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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置及び媒体アダプタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20241008BHJP
   B65H 16/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J15/04
B65H16/06 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020158322
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052130
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 康一
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218349(JP,A)
【文献】特開2004-161402(JP,A)
【文献】特開2010-046977(JP,A)
【文献】特開2003-040502(JP,A)
【文献】特開2002-128331(JP,A)
【文献】特開平02-100947(JP,A)
【文献】特開2009-143639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/04
B65H 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の被印刷媒体を筒状に巻回した媒体ロールを収容する筐体と、
前記筐体に対して軸回りで複数の異なる取り付け角度を選択して取り付け可能で、前記複数の取り付け角度で、前記被印刷媒体の幅が異なる複数種の前記媒体ロールを回転可能に支持する媒体支持軸と、
案内可能な前記被印刷媒体の幅が異なる複数種のガイド部を有し、前記筐体に対する前記媒体支持軸の前記取り付け角度の変更に応じて、前記複数種のガイド部のうち前記被印刷媒体の案内に用いるガイド部を変更する媒体ガイド機構と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記媒体支持軸は、円形断面の円形軸部と非円形断面の非円形軸部とを同軸上に有し、前記円形軸部の外周面上に前記媒体ロールを回転可能に支持し、
前記円形軸部の周方向の異なる位置に、前記媒体支持軸の軸方向における複数種の前記媒体ロールのそれぞれの位置を定める複数種のロール保持部を有し、
前記筐体は、前記非円形軸部を前記複数の取り付け角度で支持する軸支持部を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記媒体ガイド機構は、前記媒体支持軸の軸方向に位置を異ならせて前記筐体に揺動可能に支持される少なくとも一組の可動部材を備え、
前記複数種のガイド部は、前記一組の可動部材に設けられて前記軸方向に間隔を空けて対向する可動ガイド部を含み、
前記一組の可動部材の少なくとも一方に、前記媒体支持軸の前記複数の取り付け角度の一つで、前記媒体支持軸に設けた押圧部により押圧される被押圧部を有し、
前記被押圧部が押圧されない状態で、前記媒体ロールから引き出された前記被印刷媒体の搬送経路の両側から前記可動ガイド部が退避し、
前記被押圧部が前記押圧部により押圧されて前記可動部材が揺動した状態で、前記被印刷媒体の搬送経路の両側に前記可動ガイド部が位置することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記媒体ガイド機構は、前記可動ガイド部の間隔が異なる複数組の前記可動部材を有し、前記媒体支持軸は、複数組のそれぞれの前記可動部材の前記被押圧部に対応する複数の前記押圧部を有していることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記媒体ガイド機構の前記複数種のガイド部は、前記筐体に固定的に設けられ、前記媒体支持軸の軸方向に前記可動ガイド部よりも広い間隔を空けて対向し、前記被印刷媒体の搬送経路の両側に位置する固定ガイド部を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記媒体支持軸は、前記円形軸部の軸方向の両側に一対の前記非円形軸部を有し、
前記筐体は、一対の前記非円形軸部を支持する一対の前記軸支持部を有し、
一対の前記非円形軸部に、前記一組の可動部材のそれぞれに設けた前記被押圧部を押圧する少なくとも一組の前記押圧部を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記非円形軸部は、前記軸支持部に対して4つの前記取り付け角度を選択可能な四角柱形状であることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記筐体は前記媒体支持軸の軸方向に対して交差する方向に開閉可能であり、
前記軸支持部は前記媒体支持軸の軸方向に突出して前記筐体に設けられ、前記筐体の開放状態で前記媒体支持軸の軸方向と垂直な方向に前記非円形軸部を着脱可能な開口部を有し、
前記筐体の閉塞状態で、前記開口部からの前記非円形軸部の離脱が前記筐体によって規制され、且つ前記開口部に前記非円形軸部の一部が露出することを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記非円形軸部の外面に、前記複数の取り付け角度のそれぞれで前記開口部を通して視認される複数種の識別表示を有することを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
長尺の被印刷媒体を筒状に巻回した媒体ロールを収容する筐体と、
前記筐体に対して軸回りで複数の異なる取り付け角度を選択して取り付け可能で、前記複数の取り付け角度で、前記被印刷媒体の幅が異なる複数種の前記媒体ロールを回転可能に支持する媒体支持軸と、
案内可能な前記被印刷媒体の幅が異なる複数種のガイド部を有し、前記筐体に対する前記媒体支持軸の取り付け角度の変更に応じて、前記複数種のガイド部のうち前記被印刷媒体の案内に用いるガイド部を変更する媒体ガイド機構と、
を備えることを特徴とする媒体アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び媒体アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
細長い帯状の被印刷媒体に対して、文字や図形などを印刷してラベルを作成するラベルプリンタが広く用いられている。多くのラベルプリンタでは、被印刷媒体を長手方向に巻いて筒状にした媒体ロールを装着し、媒体ロールから被印刷媒体を引き出してサーマルヘッドなどの印字部まで搬送して印刷する。
【0003】
特許文献1には、ロール形状の被印刷媒体を直接収容するラベルプリンタが記載されている。特許文献2には、ロール形状の被印刷媒体を収容したテープカートリッジを取り付けるラベルプリンタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-179882号公報
【文献】特開2014-028448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラベルプリンタに使用される被印刷媒体には、幅や印刷面の色などが異なる様々な種類のものが存在する。ユーザは、用途や好みに応じて選択した被印刷媒体を印刷装置に装着することで、複数種の被印刷媒体を使い分けることができる。
【0006】
この種の印刷装置では、幅が異なる複数種の被印刷媒体を搬送して印刷できるように、複数種の被印刷媒体の幅方向の中心位置を揃えるための構造が搭載される。例えば、特許文献1のように被印刷媒体を直接収容するタイプの印刷装置では、被印刷媒体の幅方向での装着位置を調整する複数種の調整パーツを準備しておき、被印刷媒体の装着時に、その幅に対応する調整パーツをユーザが選択して印刷装置内に取り付けることで対応が可能である。特許文献2のようにテープカートリッジを介して被印刷媒体を装着するタイプでは、幅が異なる複数種の被印刷媒体の保持に対応した複数種のテープカートリッジケースを準備しておき、使用するテープカートリッジケースをユーザが選択して被印刷媒体を装着する。
【0007】
上述したいずれの場合も、複数種の調整パーツや複数種のテープカートリッジケースを準備しておき、使用する被印刷媒体の幅に応じてユーザが適宜選択して付け替えや分解を行うため、関連する部品の製造及び管理(保管)に要するコストや、組み付け時の調整にかかる手間が増大しやすいという問題があった。
【0008】
以上のような問題点に鑑みて、本発明は、幅が異なる複数種の被印刷媒体の装着及び搬送案内を、簡単且つ低コストに行うことができる印刷装置及び媒体アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る印刷装置は、長尺の被印刷媒体を筒状に巻回した媒体ロールを収容する筐体と、前記筐体に対して軸回りで複数の異なる取り付け角度を選択して取り付け可能で、前記複数の取り付け角度で、前記被印刷媒体の幅が異なる複数種の前記媒体ロールを回転可能に支持する媒体支持軸と、案内可能な前記被印刷媒体の幅が異なる複数種のガイド部を有し、前記筐体に対する前記媒体支持軸の前記取り付け角度の変更に応じて、前記複数種のガイド部のうち前記被印刷媒体の案内に用いるガイド部を変更する媒体ガイド機構と、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る媒体アダプタは、長尺の被印刷媒体を筒状に巻回した媒体ロールを収容する筐体と、前記筐体に対して軸回りで複数の異なる取り付け角度を選択して取り付け可能で、前記複数の取り付け角度で、前記被印刷媒体の幅が異なる複数種の前記媒体ロールを回転可能に支持する媒体支持軸と、案内可能な前記被印刷媒体の幅が異なる複数種のガイド部を有し、前記筐体に対する前記媒体支持軸の前記取り付け角度の変更に応じて、前記複数種のガイド部のうち前記被印刷媒体の案内に用いるガイド部を変更する媒体ガイド機構と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、印刷装置や媒体アダプタにおいて、幅が異なる複数種の被印刷媒体の装着及び搬送案内を、簡単且つ低コストに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】筐体を閉塞した状態の印刷装置の斜視図である。
図2】筐体を開放した状態の印刷装置の斜視図である。
図3】印刷装置内部のプラテンローラとサーマルヘッドと被印刷媒体(テープ)の関係を示す斜視図である。
図4】プラテンローラとサーマルヘッドと被印刷媒体(テープ)の断面図である。
図5】媒体支持軸の斜視図である。
図6】媒体支持軸の斜視図である。
図7】テープ幅12mmのテープロールを印刷装置に装着する前の状態の印刷装置を示す斜視図である。
図8】テープ幅12mmのテープロールを支持した媒体支持軸を、印刷装置の筐体に取り付けた装着状態を示す斜視図である。
図9図7の状態におけるテープロールと媒体支持軸と媒体ガイド機構の関係を示す斜視図である。
図10図8の装着状態におけるテープロールと媒体支持軸と媒体ガイド機構の関係を示す斜視図である。
図11図8及び図10の装着状態における媒体ガイド機構を示す斜視図である。
図12】テープ幅9mmのテープロールを支持した媒体支持軸を印刷装置の筐体に取り付けた装着状態での、テープロールと媒体支持軸と媒体ガイド機構の関係を示す斜視図である。
図13図12の装着状態における媒体ガイド機構を示す斜視図である。
図14】テープ幅18mmのテープロールを支持した媒体支持軸を印刷装置の筐体に取り付けた装着状態での、テープロールと媒体支持軸と媒体ガイド機構の関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置10の斜視図である。印刷装置10は、被印刷媒体に印刷を行う印字部としてサーマルヘッドを備える印刷装置であり、例えば、長尺(帯状)の被印刷媒体であるテープTに対して印刷を行ってラベルを作成するラベルプリンタである。
【0014】
テープTは、例えば、接着層を有する基材と、基材に対して接着層を覆うように貼付された剥離可能な剥離紙と、を有している。基材と剥離紙の幅は略同じである。被印刷媒体として、剥離紙を備えないタイプのテープTを適用してもよい。
【0015】
なお、本実施形態では、テープTの基材上に積層された発色層に対してサーマルヘッドの発熱によって印字を行う方式のラベルプリンタを例にして説明するが、本発明を適用する印刷装置や印刷方式はこれに限定されず、長尺の被印刷媒体を搬送して印刷するものであれば広く適用が可能である。
【0016】
図1に示すように、印刷装置10は細長い箱型形状を有しており、印刷済みのテープTを長手方向の一端から外部に排出する。従って、テープTは概ね印刷装置10の長手方向に向けて搬送される。以下の説明及び図面において、印刷装置10の短手方向(横幅方向)をX軸方向、長手方向(奥行き方向)をY軸方向、高さ方向をZ軸方向、とする。
【0017】
印刷装置10の筐体は、Z軸方向に分割される下部筐体11と上部筐体12を有している。下部筐体11と上部筐体12は、Y軸方向の一端に設けたヒンジ部13を介して開閉可能に接続されている。ヒンジ部13とは反対側に位置するY軸方向の他端には、上部筐体12の一部を切り欠いて排出口14が形成されている。印刷装置10は、被印刷媒体であるテープTをユーザが任意に交換可能な印刷装置であり、下部筐体11と上部筐体12を開いた開放状態(図2)で印刷装置10内へのテープTの着脱を行い、下部筐体11と上部筐体12を閉じた閉塞状態(図1)で印刷を行う。
【0018】
下部筐体11は、X軸方向に離間する一対の側壁11aと、Y軸方向に離間する一対の端壁11bと、各側壁11a及び各端壁11bの下端側を接続する底壁11cと、を備えている。一対の側壁11aは略平行であり、一対の端壁11bは略平行である。下部筐体11では、底壁11cとは反対側の上端部分が開放されており、開放部分の端面として合わせ面11dが形成されている(図2参照)。
【0019】
上部筐体12は、X軸方向に離間する一対の側壁12aと、Y軸方向に離間する一対の端壁12bと、各側壁12a及び各端壁12bの上端側を接続する上壁12cと、を備えている。一対の側壁12aは略平行であり、一対の端壁12bは略平行である。上部筐体12では、上壁12cとは反対側の下端部分が開放されており、開放部分の端面として合わせ面12dが形成されている(図2参照)。
【0020】
下部筐体11と上部筐体12を開放状態にすると、印刷装置10の内部構造が露出する(図2参照)。下部筐体11と上部筐体12を閉塞状態にすると、合わせ面11dと合わせ面12dが合わさって、側壁11aと側壁12a、端壁11bと端壁12bがそれぞれZ軸方向に連続する箱型形状になる(図1参照)。
【0021】
図2に示すように、印刷装置10の内部には、印字部であるサーマルヘッド15と、テープ搬送用のプラテンローラ16が設けられている。サーマルヘッド15は下部筐体11側に取り付けられ、プラテンローラ16は上部筐体12側に取り付けられている。
【0022】
図3に示すように、テープTは、円筒状の芯材17の外側にテープTを同心状に巻回した媒体ロール、すなわちテープロール18の形態で印刷装置10に装着される。印刷装置10におけるテープロール18の支持構造については後述する。
【0023】
テープロール18を装着して下部筐体11と上部筐体12を閉塞状態にすると、テープロール18から引き出されたテープTが、サーマルヘッド15とプラテンローラ16の間に位置する(図3及び図4参照)。この状態で図示を省略する搬送用モータによってプラテンローラ16を回転駆動すると、テープTが長手方向(Y軸方向)に搬送される。サーマルヘッド15は、印刷装置10の制御部(図示略)によって発熱制御される複数の発熱素子を有しており、テープTがサーマルヘッド15の位置を通過する際に発熱素子によって加熱されることで、テープTの発色層が発色して印刷が行われる。サーマルヘッド15とプラテンローラ16はY軸方向で排出口14の近傍に位置しており、印刷されたテープTは排出口14を通して印刷装置10の外部に排出される。
【0024】
印刷装置10では、テープTの幅が異なる複数種のテープロール18をユーザが選択して取り付けて印刷を行うことが可能であり、複数種のテープロール18の支持と、それぞれのテープロール18から引き出された異なる幅のテープTの案内とを行う構造を備えている。具体的には、複数種の幅のテープTに対し、その幅方向の中心が印刷時に搬送中心位置P(図4参照)を通るように、X軸方向での位置を定めながらテープTの搬送を行わせる構造を有する。以下、その構造の詳細を説明する。
【0025】
本実施形態の印刷装置10では、幅の大きさが6mm、9mm、12mm、18mmの4種類のテープTへの印刷に対応しており、それぞれのテープ幅に対応した4種類のテープロール18が準備される(図8参照)。以下の説明では、18mm幅のテープTをテープTA、12mm幅のテープTをテープTB、9mm幅のテープTをテープTC、6mm幅のテープTをテープTDとして区別する。また、これら各幅のテープTA,TB,TC,TDを巻回したテープロール18をそれぞれ、テープロール18A,18B,18C,18Dとして区別する。各テープロール18A,18B,18C,18Dにおける芯材17をそれぞれ、芯材17A,17B,17C,17Dとする。それぞれの芯材17A,17B,17C,17Dの幅は、テープTA,TB,TC,TDの幅に対応している。芯材17A,17B,17C,17Dの内径の大きさは共通であることが好ましい。ユーザは、これらのテープロール18A,18B,18C,18Dから好みのものを選択して印刷装置10に取り付ける。なお、同じ幅のテープにおいて、色や厚みなどにバリエーションがあってもよい。
【0026】
印刷装置10でテープロール18(18A~18D)の支持とテープT(TA~TD)の搬送案内を行う構造として、媒体支持軸20と媒体ガイド機構40を備えている。媒体支持軸20を介してテープロール18(18A~18D)を支持する。媒体支持軸20の取り付けに連動して媒体ガイド機構40が動作して、媒体ガイド機構40において案内可能なテープ幅が変更される。
【0027】
図5及び図6は、媒体支持軸20を示している。媒体支持軸20は、印刷装置10に取り付けた際に軸線がX軸方向に向く軸部材である。すなわち、X軸方向が媒体支持軸20の軸方向となる。媒体支持軸20は、円形断面形状の円形軸部21と、円形軸部21の両端から軸方向に突出する非円形断面形状の一対の非円形軸部22と、を有している。
【0028】
媒体支持軸20の軸線に対して垂直な方向の断面形状は、円形軸部21が円形であり、非円形軸部22が矩形である。すなわち、円形軸部21は、媒体支持軸20の軸線を中心とする円筒状の外周面を有している。非円形軸部22は軸方向に延びる四角柱形状であり、周方向に並ぶ外面として、第1面23Aと第2面23Bと第3面23Cと第4面23Dを有している。これら4つの面23A~23Dはそれぞれ、互いに隣接する2つの面とは垂直な関係にあり、第1面23Aと第3面23Cが平行で、第2面23Bと第4面23Dが平行である。周方向での4つの面23A~23Dの長さは全て等しい。従って、非円形軸部22は正方形の断面形状を有する。
【0029】
第1面23Aと第2面23Bと第3面23Cと第4面23Dには、4種類のテープ幅に対応する4種類の識別表示24A,24B,24C,24Dが形成されている。識別表示24A,24B,24C,24Dはアラビア数字で表示されており、それぞれの数値「18」、「12」、「9」、「6」が対応するテープ幅を表している。なお、識別表示24A,24B,24C,24Dに代わる識別表示として、アラビア数字以外の文字表示や図形やロゴなどを用いることも可能である。
【0030】
円形軸部21には、非円形軸部22の第1面23Aと第2面23Bと第3面23Cと第4面23Dに対応する周方向位置に、外径方向に突出する4種類(4組)のロール保持部25,26,27,28が設けられている。各組のロール保持部25,26,27,28は媒体支持軸20の軸方向に間隔を空けて配した一対の突起で構成されており、この一対の突起の間隔が、保持対象のテープ幅に応じて異なっている。
【0031】
より詳しくは、第1面23A及び識別表示24Aと同じ周方向位置に設けた一組のロール保持部25の間隔は、最も幅が大きい(18mmの)テープTAに対応しており、一組のロール保持部25の間にテープロール18Aを安定して保持することが可能である。第2面23B及び識別表示24Bと同じ周方向位置に設けた一組のロール保持部26の間隔は、2番目に大きい幅である(12mmの)テープTBに対応しており、一組のロール保持部26の間にテープロール18Bを安定して保持することが可能である。第3面23C及び識別表示24Cと同じ周方向位置に設けた一組のロール保持部27の間隔は、3番目に大きい幅である(9mmの)テープTCに対応しており、一組のロール保持部27の間にテープロール18Cを安定して保持することが可能である。第4面23D及び識別表示24Dと同じ周方向位置に設けた一組のロール保持部28の間隔は、最も幅が小さい(6mmの)テープTDに対応しており、一組のロール保持部28の間にテープロール18Dを安定して保持することが可能である。
【0032】
各組のロール保持部25,26,27,28は、X軸方向での中心位置(ロール保持部25,26,27,28をそれぞれ構成する一対の突起からX軸方向に等間隔である位置)が互いに一致している。換言すれば、各組のロール保持部25,26,27,28は、円形軸部21の軸方向の中心に関して対称の位置に一対の突起を配して構成されている。従って、媒体支持軸20では、4種類のテープロール18A~18Dを、X軸方向で中心位置を揃えて(センタリングした状態で)支持することができる。
【0033】
各テープロール18A~18Dにおける芯材17A~17Dの内径は、円形軸部21の直径よりも大きく、面接触ではなく線接触で、円形軸部21が芯材17A~17Dを支持するようになっている。そのため、各組のロール保持部25~28によって対応する各テープロール18A~18Dを保持する場合、芯材17A~17Dの内周面と円形軸部21の外周面は、4組のロール保持部25~28のうちテープロール18A~18Dを挟んでいる一組のロール保持部のX軸方向の延長上における線状の領域で接触する。そして、4組のロール保持部25~28のうち残る3組のロール保持部については、円形軸部21と芯材17A~17Dが接触する領域に対して、径方向で異なる向きに突出しており、テープロール18A~18Dの保持には関与しない。
【0034】
また、各組のロール保持部25,26,27,28はそれぞれ、他のロール保持部によってテープロール18を挟んで保持する場合に、当該テープロール18(特に芯材17)に対して干渉しない形状に設定される。例えば、軸方向の最も外側に位置するロール保持部25については、一組のロール保持部25の間隔よりもテープ幅が大きいテープロールを媒体支持軸20が支持することがないので、他のテープロールに干渉する可能性が低く、形状の設定自由度が高い。これに対し、軸方向の最も内側に位置するロール保持部28については、一組のロール保持部28の間隔よりもテープ幅が大きい3種類のテープロール18A,18B,18Cを媒体支持軸20が支持する場合がある。また、ロール保持部26については、一組のロール保持部26の間隔よりもテープ幅が大きい1種類のテープロール18Aを媒体支持軸20が支持する場合があり、ロール保持部27については、一組のロール保持部27の間隔よりもテープ幅が大きい2種類のテープロール18A,18Bを媒体支持軸20が支持する場合がある。
【0035】
従って、ロール保持部26,27,28は、それぞれの保持対象よりもテープ幅が大きいテープロール18(テープロール18A,18B,18Cのいずれか)を媒体支持軸20が支持する場合に、当該支持の妨げにならない形状に設定されている。具体的には、ロール保持部26,27,28の外径方向への突出量(円形軸部21からの高さ)を小さくしたり、ロール保持部26,27,28の先端部分を先細りの湾曲形状にしたりすることで、保持対象以外のテープロール18A,18B,18Cやその芯材17A,17B,17Cへの接触を防いでいる。なお、本実施形態では、ロール保持部25についても、他のロール保持部26,27,28と同様に、先端部分を先細りの湾曲形状にしている。
【0036】
例えば、図7及び図9に示すテープロール18Bの支持状態では、一組のロール保持部26によってテープロール18Bの両側を挟んでおり、芯材17Bの内周面と円形軸部21の外周面とが、一組のロール保持部26の間におけるX軸方向の線状領域で接触している。この状態で、一組のロール保持部25は、テープロール18BよりもX軸方向の間隔が大きく、且つ芯材17Bと円形軸部21の接触領域とは異なる向きに突出しているので、テープロール18B及び芯材17Bには接触しない。また、一組のロール保持部27と一組のロール保持部28はそれぞれ、テープロール18BよりもX軸方向の間隔が小さいが、芯材17Bと円形軸部21の接触領域とは異なる向きに突出しており、且つ外径方向への突出量及び先端部分の形状も適切に設定されているので、テープロール18B及び芯材17Bには接触しない。
【0037】
媒体支持軸20の一対の非円形軸部22には、外径方向に突出する3種類(3組)の押圧部30,31,32が設けられている。各組の押圧部30,31,32は媒体支持軸20の軸方向に間隔を空けて配した一対の突起で構成されており、一対の非円形軸部22の一方と他方に振り分けて各一対の突起が配置されている。
【0038】
押圧部30は第4面23Dから突出し、押圧部31は第1面23Aから突出し、押圧部32は第2面23Bから突出している。押圧部30,31,32はそれぞれ、媒体支持軸20の軸方向に所定の厚さを有する板状の部位であり、先端が平面形状になっている。各組の押圧部30,31,32は互いに媒体支持軸20の軸方向における位置が異なっており、押圧部32が円形軸部21に最も近い軸方向の中央寄りに位置し、押圧部30が円形軸部21から最も遠い軸方向の先端寄りに位置し、押圧部31は押圧部30と押圧部32の間に位置している。換言すれば、媒体支持軸20の軸方向において、一組の押圧部30の間隔が最も大きく、一組の押圧部32の間隔が最も小さく、一組の押圧部31の間隔はその中間である。
【0039】
下部筐体11には、媒体支持軸20を支持する一対の軸支持部35が設けられている。一対の軸支持部35は、下部筐体11の一対の側壁11aからそれぞれ側方に突出しており、下部筐体11のX軸方向の中心に関して対称な構造を有している。それぞれの軸支持部35は、Y軸方向に離間する略平行な一対の前後壁35aと、X軸方向の端部を塞ぐ端壁35bと、Z軸方向の底部を塞ぐ底壁35cと、を有している。それぞれの軸支持部35のうち、側壁11aに接するX軸方向の内側部分はX軸方向に開口しており、下部筐体11の内部空間と軸支持部35の内部空間が連通している。また、それぞれの軸支持部35のうち、合わせ面11dに接する上端側の部分は、Z軸方向で上方に向けて開放された開口部35dになっている。
【0040】
下部筐体11に対する上部筐体12の開閉動作は、媒体支持軸20の軸方向であるX軸方向に対して交差する方向に向けて(ヒンジ部13の軸線を中心とした円弧状の軌跡で)行われる。従って、下部筐体11と上部筐体12の開放状態(図2図7)では、一対の軸支持部35の開口部35dの上方を上部筐体12の合わせ面12dが横切らない状態になり、一対の軸支持部35に対して一対の非円形軸部22を、開口部35dを通してZ軸方向(媒体支持軸20の軸方向と垂直な方向)に着脱させることができる。四角柱状の非円形軸部22は、対応する軸支持部35に対して、X軸方向に向く軸線を中心として軸回りに90度ずつ角度を異ならせた4つの位置(取り付け角度)で嵌合が可能である。
【0041】
それぞれの取り付け角度で非円形軸部22を軸支持部35に嵌合させると、開口部35dに非円形軸部22の一部が露出する。より詳しくは、第1面23Aから第4面23Dのうち上向きになっている面が露出し、開口部35dを通して識別表示24A,24B,24C,24Dのいずれか(上向きになっているもの)が視認される。例えば、図1及び図8に示す装着状態では、第2面23Bを上向きにして各非円形軸部22を取り付けたことにより、開口部35dを通して識別表示24Bが視認される状態になっている。このように、媒体支持軸20がいずれの取り付け角度を選択して印刷装置10に取り付けられているかを、印刷装置10の外部から視覚的に容易に識別できる。
【0042】
一対の非円形軸部22を一対の軸支持部35に嵌合させた状態では、軸支持部35における一対の前後壁35aと底壁35cとが非円形軸部22の外面(第1面23Aから第4面23Dのうち3つの面)を拘束することにより、X軸方向に向く軸線を中心とする媒体支持軸20の回転と、Y軸方向への媒体支持軸20の移動とが規制される。また、円形軸部21の軸方向の両端面(非円形軸部22との境界面)が下部筐体11の一対の側壁11aに当接することにより、X軸方向への媒体支持軸20の移動が規制される。なお、円形軸部21の両端面と一対の側壁11aとの当接に代えて、一対の非円形軸部22の軸方向端部が対応の軸支持部35の端壁35bに当接することで、X軸方向への媒体支持軸20の移動を規制する構成にしてもよい。
【0043】
さらに、下部筐体11と上部筐体12を閉塞状態(図1)にすることで、一対の軸支持部35における底壁35cと上部筐体12の合わせ面12dとの間に一対の非円形軸部22の外面(第1面23Aから第4面23Dのうち、隣接しない2つの面)が挟まれて、Z軸方向への媒体支持軸20の移動が規制される。つまり、開口部35dからの一対の非円形軸部22の離脱も規制される。
【0044】
以上のようにして、媒体支持軸20が、取り付け角度を任意に選択した状態で、下部筐体11及び上部筐体12に対して固定的に支持される。媒体支持軸20に設けた各組の押圧部30,31,32はいずれも、一対の非円形軸部22のうち軸支持部35による支持を受ける領域よりも軸方向の中央側(円形軸部21寄りの位置)に設けられている。従って、媒体支持軸20を上述の4つの取り付け角度のいずれで取り付けた場合にも、各組の押圧部30,31,32は、軸支持部35を含む下部筐体11や上部筐体12に対して干渉することなく、印刷装置10の内部空間に位置することができる。
【0045】
一対の非円形軸部22のそれぞれにおいて、第1面23Aとは反対側の第3面23Cには、押圧部30,31,32に相当する突起が設けられていない。従って、識別表示24A(テープ幅18mmを示す数字)を上向きにした角度で媒体支持軸20を下部筐体11に取り付けると、非円形軸部22から下方に向けて、押圧部30,31,32のいずれも突出しない状態になる。識別表示24B(テープ幅12mmを示す数字)を上向きにした角度で媒体支持軸20を下部筐体11に取り付けると、第2面23Bとは反対側の第4面23Dに設けた押圧部30が、下方に向けて突出する状態になる(図9図10参照)。識別表示24C(テープ幅9mmを示す数字)を上向きにした角度で媒体支持軸20を下部筐体11に取り付けると、第3面23Cとは反対側の第1面23Aに設けた押圧部31が、下方に向けて突出する状態になる。識別表示24D(テープ幅6mmを示す数字)を上向きにした角度で媒体支持軸20を下部筐体11に取り付けると、第4面23Dとは反対側の第2面23Bに設けた押圧部32が、下方に向けて突出する状態になる。
【0046】
4つの取り付け角度のいずれでも、媒体支持軸20はX軸方向での位置が一定に支持される。従って、媒体支持軸20に支持される4種類のテープロール18A~18Dは、X軸方向で中心位置が互いに一致する(センタリングされた)状態で印刷装置10に装着される。そして、これらのテープロール18A~18Dから引き出されたテープTA~TDに対して、それぞれの幅方向の中心が印刷時に図4に示す搬送中心位置Pを通るように、媒体ガイド機構40によって案内する。
【0047】
図9から図14に示すように、媒体ガイド機構40は、固定部材41,42と、可動部材43,44,45と、を備えている。固定部材41,42と可動部材43,44,45はそれぞれ、X軸方向に間隔を空けて一組(一対)ずつ設けられている。一組の固定部材41と一組の固定部材42はそれぞれ、最も幅が大きいテープTAの案内に用いるものである。一組の可動部材43は、2番目の幅の大きさであるテープTBの案内に用いるものである。一組の可動部材44は、3番目の幅の大きさであるテープTCの案内に用いるものである。一組の可動部材45は、最も幅が小さいテープTDの案内に用いるものである。
【0048】
各組の固定部材41,42はそれぞれ、下部筐体11と一体的に形成された固定部である。一対の側壁11aの一方に固定部材41,42が一つずつ設けられ、一対の側壁11aの他方に固定部材41,42が一つずつ設けられている。固定部材41と固定部材42はY軸方向に位置を異ならせて設けられており、Y軸方向でサーマルヘッド15を挟んだ位置関係にある。一組の固定部材41と一組の固定部材42はそれぞれ、図4に示すX軸方向の搬送中心位置Pに関して略対称に配置されている。より詳しくは、個々の固定部材41,42は、側壁11aから印刷装置10の内側に向けてX軸方向に突出し、その先端にZ軸方向で上方へ屈曲した板状の固定ガイド部41a,42aを有するL字形状である。X軸方向に離間して対向する一組の固定ガイド部41aの間隔と、X軸方向に離間して対向する一組の固定ガイド部42aの間隔がそれぞれ、テープTAの幅に対応した約18mmに設定されている。
【0049】
各組の可動部材43,44,45はそれぞれ、共通のガイド支持軸46を中心として下部筐体11に対して揺動可能に支持された可動部である。ガイド支持軸46はX軸方向に延びる軸部材であり、ガイド支持軸46の両端は下部筐体11の一対の側壁11aに固定されている。
【0050】
X軸方向において、一組の可動部材43の間隔が最も大きく、一組の可動部材45の間隔が最も小さい。一組の可動部材44の間隔はその中間である。そして、下部筐体11における一方の側壁11aに近い側から順に隣接して(重ねて)配置された3つの可動部材43,44,45が、可動ガイドユニットU1を構成し、他方の側壁11aに近い側から順に隣接して(重ねて)配置された3つの可動部材43,44,45が、可動ガイドユニットU2を構成している。これらの2つの可動ガイドユニットU1,U2は、図4に示すX軸方向の搬送中心位置Pに関して略対称に配置されている。
【0051】
一組の可動部材43はそれぞれ、下部筐体11の側壁11aに沿ってY軸方向に長く延びるレバー部43aを有する。レバー部43aの中間部分には、ガイド支持軸46を挿通させる軸穴が形成されており、ガイド支持軸46を中心としてレバー部43aが揺動可能に支持される。レバー部43aの長手方向の一端に、上方へ向けて突出する被押圧部43bが形成されている。レバー部43aにはさらに、軸穴を挟んで被押圧部43bとは反対側の長手方向の他端側に、印刷装置10の内側に向けてX軸方向に突出する屈曲部が長手方向に位置を異ならせて2箇所設けられ、第1の屈曲部の先端に、Z軸方向で上方へ屈曲した板状の可動ガイド部43cが設けられ、第2の屈曲部の先端に、Z軸方向で上方へ屈曲した板状の可動ガイド部43dが設けられている。
【0052】
一組の可動部材44はそれぞれ、下部筐体11の側壁11aに沿ってY軸方向に長く延びるレバー部44aを有する。レバー部44aの中間部分には、ガイド支持軸46を挿通させる軸穴が形成されており、ガイド支持軸46を中心としてレバー部44aが揺動可能に支持される。レバー部44aの長手方向の一端に、上方へ向けて突出する被押圧部44bが形成されている。レバー部44aにはさらに、軸穴を挟んで被押圧部44bとは反対側の長手方向の他端側に、印刷装置10の内側に向けてX軸方向に突出する屈曲部が長手方向に位置を異ならせて2箇所設けられ、第1の屈曲部の先端に、Z軸方向で上方へ屈曲した板状の可動ガイド部44cが設けられ、第2の屈曲部の先端に、Z軸方向で上方へ屈曲した板状の可動ガイド部44dが設けられている。
【0053】
一組の可動部材45はそれぞれ、下部筐体11の側壁11aに沿ってY軸方向に長く延びるレバー部45aを有する。レバー部45aの中間部分には、ガイド支持軸46を挿通させる軸穴が形成されており、ガイド支持軸46を中心としてレバー部45aが揺動可能に支持される。レバー部45aの長手方向の一端に、上方へ向けて突出する被押圧部45bが形成されている。レバー部45aにはさらに、軸穴を挟んで被押圧部45bとは反対側の長手方向の他端側に、印刷装置10の内側に向けてX軸方向に突出する屈曲部が長手方向に位置を異ならせて2箇所設けられ、第1の屈曲部の先端に、Z軸方向で上方へ屈曲した板状の可動ガイド部45cが設けられ、第2の屈曲部の先端に、Z軸方向で上方へ屈曲した板状の可動ガイド部45dが設けられている。
【0054】
一組の可動部材43に設けた一組の被押圧部43bのX軸方向での間隔は、媒体支持軸20に設けた一組の押圧部30のX軸方向での間隔と同じである。一組の可動部材44に設けた一組の被押圧部44bのX軸方向での間隔は、媒体支持軸20に設けた一組の押圧部31のX軸方向での間隔と同じである。一組の可動部材45に設けた一組の被押圧部45bのX軸方向での間隔は、媒体支持軸20に設けた一組の押圧部32のX軸方向での間隔と同じである。
【0055】
一組の可動部材43において、X軸方向に離間して対向する一組の可動ガイド部43cの間隔と、X軸方向に離間して対向する一組の可動ガイド部43dの間隔はそれぞれ、テープTBの幅に対応した約12mmに設定されている。一組の可動部材44において、X軸方向に離間して対向する一組の可動ガイド部44cの間隔と、X軸方向に離間して対向する一組の可動ガイド部44dの間隔はそれぞれ、テープTCの幅に対応した約9mmに設定されている。一組の可動部材45において、X軸方向に離間して対向する一組の可動ガイド部45cの間隔と、X軸方向に離間して対向する一組の可動ガイド部45dの間隔はそれぞれ、テープTDの幅に対応した約6mmに設定されている。
【0056】
可動ガイドユニットU1と可動ガイドユニットU2のそれぞれにおいて、3つの可動部材43,44,45は、3つのレバー部43a,44a,45aがX軸方向に隣接して並ぶ位置関係で、ガイド支持軸46によって軸支される。この軸支状態で、3つの被押圧部43b,44b,45bがX軸方向に並び、Y軸方向で下部筐体11の軸支持部35に対応した位置になる(図2参照)。つまり、一対の軸支持部35のうち、一方の軸支持部35の下方に、可動ガイドユニットU1の被押圧部43b,44b,45bが位置し、他方の軸支持部35の下方に、可動ガイドユニットU2の被押圧部43b,44b,45bが位置する。
【0057】
また、可動ガイドユニットU1と可動ガイドユニットU2のそれぞれにおいて、ガイド支持軸46により軸支された状態の3つの可動部材43,44,45は、3つの可動ガイド部43c,44c,45cがX軸方向に隣接して並び、3つの可動ガイド部43d,44d,45dがX軸方向に隣接して並ぶ。
【0058】
各可動ガイドユニットU1,U2の可動ガイド部43c,44c,45cは、Y軸方向で、固定部材41の固定ガイド部41aと対応する位置にある。つまり、下部筐体11の側壁11aから近い順に、固定ガイド部41aと、3つの可動ガイド部43c,44c,45cとが、X軸方向に並ぶ関係にある。また、各可動ガイドユニットU1,U2の可動ガイド部43d,44d,45dは、Y軸方向で、固定部材42の固定ガイド部42aと対応する位置にある。つまり、下部筐体11の側壁11aから近い順に、固定ガイド部42aと、3つの可動ガイド部43d,44d,45dとが、X軸方向に並ぶ関係にある。換言すれば、各可動ガイドユニットU1,U2における可動ガイド部43c,44c,45cと可動ガイド部43d,44d,45dは、Y軸方向でサーマルヘッド15を挟んだ位置関係にある。
【0059】
さらに、各可動ガイドユニットU1,U2において、3つの可動部材43,44,45のうち、レバー部43a,44a,45aからX軸方向に延びる各屈曲部は、互いにY軸方向に並ぶ(重なる)形状になっている。
【0060】
以上のように構成した各可動ガイドユニットU1,U2では、3つの可動部材43,44,45がそれぞれ、互いに干渉せずにガイド支持軸46を中心とした揺動を個別に行うことができる。
【0061】
媒体ガイド機構40において、固定ガイド部41a,42aと、可動ガイド部43c,43dと、可動ガイド部44c,44dと、可動ガイド部45c,45dが、案内可能な被印刷媒体(テープTA~TD)の幅が異なる複数種(4種類)のガイド部を構成している。
【0062】
外力を加えていない媒体ガイド機構40の初期状態では、可動ガイドユニットU1と可動ガイドユニットU2における可動部材43,44,45はいずれも、被押圧部43b,44b,45bの側をZ軸方向で高く位置させ、可動ガイド部43c,44c,45c及び可動ガイド部43d,44d,45dの側をZ軸方向で低く位置させた退避位置にある(図9参照)。可動部材43,44,45におけるガイド支持軸46の両側の重量バランスの設定によって、退避位置に保持させることができる。あるいは、バネなどの付勢手段を用いて可動部材43,44,45を退避位置に向けて付勢してもよい。
【0063】
図2に示すように、可動部材43,44,45がそれぞれ退避位置にあるとき、被押圧部43b,44b,45bのそれぞれの上端が、軸支持部35の底壁35cよりも僅かにZ軸方向の下方に位置する。また、可動ガイド部43c,44c,45c及び可動ガイド部43d,44d,45dはいずれも、固定ガイド部41a,42aよりもZ軸方向の下方に位置する。この状態の可動ガイド部43c,44c,45c及び可動ガイド部43d,44d,45dはいずれも、テープロール18A~18Dから引き出されたテープTA~TDがサーマルヘッド15とプラテンローラ16の間を通って排出口14へ向かう搬送経路よりも下方に位置している。つまり、可動ガイド部43c,44c,45c及び可動ガイド部43d,44d,45dが、テープTA~TDの搬送経路の両側から退避した状態にある。
【0064】
下部筐体11の内部には、可動部材43,44,45の動作状態を検知するテープ幅検知スイッチ50(図9参照)が設けられている。テープ幅検知スイッチ50は可動ガイドユニットU1の下方に配置されており、可動ガイドユニットU1における被押圧部43b,44b,45bのそれぞれの下方に、テープ幅検知スイッチ50を構成する3つのスイッチ軸51,52,53が位置している。被押圧部43b,44b,45bをZ軸方向で下げる方向に可動部材43,44,45のいずれかが揺動すると、これに対応していずれかのスイッチ軸51,52,53が可動部材43,44,45により押圧されて、テープ幅検知スイッチ50で検知される。
【0065】
テープ幅検知スイッチ50での検知信号は、印刷装置10が備える制御部に送信される。テープ幅検知スイッチ50からの検知信号に基づき、制御部は、4種類のテープロール18A~18Dのうちいずれが印刷装置10に装着されているかを識別する。そして、識別されたテープ幅に基づいて、サーマルヘッド15の発熱制御や、プラテンローラ16の駆動制御を行う。
【0066】
以上のように構成された印刷装置10の動作と機能について説明する。図7から図11は、12mm幅のテープTBを巻回したテープロール18Bを印刷装置10に装着する場合を示している。
【0067】
まず、図7及び図9に示すように、媒体支持軸20をテープロール18Bの芯材17Bの内側に挿入し、使用するテープ幅が12mmであることを示す識別表示24Bを上に向ける。このとき、識別表示24B(第2面23B)と同じ周方向位置にある一組のロール保持部26が上方に向けて突出し、非円形軸部22のうち第2面23Bとは反対側の第4面23Dに設けた一組の押圧部30が下方に向けて突出する。テープロール18Bの自重などにより芯材17の内周面が円形軸部21の外周面上に支持されると、一組のロール保持部26によってテープロール18Bの両側が挟まれ、媒体支持軸20に対するX軸方向へのテープロール18Bの移動が規制された状態になる。
【0068】
続いて、上部筐体12を開いた開放状態の印刷装置10に対して、テープロール18B及び媒体支持軸20を取り付ける。図8に示すように、テープロール18Bを支持した状態の媒体支持軸20をZ軸方向で下方に移動させて、一対の非円形軸部22をそれぞれ、開口部35dを通して一対の軸支持部35に挿入する。非円形軸部22の第4面23Dが底壁35cに当接すると、それ以上の媒体支持軸20の挿入が規制される。各軸支持部35へ各非円形軸部22を挿入したら、上部筐体12を閉じて印刷装置10を閉塞状態(図1)にする。
【0069】
四角柱形状の非円形軸部22が箱型の軸支持部35に嵌合すると共に、円形軸部21が下部筐体11の内側に収まることにより、媒体支持軸20は、X軸方向に延びる軸線を中心とする回転と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各方向への移動とが、いずれも規制される。より詳しくは、識別表示24B(第2面23B)を上向きにして装着した場合には、各非円形軸部22の第1面23Aと第3面23Cが各軸支持部35の一対の前後壁35aに当接してY軸方向の位置が定まる。また、各非円形軸部22の第4面23Dが各軸支持部35の底壁35cに当接することで、Z軸方向の位置が定まる。さらに上部筐体12を閉じて合わせ面12dが各非円形軸部22の第2面23Bに当接することで、開口部35dからZ軸方向の上方へ向けての各非円形軸部22の離脱が規制される。
【0070】
このように固定的に取り付けられた媒体支持軸20に対して、テープロール18Bは、円形軸部21の外周面に対する芯材17Bの接触箇所(一組のロール保持部26の間に位置する線状の領域)で支えられながら、回転可能に支持される。円形軸部21と芯材17の接触箇所の両側には、テープTBの幅である12mmに対応する間隔で一組のロール保持部26が上方に向けて突出しており、この一組のロール保持部26によって挟まれることにより、テープロール18BはX軸方向への移動が規制されて、ぶれずに安定した回転を行うことができる。
【0071】
図1に示すように、第2面23Bを上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると、開口部35dを通して識別表示24Bを外部から視認することができる。これにより、テープTB(テープロール18B)を選択して印刷装置10に装着した状態にあることを、ユーザが視覚的に識別できる。
【0072】
図7に示すように、テープロール18Bを印刷装置10に装着する際には、テープTBの先端がサーマルヘッド15に達する程度まで引き出しておく。印刷装置10への媒体支持軸20の取り付けに伴って媒体ガイド機構40が動作して、テープロール18Bから引き出されたテープTBが媒体ガイド機構40によって適切に案内されるようになる。
【0073】
より詳しくは、第2面23B(識別表示24B)を上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると(図8参照)、一対の非円形軸部22からZ軸方向の下方に突出する一組の押圧部30が、X軸方向で同じ間隔を有する一組の被押圧部43bに当接して下方へ押し込む(図10参照)。すると、一組の可動部材43がそれぞれガイド支持軸46を中心として揺動し、一組の可動ガイド部43cと一組の可動ガイド部43dがそれぞれZ軸方向で上方に移動する。
【0074】
媒体ガイド機構40の初期状態(図9)では、一組の可動ガイド部43cと一組の可動ガイド部43dはいずれも、テープロール18Bから引き出されて排出口14に進むテープTBの搬送経路よりも下方に退避している。そして、媒体支持軸20の取り付けに伴う一組の押圧部30による押し込みの結果として一組の可動部材43が揺動すると、一組の可動ガイド部43cと一組の可動ガイド部43dがいずれも、Z軸方向でテープTBの搬送経路と同じ高さ位置(搬送経路の両側)まで上昇する(図10及び図11参照)。これにより、X軸方向で、一組の固定ガイド部41aの内側に一組の可動ガイド部43cが進出し、一組の固定ガイド部42aの内側に一組の可動ガイド部43dが進出する(図8参照)。
【0075】
一組の可動ガイド部43cのX軸方向の間隔と、一組の可動ガイド部43dのX軸方向の間隔はそれぞれ、テープTBの幅である12mmに対応するので、テープロール18Bから引き出されたテープTBの両側を各組の可動ガイド部43c,43dによって案内し、X軸方向でのテープTBの位置を安定させながら搬送することができる。特に、可動ガイド部43cと可動ガイド部43dは、テープTBの搬送方向であるY軸方向でサーマルヘッド15の両側に配置されているため、サーマルヘッド15とプラテンローラ16の間を搬送されるテープTBを、斜行などを防いで高精度に案内することができる。
【0076】
また、媒体支持軸20の取り付けに伴う可動ガイドユニットU1の可動部材43の揺動によって、スイッチ軸51が押し込まれる(図10参照)。スイッチ軸51の押し込みに応じた信号がテープ幅検知スイッチ50から制御部に送信され、制御部は、テープロール18Bが印刷装置10に装着されたと認識する。つまり、テープロール18Bが装着された状態であることを、開口部35dを通した識別表示24Bの視認によってユーザが識別できると共に、テープ幅検知スイッチ50を介した検知によって印刷装置10の制御部においても識別できる。
【0077】
印刷装置10で使用する被印刷媒体のテープ幅を変更する場合には、媒体支持軸20の取り付け角度を変更する。媒体支持軸20の取り付け角度の変更に媒体ガイド機構40が連動して、選択したテープ幅に対応した案内状態に変化する。
【0078】
例えば、図12及び図13は、印刷装置10で9mm幅のテープTCを用いる場合を示している。この場合、テープロール18Cにおける芯材17Cの内側に媒体支持軸20を挿入し、使用するテープ幅が9mmであることを示す識別表示24Cを上に向ける。すると、識別表示24C(第3面23C)と同じ周方向位置にある一組のロール保持部27が上方に向けて突出し、非円形軸部22のうち第3面23Cとは反対側の第1面23Aに設けた一組の押圧部31が下方に向けて突出する。芯材17Cの内周面が円形軸部21の外周面上に支持されると共に、一組のロール保持部27によってテープロール18Cの両側が挟まれ、媒体支持軸20に対するX軸方向へのテープロール18Cの移動が規制された状態になる。
【0079】
上部筐体12を開いた開放状態の印刷装置10に対して、図12に示す取り付け角度で媒体支持軸20及びテープロール18Cを取り付ける。上述したテープロール18Bの取り付けの場合と同様に、四角柱形状の非円形軸部22が箱型の軸支持部35に嵌合することで、媒体支持軸20は、X軸方向に延びる軸線を中心とする回転と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各方向への移動が、いずれも規制される。
【0080】
媒体支持軸20における一対の非円形軸部22は、X軸方向に対して垂直な断面形状が正方形であるため、軸支持部35に対する取り付け角度を90度ずつ変更することが可能であり、4つの取り付け角度のいずれでも、回転や移動が規制された固定状態で安定して支持させることができる。
【0081】
テープロール18Cは、円形軸部21の外周面に対する芯材17の接触箇所(一組のロール保持部27の間に位置する線状の領域)で支えられながら、回転可能に支持される。また、テープTCの幅である9mmに対応する間隔で配した一組のロール保持部27によって挟まれることにより、テープロール18CはX軸方向への移動が規制されて、ぶれずに安定した回転を行うことができる。
【0082】
第3面23C(識別表示24C)を上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると、開口部35dを通して識別表示24Cが視認される。これにより、テープTC(テープロール18C)を選択して印刷装置10に装着した状態にあることを、ユーザが視覚的に識別できる。
【0083】
第3面23C(識別表示24C)を上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると、一対の非円形軸部22からZ軸方向の下方に突出する一組の押圧部31が、X軸方向で同じ間隔を有する一組の被押圧部44bに当接して下方へ押し込む。
【0084】
一組の被押圧部44bが下方に押圧されると、一組の可動部材44がそれぞれガイド支持軸46を中心として揺動し、一組の可動ガイド部44cと一組の可動ガイド部44dがそれぞれZ軸方向で上方に移動する。その結果、一組の可動ガイド部44cと一組の可動ガイド部44dがいずれも、Z軸方向でテープTCの搬送経路と同じ高さ位置(搬送経路の両側)まで上昇する。そして、X軸方向で、一組の固定ガイド部41aの内側に一組の可動ガイド部44cが進出し、一組の固定ガイド部42aの内側に一組の可動ガイド部44dが進出する(図12参照)。
【0085】
一組の可動ガイド部44cのX軸方向の間隔と、一組の可動ガイド部44dのX軸方向の間隔はそれぞれ、テープTCの幅である9mmに対応するので、テープロール18Cから引き出されたテープTCの両側を各組の可動ガイド部44c,44dによって案内し、X軸方向でのテープTCの位置を安定させながら搬送することができる。特に、可動ガイド部44cと可動ガイド部44dは、テープTCの搬送方向であるY軸方向でサーマルヘッド15の両側に配置されているため、サーマルヘッド15とプラテンローラ16の間を搬送されるテープTCを、斜行などを防いで高精度に案内することができる。
【0086】
また、媒体支持軸20の取り付けに伴う可動ガイドユニットU1の可動部材44の揺動によって、スイッチ軸52が押し込まれる。スイッチ軸52の押し込みに応じた信号がテープ幅検知スイッチ50から制御部に送信され、制御部は、テープロール18Cが印刷装置10に装着されたと認識する。
【0087】
印刷装置10で6mm幅のテープTDを用いる場合については図示を省略しているが、印刷装置10へのテープロール18Dの装着は、上述したテープロール18B,18Cと同様の手順で行う。
【0088】
まず、テープロール18Dにおける芯材17Dの内側に媒体支持軸20を挿入し、使用するテープ幅が6mmであることを示す識別表示24Dを上に向ける。すると、識別表示24D(第4面23D)と同じ周方向位置にある一組のロール保持部28が上方に向けて突出し、非円形軸部22のうち第4面23Dとは反対側の第2面23Bに設けた一組の押圧部32が下方に向けて突出する(図6参照)。芯材17Dの内周面が円形軸部21の外周面上に支持されると共に、一組のロール保持部28によってテープロール18Dの両側が挟まれ、媒体支持軸20に対するX軸方向へのテープロール18Dの移動が規制された状態になる。
【0089】
上部筐体12を開いた開放状態の印刷装置10に対して、識別表示24D(第4面23D)を上向きにした取り付け角度で、媒体支持軸20及びテープロール18Dを取り付ける。四角柱形状の非円形軸部22が箱型の軸支持部35に嵌合することで、媒体支持軸20は、X軸方向に延びる軸線を中心とする回転と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各方向への移動が、いずれも規制される。
【0090】
テープロール18Dは、円形軸部21の外周面に対する芯材17Dの接触箇所(一組のロール保持部28の間に位置する線状の領域)で支えられながら、回転可能に支持される。また、テープTDの幅である6mmに対応する間隔で配した一組のロール保持部28によって挟まれることにより、テープロール18DはX軸方向への移動が規制されて、ぶれずに安定した回転を行うことができる。
【0091】
第4面23D(識別表示24D)を上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると、開口部35dを通して識別表示24Dが視認される。これにより、テープTD(テープロール18D)を選択して印刷装置10に装着した状態にあることを、ユーザが視覚的に識別できる。
【0092】
第4面23D(識別表示24D)を上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると、一対の非円形軸部22からZ軸方向の下方に突出する一組の押圧部32が、X軸方向で同じ間隔を有する一組の被押圧部45bに当接して下方へ押し込む。一組の被押圧部45bが下方に押圧されると、一組の可動部材45がそれぞれガイド支持軸46を中心として揺動し、一組の可動ガイド部45cと一組の可動ガイド部45dがZ軸方向で上方に移動する。その結果、一組の可動ガイド部45cと一組の可動ガイド部45dがいずれも、Z軸方向でテープTDの搬送経路と同じ高さ位置(搬送経路の両側)まで上昇する。そして、X軸方向で、一組の固定ガイド部41aの内側に一組の可動ガイド部45cが進出し、一組の固定ガイド部42aの内側に一組の可動ガイド部45dが進出する。
【0093】
一組の可動ガイド部45cのX軸方向の間隔と、一組の可動ガイド部45dのX軸方向の間隔はそれぞれ、テープTDの幅である6mmに対応するので、テープロール18Dから引き出されたテープTDの両側を各組の可動ガイド部45c,45dによって案内し、X軸方向でのテープTDの位置を安定させながら搬送することができる。特に、可動ガイド部45cと可動ガイド部45dは、テープTDの搬送方向であるY軸方向でサーマルヘッド15の両側に配置されているため、サーマルヘッド15とプラテンローラ16の間を搬送されるテープTDを、斜行などを防いで高精度に案内することができる。
【0094】
また、媒体支持軸20の取り付けに伴う可動ガイドユニットU1の可動部材45の揺動によって、スイッチ軸53が押し込まれる。スイッチ軸53の押し込みに応じた信号がテープ幅検知スイッチ50から制御部に送信され、制御部は、テープロール18Dが印刷装置10に装着されたと認識する。
【0095】
図14は、印刷装置10で18mm幅のテープTAを用いる場合を示している。この場合、テープロール18Aにおける芯材17Aの内側に媒体支持軸20を挿入し、使用するテープ幅がテープロール18mmであることを示す識別表示24Aを上に向ける。すると、識別表示24A(第1面23A)と同じ周方向位置にある一組のロール保持部25が上方に向けて突出する。芯材17Aの内周面が円形軸部21の外周面上に支持されると共に、一組のロール保持部25によってテープロール18Aの両側が挟まれ、媒体支持軸20に対するX軸方向へのテープロール18Aの移動が規制された状態になる。
【0096】
上部筐体12を開いた開放状態の印刷装置10に対して、識別表示24A(第1面23A)を上向きにした取り付け角度で、媒体支持軸20及びテープロール18Aを取り付ける。四角柱形状の非円形軸部22が箱型の軸支持部35に嵌合することで、媒体支持軸20は、X軸方向に延びる軸線を中心とする回転と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各方向への移動が、いずれも規制される。
【0097】
テープロール18Aは、円形軸部21の外周面に対する芯材17Aの接触箇所(一組のロール保持部25の間に位置する線状の領域)で支えられながら、回転可能に支持される。また、テープTAの幅である18mmに対応する間隔で配した一組のロール保持部25によって挟まれることにより、テープロール18AはX軸方向への移動が規制されて、ぶれずに安定した回転を行うことができる。
【0098】
第1面23A(識別表示24A)を上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると、開口部35dを通して識別表示24Aが視認される。これにより、テープTA(テープロール18A)を選択して印刷装置10に装着した状態にあることを、ユーザが視覚的に識別できる。
【0099】
非円形軸部22のうち第1面23Aとは反対側の第3面23Cには、外径側に突出する突起が設けられていない。従って、識別表示24Aを上向きにして媒体支持軸20を印刷装置10に取り付けると、上述した媒体支持軸20の3つの取り付け角度(テープロール18B用、テープロール18C用、テープロール18D用のそれぞれの取り付け角度)とは異なり、非円形軸部22から下方へ突出する部分が存在しない状態になる。その結果、各可動ガイドユニットU1,U2における被押圧部43b,44b,45bはいずれも媒体支持軸20からの押圧を受けず、可動部材43,44,45が揺動されないため、図14に示すように媒体ガイド機構40は初期状態を維持する。
【0100】
可動ガイドユニットU1の可動部材43,44,45のいずれも揺動されず、全てのスイッチ軸51,52,53が押し込まれない状態(初期状態)にテープ幅検知スイッチ50がある場合、制御部は、テープロール18Aが印刷装置10に装着されたと認識する。なお、この場合は、テープ幅検知スイッチ50の状態がテープロール18A~18Dの非装着時と同じであるため、下部筐体11と上部筐体12の閉塞検知や、軸支持部35への媒体支持軸20の取り付け検知などの情報と併せて、テープロール18Aの装着を判定するとよい。
【0101】
媒体ガイド機構40の初期状態では、X軸方向で、各組の固定ガイド部41a,固定ガイド部42aの内側に、可動部材43,44,45の可動ガイド部43c,44c,45cと可動ガイド部43d,44d,45dのいずれも進出しない。そして、下部筐体11に固定的に設けた各組の固定ガイド部41a,42aはいずれも、Z軸方向でテープTAの搬送経路と同じ高さ位置(搬送経路の両側)に配されている。
【0102】
一組の固定ガイド部41aのX軸方向の間隔と、一組の固定ガイド部42aのX軸方向の間隔はそれぞれ、テープTAの幅である18mmに対応するので、図14の状態では、テープロール18Aから引き出されたテープTAの両側を各組の固定ガイド部41a,42aによって案内し、X軸方向でのテープTAの位置を安定させながら搬送することができる。特に、固定ガイド部41aと固定ガイド部42aは、テープTAの搬送方向であるY軸方向でサーマルヘッド15の両側に配置されているため、サーマルヘッド15とプラテンローラ16の間を搬送されるテープTAを、斜行などを防いで高精度に案内することができる。
【0103】
以上に述べた媒体支持軸20の4つの取り付け角度に対応しない形態でテープロール18A~18Dの組み付けを行おうとすると、テープロール18A~18Dの支持や印刷装置10への組み付けが適切に行われないので、不適切な状態にあることをユーザに気づかせることができる。
【0104】
例えば、テープロール18Aの装着に際し、第1面23A以外の面を上向きにした媒体支持軸20の取り付け角度を選択すると、テープロール18Aの幅よりもX軸方向の間隔が小さい各組のロール保持部26,27,28のいずれかが、芯材17Aの内周面に当接して、円形軸部21の外周面上への芯材17Aの支持が妨げられる。
【0105】
テープロール18Dの装着に際し、第4面23D以外の面を上向きにした媒体支持軸20の取り付け角度を選択すると、テープロール18Dの幅よりもX軸方向の間隔が大きい各組のロール保持部25,26,27のいずれかの間にテープロール18Dが位置する。その結果、テープロール18Dの位置がX軸方向で安定せずに、がたつきを生じてしまう。
【0106】
テープロール18Bやテープロール18Cの装着についても同様であり、媒体支持軸20への誤装着状態(本来の取り付け角度と一致していない状態)では、X軸方向の間隔が小さい各組のロール保持部27,28が芯材17B,17Cの内周面と干渉したり、X軸方向の間隔が大きい各組のロール保持部25,26との間でがたつきを生じたりする。
【0107】
以上のような不適切な状態をユーザに認知させることで、装着を選択するテープロール18A~18Dと、媒体支持軸20の取り付け角度との関係が適切になるように、ユーザを誘導することができる。媒体支持軸20の取り付け角度の変更に連動して媒体ガイド機構40が動作を行うので、ユーザに正しい媒体支持軸20の取り付け角度を選択させることで、媒体ガイド機構40によるテープTA~TDの案内状態も適切に管理することができる。
【0108】
以上のように、印刷装置10は、下部筐体11及び上部筐体12に対して複数(4つ)の取り付け角度を選択して取り付け可能で、取り付け角度に応じて支持対象のテープロール18A~18Dを変更する媒体支持軸20を備える。また、媒体支持軸20の取り付け角度の変更に連動して、テープTA~TDの案内に用いる複数種のガイド部(固定ガイド部41a,42a、可動ガイド部43c,43d、可動ガイド部44c,44d、可動ガイド部45c,45d)を変更する媒体ガイド機構40を備える。
【0109】
印刷装置10では、下部筐体11と上部筐体12と媒体支持軸20と媒体ガイド機構40がいずれも、全ての種類のテープTA~TDやテープロール18A~18Dの支持及び案内に共通して用いられる共用構造であるため、幅が異なる複数種のテープに対応して複数種の専用の調整パーツを組み替えて装着するような手間やコストがかからない。媒体ガイド機構40は下部筐体11内に組み込まれており、媒体支持軸20は選択したテープロール18A~18Dと共に常時装着されるので、交換後の調整パーツを紛失するおそれがなく、多様な調整パーツの保管場所を確保する必要もない。
【0110】
複数種のテープロール18A~18Dの交換に際してユーザが操作するのは、4つの位置から選択される媒体支持軸20の取り付け角度の変更のみであるから、複雑な調整が不要で操作が容易であり、時間や手間をかけずに簡単にテープロール18A~18Dの交換を行うことができる。媒体支持軸20の取り付け角度は、開口部35dを通して印刷装置10の外部から視認可能な識別表示24A~24Dにより参照可能なので、適切な取り付け角度を容易且つ確実に選択できる。また、装着しようとするテープロール18A~18Dに対して、媒体支持軸20の取り付け角度が不適切である場合には、上述のような物理的な装着エラーを生じさせる構造にしているため、媒体支持軸20の誤装着が生じるおそれも低い。
【0111】
下部筐体11の軸支持部35に対する媒体支持軸20の取り付けは、下方に向けてZ軸方向に移動させるだけで完了するので、複数の異なる方向へ移動させたり、複合的な動作を行わせたりする必要がなく、手間や熟練を要さずに簡単に行える。また、上部筐体112を閉じて閉塞状態にすることで、開口部35dからの非円形軸部22の離脱が規制されるので、複雑な抜け止め構造や作業の手間を要さずに、簡単且つ確実に媒体支持軸20の取り付けを完了できる。
【0112】
媒体支持軸20は、テープロール18A~18Dを回転可能に支持する手段(円形軸部21)と、下部筐体11及び上部筐体12に対して複数の取り付け角度で固定的に取り付けるための手段(非円形軸部22)と、X軸方向でのテープロール18A~18Dの位置を定める手段(ロール保持部25~28)と、媒体ガイド機構40を連動して動作させるための手段(押圧部30,31,32)と、を備えている。このような複合的な機能を媒体支持軸20に持たせることで、少ない部品点数で効率的に、複数種のテープロール18A~18Dの装着を実現させることができる。
【0113】
印刷装置10では、媒体支持軸20が円形軸部21の両側に一対の非円形軸部22を有し、下部筐体11の一対の軸支持部35によって一対の非円形軸部22を支持している。この構造は、媒体支持軸20の支持安定性や支持強度に優れている。
【0114】
媒体ガイド機構40では、全ての可動部材43,44,45を共通のガイド支持軸46により軸支し、可動部材43,44,45の揺動によって案内可能なテープ幅を変更させるので、シンプルで動作の信頼性が高い構造になっている。また、軸支持部35に対して媒体支持軸20を挿入する際のZ軸方向への力を、その下方に位置する被押圧部43b,44b,45bへ直接的に伝達するので、可動部材43,44,45を揺動させる際の力の伝達ロスが生じにくい。
【0115】
媒体ガイド機構40では、2つの可動ガイドユニットU1,U2における各組の可動部材43,44,45が独立して揺動する構造としている。そして、媒体支持軸20の側に3組の押圧部30,31,32を設けて、各組の可動部材43,44,45を個別に押し込むことで、2つの可動ガイドユニットU1,U2の動作を同期させている。この構成によれば、両側の可動ガイドユニットU1,U2を連動させるための複雑な機構を要さず、媒体ガイド機構40をシンプル且つ省スペースなものにできるという利点がある。また、媒体支持軸20から両側の可動ガイドユニットU1,U2に伝わる押圧時の負荷が均等であり、余分なモーメントが生じにくいので、媒体ガイド機構40における動作の安定性や耐久性などの点でも優れている。
【0116】
媒体ガイド機構40では、4種類のテープTA~TDの案内を行う4種類のガイド部として、1種類の固定タイプのガイド部(固定ガイド部41a,42a)と、3種類の可動タイプのガイド部(可動ガイド部43c,43d、可動ガイド部44c,44d、可動ガイド部45c,45d)とを用いている。最も幅が広いテープTAを案内するためのガイド部は、それよりも幅が狭いテープTB,TC,TDに対して干渉するおそれがないので、テープ搬送経路の両側に常時位置していても支障がない。従って、この部分を固定タイプの固定ガイド部41a,42aにすることで、媒体ガイド機構40における動作箇所を少なくしてシンプルな構成にでき、コストダウンやスペース効率の向上を図ることができる。
【0117】
なお、上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0118】
例えば、上記実施形態は、印刷機能を備える印刷装置10への適用例であるが、印刷機能を備えずに印刷媒体を保持する用途の媒体アダプタ(テープロールを交換可能なテープアダプタなど)として適用することも可能である。具体的には、上記実施形態における下部筐体11及び上部筐体12に相当する筐体の内部にサーマルヘッドを備えず、当該筐体が媒体アダプタのケース部分(カートリッジ)を構成するようにする。そして、この媒体アダプタを印刷装置のアダプタ収容部に装着して、媒体アダプタに収容したテープロールから引き出したテープを印刷装置の印字部まで搬送する。このような媒体アダプタの態様においても、本発明を適用することで、印刷装置10について上述したものと同様の効果を得ることができる。
【0119】
上記実施形態とは異なり、一組の可動部材43、一組の可動部材44、一組の可動部材45をそれぞれガイド支持軸46以外の箇所で接続させて、各組の可動部材が連動して揺動するように構成してもよい。この場合、媒体支持軸20に設ける押圧部30,31,32をそれぞれ一つだけにし、媒体ガイド機構40に設ける被押圧部43b,44b,45bをそれぞれ一つだけにする(片方の可動部材43,44,45だけに被押圧部43b,44b,45bを設ける)ことも可能である。
【0120】
上記実施形態とは異なり、媒体支持軸20が軸方向の一端にのみ非円形軸部22を有する構成にすることも可能である。この場合、下部筐体11において、一対の側壁11aのうち一方だけに軸支持部35を設け、他方の側壁11aには、軸支持部35に代えて、円形軸部21をZ軸方向に着脱可能な支持構造を備えるとよい。支持の安定性や強度確保の観点では、上記実施形態のように軸方向の両端に非円形軸部22を備えることが好ましいが、媒体支持軸20を回転規制しながら支持するという点にフォーカスすれば、このような変形例でも成立する。
【0121】
媒体支持軸20に設ける非円形軸部の断面形状を変更することも可能である。媒体支持軸20やテープロール18A~18Dの装着作業性や、印刷装置10の筐体構造を勘案した場合、上記実施形態のように、媒体支持軸20をその軸方向と垂直な方向(Z軸方向)へ着脱させることが好ましい。但し、媒体支持軸20を軸方向(X軸方向)に着脱させることが許容される場合には、矩形状断面の非円形軸部22に代えて、断面形状が十字状の非円形軸部などを用いることも可能である。
【0122】
また、媒体支持軸20における非円形軸部の断面形状は、支持及び案内を行うテープ幅の種類(数)によっても変更が可能である。上記実施形態では、4種類の幅のテープTA~TD及びテープロール18A~18Dに対応して、4つの取り付け角度を選択できる正方形断面の非円形軸部22を用いている。これとは異なり、3種類の幅のテープ及びテープロールの支持と案内を行う場合には、非円形軸部を三角の断面形状にして、3つの取り付け角度を選択するように構成してもよい。また、2種類の幅のテープ及びテープロールの支持と案内を行う場合には、2つの取り付け角度を選択できる断面形状(正方形ではない長方形断面、一対の平行直線部を含む長円状断面、楕円形断面など)の非円形軸部を用いることも可能である。
【0123】
なお、5種類以上の幅のテープ及びテープロールの支持と案内に対応するべく、周方向に5つ以上の外面を有して5以上の取り付け角度を選択可能なタイプの非円形軸部を採用することも可能である。但し、支持及び案内の対象となるテープ幅の種類が増えると、媒体支持軸における複数の取り付け角度の間隔が狭くなり、これに応じて、媒体支持軸の周方向でのロール保持部の配置密度が高くなる。その結果、ロール保持部がテープロールの芯材に干渉するなどの物理的な装着エラーが生じる可能性が高くなる。また、周方向での外面の数が増えると非円形軸部の断面形状が円形に近づくので、固定状態での安定した支持を行いにくくなる。上記実施形態では、このような諸条件に基づいて最適に構成できるものとして、4種類の幅のテープTA~TD及びテープロール18A~18Dに対応する形状の媒体支持軸20を採用している。
【0124】
支持及び案内を行うテープ幅の数を変更する場合、媒体ガイド機構40では、X軸方向に配する可動部材の数を変更することで対応可能である。例えば、3種類の幅のテープ及びテープロールの支持と案内を行う場合には、上記実施形態で各可動ガイドユニットU1,U2が備えている3つの可動部材43,44,45の数を減らして、各可動ガイドユニットU1,U2が2つの可動部材を備えるように変更すればよい。
【0125】
上記実施形態では、最も幅が広いテープTAを案内するガイド部として固定ガイド部41a,42aを備えている。これとは異なり、最も幅が広いテープTAを案内するガイド部として、可動ガイド部43c,43d(44c,44d,45c,45d)と同様の可動ガイド部を用いてもよい。換言すれば、複数種のガイド部を全て可動タイプのガイド部にすることも可能である。この構成によれば、特定のテープ幅に対応する固定ガイド部を筐体側に設けないことにより、筐体の汎用性を高めることができる。
【0126】
上記実施形態では、媒体ガイド機構40における複数種のガイド部がそれぞれ、Y軸方向でサーマルヘッド15を挟んだ2箇所に配置されている。具体的には、テープTAの案内用に固定ガイド部41aと固定ガイド部42aを備え、テープTBの案内用に可動ガイド部43cと可動ガイド部43dを備え、テープTCの案内用に可動ガイド部44cと可動ガイド部44dを備え、テープTDの案内用に可動ガイド部45cと可動ガイド部45dを備えている。これにより、サーマルヘッド15の前後で各テープTA,TB,TC,TDを案内して、高精度なテープ搬送を実現している。
【0127】
しかし、上記実施形態とは異なり、媒体ガイド機構において、被印刷媒体の搬送方向で一箇所だけにガイド部を配するような構成も選択可能である。例えば、サーマルヘッドを筐体内部に備えない媒体アダプタとして適用する場合、排出口14に近い一箇所だけにガイド部を備えてもよい。
【0128】
上記実施形態では、下部筐体11と上部筐体12をヒンジ部13で開閉可能に接続している。印刷装置10では、下部筐体11側にサーマルヘッド15を設け、上部筐体12側にプラテンローラ16を設けており、これらの位置関係をある程度精密に管理する必要があるため、下部筐体11と上部筐体12が完全に分離しないようにヒンジ部13で接続することが好ましい。これに対し、本発明を媒体アダプタとして適用する場合などで、下部筐体11と上部筐体12をZ軸方向に分離可能な構造にすることも可能である。少なくとも、媒体支持軸20と媒体ガイド機構40を共通の下部筐体11に取り付けることで、下部筐体11を基準として媒体支持軸20と媒体ガイド機構40の相対的な位置精度を確保することができる。
【0129】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
長尺の被印刷媒体を筒状に巻回した媒体ロールを収容する筐体と、
前記筐体に対して軸回りで複数の異なる取り付け角度を選択して取り付け可能で、前記複数の取り付け角度で、前記被印刷媒体の幅が異なる複数種の前記媒体ロールを回転可能に支持する媒体支持軸と、
案内可能な前記被印刷媒体の幅が異なる複数種のガイド部を有し、前記筐体に対する前記媒体支持軸の前記取り付け角度の変更に応じて、前記複数種のガイド部のうち前記被印刷媒体の案内に用いるガイド部を変更する媒体ガイド機構と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
[付記2]
前記媒体支持軸は、円形断面の円形軸部と非円形断面の非円形軸部とを同軸上に有し、前記円形軸部の外周面上に前記媒体ロールを回転可能に支持し、
前記円形軸部の周方向の異なる位置に、前記媒体支持軸の軸方向における複数種の前記媒体ロールのそれぞれの位置を定める複数種のロール保持部を有し、
前記筐体は、前記非円形軸部を前記複数の取り付け角度で支持する軸支持部を有することを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
[付記3]
前記媒体ガイド機構は、前記媒体支持軸の軸方向に位置を異ならせて前記筐体に揺動可能に支持される少なくとも一組の可動部材を備え、
前記複数種のガイド部は、前記一組の可動部材に設けられて前記軸方向に間隔を空けて対向する可動ガイド部を含み、
前記一組の可動部材の少なくとも一方に、前記媒体支持軸の前記複数の取り付け角度の一つで、前記媒体支持軸に設けた押圧部により押圧される被押圧部を有し、
前記被押圧部が押圧されない状態で、前記媒体ロールから引き出された前記被印刷媒体の搬送経路の両側から前記可動ガイド部が退避し、
前記被押圧部が前記押圧部により押圧されて前記可動部材が揺動した状態で、前記被印刷媒体の搬送経路の両側に前記可動ガイド部が位置することを特徴とする付記2に記載の印刷装置。
[付記4]
前記媒体ガイド機構は、前記可動ガイド部の間隔が異なる複数組の前記可動部材を有し、前記媒体支持軸は、複数組のそれぞれの前記可動部材の前記被押圧部に対応する複数の前記押圧部を有していることを特徴とする付記3に記載の印刷装置。
[付記5]
前記媒体ガイド機構の前記複数種のガイド部は、前記筐体に固定的に設けられ、前記媒体支持軸の軸方向に前記可動ガイド部よりも広い間隔を空けて対向し、前記被印刷媒体の搬送経路の両側に位置する固定ガイド部を含むことを特徴とする付記3又は4に記載の印刷装置。
[付記6]
前記媒体支持軸は、前記円形軸部の軸方向の両側に一対の前記非円形軸部を有し、
前記筐体は、一対の前記非円形軸部を支持する一対の前記軸支持部を有し、
一対の前記軸支持部に、前記一組の可動部材のそれぞれに設けた前記被押圧部を押圧する少なくとも一組の前記押圧部を有することを特徴とする付記3から5のいずれかに記載の印刷装置。
[付記7]
前記非円形軸部は、前記軸支持部に対して4つの前記取り付け角度を選択可能な四角柱形状であることを特徴とする付記2から6のいずれかに記載の印刷装置。
[付記8]
前記筐体は前記媒体支持軸の軸方向に対して交差する方向に開閉可能であり、
前記軸支持部は前記媒体支持軸の軸方向に突出して前記筐体に設けられ、前記筐体の開放状態で前記媒体支持軸の軸方向と垂直な方向に前記非円形軸部を着脱可能な開口部を有し、
前記筐体の閉塞状態で、前記開口部からの前記非円形軸部の離脱が前記筐体によって規制され、且つ前記開口部に前記非円形軸部の一部が露出することを特徴とする付記2から7のいずれかに記載の印刷装置。
[付記9]
前記非円形軸部の外面に、前記複数の取り付け角度のそれぞれで前記開口部を通して視認される複数種の識別表示を有することを特徴とする付記8に記載の印刷装置。
[付記10]
長尺の被印刷媒体を筒状に巻回した媒体ロールを収容する筐体と、
前記筐体に対して軸回りで複数の異なる取り付け角度を選択して取り付け可能で、前記複数の取り付け角度で、前記被印刷媒体の幅が異なる複数種の前記媒体ロールを回転可能に支持する媒体支持軸と、
案内可能な前記被印刷媒体の幅が異なる複数種のガイド部を有し、前記筐体に対する前記媒体支持軸の取り付け角度の変更に応じて、前記複数種のガイド部のうち前記被印刷媒体の案内に用いるガイド部を変更する媒体ガイド機構と、
を備えることを特徴とする媒体アダプタ。
【符号の説明】
【0130】
10 印刷装置
11 下部筐体
12 上部筐体
14 排出口
15 サーマルヘッド
16 プラテンローラ
17(17A~17D) 芯材
18(18A~18D) テープロール(媒体ロール)
20 媒体支持軸
21 円形軸部
22 非円形軸部
23A 第1面
23B 第2面
23C 第3面
23D 第4面
24A~24D 識別表示
25~28 ロール保持部
30~32 押圧部
35 軸支持部
35d 開口部
40 媒体ガイド機構
41、42 固定部材
41a、42a 固定ガイド部(ガイド部)
43~45 可動部材
43b~45b 被押圧部
43c~45c 可動ガイド部(ガイド部)
43d~45d 可動ガイド部(ガイド部)
46 ガイド支持軸
50 テープ幅検知スイッチ
T(TA~TD) テープ(被印刷媒体)
U1、U2 可動ガイドユニット
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