部の範囲にのみショットピーニング処理部を有し、
前記一対のトルクセンサのそれぞれの前記検出部の円周方向長さが、前記ショットピーニング処理部のそれぞれの円周方向長さよりも長い、自転車。
【請求項2】
従動側スプロケットと、
前記従動側スプロケットと同軸に、かつ、少なくとも前進する際の前記従動側スプロケットの回転トルクを伝達可能に支持された駆動輪と、
前記駆動側スプロケットと前記従動側スプロケットとにかけ渡されたチェーンと、
電動モータ及び前記一対のトルクセンサを有し、前記電動モータを補助動力源として、前記一対のトルクセンサの出力信号に応じた補助動力を前記駆動輪に付与する電動アシスト装置と、を備える、
請求項
1に記載の自転車。
【請求項3】
前記電動アシスト装置が、
前記クランク軸に外嵌固定された人力伝達体と、
前記クランク軸の周囲に、該クランク軸に対する回転を可能に支持され、かつ、前記駆動側スプロケットと一体に回転する連動体と、
前記電動モータの補助動力を前記連動体に伝達する増力機構と、
前記人力伝達体と前記連動体との間に配置され、かつ、前進する際の前記人力伝達体の回転トルクを前記連動体に伝達するのに対し、前進する際の前記連動体の回転トルクを前記人力伝達体に伝達しない一方向クラッチと、
を有する、
請求項
2に記載の自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車は、電動モータを補助動力源として利用することにより、運転者がペダルを漕ぐ力を低減する電動アシスト装置を備える。
図9は、特開2019-108126号公報に、従来構造として記載された電動アシスト自転車を示している。
【0003】
電動アシスト自転車100は、電動モータ101の補助動力を、チェーンホイールと呼ばれる駆動側スプロケット102に付与する。電動アシスト自転車100は、クランク103と、電動アシスト装置104とを備える。
【0004】
クランク103は、クランク軸105と、一対のクランクアーム106と、駆動側スプロケット102とを備える。一対のクランクアーム106は、それぞれの基端部を、クランク軸105の軸方向端部に支持固定し、かつ、それぞれの先端部に、ペダル107が回転自在に支持されている。駆動側スプロケット102は、クランク軸105の周囲に、電動アシスト自転車100が前進する際のクランク軸105の回転方向に関してクランク軸105と同期した回転を可能に支持されている。電動アシスト自転車100は、駆動側スプロケット102と、駆動輪と同期した回転を可能に支持された従動側スプロケットとにチェーンをかけ渡すことにより、駆動側スプロケット102の回転を駆動輪に伝達するように構成されている。
【0005】
電動アシスト装置104は、電動モータ101と、人力伝達体108と、連動体109と、増力機構(減速機)110と、一方向クラッチ111と、トルクセンサ112とを備える。
【0006】
人力伝達体108は、筒状に構成され、クランク軸105の周囲に、トルクの伝達を可能に外嵌固定されている。
【0007】
連動体109は、筒状に構成され、クランク軸105の周囲に、該クランク軸105に対する回転を自在に支持され、かつ、駆動側スプロケット102と一体に回転する。すなわち、駆動側スプロケット102は、連動体109の周囲に、トルクの伝達を可能に外嵌固定されている。
【0008】
増力機構110は、電動モータ101の出力トルクを増大させつつ、連動体109に伝達する。
【0009】
一方向クラッチ111は、人力伝達体108と連動体109との間に配置され、かつ、電動アシスト自転車100が前進する際の人力伝達体108の回転トルクを連動体109に伝達するのに対し、自転車が前進する際の連動体109の回転トルクを人力伝達体108に伝達しない。
【0010】
トルクセンサ112は、磁歪式トルクセンサにより構成され、検出部を、人力伝達体108の外周面に対向させている。
【0011】
電動アシスト装置104は、トルクセンサ112の出力信号などに基づいて、電動モータ101への通電を制御し、電動モータ101の出力トルクは、増力機構110により増大されてから、連動体109を介して駆動側スプロケット102に付与される。これにより、運転者がペダル107を漕ぐ力、すなわち踏力が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特開2019-108126号公報に記載の電動アシスト自転車100においては、電動アシスト装置104は、トルクセンサ112を1個のみ備え、該トルクセンサ112の検出部を、人力伝達体108の外周面に対向させている。したがって、クランク軸105の軸方向両側の端部に加わるトルクを、それぞれ独立して測定することはできない。すなわち、運転者の左右のペダル踏力を、それぞれ独立して測定することはできない。
【0014】
本発明は、上述のような事情に鑑み、クランク軸の軸方向両側の端部に加わるトルクを、それぞれ独立して測定することができる自転車の構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の自転車は、
クランク軸、及び、前記クランク軸の周囲に該クランク軸と同期した回転を可能に支持された駆動側スプロケットを有するクランクと、
前記クランク軸の軸方向両側の端部にそれぞれ加わるトルクを測定可能に構成された一対のトルクセンサと、
を備える。
【0016】
前記一対のトルクセンサは、それぞれの検出部を、前記クランク軸のうち、軸方向に関して前記駆動側スプロケットを挟む部分の外周面、又は、当該部分に支持固定された部材の外周面に備えられた被検出面に対向させることができる。
【0017】
前記クランク軸の軸方向両側の端部のそれぞれには、クランクアームの基端部が結合固定される。クランクアームのそれぞれの先端部には、運転者により踏まれるペダルが回転可能に支持される。あるいは、本発明を手漕ぎ自転車に適用する場合には、クランクアームのそれぞれの先端部には、ハンドルが回転可能に支持される。
【0018】
本発明の一実施形態に係る自転車では、前記一対のトルクセンサのそれぞれを、前記クランク軸又は前記クランク軸に支持固定された部材に生じる逆磁歪効果を利用して、前記クランク軸又は前記クランク軸に支持固定された部材に加わるトルクを測定可能な磁歪式トルクセンサにより構成することができる。
この場合、前記クランク軸又は前記クランク軸に支持固定された部材は、外周面のうち、前記一対のトルクセンサのそれぞれの検出部が対向する軸方向範囲であって、かつ、円周方向に関する一部の範囲にのみショットピーニング処理部を有することができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る自転車は、
従動側スプロケットと、
前記従動側スプロケットと同軸に、かつ、少なくとも前進する際の前記従動側スプロケットの回転トルクを伝達可能に支持された駆動輪と、
前記駆動側スプロケットと前記従動側スプロケットとにかけ渡されたチェーンと、
電動モータ及び前記一対のトルクセンサを有し、前記電動モータを補助動力源として、前記一対のトルクセンサの出力信号に応じた補助動力を前記駆動輪に付与する電動アシスト装置と、を備えることができる。
【0020】
前記電動アシスト装置は、
前記クランク軸に外嵌固定された人力伝達体と、
前記クランク軸の周囲に、該クランク軸に対する回転を可能に支持され、かつ、前記駆動側スプロケットと一体に回転する連動体と、
前記電動モータの補助動力を前記連動体に伝達する増力機構と、
前記人力伝達体と前記連動体との間に配置され、かつ、前進する際の前記人力伝達体の回転トルクを前記連動体に伝達するのに対し、前進する際の前記連動体の回転トルクを前記人力伝達体に伝達しない一方向クラッチと、
を有することができる。
【0021】
この場合、前記一対のトルクセンサは、それぞれの検出部を、前記クランク軸のうち、軸方向に関して前記駆動側スプロケットを挟み、前記人力伝達体よりも軸方向外側かつ前記連動体よりも軸方向外側に位置する部分の外周面、又は、当該部分に支持固定された部材の外周面に備えられた被検出面に対向させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自転車によれば、クランク軸の軸方向両側の端部に加わるトルクを、それぞれ独立して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施の形態の第1例に係る自転車を示す側面図である。
【
図4】
図4は、トルクセンサの検出部を構成する第1~第4コイル層を径方向外側から見た展開図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(d)は、トルクセンサの検出部を構成する第1~第4コイル層をそれぞれ単体の状態で径方向外側から見た展開図である。
【
図6】
図6は、トルクセンサの検出部を構成する第1~第4コイル層を含んで構成されるブリッジ回路を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態の第2例に係る自転車を示す側面図である。
【
図9】
図9は、従来構造の自転車を示す、部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1~
図6を用いて説明する。本例は、本発明の自転車を、電動モータを補助動力源として運転者がペダルを漕ぐ力を低減する電動アシスト装置を備える電動アシスト自転車に適用した例である。
【0025】
本例の自転車1は、フレーム2と、前輪3と、後輪4と、ハンドル5と、サドル6と、クランク7と、一対のペダル8と、従動側スプロケット9と、チェーン10と、電動アシスト装置11とを備える。
【0026】
フレーム2は、上下方向に伸長する立パイプ2aと、立パイプ2aの下側の端部から前方に向かって延出する下パイプ2bと、下パイプ2bの前側の端部に、上下方向に伸長する中心軸を中心とする回転を可能に支持された二股状のフォーク2cと、立パイプ2aの上側の端部から後方に向かう程下方に向かう方向に延出するシートステー2dと、立パイプ2aの下側の端部とシートステー2dの下側の端部とを接続するチェーンステー2eとを備える。
【0027】
前輪3は、フォーク2cの下側の端部に、幅方向に配置された中心軸を中心とする回転を自在に支持されている。
【0028】
なお、幅方向(
図1の表裏方向、
図2の左右方向)とは、フレーム2、すなわち車体の幅方向であって、左右方向と一致する。
【0029】
後輪4は、シートステー2dの後下側の端部とチェーンステー2eの後側の端部との接続部に、幅方向に配置された中心軸を中心とする回転を自在に支持されている。後輪4には、後述するチェーン10及び従動側スプロケット9を介して、クランク7からのトルクが伝達される。すなわち、本例では、後輪4が、駆動輪を構成する。
【0030】
ハンドル5は、フォーク2cの上側の端部に結合固定されている。したがって、運転者のハンドル5の操作に伴い、フォーク2cが上下方向に伸長する中心軸を中心に回転し、フォーク2cに回転自在に支持された前輪3に舵角が付与される。
【0031】
サドル6は、立パイプ2aの上方に支持されている。
【0032】
クランク7は、クランク軸12と、一対のクランクアーム13a、13bと、駆動側スプロケット14とを備える。
【0033】
クランク軸12は、立パイプ2aの下側の端部に、幅方向に配置された中心軸を中心とする回転を自在に支持されている。すなわち、クランク軸12の軸方向は、車体の幅方向と一致する。
【0034】
一対のクランクアーム13a、13bは、それぞれの基端部を、クランク軸12の軸方向両側の端部のそれぞれに支持固定している。一対のクランクアーム13a、13bのそれぞれは、クランク軸12の軸方向両側の端部のそれぞれから、クランク軸12の中心軸を中心とする径方向に関して互いに反対側に向けて伸長している。
【0035】
駆動側スプロケット14は、クランク軸12の周囲に、自転車1が前進する際のクランク軸12の回転方向に関して該クランク軸12と同期した回転を可能に支持されている。具体的には、本例では、駆動側スプロケット14は、後述する電動アシスト装置11を構成する人力伝達体15と一方向クラッチ16と連動体17とを介して、クランク軸12に支持されている。
【0036】
一対のペダル8のそれぞれは、クランクアーム13のそれぞれの先端部に、クランク軸12と平行に配置された中心軸を中心とする回転を可能に支持されている。
【0037】
従動側スプロケット9は、後輪4と同軸に、フリーホイールと呼ばれる、ラチェット式又はカム式の一方向クラッチにより支持されている。したがって、自転車1が前進する際の従動側スプロケット9の回転トルクは、後輪4に伝達されるのに対し、自転車1が前進する際の後輪4の回転トルクは、従動側スプロケット9に伝達されない。要するに、運転者がペダル8を漕いで自転車1を前進させる際には、ペダル8側からの回転トルクを、駆動側スプロケット14とチェーン10と従動側スプロケット9とを介して後輪4に伝達するが、自転車1を前方に惰性走行させる際には、後輪4の回転トルクを、一方向クラッチにより遮断して後輪4を空転させることで、ペダル8が回転しないようにしている。
【0038】
チェーン10は、駆動側スプロケット14と従動側スプロケット9とにかけ渡されている。すなわち、運転者が一対のペダル8を漕ぐことに伴い、クランク軸12が回転し駆動側スプロケット14が回転すると、該駆動側スプロケット14の回転は、チェーン10により、従動側スプロケット9に伝達される。さらに、従動側スプロケット9の回転に伴い、後輪4が回転して自転車1が前進する。
【0039】
電動アシスト装置11は、電動モータ18と、人力伝達体15と、連動体17と、増力機構(減速機)19と、一方向クラッチ16と、一対のトルクセンサ20a、20bとを備える。
【0040】
人力伝達体15は、筒状に構成され、クランク軸12の周囲に、セレーション嵌合などのトルク伝達可能な構造により外嵌されている。
【0041】
連動体17は、筒状に構成され、クランク軸12の周囲に、該クランク軸12に対する回転を可能に支持され、かつ、駆動側スプロケット14と一体に回転する。すなわち、駆動側スプロケット14は、連動体17の周囲に、セレーション嵌合などのトルク伝達可能な構造により外嵌されている。
【0042】
増力機構19は、電動モータ18の出力トルクを増大させつつ、連動体17に伝達する。増力機構19は、トルクの伝達方向に関して電動モータ18と連動体17との間に、一方向クラッチ21を有する。一方向クラッチ21は、電動モータ18側からの回転トルクを連動体17側に伝達するのに対し、連動体17側からの回転トルクを電動モータ18側に伝達しない。これにより、バッテリの残容量の減少などに伴い、電動モータ18からの出力トルクが十分でない場合に、電動モータ18がペダル8を漕ぐことに対する抵抗となることを防止している。
【0043】
なお、本例では、増力機構19は、複数の歯車を噛合させてなる歯車式減速機により構成されている。ただし、本発明を実施する場合、電動アシスト装置を構成する増力機構を、遊星歯車式減速機やウォーム減速機などにより構成することもできる。
【0044】
一方向クラッチ16は、人力伝達体15と連動体17との間に配置され、かつ、自転車1が前進する際の人力伝達体15の回転トルクを連動体17に伝達するのに対し、自転車1が前進する際の連動体17の回転トルクを人力伝達体15に伝達しない。電動アシスト装置11を備える自転車1では、電動モータ18を保護するため、運転者がペダル8を漕ぐことを止めた後、しばらくの間、電動モータ18の出力軸を回転させ続ける。本例では、一方向クラッチ16により、ペダル8を漕ぐのをやめた後、しばらくの間、電動モータ18の出力軸が回転し続けることに基づいて、クランク軸12やペダル8が回転しまうことを防止している。
【0045】
一対のトルクセンサ20a、20bは、クランク軸12の軸方向両側の端部にそれぞれ加わるトルクを測定可能に構成されている。このために、本例では、一対のトルクセンサ20a、20bは、フレーム2に対し支持固定され、かつ、それぞれの検出部22を、クランク軸12の軸方向両側の端部のそれぞれに支持固定されたクランクアーム13a、13bの基端部外周面に対向させている。すなわち、本例では、クランクアーム13a、13bの基端部外周面を、被検出面23a、23bとしている。
【0046】
ただし、本発明の自転車を実施する場合、一対のトルクセンサは、クランク軸の軸方向両側の端部にそれぞれ加わるトルクを測定することができれば、それぞれの検出部を、クランクアームの基端部外周面に限らず、任意の部分に対向させることができる。すなわち、電動アシスト装置を備える構造においては、一対のトルクセンサは、それぞれの検出部を、クランク軸のうち、軸方向に関して駆動側スプロケットを挟み、人力伝達体よりも軸方向外側かつ連動体よりも軸方向外側に位置する部分の外周面、又は、当該部分に支持固定された部材に備えられた被検出面に対向させることができる。例えば、
図2の右側のトルクセンサ20aは、検出部22を、クランク軸12のうち、駆動側スプロケット14よりも右側に位置する部分の外周面、又は、当該部分に支持固定された部材に備えられた被検出面23aに対向させることができる。
図2の左側のトルクセンサ20bは、検出部22を、クランク軸12のうち、人力伝達体15よりも左側に位置する部分の外周面、又は、当該部分に支持固定された部材に備えられた被検出面23bに対向させることができる。
【0047】
なお、軸方向外側とは、自転車1の幅方向外側をいう。
【0048】
本例では、トルクセンサ20a、20bのそれぞれとして、回転体に生じる逆磁歪効果を利用して、前記回転体が伝達するトルクを測定可能な磁歪式トルクセンサにより構成されている。すなわち、トルクセンサ20a、20bのそれぞれは、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、磁性材製で円筒状のバックヨーク24と、バックヨーク24の径方向内側に接着などの適宜の固定手段によって保持固定された検出部22とを備える。
【0049】
検出部22は、多数のコイル(第1~第4検出コイル29~32)を含んで構成され、クランク軸12の中心軸Oを中心とする一部の円周方向範囲にのみ配置されている。すなわち、検出部22は、部分円筒状に構成されている。特に、本例では、検出部22は、半円筒状に構成されており、クランク軸12の中心軸Oを中心とする中心角が180°の円周方向範囲に配置されている。ただし、本発明を実施する場合、検出部は、本例の検出部22よりも小さい若しくは大きい円周方向範囲に配置するか、又は全周にわたって配置することもできる。又、バックヨーク24は、円筒状に構成されているが、本発明を実施する場合には、バックヨークを、検出部と同じ円周方向範囲にのみ存在する部分円筒状に構成することもできる。
【0050】
検出部22は、
図3(b)に示すように、それぞれが円筒状に構成された4つのコイル層である、第1~第4コイル層25~28を備える。第1~第4コイル層25~28は、径方向内側から第1コイル層25、第2コイル層26、第3コイル層27、第4コイル層28の順に積層配置されている。第1コイル層25と第2コイル層26とは、図示しない帯状のフレキシブル基板の片側面と他側面とに分けて成形され、かつ、該フレキシブル基板を半円筒状に湾曲させることにより、半円筒状に構成されている。第3コイル層27と第4コイル層28とは、図示しない別の帯状のフレキシブル基板の片側面と他側面とに分けて成形され、かつ、該フレキシブル基板を半円筒状に湾曲させることにより、半円筒状に構成されている。第2コイル層26と第3コイル層27との間には、絶縁層が設けられている。
【0051】
図4は、検出部22を径方向外側から見た展開図を示している。
図5(a)~
図5(d)は、検出部22を構成する第1~第4コイル層25~28をそれぞれ個別に径方向外側から見た展開図を示している。
【0052】
第1コイル層25は、
図5(a)に示すように、複数個の第1検出コイル29を備える。第1検出コイル29は、円周方向に関して等ピッチに並べて配置されており、かつ、円周方向に隣り合う第1検出コイル29同士が直列に接続されている。
【0053】
第2コイル層26は、
図5(b)に示すように、複数個の第2検出コイル30を備える。第2検出コイル30は、円周方向に関して等ピッチに並べて配置されており、かつ、円周方向に隣り合う第2検出コイル30同士が直列に接続されている。
【0054】
第3コイル層27は、
図5(c)に示すように、複数個の第3検出コイル31を備える。第3検出コイル31は、円周方向に関して等ピッチに並べて配置されており、かつ、円周方向に隣り合う第3検出コイル31同士が直列に接続されている。
【0055】
第4コイル層28は、
図5(d)に示すように、複数個の第4検出コイル32を備える。第4検出コイル32は、円周方向に関して等ピッチに並べて配置されており、かつ、円周方向に隣り合う第4検出コイル32同士が直列に接続されている。
【0056】
第1検出コイル29及び第4検出コイル32のそれぞれは、円周方向に関する両側辺に、クランク軸12の軸方向に対して+45゜傾斜した配線を含んで構成されている。これに対し、第2検出コイル30及び第3検出コイル31のそれぞれは、円周方向に関する両側辺に、クランク軸12の軸方向に対して-45゜傾斜した配線を含んで構成されている。
【0057】
なお、本例では、第1~第4コイル層25~28のそれぞれを、フレキシブル基板の側面に成形しているが、本発明を実施する場合、磁歪式トルクセンサの検出部を構成する複数のコイル層のそれぞれを、ボビンなどの支持部材に導線を巻き付けることによって構成することもできる。
【0058】
第1~第4コイル層25~28は、
図6に示すような、ブリッジ回路33を構成している。ブリッジ回路33は、発振器34及びロックイン増幅器35をさらに備える。発振器34は、第1コイル層25と第2コイル層26との接続点であるA点と、第3コイル層27と第4コイル層28との接続点であるB点との間に交流電圧を印加する。ロックイン増幅器35は、第1コイル層25と第3コイル層27との接続点であるC点と、第2コイル層26と第4コイル層28との接続点であるD点との間の電位差(中点電圧、差動電圧)を検出し、かつ、増幅する。
【0059】
本例では、クランクアーム13a、13bのうち、少なくとも被検出面23a、23bが備えられた基端部外周面は、SCr420(クロム鋼)、SCM420(クロムモリブデン鋼)、SNCM420(ニッケルクロムモリブデン鋼)などの鋼(鉄合金)などの磁歪特性を有する材料により構成されている。具体的には、クランクアーム13a、13b全体を、磁歪特性を有する材料により構成することができる。あるいは、クランクアーム13a、13bの基端部外周面を含む部分を、磁歪特性を有する材料により構成し、残部を構成する部品と結合固定することもできる。
【0060】
本例では、クランクアーム13a、13bの基端部外周面に備えられた被検出面23a、23bのそれぞれは、円周方向一部に、ショットピーニング処理が施されたショットピーニング処理部36(
図3(a)及び
図3(b)において斜格子を付した部分)を有し、かつ、残部に、ショットピーニング処理が施されていないショットピーニング非処理部37を有する。本例では、ショットピーニング処理部36は、全周に対する50%の円周方向範囲(中心角が180度の円周方向範囲)に存在しており、ショットピーニング非処理部37は、全周に対する残りの50%の円周方向範囲に存在している。なお、本発明を実施する場合、ショットピーニング処理部は、本例のショットピーニング処理部36よりも狭い円周方向範囲又は広い円周方向範囲に存在させることもできる。ただし、後述する出力Vのレベルを大きく確保する観点から、ショットピーニング処理部は、被検出面において、全周に対する30%以上(より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上)の円周方向範囲に存在するようにするのが良い。
【0061】
一対のクランクアーム13a、13bのうち、
図2の右側のクランクアーム13aの基端部外周面の備えられた被検出面23aのショットピーニング処理部36は、被検出面23aのうち、右側のクランクアーム13aからクランク軸12にトルクが入力されているときに、右側のトルクセンサ20aの検出部22が対向する部分に形成されている。換言すれば、右側のクランクアーム13aの被検出面23aのショットピーニング処理部36は、右側のクランクアーム13aが上側に位置する場合に、右側のトルクセンサ20aの検出部22が対向する部分に形成されている。一方、右側のクランクアーム13aが下側に位置する場合、右側のトルクセンサ20aの検出部22には、ショットピーニング非処理部37が対向する。
【0062】
これに対し、一対のクランクアーム13a、13bのうち、
図2の左側のクランクアーム13bの基端部外周面の備えられた被検出面23bのショットピーニング処理部36は、被検出面23bのうち、左側のクランクアーム13bからクランク軸12にトルクが入力されているときに、左側のトルクセンサ20bの検出部22が対向する部分に形成されている。換言すれば、左側のクランクアーム13bの被検出面23bのショットピーニング処理部36は、左側のクランクアーム13bが上側に位置する場合に、左側のトルクセンサ20bの検出部22が対向する部分に形成されている。一方、左側のクランクアーム13bが下側に位置する場合、左側のトルクセンサ20bの検出部22には、ショットピーニング非処理部37が対向する。
【0063】
したがって、左右のトルクセンサ20a、20bのそれぞれの検出部22の円周方向に関する取り付け位相が同じ場合、右側のクランクアーム13aに備えられた被検出面23aのショットピーニング処理部36と、左側のクランクアーム13bに備えられた被検出面23bのショットピーニング処理部36とは、径方向に関して互いに反対側に位置する(配置の位相が180°異なる)。一方、右側のクランクアーム13aに備えられた被検出面23aのショットピーニング処理部36と、左側のクランクアーム13bに備えられた被検出面23bのショットピーニング処理部36との円周方向に関する位相が同じ場合、左右のトルクセンサ20a、20bのそれぞれの検出部22が径方向に関して互いに反対側に位置する(取り付け位相が180°異なる)。
【0064】
本例の自転車1において、クランク軸12に加わるトルクを測定する際には、発振器34により、ブリッジ回路33のA点とB点との間に交流電圧を印加し、第1~第4コイル層25~28に交流電流を流す。すると、第1~第4コイル層25~28には、
図5(a)~
図5(d)に矢印イ、ロ、ハ、ニで示すように、円周方向に隣り合う検出コイル29~32同士で互いに逆向きの電流が流れる。換言すれば、円周方向に隣り合う検出コイル29~32同士で互いに逆向きの電流が流れるように、それぞれの検出コイル29~32が巻かれている。この結果、第1~第4コイル層25~28の周囲に交流磁界が発生し、この交流磁界の磁束が、クランクアーム13a、13bの基端部外周面に備えられた被検出面23a、23bの表層部を通過する。
【0065】
この状態で、クランクアーム13a(又は13b)の基端部に、
図3(a)に示す方向のトルクTが加わると、クランクアーム13a(又は13b)の基端部には、軸方向に対して+45゜方向の引っ張り応力(+σ)と、軸方向に対して-45゜方向の圧縮応力(-σ)とが作用する。そして、逆磁歪効果により、引っ張り応力(+σ)が作用する方向である+45゜方向では、クランクアーム13a(又は13b)の基端部の透磁率が増加し、圧縮応力(-σ)が作用する方向である-45゜方向では、クランクアーム13a(又は13b)の基端部の透磁率が減少する。
【0066】
一方、第1コイル層25及び第4コイル層28は、クランク軸12の軸方向に対して+45゜傾斜した配線を含んで構成されており、該配線の周囲に発生する交流磁界の磁束の一部は、被検出面23a(又は23b)の表層部を、透磁率が減少した方向である-45゜方向に通過する。このため、第1コイル層25及び第4コイル層28の自己インダクタンスは、それぞれ減少する。第2コイル層26及び第3コイル層27は、クランク軸12の軸方向に対して-45゜傾斜した配線を含んで構成されており、該配線の周囲に発生する交流磁界の磁束の一部は、被検出面23a(又は23b)の表層部を、透磁率が増加した方向である+45゜方向に通過する。このため、第2コイル層26及び第3コイル層27の自己インダクタンスは、それぞれ増大する。
【0067】
これに対し、クランクアーム13a(又は13b)の基端部に、
図3(a)に示す方向とは逆方向のトルクTが加わると、上述した場合とは逆の作用により、第1コイル層25及び第4コイル層28の自己インダクタンスが増大し、第2コイル層26及び第3コイル層27の自己インダクタンスが減少する。
【0068】
いずれにしても、ブリッジ回路33では、C点とD点との間の電位差(中点電圧、差動電圧)をロックイン増幅器35により検出及び増幅することによって、クランクアーム13a(又は13b)の基端部、延いてはクランクアーム13a(又は13b)の基端部が結合されているクランク軸12の軸方向端部に負荷されているトルクTの方向及び大きさに応じた出力Vが得られるようになっている。
【0069】
本例の自転車1において、運転者が左右のペダル8を漕いで前進しようとすると、ペダル8に加わった人力の駆動力は、クランクアーム13a、13bに加わり、トルクセンサ20a、20bにより検出される。クランクアーム13a、13bに加わった人力の駆動力は、クランク軸12に加わり、さらに、人力伝達体15及び一方向クラッチ16を介して連動体17に伝達される。
【0070】
電動アシスト装置11は、トルクセンサ20a、20bの出力信号やクランク軸12の回転数などに基づいて、電動モータ18を駆動し、該電動モータ18の出力トルクを増力機構19により増大させつつ、連動体17に伝達する。なお、クランク軸12の回転数は、トルクセンサ20a、20bの出力信号から求めることもできるし、別に備えた回転センサにより検出することもできる。
【0071】
ペダル8から加わった人力の駆動力と、電動モータ18の出力トルクとは、連動体17で合成され、駆動側スプロケット14とチェーン10と従動側スプロケット9とを介して、駆動輪である後輪4に伝達される。以上のように、本例の自転車1では、電動モータ18を補助動力源として利用することにより、運転者がペダル8を漕ぐ力を低減することができる。
【0072】
本例の自転車1では、一対のトルクセンサ20a、20bのそれぞれの検出部22を、左右のクランクアーム13a、13bのそれぞれの基端部外周面に備えられた被検出面23に対向させている。これにより、クランクアーム13a、13bのそれぞれからクランク軸12の軸方向両側の端部に加わるトルクを、それぞれ独立して測定可能としている。要するに、運転者の左右のペダル踏力を独立して測定することができる。このため、本例の自転車1によれば、運転者の左右のペダル踏力の差に基づいて、運転者の筋力バランスや心肺能力などを計測することができる。
【0073】
本例では、クランクアーム13a、13bのそれぞれの基端部外周面に備えられた被検出面23a、23bのそれぞれは、円周方向一部に、ショットピーニング処理が施されたショットピーニング処理部36を有する。これにより、被検出面23a、23bのうちの円周方向一部の表層部の残留オーステナイト量を少なく抑えている。具体的には、ショットピーニング処理部36が形成された円周方向範囲における、被検出面23a、23bから30μmの深さまでの範囲の残留オーステナイト量を6容量%以下に抑えている。したがって、被検出面23a、23の表層部のうちで、トルクセンサ20a、20bの検出部22から放出された磁束が通過する部分の磁気特性を良好にでき、トルク測定のヒステリシスを抑えつつ、トルク測定の感度を効果的に向上させることができる。
【0074】
特に本例では、ショットピーニング処理部36は、被検出面23a、23bのうちの円周方向一部にのみ形成されている。具体的には、右側のクランクアーム13aの被検出面23aのショットピーニング処理部36は、右側のクランクアーム13aが上側に位置する場合に、右側のトルクセンサ20aの検出部22が対向する部分に形成されており、かつ、左側のクランクアーム13bの被検出面23bのショットピーニング処理部36は、左側のクランクアーム13bが上側に位置する場合に、左側のトルクセンサ20bの検出部22が対向する部分に形成されている。したがって、本例によれば、ショットピーニング処理部を全周に形成した構造と比較して製造コストを低減することができる。
【0075】
すなわち、ショットピーニング処理部を全周に形成する場合、被加工物を回転させながら、ショットと呼ばれる粒子を前記被加工物の表面に噴出する必要がある。これに対し、本例では、ショットピーニング処理部36は、被検出面23a、23bのうちの円周方向一部にのみ形成されており、ショットピーニング処理部36を形成する際に、被加工物であるクランクアーム13a、13bを回転させる必要がなく、その分、製造コストを抑えることができる。
【0076】
なお、右側のクランクアーム13aからクランク軸12にトルクが入力されている間は、右側のトルクセンサ20aの検出部22と、右側のクランクアーム13aの被検出面23aのショットピーニング処理部36との対向部の円周方向長さが一定に保たれていることが好ましい。このために、例えば、右側のトルクセンサ20aの検出部22の円周方向長さを、右側のクランクアーム13aの被検出面23aのショットピーニング処理部36の円周方向長さよりも長くすることができる。一方、左側のクランクアーム13bからクランク軸12にトルクが入力されている間は、左側のトルクセンサ20bの検出部22と、左側のクランクアーム13bの被検出面23bのショットピーニング処理部36との対向部の円周方向長さが一定に保たれていることが好ましい。このために、例えば、左側のトルクセンサ20bの検出部22の円周方向長さを、左側のクランクアーム13bの被検出面23bのショットピーニング処理部36の円周方向長さよりも長くすることができる。これにより、クランクアーム13a(又は13b)からクランク軸12に入力されるトルクを安定的に測定することができる。
【0077】
本発明の技術的範囲からは外れるが、トルクセンサの検出部が対向する部分に、ショットピーニング処理部を全周にわたって形成することもできる。あるいは、トルクセンサの検出部が対向する部分を、磁歪特性を有する材料により構成していれば、ショットピーニング処理部を省略することもできる。
【0078】
また、本発明を実施する場合、トルクセンサの検出部を、コイルに限らず、ホール素子などの磁気検出素子により構成することもできる。あるいは、トルクセンサとして、歪みゲージを利用するセンサや、エンコーダを利用して位相差を検出することによりトルクを測定するセンサなどを使用することもできる。ただし、トルクセンサを小型化して、設置スペースを小さく抑える面からは、本例のように、複数のコイル層25~28を有する検出部22を備える、磁歪式のトルクセンサ20a、20bを使用することが好ましい。
【0079】
なお、本発明を、電動アシスト装置を備える自転車に適用する場合、電動アシスト装置は、実施の形態の第1例のように、電動モータの補助動力を、連動体を介して駆動側スプロケットに付与する構成に限らず、運転者がペダルを漕ぐ力を低減できれば、任意の構成を採用することができる。例えば、電動アシスト装置は、電動モータの補助動力を、従動側スプロケットや後輪、前輪などに付与するように構成することもできる。
【0080】
又、本発明は、手漕ぎ式の自転車に適用することもできる。この場合、クランク軸の軸方向両側の端部には、ハンドルが支持固定される。
【0081】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図7及び
図8を用いて説明する。本例の自転車1aは、実施の形態の第1例に係る自転車1が備えていた電動アシスト装置11を備えていない。
【0082】
本例の自転車1aにおいても、一対のトルクセンサ20a、20bは、クランク軸12の軸方向両側の端部にそれぞれ加わるトルクを測定可能に構成されている。このために、本例では、一対のトルクセンサ20a、20bは、それぞれの検出部22を、クランク軸12の軸方向両側の端部のそれぞれに支持固定されたクランクアーム13a、13bの基端部外周面に対向させている。すなわち、クランクアーム13a、13bの基端部外周面を、被検出面23a、23bとしている。
【0083】
ただし、本発明の自転車を実施する場合、一対のトルクセンサは、クランク軸の軸方向両側の端部にそれぞれ加わるトルクを測定することができれば、それぞれの検出部を、クランクアームの基端部外周面に限らず、任意の部分に対向させることができる。すなわち、電動アシスト装置を備えない構造においては、一対のトルクセンサは、それぞれの検出部を、クランク軸のうち、軸方向に関して駆動側スプロケットを挟む部分の外周面、又は、当該部分に支持固定された部材に備えられた被検出面に対向させることができる。
【0084】
又、本例においても、クランクアーム13a、13bの基端部外周面に備えられた被検出面23a、23bのそれぞれは、円周方向一部に、ショットピーニング処理が施されたショットピーニング処理部36(
図3(a)及び
図3(b)参照)を有し、かつ、残部に、ショットピーニング処理が施されていないショットピーニング非処理部37を有する。
【0085】
本例の自転車1aでも、運転者の左右のペダル踏力を独立して測定することができ、該ペダル踏力の差に基づいて、運転者の筋力バランスや心肺能力などを計測することができる。なお、図示の例では、従動側スプロケット9aを、複数のスプロケットを備えるカセットスプロケットにより構成している。ただし、従動側スプロケットを、単一のスプロケットにより構成することもできる。又、駆動側スプロケットを、複数のスプロケットを備える構成とすることもできる。その他の部分の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【符号の説明】
【0086】
1、1a 自転車
2 フレーム
2a 立パイプ
2b 下パイプ
2c フォーク
2d シートステー
2e チェーンステー
3 前輪
4 後輪
5 ハンドル
6 サドル
7 クランク
8 ペダル
9、9a 従動側スプロケット
10 チェーン
11 電動アシスト装置
12 クランク軸
13a、13b クランクアーム
14 駆動側スプロケット
15 人力伝達体
16 一方向クラッチ
17 連動体
18 電動モータ
19 増力機構
20a、20b トルクセンサ
21 一方向クラッチ
22 検出部
23a、23b 被検出面
24 バックヨーク
25 第1コイル層
26 第2コイル層
27 第3コイル層
28 第4コイル層
29 第1検出コイル
30 第2検出コイル
31 第3検出コイル
32 第4検出コイル
33 ブリッジ回路
34 発振器
35 ロックイン増幅器
36 ショットピーニング処理部
37 ショットピーニング非処理部
100 電動アシスト自転車
101 電動モータ
102 駆動側スプロケット
103 クランク
104 電動アシスト装置
105 クランク軸
106 クランクアーム
107 ペダル
108 人力伝達体
109 連動体
110 増力機構
111 一方向クラッチ
112 トルクセンサ