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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241008BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H01B7/00 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020155430
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049298
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 克俊
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆太
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/190096(WO,A1)
【文献】特開2017-55570(JP,A)
【文献】特開2016-92979(JP,A)
【文献】特開2015-35915(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線部材と、
前記電線部材の外周を覆う金属製の第1筒状部材と、
導電性の素線が筒状に編み込まれてなり、前記第1筒状部材の外周面に取り付けられるとともに前記電線部材のうち前記第1筒状部材の端部から引き出された引出部の外周を覆う編組線と、
前記編組線を前記第1筒状部材の外周面との間に挟んだ状態で前記第1筒状部材の外周を覆う第1端部、及び前記第1端部とは反対側に位置して前記引出部の外周を覆う第2端部を有し、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面に固定する金属製の第2筒状部材と、を備え、
前記電線部材は、第1電線と、前記第1電線に電気的に接続された第2電線と、を有し、
前記第1電線は、単一の導体からなる単芯線と、前記単芯線の外周を被覆する絶縁被覆と、を有し、
前記第2電線は、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線と、前記撚線の外周を被覆する絶縁被覆と、を有し、
前記引出部の長さ方向における一部には、前記第1筒状部材の前記端部から引き出された前記第1電線と、前記第1筒状部材の外部に位置する前記第2電線とが電気的に接続された接続部が設けられており、
前記接続部の外周は、前記第2筒状部材により覆われており、
前記第2筒状部材は、前記第2筒状部材の内周面から前記第1筒状部材の外周面に向かって突出して、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面に押し付ける突出部を有し、
前記編組線は、
前記第1筒状部材の外周面と前記第2筒状部材の内周面との間に位置する第1部分と、
前記第1部分に連なるとともに、前記第1端部から前記引出部が引き出される方向とは反対方向に引き出されて前記第2筒状部材の外周側に折り返される第2部分と、
前記第2部分に連なるとともに、前記引出部が引き出される方向に延びる第3部分と、を有する、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線部材のうち、前記第1筒状部材により覆われる部分の長さは、前記第2筒状部材により覆われる部分の長さよりも大きい、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第1筒状部材、前記第2筒状部材、及び前記編組線は、いずれもアルミニウム合金により形成されている、
請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記突出部は、前記第2筒状部材の周方向における全体にわたって設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記第2筒状部材の前記第1端部の外周面と、前記編組線の前記第2部分とにわたって巻き付けられるテープ部材を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記引出部の端部が収容されるハウジングと、
前記ハウジングの外周を覆うとともに、前記編組線が接続されるシールドシェルと、
前記編組線を前記シールドシェルの外面に固定する固定部材と、を備え、
前記編組線、前記シールドシェル、及び前記固定部材は、いずれもアルミニウム合金により形成されている、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記第1筒状部材の前記端部の内部に設けられ、前記電線部材の外周面と前記第1筒状部材の内周面との間を止水するシール部材を備える、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記第1筒状部材は、前記第1筒状部材の内周面から突出する突起を有し、
前記突起は、前記第1筒状部材の軸線方向において、前記シール部材よりも内側に位置するとともに、前記シール部材に対向している、
請求項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車などの車両に配索されるワイヤハーネスとして、単芯線と撚線とが接続されてなる電線を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤハーネスは、単芯線と撚線とが接続された接続部の外周を覆うシールドパイプと、シールドパイプの端部に固定されるとともに、電線に取り付けられるプロテクタとを備えている。接続部では、単芯線と撚線とが互いに重ね合わされた状態で、これらが、例えば、はんだ付けや溶接などによって接続されている。なお、プロテクタは、特許文献1では位置決め部材と称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-84547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、接続部においては、単芯線と撚線とが互いに重ね合わされているため、接続部の断面寸法が大きくなるおそれがある。接続部の外周は、シールドパイプにより覆われているため、シールドパイプの内径は、接続部の断面寸法よりも大きくする必要がある。この場合、シールドパイプの内径の増大に伴って、シールドパイプの外径が増大するおそれがある。これにより、ワイヤハーネス全体の体格が増大するおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、体格の増大を抑制できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、電線部材と、前記電線部材の外周を覆う金属製の第1筒状部材と、導電性の素線が筒状に編み込まれてなり、前記第1筒状部材の外周面に取り付けられるとともに前記電線部材のうち前記第1筒状部材の端部から引き出された引出部の外周を覆う編組線と、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面との間に挟んだ状態で前記第1筒状部材の外周を覆う第1端部、及び前記第1端部とは反対側に位置して前記引出部の外周を覆う第2端部を有し、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面に固定する金属製の第2筒状部材と、を備え、前記電線部材は、第1電線と、前記第1電線に電気的に接続された第2電線と、を有し、前記第1電線は、単一の導体からなる単芯線と、前記単芯線の外周を被覆する絶縁被覆と、を有し、前記第2電線は、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線と、前記撚線の外周を被覆する絶縁被覆と、を有し、前記引出部の長さ方向における一部には、前記第1筒状部材の前記端部から引き出された前記第1電線と、前記第1筒状部材の外部に位置する前記第2電線とが電気的に接続された接続部が設けられており、前記接続部の外周は、前記第2筒状部材により覆われており、前記第2筒状部材は、前記第2筒状部材の内周面から前記第1筒状部材の外周面に向かって突出して、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面に押し付ける突出部を有している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワイヤハーネスにおける体格の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
図2図2は、図1のA部における断面図である。
図3図3は、一実施形態の第1筒状部材とプロテクタとを分解して示す分解斜視図である。
図4図4は、変更例のワイヤハーネスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、電線部材と、前記電線部材の外周を覆う金属製の第1筒状部材と、導電性の素線が筒状に編み込まれてなり、前記第1筒状部材の外周面に取り付けられるとともに前記電線部材のうち前記第1筒状部材の端部から引き出された引出部の外周を覆う編組線と、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面との間に挟んだ状態で前記第1筒状部材の外周を覆う第1端部、及び前記第1端部とは反対側に位置して前記引出部の外周を覆う第2端部を有し、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面に固定する金属製の第2筒状部材と、を備え、前記電線部材は、第1電線と、前記第1電線に電気的に接続された第2電線と、を有し、前記第1電線は、単一の導体からなる単芯線と、前記単芯線の外周を被覆する絶縁被覆と、を有し、前記第2電線は、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線と、前記撚線の外周を被覆する絶縁被覆と、を有し、前記引出部の長さ方向における一部には、前記第1筒状部材の前記端部から引き出された前記第1電線と、前記第1筒状部材の外部に位置する前記第2電線とが電気的に接続された接続部が設けられており、前記接続部の外周は、前記第2筒状部材により覆われており、前記第2筒状部材は、前記第2筒状部材の内周面から前記第1筒状部材の外周面に向かって突出して、前記編組線を前記第1筒状部材の外周面に押し付ける突出部を有している。
【0011】
同構成によれば、接続部が引出部の長さ方向における一部に設けられている。すなわち、接続部は、第1筒状部材の外部に位置している。このため、接続部の断面寸法が大きくなった場合であっても、第1筒状部材の内径を大きくする必要がない。これにより、接続部の外周が第1筒状部材により覆われる構成と比較して、第1筒状部材の内径を小さくすることができ、ひいては第1筒状部材の外径を小さくすることができる。したがって、ワイヤハーネスにおける体格の増大を抑制できる。
【0012】
また、上記構成によれば、接続部の外周が第2筒状部材により覆われているため、接続部がワイヤハーネスの周辺に位置する物体と干渉することを抑制できる。
また、上記構成によれば、編組線が第2筒状部材の突出部によって第1筒状部材の外周面に押し付けられるため、編組線と第1筒状部材とが電気的に接続される。このため、編組線を第1筒状部材に対して固定するための専用の部品が不要となる。したがって、ワイヤハーネスにおける部品点数の増加を抑制できる。
【0013】
[2]前記電線部材のうち、前記第1筒状部材により覆われる部分の長さは、前記第2筒状部材により覆われる部分の長さよりも大きいことが好ましい。
同構成によれば、ワイヤハーネスの長さ方向において第1筒状部材が占める割合が、第2筒状部材が占める割合よりも大きくなる。したがって、第1筒状部材の外径を小さくすることによってワイヤハーネスにおける体格の増大が抑制される効果が顕著となる。
【0014】
[3]前記第1筒状部材、前記第2筒状部材、及び前記編組線は、いずれもアルミニウム合金により形成されていることが好ましい。
同構成によれば、第1筒状部材、第2筒状部材、及び編組線が同種の金属材料により形成されている。このため、第1筒状部材と編組線との接触部分、及び編組線と第2筒状部材との接触部分において、異種金属同士の間に水が浸入することによって生じるガルバニック腐食を抑制できる。これにより、上記接触部分に水が浸入することを抑制するために、当該接触部分の外周を覆う外装部材を別途設けなくて済む。したがって、ワイヤハーネスにおける体格の増大の抑制と、ワイヤハーネスにおける部品点数の増加の抑制との両立を図ることができる。
【0015】
[4]前記突出部は、前記第2筒状部材の周方向における全体にわたって設けられていることが好ましい。
同構成によれば、突出部によって、編組線が第1筒状部材の外周面の周方向における全体にわたって押し付けられる。このため、電気的に接続される編組線と第1筒状部材との接続信頼性を高めることができる。
【0016】
[5]前記編組線は、前記第1筒状部材の外周面と前記第2筒状部材の内周面との間に位置する第1部分と、前記第1部分に連なるとともに、前記第1端部から前記引出部が引き出される方向とは反対方向に引き出されて前記第2筒状部材の外周側に折り返される第2部分と、前記第2部分に連なるとともに、前記引出部が引き出される方向に延びる第3部分と、を有することが好ましい。
【0017】
引出部の外周を覆う編組線を備えるワイヤハーネスの組立においては、例えば、車載機器に接続されるコネクタのハウジングに対して引出部を取り付ける作業が実施されることがある。この場合、編組線が上記作業の邪魔となるおそれがある。
【0018】
ここで、当該編組線を第1筒状部材の外周側に折り返した状態で、上記作業を実施することも考えられる。しかしながら、この場合には、上記作業の後に編組線の折り返しを解除するとともに、編組線によって引出部の外周を再び覆う必要がある。このため、ワイヤハーネスの組立時における作業性が低下するおそれがある。
【0019】
この点、上記構成によれば、第1筒状部材の外周面に固定された編組線は、第1端部から引き出されるとともに第2筒状部材の外周側に折り返されることで、第2筒状部材の外周を覆った状態で引出部が引き出される方向に延びている。このため、編組線は、第2筒状部材の外周側に折り返されていない状態においては、引出部が引き出される方向とは反対方向に延びて第1筒状部材の外周を覆うことになる。このとき、引出部及び第2筒状部材は、編組線によって覆われていない。
【0020】
以上のことから、ワイヤハーネスの組立時において、編組線が第1筒状部材の外周を覆うように編組線を第1筒状部材に取り付けることで、上記作業を容易に実施できる。そして、上記作業の後に、編組線を第2筒状部材の外周側に折り返すようにすれば、編組線を折り返す作業が一度で済む。したがって、ワイヤハーネスの組立時における作業性の低下を抑制できる。
【0021】
[6]前記第2筒状部材の前記第1端部の外周面と、前記編組線の前記第2部分とにわたって巻き付けられるテープ部材を備えることが好ましい。
同構成によれば、第2筒状部材の第1端部の端縁がテープ部材によって覆われるため、編組線が当該端縁に接触することで摩耗することを抑制できる。
【0022】
[7]前記引出部の端部が収容されるハウジングと、前記ハウジングの外周を覆うとともに、前記編組線が接続されるシールドシェルと、前記編組線を前記シールドシェルの外面に固定する固定部材と、を備え、前記編組線、前記シールドシェル、及び前記固定部材は、いずれもアルミニウム合金により形成されていることが好ましい。
【0023】
同構成によれば、編組線、シールドシェル、固定部材が同種の金属材料により形成されている。このため、シールドシェルと編組線との接触部分、及び編組線と固定部材との接触部分において、異種金属同士の間に水が浸入することによって生じるガルバニック腐食を抑制できる。これにより、上記接触部分に水が浸入することを抑制するために、当該接触部分の外周を覆う外装部材を別途設けなくて済む。したがって、ワイヤハーネスにおける体格の増大の抑制と、ワイヤハーネスにおける部品点数の増加の抑制との両立を図ることができる。
【0024】
[8]前記第1筒状部材の前記端部の内部に設けられ、前記電線部材の外周面と前記第1筒状部材の内周面との間を止水するシール部材を備えることが好ましい。
同構成によれば、第1筒状部材の端部を通じて第1筒状部材の内部に水が浸入することを抑制できる。
【0025】
[9]前記第1筒状部材は、前記第1筒状部材の内周面から突出する突起を有し、前記突起は、前記第1筒状部材の軸線方向において、前記シール部材よりも内側に位置するとともに、前記シール部材に対向していることが好ましい。
【0026】
同構成によれば、シール部材が第1筒状部材の軸線方向において内側に向かって移動した場合に、シール部材が突起に接触する。これにより、シール部材が上記軸線方向において内側に向かって移動することを抑制できる。したがって、シール部材の位置決めを行うことができる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本明細書における「筒状」は、全体として筒状と見做せればよく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように一部に切り欠きなどを有するものも含む。
【0028】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車などの車両の前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両の後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、長さ方向の中間部が車両の床下に配索されている。
【0029】
インバータ11は、車両走行の動力源となる図示しない車輪駆動用のモータと接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0030】
ワイヤハーネス10は、1本又は複数本の電線部材20と、電線部材20の外周を覆う第1筒状部材40と、第1筒状部材40の外周面40bに取り付けられる編組線70とを備えている。本実施形態のワイヤハーネス10は、2本の電線部材20を備えている。電線部材20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよい。
【0031】
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、編組線70を第1筒状部材40の外周面40bに固定する第2筒状部材60と、第2筒状部材60の内周面60aに固定されるプロテクタ90とを備えている。
【0032】
電線部材20の外周は、第1筒状部材40により覆われるとともに第2筒状部材60により覆われている。電線部材20のうち、第1筒状部材40により覆われる部分の長さは、第2筒状部材60により覆われる部分の長さよりも大きい。本実施形態では、第1筒状部材40の長さは、第2筒状部材60の長さよりも大きい。
【0033】
図1に示すように、電線部材20の両端には、コネクタC1及びコネクタC2がそれぞれ取り付けられている。電線部材20の一端は、コネクタC1を介してインバータ11に接続されている。電線部材20の他端は、コネクタC2を介して高圧バッテリ12に接続されている。
【0034】
ワイヤハーネス10は、電線部材20の一端が収容されるハウジング100と、ハウジング100の外周を覆うシールドシェル110と、編組線70をシールドシェル110の外面に固定する固定部材120とを備えている。ハウジング100、シールドシェル110、及び固定部材120は、コネクタC1を構成している。
【0035】
(電線部材20の構成)
図2に示すように、電線部材20は、第1電線30と、第1電線30に電気的に接続された第2電線35とを有している。第1電線30は、例えば、ワイヤハーネス10のうち車両の床下に配索される部分に設けられている。第2電線35は、第1電線30の端末に接続されている。
【0036】
電線部材20は、第1筒状部材40の端部41から引き出された引出部21を有している。引出部21の長さ方向における一部には、第1電線30の端末と、第2電線35の端末とが電気的に接続された接続部22が設けられている。
【0037】
接続部22の外周は、例えば、熱収縮チューブなどの絶縁性を有する被覆部材23により覆われている。被覆部材23としては、例えば、ホットメルト接着剤や、樹脂モールドや、テープ部材などが挙げられる。
【0038】
(第1電線30の構成)
第1電線30は、例えば、単一の導体からなる単芯線31と、単芯線31の外周を被覆する絶縁被覆32とを有している。単芯線31としては、例えば、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や、内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。単芯線31の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。本実施形態の単芯線31は、アルミニウム合金により形成されている。単芯線31は、例えば、押出成形によって形成されている。
【0039】
単芯線31の横断面形状は、任意の形状にすることができる。単芯線31の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成することができる。本実施形態の単芯線31の横断面形状は、円形状に形成されている。すなわち、本実施形態の単芯線31は、円柱状に形成されている。
【0040】
絶縁被覆32は、例えば、単芯線31の外周面を周方向における全体にわたって被覆している。絶縁被覆32は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆32の材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂を用いることができる。絶縁被覆32の材料としては、1種の材料を単独で、又は2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。絶縁被覆32は、例えば、単芯線31に対する押出成形によって形成することができる。
【0041】
第1電線30の端末においては、絶縁被覆32から単芯線31が露出している。単芯線31における絶縁被覆32から露出した部分は、例えば、扁平形状に潰されている。
(第2電線35の構成)
第2電線35は、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線36と、撚線36の外周を被覆する絶縁被覆37とを有している。撚線36の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。本実施形態の撚線36は、アルミニウム合金により形成されている。
【0042】
撚線36の横断面形状は、任意の形状にすることができる。撚線36の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成することができる。本実施形態の撚線36の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0043】
絶縁被覆37は、例えば、撚線36の外周面を周方向における全体にわたって被覆している。絶縁被覆37は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆37の材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂を用いることができる。絶縁被覆37の材料としては、1種の材料を単独で、又は2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。絶縁被覆37は、例えば、撚線36に対する押出成形によって形成することができる。
【0044】
第2電線35の端末においては、絶縁被覆37から撚線36が露出している。撚線36における絶縁被覆37から露出した部分は、全体として、例えば、扁平形状に潰されている。
【0045】
絶縁被覆37から露出した撚線36は、絶縁被覆32から露出した単芯線31に重ね合わされた状態で接合されている。単芯線31と撚線36とは、例えば、超音波接合や抵抗溶接などの周知の接合方法によって接合されている。上述した接続部22は、撚線36と単芯線31とが接合されることにより形成されている。上述した被覆部材23は、絶縁被覆32の端末から絶縁被覆37の端末にわたって設けられている。したがって、絶縁被覆32から露出した単芯線31の外周と、絶縁被覆37から露出した撚線36の外周とは、被覆部材23によって覆われている。
【0046】
(第1筒状部材40の構成)
第1筒状部材40は、例えば、円筒状をなしている。第1筒状部材40は、例えば、電線部材20の配索経路に沿った形状に曲げ加工されている。第1筒状部材40は、例えば、車両の床下において車両の前後方向に延びている。第1筒状部材40は、電線部材20のうち車両の床下に配索される部分の外周を覆っている。本実施形態の第1筒状部材40は、車両の床下に配索される第1電線30の外周を覆っている。
【0047】
第1筒状部材40の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。本実施形態の第1筒状部材40は、アルミニウム合金により形成されている。
【0048】
第1筒状部材40は、第1筒状部材40の内周面40aから突出する突起42を有している。突起42は、第1筒状部材40の軸線方向において端部41の開口から内側に離れた位置に設けられている。突起42は、第1筒状部材40の周方向における全体にわたって設けられている。したがって、第1筒状部材40における突起42が設けられている部分の断面積は、その他の部分の断面積よりも小さい。上記その他の部分の断面積は、第1筒状部材40の軸線方向において略一定である。
【0049】
第1筒状部材40の外周面40bにおける突起42に対応した部分には、凹部43が設けられている。凹部43は、第1筒状部材40の周方向における全体にわたって設けられている。
【0050】
図1に示すように、本実施形態では、第1筒状部材40の端部41とは反対側に位置する端部が、コネクタC2に電気的に接続されている。なお、当該端部と、コネクタC2とは、編組線70とは別の編組線を介して接続されていてもよい。この場合、当該編組線の外周は、例えば、グロメットなどの外装部材によって覆われていてもよい。
【0051】
(シール部材50の構成)
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、各電線部材20の外周面と、第1筒状部材40の内周面40aとの間を止水するシール部材50を備えている。本実施形態のシール部材50は、各第1電線30の外周面と、第1筒状部材40の内周面40aとの間を止水する。シール部材50は、例えば、全体として円柱状をなしている。
【0052】
シール部材50は、第1筒状部材40の端部41の内部に設けられている。シール部材50は、端部41の内部のうち突起42よりも端部41の開口に近い部分に位置している。シール部材50は、第1筒状部材40の軸線方向において突起42に対向している。シール部材50としては、例えば、ゴム栓を用いることができる。
【0053】
シール部材50は、各第1電線30が挿通される2つの挿通孔51を有している。シール部材50は、第1筒状部材40の内周面40aに対して密着するとともに、各第1電線30の外周面に対して密着している。
【0054】
(第2筒状部材60の構成)
第2筒状部材60は、第1筒状部材40の外径よりも大きい内径を有する円筒状をなしている。第2筒状部材60は、第1筒状部材40の外周面40bとの間に編組線70を挟んだ状態で、第1筒状部材40の外周面40bに固定されている。
【0055】
第2筒状部材60の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。本実施形態の第2筒状部材60は、アルミニウム合金により形成されている。
【0056】
第2筒状部材60は、第1端部61と、第2筒状部材60の軸線方向において第1端部61とは反対側に位置する第2端部62とを有している。第1端部61は、編組線70を第1筒状部材40の外周面40bとの間に挟んだ状態で第1筒状部材40の外周を覆っている。第2端部62は、引出部21のうち接続部22よりも第1筒状部材40の端部41から離れた部分の外周を覆っている。したがって、接続部22の外周は、第2筒状部材60により覆われている。
【0057】
第2筒状部材60は、第2筒状部材60の内周面60aから第1筒状部材40の外周面40bに向かって突出した突出部63を有している。突出部63は、第2筒状部材60の軸線方向において第1端部61の開口から内側に離れた位置に設けられている。より詳しくは、突出部63は、第1筒状部材40の凹部43に対応する位置に設けられている。突出部63は、第2筒状部材60の周方向における全体にわたって設けられている。突出部63の幅は、第1筒状部材40の凹部43の幅よりも僅かに小さい。
【0058】
突出部63は、編組線70を第1筒状部材40の外周面40bに押し付けている。より詳しくは、突出部63は、編組線70を第1筒状部材40の凹部43の内面に押し付けている。これにより、編組線70と第1筒状部材40とが電気的に接続されている。
【0059】
突出部63は、凹部43との間に編組線70を挟んだ状態で凹部43に係合されている。突出部63と凹部43とが係合することによって、第2筒状部材60が第1筒状部材40に対して固定されている。
【0060】
第2筒状部材60の外周面60bにおける突出部63に対応した部分には、凹部64が設けられている。凹部64は、第2筒状部材60の周方向における全体にわたって設けられている。
【0061】
本実施形態の突出部63及び凹部64は、例えば、図示しない治具と第2筒状部材60とを相対回転させて、治具を第2筒状部材60の外周面60bに接触させることで、第2筒状部材60を局所的に縮径させるように塑性変形させることで形成される。こうした塑性変形の手法としては、例えば、スピニング加工やスウェージング加工などが挙げられる。本実施形態では、第1筒状部材40の外周面40bとの間に編組線70を挟んだ状態の第2筒状部材60に対してスウェージング加工を実施することにより突出部63を形成する。突出部63の形成に伴って、第1筒状部材40のうち突出部63に対応する部分が縮径するように塑性変形する。これにより、第1筒状部材40の外周面40bに凹部43が形成されるとともに、第1筒状部材40の内周面40aに突起42が形成される。
【0062】
第2筒状部材60は、厚さ方向に貫通する2つの貫通孔65を有している。各貫通孔65は、第2筒状部材60の径方向において並んで設けられている。貫通孔65は、第2筒状部材60のうち引出部21の外周を覆う部分であって、第2筒状部材60の軸線方向において第2端部62の開口から内側に離れた部分に設けられている。
【0063】
(編組線70の構成)
編組線70は、例えば、導電性の素線が筒状に編み込まれてなる。編組線70は、引出部21の長さ方向の略全体にわたって引出部21の外周を覆うように設けられている。編組線70としては、複数種類の金属素線が編み込まれた編組線や、金属素線と樹脂素線とを組み合わせて編み込まれた編組線を用いることができる。金属素線の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。樹脂素線としては、例えば、パラ系アラミド繊維などの絶縁性及び耐剪断性に優れた強化繊維を用いることができる。本実施形態の編組線70は、アルミニウム合金の金属素線が筒状に編み込まれることにより形成されている。
【0064】
編組線70は、編組線70の一端を含む第1部分71と、第1部分71に連なる第2部分72と、第2部分72に連なる第3部分73とを有している。
第1部分71は、第1筒状部材40の外周面40bと第2筒状部材60の内周面60aとの間に位置している。第1部分71の一部は、第1筒状部材40の凹部43と、第2筒状部材60の突出部63との間に挟まれている。当該一部は、突出部63によって凹部43に押し付けられることで、第1部分71におけるその他の部分よりも潰された状態となっている。
【0065】
第2部分72は、第2筒状部材60の第1端部61から引出部21が引き出される方向とは反対方向に引き出されて第2筒状部材60の外周側に折り返されている。
第3部分73は、引出部21が引き出される方向に延びている。第3部分73は、第2筒状部材60の外周を覆うともに、引出部21の外周を覆っている。すなわち、第3部分73は、各第2電線35の外周を一括して覆っている。第3部分73における第2部分72とは反対側に位置する端末は、シールドシェル110に電気的に接続されている。
【0066】
図1に示すように、第3部分73の長さ方向における一部の外周は、外装部材130により覆われている。本実施形態の外装部材130は、例えば、その長さ方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に連なって設けられた蛇腹構造を有するコルゲートチューブである。
【0067】
(テープ部材80の構成)
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、第2筒状部材60の第1端部61の外周面と、編組線70の第2部分72とにわたって巻き付けられたテープ部材80を備えている。
【0068】
テープ部材80は、厚さ方向における一方の面に粘着層を有している。テープ部材80は、粘着層を内側に向けた状態で、第1端部61の外周面と第2部分72とにわたって複数回巻き回されている。したがって、第1端部61の端縁は、テープ部材80によって覆われている。
【0069】
(プロテクタ90の構成)
図2及び図3に示すように、プロテクタ90は、第1筒状部材40の外部において第2筒状部材60の内周面60aに固定されている。プロテクタ90は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。
【0070】
プロテクタ90は、引出部21が挿入される円筒状の挿入部91と、挿入部91の軸線方向における一端面から突出して引出部21が固定される固定部92とを有している。また、プロテクタ90は、挿入部91の上記一端から全周にわたって外周側に突出した環状の鍔部93と、挿入部91の外周面から互いに反対方向に突出した2つの係合突起94とを有している。各係合突起94は、挿入部91の軸線方向において鍔部93から離れた位置に設けられている。
【0071】
プロテクタ90は、軸線方向の全体にわたって延びるスリット90aを有している。スリット90aは、挿入部91と鍔部93とにわたって延びている。プロテクタ90は、スリット90aの間隔を狭めることで縮径するように弾性変形可能に構成されている。
【0072】
挿入部91は、引出部21における接続部22を含む部分の外周を覆っている。換言すると、接続部22の外周は、挿入部91により覆われている。挿入部91の内周面と、接続部22の外面との間には、全周にわたって隙間が設けられている。
【0073】
挿入部91の内径は、第1筒状部材40の内径よりも小さい。すなわち、挿入部91は、第1筒状部材40の軸線方向においてシール部材50に対向している。本実施形態では、挿入部91の上記一端面とは反対側の他端面における内周側の部分が、第1筒状部材40の軸線方向においてシール部材50と接触している。
【0074】
挿入部91の外径は、第1筒状部材40の外径より大きい。以上のことから、挿入部91の厚さは、第1筒状部材40の厚さよりも大きい。挿入部91の外径は、第2筒状部材60の内径と略同一である。
【0075】
固定部92は、挿入部91の軸線方向において挿入部91から離れる方向に突出している。固定部92は、引出部21の長さ方向において挿入部91よりも第1筒状部材40の端部41から離れた位置に設けられている。固定部92は、第2筒状部材60の外部に位置している。固定部92は、挿入部91の周方向においてスリット90aとは異なる位置に設けられている。
【0076】
固定部92の横断面形状は、例えば、挿入部91の軸線を中心とした円弧状をなしている。固定部92の内面は、例えば、挿入部91の内周面と段差無く連なっている。
固定部92には、テープ部材81により、引出部21のうち接続部22よりも第1筒状部材40の端部41から離れた部分が固定されている。より詳しくは、固定部92には、テープ部材81により各第2電線35が一括して固定されている。テープ部材81は、固定部92と各第2電線35とに対して複数回巻き回されている。なお、テープ部材81は、上述したテープ部材80と同種のものであってもよいし、テープ部材80とは異なるものであってもよい。
【0077】
鍔部93の外径は、第2筒状部材60の外径と略同一である。鍔部93は、挿入部91の軸線方向において、第2筒状部材60の第2端部62の端面と接触している。
係合突起94は、第2筒状部材60の貫通孔65に係合可能に構成されている。係合突起94が貫通孔65に係合することによって、プロテクタ90が第2筒状部材60の内周面60aに固定されている。
【0078】
(ハウジング100の構成)
図1に示すように、ハウジング100は、例えば、筒状をなしている。ハウジング100には、引出部21の端部21aが収容されている。ハウジング100は、引出部21の端部21aを保持している。ハウジング100は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。
【0079】
(シールドシェル110の構成)
シールドシェル110は、例えば、ハウジング100の一部の外周を覆っている。シールドシェル110の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。本実施形態のシールドシェル110は、アルミニウム合金により形成されている。シールドシェル110の一部の外周は、編組線70の第3部分73における上記端末により覆われている。
【0080】
(固定部材120の構成)
固定部材120は、シールドシェル110の上記一部の外面を囲む環状をなしている。本実施形態の固定部材120は、かしめリングである。固定部材120の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。本実施形態の固定部材120は、アルミニウム合金により形成されている。
【0081】
固定部材120は、シールドシェル110の外面との間に編組線70を挟んだ状態でシールドシェル110に対してかしめられることで、編組線70をシールドシェル110の外面に固定している。これにより、編組線70とシールドシェル110とが電気的に接続されている。
【0082】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ワイヤハーネス10は、電線部材20と、電線部材20の外周を覆う金属製の第1筒状部材40と、第1筒状部材40の外周面40bに取り付けられるとともに引出部21の外周を覆う編組線70と、編組線70を第1筒状部材40の外周面40bに固定する金属製の第2筒状部材60とを備える。引出部21の長さ方向における一部には、第1筒状部材40の端部41から引き出された第1電線30の単芯線31と、第1筒状部材40の外部に位置する第2電線35の撚線36とが電気的に接続された接続部22が設けられている。接続部22の外周は、第2筒状部材60により覆われている。第2筒状部材60は、第2筒状部材60の内周面60aから第1筒状部材40の外周面40bに向かって突出して、編組線70を第1筒状部材40の外周面40bに押し付ける突出部63を有している。
【0083】
こうした構成によれば、接続部22が引出部21の長さ方向における一部に設けられている。すなわち、接続部22は、第1筒状部材40の外部に位置している。このため、接続部22の断面寸法が大きくなった場合であっても、第1筒状部材40の内径を大きくする必要がない。これにより、接続部22の外周が第1筒状部材40により覆われる構成と比較して、第1筒状部材40の内径を小さくすることができ、ひいては第1筒状部材40の外径を小さくすることができる。したがって、ワイヤハーネス10における体格の増大を抑制できる。
【0084】
また、上記構成によれば、接続部22の外周が第2筒状部材60により覆われているため、接続部22がワイヤハーネス10の周辺に位置する物体と干渉することを抑制できる。
【0085】
また、上記構成によれば、編組線70が第2筒状部材60の突出部63によって第1筒状部材40の外周面40bに押し付けられるため、編組線70と第1筒状部材40とが電気的に接続される。このため、編組線70を第1筒状部材40に対して固定するための専用の部品が不要となる。したがって、ワイヤハーネス10における部品点数の増加を抑制できる。
【0086】
(2)電線部材20のうち、第1筒状部材40により覆われる部分の長さは、第2筒状部材60により覆われる部分の長さよりも大きい。
こうした構成によれば、ワイヤハーネス10の長さ方向において第1筒状部材40が占める割合が、第2筒状部材60が占める割合よりも大きくなる。したがって、第1筒状部材40の外径を小さくすることによってワイヤハーネス10における体格の増大が抑制される効果が顕著となる。
【0087】
(3)第1筒状部材40、第2筒状部材60、及び編組線70は、いずれもアルミニウム合金により形成されている。
こうした構成によれば、第1筒状部材40、第2筒状部材60、及び編組線70が同種の金属材料により形成されている。このため、第1筒状部材40と編組線70との接触部分、及び編組線70と第2筒状部材60との接触部分において、異種金属同士の間に水が浸入することによって生じるガルバニック腐食を抑制できる。これにより、上記接触部分に水が浸入することを抑制するために、当該接触部分の外周を覆う外装部材を別途設けなくて済む。したがって、ワイヤハーネス10における体格の増大の抑制と、ワイヤハーネス10における部品点数の増加の抑制との両立を図ることができる。
【0088】
(4)突出部63は、第2筒状部材60の周方向における全体にわたって設けられている。
こうした構成によれば、突出部63によって、編組線70が第1筒状部材40の外周面40bの周方向における全体にわたって押し付けられる。このため、電気的に接続される編組線70と第1筒状部材40との接続信頼性を高めることができる。
【0089】
(5)編組線70は、第1筒状部材40の外周面40bと第2筒状部材60の内周面60aとの間に位置する第1部分71と、第1端部61から引出部21が引き出される方向とは反対方向に引き出されて第2筒状部材60の外周側に折り返される第2部分72と、引出部21が引き出される方向に延びる第3部分73とを有する。
【0090】
引出部21の外周を覆う編組線を備えるワイヤハーネスの組立においては、例えば、車載機器に接続されるコネクタC1のハウジング100に対して引出部21を取り付ける作業が実施されることがある。この場合、編組線が上記作業の邪魔となるおそれがある。
【0091】
ここで、当該編組線を第1筒状部材40の外周側に折り返した状態で、上記作業を実施することも考えられる。しかしながら、この場合には、上記作業の後に編組線の折り返しを解除するとともに、編組線によって引出部21の外周を再び覆う必要がある。このため、ワイヤハーネスの組立時における作業性が低下するおそれがある。
【0092】
この点、上記構成によれば、第1筒状部材40の外周面40bに固定された編組線70は、第1端部61から引き出されるとともに第2筒状部材60の外周側に折り返されることで、第2筒状部材60の外周を覆った状態で引出部21が引き出される方向に延びている。このため、編組線70は、第2筒状部材60の外周側に折り返されていない状態においては、引出部21が引き出される方向とは反対方向に延びて第1筒状部材40の外周を覆うことになる。このとき、引出部21及び第2筒状部材60は、編組線70によって覆われていない。
【0093】
以上のことから、ワイヤハーネス10の組立時において、編組線70が第1筒状部材40の外周を覆うように編組線70を第1筒状部材40に取り付けることで、上記作業を容易に実施できる。そして、上記作業の後に、編組線70を第2筒状部材60の外周側に折り返すようにすれば、編組線70を折り返す作業が一度で済む。したがって、ワイヤハーネス10の組立時における作業性の低下を抑制できる。
【0094】
(6)ワイヤハーネス10は、第2筒状部材60の第1端部61の外周面と、編組線70の第2部分72とにわたって巻き付けられるテープ部材80を備える。
こうした構成によれば、第1端部61の端縁がテープ部材80によって覆われるため、編組線70が当該端縁に接触することで摩耗することを抑制できる。
【0095】
(7)ワイヤハーネス10は、引出部21の端部21aが収容されるハウジング100と、ハウジング100の外周を覆うシールドシェル110と、編組線70をシールドシェル110の外面に固定する固定部材120とを備える。編組線70、シールドシェル110、及び固定部材120は、いずれもアルミニウム合金により形成されている。
【0096】
こうした構成によれば、編組線70、シールドシェル110、固定部材120が同種の金属材料により形成されている。このため、シールドシェル110と編組線70との接触部分、及び編組線70と固定部材120との接触部分において、異種金属同士の間に水が浸入することによって生じるガルバニック腐食を抑制できる。これにより、上記接触部分に水が浸入することを抑制するために、当該接触部分の外周を覆う外装部材を別途設けなくて済む。したがって、ワイヤハーネス10における体格の増大の抑制と、ワイヤハーネス10における部品点数の増加の抑制との両立を図ることができる。
【0097】
(8)ワイヤハーネス10は、第1筒状部材40の端部41の内部に設けられ、電線部材20の外周面と第1筒状部材40の内周面40aとの間を止水するシール部材50を備える。
【0098】
こうした構成によれば、第1筒状部材40の端部41を通じて第1筒状部材40の内部に水が浸入することを抑制できる。
(9)第1筒状部材40は、第1筒状部材40の内周面から突出する突起42を有している。突起42は、第1筒状部材40の軸線方向において、シール部材50よりも内側に位置するとともに、シール部材50に対向している。
【0099】
こうした構成によれば、シール部材50が第1筒状部材40の軸線方向において内側に向かって移動した場合に、シール部材50が突起42に接触する。これにより、シール部材50が上記軸線方向において内側に向かって移動することを抑制できる。したがって、シール部材50の位置決めを行うことができる。
【0100】
(10)第2筒状部材60の突出部63及び第1筒状部材40の凹部43は、第1筒状部材40の外周面40bとの間に編組線70を挟んだ状態の第2筒状部材60に対してスウェージング加工することにより形成されている。
【0101】
こうした構成によれば、スウェージング加工によって第2筒状部材60、編組線70、及び第1筒状部材40が一括して塑性変形される。このとき、少なくとも突出部63の表面、編組線70のうち突出部63によって凹部43に押し付けられる部分の表面、及び凹部43の表面においては、これらの表面に形成されていた酸化被膜が破壊される。これにより、編組線70と第1筒状部材40との接続部分における電気抵抗が小さくなることで、当該接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【0102】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0103】
図4に示すように、ワイヤハーネス10からプロテクタ90を省略することもできる。この場合、第2筒状部材60の貫通孔65は省略してもよい。こうした構成であっても、上記効果(1)から効果(10)に準じた効果を奏することができる。
【0104】
・第1電線30が撚線36を有していてもよい。
・第2電線35が単芯線31を有していてもよい。
・突起42は、第1筒状部材40の軸線方向において、シール部材50と接触していてもよい。
【0105】
・第1筒状部材40から突起42を省略することもできる。この場合、突出部63は、第2筒状部材60のうち内周側に第1部分71が位置する部分であれば、第2筒状部材60の軸線方向における任意の位置に設定できる。突出部63は、例えば、第2筒状部材60のうちシール部材50の外周に位置する部分に設けられていてもよい。なお、第1筒状部材40から突起42を省略する場合、第1筒状部材40の外周面40bにおける突出部63に対応した部分には、凹部43が設けられていることが好ましい。
【0106】
・シール部材50は、省略することもできる。
・編組線70、シールドシェル110、及び固定部材120は、それぞれ異なる金属材料により形成されていてもよい。この場合、シールドシェル110と編組線70との接触部分、及び編組線70と固定部材120との接触部分の外周に外装部材を設けることもできる。
【0107】
・テープ部材80は、省略することもできる。
・編組線70は、第2筒状部材60の外周側に折り返されるものでなくてもよい。この場合、編組線70は、例えば、第2筒状部材60の内周側に位置するとともに、第2筒状部材60の第2端部62から引き出される。
【0108】
・突出部63は、第2筒状部材60の周方向における一部に設けられるものであってもよい。また、突出部63は、第2筒状部材60の周方向において互いに間隔をおいて複数設けられるものであってもよい。
【0109】
・突出部63は、第2筒状部材60の軸線方向において互いに間隔をおいて複数設けられるものであってもよい。
・第1筒状部材40、第2筒状部材60、及び編組線70は、それぞれ異なる金属材料により形成されていてもよい。この場合、第1筒状部材40と編組線70との接触部分の外周、及び編組線70と第2筒状部材60との接触部分の外周に外装部材を設けることもできる。
【0110】
・ワイヤハーネス10は、複数の第1筒状部材40を備えるものであってもよい。また、ワイヤハーネス10は、複数の第2筒状部材60を備えるものであってもよい。
・電線部材20のうち第1筒状部材40により覆われる部分の長さは、第2筒状部材60により覆われる部分の長さよりも小さくてもよい。すなわち、第1筒状部材40の長さは、第2筒状部材60の長さよりも小さくてもよい。
【符号の説明】
【0111】
C1 コネクタ
C2 コネクタ
10 ワイヤハーネス
11 インバータ
12 高圧バッテリ
20 電線部材
21 引出部
21a 端部
22 接続部
23 被覆部材
30 第1電線
31 単芯線
32 絶縁被覆
35 第2電線
36 撚線
37 絶縁被覆
40 第1筒状部材
40a 内周面
40b 外周面
41 端部
42 突起
43 凹部
50 シール部材
51 挿通孔
60 第2筒状部材
60a 内周面
60b 外周面
61 第1端部
62 第2端部
63 突出部
64 凹部
65 貫通孔
70 編組線
71 第1部分
72 第2部分
73 第3部分
80 テープ部材
81 テープ部材
90 プロテクタ
90a スリット
91 挿入部
92 固定部
93 鍔部
94 係合突起
100 ハウジング
110 シールドシェル
120 固定部材
130 外装部材
図1
図2
図3
図4