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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】湾曲矯正装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241008BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G03G15/20 510
F16C13/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020171387
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063063
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】小松 伸嘉
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真吾
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164644(JP,A)
【文献】特開2007-057733(JP,A)
【文献】特開2020-122939(JP,A)
【文献】特開2017-001774(JP,A)
【文献】特開2017-088319(JP,A)
【文献】特開2011-123286(JP,A)
【文献】特開2014-092706(JP,A)
【文献】特開平09-194094(JP,A)
【文献】特開平09-197864(JP,A)
【文献】米国特許第05414503(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体との間を通過する記録媒体の湾曲を矯正する無端状ベルトからなる矯正ベルトと、
前記矯正ベルトの内部に配置され、前記回転体と反対の面が支持手段により支持されることで前記回転体に圧接される圧接手段と、
を備え、
前記圧接手段と前記支持手段の接触部の少なくとも一方は、前記回転体の軸方向に沿った中央部が両端部より他方へ向けて突出し
前記圧接手段は、前記支持手段との接触部側に、複数のリブが設けられている湾曲矯正装置。
【請求項2】
前記圧接手段は、前記支持手段との接触部が前記支持手段側へ向けて突出している請求項1に記載の湾曲矯正装置。
【請求項3】
前記圧接手段の接触部は、前記回転体の軸方向に沿った中央部が直線状に形成されている請求項2に記載の湾曲矯正装置。
【請求項4】
前記圧接手段は、前記支持手段との接触部が、前記回転体の軸方向に沿って階段状に突出している請求項3に記載の湾曲矯正装置。
【請求項5】
前記圧接手段は、前記記録媒体の移動方向に沿った下流側に配置される第一の圧接部と、前記記録媒体の移動方向に沿った上流側に配置される第二の圧接部を有する請求項1に記載の湾曲矯正装置。
【請求項6】
前記第一の圧接部は、前記回転体に対する圧接力が前記第二の圧接部より大きい請求項5に記載の湾曲矯正装置。
【請求項7】
前記圧接手段は、前記第一の圧接部のみが前記回転体に圧接する第1の状態と、前記第一及び第二の圧接部が前記回転体に圧接する第2の状態に切り替えられる請求項5又は6に記載の湾曲矯正装置。
【請求項8】
前記支持手段は、前記圧接手段の背面側に配置された断面略L字形状の板金からなる請求項1に記載の湾曲矯正装置。
【請求項9】
前記支持手段は、前記圧接手段との接触部が平坦に形成されている請求項8に記載の湾曲矯正装置。
【請求項10】
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体に前記画像を定着する定着手段と、
前記記録媒体の湾曲を矯正する湾曲矯正手段と、
を備え、
前記湾曲矯正手段として請求項1乃至9のいずれかに記載の湾曲矯正装置を用いた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湾曲矯正装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湾曲矯正装置を備えた画像形成装置に関する技術としては、例えば、特許文献1等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、記録媒体にトナー像を定着させる定着装置と、定着装置の記録媒体の搬送方向に沿った下流側に配置され、定着装置によりトナー像が定着された記録媒体の湾曲を矯正する湾曲矯正装置(デカーラ)を備えるよう構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-164644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、回転体と回転体に圧接する矯正ベルトを備えた湾曲矯正装置において、回転体と矯正ベルトとの圧接力を変化させた際に回転体の軸方向に沿って圧接力が変動するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、回転体と、
前記回転体との間を通過する記録媒体の湾曲を矯正する無端状ベルトからなる矯正ベルトと、
前記矯正ベルトの内部に配置され、前記回転体と反対の面が支持手段により支持されることで前記回転体に圧接される圧接手段と、
を備え、
前記圧接手段と前記支持手段の接触部の少なくとも一方は、前記回転体の軸方向に沿った中央部が両端部より他方へ向けて突出し
前記圧接手段は、前記支持手段との接触部側に、複数のリブが設けられている湾曲矯正装置である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、前記圧接手段は、前記支持手段との接触部が前記支持手段側へ向けて突出している請求項1に記載の湾曲矯正装置である。
【0008】
請求項3に記載された発明は、前記圧接手段の接触部は、前記回転体の軸方向に沿った中央部が直線状に形成されている請求項2に記載の湾曲矯正装置である。
【0009】
請求項4に記載された発明は、前記圧接手段は、前記支持手段との接触部が、前記回転体の軸方向に沿って階段状に突出している請求項3に記載の湾曲矯正装置である。
【0010】
請求項5に記載された発明は、前記圧接手段は、前記記録媒体の移動方向に沿った下流側に配置される第一の圧接部と、前記記録媒体の移動方向に沿った上流側に配置される第二の圧接部を有する請求項1に記載の湾曲矯正装置である。
【0011】
請求項6に記載された発明は、前記第一の圧接部は、前記回転体に対する圧接力が前記第二の圧接部より大きい請求項5に記載の湾曲矯正装置である。
【0012】
請求項7に記載された発明は、前記圧接手段は、前記第一の圧接部のみが前記回転体に圧接する第1の状態と、前記第一及び第二の圧接部が前記回転体に圧接する第2の状態に切り替えられる請求項5又は6に記載の湾曲矯正装置である。
【0013】
請求項8に記載された発明は、前記支持手段は、前記圧接手段の背面側に配置された断面略L字形状の板金からなる請求項1に記載の湾曲矯正装置である。
【0014】
請求項9に記載された発明は、前記支持手段は、前記圧接手段との接触部が平坦に形成されている請求項8に記載の湾曲矯正装置である。
【0015】
請求項10に記載された発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体に前記画像を定着する定着手段と、
前記記録媒体の湾曲を矯正する湾曲矯正手段と、
を備え、
前記湾曲矯正手段として請求項1乃至9のいずれかに記載の湾曲矯正装置を用いた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された発明によれば、回転体と回転体に圧接する矯正ベルトを備えた湾曲矯正装置において、回転体と矯正ベルトとの圧接力を変化させた際に回転体の軸方向に沿って圧接力が変動するのを抑制することができる。
また、請求項1に記載された発明によれば、圧接部材に設けられたリブにより、当該圧接部材を軽量化しつつ剛性を高めることができ、剛性が高いことによって、支持フレームから圧接部材に圧力がかかった際にも圧接部材が変形しにくく、回転体と矯正ベルトとの圧接力を変化させた際に回転体の軸方向に沿って圧接力が変動するのをより一層抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載された発明によれば、支持手段を圧接手段側に突出させた場合に比べて、圧接手段の加工が容易となる。
【0018】
請求項3に記載された発明によれば、接触部は、回転体の軸方向に沿った中央部が曲線状に形成された場合に比べて、圧接手段の軸方向に沿った姿勢を保持することができる。
【0019】
請求項4に記載された発明によれば、圧接手段は、支持手段との接触部が、回転体の軸方向に沿って湾曲状に突出している場合に比べて、圧接手段の構成が容易となる。
【0020】
請求項5に記載された発明によれば、圧接手段が単一の圧接部を有する場合に比べて、圧接力の調整が容易となる。
【0021】
請求項6に記載された発明によれば、第一の圧接部は、回転体に対する圧接力が第二の圧接部より小さい場合に比べて、圧接力の調整が容易となる。
【0022】
請求項7に記載された発明によれば、圧接手段は、第一の圧接部のみが前記回転体に圧接する第1の状態と、第一及び第二の圧接部が前記回転体に圧接する第2の状態とに切り替えられない場合に比べて、記録媒体の湾曲を容易に矯正することが可能となる。
【0023】
請求項8に記載された発明によれば、支持手段は、圧接手段の背面側に配置された断面略L字形状の板金から構成しない場合に比べて、支持手段の構成を簡素化することができる。
【0024】
請求項9に記載された発明によれば、支持手段は、圧接手段との接触部を圧接部へ向けて突出させた場合に比べて、支持手段の加工が容易となる。
【0025】
請求項10に記載された発明によれば、湾曲矯正手段として請求項1乃至9のいずれかに記載の湾曲矯正装置を用いない場合に比べて、回転体と回転体に圧接する矯正ベルトを備えた湾曲矯正装置において、回転体と矯正ベルトとの圧接力を変化させた際に回転体の軸方向に沿って圧接力が変動するのを抑制することができ、画像が形成された記録媒体の湾曲を矯正する性能を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施の形態1に係る湾曲矯正装置を適用した画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る湾曲矯正装置を適用した画像形成装置の作像装置を示す構成図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る湾曲矯正装置を適用した定着装置を示す断面構成図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る湾曲矯正装置を適用した定着装置の装置ハウジングを示す斜視構成図である。
図5】この発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す断面構成図である。
図6】加圧ベルトを示す斜視構成図である。
図7】加圧ベルトを示す断面構成図である。
図8】定着装置を示す断面構成図である。
図9】定着装置を示す断面構成図である。
図10】この発明の実施の形態1に係る湾曲矯正装置を示す断面構成図である。
図11】湾曲矯正ベルトを示す断面構成図である。
図12】湾曲矯正装置の切替機構を示す側面構成図である。
図13】湾曲矯正装置の第2の位置を示す断面構成図である。
図14】この発明の実施の形態1に係る定着装置の支持アームの位置決め構造を示す要部の断面構成図である。
図15】本実施の形態1を適用する以前の湾曲矯正装置の作用を示す説明図である。
図16】本実施の形態1を適用する以前の湾曲矯正装置の作用を示す説明図である。
図17】圧接部材を示す斜視構成図である。
図18】圧接部材をそれぞれ示す正面図、背面図及び要部断面構成図である。
図19】この発明の実施の形態1に係る湾曲矯正装置の作用を示す構成図である。
図20】この発明の実施の形態2に係る湾曲矯正装置を示す概略構成図である。
図21】この発明の実施の形態3に係る湾曲矯正装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0028】
[実施の形態1]
図1はこの発明の実施の形態1に係る湾曲矯正装置を適用した画像形成装置の全体の概要を示す構成図、図2は画像形成装置の作像装置を示す構成図である。なお、図中、Xは水平方向に沿った幅方向を、Yは水平方向に沿った奥行方向を、Zは鉛直方向をそれぞれ示している。
【0029】
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、図1に示されるように、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されたトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置30と、中間転写装置20で二次転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる定着装置40等を備えている。なお、図中の1aは画像形成装置1の装置本体を示している。この装置本体1aは支持構造部材、外装カバー等で形成されている。また、図中の二点鎖線は、装置本体1a内において記録用紙5が搬送される主な搬送経路を示す。この実施の形態1では、複数の作像装置10と中間転写装置20が記録用紙5に画像を形成する画像形成手段を構成している。
【0030】
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。これらの4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、装置本体1aの内部空間において水平方向に沿って1列に並べた状態となるよう配置されている。
【0031】
4つの作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の作像装置10(Y,M,C,K)から構成されている。各作像装置10(Y,M,C,K)は、図2に示されるように、像保持体の一例としての回転する感光体ドラム11を備えている。感光体ドラム11の周囲に、次のようなトナー像形成手段の一例としての各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写する一次転写手段の一例としての一次転写装置15(Y,M,C,K)と、一次転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置16(Y,M,C,K)等である。
【0032】
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない駆動装置から動力が伝達されて矢印Aで示す方向に回転するよう支持されている。
【0033】
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電ロールで構成される。帯電装置12には帯電用電圧が供給される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、現像装置14から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧又は電流が供給される。なお、帯電装置12としては、感光体ドラム11の表面に非接触状態で配置されるスコロトロン等の非接触型の帯電装置を用いてもよい。
【0034】
露光装置13は、画像形成装置1に入力される画像情報に応じて構成されるレーザー光LBを各感光体ドラム11の軸方向に沿って偏向走査するものを用いている。なお、露光装置13としては、感光体ドラム11の軸方向に沿って配列された複数の発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)により感光体ドラム11に画像情報に応じた光を照射して静電潜像を形成するLEDプリントヘッドからなるものを用いても良い。
【0035】
現像装置14(Y,M,C,K)はいずれも、開口部と現像剤の収容室が形成された筐体140の内部に、現像剤を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロール141と、現像剤を攪拌しながら現像ロール141を通過させるよう搬送する2つのスクリューオーガー等の攪拌搬送部材142,143と、現像ロール141に保持される現像剤の量(層厚)を規制する図示しない層厚規制部材などを配置して構成したものである。この現像装置14には、現像ロール141と感光体ドラム11の間に現像用電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロール141や攪拌搬送部材142,143は、図示しない駆動装置から動力が伝達されて所要の方向に回転する。さらに、上記4色の現像剤としては、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。
【0036】
一次転写装置15(Y,M,C,K)は、感光体ドラム11の周囲に中間転写ベルト21を介して接触し回転するとともに一次転写用電圧が供給される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写用電圧としては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧が図示しない電源装置から供給される。
【0037】
ドラム清掃装置16は、一部が開口する容器状の本体160と、一次転写後の感光体ドラム11の周面に所要の圧力で接触するように配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃板161と、清掃板161で取り除いたトナー等の付着物を回収して図示しない回収システムに送り出すよう搬送するスクリューオーガー等の送出部材162等で構成されている。
【0038】
中間転写装置20は、図1に示されるように、各作像装置10(Y,M,C,K)の鉛直方向Zに沿った下方の位置に存在するよう配置される。中間転写装置20は、感光体ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内面から所望の状態に保持して回転可能に支持する複数のベルト支持ロール22~26と、ベルト支持ロール26に支持されている中間転写ベルト21の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に二次転写させる二次転写手段の一例としての二次転写装置27と、二次転写装置27を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置28とで主に構成されている。
【0039】
中間転写ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール22は図示しない駆動装置によって回転駆動される駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール23,24は中間転写ベルト21の画像形成面を形成する面出しロールとして構成され、ベルト支持ロール25は中間転写ベルト21に張力を付与する張力付与ロールとして構成され、ベルト支持ロール26は二次転写の背面支持ロールとして構成されている。また、ベルト支持ロール22はベルト清掃装置28と対向する対向ロールを兼ねている。
【0040】
二次転写装置27は、中間転写装置20におけるベルト支持ロール26に支持されている中間転写ベルト21の外周面部分である二次転写位置において、中間転写ベルト21の周面に接触して回転するとともに二次転写用電圧が供給される二次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。また、二次転写装置27又は中間転写装置20のベルト支持ロール26には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として図示しない電源装置から供給される。
【0041】
定着装置40は、図1に示されるように、記録用紙5の導入口及び排出口が形成された装置本体としての装置ハウジング43(図3参照)の内部に、矢印Cで示す方向に回転するとともに表面温度が所定の温度に保持されるよう加熱手段によって加熱されるロール形態又はベルト形態の加熱用回転体41と、この加熱用回転体41の軸方向にほぼ沿う状態で所定の圧力で接触して従動回転するロール形態又はベルト形態の加圧用回転体42などを配置して構成されたものである。この定着装置40では、加熱用回転体41と加圧用回転体42が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着ニップ部Nとなる。また、定着装置40は、加熱用回転体41及び加圧用回転体42によって定着処理を受けた記録用紙5の湾曲(カール)を矯正する湾曲矯正装置60を一体的に備えている。なお、定着装置40の構成については、後に詳述する。
【0042】
給紙装置30は、中間転写装置20の下方側の位置に存在するよう配置される。この給紙装置30は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体31と、用紙収容体31から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置32とで主に構成されている。用紙収容体31は、例えば、装置本体1aの使用者が操作時に向き合う側面である正面(図中、Y方向に沿った手前側)に引き出すことができるよう取り付けられている。
【0043】
記録用紙5としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙やトレーシングペーパー等の薄紙、厚紙、あるいはOHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録用紙5の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等の坪量が相対的に大きい所謂厚紙なども好適に使用することができる。
【0044】
給紙装置30と二次転写装置27との間には、給紙装置30から送り出される記録用紙5を二次転写位置まで搬送する単数又は複数の用紙搬送ロール対33,34や図示しない搬送ガイドで構成される給紙搬送路35が設けられている。給紙搬送路35において二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対34は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。また、二次転写装置27と定着装置40との間には、二次転写装置27から送り出される二次転写後の記録用紙5を定着装置40まで搬送するための搬送ベルト36を備えた用紙搬送路37が設けられている。さらに、装置本体1aに形成される用紙の排出口に近い部分には、定着装置40から送り出される定着後の記録用紙5を装置本体1aの側面に設けられた図示しない用紙排出部に排出するための用紙排出ロール対38を備えた排出搬送路39が設けられている。
【0045】
上記の如く構成される画像形成装置1は、用紙搬送ロール対33、34を有する給紙搬送路35、二次転写装置27、搬送ベルト36を有する用紙搬送路37及び定着装置40が一体的に装着され、画像形成装置1の装置本体1aに対して図示しないガイドレールを介して前面側に引出可能な用紙搬送ユニット300を構成している。
【0046】
画像形成装置1では、用紙搬送ロール対33、34を有する給紙搬送路35や二次転写装置27、あるいは搬送ベルト36を有する用紙搬送路37、定着装置40などにおいて記録用紙5の搬送不良が発生すると、装置本体1aから用紙搬送ユニット300を手前に引き出す操作が行われる。
【0047】
そして、画像形成装置1は、用紙搬送ユニット300を手前に引き出すことで、用紙搬送ロール対33、34を有する給紙搬送路35や二次転写装置27、あるいは搬送ベルト36を有する用紙搬送路37、定着装置40などが外部に露出した状態となり、搬送不良が発生した記録用紙5を除去することが可能となるよう構成されている。
【0048】
図1中、符号100は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御装置を示している。制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、あるいはこれらCPUやROM等を接続するバス、通信インターフェイスなどを備えている。
【0049】
<画像形成装置の動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0050】
ここでは、前記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するフルカラーモードにおける動作を説明する。
【0051】
画像形成装置1は、図示しないユーザインターフェイスやプリンタドライバ等からフルカラーの画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、4つの作像装置10(Y,M,C,K)、中間転写装置20、二次転写装置27、定着装置40等が始動する。
【0052】
そして、各作像装置10(Y,M,C,K)においては、図1及び図2に示されるように、まず各感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置12が各感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光を照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0053】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)が、感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロール141からそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0054】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15(Y,M,C,K)が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して順番に重ね合わされるような状態で一次転写させる。
【0055】
また、一次転写が終了した各作像装置10(Y,M,C,K)では、ドラム清掃装置16が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、各作像装置10(Y,M,C,K)は、次の作像動作が可能な状態にされる。
【0056】
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置30では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路35に送り出す。給紙搬送路35では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対34が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0057】
二次転写位置においては、二次転写装置27が、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置28が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0058】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙5は、中間転写ベルト21から剥離された後に用紙搬送路37を介して定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱用回転体41と加圧用回転体42との間の定着ニップ部Nに二次転写後の記録用紙5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙5に定着させるとともに、定着処理により生じた記録用紙5の湾曲を湾曲矯正装置60によって矯正する。最後に、定着が終了した後の記録用紙5は、用紙排出ロール対38により、装置本体1aの側面に設置された図示しない用紙排出部に排出される。
【0059】
以上の動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙5が出力される。
【0060】
<定着装置の構成>
図3はこの実施の形態1に係る湾曲矯正装置を適用した定着装置を示す断面構成図である。この定着装置40は、湾曲矯正装置(デカーラ)60を一体的に備えている。
【0061】
定着装置40は、図3に示されるように、大別すると、当該定着装置40の装置本体の一例としての装置ハウジング43と、装置ハウジング43の内部に設けられ、記録用紙5に定着処理を施す定着手段の一例としての加熱用回転体である加熱ロール41及び加圧用回転体である加圧ベルト42と、装置ハウジング43の内部に一体的に設けられ、加熱ロール41から記録用紙5が剥離するのを補助する剥離補助手段の一例としての剥離爪44と、装置ハウジング43の内部に一体的に設けられ、記録用紙5を挟み込むことで湾曲を矯正する無端状ベルト(矯正ベルト)の一例としての湾曲矯正ベルト61及び回転体の一例としての湾曲矯正ロール62を備えている。
【0062】
なお、加熱用回転体は、加熱ロール41に限定されるものではなく、無端状のベルトを用いても良く、加圧用回転体は、加圧ベルト42に限定されるものではなく、ロール形態のものを用いても良い。
【0063】
装置ハウジング43は、図4に示されるように、側面略五角形の細長い箱体状に形成されている。装置ハウジング43は、板金等からなる複数のフレームと、複数のフレームの外周を覆う合成樹脂製等からなる外装部材などで構成される。
【0064】
装置ハウジング43は、その上端面に、記録用紙5の搬送方向に沿った上流側に配置され、記録用紙5の搬送方向に沿った下流側の端部が鉛直方向に沿った上方に位置するよう傾斜した第1の傾斜面部431と、記録用紙5の搬送方向に沿った下流側に配置され、記録用紙5の搬送方向に沿った下流側の端部が鉛直方向に沿った下方に位置するよう傾斜した第2の傾斜面部432を備えている。装置ハウジング43の第2の傾斜面部432は、当該装置ハウジング43に対して開閉可能に設けられる開閉手段の一例としての開閉カバー433を構成している。開閉カバー433には、当該開閉カバー433を開閉する際に操作する操作ハンドル433aが長手方向に沿ったフロント側に後述する回転軸725を介して回転可能に取り付けられている。開閉カバー433には、湾曲矯正装置60を冷却するため必要に応じて下方から送られる送風を上方に向けて排気する格子状の排気口433bが設けられている。なお、符号Hは、装置ハウジング43の上端面中央に設けられ、定着装置40を把持するための把持部を示している。
【0065】
装置ハウジング43は、図3に示されるように、その左側面に未定着トナー像Tが転写された記録用紙5を内部へ導入する導入口434を有している。導入口434の内部には、記録用紙5を加熱ロール41と加圧ベルト42が圧接する定着ニップ部Nへ案内する上部ガイド435a及び下部ガイド435bが配置されている。また、装置ハウジング43は、その左側面に湾曲矯正ベルト61及び湾曲矯正ロール62によって湾曲が矯正された記録用紙5を外部へ排出する排出口436を有している。装置ハウジング43の内部には、導入口434から排出口436へ向けて記録用紙5の搬送方向に沿った下流側が鉛直方向に沿った上方に位置するよう傾斜した記録用紙5の搬送路437が形成されている。また、装置ハウジング43の内部には、加熱ロール41及び加圧ベルト42と、湾曲矯正ベルト61及び湾曲矯正ロール62の間において、記録用紙5の表裏両面をそれぞれ案内する上部シュート438a及び下部シュート438bが配置されている。上部シュート438aは、開閉カバー433の内面に固定された取付用フレーム433cを介して当該開閉カバー433とともに開閉可能に取り付けられている。下部シュート438bは、装置ハウジング43の内部に固定された取付用フレーム433d,433eを介して取り付けられている。なお、記録用紙5は、搬送方向と交差する幅方向である表面に沿った方向の中央を基準(所謂センターレジ)として搬送される。図3中、符号Sは加熱ロール41の表面温度を検知する非接触式の温度センサを示している。
【0066】
加熱ロール41は、図5に示されるように、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状の芯金411と、芯金411の外周に被覆されたシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性を有する弾性体からなる弾性体層412と、弾性体層412の表面に薄く被覆されたパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層413を有している。加熱ロール41の内部には、加熱源の一例としての複数(図示例では、3本)のハロゲンランプ414~416が配置されている。3本のハロゲンランプ414~416は、記録用紙5のサイズや種類に応じて個別に又は複数同時に点灯される。加熱ロール41の芯金411は、その軸方向に沿った両端部が装置ハウジング43のフレームに取り付けられた軸受部材の一例としてのベアリング417を介して回転可能に支持されている。ベアリング417は、その外周面417aが円筒形状に形成されたステンレス等の金属からなる外筒から構成されている。
【0067】
加熱ロール41は、芯金411の軸方向に沿った背面側の端部に取り付けられたハスバ歯車等からなる図示しない駆動歯車を介して駆動装置(図示せず)により矢印C方向に沿って所要の速度で回転駆動される。なお、加熱ロール41の回転速度は、記録用紙5の種類等に応じて複数設定されていても良い。
【0068】
加熱ロール41の外周面には、図3に示されるように、当該加熱ロール41の外周面に記録用紙5が巻き付くのを防止し、加熱ロール41の表面から記録用紙5が剥離するのを補助する剥離爪44が配置されている。剥離爪44は、定着ニップ部Nの出口において、その先端が加熱ロール41の表面に対して予め定められた微小な間隙を介して対向し、且つ加熱ロール41の外周面に対して所要の角度を成すよう傾斜して配置されている。剥離爪44は、加熱ロール41の軸方向に沿った略全長にわたり配置された細長い矩形状の金属製の薄い平板などから構成されている。
【0069】
加圧ベルト42は、図3に示されるように、当該加圧ベルト42を保持して加熱ロール41に対して圧接させるため一体的に組み立てられた加圧ユニット45を構成している。
【0070】
加圧ユニット45は、図5に示されるように、加圧ベルト42と、加圧ベルト42の内部に配置され、加圧ベルト42を加熱ロール41の表面に圧接させる加圧手段の一例としての加圧部材46と、加圧ベルト42の内部に配置され、加圧部材46を支持する支持手段の一例としての支持部材47と、加圧ベルト42の長手方向に沿った両端部をそれぞれ回転可能に案内する案内手段の一例としてのガイド部材48と、加圧ベルト42の内部に配置され、加圧ベルト42の内周面に付与される潤滑剤を保持する潤滑剤保持手段の一例としてのフェルト49を備えている。
【0071】
加圧ベルト42は、図6に示されるように、可撓性を有する材料からなり、装着前の状態である自由形状が薄肉円筒形の無端状ベルトとして構成されている。加圧ベルト42は、図7に示されるように、基材層421と、基材層421の表面に被覆された弾性体層422と、弾性体層422の表面に被覆された離型層423を備える。また、加圧ベルト42は、基材層421と、基材層421の表面に被覆された離型層423から構成しても良い。基材層421は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性を有する合成樹脂などによって形成される。弾性体層422は、耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる。離型層423は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等によって形成される。加圧ベルト42は、例えば、その厚さが50~200μm程度に設定可能である。
【0072】
加圧ベルト42は、加熱ロール41に圧接されることで矢印D方向に沿って従動回転するよう構成されている。
【0073】
加圧部材46は、図5に示されるように、加圧ベルト42を加熱ロール41に圧接させるための部材である。加圧部材46は、加圧ベルト42の内周面に接触して当該加圧ベルト42を加熱ロール41に圧接させるパッド部材461と、パッド部材461を支持するパッド支持部材462と、定着ニップ部Nの出口部において加圧ベルト42を加熱ロール41に向けて押圧して加熱ロール41の弾性体層412を凹形状に変形させ、記録用紙5を当該記録用紙5自体が有する剛性により加熱ロール41の表面から剥離させる押圧部材463を備えている。
【0074】
パッド部材461は、第1のパッド部材461aと第2のパッド部材461bから構成されている。第1のパッド部材461aは、定着ニップ部Nを形成するシリコーンゴムやアクリロニトリルゴムの発泡体等から断面略矩形状に形成されている。第2のパッド部材461bは、第1のパッド部材461aを支持する金属製の台座からなる。第1のパッド部材461aは、接着等の手段により第2のパッド部材461bに固定されている。
【0075】
パッド支持部材462は、耐熱性を有する合成樹脂などから断面略L字形状に形成されている。また、パッド支持部材462には、加圧ベルト42の回転方向に沿った下流側の端面に押圧部材463を保持する凸部462aが設けられている。また、パッド支持部材462は、加圧ベルト42の長手方向に沿って複数(例えば、10個)配置されたコイルスプリング464によって弾性的に支持されている。コイルスプリング464は、支持部材47に取り付けられた支持筒465により支持されている。
【0076】
押圧部材463は、耐熱性を有する合成樹脂などから逆向きの断面略L字形状に形成されている。押圧部材463は、パッド支持部材462の凸部462aと支持部材47によって挟持された状態で、その下端部が支持部材47に溶接や圧着等の手段により固定された短い平板状の支持板475により支持されている。
【0077】
支持部材47は、図5に示されるように、加圧ベルト42を介して加熱ロール41に圧接される加圧部材46を支持する部材である。支持部材47は、加熱ロール41からの反力に対向することが可能な剛性を有するものであればその構成は限定されるものではない。この実施の形態1に係る支持部材47は、断面略L字形状の2つの板金からなる第1及び第2の支持部材471,472を、断面略矩形状に組み合わせて固定することにより構成されている。第1及び第2の支持部材471,472は、その長手方向に沿った両端部471a,472aがガイド部材48に嵌め合わされることで固定されている(図9参照)。また、第1及び第2の支持部材471,472には、加圧ベルト42の内周面を回転可能に保持する保持部材473,474が取り付けられている。コイルスプリング464を支持する支持筒465は、例えば、保持部材473と一体的に設けられる。
【0078】
ガイド部材48は、加圧ベルト42の軸方向に沿った両端部にそれぞれ配置されている。ガイド部材48は、耐熱性を有する合成樹脂等によって一体的に形成される。ガイド部材48は、図5に示されるように、加圧ベルト42の外径より大きな外径を有する略円板状に形成されたフランジ部481と、フランジ部481の内側面に短い円筒形状に形成され加圧ベルト42の端部を回転可能に案内する図示しない案内部と、フランジ部481の左右両側にそれぞれ突出するように設けられた取付部482(図8参照)と、フランジ部481の外側面に側面略矩形状に形成された固定部483(図9参照)を備えている。
【0079】
ガイド部材48は、図8及び図9に示されるように、側面矩形状に形成された固定部483が加圧アーム51の中間部512に固定された状態で、取付部482が加圧アーム51にネジ512a止めされて取り付けられている。
【0080】
フェルト49は、図5に示されるように、加圧ベルト42の略全長に沿って細長い断面矩形状に形成されている。フェルト49は、保持部材474の下端面に設けられた凹部に接着等の手段により設けられている。フェルト49には、加圧ベルト42の内周面に塗布された状態で供給するための潤滑剤が予め定められた量だけ含浸されている。潤滑剤は、加圧ベルト42と加圧部材46との摺動抵抗を低減する。潤滑剤としては、例えば、粘度が100~350csのアミノ変性シリコーンオイル等が用いられる。潤滑剤は、予めフェルト49に含浸させることで、加圧ベルト42の内周面に塗布供給されるが、これに限定されるものではなく、初期的に加圧ベルト42の内周面に塗布した状態で供給されるように構成しても良い。
【0081】
加圧ユニット45は、図8及び図9に示されるように、接離手段の一例としてのリトラクト機構50によって、加熱ロール41に対して接離する方向に沿って移動可能に構成されている。リトラクト機構50は、支点の一例としての支持軸53を中心にして回転可能に配置され、加圧ユニット45が取り付けられる加圧アーム51と、同じく支持軸53を中心にして回転可能に配置され、加圧アーム51に対して加圧力を作用させる作用アーム52を備えている。加圧アーム51は、加圧ベルト42の軸方向に沿った両端部にそれぞれ配置されている。作用アーム52は、加圧ベルト42の軸方向に沿った加圧アーム51の内側にそれぞれ隣接して配置されている。
【0082】
加圧アーム51は、所要の肉厚を有する平板状の板金等から形成されている。加圧アーム51は、装置ハウジング43の導入口434において、下部ガイド部材435bの基端部に配置された支持軸53に回転可能に支持された逆向き略U字形状の基端部511と、側面略コ字形状に形成され加圧ユニット45を保持する中間部512と、中間部512の右側上端部に略水平方向に沿って延在された先端部513を有している。
【0083】
加圧アーム51の中間部512には、図8に示されるように、加圧ユニット45を構成するガイド部材48の左右の取付部482がネジ512a止めにより固定されている。加圧ベルト42は、加圧アーム51とともに加圧ユニット45が上方に移動することにより、支持部材47及び加圧部材46を介して加熱ロール41の表面に所要の押圧力で圧接される。
【0084】
作用アーム52は、加圧アーム51と略相似形状に形成されている。作用アーム52は、支持軸53に回転可能に支持された基端部521と、側面略コ字形状に形成された中間部522と、中間部522の右側上端部に略水平方向に沿って延在された先端部523を有している。
【0085】
作用アーム52の先端部523は、図9に示されるように、屈曲部524を介して加圧アーム51の先端部513の下方に位置するように配置されている。作用アーム52の先端部523は、加圧アーム51の先端部513と平行となるよう二股に分岐されている。作用アーム52の二股に分岐された先端部523の間には、円板状のカムフォロアー54が回転可能に取り付けられている。
【0086】
加圧アーム51の先端部513と作用アーム52の先端部523との間には、加圧アーム51に対して加圧力を作用させる加圧スプリング55が介在されている。加圧アーム51の先端部513には、加圧スプリング55の上端部を支持する支持板514が溶接等の手段により設けられている。また、作用アーム52の先端部523には、加圧スプリング55の下端部を支持する支持板部525が断面略コ字形状に折り曲げることで一体的に設けられている。加圧アーム51の支持板514と作用アーム52の支持板部525との間には、加圧スプリング55の加圧力を調整する調整ボルト551が取り付けられている。
【0087】
作用アーム52のカムフォロワー54の下方には、第1の偏心カム56が回転可能に配置されている。第1の偏心カム56は、回転軸561によって回転可能に設けられている。第1の偏心カム56は、半径が最も大きく形成された加圧部562と、半径が最も小さく形成された加圧解除部563とを滑らかな曲面で接続した偏心した略長円形状に形成されている。第1の偏心カム56の回転軸561は、装置ハウジング43の背面側に配置された図示しない駆動モータによって時計回り方向及び反時計回り方向に回転駆動されることで、加圧ベルト42を加熱ロール41に所要の加圧力で圧接させるとともに、加圧ベルト42を加熱ロール41から離間させた圧接解除状態(図9参照)に切り替え可能に構成されている。なお、加圧アーム51は、第1の偏心カム56の加圧解除部563がカムフォロワー54と対向する位置に回転することで、作用アーム52とともに自重によって下方の加圧解除位置へと退避する。加圧解除位置においては、加圧ベルト42と加熱ロール41の加圧状態が解除されればよく、加圧ベルト42が加熱ロール41の表面から離間しなくとも良い。
【0088】
上記の如く構成された定着装置40は、加熱ロール41及び加圧ベルト42によって記録用紙5を加熱及び加圧することにより、定着ニップ部Nを通過する記録用紙5上に未定着トナー像Tを定着する。未定着トナー像Tが定着される記録用紙5は、定着ニップ部Nを通過する際、記録用紙5の材質や当該記録用紙5上に定着される未定着トナー像Tの面積やトナー層の厚さなど種々の要因によって湾曲する。定着装置40においては、例えば、定着ニップ部Nを厚紙等の記録用紙5が通過する際、記録用紙5が下側に凸形状となる向きに湾曲することがある。また、定着装置40においては、例えば、定着ニップ部Nを普通紙やトレーシングペーパー等の薄紙などの記録用紙5が通過する際、記録用紙5が上側に凸形状となる向きに湾曲することがある。
【0089】
<湾曲矯正装置の構成>
湾曲矯正装置60は、図10に示されるように、記録用紙5の表面であるトナー像側の面に接触して当該記録用紙5の湾曲を矯正する矯正ベルトの一例としての湾曲矯正ベルト61と、記録用紙5の裏面に接触して当該記録用紙5の湾曲を矯正する回転体の一例としての湾曲矯正ロール62を備えている。そして、湾曲矯正装置60は、一対の湾曲矯正手段である湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62を用いて、記録用紙5が下側に凸形状となる向きに湾曲した場合と、記録用紙5が上側に凸形状となる向きに湾曲した場合のいずれでも、記録用紙5の湾曲を矯正することが可能となるよう構成されている。
【0090】
湾曲矯正ベルト61は、湾曲矯正ロール62との間に記録用紙5を通過させることにより湾曲を矯正する無端状ベルトであって、内部に湾曲矯正ロール62と反対の面が剛性を有する支持手段の一例としての支持フレーム64により支持されて湾曲矯正ロール62に圧接する圧接手段の一例としての圧接部材63を配置して構成されている。
【0091】
湾曲矯正ベルト61は、その内部に配置される圧接部材63や支持フレーム64等を含めて矯正ベルトユニット65を構成している。矯正ベルトユニット65は、湾曲矯正ベルト61と、湾曲矯正ベルト61の内部に配置され、湾曲矯正ベルト61を湾曲矯正ロール62の表面に圧接させる圧接部材63と、圧接部材63を支持する支持フレーム64と、湾曲矯正ベルト61の長手方向に沿った両端部をそれぞれ回転可能に案内する案内手段の一例としての一対のガイド部材66と、湾曲矯正ベルト61の内部に配置され、湾曲矯正ベルト61の内周面に付与される潤滑剤を保持する潤滑剤保持手段の一例としてのフェルト67と、湾曲矯正ベルト61の内周面を回転可能に保持する保持手段の一例としての保持部材68を備えている。
【0092】
湾曲矯正ベルト61は、上述した加圧ベルト42と同様、可撓性を有する材料からなり、装着前の状態である自由形状が薄肉円筒形の無端状ベルトとして構成されている。湾曲矯正ベルト61は、図11に示されるように、基材層611と、基材層611の表面に被覆された弾性体層612と、弾性体層612の表面に被覆された離型層613とを備える。また、湾曲矯正ベルト61は、基材層611と、基材層611の表面に被覆された離型層613から構成しても良い。基材層611は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性を有する合成樹脂などによって形成される。弾性体層612は、耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる。離型層613は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等によって形成される。湾曲矯正ベルト61は、例えば、その厚さが50~200μm程度に設定可能である。
【0093】
湾曲矯正ベルト61は、湾曲矯正ロール62に圧接されることで矢印E方向に沿って従動回転するよう構成されている。
【0094】
圧接部材63は、図10に示されるように、耐熱性を有する合成樹脂等により肉厚の平板状に形成されている。圧接部材63の下端面には、記録用紙5の搬送方向に沿った下流側に配置され湾曲した下向き山形状の第1の突起部631(第1の圧接部の一例)と、記録用紙5の搬送方向に沿った上流側に配置され湾曲した下向き山形状の第2の突起部632(第2の圧接部の一例)と、第1の突起部631と第2の突起部632の間に平坦に形成された平面部633が設けられている。第2の突起部632は、第1の突起部631と突出量が同等か又は第1の突起部631より大きく設定されている。
【0095】
圧接部材63の裏面には、記録用紙5の搬送方向に沿った下流側の端部に支持フレーム64を固定した状態で取り付けるための一対の取付板部634,635が上方へ向けて起立するよう形成されている。
【0096】
支持フレーム64は、所要の厚さを有し断面略L字形状に折り曲げられた板金等から構成されている。支持フレーム64の下端部641は、その下端面641aが圧接部材63の裏面に接触(当接)する接触部を形成し、圧接部材63の取付板部634,635に挟み込まれた状態でネジ642止めにより固定されている。
【0097】
ガイド部材66は、支持フレーム64の長手方向に沿った両端部に固定された状態で取り付けられている。ガイド部材66は、耐熱性を有する合成樹脂等によって一体的に形成される。ガイド部材66は、図10に示されるように、湾曲矯正ベルト61の外径より大きな外径を有する略円板状に形成されたフランジ部661と、フランジ部661の内側面に短い円筒形状に形成され湾曲矯正ベルト61の端部を回転可能に案内する図示しない案内部と、フランジ部661の外側面中央に外方へ向けて突出するよう埋設された円柱形状の金属等からなる回転軸662を備えている。
【0098】
矯正ベルトユニット65は、図9に示されるように、ガイド部材66の回転軸662が支持アーム72に軸受部材663を介して回転可能に取り付けられている。
【0099】
支持アーム72は、開閉カバー433の長手方向に沿った両端部の内側面に固定した状態で取り付けられている。開閉カバー433は、支持アーム72を介して支持軸73を中心にして開閉される。
【0100】
支持アーム72は、図9に示されるように、所要の厚さを有する板金等から構成されている。支持アーム72は、支持軸73に回転可能に支持される基端部721と、基端部721から水平方向に延びた後に斜め下方へ向けて屈曲された中間部722と、中間部722の側方に設けられた略矩形状の先端部723を有している。支持アーム72の基端部721は、長孔724を介して支持軸73に回転可能に支持されている。長孔724は、支持軸73と湾曲矯正ベルト61の回転軸662を結ぶ直線Lに沿った長軸方向に長く、当該長軸方向と交差する短軸方向に沿って支持軸73の外径に対応した開口幅を有する楕円形状に形成されている。そのため、支持アーム72は、長孔724の長軸方向に沿った移動を許容しつつ、短軸方向に沿って位置決めされるよう支持軸73に取り付けられている。
【0101】
支持アーム72の先端部723には、その上端部に開閉カバー433の操作ハンドル433aが回転可能に取り付けられた回転軸725が軸受部材726を介して回転可能に設けられている。また、支持アーム72の先端部723には、上述したように、その下端部に湾曲矯正ベルト61の回転軸662を回転可能に支持する軸受部材663が取り付けられている。
【0102】
支持アーム72は、図14に示されるように、開閉カバー433を閉じた閉鎖時に、湾曲矯正ベルト61の回転軸662に回転可能に設けられた位置決め用のローラ664が、装置ハウジング43の内部に設けられた補助フレーム439に設けられた凹溝からなる位置決め部665に嵌め合わされることで位置決めされる。位置決め部665を構成する凹溝は、支持軸73と湾曲矯正ベルト61の回転軸662を結ぶ直線Lと交差する方向に沿った略U字形状に形成されている。したがって、湾曲矯正ベルト61の回転軸662は、その位置決め用のローラ664が位置決め部665に嵌め合わされることで、支持軸73と湾曲矯正ベルト61の回転軸662を結ぶ直線Lに沿って方向の位置が位置決めされる。因みに、湾曲矯正ベルト61の回転軸662の直線Lと交差する方向に沿った位置は、支持アーム72の基端部721に設けられた長孔724の短軸方向によって位置決めされる。
【0103】
開閉カバー433には、図12に示されるように、当該開閉カバー433を閉じた状態に保持するとともに、開閉カバー433を開くことで湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62との圧接を解除する解除手段の一例としてのストッパー部材90が設けられている。ストッパー部材90は、回転軸725に固定された基端部901と、側面略J字形状に形成された先端部902を備えている。ストッパー部材90は、回転軸725に巻き掛けられたコイルスプリング903によって時計回り方向に沿って付勢されている。ストッパー部材90の先端部902は、装置ハウジング43のフレームに設けられた係合ピン904に係合される。開閉カバー433は、ストッパー部材90の先端部902が係合ピン904に係合されることで閉じた状態に位置決めされる。
【0104】
回転軸725には、上述したように、開閉カバー433を開閉する操作ハンドル433a(図4参照)が固定した状態で取り付けられている。開閉カバー433は、図示しないスプリングによって開く方向に付勢されている。そのため、開閉カバー433は、閉鎖時、ストッパー部材90の先端部902が装置ハウジング43の係合ピン904に係合された状態で停止している。
【0105】
フェルト67は、図10に示されるように、湾曲矯正ベルト61の略全長に沿って細長い断面矩形状に形成されている。フェルト67は、支持フレーム64の上端面に接着等の手段により設けられている。フェルト67には、湾曲矯正ベルト61の内周面に塗布された状態で供給するための潤滑剤が予め定められた量だけ含浸されている。潤滑剤は、湾曲矯正ベルト61と圧接部材63との摺動抵抗を低減する。潤滑剤としては、例えば、粘度が100~350csのアミノ変性シリコーンオイル等が用いられる。潤滑剤は、予めフェルト67に含浸させることで、湾曲矯正ベルト61の内周面に塗布供給されるが、これに限定されるものではなく、初期的に湾曲矯正ベルト61の内周面に塗布した状態で供給されるように構成しても良い。
【0106】
保持部材68は、耐熱性を有する合成樹脂等により一側面681が湾曲矯正ベルト61の内周面に沿った円弧形状に形成されている。保持部材68は、その長手方向に沿った両端部がガイド部材66に取り付けられている。保持部材68の下端面には、圧接部材63の上端面に設けられた凸部634aが当接する凹部682が設けられている。
【0107】
矯正ベルトユニット65は、図12に示されるように、切替手段の一例としての切替機構80によって回転軸662を中心にして回転することにより、湾曲矯正ロール62に対する圧接状態が切替可能に構成されている。矯正ベルトユニット65の回転軸662の軸方向に沿った両端部に側面略D字形状に形成された両端部には、揺動アーム81が固定した状態で取り付けられている。矯正ベルトユニット65は、回転軸662を中心にして回転させることにより、図10に示されるように、圧接部材63の第1の突起部631が湾曲矯正ロール62の表面に相対的に大きな圧接力で食い込むように配置される第1の位置(第1の状態)と、図13に示されるように、圧接部材63の第1及び第2の突起部631,632の双方が湾曲矯正ロール62の表面に湾曲矯正ベルト61を介して相対的に小さな圧接力で接触するか又は間隙を介して対向するよう配置された第2の位置(第2の状態)に切替可能となっている。
【0108】
矯正ベルトユニット65は、第1の位置に回転すると、第1の突起部631が湾曲矯正ロール62の表面に湾曲矯正ベルト61を介して相対的に大きな圧接力で食い込むように圧接され、湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62との間を通過する上向きに凸形状に湾曲した記録用紙5を平面状に矯正する。
【0109】
また、矯正ベルトユニット65は、第2の位置に回転すると、第1及び第2の突起部631,632が湾曲矯正ロール62の表面に湾曲矯正ベルト61を介して相対的に小さな圧接力で接触し、湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62との間を通過する下向きに凸形状に湾曲した記録用紙5を平面状に矯正する。
【0110】
切替機構80は、図12に示されるように、矯正ベルトユニット65におけるガイド部材66の回転軸662の端部に固定した状態で取り付けられた側面略三角形状の揺動アーム81と、揺動アーム81の先端部に当接して当該揺動アーム81を回転させる中間カム82と、中間カム82を回転させる第2の偏心カム83を備えている。揺動アーム81は、側面略三角形状に形成された基端部の近傍がガイド部材66の回転軸662に固定されている。揺動アーム81は、スプリング84によって反時計回り方向に回転するよう付勢されている。中間カム82は、揺動アーム81に接触する湾曲部821と、第2の偏心カム83に接触する直線部822を有する側面略台形状に形成されている。中間カム82は、スプリング85によって時計回り方向に回転して第2の偏心カム83に接触するよう付勢されている。第2の偏心カム83は、半径が最も大きく形成された第1の加圧部831と、半径が最も小さく形成された第2の圧接部832とを滑らかな曲面で接続した略長円形状に形成されている。第2の偏心カム83は、その回転軸833が装置ハウジング43の前面側に配置された図示しない駆動モータによって回転駆動されることで、湾曲矯正ベルト61を湾曲矯正ロール62に圧接させる第1の位置と、湾曲矯正ベルト61を湾曲矯正ロール62に弱い力で接触させる第2の位置とに切り替える。
【0111】
湾曲矯正ロール62は、図10に示されるように、円柱形状に形成された金属製の芯金621と、芯金621の外周面に相対的に厚く被覆された発泡性又は非発泡性の弾性体等からなる弾性体層622と、弾性体層622の表面に被覆された離型層623を備えている。湾曲矯正ロール62は、その芯金621が装置ハウジング43のフレームに回転可能に取り付けられている。湾曲矯正ロール62は、装置ハウジング43の前面側に配置された図示しない駆動装置により矢印F方向に沿って回転駆動される。湾曲矯正ロール62の芯金621は、図14に示されるように、その軸方向に沿った両端部が装置ハウジング43の長手方向に沿った両端部にそれぞれ配置された補助フレーム439に回転可能に取り付けられている。
【0112】
ところで、上記の如く構成される湾曲矯正装置60は、図10に示されるように、湾曲矯正ベルト61をその内部に配置された圧接部材63によって湾曲矯正ロール62の表面に圧接するよう構成されている。また、圧接部材63は、湾曲矯正ロール62と反対側の面(上端面)が支持フレーム64により支持されている。支持フレーム64は、その長手方向に沿った両端部がガイド部材66に固定した状態で取り付けられている。ガイド部材66は、支持アーム72に回転可能に装着されている。
【0113】
そのため、本実施の形態1を適用する以前の湾曲矯正装置60は、図10に示されるように、矯正ベルトユニット65を回転軸662を中心として回転させ、圧接部材63の第1の突起部631を湾曲矯正ロール62の表面に圧接させると、圧接部材63が湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って湾曲するよう撓むこととなる。その結果、湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62の圧接力は、図15に示されるように、圧接部材63等の撓み変形に起因して、長手方向に沿った中央部の圧接力が両端部に比べて大幅に低下する。したがって、湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62は、その圧接力が長手方向に沿った中央部と両端部で大きく異なり、湾曲矯正ロール62の弾性体層622の変形量の違いにより、記録用紙5にしわが発生したり、記録用紙5に斜行が生じるという技術的課題を有していた。
【0114】
かかる技術的課題に対しては、図16に示されるように、圧接部材63が湾曲矯正ロール62と圧接する接触部を、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部が両端部より突出した形状とすることにより、圧接部材63の湾曲矯正ロール62に対する圧接力を軸方向に沿って均一化することが考えられる。
【0115】
しかしながら、上記の如く圧接部材63が湾曲矯正ロール62と圧接する接触部を、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部が両端部より突出するよう形成した場合は、図16(b)に示されるように、第1の位置における圧力最大時に湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った圧接力を略均一とすることができる。その反面、第2の位置における圧力最小時に圧接部材63を弱い圧接力で湾曲矯正ロール62の表面に接触させた場合は、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った両端部の圧接力が略ゼロとなり、やはり湾曲矯正不良が発生するという技術的課題が新たに生じる。
【0116】
そこで、この実施の形態1に係る湾曲矯正装置60は、圧接手段と支持手段の接触部の少なくとも一方は、回転体の軸方向に沿った中央部が両端部より他方へ向けて突出させるよう構成している。
【0117】
また、この実施の形態1に係る湾曲矯正装置60は、圧接手段は、支持手段との接触部が支持手段側へ向けて突出させるよう構成されている。
【0118】
また、この実施の形態1に係る湾曲矯正装置60は、圧接手段の接触部は、回転体の軸方向に沿った中央部が直線状に形成されるよう構成している。
【0119】
さらに、この実施の形態1に係る湾曲矯正装置60は、圧接手段は、支持手段との接触部が、回転体の軸方向に沿って階段状に突出するよう構成している。
【0120】
すなわち、この実施の形態1に係る湾曲矯正装置60は、圧接部材63と支持フレーム64との接触部が次のように構成されている。圧接部材63は、図17及び図18に示されるように、その裏面側に長手方向及び長手方向と交差する短手方向に沿った複数のリブ636,637を格子状に設けることにより、軽量化しつつ長手方向及び短手方向に沿った両方向の剛性を高めるよう構成されている。
【0121】
支持フレーム64は、図19に示されるように、その平板状に形成された下端部641の下端面641aが、圧接部材63における一対の取付板部634,635の間に位置する短手方向に沿って配置された複数のリブ637の上端面に当接した状態で取り付けられている。そのため、支持フレーム64は、圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’と当接する下端部641の下端面641aが、湾曲矯正ロール62からの圧接力の反力を受けて圧接部材63を支持する接触部となる。
【0122】
この実施の形態1では、圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’が圧接方向と交差する方向に沿って平面状に配置、つまり圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’がすべて同一の高さHを有している訳ではなく、図18(b)に示されるように、圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’が湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って階段状となるよう、圧接部材63における複数のリブ637の上端面637’の高さHが、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部の高さH1が両端部の高さH3に比べて高くなるように形成されている。
【0123】
更に説明すると、この実施の形態1では、圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’が、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って中央部である第1の領域630Aと、第1の領域の両側に位置する第2の領域630Bと、第2の領域630Bの両側であって両端部に位置する第3の領域630Cとに区分されている。
【0124】
圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’は、第1の領域630Aが最も高さが高く突出しており、次に第2の領域630Bが高く突出しており、第3の領域630Cが最も高さが低くなるよう設定されている。ここで、複数のリブ636,637の第1乃至第3の領域における高さの差である高低差は、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った圧接力が略均一となることを考慮して適宜設定するのが望ましい。
【0125】
その結果、圧接部材63の複数のリブ636,637の上端面は、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って左右対称な階段状に形成されている。また、圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’は、中央部に位置する第1の領域630Aが湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って約1/2を占める最も長い直線状に配置されている。
【0126】
ただし、圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’は、第1~第3の領域630A~630Cの3つの領域に限定されるものではなく、中央部と両端部とからなる2つの領域に区分しても良く、あるいは4つ以上の領域に区分しても良い。また、圧接部材63の複数のリブ637の上端面637’は、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って左右対称に形成される必要は必ずしもなく、左右非対称な形状に形成しても良い。
【0127】
また、圧接部材63の支持フレーム64と接触する接触部は、必ずしも複数のリブ637から構成する必要はなく、当該接触部を湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った平面から形成しても良い。ここで、圧接部材63の支持フレーム64と接触する接触部を湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って平面状に形成した場合は、当該接触部を上述したように複数の領域に区分して、複数の領域の高さを互いに異なるよう構成すれば良い。
【0128】
<湾曲矯正装置の作用>
この実施の形態1に係る湾曲矯正装置60を備えた定着装置40では、次のようにして、回転体と回転体に圧接する矯正ベルトを備えた湾曲矯正装置において、回転体と矯正ベルトとの圧接力を変化させた際に回転体の軸方向に沿って圧接力が変動するのを抑制することが可能となっている。
【0129】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置40は、図3に示されるように、記録用紙5上に未定着トナー像Tを定着するとともに、定着処理が施された記録用紙5の湾曲が湾曲矯正装置60によって矯正される。
【0130】
湾曲矯正装置60は、図10に示されるように、矯正ベルトユニット65が第1の位置に回転すると、第1の突起部631が湾曲矯正ロール62の表面に湾曲矯正ベルト61を介して相対的に大きな圧接力で食い込むように圧接され、湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62との間を通過する上向きに凸形状に湾曲した記録用紙5を平面状に矯正する。
【0131】
このとき、湾曲矯正ベルト61は、その内部に配置された圧接部材63の第1の突起部631が、湾曲矯正ロール62の弾性体層622に湾曲矯正ベルト61を介して相対的に大きな圧接力で圧接される。
【0132】
また、矯正ベルトユニット65は、図13に示されるように、第2の位置に回転すると、第1及び第2の突起部631,632が湾曲矯正ロール62の表面に湾曲矯正ベルト61を介して相対的に小さな圧接力で接触し、湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62との間を通過する下向きに凸形状に湾曲した記録用紙5を平面状に矯正する。
【0133】
圧接部材63は、第1の位置において、その上端面が支持フレーム64の下端部641の下端面641aに接触して、湾曲矯正ロール62からの圧接力の反力に対して支持されている。
【0134】
そこで、この実施の形態1に係る湾曲矯正装置60では、図18に示されるように、圧接部材63の上端面に形成された複数のリブ637が、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部と両端部とで異なる高さH1~H3を有するよう構成されている。
【0135】
そのため、圧接部材63の複数のリブ637は、支持フレーム64の下端面641aに対して最も高さH1が高く突出した第1の領域630Aが、当該支持フレーム64の下端面641aに接触(当接)し、次に高さH2が高い第2の領域630Bと最も高さH3が低い第3の領域630Cは、支持フレーム64の下端面641aとの間隙(距離)が大きくなるよう対向している。
【0136】
圧接部材63の複数のリブ637は、この状態で支持フレーム64の下端面641aに圧接される。その結果、圧接部材63及び支持フレーム64は、湾曲矯正ロール62からの反力によって当該湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って撓もうとする。
【0137】
ところが、支持フレーム64の下端部641aと接触する圧接部材63の複数のリブ637は、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部が両端部に比較して突出高さHが高く設定されている(H1>H2>H3)。そのため、湾曲矯正ロール62から反力を受ける 圧接部材63は、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部が両端部に比較して圧接力(反力)が大きくなるよう支持フレーム64と圧接される。
【0138】
湾曲矯正装置60は、図10に示されるように、圧接部材63の第1の突起部631を湾曲矯正ロール62の表面に相対的に大きな圧接力で圧接させた場合でも、圧接部材63及び支持フレーム64の湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った撓み変形と、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部が両端部に比較して大きな圧接力(反力)で圧接する効果が相殺されて、図19(b)に示されるように、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って圧接力の変動が発生することが抑制される。
【0139】
したがって、湾曲矯正装置60では、湾曲矯正ベルト61と湾曲矯正ロール62の圧接力が長手方向に沿った中央部と両端部で大きく異なり、湾曲矯正ロール62の弾性体層622の変形量の違いにより、記録用紙5にしわが発生したり、記録用紙5に斜行が生じることが防止乃至抑制される。
【0140】
また、湾曲矯正装置60は、図13に示されるように、第1及び第2の突起部631,632が湾曲矯正ロール62の表面に湾曲矯正ベルト61を介して相対的に小さな圧接力で接触した場合においても、圧接部材63の複数のリブ637と支持フレーム64の下端面641aは、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部のみで接触し、当該圧接力が圧接部材63の長手方向に沿って作用するため、図19(b)に示されるように、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って圧接力の変動が発生することが抑制される。
【0141】
また、この実施の形態1では、図18に示されるように、圧接部材63の複数のリブ637を湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った中央部において直線状(同一の高さを有するよう)に構成したので、圧接部材63の複数のリブ637と支持フレーム64とが接触する際に、圧接部材63が湾曲矯正ロール62の軸方向に沿って傾斜することが抑制でき、圧接部材63を湾曲矯正ロール62の表面に安定して圧接させることができる。
【0142】
さらに、この実施の形態1では、板金等から形成される支持フレーム64の下端面641aを直線状(平面状)に形成すれば良いので、支持フレーム64の加工が容易となる。
【0143】
[実施の形態2]
図20はこの発明の実施の形態2に係る湾曲矯正装置を示す構成図である。
【0144】
この実施の形態2に係る湾曲矯正装置は、前記実施の形態1と異なり、支持フレーム64の下端面641aと接触する圧接部材63の複数のリブ637の高さHを、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った全長にわたり階段状に形成するのではなく、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った両端部を曲線形状に形成するよう構成されている。
【0145】
このように、上記実施の形態2に係る湾曲矯正装置60では、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った両端部が曲線形状に形成されているので、湾曲矯正ベルト61を圧接部材63によって湾曲矯正ロール62に圧接させた際に、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った両端部における圧力変動を滑らかに抑制することが可能となる。
【0146】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0147】
[実施の形態3]
図21はこの発明の実施の形態3に係る湾曲矯正装置を示す構成図である。
【0148】
この実施の形態3に係る湾曲矯正装置は、前記実施の形態1と異なり、支持フレーム64の下端面641aと接触する圧接部材63の複数のリブ637の高さHを、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った全長にわたり階段状に形成するのではなく、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った全領域を曲線形状に形成するよう構成されている。
【0149】
このように、上記実施の形態3に係る湾曲矯正装置60では、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿った全領域が曲線形状に形成されているので、湾曲矯正ベルト61を圧接部材63によって湾曲矯正ロール62に圧接させた際に、湾曲矯正ロール62の軸方向に沿ったすべての領域における圧力変動を滑らかに抑制することが可能となる。
【0150】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0151】
なお、前記実施の形態では、画像形成装置の一例としてのフルカラーの画像を形成する画像形成装置について説明したが、これに限定されるものではなく、画像形成装置としてはモノクロの画像を形成するものであっても良いことは勿論である。
【0152】
また、前記実施の形態では、圧接手段と支持手段のうち、圧接手段の接触部を回転体の軸方向に沿った中央部が両端部より支持手段へ向けて突出するよう構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、支持手段の接触部あるいは圧接手段と支持手段の双方を回転体の軸方向に沿った中央部が両端部より支持手段へ向けて突出するよう構成しても良い。
【符号の説明】
【0153】
1…画像形成装置
40…定着装置
41…加熱ロール
42…加圧ベルト
43…装置ハウジング(装置本体)
61…湾曲矯正ベルト
62…湾曲矯正ロール
63…圧接部材
64…支持フレーム
637…リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21