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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】感熱転写媒体および情報記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20241008BHJP
   B41M 5/385 20060101ALI20241008BHJP
   B41M 5/392 20060101ALI20241008BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20241008BHJP
   B41M 3/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41M5/382 800
B41M5/385 300
B41M5/392 300
B41M5/40 300
B41M3/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020169879
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061745
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】浦田 誠子
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100061(JP,A)
【文献】特開2012-016866(JP,A)
【文献】特開2004-142445(JP,A)
【文献】特開2020-078913(JP,A)
【文献】特開2020-078889(JP,A)
【文献】特開2003-170685(JP,A)
【文献】特開2009-045931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0006127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、複数色の熱転写インクのインクパネルが面順次に塗り分けられて設けられた感熱転写媒体であって、前記インクパネルは、少なくとも、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのカラーインクパネルと、光輝性インクによる構造色でそれぞれレッド、グリーン、ブルーを呈する3つの光輝性インクパネルと、接着層パネルとを有してこの順で塗り分けられ、
前記光輝性インクパネルの少なくとも一つに蛍光剤が含まれており、前記蛍光剤が、紫外線を照射したときに前記蛍光剤が含まれている光輝性インクパネルの光輝性インクの呈する構造色と同等の色を呈するものである、
感熱転写媒体。
【請求項2】
前記光輝性インクは、合成マイカを核とし、酸化チタン(TiO)を被覆後、酸化鉄(Fe)を被覆した光輝性顔料を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写媒体。
【請求項3】
前記光輝性インクは、合成マイカを核とし、酸化ケイ素(SiO)を被覆後、酸化鉄(Fe)を被覆した光輝性顔料を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写媒体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の感熱転写媒体により、前記カラーインクパネルから転写された目視画像パターンと、前記光輝性インクパネルから転写された光輝性パターンとが形成され、該光輝性パターン中に、少なくとも一種の光輝性インクにより、個別情報が形成されていることを特徴とする情報記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、パスボートやIDカードなどに代表される個人認証媒体を作製するための感熱転写媒体ならびにそれを用いた情報記録体、その作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートや査証用ステッカー、あるいはカード類といった個人認証に係わる情報記録体においては、従来、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。セキュリティ機能として一般に使われているのは、有機溶剤等で反応する化学反応体、虹彩色のパールチップ、ファイバー(絹もしくは合成繊維、可視もしくは不可視、蛍光もしくは非蛍光)、ホログラムやマイクロ文字の印刷されたフィルムのセキュリティ糸、透かし模様等を盛り込んだ用紙や退色性インク、蛍光インク、感熱インク、光学的に変化するインク(いわゆるOVIなど)等の各種インク、細線印刷、レインボ一印刷、凹版印刷、ピクセル印刷等の様々な技法を組み込んでセキュリティと美観の同時向上を図っている。
【0003】
簡便な機器による判別を実施可能とする手段として、例えば、オフセット印刷などの従来公知の印刷技術を用いて、蛍光物質を含有した無色の蛍光インクをカードに印刷し、潜像を形成することが提案されている(特許文献1)が、このような方法では、ある種のカードに対して共通の潜像画像を形成するのに適しており、使用されているカード基材が本物であるかどうかの識別には良いが、発行されたカードの表示内容が本物かどうかを判別できるようにするためには、カード1枚毎に印刷版を作成する必要があり、現実的とは言えない。
【0004】
またカラーコピー機やスキャナー、カラーレーザープリンタが普及したことにより、容易に高精度な複製が可能になっている。一般的なカラーデジタル複写機は、CIS(Contact Image Sensor)を用いて原稿をカラーデジタル信号に変換し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)のトナーを用いてカラー画像の複製が可能である。
【0005】
そこでカラーデジタル複写機のトナーでは再現できない色を印刷することで、容易に複製できなくなる、例えば、緑、紫、燈、金、銀などを印刷することで、複写物での色の再現が困難とすることも行われ、さらに、干渉色を有する光輝性材料を印刷することで、カラーデジタル複写機での複製をより一層困難にすることも行われる。ただし、干渉色を有する光輝性材料は、パール顔料として化粧品や包装紙などに使用されており、一般の人でも入手が可能であり、簡単なパターンであれば、比較的容易に複製できてしまう可能性があり、セキュリティ性が十分とは言えない。
【0006】
一方、IDカードの目視確認情報としての顔写真等の画像を記録する方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。感熱転写記録方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、媒体ごとに個別の情報が容易に記録できるが、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、顔写真等の画像を取り除いた後の領域に新たに画像を形成して偽造・贋造することなども可能であることから、それだけでは十分なセキュリティ性を有しているとは言えない。
【0007】
上記のような問題を解決すべく、顔写真の他に個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。顔写真の中に電子透かし情報を入れ、その情報を同一媒体中のICチップに記憶して、電子透かし情報とICチップの情報を照合することで認証する方法がある(例えば、特許文献2参照)。また、顔写真情報の特徴点を数値化して、その値を2次元コード化し、同一媒体中に印字し、2次元コードのデータと顔写真の特徴点を照合することで認証する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、上記の各方式では顔写真やICチップや2次元コードを読み取るための専用のデコーダーが必要であり、読み取り装置およびデコーダーを所有している人以外認証出来ないという問題がある。他の検証方法として目視情報による認証が可能な顔写真を複数個入れる方法が考えられる。前記方式で設けた顔写真の他に、蛍光材料を用いて同じ顔写真を形成する方法がある(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。しかし上記の様な蛍光材料を用いる方法では、紫外線ランプ(ブラックライト)を用いる必要があるため、認証できる場面が限られている。
【0009】
また特許文献7には、感熱転写媒体であるインクリボンにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色パネルとホログラムで形成させたセキュリティパネルであるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)を同一フィルム上に形成したインクリボンが開示されているが、色パネルとホログラムのセキュリティパネルは一度に形成することができず、別工程となって高コストにならざるを得ないという問題がある。
【0010】
また特許文献7には、ホログラムにより特定視野角においてレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)を呈するホログラムリボンで画像形成された画像表示体が開示されているが、ホログラムは記録媒体への熱圧着の際に構造が崩れることで画像が歪んだり、熱による白化を伴ったりしたり、使用環境が限定的であるという課題があった。
【0011】
また別の構成として、中間転写媒体の中闘層に設けられたホログラムなどの光学的可変素子の効果によって、偽造防止性を発揮するものもある。ホログラムなどによって表現される立体画像や色変化などは装飾性も高く、偽造することも難しいという利点がある一方で、一見すると似たような効果を有するものを代用された場合に、目視による真偽判定を実施しようとする際には、真偽判定を行なう専門家でないと判別が難しいという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】実用新案登録第3029273号公報
【文献】特開2001-126046号公報
【文献】特開2004-70532号公報
【文献】特開平7-125403号公報
【文献】特開2000-141863号公報
【文献】特開2002-226740号公報
【文献】特許第5569106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、これらの問題点を踏まえてなされたもので、セキュリティ性のインクパネルを通常のカラーインクパネルと同一の工程で製造でき、個々の情報記録体に印字されている情報が真正であるかどうかの真贋判定が可能で、かつ、セキュリティ性の高いパターンを個別にオンデマンドで記録することができて偽造防止効果の高い感熱転写媒体および情報記録体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の一側面は、
支持体上に、複数色の熱転写インクのインクパネルが面順次に塗り分けられて設けられた感熱転写媒体であって、前記インクパネルは、少なくとも、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのカラーインクパネルと、光輝性インクによる構造色でそれぞれレッド、グリーン、ブルーを呈する3つの光輝性インクパネルと、接着層パネルとを有してこの順で塗り分けられ、前記光輝性インクパネルの少なくとも一つに蛍光剤が含まれており、前記蛍光剤が、紫外線を照射したときに前記蛍光剤が含まれている光輝性インクパネルの光輝性インクの呈する構造色と同等の色を呈する感熱転写媒体である。
【0015】
上記感熱転写媒体において、前記光輝性インクは、合成マイカを核とし、酸化チタン(TiO)を被覆後、酸化鉄(Fe)を被覆した光輝性顔料を含んでいて良い。
【0016】
上記感熱転写媒体において、前記光輝性インクは、合成マイカを核とし、酸化ケイ素(SiO)を被覆後、酸化鉄(Fe)を被覆した光輝性顔料を含んでいて良い。
【0019】
また、本発明の別の側面は、
上記のいずれかの感熱転写媒体により、前記カラーインクパネルから転写された目視画像パターンと、前記光輝性インクパネルから転写された光輝性パターンとが形成され、該光輝性パターン中に、少なくとも一種の光輝性インクにより、個別情報が形成されていることを特徴とする情報記録体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、通常のカラーインクパネルと、レッド、グリーン、ブルーを呈する光輝性インクのインクパネルが形成され、通常の目視画像パターンと、光輝性顔料を含む光輝性インクを複数組み合わせたセキュリティパターンを情報記録体上にオンデマンドで形成できる感熱転写媒体が得られ、該セキュリティパターンは、一般のカラーコピー機等で複製が困難で、また正面から見たときと角度を付けて見たときで互いに異なる色に見える態様とすることができるため、見る角度を切り替えることで容易に正規の情報記録体であることが判定でき、情報記録体の偽造防止効果が得られ、また真贋判定を行うことができる。
【0021】
更に蛍光剤を含む光輝性インクを用いた感熱転写媒体にすることで、リボン作製の難易度が上がり、可視光下の認証だけでなく、紫外光下での個人情報の確認もでき、2段階のセキュリティを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の感熱転写媒体の一例を示す模式図である。
図2】本発明の情報記録体を形成するプリンタの一例を示す模式図である。
図3】本発明で発行した情報記録体の一例を示す模式図である。
図4】本発明の実施例における情報記録体をX-X´で切断した断面図である。
図5】本発明の実施例における情報記録体を傾けたときと紫外線(UVライト)を照射したときのセキュリティ情報の変化の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実
施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。なお以下において同等の部材等には同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0024】
図1は、本発明の感熱転写媒体の一例を示す模式図である。感熱転写媒体1は、支持体2上に長手方向に複数の熱転写インクパネルが面順次に塗り分けられて形成された態様である。熱転写インクパネルは、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの4色のカラーインクパネルと、光輝性インクによりレッドR、グリーンG、ブルーBを呈する光輝性インクパネル、接着層パネル3で形成されている。各パネルの大きさは、最終的に記録を行う情報記録体の記録サイズの仕様に合わせるなどして適宜設定できる。また必要に応じセンサマークSを設けても良い。また、支持体2の各インクパネルと反対面側に、耐熱層、滑性層などのバックコート層を設けても良い。
【0025】
この様な構成の感熱転写媒体1によれば、間接転写記録装置により、中間転写媒体にまずブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの4色のカラーインクによるカラー画像および文字画像を形成し、さらにレッドR、グリーンG、ブルーBを呈する光輝性インクによりセキュリティパターンを転写することが容易に行える。さらに接着層を転写することで、被転写体である情報記録体への転写が確実に行えるようにすることができる。
【0026】
各熱転写インクパネルは、一般的な感熱転写媒体と同一工程、例えばグラビア印刷により形成することができる。感熱転写媒体1は少なくとも、上述の様にK/C/M/Y/R/G/B//接着層、のパネルを順次備え、通常の目視画像パターンを形成するインクパネルとなるK/C/M/Yとセキュリティパターンを形成する光輝性インクパネルとなるR/G/Bを配置する。本発明の感熱転写媒体は、中間転写記録方式に用いることができ、接着層パネル3は、一次転写工程で中間転写媒体に転写された目視画像パターンとセキュリティパターンからなる画像パターンを二次転写工程において情報記録体に再転写する際、情報記録体の被転写面と画像パターンを接着するための接着パネルである。
【0027】
光輝性インクに使用する光輝性顔料は、合成マイカを核とし、酸化チタン(TiO)や酸化ケイ素(SiO)を被覆後、酸化鉄(Fe)を被覆した材料とする。酸化チタン(TiO)や酸化ケイ素(Fe)は構造色効果を出すため、合成マイカに単に酸化鉄(Fe)を被覆した場合と異なり、傾けた時に反射光の波長の長さに応じた色を呈する。例えば合成マイカの核を酸化チタン(TiO)で被覆し、さらに酸化鉄(Fe)で被覆した構造とすると、ほぼ正面から見る場合は、干渉色がほとんど発生せず、酸化鉄の色である赤茶色に見える。これを30°程度の方向から見ると、干渉色が見える様になり緑色に、60°程度の方向から見ると青色に、それぞれ見える様にすることなどができる。
【0028】
光輝性顔料は酸化チタンや酸化ケイ素の被覆厚みと被覆した材料の屈折率によって構造色効果が出るため、傾けた時に反射光の波長の長さに応じた色を呈する。言い換えると、どの角度から見るとどの色を呈するようになるかは、必要な色の波長に応じた光路長(レッドR、グリーンG、ブルーB)となるように、被覆量をコントロールして設計し、作成することで決定できるので、適宜設定すればよい。
【0029】
光輝性インクパネルに添加する蛍光剤は、可視光下では、不可視即ち白色または透明で、紫外線などの特殊光を照射した際に、可視光領域の光を発光する発光材料であればいずれも用いることができる。例えば紫外線を照射するとエネルギー励起をして赤色発光する蛍光剤や、紫外線を照射するとエネルギー励起をして青色発光をする蛍光剤などを用いることができるが、これに限定されない。光輝性インクパネルに添加する蛍光剤は当該光輝性インクパネルの光輝性顔料と同等色でも異なる色でも構わない。光輝性顔料と同等色の色を発する蛍光剤を使用することで、紫外線を照射した際に蛍光剤が光輝性顔料と同等色に発光するため、フルカラー画像とすることが可能である。また蛍光剤を混ぜた光輝性顔料を用いるとことで偽変造防止効果がさらに高まる。
【0030】
光輝性インクを用いて情報記録体の所持者の個人情報などの個別情報などのセキュリティ情報を組み込み、この情報をオンデマンド(可変)印字することで、より偽造防止効果を高め、真贋判定を容易にすることが出来る。セキュリティ情報のパターンは文字、画像、記号、図形など形態を問わない。また情報記録体を傾けるだけで、光学変化を伴う個人情報の確認ができ、確認のために特殊な機器等を必要としないため、どのような状況においても容易に確認が行える。
【0031】
従来からセキュリティ機能として利用されているホログラムは、カラーインク(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK)とは感熱転写媒体に加工する際の工程が異なり、例えば、基材にカラーインクパネルを塗工により形成する一方で、ホログラムは基材に対して反射層の塗工工程、蒸着層の蒸着工程、エンボス加工工程など、工程数が多く煩雑であり、ホログラム加工したフィルムにカラーインクを塗工するか、カラーインク塗工をしたフィルムにホログラム加工をする必要があり、位置合わせが困難であるのに対し、本発明の光輝性インクを用いたレッドR、グリーンG、ブルーBのインクパネル形成は、カラーインクを塗工形成するのと同時に一緒に形成でき、加工工程が簡単かつ位置合わせは通常の塗工工程の中で行えるため、別工程とする必要はない。一連の塗工工程でカラーインクパネル(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK)と光輝性インクパネル(レッドR、グリーンG、ブルーB)を順次形成でき、安価に1つの感熱転写媒体(熱転写リボン)とすることができる。
【0032】
また、蛍光入り光輝性インクを用いる場合は、インク作製の際に用途に応じた蛍光剤を撹拌混合するだけで可能であり、感熱転写媒体形成は上記記載の手順にて同様に作製できる。バインダー中に分散させる蛍光体としては、例えば、ペリレン、1,1,4,4-テトラフェニル-1,3ブタジエン、及びポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)等の青色蛍光体;クマリン系色素、キナクリドン系色素、ポリ(p-フェニレンビニレン)、及びポリ(フルオレン)等の緑色蛍光体;又は、4-ジシアノメチレン-4H-ピラン誘導体、2,3-ジフェニルフマロニトリル誘導体、及びクマリン系色素等の赤色蛍光体を使用することができる。
【0033】
各インクパネルに用いられるバインダー樹脂としては、実質的に透明な熱可塑性樹脂であれば、いずれも用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ロジン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、また各熱可塑性樹脂を単独あるいは混合物、更には共重合物などの複合物として用いることができる。
【0034】
接着層パネル3に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などビニル系樹脂、塩素化ポリオレフィン、エチレン-アクリル共重合体、エポキシ系樹脂、ロジン系樹脂などを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものでなく、またこのような熱可塑性樹脂は、単独あるいは2つ以上の混合物または複合物として用いることができる。また、状況に応じて、無機系フィラー類、有機系フィラー類などの他に、ワックス類などが添加されても良い。
【0035】
図2は、本発明の情報記録体を作製する間接転写記録装置の例の概略ブロック図である。本発明の情報記録体は、上述の様な感熱転写媒体を使用して熱転写プリンタにより作製することができる。図6は熱転写プリンタを間接転写方式のプリンタで構成した例である。間接転写記録装置100において、感熱転写媒体1は、巻出しロール5から巻き出され、中間転写フィルム8への熱転写プリントを行う一次転写部101のサーマルヘッド7とプラテンローラ12の間を通過して巻取りロール6に巻き取られる。また中間転写フィルム8が、巻出しロール9から巻き出され、一次転写部101のサーマルヘッド7とプラテンローラ12の間を通過して、被転写体13に熱圧転写を行う二次転写部102でヒートローラ11とプラテンローラ12の間を通過して巻取りロール10に巻き取られる。
【0036】
一次転写部101においては、感熱転写媒体1から中間転写フィルム8の受像層ともなるオーバーレイ層上にブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの4色のインクパネルからカラー画像や文字等のパターンが転写され、光輝性顔料を色材とするレッドR、グリーンG、ブルーBの3色のインクパネルから光輝性パターンが転写される。次いで接着層パネル3がカード等の被転写体12に転写される領域全体にわたってさらに重畳転写される。各パターンが形成された中間転写フィルム8は二次転写部102に搬送され、ヒートローラ11により被転写体13に熱圧着されることで、一次転写部101で形成された各パターンがオーバーレイ層と共に被転写体13に転写される。カラー画像や文字等のパターン、光輝性パターン共に、サーマルヘッド7を適宜制御することで任意のパターンとすることができ、任意の個別情報を中間転写フィルム8に、そして被転写体13に形成することができる。
【0037】
図3は、上記の様にして各画像パターンが形成された本発明の情報記録体の一実施形態の平面図である。情報記録体13は、典型的にはIDカードなどのカード状であるが、シート状、冊子状であっても良く、平坦な記録面を持つ記録体であれば特に制限はない。情報記録体13には、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの4色のインクパネルから転写されて形成されたカラー画像のパターン14、文字等のパターン16と、レッドR、グリーンG、ブルーBを呈する光輝性顔料を色材とする3種類の光輝性インクのインクパネルから転写された光輝性パターン15が形成されている。
【0038】
各画像パターンが形成された情報記録体を線分X-X´で切断したときの断面を図4に例示する。図4に示した例は、図1に例示した感熱転写媒体1を使用して間接転写記録方式で光輝性パターン15を形成した情報記録体13である。情報記録体13は、基材12上に、感熱転写媒体1から中間転写フィルムに転写されたカラー画像のパターン14と、文字等のパターン16と、光輝性顔料を色材とする光輝性インクが転写された光輝性パターン15と、接着層パネル3が、中間転写フィルムのオーバーレイ層17と共に転写されている。基材12には接着層パネル3との接着性を高めるためのプライマ層などをあらかじめ設けておいても良い。
【0039】
図3に例示した情報記録体13を、通常環境下でほぼ正面から見たのが図5の上段の図である。このとき、光輝性インクが転写された光輝性パターン15aは、干渉色が見えず酸化鉄の色である赤茶色の単色のパターンとして見える。
【0040】
この情報記録体13を図5の中段の図の様に例えば30°程度倒して傾けた状態で見ると、光輝性パターン15bの部分は転写された光輝性インクに応じてレッドR、グリーンG、ブルーBの干渉色が見える様になりフルカラー画像として見える。従って、正面から見る状態と30°程度倒して傾けて見る状態を切り替えることで、光輝性パターンが単色に見えたりフルカラーに見えたりするため、真正性を判定するセキュリティ機能として利用することができる。このとき光輝性パターン15は、例示した様な顔画像に限らず、例えば名前、ID番号等の任意の個別情報のパターンとすることができる。
【0041】
また、光輝性インクパネルに蛍光剤を含有させた場合の例が図5の下段の図である。紫外線光源18から紫外線を照射すると、蛍光剤を含有させた領域では蛍光を発する。例え
ばレッドRの光輝性インクパネルに赤色に発光する蛍光剤を含有させ、グリーンGの光輝性インクパネルには緑色に発光する蛍光剤を含有させ、ブルーBの光輝性インクパネルには青色に発光する蛍光剤を含有させると、紫外線を照射したときに、光輝性パターン15cの部分は、レッドRの光輝性インクパネルが転写された部分は赤色に発光し、グリーンGの光輝性インクパネルが転写された部分は緑色に発光し、ブルーBの光輝性インクパネルが転写された部分は青色に発光するので、図5の中段の図に示した例と同様に、光輝性パターン15cの部分がフルカラー画像として見える。
【0042】
光輝性インクによるパターンが設けられていることは情報記録体13の傾きを変えて色変化を起すことで確認できるが、蛍光剤の効果は紫外線を照射するまで気づかれない。一般にセキュリティ機能は、その機能が設けられていること自体が分からないほうがセキュリティ性を高いとされるため、セキュリティをより高める効果がある。
【0043】
以上の様に本発明の感熱転写媒体によれば、個別情報を含む光輝性パターンを情報記録体に形成することができ、情報記録体を見る角度を変えることで、個別情報を含む所定の光輝性パターンが単色に見えたり、フルカラー画像として見えたりする状態を容易に切り替えることができ、また紫外線照射により発光パターンとして見える様にすることもでき、セキュリティ機能とするとすることで真正性の確認や偽造防止などの効果の高いものとすることができる。
【0044】
また本発明の感熱転写媒体を用いれば、通常のカラーインクパネルと光輝性インクパネルが一つの感熱転写媒体に一体化されているため、通常の熱転写プリンタを利用して、セキュリティパターンが付与された情報記録体をオンデマンドで発行できる。
【0045】
また、本発明の感熱転写媒体(熱転写リボン)では、光輝性インクにより目的の色(レッドR、グリーンG、ブルーB)を再現する際に、ホログラムの様なエンボス加工による構造を形成しないため、熱圧によって構造が崩れたり白化したりすることはなく、熱圧着しても目的とする色の再現が損なわれない。
【0046】
また、本発明の感熱転写媒体は、構造色を有する光輝性顔料を含む光輝性インクパネルを用いて印字することで、オンデマンドで個別情報を含む光輝性インクパターンを設けることができ、情報記録体を傾けるだけで色変化を伴い、容易且つ迅速に偽変造判定が可能になる。さらに、蛍光剤を混ぜた光輝性インクを感熱転写媒体とすることで、紫外線光下での認証も可能になり、2段階認証ができる。
【0047】
また、本発明の感熱転写媒体で使用する光輝性インクパネルは、カラーデジタル複写機のトナーでは再現できない色とすることで、複製を困難にし、さらに、干渉色を有する光輝性顔料を使用することで、カラーデジタル複写機での複製・再現をより一層困難にするものである。すなわち本発明で使用する光輝性顔料は、合成マイカを核とし、酸化チタン(TiO)や酸化ケイ素(SiO)を被覆後、酸化鉄(Fe)を被覆した材料として、情報記録体を傾けると光輝性インクパターン部分が赤茶色から、各干渉色に色変化を伴い、複製が困難であり、さらに、蛍光剤入り光輝性顔料とすることで、より構成を複雑化し、セキュリティ性を高めることができる。
【実施例
【0048】
<実施例1>
(感熱転写媒体の作製)
支持体である4.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材の片面に、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの各色素を含むカラーインクパネル、レッドRの光輝性顔料を含むセキュリティインク1、グリーンGの光輝性顔料を含むセキュリティ
インク2、ブルーBの光輝性顔料を含むセキュリティインク3からなる光輝性インクパネル、接着層パネルをポリエステル系樹脂に各種顔料を混合した混合樹脂をグラビアコーターにより、順次形成し、色材パネルの厚みが1.0μm、光輝性インクパネルの厚みが1.2μm、接着層パネルの厚みが1.2μmとし、感熱転写媒体とした。またPET基材の反対面側にバックコート層を設けた。
[シアンインクの組成]
シアン顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[マゼンタインクの組成]
マゼンタ顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[イエローインクの組成]
イエロー顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会ネ幻 80重量部
[ブラックインクの組成]
カーボンブラック顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[セキュリティインク1の組成]
レッド光輝性顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[セキュリティインク2の組成]
グリーン光輝性顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[セキュリティインク3の組成]
ブルー光輝性顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
【0049】
光輝性インクパネルに使用する光輝性顔料は、合成マイカ(合成ガラス)に酸化チタン(TiO)を被覆し、傾けると目的の干渉色(レッドR、グリーンG、ブルーB)を呈するものとし、更に酸化チタン(TiO)を被覆後に酸化鉄(Fe)を被覆することで、傾きがない時に酸化鉄(Fe)である赤茶色を呈するものとした。
【0050】
(中間転写媒体の作製)
12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材の片面に、オーバーレイ層としてエポキシ系樹脂をグラビアコーターにより、厚み0.8μmに形成し、中間転写媒体を得た。
[オーバーレイ層のインク組成]
jER1003(三菱ケミカル株式会社) 20重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
【0051】
上記の感熱転写媒体と中間転写媒体を用いて中間転写方式により情報記録体を作成した。プリンタはカードプリンタCP500(凸版印刷株式会社製)を使用し、カードを情報記録体とした。中間転写媒体と感熱転写媒体を対向配置し、サーマルヘッドを用いて感熱転写媒体に熱を加え、中間転写媒体のオーバーレイ層上に、カラーインク層、光輝性インク層、接着層の順に印画する。そして、情報記録体表面にオーバーレイ層、カラーインク層、光輝性インク層の各層が接着層を介してヒートローラによって熱転写されることにより、情報記録体を得た。
【0052】
第1画像形成部は、カラーインクパネル各色によって形成されたカラー画像および文字画像によって形成され、第二画像形成部は、光輝性インクパネルによって形成され、印画配置された。
【0053】
<実施例2>
(感熱転写媒体の作製)
支持体である4.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材の片面に、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの各色素を含むカラーインクパネル、レッドRの光輝性顔料を含むセキュリティインク4、グリーンGの光輝性顔料を含むセキュリティインク5、ブルーBの光輝性顔料を含むセキュリティインク6からなる光輝性インクパネル、接着層パネルを、ポリエステル系樹脂に各種顔料を混合した混合樹脂をグラビアコーターにより順次形成し、カラーインクパネルの厚みが1.0μm、光輝性インクの厚みが1.2μm、接着層パネルの厚みが1.2μmとし、感熱転写媒体とした。またPET基材の反対面側にバックコート層を設けた。
【0054】
[シアンインクの組成]
シアン顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[マゼンタインクの組成]
マゼンタ顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[イエローインクの組成]
イエロー顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[ブラックインクの組成]
カーボンブラック顔料 5重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[セキュリティインク4の組成]
レッド光輝性顔料 5重量部
蛍光剤A 3重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[セキュリティインク5の組成]
グリーン光輝性顔料 5重量部
蛍光剤B 3重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
[セキュリティインク6の組成]
ブルー光輝性顔料 5重量部
蛍光剤C 3重量部
バイロン500(東洋紡株式会社) 15重量部
MEK(東洋インク製造株式会社) 80重量部
光輝性インクパネルに用いるセキュリティインク4,5,6は、不可視即ち白色または透明で、紫外線を照射するとエネルギー励起をして目的の発光色を呈する蛍光剤A、B、Cをそれぞれ含有している。
他の材料は実施例1と同様である。
【0055】
(中間転写媒体)
実施例1と同様の中間転写媒体を使用した。
【0056】
上記の感熱転写媒体と中間転写媒体を用いて、実施例1と同様に、カードプリンタCP500で情報記録体であるカードを発行した。
【0057】
<実施例3>
実施例1と同様の感熱転写媒体と中間転写媒体を用い、CP500プリンタで1次転写までを行い、その後中間転写フィルムを取り出して一般的なカードラミネート機を用いて熱圧によるカード成形を行った。
【0058】
実施例1、実施例2、実施例3より、下記の効果が確認できた。
・一般的な感熱転写媒体であるイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKを形成するのと同一工程であるグラビア印刷により、光輝性インクを用いたセキュリティインクパネルであるレッドR、グリーンG、ブルーBの光輝性インクパネルを基材に形成することができ、カラーインクパネルと光輝性インクパネルの一体化が容易にできた。
・感熱転写媒体とすることで、オンデマンド記録に適した画像、文字、図形などを形成できた。
・可視光下での個人認証:カードを傾けると、光輝性インクパネルを用いて印画した第2画像形成部が、1つの画像として、赤茶色からフルカラーへの色変化が確認できた。
・紫外線下での個人認証:実施例2において、光輝性インクパネルに蛍光剤を含有させた場合、紫外線照射を行うと、光輝性インクパネルを用いて印画した第2画像形成部がフルカラー画像として発光し、色変化が確認できた。
・実施例3で、一般にホログラム画像の場合は130℃以上の熱圧によって白化および画像の歪みが発生していたが、光輝性顔料を用いた第2画像形成部は熱圧着による変化がなく、個人認証媒体を傾けることで実施例1同様の色変化を伴うことが確認された。
以上のことから、通常の感熱転写媒体と同様の加工工程で、新たなセキュリティを付与した感熱転写媒体を作製することができ、個人認証媒体とした時に複雑な偽造防止効果を発揮できた。
【符号の説明】
【0059】
1・・・感熱転写媒体
2・・・支持体
K・・・ブラック
C・・・シアン
M・・・マゼンタ
Y・・・イエロー
R・・・レッド
G・・・グリーン
B・・・ブルー
3・・・接着層パネル
4・・・感熱転写媒体巻き出し部
5・・・感熱転写媒体巻き取り部
6・・・サーマルヘッド
7・・・中間転写媒体
8・・・中間転写媒体巻き出し部
9・・・中間転写媒体巻き取り部
10・・・熱ロール
11・・・プラテンロール
12・・・基材
13・・・情報記録体
14・・・カラー画像のパターン
15・・・光輝性パターン
15a、15b、15C・・・光輝性パターン
16・・・文字等のパターン
17・・・オーバーレイ
18・・・紫外線光源
図1
図2
図3
図4
図5