(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】タイヤ製造用モールド
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20241008BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20241008BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2020158186
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆太
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状のサイドプレートと、このサイドプレートの周りに並べられた複数の円弧状のセグメントとを備え、
少なくとも一つの前記セグメントが、ローカバーのトレッドと主に接触する第一内側面と、この第一内側面の端から延びる第一接触面とを備え、
前記サイドプレートが、ローカバーのサイド部と主に接触する第二内側面と、この第二内側面の端から延び前記第一接触面と接触する第二接触面とを備え、
前記第一内側面に、前記第一接触面側の端に位置し周方向に延びる窪みが設けられており、
周方向に垂直な断面において、前記窪みが外向きに凸な
円弧状を呈しており、
前記第二接触面の位置での前記窪みの幅aが2mm以上である、タイヤ製造用のモールド。
【請求項2】
前記窪みの曲率半径Rdが2mm以上である、請求項
1に記載のモールド。
【請求項3】
リング状のサイドプレートと、このサイドプレートの周りに並べられた複数の円弧状のセグメントとを備え、
少なくとも一つの前記セグメントが、ローカバーのトレッドと主に接触する第一内側面と、この第一内側面の端から延びる第一接触面とを備え、
前記サイドプレートが、ローカバーのサイド部と主に接触する第二内側面と、この第二内側面の端から延び前記第一接触面と接触する第二接触面とを備え、
前記第一内側面に、前記第一接触面側の端に位置し周方向に延びる窪みが設けられており、
周方向に垂直な断面において、前記窪みが外向きに凸な形状を呈しており、
前記第二接触面の位置での前記窪みの幅aが2mm以上であり、
前記窪みが、この窪みの第一接触面側の端から延びる溝を備える、
タイヤ製造用のモールド。
【請求項4】
上記溝の幅が0.3mm以上1.5mm以下であり、この溝の深さが0.2mm以上1.0mm以下である、請求項
3に記載のモールド。
【請求項5】
前記溝が複数存在しており、これらの溝のピッチが0.6mm以上3.0mm以下である、請求項
3又は
4に記載のモールド。
【請求項6】
前記第二接触面と垂直な方向に沿って計測した、上記窪みの高さが2mm以上である、請求項1
から5のいずれかに記載のモールド。
【請求項7】
前記第二内側面と前記第二接触面との角において、これらがなす角度θが90°以下である、請求項1から6のいずれかに記載のモールド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のモールドに、ローカバーをセットする工程
及び
ローカバーを前記モールドの中で加圧及び加熱する工程
を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造用モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なタイヤ製造用のモールドは、リング状のサイドプレートと、サイドプレートの半径方向外側に位置する円弧状の複数のセグメントとを備えている。セグメント及びサイドプレートは、それぞれローカバーと接触する内側面(キャビティ面)を備えている。
【0003】
タイヤの製造においては、モールドが開いた状態(セグメントがサイドプレートから離された状態)で、ローカバーがモールドに入れられる。ローカバーをシェーピングしつつ、セグメントを半径方向外側からサイドプレートに接触させることで、モールドが閉じられる。このとき、セグメントがサイドプレートと接触する部分で、ローカバーの噛み込みが起こることがある。ローカバーの噛み込みは、このモールドで製造されたタイヤでのバリの発生による外観品質の低下や、バリを処理するコストの増加の要因となりうる。
【0004】
ローカバーの噛み込みが防止されたモールドについての検討が、特開2014-113743公報で報告されている。このモールドでは、セグメントが、サイドプレートとの境界部分に突条を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セグメントとサイドプレートとの境界部分に突条を設けると、このモールドで製造したタイヤの対応する部分に、溝が形成される。この溝に応力が集中し、タイヤのクラックの要因となりうる。タイヤでのクラックを防止しつつ、ローカバーの噛み込みの防止の性能を向上させたモールドが求められている。
【0007】
本発明の目的は、タイヤでのクラックを防止しつつ、ローカバーの噛み込みの防止性能に優れた、タイヤ製造用のモールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤ製造用のモールドは、リング状のサイドプレートと、このサイドプレートの周りに並べられた複数の円弧状のセグメントとを備える。少なくとも一つの前記セグメントは、ローカバーのトレッドと主に接触する第一内側面と、この第一内側面の端から延びる第一接触面とを備える。前記サイドプレートは、ローカバーのサイド部と主に接触する第二内側面と、この第二内側面の端から延び前記第一接触面と接触する第二接触面とを備える。前記第一内側面に、前記第一接触面側の端に位置し周方向に延びる窪みが設けられている。周方向に垂直な断面において、前記窪みは外向きに凸な形状を呈している。前記第二接触面の位置での前記窪みの幅aは、2mm以上である。
【0009】
好ましくは、前記第二接触面と垂直な方向に沿って計測した上記窪みの高さは、2mm以上である。
【0010】
好ましくは、周方向に垂直な断面において、前記窪みが円弧状を呈しており、この窪みの曲率半径Rは2mm以上である。
【0011】
好ましくは、前記窪みは、この窪みの第一接触面側の端から延びる溝を備える。
【0012】
好ましくは、上記溝の幅は0.3mm以上1.5mm以下であり、この溝の深さは0.2mm以上1.0mm以下である。
【0013】
好ましくは、前記溝が複数存在しており、これらの溝のピッチは0.6mm以上3.0mm以下である。
【0014】
好ましくは、前記第二内側面と前記第二接触面との角において、これらがなす角度θは90°以下である。
【0015】
本発明に係るタイヤの製造方法は、上記のいずれかのモールドにローカバーをセットする工程、及びローカバーを前記モールドの中で加圧及び加熱する工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
このモールドでは、セグメントは、ローカバーと接触する第一内側面と、サイドプレートの第二接触面と接触する第一接触面とを備える。第一内側面には、第一接触面の側の端に、外向きに凸な周方向に延びる窪みが設けられている。第二接触面の位置での前記窪みの幅aは、2mm以上である。この窪みより、セグメントとサイドプレートとの間のローカバーの噛み込みが、効果的に防止されている。このモールドでは、セグメントとサイドプレートと境界に突条は設けられていない。このモールドで製造されたタイヤの、この境界の位置に対応する位置に、溝は形成されない。このタイヤでは、クラックが防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るモールドが示された平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のモールドを含む、タイヤの加硫装置の一部が示された断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の装置の一部が示された、拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のモールドのセグメントの一部が示された、斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2の装置でモールドが閉じられる前の状態が示された断面図である。
【
図6】
図6は、
図3のモールドの一部が示された、拡大断面図である。
【
図7】
図7は、
図4のセグメントの窪みが示された拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1は、本発明に係るタイヤ製造用のモールド2が示された平面図である。
図1において、両矢印Aで示される方向がこのモールド2の周方向であり、紙面に垂直な方向がこのモールド2の軸方向である。このモールド2は、セグメント4、サイドプレート6及びビードリング8を備える。
図1には、実線で表されたセグメント4及び二点鎖線で表されたセグメント4が存在する。実線で表されているのが、モールド2が閉じられた状態でのセグメント4である。二点鎖線で表されているのが、モールド2が閉じられる前の状態でのセグメント4である。
【0020】
図2は、
図1のモールド2を含む、タイヤの加硫装置10の一部が示された断面図である。この加硫装置10は、上記のセグメント4、サイドプレート6及びビードリング8の他に、内セクターシュー12、外セクターシュー14、上側ベースプレート16及び下側ベースプレート18を備えている。この図には、ローカバーRも示されている。
図2において、左右方向が半径方向であり、上下方向が軸方向であり、紙面に垂直な方向が周方向である。
図2のモールド2は、
図1のII-II線に沿った拡大断面図となっている。
【0021】
図2では、モールド2は閉じられている。この図のセグメント4の位置は、
図1の実線で表されているセグメント4の位置に対応する。この状態では、セグメント4、サイドプレート6及びビードリング8が組み合わされ、ローカバーRを格納するキャビティが形成されている。
【0022】
図1で示されるように、それぞれのセグメント4の平面形状は、実質的に円弧状である。複数のセグメント4が、サイドプレート6の周りにリング状に配置されている。セグメント4は、サイドプレート6の半径方向外側に位置する。
図2で示されるように、セグメント4は、第一内側面20と一対の第一接触面24とを備えている。第一内側面20は、ローカバーRの主にトレッドと接触する。第一内側面20は、キャビティ面の一部を構成する。それぞれの第一接触面24は、第一内側面20の端から延びている。第一接触面24は、第一内側面20の対応する軸方向の端から、軸方向外側に延びている。
【0023】
図1で示されるように、サイドプレート6はリング状である。
図2に示されるように、上下一対のサイドプレート6が存在する。それぞれのサイドプレート6は、第二内側面26と第二接触面28とを備える。第二内側面26は、ローカバーRの主にサイド部と接触する。第二内側面26は、キャビティ面の一部を構成する。第二接触面28は、第二内側面26の端から延びている。第二接触面28は、第二内側面26の半径方向外側の端から、軸方向外側に延びている。
図2に示されるように、モールド2が閉じられた状態において、サイドプレート6の第二接触面28は、セグメント4の対応する第一接触面24と接触している。
【0024】
図1に示されるように、ビードリング8はリング状である。
図2に示されるように、上下一対のビードリング8が存在する。それぞれのビードリング8は、ローカバーRの対応するビードの部分と接触する第三内側面30を備える。ビードリング8は、サイドプレート6に固定されている。
【0025】
図2に示されるように、内セクターシュー12は、セグメント4の半径方向外側に位置する。一つのセグメント4に対して、一つの内セクターシュー12が存在する。従って、内セクターシュー12の数は、セグメント4の数と同じである。それぞれの内セクターシュー12は、対応するセグメント4と固定されている。
図2に示されるように、内セクターシュー12の半径方向外側の面は、軸方向に対して傾斜している。
【0026】
図2に示されるように、外セクターシュー14は、内セクターシュー12の半径方向外側に位置している。外セクターシュー14は、内セクターシュー12と当接している。この当接面は、軸方向に対して傾斜している。この傾斜角度は、内セクターシュー12の外側面の傾斜角度と同じである。
【0027】
外セクターシュー14は、軸方向(
図2のY方向及びその反対方向)に移動しうる。内セクターシュー12及びこれと固定されたセグメント4は、半径方向(
図1及び
図2のX方向及びその反対方向)に移動しうる。外セクターシュー14をY方向に移動させることで、内セクターシュー12及びセグメント4が、X方向に移動する。外セクターシュー14をY方向と反対方向に移動させることで、内セクターシュー12及びセグメント4が、X方向と反対方向に移動する。
【0028】
上側ベースプレート16及び下側ベースプレート18は、それぞれ対応するサイドプレート6を固定している。上側ベースプレート16と下側ベースプレート18との間で、内セクターシュー12及びセグメント4が半径方向に移動される。
【0029】
図3は、
図2の一部が拡大された断面図である。この図では、セグメント4と、サイドプレート6との境界の近辺が示されている。
図4は、
図2のセグメント4の一部が示された、斜視図である。
図3及び4で示されるように、セグメント4の第一内側面20には、第一接触面24側の端に、窪み32が設けられている。
図4で示されるように、窪み32は周方向に延びている。窪み32は、セグメント4の、周方向の一方の端から他方の端まで延びている。
図3の断面において、窪み32は、このモールド2の外側に向けて凸な形状を呈している。この実施形態では、窪み32は円弧状を呈する。窪み32は、円弧状でなくてもよい。例えば、
図3の断面において、窪み32は、途中で折り曲がりを有する直線であってもよい。窪み32は、外向きに凸な形状を呈していればよい。
【0030】
図3において、符号Pは、第一接触面24の軸方向内側端を表す。窪み32が存在するため、内側端Pと第二接触面28の軸方向内側端とは一致していない。
図3の符号aは、内側端Pと第二接触面28の軸方向内側端との距離を表す。距離aは、別の言い方をすれば、第二接触面28の位置での窪み32の幅である。このモールド2では、幅aは、2mm以上である。
【0031】
図4で示されるように、窪み32は複数の溝34を備えている。それぞれの溝34は、窪み32の第一接触面24側の端から延びている。溝34は、窪み32の第一接触面24側の反対側の端まで延びている。この実施形態では、溝34は、ほぼ軸方向に延びている。溝34は、周方向に並列されている。この実施形態では、溝34は、窪み32の周方向の一方の端から他方の端まで並べられている。
【0032】
以下では、上記の装置10を使用したタイヤの製造方法が説明される。
【0033】
この製造方法では、成形工程にてローカバーRが形成される。このローカバーRが、この装置10の開いたモールド2に入れられる。
図5に
図2のモールド2が閉じられる前の状態が示されている。前述のとおり、
図1において二点鎖線で表されているのが、この状態でのセグメント4である。これらの図で示されるように、この状態では、セグメント4は、サイドプレート6と離されている。セグメント4の第一接触面24と、サイドプレート6の第二接触面28とは接触していない。
【0034】
このモールド2を閉じるために、外セクターシュー14が、
図5に示されるY方向に移動する。これに伴い、内セクターシュー12及びセグメント4が、
図1及び5で示されるX方向に移動する。これと併せて、ローカバーRがシェーピングされる。ローカバーRが膨らませられる。
【0035】
セグメント4がさらにX方向に移動する。ローカバーRは、セグメント4に、半径方向内側から外側に向けて押し当てられる。セグメント4の第一接触面24とサイドプレート6の第二接触面28とが接触するまで、セグメント4はX方向に動く。
図6には、このときの内側端Pの近辺が、拡大されて示されている。窪み32が外側に凸な形状をしているため、セグメント4とローカバーRとの境界において、ローカバーRのゴム組成物は、セグメント4に対して、
図6の矢印Bの方向に動く。このゴム組成物の動きの方向と、窪み32の幅aが2mm以上であることとから、ローカバーRのゴム組成物は、第一接触面24の内側端Pまで到達し難くなっている。第一接触面24と第二接触面28とが接触したとき、
図3及び6で示されるように、内側端Pの近辺には、隙間が存在する。第一接触面24と第二接触面28とが接触することで、モールド2が閉じられる。ローカバーRが、モールド2にセットされる。
【0036】
ローカバーRは、閉じられたモールド2の中で、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーRのゴム組成物がキャビティ内を流動する。内側端Pの近辺にゴム組成物が入り込み、隙間は埋められる。加熱によりゴムが架橋反応を起こす。これにより、タイヤが得られる。
【0037】
外セクターシュー14がY方向の反対方向に移動する。これに伴い、内セクターシュー12及びセグメント4が、X方向の反対方向に移動する。これによりモールド2が開かれ、タイヤが取り出される。
【0038】
以下では、本発明の作用効果が説明される。
【0039】
このモールド2では、セグメント4は、ローカバーRと接触する第一内側面20と、サイドプレート6の第二接触面28と接触する第一接触面24とを備える。第一内側面20には、第一接触面24の側の端に、周方向に延びる窪み32が設けられている。第二接触面28の位置での窪み32の幅aは、2mm以上である。この窪み32により、第一接触面24と第二接触面28とが接触するとき、ローカバーRのゴム組成物は、第一接触面24の内側端Pまで到達し難くなっている。これにより、第一接触面24と第二接触面28との間に、ローカバーRのゴムが入り込むことが防止されている。このモールド2では、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRの噛み込みが、効果的に防止されている。
【0040】
ローカバーRの噛み込みをより効果的に防止するとの観点から、窪み32の幅aは、3mm以上がより好ましい。
【0041】
窪み32の幅aは、6mm以下が好ましい。幅aを6mm以下とすることで、この窪み32によりタイヤに形成された突起が、タイヤの外観に与える影響が抑えられる。このモールド2で製造されたタイヤは、優れた外観が維持されうる。この観点から、幅aは5mm以下がより好ましい。
【0042】
図3において、矢印Hは、窪み32の高さを表す。窪み32の高さHは、第二接触面28と垂直な方向に計測される。高さHは、2mm以上が好ましい。高さHを2mm以上とすることで、ローカバーRのゴム組成物が、この窪み32に沿って
図6のBの方向に動き易くなる。モールド2を閉じるときに、ローカバーRのゴム組成物が、第一接触面24の内側端Pまで到達し難くなる。これにより、第一接触面24と第二接触面28との間に、ローカバーRのゴム組成物が入り込むことが防止されている。このモールド2では、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRの噛み込みが、効果的に防止されている。
【0043】
この実施形態では、周方向に垂直な断面において、窪み32は円弧状を呈している。これにより、ローカバーRのゴム組成物が、
図6の矢印Bの方向に動き易くなる。モールド2を閉じるときに、ローカバーRのゴム組成物が、第一接触面24の内側端Pまで到達し難くなる。第一接触面24と第二接触面28との間に、ローカバーRのゴム組成物が入り込むことが防止されている。このモールド2では、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRの噛み込みが、効果的に防止されている。
【0044】
図3において、矢印Rdは、窪み32の曲率半径を表す。曲率半径Rdは、2mm以上が好ましい。曲率半径Rdは、2mm以上とすることで、ローカバーRのゴム組成物が、
図6の矢印Bの方向により動き易くなる。モールド2を閉じるときに、ローカバーRのゴム組成物が、第一接触面24の内側端Pまで到達し難くなる。第一接触面24と第二接触面28との間に、ローカバーRのゴム組成物が入り込むことが防止されている。このモールド2では、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRの噛み込みが、効果的に防止されている。この観点から、曲率半径Rdは、3mm以上がより好ましい。この観点から、曲率半径Rdは、100mm以下が好ましく、90mm以下がより好ましい。
【0045】
この実施形態では、窪み32は、窪み32の第一接触面24側の端から、これの反対側の端まで延びる複数の溝34を備えている。これにより、内側端Pにおける第一接触面24の、第二接触面28との接触面積が小さくできる。この位置における、ローカバーRのゴム組成部の噛み込みが抑えられる。このモールド2では、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRの噛み込みが、効果的に防止されている。さらに、この溝34により、内側端Pの近辺の隙間に残存していたエアーが、効果的に排出されうる。このモールド2で製作したタイヤでは、エアーの残留によるベアの発生が抑えられている。
【0046】
図7は、窪み32を軸方向内側から見た図である。
図7において、両矢印GWは、窪み32の溝34の幅を表す。幅GWは、溝が延びる方向と垂直な方向で計測される。幅GWは、0.3mm以上が好ましい。幅GWを0.3mm以上とすることで、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRのゴム組成部の噛み込みが、効果的に抑えられる。さらに、このようにすることで、内側端Pの近辺の隙間に残存していたエアーが、効果的に排出されうる。これらの観点から、幅GWは、0.5mm以上がより好ましい。この溝34の、外観に対する影響を抑えるとの観点から、幅GWは1.5mm以下が好ましい。
【0047】
溝34の深さGDは、0.2mm以上が好ましい。深さGDを0.2mm以上とすることで、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRのゴム組成部の噛み込みが、効果的に抑えられる。さらに、このようにすることで、内側端Pの近辺の隙間に残存していたエアーが、効果的に排出されうる。これらの観点から、深さGDは、0.3mm以上がより好ましい。この溝34の、外観に対する影響を抑えるとの観点から、深さGDは1.0mm以下が好ましい。
【0048】
図7において、両矢印GPは、溝34のピッチを表す。ピッチGPは、3.0mm以下が好ましい。ピッチGPを3.0mm以下とすることで、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRのゴム組成部の噛み込みが、効果的に抑えられる。さらに、このようにすることで、内側端Pの近辺の隙間に残存していたエアーが、効果的に排出されうる。これらの観点から、ピッチGPは、2.5mm以下がより好ましい。この溝34の、外観に対する影響を抑えるとの観点から、ピッチGPは0.6mm以上が好ましい。
【0049】
図3において、両矢印θは、第二内側面26と第二接触面28との角における、第二内側面26と第二接触面28とがなす角度を表す。角度θは、90°以下が好ましい。角度θを90°以下とすることで、モールド2を閉じる際に、セグメント4とビードリング8との境界において、ローカバーRのゴム組成物が内側端Pの方向に移動することが防止されている。第一接触面24と第二接触面28とが接触するとき、ローカバーRのゴム組成物は、第一接触面24の内側端Pまで到達し難くなっている。これにより、第一接触面24と第二接触面28との間に、ローカバーRのゴム組成物が入り込むことが防止されている。このモールド2では、セグメント4とサイドプレート6との間でのローカバーRの噛み込みが、効果的に防止されている。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0051】
[実施例1]
図1-3で示されたモールドを作製した。このモールドは、「195/65 R16」のサイズのタイヤ用である。このモールドの窪みは、周方向に垂直な断面において、円弧状である。この窪みの仕様が、表1に示されている。この窪みは、溝を備えていない。第二接触面と第二内側面との角度θは、90°とされた。
【0052】
[比較例1]
セグメントの第一内側面に、窪みが設けられていないことの他は実施例1と同様にして、比較例1のモールドを作製した。
【0053】
[比較例2]
窪みの幅a、高さH及び曲率半径Rdを表1のとおりとした他は実施例1と同様にして、比較例2のモールドを作製した。
【0054】
[実施例2]
窪みの高さH及び曲率半径Rdを表1のとおりとした他は実施例1と同様にして、実施例2のモールドを作製した。
【0055】
[実施例3]
窪みが軸方向に延びる複数の溝を有していることの他は実施例2と同様にして、実施例3のモールドを作製した。溝は、窪みの周方向の一方の端から他方の端まで、等ピッチで設けられた。溝の幅GWは1.0mm、深さGDは0.5mm、ピッチGPは2.0mmであった。
【0056】
[ローカバー噛み込み]
それぞれのモールドでタイヤを製造し、ローカバーの噛み込みによるタイヤのバリの発生の程度を確認した。この結果が、A、B、C及びDの四段階で、表1に示されている。A、B、C、Dの順にバリの発生が少ない。A、B、C、Dの順に、好ましい。
【0057】
[ベア]
それぞれのモールドでタイヤを製造し、セグメントとサイドプレートとの境界でのエアーの残留による、ベアの発生を確認した。この結果が、A、B、Cの三段階で、表1に示されている。A、B、Cの順に、ベアの発生が少ない。A、B、Cの順に、好ましい。
【0058】
【0059】
表1に示されるとおり、実施例のモールドでは、比較例のモールドに比べて結果が優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るモールドは、種々のタイヤの製造に適用しうる。
【符号の説明】
【0061】
2・・・モールド
4・・・セグメント
6・・・サイドプレート
8・・・ビードリング
10・・・加硫装置
12・・・内セクターシュー
14・・・外セクターシュー
16・・・上側ベースプレート
18・・・下側ベースプレート
20・・・第一内側面
24・・・第一接触面
26・・・第二内側面
28・・・第二接触面
30・・・第三内側面
32・・・窪み
34・・・溝