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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/21
B41J2/01 203
B41J2/205
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020171067
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062888
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 貴義
(72)【発明者】
【氏名】牛尼 裕之
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134744(JP,A)
【文献】特開2002-292848(JP,A)
【文献】特開2019-171647(JP,A)
【文献】特開2014-176982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0182021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出するヘッドと、前記ヘッドの吐出制御をする制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域
を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像
の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上低い明度と
なる特定インクの吐出制御において、前記第1画像の端部を構成するドットの単位面積当
たりの数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画像の通常部を構成するドットの単
位面積当たりの数よりも少なくなるようにする特定インク吐出制御を行い、
前記境界領域を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの
内、前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定
値以上高い明度となる、前記複数のインクのうちの前記特定インクでないインクの吐出制
御において、前記通常部と同じハーフトーン処理をする、印刷装置。
【請求項2】
インク滴を吐出するヘッドと、前記ヘッドの吐出制御をする制御部と、を備え、
前記制御部は、第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから
成る境界領域を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、
前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以
上低い明度となる特定インクの吐出制御において、前記第1画像の端部を構成する所定ド
ットサイズのドットの単位面積当たりの数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画
像の通常部を構成する前記所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くな
るようにする特定インク吐出制御を行い、
前記所定ドットサイズは、前記インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズであ

前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値
以上高い明度となる、前記複数のインクのうちの前記特定インクでないインクの吐出制御
において、前記通常部と同じハーフトーン処理をする、印刷装置。
【請求項3】
前記特定インクは、前記第1画像の端部を形成する際のインク単体による明度が、前記
第2画像の端部の明度に対して、CIELAB色空間における明度L*の差が20以上で
あることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記特定インク吐出制御を行う際に、前記第1画像の端部を印刷するた
めの複数のインクの内、前記特定インク以外のインクの吐出制御において、前記特定イン
ク以外のインクの前記第1画像の端部を構成する単位面積当たりの量が、前記第1画像の
通常部を構成する単位面積当たりの量と異なるようにする色相補正制御を行う請求項1か
ら請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1画像が、前記第1画像の端部の画素と前記第1画像の通常部の
画素とが並ぶ方向において3画素数以上の画像である場合に、前記特定インク吐出制御を
行う請求項1から請求項のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
吐出するインク滴により印刷を行う印刷方法であって、
第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域を
印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像の
端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上低い明度とな
る特定インクの吐出において、前記第1画像の端部を構成するドットの単位面積当たりの
数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画像の通常部を構成するドットの単位面積
当たりの数よりも少なくなるようにし、第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い
第2画像の端部とから成る境界領域を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するため
の複数のインクの内、前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の
明度に対して所定値以上高い明度となる、前記複数のインクのうちの前記特定インクでな
いインクの吐出制御において、前記通常部と同じハーフトーン処理をする、印刷方法。
【請求項7】
吐出するインク滴により印刷を行う印刷方法であって、
第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域を
印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像の
端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上低い明度とな
る特定インクの吐出において、前記第1画像の端部を構成する所定ドットサイズのドット
の単位面積当たりの数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画像の通常部を構成す
る前記所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くなるようにし、
前記所定ドットサイズは、前記インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズであ

第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域を
印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像の
端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上高い明度とな
る、前記複数のインクのうちの前記特定インクでないインクの吐出制御において、前記通
常部と同じハーフトーン処理をする、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して印刷を行う印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される印刷制御装置のように、複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを組み合わせて形成することでフルカラー画像を印刷するインクジェットプリンターが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-195244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクジェットプリンターのように、インク滴を吐出してドットを形成する印刷装置の場合、様々な要因により、インク滴の着弾位置にずれが発生してしまうことがある。例えば、印刷画像のエッジにおいて、エッジ画素を形成するための複数のインクの内、特定の色のインク滴の着弾位置がずれてエッジからはみ出してしまう場合がある。つまり、インク滴を吐出して印刷を行う従来の印刷装置では、インク滴の着弾位置ずれにより、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまう場合があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、インク滴を吐出するヘッドと、前記ヘッドの吐出制御をする制御部と、を備え、前記制御部は、第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出制御において、前記第1画像の端部を構成するドットの単位面積当たりの数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画像の通常部を構成するドットの単位面積当たりの数よりも少なくなるようにする特定インク吐出制御を行う。
【0006】
本発明の印刷装置は、インク滴を吐出するヘッドと、前記ヘッドの吐出制御をする制御部と、を備え、前記制御部は、第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出制御において、前記第1画像の端部を構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画像の通常部を構成する前記所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くなるようにする特定インク吐出制御を行い、前記所定ドットサイズは、前記インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズである。
【0007】
本発明の印刷方法は、吐出するインク滴により印刷を行う印刷方法であって、第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出において、前記第1画像の端部を構成するドットの単位面積当たりの数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画像の通常部を構成するドットの単位面積当たりの数よりも少なくなるようにする。
【0008】
本発明の印刷方法は、吐出するインク滴により印刷を行う印刷方法であって、第1画像の端部と、前記第1画像より明度が高い第2画像の端部とから成る境界領域を印刷する際に、前記第1画像の端部を印刷するための複数のインクの内、前記第1画像の端部を形成する際の明度が、前記第2画像の端部の明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出において、前記第1画像の端部を構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数が、前記第1画像の端部に隣接する前記第1画像の通常部を構成する前記所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くなるようにし、前記所定ドットサイズは、前記インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る印刷装置の構成を示す正面図である。
図2】実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
図3】プリンタードライバーの基本機能の説明図である。
図4】ドット生成率テーブルの説明図である。
図5】ドット生成率テーブルをグラフ化した説明図である。
図6】印刷画像の例を示す模式図である。
図7】印刷画像の他の例を示す模式図である。
図8】第1画像の端部および通常部、第1画像の端部に隣接する第2画像G2の端部、第1画像の端部および第2画像G2の端部から成る境界領域の各領域を示す概念図である。
図9】着弾位置ずれにより発生する本発明の課題を例示する概念図である。
図10】印刷方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
本実施形態に係る印刷装置1の構成について、図1図2を参照して説明する。
なお、図面に付記する座標においては、Z軸方向が上下方向、+Z方向が上方向、X軸方向が前後方向、-X方向が前方向、Y軸方向が左右方向、+Y方向が左方向、X―Y平面が水平面としている。
【0011】
印刷装置1は、印刷部100、および、印刷部100に接続される画像処理部110によって構成されている。
印刷部100は、画像処理部110から受信する印刷データに基づいて、ロール状に巻かれた状態でセットされる長尺状の印刷媒体5に所望の画像を印刷するインクジェットプリンターである。
【0012】
画像処理部110は、画像制御部111、入力部112、表示部113、記憶部114などを備え、印刷部100に印刷を行わせる印刷ジョブの制御を行う。また、画像処理部110は、画像データに基づく所望の画像の印刷を印刷部100に実行させるための印刷データを生成する。
画像処理部110が動作するソフトウェアには、印刷する画像データを扱う一般的な画像処理アプリケーションソフトウェアや、印刷部100の制御や印刷部100に印刷を実行させるための印刷データを生成するプリンタードライバーソフトウェアが含まれる。以下の説明では、画像処理アプリケーションソフトウェアを単に画像処理アプリケーションと言い、プリンタードライバーソフトウェアを単にプリンタードライバーと言う。
ここで言う、画像データとは、テキストデータやフルカラーのイメージデータなども含むRGBのデジタル画像情報である。
【0013】
画像制御部111は、CPU115や、ASIC116、DSP117、メモリー118、装置内インターフェイス119、汎用インターフェイス120などを備え、印刷装置1全体の集中管理を行う。CPUは、Central Processing Unit、ASICは、Application Specific Integrated Circuit、DSPは、Digital Signal Processorを意味する。
入力部112は、ユーザーインターフェイスとしての情報入力手段である。具体的には、例えば、キーボードやマウスポインターなどである。
表示部113は、ユーザーインターフェイスとしての情報表示手段であり、画像制御部111の制御の基に、入力部112から入力される情報や、印刷部100に印刷する画像、印刷ジョブに関係する情報などが表示される。
【0014】
記憶部114は、ハードディスクドライブやメモリーカードなどの書き換え可能な記憶媒体であり、画像処理部110が動作するソフトウェアとしての画像制御部111で動作するプログラムや、印刷する画像、印刷ジョブに関係する情報などが記憶される。
メモリー118は、CPU115が動作するプログラムを格納する領域や動作する作業領域などを確保する記憶媒体であり、RAM、EEPROMなどの記憶素子によって構成される。RAMは、Random access memory、EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryを意味する。
汎用インターフェイス120は、例えば、LANインターフェイスやUSBインターフェイスなど、外部電子機器を接続できるインターフェイスである。LANは、Local Area Network、USBは、Universal Serial Busを意味する。
【0015】
印刷部100は、インク付与部10、移動部20、印刷制御部30などから構成されている。画像処理部110から印刷データを受信した印刷部100は、印刷データに基づき、印刷制御部30によってインク付与部10、移動部20を制御し、印刷媒体5に画像を印刷する。
印刷データは、画像データを、画像処理部110が備える画像処理アプリケーションおよびプリンタードライバーによって印刷部100で印刷できるように変換処理した画像形成用のデータであり、印刷部100を制御するコマンドを含んでいる。
【0016】
インク付与部10は、ヘッドユニット11、インク供給部12などから構成されている。
移動部20は、走査部40、搬送部50などから構成されている。
走査部40は、キャリッジ41、ガイド軸42、キャリッジモーターなどから構成されている。キャリッジモーターは、図示を省略している。
搬送部50は、供給部51、収納部52、搬送ローラー53、プラテン55などから構成されている。
【0017】
ヘッドユニット11は、印刷用のインクをインク滴として吐出する複数のノズルを列設したノズル列を複数備えるヘッド13およびヘッド制御部14を備えている。ヘッドユニット11は、キャリッジ41に搭載され、走査方向としてのX軸方向に移動するキャリッジ41に伴ってX軸方向に往復移動する。
【0018】
インク供給部12は、インクタンクおよびインクタンクからヘッド13にインクを供給するインク供給路などを備えている。インクタンクおよびインク供給路については、図示を省略する。
インクには、シアンC、マゼンタM、イエローYの3色のインクセットにブラックKのインクを加えた4色のインクセットを用いている。
なお、インクは、これらの4色のインクに限定するものではない。例えば、それぞれの色材の濃度を淡くしたライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、ライトブラックなどのインクセットを加えた8色のインクセットなどを用いてもよい。
インクタンク、インク供給路、および同一インクを吐出するノズルまでのインク供給経路は、インクごとに独立して設けられている。
【0019】
移動部20、つまり走査部40および搬送部50は、印刷制御部30の制御の下に、印刷媒体5をヘッド13に対し相対移動させる。
ガイド軸42は、X軸方向に延在してキャリッジ41を摺接可能な状態で支持する。また、キャリッジモーターは、キャリッジ41をガイド軸42に沿って往復移動させる際の駆動源となる。つまり、走査部40は、印刷制御部30の制御の下にキャリッジ41を、つまりは、ヘッド13をガイド軸42に沿ってX軸方向に移動させる。キャリッジ41に搭載されたヘッドユニット11に備えられたヘッド13が、X軸方向に移動しながら印刷制御部30の制御の下に、プラテン55に支持される印刷媒体5にインク滴を吐出することによって、X軸方向に沿った複数のドット列が印刷媒体5に形成される。
なお、本実施形態においては、画像制御部111と印刷制御部30とによって、画像データに基づきヘッド13と移動部20とを制御し印刷を行う制御部60を構成している。
すなわち、制御部60は、ヘッド13の吐出制御と、印刷媒体5に対するヘッド13の相対移動制御とを行う。
【0020】
供給部51は、印刷媒体5がロール状に巻かれたリールを回転可能に支持し、印刷媒体5を搬送経路に送り出す。収納部52は、印刷媒体5を巻き取るリールを回転可能に支持し、印刷が完了した印刷媒体5を搬送経路から巻き取る。
搬送ローラー53は、プラテン55の上面において印刷媒体5を搬送方向としてのY軸方向に移動させる駆動ローラーや印刷媒体5の移動に伴って回転する従動ローラーなどから成り、印刷媒体5を供給部51からインク付与部10の印刷領域を経由し、収納部52に搬送する搬送経路を構成する。印刷領域は、プラテン55の上面でヘッド13がX軸方向に移動する領域である。
【0021】
印刷制御部30は、装置内インターフェイス31、CPU32、メモリー33、駆動制御部34などを備え、印刷部100の制御を行う。
装置内インターフェイス31は、画像処理部110の装置内インターフェイス119に接続され、画像処理部110と印刷部100との間でデータの送受信を行う。
CPU32は、印刷部100全体の制御を行うための演算処理装置である。
メモリー33は、CPU32が動作するプログラムを格納する領域や動作する作業領域などを確保する記憶媒体であり、RAM、EEPROMなどの記憶素子によって構成される。
CPU32は、メモリー33に格納されているプログラム、および画像処理部110から受信した印刷データに従って、駆動制御部34を介してインク付与部10、移動部20を制御する。
【0022】
駆動制御部34は、CPU32の制御に基づいて動作するファームウェアを含み、インク付与部10のヘッドユニット11、インク供給部12や、移動部20の走査部40、搬送部50の駆動を制御する。駆動制御部34は、移動制御信号生成回路35、吐出制御信号生成回路36、駆動信号生成回路37などを含む駆動制御回路、これら駆動制御回路を制御するファームウェアを内蔵するROMやフラッシュメモリーなどから構成されている。駆動制御回路を制御するファームウェアを内蔵するROMやフラッシュメモリーについては、図示を省略している。ここで、ROMは、Read-Only Memoryを意味する。
【0023】
移動制御信号生成回路35は、印刷データに基づき、CPU32からの指示に従って、移動部20の走査部40や搬送部50を制御する信号を生成する回路である。
吐出制御信号生成回路36は、印刷データに基づき、CPU32からの指示に従って、インクを吐出するノズルの選択、吐出する量の選択、吐出するタイミングの制御などをするためのヘッド制御信号を生成する回路である。
駆動信号生成回路37は、ヘッド13が備える圧力発生室を駆動する駆動信号を生成する回路である。
【0024】
以上の構成により、印刷制御部30は、供給部51、搬送ローラー53によって印刷領域に供給された印刷媒体5に対し、ガイド軸42に沿ってヘッド13を支持するキャリッジ41をX軸方向移動させながらヘッド13からインク滴を吐出する動作と、搬送ローラー53によりX軸方向と交差する+Y方向に印刷媒体5を移動させる動作とを繰り返すことにより、印刷媒体5に所望の画像を印刷する。
【0025】
印刷媒体5への印刷は、画像処理部110から印刷部100に印刷データが送信されることにより開始される。印刷データは、プリンタードライバーによって生成される。
以下、プリンタードライバーが行う印刷データの生成処理について、図3を参照しながら説明する。
【0026】
プリンタードライバーは、画像処理アプリケーションから画像データを受け取り、印刷部100が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データを印刷部100に出力する。画像処理アプリケーションからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスターライズ処理、コマンド付加処理などを行う。
【0027】
解像度変換処理は、画像処理アプリケーションから出力された画像データを、印刷媒体5に印刷する際の解像度に変換する処理である。例えば、印刷する際の解像度が720×720dpiに指定されている場合、画像処理アプリケーションから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。解像度変換処理後の画像データの各画素データは、マトリクス状に配置された画素から構成されている。各画素はRGB色空間の例えば256階調の階調値を有している。つまり、解像度変換後の画素データは、対応する画素の階調値を示すものである。以下、RGB色空間の階調値データをRGBデータと言う。
マトリクス状に配置された画素の内の、所定の方向に並ぶ1列分の画素に対応する画素データをラスターデータと言う。なお、ラスターデータに対応する画素が並ぶ所定の方向は、画像を印刷するときのヘッド13の移動方向、具体的にはX軸方向と対応している。
【0028】
色変換処理は、画像データのRGBデータをCMYK色空間の階調値データに変換する処理である。CMYK色とは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックであり、CMYK色空間の画像データは、印刷部100が有するインクの色に対応したデータである。従って、例えば、印刷部100がCMYK色系の4種類のインクを使用する場合には、プリンタードライバーは、RGBデータに基づいて、CMYK色系の4次元空間の画像データを生成する。CMYK色空間の階調値データは、すなわちインク量データである。以下、CMYK色空間の階調値データをCMYKデータと言う。
この色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけた色変換ルックアップテーブルに基づいて行われる。なお、色変換処理後の画素データは、CMYK色空間により表される例えば256階調のCMYKデータである。
【0029】
ハーフトーン処理は、高階調数のデータ、例えば256階調のデータを、印刷部100が形成可能な階調数のデータに変換する処理である。このハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、ドット無し、小ドット、中ドット、大ドットの4階調を示す2ビットのハーフトーンデータに変換される。具体的には、0~255の階調値とドット生成率とが対応したドット生成率テーブルから、階調値に対応するドットの生成率を求める。階調値に対応して求められるドットの生成率は、ドット無し、小ドット、中ドット、大ドットのそれぞれの生成率が求められる。得られたそれぞれの生成率において、ディザ法・誤差拡散法などを利用して、ドットが分散して形成されるように画素データが作成される。
【0030】
ドット生成率テーブルは、図4図5に示すように、画像データに含まれる画素毎の階調値と印刷部100が印刷媒体5に形成するドットのドットサイズ毎のドット生成率とを対応付けるテーブルであり、インクの色毎に、印刷部100内のメモリー33に記憶されている。各ドットサイズの1ドット当たりの吐出量とドット生成数との積の総和が、インク吐出量である。
図5に示すグラフの横軸は画素データの示す階調値を表し、左側の縦軸はドット生成率を表し、右側の縦軸はドット生成数を表す。また、Sは小ドット、Mは中ドット、Lは大ドットを示している。
ある階調値iにおけるドット生成率は、印刷媒体5上の単位領域に対応する全画素データがその階調値iを示す場合に、その単位領域に属する画素の中でドットが形成される画素の割合を意味する。同様に、ある入力階調値iに対するドット生成数は、印刷媒体5上の単位領域に対応する全画素データがその入力階調値iを示す場合に、その単位領域に形成されるドットの数を意味する。
【0031】
ラスターライズ処理は、マトリクス状に並ぶ上述の2ビットの画素データを、印刷時のドット形成順序に従って並べ替える処理である。ラスターライズ処理には、ハーフトーン処理後の画素データによって構成される画像データを、ヘッド13が移動しながらインク滴を吐出する各パスに割り付けるパス割り付け処理が含まれる。パス割り付けが完了すると、印刷画像を構成する各ラスターラインを形成する実際のノズルが割り付けられる。
【0032】
コマンド付加処理は、ラスターライズ処理されたデータに、印刷方式に応じたコマンドデータを付加する処理である。コマンドデータとしては、例えば印刷媒体5の搬送仕様に関わる搬送データなどがある。搬送仕様とは、例えば、プラテン55の上面における印刷媒体5の搬送方向への移動量や速度などである。
プリンタードライバーによる前記一連の処理は、CPU115の制御の元にASIC116およびDSP117によって行われ、印刷データ送信処理では、前記一連の処理で生成された印刷データが、装置内インターフェイス119を介して印刷部100に送信される。
【0033】
ところで、ノズルから吐出されるインク滴が印刷媒体5に着弾する着弾位置、つまり、インク滴によってドットが形成される位置は、ヘッド13がインク滴を吐出するタイミング、インク滴を吐出するノズルの位置、ヘッド13と印刷媒体5との相対移動速度、インク滴の吐出速度、ヘッド13から印刷媒体5までの距離、インク滴を吐出する方向、印刷媒体5の搬送精度などにより変動する。インク滴の着弾位置がばらつき、所定の着弾位置からずれる度合いが大きくなるほど、印刷品質が低下してしまうことになる。そのため、予め、設定された印刷条件における着弾位置のばらつきの状態を評価し、ばらつきが低減されるように、インク滴の吐出タイミングや、各稼動部の稼動量などを補正しておくことが望ましい。
本実施形態では、着弾位置ずれの補正に当たり、小ドット、中ドット、大ドットのドットサイズの内、着弾位置ずれによる印刷品質への影響が大きく、また、印刷領域における気流の影響など、印刷環境の影響を受け難い大きなインク滴による大ドットの形成位置を評価することにより、着弾位置ずれの補正を行っている。
【0034】
しかしながら、完全にインク滴の着弾位置ずれを無くすことは困難であり、例えば、より大判の印刷媒体5に対して、より高精彩で、より高速な印刷を行おうとした場合に、着弾位置ずれにより所望の印刷品質が得られない場合がある。例えば、印刷画像のエッジにおいて、エッジ画素を形成するための複数のインクの内、特定の色のインク滴のみが、所定の着弾位置からずれてエッジからはみ出してしまう場合がある。その結果、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまう場合がある。
以下に具体的に説明する。
【0035】
図6に示す画像G0は、印刷領域において印刷媒体5に印刷された画像の例であり、文字Hを表す第1画像G1と、第1画像G1の周囲を囲む第2画像G2とから成る。第1画像G1は、第2画像G2より濃い色の画像であり、第2画像G2は、第1画像G1の下地となる淡い色のベタ画像である。
なお、以下に記述する説明も含めて、印刷媒体5が白色、あるいは、淡い色の場合には、第2画像G2は、インクを付与しない印刷媒体5の地白の画像であってもよい。
また、図7に示すように、文字Hを表す画像は、下地となる濃い色のベタ画像に対して、淡い色で抜き文字として表す画像であってもよい。この場合、画像G0は、文字Hを表す第2画像G2と、第2画像G2の周囲を囲む第1画像G1とから成る。第1画像G1は、第2画像G2より濃い色の画像であり、第2画像G2は、第1画像G1より淡い色の画像である。
【0036】
以下では、説明を簡単にするため、第1画像G1は黒色、第2画像G2は、インクを付与しない印刷媒体5の紙白の画像とし、図6図7に共通する境界領域G12について説明する。
ここで、境界領域G12は、図8に示すように、第1画像G1の端部G1eと、この端部G1eに隣接し、端部G1eより明度が高い第2画像G2の端部G2eとから成る領域とする。また、第1画像G1の端部G1e、第2画像G2の端部G2eとは、色変換処理を行う前のRGB色空間の画像データにおける、それぞれの画像の端部に位置する画素データに対応する領域である。
第1画像G1は、図8に示すように、コンポジットブラックを構成するCMY各色のインクと、ブラックインクKとから構成される。
【0037】
図9は、第1画像G1を構成する複数のインクの内、マゼンタMのインク滴のみの着弾位置が、主として+X方向にずれて、第2画像G2の端部G2eの領域にはみ出している様子を示している。このような場合において、はみ出すマゼンタの階調値が大きい場合、つまり、はみ出すマゼンタのインク量が多い場合に、第1画像G1のエッジにマゼンタ色が視認されるようになる。
【0038】
これに対し、本実施形態の印刷装置1は、境界領域G12を印刷する際に、上記のマゼンタMのインクのように、第1画像G1のエッジに意図しない色として視認されるようになってしまう特定インクの吐出制御において、意図しない色が視認されることが抑制される特定インク吐出制御を行う。
以下に、特定インク吐出制御の具体的な実施例について説明する。
【0039】
1.1.実施例1
印刷装置1において、印刷を行う画像G0の内、画像G0を構成する第1画像G1の端部G1eと、第1画像G1より明度が高い第2画像G2の端部G2eとから成る境界領域G12を印刷する際に、制御部60は、第1画像G1の端部G1eを印刷するための複数のインクの内、第1画像G1の端部G1eを形成する際の明度が、第2画像G2の端部G2eの明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出制御において、第1画像G1の端部G1eを構成するドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成するドットの単位面積当たりの数よりも少なくなるようにする特定インク吐出制御を行う。
【0040】
ここで、特定インクは、第1画像G1の端部G1eを印刷する複数のインクに含まれるインクであって、第1画像G1の端部G1eを形成する際のインク単体による明度が、第2画像G2の端部G2eの明度に対して所定値以上低い明度となるインクである。明度差の所定値としては、好適例として、CIELAB色空間、つまり、CIE1976(L***) 色空間のおける明度L*の差20を用いている。
例えば、図8に示す第1画像G1の端部G1eにおいてコンポジットブラックを形成している階調値のマゼンタMのインク単体による印刷の明度と、第2画像G2の端部G2eの明度とを比較して、マゼンタMのインク単体による印刷の明度L*の値が、第2画像G2の端部G2eの明度L*の値より20以上低い場合に、マゼンタMのインクを特定インク吐出制御の対象とする特定インクとする。
なお、CIEは、国際照明委員会Commission internationale de l'eclairageを意味する。
【0041】
このような特定インクに対して、制御部60は、特定インク吐出制御として、第1画像G1の端部G1eを構成するドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成するドットの単位面積当たりの数よりも少なくなるようにする。なお、第1画像G1の端部G1eを構成するドットの単位面積当たりの数とは、印刷データとして設定される値であり、印刷媒体5にインク滴を吐出して形成された結果のドットの数を言うものではない。
【0042】
ここで、単位面積当たりのドットの数を少なくする方法としては、第1画像G1の端部G1eの明度や色合いが変わらないようにドットの数を減少させる方法であることが好ましい。第1画像G1の端部G1eの明度や色合いが変わらないようにドットの数を減少させる方法としては、例えば、小ドット、中ドット、大ドットのトータルとしての単位面積あたりのインク量を変えないようにする中で、小ドットを中ドットや大ドットに、また中ドットを大ドットに代えて、トータルとしてのドット数を減らす方法がある。
この処理は、例えば、ハーフトーン処理において、ドット生成率テーブルを切り替えることにより行う。つまり、第1画像G1の通常部G1nは、通常のドット生成率テーブルにより小ドット、中ドット、大ドットを発生させ、第1画像G1の端部G1eは、特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルにより行う。特定インク吐出制御で用いるドット生成率テーブルは、通常のドット生成率テーブルに比較して、より大きなドットの発生数を高くし、トータルのドット数を減少させるテーブルである。特定インク吐出制御で用いるドット生成率テーブルは、予め、充分な評価を行うことにより準備しておく。
【0043】
なお、印刷品質として許容できる範囲であれば、第1画像G1の端部G1eの明度や色合いが変化してしまう方法であってもよい。例えば、特定インク吐出制御で採用するドット生成率テーブルは、通常のドット生成率テーブルに比較して、一律、小ドット、中ドット、大ドットの発生数を少なくするテーブルであってもよい。
【0044】
1.2.実施例2
印刷装置1において、印刷を行う画像G0の内、境界領域G12を印刷する際に、制御部60は、上記特定インクの吐出制御において、第1画像G1の端部G1eを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くなるようにする特定インク吐出制御を行う。
ここで、所定ドットサイズとは、インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズである。この処理は、例えば、実施例1の場合と同様に、ハーフトーン処理において、ドット生成率テーブルを切り替えることにより行う。つまり、第1画像G1の通常部G1nは、通常のドット生成率テーブルにより小ドット、中ドット、大ドットを発生させ、第1画像G1の端部G1eは、特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルにより行う。
【0045】
具体的に説明すると、印刷装置1では、大ドットの形成位置を評価することにより、着弾位置ずれの補正を行っているため、本実施例における特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルは、通常のドット生成率テーブルに比較して、大ドットの発生数を高くするテーブルである。なお、このテーブルは、第1画像G1の端部G1eの明度や色合いの変化を抑えるため、実施例1の場合と同様に、トータルとしての単位面積あたりのインク量を変えない中で、大ドットを増加させるテーブルであることが好ましい。
なお、着弾位置を調整した際のドットサイズが、大ドット以外で、例えば、中ドットの場合には、特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルは、通常のドット生成率テーブルに比較して、中ドットの発生数を高くするテーブルとなる。
【0046】
1.3.実施例3
上述した実施例では、第1画像G1の端部G1eにおけるインク滴の吐出制御において、特定インクのみの吐出制御を、特定インク吐出制御として異なる制御で行った。この特定インク吐出制御の仕様を、つまり、例えば、特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルの仕様を充分な評価に基づき決定した場合であっても、結果として、第1画像G1の端部G1eが、第1画像G1の通常部G1nに対して色差のある領域として視認されるようになってしまう場合がある。これに対して、本実施例では、その色差の度合いを低減するため、特定インク以外のインクについても、第1画像G1の通常部G1nにおける吐出制御とは異なる吐出制御を行う。
すなわち、本実施例では、制御部60は、第1画像G1の端部G1eにおけるインク滴の吐出制御において、特定インクについて特定インク吐出制御を行う際に、第1画像G1の端部G1eを印刷するための複数のインクの内、特定インク以外のインクの吐出制御において、特定インク以外のインクの第1画像G1の端部G1eを構成する単位面積当たりの量が、第1画像G1の通常部G1nを構成する単位面積当たりの量と異なるようにする色相補正制御を行う。
【0047】
色相補正制御は、例えば、特定インク吐出制御と同様に、ドット生成率テーブルを切り替えることにより行う。つまり、第1画像G1の通常部G1nは、通常のドット生成率テーブルにより小ドット、中ドット、大ドットを発生させ、第1画像G1の端部G1eは、特定インクに対して特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルにより行い、特定インク以外のインクに対して色相補正用のドット生成率テーブルにより行う。色相補正用のドット生成率テーブルは、予め、特定インク吐出制御によって発生する色差を抑制する仕様として充分な評価に基づき決定しておく。
【0048】
なお、第1画像G1が、細線や、細線で構成される文字の場合、特に、細線が1~2画素である場合には、第1画像G1の全体が、特定インク吐出制御の対象となるため、色相補正制御を行った場合であっても、元画像とは異なる色相の画像となってしまう場合がある。従って、上述の実施例のいずれにおいても、制御部60は、第1画像G1が、第1画像G1の端部G1eの画素と第1画像G1の通常部G1nの画素とが並ぶ方向において3画素数以上の画像である場合に、特定インク吐出制御を行うようにすることが好ましい。
【0049】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、実施例1、あるいは実施例2における印刷方法の例を説明する。以下の処理は、いずれも、画像処理部110において、画像制御部111の制御の下において行われる。
まず、ステップS1として、印刷する画像データを取得する。具体的には、画像処理アプリケーションの機能において、汎用インターフェイス120を介して、外部電子機器から、印刷対象の画像データを取得する。あるいは、予め取得し、記憶部114に記憶しておいた画像データの中から印刷対象の画像データを選択する。
【0050】
次に、ステップS2として、取得した画像データの解像度変換処理を行い、続いて、ステップS3として、エッジ画素抽出処理を行う。
エッジ画素抽出処理は、例えば、文字や線画などの印刷画像の輪郭を構成するエッジ画素を画像データに基づき抽出し、後述するエッジ処理の対象とするエッジ画素領域を抽出する処理である。具体的には、解像度変換が完了したRGBの画像データを、レッドR、グリーンG、ブルーBの各チャンネルに分解し、チャンネル毎にエッジ画素Rf、エッジ画素Gf、エッジ画素Bfを抽出し、それらをマージすることにより行う。各チャンネルにおけるエッジ画素の抽出は、注目画素と、その周辺のいずれかの画素の階調値との階調値の差が所定の判定閾値を上回り、また、注目画素の階調値が所定の判定閾値を上回った周囲の画素の階調値より大きい場合に、注目画素をエッジ画素と判定する。エッジ画素を抽出する際の所定の判定閾値は、階調値が0~255の場合、例えば90とする。
抽出されたエッジ画素は、メモリー118に記憶しておく。
【0051】
次に、ステップS4として、ステップS2で解像度変換された画像データの色変換処理を行いRGB空間の画像データをCMYK空間の画像データに変換する。
次に、CMYK空間の画像データに対してハーフトーン処理を行う。
【0052】
ハーフトーン処理では、まず、ステップS5として、処理対象の画素が、通常のハーフトーン処理対象の画素であるか、特定インクを含むインクによる印刷が行われる画素であるかの判定を行う。
特定インクを含むインクによる印刷が行われる画素であるかの判定は、まず、ステップS3で抽出されたエッジ画素であるか否かを判定し、エッジ画素である場合には、エッジ画素を形成するためのCMYKのインクに、特定インク吐出制御を行う対象の特定インクが含まれるかを判定する。
【0053】
エッジ画素を形成するためのCMYKのインクに特定インクが含まれるかの判定は、エッジ画素を形成するCMYKそれぞれの階調値におけるCMYKそれぞれの単色の画像の明度L*値と、エッジ画素に隣接する周囲の画素の明度L*値とを比較し、エッジ画素に隣接する周囲の画素の明度L*値より所定値として20以上低い明度L*値を示すCMYKのいずれかのインクを特定インクとして判定する。例えば、エッジ画素のデータが、CMYK(c1、m1、y1、k1)であり、エッジ画素に隣接する画素のデータが、CMYK(c2、m2、y2、k2)である場合、CMYK(c1、0、0、0)、CMYK(0、m1、0、0)、CMYK(0、0、y1、0)、CMYK(0、0、0、k1)のそれぞれに対応する明度L*値と、CMYK(c2、m2、y2、k2)に対応する明度L*値とを比較し、20以上低い明度L*値を示すインクを、特定インクとして判定する。
【0054】
ステップS5において通常のハーフトーン処理対象の画素であると判定された画素、つまり、エッジ画素以外の画素、および、エッジ画素であっても、エッジ画素を形成するためのCMYKのインクに特定インクが含まれないと判定された画素に対し、ステップS6として、通常のハーフトーン処理を行う。
また、ステップS5において特定インクを含むインクによる印刷が行われる画素であると判定された画素に対し、ステップS7として、エッジ処理を伴うハーフトーン処理を行う。
ステップS7として行うエッジ処理を伴うハーフトーン処理とは、上述の実施例で示した特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルにより行うハーフトーン処理である。
【0055】
次に、ステップS8として、ステップS6によって生成された画像データと、ステップS7によって生成された画像データとをマージしてハーフトーン処理を完了する。
以降、ステップS9のラスターライズ処理、ステップS10のコマンド付加処理を経て印刷データが生成され、ステップS11において印刷データが印刷部100に送信されて印刷が実行される。
【0056】
すなわち、本実施形態における印刷方法としては、ステップS7におけるエッジ処理において、実施例1で説明した特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルを用いてハーフトーン処理を行う場合、境界領域G12を印刷する際に、特定インクの吐出において、第1画像G1の端部G1eを構成するドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成するドットの単位面積当たりの数よりも少なくなるようにする。
【0057】
また、本実施形態における印刷方法としては、ステップS7におけるエッジ処理において、実施例2で説明した特定インク吐出制御用のドット生成率テーブルを用いてハーフトーン処理を行う場合、境界領域G12を印刷する際に、特定インクの吐出において、第1画像G1の端部G1eを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くなるようにする。ここで、所定ドットサイズは、インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズである。
【0058】
なお、本実施形態では、特定インク吐出制御、つまり、特定インクを含むインクによる印刷が行われる画素のインク吐出制御を行うための印刷データの生成は、ハーフトーン処理において、ドット生成率テーブルを切り替えることにより行うと説明したが、この方法に限定するものではない。例えば、ステップS4の色変換処理によって生成されたCMYK空間の画像データを、一旦、一括で通常のハーフトーン処理を実行してしまい、その後、特定インクを含むインクによる印刷が行われる画素についてのみ、特定インク吐出制御が行われるように補正する方法であってもよい。
【0059】
2.実施形態の効果
実施例1によれば、以下の効果を得ることができる。
制御部60は、第1画像G1の端部G1eと、第1画像G1より明度が高い第2画像G2の端部G2eとから成る境界領域G12を印刷する際に、第1画像G1の端部G1eを印刷するための複数のインクの内、第1画像G1の端部G1eを形成する際のインク単体の明度が、第2画像G2の端部G2eの明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出制御において、第1画像G1の端部G1eを構成するドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成するドットの単位面積当たりの数よりも少なくなるようにする特定インク吐出制御を行う。そのため、インク滴が着弾する位置がずれてしまう場合がある印刷装置1において、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に形成される特定インクによるドットの数が少なくなる。
この特定インク吐出制御において、第1画像G1の端部G1eを形成するための特定インクのドットサイズを変えない場合には、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に付与される特定インクの量が少なくなるため、インク滴の着弾位置ずれにより、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまうことが抑制される。
また、特定インク吐出制御において、第1画像G1の端部G1eの階調値を変えない場合には、第1画像G1の端部G1eを形成するための特定インクのドットサイズを大きくする。ドットサイズを大きくする制御は、インク滴を大きくする制御であるため、インク滴が小さい場合と比較して、例えば、風などの影響を受けにくく、飛翔経路が安定するため、着弾位置ずれにより、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に着弾してしまう度合いが軽減される。その結果、インク滴の着弾位置ずれにより、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまうことが抑制される。
【0060】
また、実施例2によれば、制御部60は、第1画像G1の端部G1eと、第1画像G1より明度が高い第2画像G2の端部G2eとから成る境界領域G12を印刷する際に、第1画像G1の端部G1eを印刷するための複数のインクの内、第1画像G1の端部G1eを形成する際のインク単体の明度が、第2画像G2の端部G2eの明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出制御において、第1画像G1の端部G1eを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くなるようにする特定インク吐出制御を行う。ここで、所定ドットサイズは、インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズである。そのため、インク滴が着弾する位置がずれてしまう場合がある印刷装置1において、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に形成される特定インクによるドットの数が少なくなる。その結果、インク滴の着弾位置ずれにより、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまうことが抑制される。
【0061】
また、実施例3によれば、制御部60は、特定インク吐出制御を行う際に、第1画像G1の端部G1eを印刷するための複数のインクの内、特定インク以外のインクの吐出制御において、特定インク以外のインクの第1画像G1の端部G1eを構成する単位面積当たりの量が、第1画像G1の通常部G1nを構成する単位面積当たりの量と異なるようにする色相補正制御を行う。特定インク吐出制御を行うことにより、第1画像G1の端部G1eの色相が第1画像G1の通常部G1nの色相とずれてしまう場合がある。色相補正制御により、この色相のずれの度合いを軽減することができる。
【0062】
また、制御部60は、第1画像G1が、第1画像G1の端部G1eの画素と第1画像G1の通常部G1nの画素とが並ぶ方向において3画素数以上の画像である場合に、特定インク吐出制御を行うことが好ましい。この場合、第1画像G1が、第1画像G1の端部G1eの画素と第1画像G1の通常部G1nの画素とが並ぶ方向において3画素数以上の画像であるため、特定インク吐出制御を行った場合に、第1画像G1として、特定インク吐出制御を行わない通常部の画素が少なくとも1画素確保される。そのため、第1画像G1が細線や細点の画像であっても、特定インク吐出制御によって、印刷品質が著しく損なわれることが抑制される。
【0063】
また、実施例1による印刷方法によれば、第1画像G1の端部G1eと、第1画像G1より明度が高い第2画像G2の端部G2eとから成る境界領域G12を印刷する際に、第1画像G1の端部G1eを印刷するための複数のインクの内、第1画像G1の端部G1eを形成する際のインク単体の明度が、第2画像G2の端部G2eの明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出において、第1画像G1の端部G1eを構成するドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成するドットの単位面積当たりの数よりも少なくなるようにする。そのため、インク滴が着弾する位置がずれてしまう場合がある印刷装置1において、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に形成される特定インクによるドットの数が少なくなる。
この印刷方法において、第1画像G1の端部G1eを形成するための特定インクのドットサイズを変えない場合には、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に付与される特定インクの量が少なくなるため、インク滴の着弾位置ずれにより、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまうことが抑制される。
また、この印刷方法において、第1画像G1の端部G1eの階調値を変えない場合には、第1画像G1の端部G1eを形成するための特定インクのドットサイズを大きくする。ドットサイズを大きくする制御は、インク滴を大きくする制御であるため、インク滴が小さい場合と比較して、例えば、風などの影響を受けにくく、飛翔経路が安定するため、着弾位置ずれにより、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に着弾してしまう度合いが軽減される。その結果、インク滴の着弾位置ずれにより、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまうことが抑制される。
【0064】
また、実施例2による印刷方法によれば、第1画像G1の端部G1eと、第1画像G1より明度が高い第2画像G2の端部G2eとから成る境界領域G12を印刷する際に、第1画像G1の端部G1eを印刷するための複数のインクの内、第1画像G1の端部G1eを形成する際のインク単体の明度が、第2画像G2の端部G2eの明度に対して所定値以上低い明度となる特定インクの吐出において、第1画像G1の端部G1eを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数が、第1画像G1の端部G1eに隣接する第1画像G1の通常部G1nを構成する所定ドットサイズのドットの単位面積当たりの数よりも多くなるようにする。ここで、所定ドットサイズは、インク滴の着弾位置を調整した際のドットサイズである。そのため、インク滴が着弾する位置がずれてしまう場合がある印刷装置1において、第1画像G1の端部G1eからずれて第2画像G2の領域に形成される特定インクによるドットの数が少なくなる。その結果、インク滴の着弾位置ずれにより、印刷画像のエッジに意図しない色が視認されるようになってしまうことが抑制される。
【0065】
なお、本実施形態では、特定インク吐出制御の対象とする特定インクを設定するための明度差の所定値として、明度L*の値で20としたが、この値に限定するものではない。印刷装置1のインク滴の着弾位置ずれの度合いや、求める印刷品質の度合いに応じ、適宜評価する中で決定することが好ましい。
また、本実施形態では、印刷部100が、ロール状に巻かれた状態で供給される長尺状の印刷媒体5を対象とするインクジェットプリンターであるとして説明したが、印刷媒体としては、ロール状の印刷媒体5に限定するものではなく、枚葉式の単票紙などであっても良い。枚葉式の用紙の場合には、供給部51に換わり、例えば、用紙を1枚ずつ供給するためのセパレーターを含む供給機構が備えられる構成となり、また収納部52に換わり、例えば、印刷後に排出される用紙を収納する収納トレーなどが備えられる構成となる。
また、本実施形態では、印刷部100を、シリアルヘッドタイプのインクジェットプリンターの構成で説明したが、印刷部100は、ラインヘッドタイプのインクジェットプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…印刷装置、5…印刷媒体、10…インク付与部、11…ヘッドユニット、12…インク供給部、13…ヘッド、14…ヘッド制御部、20…移動部、30…印刷制御部、31…装置内インターフェイス、32…CPU、33…メモリー、34…駆動制御部、35…移動制御信号生成回路、36…吐出制御信号生成回路、37…駆動信号生成回路、40…走査部、41…キャリッジ、42…ガイド軸、50…搬送部、51…供給部、52…収納部、53…搬送ローラー、55…プラテン、60…制御部、100…印刷部、110…画像処理部、111…画像制御部、112…入力部、113…表示部、114…記憶部、115…CPU、116…ASIC、117…DSP、118…メモリー、119…装置内インターフェイス、120…汎用インターフェイス、G1…第1画像、G12…境界領域、G1e…第1画像の端部、G1n…第1画像の通常部、G2…第2画像、G2e…第2画像の端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10