(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】基板コイル及びトランス
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20241008BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241008BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20241008BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04
H01F30/10 D
H05K1/16 B
(21)【出願番号】P 2020165153
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 英一
(72)【発明者】
【氏名】博田 知之
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088595(JP,A)
【文献】特開2004-349562(JP,A)
【文献】特開平10-106853(JP,A)
【文献】特開平02-256208(JP,A)
【文献】実開昭62-008607(JP,U)
【文献】実開昭63-157906(JP,U)
【文献】特開2019-40938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 30/10
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層基板を構成する複数の層に設けられた巻き線パターンが該巻き線パターンにおける接続部において電気的に接続されるとともに積層されることで形成される基板コイルであって、
前記巻き線パターンにおける前記接続部は、平面視で所定の方向に延びた細長形状を有し、前記接続部どうしは、前記巻き線パターンの平面に対して垂直方向に導通するスルーホールによって接続され、
前記複数の層に設けられた前記巻き線パターンのうち、重ねられて互いに接続される二つの巻き線パターンの接続部の対と、次に接続される二つの巻き線パターンの接続部の対とは、平面視で重ならないように、且つ、前記所定の方向に垂直な方向に並ぶように形成され
、
前記スルーホールは、前記多層基板の一部の層のみを貫通する埋込スルーホールであり、
前記多層基板において、より外側の二つの巻き線パターンの接続部の対は、より内側の二つの巻き線パターンの接続部の対よりも、平面視で前記巻き線パターンの中心からより離れた位置に配置されることを特徴とする、
基板コイル。
【請求項2】
前記巻き線パターンは円弧状の単巻きパターンであり、
前記所定の方向は、前記巻き線パターンの両端の隙間の幅方向であることを特徴とする、請求項1に記載の基板コイル。
【請求項3】
前記スルーホールは、前記接続部において、該接続部が延びた方向に対して一列または二列に並列されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の基板コイル。
【請求項4】
前記巻き線パターンにおける前記接続部は、平面視で前記巻き線パターンの外部において接続されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の基板コイル。
【請求項5】
前記スルーホールは、前記多層基板を貫通する貫通スルーホールであり、
前記多層基板において、各巻き線パターンの接続部の対は、積層された順番によって、平面視で前記巻き線パターンの中心からより離れた位置またはより近づいた位置に配置されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の基板コイル。
【請求項6】
平面視で前記巻き線パターンの一部を覆うように配置される磁気コアを備え、
前記接続部は、平面視で前記磁気コアが設けられていない部分に配置されることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の基板コイル。
【請求項7】
複数のコイルを重ねるように配置し、一のコイルに電流を入力し、他のコイルに流れる誘導電流を出力するトランスであって、
前記複数のコイルの中心を貫通するように配置される磁気コアをさらに備え、
前記複数のコイルの少なくとも一部は、請求項1から4のいずれか一項に記載の基板コイルであることを特徴とする、
トランス。
【請求項8】
前記磁気コアは、前記複数のコイルにおけるコイルの間にコアが配置されるパスコア構造を有することを特徴とする、
請求項7に記載のトランス。
【請求項9】
前記磁気コアは、前記複数のコイルの中心を貫通する棒状のコアからなる棒コアであることを特徴とする、
請求項7に記載のトランス。
【請求項10】
前記磁気コアは、平面視で前記複数のコイルの一部を覆うように配置され、
前記接続部は、平面視で前記磁気コアが設けられていない部分に配置されることを特徴とする、
請求項7または8に記載のトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板コイル及びトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トランスを構成する巻き線を内部に有する回路基板を積層し、スルーホールで各巻き線を接続することで、電気容量が比較的大きいトランスを形成する技術が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記の技術は、巻き線の幅が比較的太いパターンを積層することから、電流容量を確保するためには多数のスルーホールで各巻き線を接続する必要があり、スルーホールによる接続部が多い場合には、ターン数にロスが生じ、基板コイルの小型化や低背化の実現が困難となる。
【0004】
また、表面にコイルパターンを備えている複数枚の基材を積層一体化し、上下に位置するコイルパターン間を選択接続することにより、励磁側の巻線と受電側の巻線を形成する多層トランス基板の構成が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、コイルパターン間を電気的に接続する接続部について、その配置までは述べられておらず、例えば一定以上の面積を有する接続部が散在している場合には、巻き線効率が低下し、寄生Cや寄生L等の寄生成分が増加する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-358427号公報
【文献】特開2010-093174号公報
【文献】特開平09-289128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板コイルや基板コイルを含むトランスの小型化や低背化を可能とし、且つ、基板コイルにおいて巻き線パターン間を電気的に接続する接続部による寄生成分を抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、
多層基板を構成する複数の層に設けられた巻き線パターンが該巻き線パターンにおける接続部において電気的に接続されるとともに積層されることで形成される基板コイルであって、
前記巻き線パターンにおける前記接続部は、平面視で所定の方向に延びた細長形状を有し、前記接続部どうしは、前記巻き線パターンの平面に対して垂直方向に導通するスルーホールによって接続され、
前記複数の層に設けられた前記巻き線パターンのうち、重ねられて互いに接続される二つの巻き線パターンの接続部の対と、次に接続される二つの巻き線パターンの接続部の対とは、平面視で重ならないように、且つ、前記所定の方向に垂直な方向に並ぶように形成されることを特徴とする、
基板コイルである。
【0009】
本発明によれば、巻き線パターンどうしを接続する接続部が、所定の方向に延びた細長形状を有し、接続された各々の接続部の対は、前記所定の方向に垂直な方向に並ぶように形成される。このことで、接続部が平面視で巻き線パターン上において密集して効率的に配置され、巻き線パターン上でコイルとして利用可能なエリアを大きくすることができる。その結果、基板コイルの小型化や低背化を実現できる。また、接続部自体の面積を抑えることができ、接続部による寄生成分を抑制することが可能である。
【0010】
また、本発明においては、前記巻き線パターンは円弧状の単巻きパターンであり、前記所定の方向は、前記巻き線パターンの両端の隙間の幅方向であることを特徴とする、基板コイルとしてもよい。これによれば、接続部が巻き線パターンの両端の隙間の幅方向に配置されることで巻き線パターン上において平面視でより密集し、巻き線パターンが円弧状の単巻きパターンであることからも基板コイルの小型化や低背化を実現することが可能である。ここで、巻き線パターンの両端の隙間とは、特にコイルを形成する円弧状部分における隙間を示す。
【0011】
また、本発明においては、前記スルーホールは、前記接続部において、該接続部が延びた方向に対して一列または二列に並列されていることを特徴とする、基板コイルとしてもよい。これによれば、接続部においてスルーホールを整然と配置させることができ、スルーホールの密度を上げ、各接続部の面積を小さくすることが可能である。
【0012】
また、本発明においては、前記巻き線パターンにおける前記接続部は、平面視で前記巻き線パターンの外部において接続されることを特徴とする、基板コイルとしてもよい。これによれば、接続部が巻き線パターンにおいてコイルとして機能する部分の面積を低下させることを、より確実に回避できる。また、スルーホールを通過する電流によって生じる磁界が、巻き線パターン上を流れる電流によって生じる磁界の流れを乱すことを抑制できる。
【0013】
また、本発明においては、前記スルーホールは、前記多層基板の一部の層のみを貫通する埋込スルーホールであり、前記多層基板において、より外側の二つの巻き線パターンの接続部の対は、より内側の二つの巻き線パターンの接続部の対よりも、平面視で前記巻き線パターンの中心からより離れた位置に配置されることを特徴とする、基板コイルとしてもよい。これによれば、スルーホールは、互いに接続される巻き線パターンの間の層のみを貫通するので、他の層の巻き線パターンと干渉することはない。従って、スルーホール及び接続部の配置の自由度を高めることが可能である。このことにより、より確実に、各巻き線パターンにおける巻き線効率を高めることが可能となり、基板コイルの小型化や低背化を実現することが可能である。
【0014】
また、本発明においては、前記スルーホールは、前記多層基板を貫通する貫通スルーホールであり、前記多層基板において、各巻き線パターンの接続部の対は、積層された順番によって、平面視で前記巻き線パターンの中心からより離れた位置またはより近づいた位置に配置されることを特徴とする、基板コイルとしてもよい。これによっても、貫通スルーホールを有する接続部を、巻き線パターン上において平面視で密集して配置させることができ、基板コイルの小型化や低背化がさらに実現しやすい。また、接続部を全体的に巻き線パターンの円弧状の部分の外側に配置させることができるため、巻き線パターンの巻き線効率を高めることが可能である。
【0015】
また、本発明においては、平面視で前記巻き線パターンの一部を覆うように配置される磁気コアを備え、前記接続部は、平面視で前記磁気コアが設けられていない部分に配置されることを特徴とする、基板コイルとしてもよい。ここで、磁気コアは、コイルの巻き線
によって生じる磁界の流れを効率化し磁界を増大させる。これに対し、スルーホールを通過する電流によって生じる磁界は、コイルの巻き線によって生じる磁界と方向が異なり、コイルの巻き線によって生じる磁界を乱す原因となり得る。これに対し、本発明においては、前記接続部は、平面視で前記磁気コアが設けられていない部分に配置されるため、スルーホールを通過する電流によって生じる磁界が、磁気コアによる磁界の流れを乱すことを抑制できる。その結果、基板コイルの巻き線により生じる磁界の流れをより確実に効率化し、増大させることが可能である。
【0016】
また、本発明においては、複数のコイルを重ねるように配置し、一のコイルに電流を入力し、他のコイルに流れる誘導電流を出力するトランスであって、前記複数のコイルの中心を貫通するように配置される磁気コアをさらに備え、前記複数のコイルの少なくとも一部は、上記の特徴を持つ基板コイルであることを特徴とする、トランスとしてもよい。これによれば、トランス本来の機能の安定化を維持しつつ、トランスの小型化や低背化を実現することが可能である。
【0017】
また、本発明においては、前記磁気コアは、前記複数のコイルにおけるコイルの間にコアが配置されるパスコア構造を有することを特徴とする、トランスとしてもよい。ここで、トランスの作動効率を向上させるために共振Lを外付けするにあたり、トランスと共振Lを横に並べる場合は実装面積が増え、縦に積む場合はシールドが必要になり、高さが増大する不都合がある。二種類の基板コイルの間に磁気コアを挿入し、パスコア構造を適用することで、トランスの小型化や低背化を図りつつ、二種類の基板コイルの共振を誘起させることが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記磁気コアは、前記複数のコイルの中心を貫通する棒状のコアからなる棒コアであることを特徴とする、トランスとしてもよい。この構成においては、巻き線パターン上の接続箇所が磁気コアによって覆われることがなく、巻き線パターン上を流れる電流から発生する磁界に乱れが生じる欠点や、サイドコアどうしで通過する磁界の量が不均一になる欠点を避け、接続箇所の配置の自由度を高めることが可能である。
【0019】
また、本発明においては、前記磁気コアは、平面視で前記複数のコイルの一部を覆うように配置され、前記接続部は、平面視で前記磁気コアが設けられていない部分に配置されることを特徴とする、トランスとしてもよい。これによれば、トランスを構成する基板コイルにおいても、巻き線により生じる磁界の流れをより確実に効率化し、増大させることが可能である。
【0020】
なお、本発明においては、上記の課題を解決するための手段は、可能なかぎり組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、巻き線パターンのターン数のロスを減少させ、その結果、基板コイルの小型化や低背化を実現することが可能である。また、接続部による寄生成分を抑制し、基板コイルの導電性に対する信頼性を向上させることが可能である。基板コイル化により、電子回路基板への内蔵化による電子機器の小型化、部品実装点数削減や生産コストの低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来の基板コイルに係る、第1基板から第8基板までの各基板を貫通して基板どうし、あるいは基板上における巻き線パターンどうしを接続する部分である接続箇所について説明するための図である。
【
図3】基板コイルと、第2の基板コイルとを利用してトランスを構成した場合の断面図である。
【
図4】実施例1における基板コイルにおける各巻き線パターンの接続状態について詳細に説明するための図である。
【
図5】実施例1における基板コイルに磁気コアを組み合わせた場合の斜視図である。
【
図6】実施例1における各基板における巻き線パターン、及び基板コイルに磁気コアを組み合わせた場合の平面図である。
【
図7】実施例2における基板コイルにおける各巻き線パターンの接続状態について詳細に説明するための図である。
【
図8】実施例2における各基板における巻き線パターン、及び基板コイルに磁気コアを組み合わせた場合の平面図である。
【
図9】実施例3における基板コイルにおける各巻き線パターンの接続状態について詳細に説明するための図である。
【
図10】実施例4におけるトランスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔適用例〕
本適用例においては、複数の巻き線パターンから成り、巻き線パターンのターン数が1ターンである螺旋形状の基板コイルを多層基板に適用した場合について説明する。
【0024】
円弧状の巻き線パターンは、接続部において、スルーホールと呼ばれる導電性のあるホールによって上側の巻き線パターンと下側の巻き線パターンとが垂直方向に電気的に接続されている。スルーホールによって接続された巻き線パターンがさらに積層されることで、基板コイルが形成される。円弧状の部分を有する巻き線パターンの両端には隙間があり、接続部は、平面視でこの隙間の幅方向に沿って延びた細長形状を有している。そして、互いに接続される二つの巻き線パターンの接続部の対と、次に接続される二つの巻き線パターンの接続部の対とは、基板コイルにおいて平面視で重ならない位置に形成される。さらに、スルーホールは、接続部において、接続部が延びた方向に対して一列または二列に並列されている。
【0025】
スルーホールは、多層基板の一部の層のみを貫通する埋込スルーホールとしてもよい。
図4(a)に黒点で示す接続箇所どうしを接続する実線は、埋込スルーホールである。
図4(a)に示す通り、多層基板において、積層方向がより外側に重ねられた二つの巻き線パターンどうしを接続する埋込スルーホールは、より内側に重ねられた二つの巻き線パターンどうしを接続する埋込スルーホールよりも、基板コイルにおいて平面視で巻き線パターンの中心からより離れた位置に配置される。少なくとも、最も内側の二つの巻き線パターンを接続する埋込スルーホールは、平面視で、巻き線パターンの両端の間の隙間の内部に配置されていてもよい。接続部はいずれも上記の隙間の幅方向に延びた細長形状を有し、幅方向と垂直方向に並列されている。
【0026】
スルーホールは、多層基板を貫通する貫通スルーホールとしてもよい。この場合には、
図7(a)に黒点で示す接続箇所どうしを接続する実線のように、貫通スルーホールを用いて、各巻き線パターンを接続する。
図7に示す例では、多層基板において、接続部はいずれも上記の隙間の幅方向に延びた細長形状を有し、幅方向と垂直方向に並列されている。
【0027】
なお、基板コイルは、コイルの巻き線によって生じる磁界の流れを効率化し、磁界を増大させる磁気コアを備えている場合がある。本適用例における基板コイルにおいて平面視
で巻き線パターンの一部は磁気コアに覆われており、接続部は、磁気コアに覆われていない部分に配置されてもよい。このことで、接続部におけるスルーホールを通過する電流によって生じる磁界が、磁気コアによる磁界の流れを乱すことを抑制できる。その結果、基板コイルの巻き線により生じる磁界の流れをより確実に効率化し、増大させることが可能である。
【0028】
また、上記の特徴を有し、巻き数の異なる基板コイルを複数重ねるように配置することで、一の基板コイルに電流を入力し、他の基板コイルに流れる誘導電流を出力することでトランスを形成することも可能である。
【0029】
〔実施例1〕
以下、本発明の実施例1に係る基板コイル及びトランスについて、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明に係る基板コイル及びトランスは、以下の構成に限定する趣旨のものではない。
【0030】
<基板コイルについて>
図1は、従来の基板コイルに係る、第1基板11から第8基板81までの各基板を貫通して基板どうし、あるいは基板上における巻き線パターンどうしを接続する部分である接続箇所について説明するための図である。
図1(a)は接続箇所の配置を示す平面図、
図1(b)は、各巻き線パターンと各接続箇所との接続関係を示す模式的な図である。接続箇所どうしは、巻き線パターンの平面に対して垂直方向に導通するスルーホールによって接続されている。スルーホールの内部は、ペースト状の絶縁性の樹脂と導電性のメッキによって充填されている。
【0031】
図1(a)に示す平面図において、基板コイル100は、例えば、巻き線パターンが設けられた第1基板11から第8基板81の8層の基板を重ね、連続して重なる2枚の基板の巻き線パターンどうしを電気的に接続させることで、巻き数8ターンに相当するコイルを形成したものである。
図1(a)においては、一番上部に配置される第1基板11が視認できる状態が示されている。
【0032】
第1基板11には、コイルの第1層に相当する円弧状の導体パターンである第1巻き線パターン11aが設けられている。そして、第1巻き線パターン11aと接続される入力端子11b、及び不図示の第8基板81における第8巻き線パターン81aと第2基板21から第7基板71を貫通した形で接続される出力端子11cを有している。また、磁気コア(後述)が挿入されるための開口11f、11g、11hを有している。この巻き線パターンと、磁気コアが挿入されるための開口については、第2基板21から第8基板81にも共通に設けられている(21a~81a、21f~81f、21g~81g、21h~81h)。
【0033】
図1(a)に示すように、第1基板11の平面上において、第1巻き線パターン11aの周辺には接続箇所が、接続箇所11d(21e)から接続箇所71d(81e)まで八ヶ所形成されている。この接続箇所の数は、第1基板11から第8基板81までの8層の基板の数と同じである。接続箇所のそれぞれにおいて、スルーホールが4つずつ設けられており、第1基板11から第8基板81までの各基板を貫通している。なお、
図1(a)に示す第1巻き線パターン11aはシングルターンであるが、マルチターンであってもよい。ただし、マルチターンである場合はシングルターンである場合と比較して、同じ合計ターン数を得るために必要な接続箇所の数を減少させることができるが、電流容量は減少する。第2巻き線パターン21aから第8巻き線パターン81aについても同様のことが言える。
【0034】
図1(b)に示すように、各接続箇所におけるスルーホールは、特定の二層の基板における巻き線パターンと接続し、他の基板における巻き線パターンとは接続しないように、第1基板11から第8基板81までの各基板を貫通している。例えば、接続箇所21d(31e)におけるスルーホールは、第2巻き線パターン21aにおける接続箇所21dと第3巻き線パターン31aにおける接続箇所31eと接続し、他の巻き線パターンとは接続せずに第1基板11から第8基板81までの各基板を貫通している。
【0035】
図1(b)に示すように、第1巻き線パターン11aから第8巻き線パターン81aについて、平面視において重なる位置関係にある二つの巻き線パターンは接続箇所においてスルーホールによって接続されている。そして、最外層の第1基板11における第1巻き線パターン11aと第8基板81における第8巻き線パターン81aも接続箇所81dと接続箇所11eにおいてスルーホールによって接続されている。接続箇所は黒点で、接続箇所どうしを接続させるスルーホールは実線で、接続箇所どうしを接続させないスルーホールは点線で示している。
図1に示す従来の基板コイル100においては、平面視で接続箇所が散在している。そのため、各巻き線パターンは接続箇所と接続するために面積が大きくなり、基板コイル100の小型化や低背化の実現が困難になる。また、寄生Cや寄生Lが発生し易い。そこで、実施例1では、基板コイル100の小型化や低背化の実現を目的に、各巻き線パターン上に接続箇所を密に配置し、各巻き線パターンの面積の増加や、寄生成分を抑制する例について考える。
【0036】
図2は、実施例1に係る基板コイル10の平面図である。実施例1に係る基板コイル10も、巻き線パターンが設けられた第1基板1から第8基板8の8層の基板を重ね、連続して重なる2枚の基板の巻き線パターンどうしを電気的に接続させることで、巻き数7ターンに相当するコイルを形成した例であるが、基板の層数は8層に限らない。ここで、第1基板1から第8基板8は、本発明における多層基板を構成する複数の層に相当する。
【0037】
図2に示す平面図には不図示であるが、
図1(a)に示す平面図と比較して、接続箇所は基板コイル10において平面視で密に、且つ円弧状のコイル部分の近傍に配置されることで、第1巻き線パターン1aから第8巻き線パターン8aの面積を小さくすることが可能である。なお
図2に示す基板コイル10において、巻き線パターン1aと同様の巻き線パターン2a~8aと、磁気コアが挿入されるための開口1f、1g、1hと同様の開口(2f~8f、2g~8g、2h~8h)が、第2基板2から第8基板8にも共通に設けられている点については、
図1(a)に示す基板コイル100と共通である。ここで、接続箇所は、本発明における接続部に相当する。
【0038】
図3は、基板コイル10と、巻き数の異なる第2の基板コイル20とを利用してトランス30を構成した場合の断面図である。トランス30は、
図2に示した8層(8ターン)の基板コイル10と、ターン数及び巻き数の異なる第2の基板コイル20とを、磁気コア40で磁気的に結合することで構成される。このように、基板コイル10、20を用いてトランス30を構成することで、小型化や低背化を実現することができる。なお、同様に基板コイル10と磁気コア40とを組み合わせることでインダクタ素子を構成することも可能である。
【0039】
次に、
図4を用いて、実施例1における基板コイル10における各巻き線パターンの接続状態について詳細に説明する。
図4(a)は、基板コイル10を構成する各基板の巻き線パターンにおける接続箇所の配置を示す模式図である。
図4(b)は、基板コイル10における巻き線パターン及び接続箇所付近の断面図である。この例では、基板10の全体を貫通するスルーホールの他、特定の二つの層の巻き線パターンどうしを接続するスルーホールである、所謂埋込スルーホールを用いている。この埋込スルーホールは、スルーホールの位置の自由度を高めることで、基板コイル10の小型化や低背化を図ることを可能
とするために導入されたものである。この例では、スルーホールを巻き線パターンの円弧状の部分に配置すると、コイルとして使用される面積が低下し、巻き線効率が低下することから、スルーホールを巻き線パターン円弧状の部分の外部に配置することとしている。
【0040】
図4(a)の基板コイル10に示すように、基板コイル10を構成する巻き線パターンの中で最も内側に形成された第4巻き線パターン4a及び第5巻き線パターン5aを接続する埋込スルーホール(接続箇所4dと接続箇所5eを接続する埋込スルーホール)が、基板コイル10において平面視ですべての巻き線パターンの中心に最も近い。他の埋込スルーホールについては、第4巻き線パターン4a及び第5巻き線パターン5aより外側の巻き線パターンに向かうにつれて、基板コイル10において平面視ですべての巻き線パターンの中心から離れていく。最外層の巻き線パターンどうしを接続する埋込スルーホール(接続箇所8dと接続箇所1eを接続する埋込スルーホール)が基板コイル10において平面視ですべての巻き線パターンの中心から最も遠い位置にある。
【0041】
図4(b)の基板コイル10の断面の模式図に示すように、接続箇所4dと接続箇所5eを接続する埋込スルーホールを中心に、接続箇所3dと接続箇所4eを接続する埋込スルーホール、及び接続箇所2dと接続箇所3eを接続する埋込スルーホール、及び接続箇所1dと接続箇所2eを接続する埋込スルーホールはそれぞれ、接続箇所5dと接続箇所6eを接続する埋込スルーホール、及び接続箇所6dと接続箇所7eを接続する埋込スルーホール、及び接続箇所7dと接続箇所8eを接続する埋込スルーホールと、第4巻き線パターン4a及び第5巻き線パターン5aの間のスペースを境に対照的な位置関係にある。なお、巻き線パターンの数は、八個に限らない。
【0042】
図4の基板コイル10の製造プロセスについては以下の通りである。まず、基板の両面に巻き線パターンが設けられ、スルーホールによってそれらが接続されたコア材の両面に対し、新たな層をそれぞれ積層する。次にドリル加工によって層にホールをあけ、めっき加工及び穴埋めし、埋込スルーホールを形成する。次に埋込スルーホールの上に巻き線パターンを形成する。以下、このプロセスを繰り返し、最外層まで形成されたら最後にソルダーレジストを貼り付け、外形加工する。なお、コア材は複数あって、各々のコア材に対し、新たな層を積層するようにしてもよい。
【0043】
図5は、実施例1における基板コイル10に磁気コア40を組み合わせた場合の斜視図である。図では、簡単のため、各基板の巻き線パターンによって形成されるコイル部分のみ示す。このように、磁気コア40は、平面視で巻き線パターンの中心に対して点対称の形状を有しており、巻き線パターンの中心から外周側に向かって扇形状に広がる形状を有する。第1巻き線パターン1aは、一部のみ磁気コア40によって覆われている。この磁気コア40は、第1巻き線パターン1a~第8巻き線パターン8aを流れる電流によって生じる磁界をより効率よく通過させることで、より高いインダクタンスを得たり、トランスを構成する場合に磁気結合をより強くしたりするために用いられる。
【0044】
ここで、接続箇所1dから接続箇所2e(不図示)に向かって流れる電流の向きは、第1巻き線パターン1a上を流れる電流の向きと異なるため、それらの電流から発生する磁力の向きもそれぞれ異なる。そのため、接続箇所1dの周辺に発生する磁界が増大すると、磁気コア40を通過する磁界に乱れが生じる。よって、接続箇所1dは、磁気コア40によって覆われていない部分に配置されている。なお、
図5では第1基板1における第1巻き線パターン1aを例示しているが、第2巻き線パターン2aから第8巻き線パターン8aについても、巻き線パターンが一部のみ磁気コア40によって覆われている点、及び接続箇所が磁気コア40によって覆われていない部分に配置されている点は共通である。
【0045】
図6は、実施例1における各基板における巻き線パターン、及び基板コイル10に磁気
コア40を組み合わせた場合の平面図である。
図6(a)は、第1基板1~第8基板8における、各巻き線パターン1a~8aの平面図である。
図6(b)は、巻き線パターン1a~8aをこの順に重ね、基板コイル10に磁気コア40を組み合わせた場合の平面図である。なお、
図6(b)では、巻き線パターン1a~8aを見易くするため、磁気コア40については、センターコア40aとサイドコア40b、40cの断面のみを表示している。
【0046】
実施例1においては、
図6(a)に示すように、第1基板1から第8基板8における、巻き線パターン1a~8aを重ねることで基板コイル10における巻き線10aが形成されている。各々の巻き線パターン1a~8aは、円弧部分の両端に隙間が設けられたパターンとなっており、各々の巻き線パターン1a~8aにおいては、円弧部分の隙間を挟んだ両端が、円弧部分の中心から離れる方向に延伸して各接続箇所と繋がっている。第1巻き線パターン1a以外の巻き線パターンは、隙間を挟むように各巻き線パターンの両端に接続箇所が配置されている。第1巻き線パターン1aは、入力端子1bと、円弧部分とは離れた出力端子1cを有し、円弧部分の入力端子1bとは反対側の端部と出力端子1cとに接続箇所が配置されている。また、巻き線10aの平面視で第1巻き線パターン1aが有する入力端子1bと第8巻き線パターン8aが有する出力端子1iは隣り合う位置関係にある。
【0047】
巻き線10aにおける埋込スルーホールの接続について、第1巻き線パターン1aにおける中心に近い側の接続箇所1dと、第2巻き線パターン2aにおける中心に遠い側の接
続箇所2eが埋込スルーホールによって接続されている。同様に、第2巻き線パターン2aにおける中心に近い側の接続箇所2dと、第3巻き線パターン3aにおける中心に遠い側の接続箇所3eが埋込スルーホールによって接続されている。第3巻き線パターン3aと第4巻き線パターン4aの接続についても同様である。第4巻き線パターン4aの接続箇所4dと第5巻き線パターン5aの接続箇所5eは、巻き線パターンにおける円弧部分において埋込スルーホールによって接続されている。第5巻き線パターン5aにおける中心に遠い側の接続箇所5dと、第6巻き線パターン6aにおける中心に近い側の接続箇所6eが埋込スルーホールによって接続されている。同様に、第6巻き線パターン6aにおける中心に遠い側の接続箇所6dと、第7巻き線パターン7aにおける中心に近い側の接続箇所7eが埋込スルーホールによって接続されている。第7巻き線パターン7aと第8巻き線パターン8aの接続についても同様である。第8巻き線パターン8aの接続箇所8dは、第8基板8から第1基板1へ基板全体を貫通して第1巻き線パターン1aにおける中心に遠い側の接続箇所1eと埋込スルーホールによって接続されている。
【0048】
図6(b)に示すように、巻き線10aの平面視で接続箇所1d(2e)、及び接続箇所2d(3e)、及び接続箇所3d(4e)は出力端子1i上に、接続箇所5d(6e)、及び接続箇所6d(7e)、及び接続箇所7d(8e)は入力端子1b上に配置されている。接続箇所4d(5e)は、入力端子1bと出力端子1iの間のスペースに密に収まっている。接続箇所8d(1e)は、全ての接続箇所の中で巻き線パターンの中心から最も遠い位置に配置されている。これら八箇所の、スルーホールで互いに接続される接続箇所の対は、巻き線10aの平面視で重ならない配置で並んでいる。また、各々の接続箇所は、いずれも所定の方向に延びる細長形状を有しており、該所定の方向と垂直方向に並列されている。ここで、所定の方向とは、入力端子1bと出力端子1iの間の隙間の幅方向のことである。
【0049】
図6(b)の平面図を
図1(a)の平面図と比較して、巻き線10aの平面視で接続箇所が効率的に密に配置されているため、各巻き線パターンの面積が小さい。すなわち、従来の技術と比較して、実施例1における基板コイル10は小型化や低背化を実現しやすい。また、接続箇所による寄生成分を抑制することも可能である。
【0050】
また、上述通り、接続箇所4dと接続箇所5eを接続する埋込スルーホールを中心に、巻き線10aにおける外側の巻き線パターンを接続する埋込スルーホールほど巻き線10aの平面視で巻き線パターンの中心から遠い位置に配置されている。具体的には、接続箇所1d(2e)と接続箇所2d(3e)と接続箇所3d(4e)とが、巻き線10aの平面視でこの順番で出力端子1i上において、巻き線パターンの中心に近づくように並列され、接続箇所5d(6e)と接続箇所6d(7e)と接続箇所7d(8e)とが、巻き線10aの平面視でこの順番で入力端子1b上において、巻き線パターンの中心から離れるように並列されている。
【0051】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、巻き線10aにおいて厚み方向の中央の基板に形成された二つの巻き線パターンどうしを接続するスルーホールを中心に、巻き線10aにおける外側の巻き線パターンどうしを接続するスルーホールほど巻き線10aの平面視で巻き線パターンの中心から遠い位置に配置されている例、すなわち基板コイル10に埋込スルーホールを適用した例について説明したが、実施例2では、基板コイルに貫通スルーホールを適用した例であって、巻き線において下側の巻き線パターンを接続するスルーホールほど巻き線の平面視で巻き線パターンの中心から遠い位置に配置されている例について説明する。
【0052】
図7は、実施例2における基板コイル101における各巻き線パターンの接続状態について詳細に説明するための図である。この例では、多層基板の全体を貫通するスルーホール、所謂貫通スルーホールを用いている。
【0053】
図7(a)の基板コイル101に示すように、貫通スルーホールは、最も上の基板の上面に設けられた第1巻き線パターン12aから最も下の基板の下面に設けられた第8巻き線パターン82aの方向に向かうにつれ、巻き線パターンの円弧の中心から離れていく。最も下の基板の巻き線パターンにおける接続箇所82dと、最も上の基板の巻き線パターンにおける接続箇所12eとを接続する貫通スルーホールが基板コイル101において巻き線パターンの円弧の中心から最も遠い位置にある。貫通スルーホールは、積層された順番によって、平面視で巻き線パターンの中心からより離れた位置またはより近づいた位置に配置される。また、
図7(a)において、
図1(b)同様、接続箇所は黒点で、接続箇所どうしを接続させるスルーホールは実線で、接続箇所どうしを接続させないスルーホールは点線で示している。
【0054】
図7(b)の基板コイル101の断面の模式図に示すように、基板コイル101の両面は貫通スルーホールによって貫通しており、これらの貫通スルーホールはそれぞれ、特定の二つの巻き線パターンのみと接続している。
図7(b)において、貫通スルーホールは斜線でハッチングしており、巻き線パターンと接続している箇所においては、巻き線パターンの上下の直線を明示せず、巻き線パターンと接続していない箇所においては、巻き線パターンの上下の直線を明示している。例えば、第2巻き線パターン22aと第3巻き線パターン32aを接続する貫通スルーホールは、他の巻き線パターンとは接続しておらず、基板コイル101の両面を貫通している。なお、巻き線パターンの数は、八個に限らない。
【0055】
図7の基板コイル101の製造プロセスについては以下の通りである。まず、基板の両面に巻き線パターンが設けられ、スルーホールによってそれらが接続されたコア材の両面に対し、新たな層をそれぞれ積層する。次に新たな層に対して巻き線パターンを形成する。以下、このプロセスを繰り返し、最外層まで形成されたら、ドリル加工によって層にホールをあけ、めっき加工して貫通スルーホールを形成する。その上にさらに巻き線パター
ンを形成する。最後にソルダーレジストを貼り付け、外形加工する。なお、コア材は複数あって、各々のコア材に対し、新たな層を積層するようにしてもよい。または、該コア層どうしを、絶縁層を挟んで張り合わせるようにしてもよい。
【0056】
図8は、実施例2における各基板における巻き線パターン、及び基板コイル101に磁気コア401を組み合わせた場合の平面図である。
図8(a)は、第1基板12~第8基板82における、各巻き線パターン12a~82aの平面図である。
図8(b)は、巻き線パターン12a~82aをこの順に重ね、基板コイル101に磁気コア401を組み合わせた場合の平面図である。なお、
図8(b)では、巻き線パターン12a~82aを見易くするため、磁気コア401については、センターコア401aとサイドコア401b、401cの断面のみを表示している。
【0057】
実施例2においては、
図8(a)に示すように、第1基板12から第8基板82における、巻き線パターン12a~82aを重ねることで基板コイル101における巻き線101aが形成されている。各々の巻き線パターン12a~82aは、巻き線に相当する円弧部分の両端の間に隙間が設けられたパターンとなっており、最外層の第1巻き線パターン12a以外の巻き線パターンは、該隙間を挟むように各巻き線パターンの両端に接続箇所が配置されている。第1巻き線パターン12aは入力端子12bと、出力端子12cを有し、この入力端子12bと、出力端子12cに接続箇所が配置されている。また、巻き線101aの平面視で第1巻き線パターン12aが有する入力端子12bと第8巻き線パターン82aが有する出力端子12iは隣り合う位置関係にある。
【0058】
巻き線101aにおける貫通スルーホールの接続について、第1巻き線パターン12aにおける接続箇所12dと、第2巻き線パターン22aにおける円弧部分に近い側の接続
箇所22eが貫通スルーホールによって接続されている。次に、第2巻き線パターン22aにおける中心に遠い側の接続箇所22dと、第3巻き線パターン32aにおける中心に近い側の接続箇所32eが貫通スルーホールによって接続されている。同様に、第3巻き線パターン32aにおける中心に遠い側の接続箇所32dと、第4巻き線パターン42aにおける中心に近い側の接続箇所42eが貫通スルーホールによって接続されている。以降、この構造の繰り返しによって、巻き線101aの一番下の貫通スルーホールについては、第8巻き線パターン82aにおける中心に遠い側の接続箇所82dが、第8基板82から第1基板12へ基板全体を貫通して第1巻き線パターン12aにおける中心に遠い側の接続箇所12eと貫通スルーホールによって接続されている。
【0059】
図8(b)に示すように、接続箇所12d(22e)、接続箇所22d(32e)、接続箇所32d(42e)、接続箇所42d(52e)、接続箇所52d(62e)、接続箇所62d(72e)、接続箇所72d(82e)は、巻き線101aの平面視においてこの順で巻き線パターンの中心に近い位置にあり、巻き線パターンの径方向に沿って入力端子12bと出力端子12iの間のスペースに密に収まっている。これによって、巻き線101a上において、接続箇所を流れる電流から生じる磁界の影響を抑制しつつ、各巻き線パターンにおける巻き線効率を高めることが可能である。これら八箇所の接続箇所は、巻き線101aの平面視で重ならない配置で並んでいる。各々の接続箇所は、いずれも所定の方向に延びる細長形状を有しており、該所定の方向と垂直方向に並列されている。ここで、所定の方向とは、入力端子12bと出力端子12iの間のスペースの幅方向のことである。
【0060】
なお、スルーホールの配置に関して、実施例2に示した貫通スルーホールの配置を実施例1に示した埋込スルーホールに適用してもよい。
【0061】
〔実施例3〕
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例1では、基板コイル10に埋込スルーホールを適用した例について説明し、実施例2では、基板コイル101に貫通スルーホールを適用した例について説明したが、実施例3では、基板コイルに埋込スルーホールと貫通スルーホールの双方を適用した例にについて説明する。
【0062】
図9は、実施例3における基板コイル102における各巻き線パターンの接続状態について詳細に説明するための図である。この例では、埋込スルーホールと貫通スルーホールを用いている。
【0063】
図9(a)の基板コイル102に示すように、第1巻き線パターン13aと第2巻き線パターン23a、及び第3巻き線パターン33aと第4巻き線パターン43a、及び第5巻き線パターン53aと第6巻き線パターン63a、及び第7巻き線パターン73aと第8巻き線パターン83aがそれぞれ埋込スルーホールによって接続され、ペアを成している。これら四つの巻き線パターンのペアがさらに貫通スルーホールによって接続され、積層されることで基板コイル102を形成している。
【0064】
貫通スルーホールは埋込スルーホールと比較して、巻き線パターンの円弧部分から遠い位置で巻き線パターンどうしを接続している。埋込スルーホールは、基板コイル102において平面視でほとんど同じ位置にある。貫通スルーホールについては、第4巻き線パターン43aと第5巻き線パターン53aを接続する貫通スルーホールが巻き線パターンの円弧部分に最も近い位置にあり、以降は第6巻き線パターン63aと第7巻き線パターン73aを接続する貫通スルーホール、第2巻き線パターン23aと第3巻き線パターン33aを接続する貫通スルーホール、第1巻き線パターン13aと第8巻き線パターン83aを接続する貫通スルーホールの順で巻き線パターンの円弧部分に近い位置にある。また、
図9(a)において、
図1(b)同様、接続箇所は黒点で、接続箇所どうしを接続させる埋込スルーホールと貫通スルーホールは実線で、接続箇所どうしを接続させない貫通スルーホールは点線で示している。
【0065】
図9(b)の基板コイル102の断面の模式図に示すように、基板コイル102の両面は四つの貫通スルーホールによって貫通しており、これらの貫通スルーホールはそれぞれ、特定の二つの巻き線パターンのみと接続している。
図9(b)において、貫通スルーホールは斜線でハッチングしており、巻き線パターンと接続している箇所においては、巻き線パターンの上下の境界線を明示せず、巻き線パターンと接続していない箇所においては、巻き線パターンの上下の境界線を明示している。例えば、第4巻き線パターン43aと第5巻き線パターン53aを接続する貫通スルーホールは、他の巻き線パターンとは接続しておらず、基板コイル102の両面を貫通している。なお、巻き線パターンの数は、八個に限らない。また、基板コイル102の製造プロセスについては、スルーホールとして埋込スルーホールのみを用いた
図4の基板コイル10の製造プロセスとスルーホールとして貫通スルーホールのみを用いた
図7の基板コイル101の製造プロセスを組み合わせている。
【0066】
〔実施例4〕
次に、本発明の実施例4について説明する。実施例1では、巻き線パターンの一部のみが磁気コア40によって覆われている基板コイル10、20を備えたトランス30について説明したが、実施例4では、巻き線パターンが磁気コアによって覆われていない基板コイルを備えたトランス、及び二種類のコイルの間にパスコア構造を適用したトランスについて説明する。
【0067】
図10は、実施例4におけるトランスの断面図である。
図10(a)は、巻き線パターン(不図示)が磁気コア403によって覆われていない基板コイル103及び第2の基板
コイル203を備えたトランス303の断面図である。磁気コア403は、各基板の巻き線パターンに囲まれるように位置する。
図10(a)の構成において、巻き線パターン上の接続箇所(不図示)が磁気コア403によって覆われることはない。従って、巻き線パターン上を流れる電流から発生する磁界に乱れが生じる欠点や、サイドコア(不図示)どうしで通過する磁界の量が不均一になる欠点を避け、接続箇所の配置の自由度を高めることが可能である。
【0068】
図10(b)は、基板コイル104及び第2の基板コイル204の間にパスコア構造を適用したトランス304の断面図である。トランスの作動効率を向上させるために共振Lを外付けにあたり、トランスと共振Lを横に並べる場合は実装面積が増え、縦に積む場合はシールドが必要になり、高さが増大する不都合がある。よって、上記のいずれの場合もトランスの小型化や低背化が困難となる。
図10(b)の構成において、基板コイル104及び第2の基板コイル204の間にも磁気コア404を挿入し、パスコア構造を適用することで、トランス304の小型化や低背化を図りつつ、基板コイル104及び第2の基板コイル204の共振を誘起させることが可能となる。
【0069】
また、基板コイル103、104の巻き数と、第2の基板コイル203、204の巻き数は、同じであっても異なっていてもよい点、及び第2の基板コイル203、204の代わりに、通常の巻き線コイルを使用してもよい点は、実施例1のトランス30と同様である。
【0070】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
多層基板を構成する複数の層(1~8)に設けられた巻き線パターン(1a~8a)が該巻き線パターンにおける接続部(1d~8d、1e~8e)において電気的に接続されるとともに積層されることで形成される基板コイル(10、20)であって、
前記巻き線パターンにおける前記接続部は、平面視で所定の方向に延びた細長形状を有し、前記接続部どうしは、前記巻き線パターンの平面に対して垂直方向に導通するスルーホールによって接続され、
前記複数の層に設けられた前記巻き線パターンのうち、重ねられて互いに接続される二つの巻き線パターンの接続部の対と、次に接続される二つの巻き線パターンの接続部の対とは、平面視で重ならないように、且つ、前記所定の方向に垂直な方向に並ぶように形成されることを特徴とする、
基板コイル。
【符号の説明】
【0071】
1―8 :基板
1a―8a :巻き線パターン
10a :巻き線
1b :入力端子
1c :出力端子
1d―8d :接続箇所
1e―8e :接続箇所
1f―8f :開口
1g―8g :開口
1h―8h :開口
1i :出力端子
10、20 :基板コイル
30 :トランス
40 :磁気コア
40a :センターコア
40b、40c:サイドコア