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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20241008BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01S1/68
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020164413
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056585
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】高原 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】西垣 英則
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-073477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0170869(US,A1)
【文献】国際公開第2009/113265(WO,A1)
【文献】特開2009-017321(JP,A)
【文献】特開2020-053189(JP,A)
【文献】特開2010-164443(JP,A)
【文献】特開平07-154846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
G01S 19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域の領域内における対象の位置を所定の精度で検知し、所定時間におけ前記所定領域の複数の領域ごとに、固有性を識別できない対象の位置を推定する第1手段と;
前記所定領域より広い領域内における前記対象の固有性を所定の精度で識別し、所定時間におけ前記所定領域より広い領域の複数の領域ごとに、対象が位置する領域および固有性を推定する第2手段と;
を有する通信装置と;
固有性を識別できない対象の位置の推定結果、対象が位置する領域および固有性推定結果の突合せ基づいて、所定時間における所定領域複数の領域ごとにおける、複数の対象の存在確率を推定する推定部と;
前記推定部による推定結果の突合せに基づいて、前記対象の固有性を識別する識別部と;
を有する情報処理装置と;
を具備し、
前記第1手段は、前記第2手段より低い精度で前記対象の固有性を識別し;
前記第2手段は、前記第1手段より低い精度で前記対象の位置を検知する;
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記第1手段は、前記通信装置により撮像された画像情報に基づいて、前記対象の位置を検知することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記第2手段は、前記対象からの電波情報に基づいて、当該対象の固有性を識別することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第2手段は、ビーコン情報又はRFID(Radio Frequency Identification)のタグ情報に基づいて、当該対象の固有性を識別することを特徴とする請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記推定部は、前記対象からの受信信号強度(Received Signal Strength Indication:RSSI)に基づいて、当該対象の動きを推定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記推定部は、前記通信装置により撮像されている撮像範囲と、当該通信装置との位置関係に基づいて、当該対象の動きを推定することを特徴とする請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記識別部は、前記対象の固有性の識別結果に基づいて、過去に撮像された画像情報に含まれる複数の対象の固有性を識別することを特徴とする請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記第2手段は、前記対象の動きを検出した加速度センサの結果が所定の閾値を超える場合には、当該対象との電波情報の通信間隔を短くすることを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記通信装置は、照明装置であることを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記対象は、人物であることを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間に設置された複数の照明装置が照明するエリアをカメラで撮像(撮影)する照明システムが導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-162682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような照明システムでは、例えば撮像対象を識別するためのコストの負担が大きくなるため、低コストで撮像対象を的確に識別できない可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、撮像対象をより的確に識別することができる情報処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る情報処理システムは、所定領域の領域内における対象の位置を所定の精度で検知する第1手段と、所定領域より広い領域内における対象の固有性を所定の精度で識別する第2手段と、を有する通信装置と、第1手段と第2手段とのそれぞれにおいて、対象の動きを推定する推定部と、推定部による推定結果の突合せに基づいて、対象の固有性を識別する識別部と、を有する情報処理装置と、を具備する。第1手段は、第2手段より低い精度で対象の固有性を識別する。第2手段は、第1手段より低い精度で対象の位置を検知する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮像対象をより的確に識別することができる情報処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る情報処理システムが有する通信装置の外観例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る情報処理システムの模式図である。
図3図3は、実施形態に係る情報処理システムが有する情報処理装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る推定部の処理の一例を示す図である。
図5図5は、存在確率の推定結果の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る情報処理装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態に係る情報処理システムSは、所定領域の領域内における対象20の位置を所定の精度で検知する第1手段と、所定領域より広い領域内における対象20の固有性を所定の精度で識別する第2手段と、を有する通信装置10と、第1手段と第2手段とのそれぞれにおいて、対象20の動きを推定する推定部132と、推定部132による推定結果の突合せに基づいて、対象20の固有性を識別する識別部133と、を有する情報処理装置100と、を具備する。第1手段は、第2手段より低い精度で対象20の固有性を識別する。第2手段は、第1手段より低い精度で対象20の位置を検知する。
【0010】
以下に説明する実施形態に係る第1手段は、通信装置10により撮像された画像情報に基づいて、対象20の位置を検知する。
【0011】
以下に説明する実施形態に係る第2手段は、対象20からの電波情報に基づいて、対象20の固有性を識別する。
【0012】
以下に説明する実施形態に係る第2手段は、ビーコン情報又はRFID(Radio Frequency Identification)のタグ情報に基づいて、対象20の固有性を識別する。
【0013】
以下に説明する実施形態に係る推定部132は、対象20からの受信信号強度(Received Signal Strength Indication:RSSI)に基づいて、対象20の動きを推定する。
【0014】
以下に説明する実施形態に係る推定部132は、通信装置10により撮像されている撮像範囲と、通信装置10との位置関係に基づいて、対象20の動きを推定する。
【0015】
以下に説明する実施形態に係る識別部133は、対象20の固有性の識別結果に基づいて、過去に撮像された画像情報に含まれる複数の対象20の固有性を識別する。
【0016】
以下に説明する実施形態に係る第2手段は、対象20の動きを検知した加速度センサの結果が所定の閾値を超える場合には、対象20との電波情報の通信間隔を短くする。
【0017】
以下に説明する実施形態に係る通信装置10は、照明装置である。
【0018】
以下に説明する実施形態に係る対象20は、人物である。
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明が開示する技術を限定するものではない。また、以下に示す実施形態及び変形例は、矛盾しない範囲で適宜組合せることができる。また、以下の説明において、同一構成には同一符号を付与して後出の説明を適宜省略する。
【0020】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る情報処理システムSが有する通信装置10の外観例を示す斜視図である。なお、図1では、通信装置10の一例として、照明装置を示す。図1に示すように、通信装置10は、照明部11、カメラユニット12、本体部13、通信部16(不図示)を有する。通信装置10は、本体部13が天井面へ設置され、照明部11から出力される光が照射面の一例である床面へと照射される天井直付けタイプの照明装置である。通信装置10は、例えば工場での生産ラインの監視やオフィス内での従業員の状態監視などの用途で主に屋内で使用される。
【0021】
なお、説明を分かりやすくするために、図1には、鉛直下向きを正方向とし、鉛直上向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。また、X軸は通信装置10の長さ方向に、Y軸は通信装置10の幅方向に、それぞれ沿うように図示している。かかる直交座標系は、後出の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
【0022】
照明部11は、Y軸方向に沿うように配置された、長尺状のシャーシ又は基板(不図示)上に所定の間隔で配置された複数の発光素子(不図示)を有し、シャーシとの間に発光素子が収容されるよう床面側、すなわちZ軸正方向側に拡散カバー14が設けられた照明バーである。
【0023】
拡散カバー14は、例えば、アクリルやポリカーボネートなどの透光性の材料から作られている。拡散カバー14は、フロスト処理が施されて複数の発光素子から出射される光を拡散する機能を有するようになっている。なお、拡散カバー14に適宜拡散材や着色剤を混入させてもよい。
【0024】
カメラユニット12は、遮光カバー15と、後述するカメラとを有し、照明部11のX軸負方向側に隣り合うように並んで配置される。
【0025】
本体部13は、照明部11およびカメラユニット12を保持する。また、本体部13は、通信装置10を天井その他の所定の位置に取り付けるための取付部材を兼ねる。
【0026】
遮光カバー15は、本体部13との間にカメラを覆うように本体部13のZ軸正方向側に配設される。また、遮光カバー15は、カメラのレンズと対向する位置に設けられた貫通口を有する。このような遮光カバー15を配設することで、照明部11の拡散カバー14から照射された光をカメラのレンズに入り込みにくくすることができる。
【0027】
通信部16は、他の装置とデータ通信を行う通信モジュールである。例えば、通信部16は、対象20のスマートフォンやタブレットなどの端末装置30や情報処理装置100との間で、データ通信を行う。
【0028】
次に、図2を用いて、実施形態に係る情報処理システムSについて説明する。図2は、実施形態に係る情報処理システムSの概要を示す図である。なお、以下では、情報処理システムSが屋内に導入される場合を例に挙げて説明する。
【0029】
図2に示すように、実施形態に係る情報処理システムSは、複数の通信装置10と、端末装置30と、情報処理装置100と、ビーコンサーバ200とを備える。また、図2に示す例では、各通信装置10が屋内に設置される場合を示す。
【0030】
なお、ビーコンBの情報を端末装置30が受信すると、端末装置30が情報処理装置100に送信してもよいし、端末装置30がビーコンBの情報をビーコンサーバ200に送信し、そこから情報処理装置100が取得してもよい。また、情報処理システムSにおいて、ビーコンBが単数である場合に限らず、複数設置されていてもよいものとする。
【0031】
情報処理装置100は、屋内に設置された各通信装置10を管理する装置である。例えば、情報処理装置100は、各通信装置10の照明部11の照明態様や、カメラユニット12の撮像向き、倍率などを、ネットワークNを介して遠隔で制御する。
【0032】
また、情報処理装置100は、各カメラユニット12で撮像された画像又は映像を収集し、記憶する。例えば、情報処理装置100によって収集された画像又は映像は、屋内の監視などに用いられる。
【0033】
ところで、上述のように、情報処理装置100には、各カメラユニット12で撮像された撮像データが集積される。しかしながら、従来においては、情報処理装置100によって収集された画像又は映像に映る対象20を的確に識別するには、コストの負担が大きくなる。このため、対象20を的確に識別するうえで、改善の余地があった。
【0034】
ここで、撮像データは、対象20の位置を高精度で検知(検出)できるが、対象20の固有性を所定の精度以上で識別できない場合がある。例えば、撮像データでは、複数のカメラを跨いで対象20が動くとき、次のカメラに写ったときに同一の対象20なのか特定できない場合がある。
【0035】
また、同一の対象20なのか特定するためにAIを用いると、コストの負担が大きくなる。なお、対象20の同一性を特定するためのAIの一例として、例えば、顔認証が挙げられる。なお、カメラが天井面に設置される場合など、被写体までの距離が遠くなる場合には、顔認証が難しくなり得る。この場合、コストの負担が更に大きくなり得る。
【0036】
また、実施形態に係る電波情報の一例であるビーコン情報は、対象20の固有性を高精度で識別できるが、対象20の位置を所定の精度以上で検知できない場合がある。例えば、ビーコン情報では、通信装置10それぞれにビーコン情報の通信を行えるようにしたとしても、ビーコンの電波の広がりの範囲や強度にばらつきがあるため、誤差が大きくなる。例えば、電波の範囲は、ビーコンの発信機を中心として、5メートルから10メートルほど広がる場合がある。このため、所定のカメラにより撮像された一の撮像範囲に対象20がいるか検知できない場合がある。
【0037】
そこで、実施形態に係る情報処理装置100では、撮像データとビーコン情報との双方を用いて、撮像データに写る対象20の固有性を的確に識別することとした。具体的には、実施形態に係る情報処理装置100では、撮像データから対象20の位置を検知し、ビーコン情報から対象20の固有性を識別することで、撮像データに写る対象20の固有性を的確に識別することとした。なお、以下では、撮像現場が屋内である場合について説明する。なお、撮像現場の屋内には、複数の通信装置10が等間隔で並んでいるものとする。
【0038】
以下、撮像データから対象20の位置を検知する手段を、適宜、「第1手段」とする。第1手段は、所定領域の領域内における対象20の位置を所定の精度で検知する手段である。また、以下、ビーコン情報から対象20の固有性を識別する手段を、適宜、「第2手段」とする。第2手段は、所定領域より広い領域内における対象20の固有性を所定の精度で識別する手段である。
【0039】
第1手段に係る対象20の固有性の識別精度は、第2手段より低いものとする。また、第2手段に係る対象20の位置の検知精度は、第1手段より低いものとする。
【0040】
実施形態に係る情報処理装置100は、第1手段と第2手段とのそれぞれに係る識別精度と検出精度とを双方で補完することで、対象20を的確に識別する。
【0041】
図3は、実施形態に係る情報処理装置100のブロック図である。図3に示すように、情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを備える。通信部110は、ネットワークNを介して各通信装置10とデータ通信を行う通信モジュールである。
【0042】
記憶部120は、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、又は、HDD、光ディスクなどの記憶装置である。図3に示す例において、記憶部120は、撮像データデータベース121、ビーコン情報データベース122および特定情報データベース123を有する。
【0043】
撮像データデータベース121は、各通信装置10で撮像された撮像データを記憶するデータベースである。本実施形態では、特に、対象20が複数のカメラを跨いで移動した領域にある複数の通信装置10で撮像された撮像データが撮像データデータベース121に格納される。
【0044】
ビーコン情報データベース122は、各通信装置10で受信したビーコン情報を記憶するデータベースである。例えば、ビーコン情報は、ビーコンの受信信号強度(RSSI)である。なお、RSSIは、ビーコンの通信距離が離れるほど弱くなり、近づくほど強くなる。なお、ビーコン情報データベース122と同様のデータベースをビーコンサーバ200が有してもよい。この場合、情報処理装置100は、ビーコン情報データベース122を有さなくてもよい。
【0045】
特定情報データベース123は、撮像データに写る対象20の固有性を識別するための特定情報を記憶するデータベースである。特定情報の一例として、各通信装置10で撮像された撮像データごとの対象20の存在確率を示すデータが挙げられる。
【0046】
次に、制御部130について説明する。制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。
【0047】
図3に示す例では、制御部130は、取得部131と、推定部132と、識別部133と、通知部134とを備える。取得部131、推定部132、識別部133および通知部134の機能は、例えば、制御部130のCPUが制御部130のRAM、ROM、又は記憶部120に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0048】
なお、取得部131、推定部132、識別部133および通知部134は、それぞれ一部又は全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアで構成されてもよい。
【0049】
取得部131は、照明部11とカメラユニット12とを備える通信装置10のカメラユニット12によって撮像された撮像データを取得する。例えば、取得部131は、リアルタイムで各カメラユニット12から撮像データを取得し、撮像データの取得毎に取得した撮像データを撮像データデータベース121に格納する。
【0050】
この際、取得部131は、複数の通信装置10ごとの撮像データを順次、撮像データデータベース121に格納する。
【0051】
取得部131は、通信装置10の通信部16によって受信されたビーコン情報を取得する。例えば、取得部131は、リアルタイムで各通信部16からビーコン情報を取得し、ビーコン情報の取得毎に取得したビーコン情報をビーコン情報データベース122に格納する。なお、取得部131は、ビーコンサーバ200からビーコン情報を取得してもよい。
【0052】
この際、取得部131は、複数の通信装置10ごとのビーコン情報を順次、ビーコン情報データベース122に格納する。
【0053】
推定部132は、取得部131によって取得された撮像データとビーコン情報とから対象20の動きを推定する。例えば、推定部132は、撮像データとビーコン情報とのそれぞれにおいて、対象20の動きを個別に推定する。
【0054】
推定部132は、ビーコンの通信距離に応じてRSSIが変化するため、通信装置10により撮像されている撮像範囲と、通信装置10との位置関係に基づいて、対象20の動きを推定する。
【0055】
ここで、図4を用いて、推定部132による推定処理の具体例について説明する。図4は、推定部132の処理の一例を示す図である。なお、対象20及び通信装置10の数は特に限定されないものとする。また、領域SP及び領域SRの範囲の大きさや数も特に限定されないものとする。
【0056】
図4に示すように、屋内には、複数の対象20(20A乃至20E)が含まれる。このうち、複数の対象20(20A乃至20C)は、領域SP(SP11乃至SP20)に含まれる。例えば、対象20Aは、領域SP20に含まれる。また、例えば、対象20Cは、領域SP16に含まれる。また、対象20Dは、領域SP(SP11乃至SP20)に含まれないが、領域SR12に含まれる。また、対象20Eは、領域SP(SP11乃至SP20)と領域SP(SP11乃至SP20)とのどちらにも含まれないものとする。
【0057】
図4に示す領域SP(SP11乃至SP20)は、複数の通信装置10のカメラユニット12(12a乃至12j:不図示)によって撮像される撮像範囲を示す。なお、領域SP(SP11乃至SP20)は、カメラユニット12(12a乃至12j)に対応するものとする。また、領域SP(SP11乃至SP20)において、対象20は自由に移動できるものとする。
【0058】
図4に示す領域SR(SR11及びSR12)は、ビーコンを用いた対象20の特定に係る誤差範囲を示す。なお、領域SR(SR11及びSR12)は、ビーコンの受信範囲と解すこともできる。例えば、領域SR12は、領域SR12の中心付近にいる対象20Aの特定に係る誤差範囲である。領域SR12は、例えば、対象20Aが領域SR12の領域内にいることを示す。ただし、領域SR12は、対象20Aが領域SR12に含まれる3人の対象20(20A、20Bおよび20D)のいずれかを特定しない。
【0059】
領域SRは、領域SRの中心付近にビーコンがあることを示し、ビーコンの受信先(例えば、対象20のスマートフォン)を特定するための範囲である。推定部132は、受信先のビーコンと通信装置10のビーコンとの関係に基づいて、受信先の特定と位置とを推定する。
【0060】
ここで、対象20Bは、複数のカメラを跨いで領域間を移動するものとする。図4では、時間t1において、対象20Bは領域SP20に含まれる。また、時間t2において、対象20Bは領域SP19に含まれる。なお、時間t2は、時間t1より後の時間とする。また、時間t3において、対象20Bは領域SP18に含まれる。なお、時間t3は、時間t2より後の時間とする。すなわち、対象20Bは、時間t1から時間t3において、領域SP20から領域SP18に移動する。なお、この間、対象20(20A、20C、20Dおよび20E)は、各領域SPに留まって領域間の移動はしないものとする。
【0061】
これらの複数の対象20(20A乃至20E)の位置情報の遷移(軌跡)は、取得部131によって取得された撮像データに基づいて、推定部132によって推定される。例えば、推定部132は、時間t1において領域SP20にいた対象20A及び対象20Bのどちらかが、時間t2において領域SP19に移動したと推定する。また、例えば、推定部132は、時間t2において領域SP19及び領域SP20のどちらかにいた対象20A及び対象20Bのどちらかが、時間t3において領域SP18に移動したと推定する。
【0062】
この際、推定部132は、ビーコン情報に基づいて、時間t2において領域SP19に移動した対象20が対象20A及び対象20Bのどちらかであると推定する。また、推定部132は、ビーコン情報に基づいて、時間t3において領域SP18に移動した対象20が対象20A及び対象20Bのどちらかであると推定する。
【0063】
ここで、図5を用いて、推定部132による推定結果の具体例について説明する。図5は、推定部132の推定結果の一例を示す図である。具体的には、各時間tにおける領域SPごとの対象20Aおよび対象20Bの存在確率を示す。
【0064】
図5(A)は、時間t1における対象20A及び対象20Bの存在確率を示す。時間t1では、対象20A及び対象20Bが領域SP20にいて、対象20A及び対象20B以外は領域SP20にいないことが前提にある。推定部132は、領域SP20に含まれるどちらが対象20Aか対象20Bかは分からないが、領域SP20に含まれる2人は対象20A及び対象20Bであると推定する。
【0065】
そして、推定部132は、対象20A及び対象20Bが領域SP18又は領域SP19にいる確率は0%であり、対象20A及び対象20Bが領域SP20にいる確率は100%であると推定する。
【0066】
図5(B)は、時間t2における対象20A及び対象20Bの存在確率を示す。時間t2では、対象20A及び対象20Bのどちらかが領域SP19に移動したことが前提にある。推定部132は、領域SP19及び領域SP20に含まれるどちらが対象20Aか対象20Bかは分からないが、領域SP19及び領域SP20に含まれる2人は対象20A及び対象20Bであると推定する。
【0067】
そして、推定部132は、対象20Aが領域SP18にいる確率は0%であり、対象20Aが領域SP19にいる確率は50%であり、対象20Aが領域SP20にいる確率は50%であると推定する。なお、対象20Bの場合も同様である。
【0068】
図5(C)は、時間t3における対象20A及び対象20Bの存在確率を示す。時間t3では、対象20A及び対象20Bのどちらかが領域SP18に移動したことが前提にある。また、対象20A及び対象20Bのどちらかが領域SP18まで移動したことで、ビーコンの領域SRも対象20Aと対象20Bとで分離可能になることを前提とする。このように、領域SRに複数の対象20がいる場合であっても、対象20が動くと何処かの地点で領域SRは分離される。
【0069】
推定部132は、対象20Bが領域SP18にいることが分かるため、領域SP18にいる対象20が対象20Bであると推定する。また、推定部132は、領域SP20にいる対象20が対象20Aであると推定する。
【0070】
そして、推定部132は、対象20Aが領域SP18又は領域SP19にいる確率は0%であり、対象20Aが領域SP20にいる確率は100%であると推定する。また、推定部132は、対象20Bが領域SP18にいる確率は100%であり、対象20Bが領域SP19又は領域SP20にいる確率は0%であると推定する。
【0071】
そして、推定部132は、時間を遡ることにより、時間t2において領域SP19にいた対象20が、対象20Bであると推定する。具体的には、推定部132は、時間t2において領域SP19にいた対象20と、時間t3において領域SP18にいた対象20とが同一であると推定して、時間t2において領域SP19にいた対象20が、対象20Bであると推定する。また、推定部132は、時間t2において領域SP20にいた対象20が、対象20Aであると推定する。
【0072】
そして、推定部132は、更に時間を遡ることにより、時間t1において領域SP20の左側の対象20が、対象20Bであると推定する。具体的には、推定部132は、時間t1において領域SP20の左側にいた対象20と、時間t2において領域SP19にいた対象20とが同一であると推定して、時間t1において領域SP20の左側にいた対象20が、対象20Bであると推定する。また、推定部132は、時間t1において領域SP20の右側にいた対象20が、対象20Aであると推定する。
【0073】
このように、推定部132は、時間を遡ることにより、対象20の動きと個人の特定とを推定することができる。
【0074】
図4の説明に戻り、識別部133について説明する。識別部133は、推定部132による推定結果の突合せに基づいて、対象20の固有性を識別する。具体的には、識別部133は、撮像データに基づく推定結果と、ビーコン情報に基づく推定結果との突合せに基づいて、対象20の固有性を識別する。
【0075】
識別部133は、過去に撮像された画像又は映像に写る複数の対象20の固有性を識別する。例えば、図5を用いると、識別部133は、時間t3における識別結果に基づいて、時間t2の撮像データに含まれる複数の対象20(20A及び20B)の固有性を識別する。また、例えば、識別部133は、時間t2における識別結果に基づいて、時間t1の撮像データに含まれる複数の対象20(20A及び20B)の固有性を識別する。
【0076】
上述のように、カメラ側から見た動きと一致するようなビーコンの対象20を特定できると、動きを推定することができるため、識別部133は、過去に撮像された画像又は映像に写る対象20が誰であったか特定することができる。
【0077】
このように、識別部133は、カメラから識別される対象20の動きと、対象20との通信電波に基づいた動きとのマッチングから、対象20の識別を行う。
【0078】
通知部134は、識別部133による識別結果を、通知する。例えば、通知部134は、通信装置10を設置した屋内の管理者へ通知する。
【0079】
次に、図6を用いて、実施形態に係る情報処理装置100が実行する処理手順について説明する。図6は、実施形態に係る情報処理装置100が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、情報処理装置100の制御部130によって繰り返し実行される。
【0080】
図6に示すように、情報処理装置100は、撮像データを取得すると(ステップS101)、撮像データの画像解析を行う(ステップS102)。続いて、情報処理装置100は、撮像データの画像解析の結果、撮像データに含まれる対象20の動きを推定する(ステップS103)。
【0081】
また、情報処理装置100は、ビーコン情報を取得すると(ステップS104)、ビーコン情報の解析を行う(ステップS105)。続いて、情報処理装置100は、ビーコン情報の解析の結果、ビーコン情報に対応する対象20の動きを推定する(ステップS106)。
【0082】
また、情報処理装置100は、推定結果の突合せに基づいて、対象20の固有性を識別し(ステップS107)、処理を終了する。
【0083】
また、上記した実施形態では、対象20が人物である場合を示したが、この例に限らず、移動体であればどのようなものであってもよい。例えば、対象20は、犬や猫のような動物であってもよいし、フォークリフトや車のような無機物であってもよい。
【0084】
また、上記した実施形態では、情報処理装置100が、屋内にいる対象20を識別する場合を示したが、この例に限らず、屋外にいる対象20を識別してもよい。例えば、情報処理装置100は、通信装置10が設置された複数の屋内間(例えば、ビルの間)にいる対象20を識別してもよい。この場合、情報処理装置100は、対象20の位置情報を、GPS(Global Positioning System)を用いて取得してもよい。これにより、情報処理装置100は、カメラが連続していない屋外でも、対象20を的確に識別することができる。
【0085】
また、屋内間(ビルの間)だとGPSの精度が100メートル単位になる場合がある。このような場合、情報処理装置100は、GPSだけでなく多くのカメラを用いて対象20の位置を推定してもよい。例えば、情報処理装置100は、店頭に設けられた監視カメラや町中に設置されたカメラ、カメラ付きの街路灯等から画像又は映像を収集してもよい。
【0086】
このようなカメラの精度は低い場合もあるが、これにより、情報処理装置100は、対象20がどこにいるかは正確に推定することができる。そして、情報処理装置100は、精度が低いが端末装置30を介することで対象20を認識可能なGPSの情報から推定した動きと、認識精度が低いが対象20の動きを正確に推定可能な監視カメラから推定した動きとの突合せから、撮像された対象20の認識を行ってもよい。
【0087】
また、上記した実施形態では、ビーコンの通信を一定の通信間隔(通信頻度)で行う場合を示したが、この例に限らず、情報処理装置100は、対象20と通信装置10との通信間隔が変化するように制御してもよい。例えば、情報処理装置100は、対象20の移動量が大きいほど、より短い通信間隔で通信を行うように制御してもよい。例えば、情報処理装置100は、対象20の動きを検出した加速度センサの結果が所定の閾値を超える場合には、対象20と通信装置10との電波情報の通信間隔が短くなるように制御してもよい。このように、情報処理装置100は、対象20の動きに合わせて通信間隔を変化させてもよい。
【0088】
ここで、カメラから識別される「動き」は、領域を跨いで移動する動きだけでなく、うろうろするなどの挙動の大きさや特徴などを示してもよい。例えば、同じカメラの撮像範囲内にいるけれども、対象20の挙動が大きい場合には、情報処理装置100は、ビーコンの通信間隔を加速度センサの値の大きさに応じて短くしてもよい。
【0089】
情報処理装置100は、例えば対象20A及び対象20Bのどちらかの挙動が大きい場合には、ビーコンの通信間隔に基づいて、対象20A及び対象20Bの識別を可能とする。このように、カメラから識別される「動き」に、領域を跨ぐような動きだけでなく挙動を含めることで、ビーコンの通信間隔が変化するため、情報処理装置100による識別の信頼度が向上する。例えば、同一のカメラ内に複数の対象20がいる場合でも、同一のカメラ内で動きに変化がある対象20のほうがビーコンの通信間隔が短いので、情報処理装置100による識別の信頼度が向上する。
【0090】
また、上記した実施形態では、電波情報の一例として、ビーコン情報を用いて説明したが、この例に限られない。例えば、情報処理装置100は、RFIDのタグ情報に基づいて、対象20の固有性を識別してもよい。この場合、情報処理装置100は、RFIDのタグ情報を取得する。また、対象20にRFIDが付いており、RFIDを読み取るものが通信装置10に付いているものとする。このように、情報処理装置100は、対象20のIDなどの識別情報を取得して、対象20を識別してもよい。
【0091】
また、上記した実施形態では、情報処理装置100が、ビーコン情報を通信装置10から取得する場合を示したが、この例に限られない。例えば、情報処理装置100は、ビーコン情報をキャリアから取得してもよい。例えば、通信装置10は一方的にビーコンを出し続けて対象20の端末装置30が受け取り、その端末装置30が受け取ったデータはキャリアを介してクラウドに送信されるようにしてもよい。
【0092】
また、上述した説明以外にも、第1手段と第2手段とは任意の手段が採用可能である。すなわち、所定領域の領域内における対象20の位置を所定の精度で検知する第1手段と、所定領域より広い領域内における対象20の固有性を所定の精度で識別する第2手段とは任意の手段が採用可能である。
【0093】
ここで、各手段の固有性の識別精度や、位置の特定精度は、手段そのものに起因するものであってもよく、状態によるものであってもよい。例えば、第1手段は、各種顔認証技術により認証を行うことができる程度に詳細な画像を取得可能なカメラであってもよい。このようなカメラであっても、例えば、通信帯域を制限するために、撮像された画像のビットレートを低下させて送信された場合には、対象20の動きを適切に推定することができるものの、対象20の固有性を識別する精度が対価した情報が送信されることとなる。
【0094】
このような情報が得られる場合、情報処理システムSは、より対象20の固有性を精度よく識別可能な手段を第2手段としてもよい。すなわち、情報処理システムSは、位置および固有性の識別精度が相対的に異なる複数の手段を組合せて、対象20の動きから対象20の認証を行うのであれば、任意の手段を組合せて用いてもよい。
【0095】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
10 通信装置
11 照明部
12 カメラユニット
13 本体部
14 拡散カバー
15 遮光カバー
16 通信部
30 端末装置
100 情報処理装置
110 通信部
120 記憶部
121 撮像データデータベース
122 ビーコン情報データベース
123 特定情報データベース
130 制御部
131 取得部
132 推定部
133 識別部
134 通知部
200 ビーコンサーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6