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特許7567350三次元造形装置、および三次元造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/343 20170101AFI20241008BHJP
   B22F 12/53 20210101ALI20241008BHJP
   B22F 12/57 20210101ALI20241008BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20241008BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241008BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20241008BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241008BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C64/343
B22F12/53
B22F12/57
B28B1/30
B29C64/106
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020175888
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067265
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏貴
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081263(JP,A)
【文献】特開2019-025772(JP,A)
【文献】特開2001-311478(JP,A)
【文献】特表2017-528340(JP,A)
【文献】特表2009-500194(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107187031(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B28B 1/30
B29C 64/00-64/40
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、
ノズルと、
前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整部と、
前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層されるステージと、
前記吐出調整部を制御する制御部と、
を含み、
前記吐出調整部は、
前記吐出量を調整するように機能するバタフライバルブと、
発光部および受光部を有するフォトセンサーと、
前記バタフライバルブを駆動させるモーターと、
前記モーターによって回転する入力歯車と、
前記入力歯車の回転に連動して回転する出力歯車と、
を有し、
前記制御部は、前記フォトセンサーの検出結果に基づいて前記バタフライバルブの初期
位置を検知し、前記モーターを制御して前記バタフライバルブを前記初期位置から回転
せることによって、前記吐出量を調整し、
前記バタフライバルブは、前記出力歯車に接続され、
前記フォトセンサーと前記出力歯車との距離は、前記フォトセンサーと前記入力歯車と
の距離よりも小さい、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吐出調整部は、前記発光部と前記受光部との間に設けられたスリット部材を有し、
前記スリット部材は、前記バタフライバルブの動作に連動して回転し、
前記制御部は、前記受光部における受光の有無によって、前記初期位置を検知する、三
次元造形装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記スリット部材には、複数のスリットが設けられ、
前記制御部は、前記受光部における受光の有無によって、前記バタフライバルブの現在
位置を検知する、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御部は、前記現在位置に基づいて、前記モーターを制御する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項において、
前記可塑化部は、
溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、連通孔が設けられたバレルと、
を有する、三次元造形装置。
【請求項6】
ノズルから可塑化された造形材料を吐出させて三次元造形物を製造する三次元造形物の
製造方法であって、
前記造形材料の吐出量を調整するように機能するバタフライバルブと、発光部および受
光部を有するフォトセンサーと、前記バタフライバルブを駆動させるモーターと、前記モ
ーターによって回転する入力歯車と、前記入力歯車の回転に連動して回転する出力歯車と
、を有する吐出調整部によって、前記フォトセンサーの検出結果に基づいて前記バタフラ
イバルブの初期位置を検知する工程と、
前記バタフライバルブを前記初期位置から回転させることによって、前記造形材料を前
記ノズルから吐出させる工程と、
を備え、
前記バタフライバルブは、前記出力歯車に接続され、
前記フォトセンサーと前記出力歯車との距離は、前記フォトセンサーと前記入力歯車と
の距離よりも小さい、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置、および三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化された造形材料を吐出して積層させ、硬化させることによって三次元造形物を製造する三次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、造形材料の流路にバタフライバルブが設けられた三次元造形装置が記載されている。特許文献1では、バタフライバルブによって、ノズルから吐出される造形材料の吐出量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-81263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の三次元造形装置では、バタフライバルブの初期位置を検知するためには、実際にノズルから造形材料を吐出させて、吐出量を計測する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形装置の一態様は、
材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、
ノズルと、
前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整部と、
前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層されるステージと、
前記吐出調整部を制御する制御部と、
を含み、
前記吐出調整部は、
前記吐出量を調整するように機能する吐出調整機構と、
発光部および受光部を有するフォトセンサーと、
前記吐出調整機構を駆動させるモーターと、
を有し、
前記制御部は、前記フォトセンサーの検出結果に基づいて前記吐出調整機構の初期位置を検知し、前記モーターを制御して前記吐出調整機構を前記初期位置からスライドまたは回転させることによって、前記吐出量を調整する。
【0007】
本発明に係る三次元造形物の製造方法の一態様は、
ノズルから可塑化された造形材料を吐出させて三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
発光部および受光部を有するフォトセンサーの検出結果に基づいて、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整機構の初期位置を検知する工程と、
前記吐出調整機構を前記初期位置からスライドまたは回転させることによって、前記造形材料を前記ノズルから吐出させる工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図2】本実施形態に係る三次元造形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
図3】本実施形態に係る三次元造形装置のバレルを模式的に示す平面図。
図4】本実施形態に係る三次元造形装置の吐出調整部を模式的に示す斜視図。
図5】本実施形態に係る三次元造形装置の吐出調整部を模式的に示す側面図。
図6】本実施形態に係る三次元造形装置の吐出調整部を模式的に示す側面図。
図7】本実施形態に係る三次元造形装置の制御部の処理を説明するためのフローチャート。
図8】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図9】本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図10】本実施形態の第3変形例に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 三次元造形装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す断面図である。なお、図1では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0011】
三次元造形装置100は、図1に示すように、例えば、造形ユニット10と、ステージ20と、移動機構30と、制御部40と、を含む。
【0012】
三次元造形装置100は、造形ユニット10のノズル160からステージ20に可塑化された造形材料を吐出させつつ、移動機構30を駆動して、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置100は、ステージ20上に所望の形状の三次元造形物を造形する。造形ユニット10の詳細な構成は、後述する。
【0013】
ステージ20は、移動機構30によって移動される。ステージ20の造形面22には、ノズル160から吐出された造形材料が積層され、三次元造形物が形成される。なお、ステージ20の造形面22に直接的に造形材料が積層されてもよいが、ステージ20の上に試料プレートを配置して、試料プレートの上に三次元造形物が形成されてもよい。この場合、試料プレートを介して、ステージ20に造形物材料が積層されることとなる。
【0014】
移動機構30は、造形ユニット10とステージ20との相対的な位置を変化させる。図示の例では、移動機構30は、造形ユニット10に対して、ステージ20を移動させる。移動機構30は、例えば、3つのモーター32の駆動力によって、ステージ20をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。モーター32は、制御部40によって制御される。
【0015】
なお、移動機構30は、ステージ20を移動させずに、造形ユニット10を移動させる構成であってもよい。または、移動機構30は、造形ユニット10およびステージ20の両方を移動させる構成であってもよい。
【0016】
制御部40は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部40は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。制御部40は、造形ユニット10および移動機構30を制御する。制御部40の具体的な処理は、後述する。なお、制御部40は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0017】
1.2. 造形ユニット
造形ユニット10は、図1に示すように、例えば、材料投入部110と、可塑化部120と、ノズル160と、を含む。
【0018】
材料投入部110には、ペレット状や粉末状の材料が投入される。材料投入部110に投入される材料としては、例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)が挙げられる。材料投入部110は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料投入部110と可塑化部120とは、材料投入部110の下方に設けられた供給路112によって接続されている。材料投入部110に投入された材料は、供給路112を介して、可塑化部120に供給される。
【0019】
可塑化部120は、例えば、スクリューケース122と、駆動モーター124と、フラットスクリュー130と、バレル140と、加熱部150と、を有している。可塑化部120は、材料投入部110から供給された固体状態の材料を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成して、ノズル160に供給する。
【0020】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0021】
スクリューケース122は、フラットスクリュー130を収容する筐体である。スクリューケース122の下面には、バレル140が設けられている。スクリューケース122とバレル140とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー130が収容されている。
【0022】
駆動モーター124は、スクリューケース122の上面に設けられている。駆動モーター124のシャフト126は、フラットスクリュー130の上面131に接続されている。駆動モーター124は、制御部40によって制御される。なお、減速機を介して、駆動モーター124のシャフト126と、フラットスクリュー130の上面131とが接続されていてもよい。
【0023】
フラットスクリュー130は、回転軸RA方向の大きさが、回転軸RA方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸RAは、Z軸と平行である。駆動モーター124が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、回転軸RAを中心に回転する。フラットスクリュー130は、上面131と、上面131とは反対側の溝形成面132と、上面131と溝形成面132とを接続する側面133と、を有している。溝形成面132には、第1溝134が設けられている。ここで、図2は、フラットスクリュー130を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、図2では、図1に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。また、図1では、フラットスクリュー130を簡略化して図示している。
【0024】
フラットスクリュー130の溝形成面132には、図2に示すように、第1溝134が設けられている。第1溝134は、例えば、中央部135と、溝接続部136と、材料導入部137と、を有している。中央部135は、バレル140に設けられた連通孔146と対向している。中央部135は、連通孔146と連通している。溝接続部136は、中央部135と材料導入部137とを接続している。図示の例では、溝接続部136は、中央部135から溝形成面132の外周に向かって渦状に設けられている。材料導入部137は、溝形成面132の外周に設けられている。すなわち、材料導入部137は、フラットスクリュー130の側面133に設けられている。材料投入部110から供給された材料は、材料導入部137から第1溝134に導入され、溝接続部136および中央部135を通って、バレル140に設けられた連通孔146に搬送される。なお、第1溝134の数は、特に限定されず、2つ以上の第1溝134が設けられていてもよい。
【0025】
バレル140は、図1に示すように、フラットスクリュー130の下方に設けられている。バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向する対向面142を有している。対向面142の中心には、第1溝134と連通する連通孔146が設けられている。ここで、図3は、バレル140を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図1では、バレル140を簡略化して図示している。
【0026】
バレル140の対向面142には、図3に示すように、第2溝144と、連通孔146と、が設けられている。第2溝144は、複数設けられている。図示の例では、6つの第2溝144が設けられているが、その数は、特に限定されない。複数の第2溝144は、Z軸方向からみて、連通孔146の周りに設けられている。第2溝144は、一端が連通孔146に直接的に接続され、連通孔146から対向面142の外周に向かって渦状に延びている。第2溝144は、造形材料を連通孔146に導く機能を有している。
【0027】
なお、第2溝144の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝144の一端が連通孔146に直接的に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝144は、対向面142に設けられていなくてもよい。ただし、連通孔146に造形材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝144は、対向面142に設けられていることが好ましい。
【0028】
加熱部150は、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を加熱する。図1に示す例では、加熱部150は、バレル140に設けられている。加熱部150は、例えば、ヒーターである。加熱部150の出力は、制御部40によって制御される。可塑化部120は、フラットスクリュー130、バレル140、および加熱部150によって、材料を連通孔146に向かって搬送しながら加熱して造形材料を生成し、生成された造形材料を、連通孔146からノズル160へと流出させる。
【0029】
ノズル160は、バレル140の下方に設けられている。ノズル160は、可塑化部120から供給された造形材料を、ステージ20に向かって吐出する。ノズル160には、ノズル流路162と、ノズル孔164と、が設けられている。ノズル流路162は、連通孔146に連通している。ノズル孔164は、ノズル流路162に連通している。ノズル孔164は、ノズル160の先端に設けられた開口である。ノズル孔164の平面形状は、例えば、円形である。連通孔146からノズル流路162に供給された造形材料は、ノズル孔164から吐出される。
【0030】
1.3. 吐出調整部
造形ユニット10は、図1に示すように、さらに、吐出調整部170を含む。吐出調整部170は、ノズル160からの造形材料の吐出量を調整する。ここで、図4は、吐出調整部170を模式的に示す斜視図である。図5および図6は、吐出調整部170を模式的に示す側面図である。なお、便宜上、図1では、吐出調整部170を簡略化して図示している。
【0031】
吐出調整部170は、図4図6に示すように、例えば、モーター171と、入力歯車172と、出力歯車173と、吐出調整機構174と、スリット部材175と、フォトセンサー176と、を有している。
【0032】
モーター171は、吐出調整機構174を駆動させる。入力歯車172は、モーター171によって回転する。図示の例では、入力歯車172は、X軸と平行な軸を回転軸として回転する。出力歯車173は、入力歯車172と噛み合うように構成されている。出力歯車173は、入力歯車172の回転に連動して回転する。図示の例では、出力歯車173は、X軸と平行な軸を回転軸として回転する。X軸方向からみて、出力歯車173の径は、例えば、入力歯車172の径よりも大きい。
【0033】
吐出調整機構174は、出力歯車173に接続されている。吐出調整機構174は、ノズル160からの造形材料の吐出量を調整するように機能する。吐出調整機構174は、出力歯車173によって回転する。図示の例では、吐出調整機構174は、棒状の部材に切り欠き174aが設けられたバタフライバルブである。切り欠き174aは、図1に示すように、ノズル流路162に位置している。吐出調整機構174は、例えば、X軸に平行な軸を回転軸として回転する。吐出調整機構174が回転することにより、Z軸方向からみて、切り欠き174aとノズル孔164との重なり面積が変化する。これにより、吐出調整機構174は、ノズル160から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。
【0034】
なお、図示はしないが、バタフライバルブである吐出調整機構174の切り欠き174aは、ノズル流路162ではなく、バレル140に設けられた連通孔146に位置していてもよい。
【0035】
スリット部材175は、図4図6に示すように、例えば、吐出調整機構174に接続されている。スリット部材175は、吐出調整機構174の回転に連動して回転する。スリット部材175は、X軸方向からみて、円形状の部材にスリット175aが設けられることによって構成されている。図示の例では、スリット175aの数は、1つである。スリット部材175は、スリットカムであってもよい。
【0036】
フォトセンサー176は、スリット部材175を挟むように設けられている。図示の例では、フォトセンサー176は、出力歯車173よりも+X軸方向に位置している。フォトセンサー176は、出力歯車173側に設けられている。すなわち、フォトセンサー176と出力歯車173との間の距離は、フォトセンサー176と入力歯車172との間の距離よりも小さい。図示の例では、X軸方向からみて、フォトセンサー176は、出力歯車173と重なっている。
【0037】
フォトセンサー176は、発光部176aおよび受光部176bを有している。スリット部材175は、発光部176aと受光部176bとの間に設けられている。発光部176aと受光部176bとの間にスリット175aが位置している場合、発光部176aから発せられた光は、スリット175aを通って、受光部176bにおいて受光される。一方、発光部176aと受光部176bとの間にスリット175aが位置していない場合、発光部176aから発せられた光は、スリット部材175によって遮光され、受光部176bにおいて受光されない。フォトセンサー176は、スリット部材175を介して、吐出調整機構174の位置を検出することができる。なお、発光部176aと受光部176bとの間にスリット部材175が位置すれば、発光部176aおよび受光部176bの位置関係は、逆転していてもよい。
【0038】
フォトセンサー176の発光部176aは、例えば、発光ダイオードによって構成されている。受光部176bは、例えば、フォトトランジスターを含む集積回路によって構成されている。フォトセンサー176は、フォトインタラプターであってもよい。
【0039】
1.4. 制御部
制御部40は、吐出調整部170を制御する。図7は、制御部40の処理を説明するためのフローチャートである。
【0040】
ユーザーは、例えば、図示せぬ操作部を操作して、制御部40に処理を開始するための処理開始信号を出力する。操作部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどによって実現される。制御部40は、処理開始信号を受けると処理を開始する。
【0041】
制御部40は、図7に示すように、ステップS1として、フォトセンサー176の検出結果に基づいて、吐出調整機構174の初期位置を検知する検知処理を行う。
【0042】
具体的には、制御部40は、モーター171を駆動させて吐出調整機構174を回転させつつ、フォトセンサー176を駆動させる。そして、制御部40は、フォトセンサー176の受光部176bにおける受光の有無に基づいて、吐出調整機構174の初期位置を検知する。より具体的には、制御部40は、受光部176bが発光部176aからの光を受光した位置を、吐出調整機構174の初期位置として検知する。吐出調整機構174の初期位置は、発光部176aと受光部176bとの間にスリット175aが配置される位置である。吐出調整機構174の初期位置において、例えば、Z軸方向からみて、切り欠き174aとノズル孔164の重なり面積が最大となる。制御部40は、吐出調整機構174の初期位置を検知したら、モーター171およびフォトセンサー176の駆動を停止させ、吐出調整機構174を初期位置に維持する。
【0043】
次に、制御部40は、ステップS2として、吐出調整機構174を初期位置から所定位置に回転させることによって、造形材料をノズル160から吐出させる吐出処理を行う。これにより、制御部40は、ノズル160から吐出させる造形材料の吐出量を調整することができる。
【0044】
具体的には、制御部40は、三次元造形物を造形するための造形データに基づいてモーター171を駆動させ、吐出調整機構174を初期位置から所定角度、回転させる。造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトによって生成される。制御部40は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。制御部40は、吐出調整機構174を所定角度、回転させたら、モーター171の駆動を停止させる。
【0045】
次に、制御部40は、造形データに基づいて造形ユニット10および移動機構30を駆動させて、造形材料をノズル160から所定量、吐出させる。そして、制御部40は、処理を終了する。
【0046】
以上の処理を含む製造工程によって、三次元造形物を製造することができる。
【0047】
1.5. 作用効果
三次元造形装置100では、吐出調整部170は、吐出量を調整するように機能する吐出調整機構174と、発光部176aおよび受光部176bを有するフォトセンサー176と、吐出調整機構174を駆動させるモーター171と、を有し、制御部40は、フォトセンサー176の検出結果に基づいて吐出調整機構174の初期位置を検知し、モーター171を制御して吐出調整機構174を初期位置から回転させることによって、吐出量を調整する。そのため、三次元造形装置100では、吐出調整機構174の初期位置を検知するために、実際にノズル160から造形材料を吐出させる必要がなく、制御部40の処理によって自動的に吐出調整機構174の初期位置を検知することができる。これにより、実際にノズル160から造形材料を吐出させて吐出調整機構174の初期位置を検知する手間を省くことができる。さらに、三次元造形装置100では、フォトセンサー176を用いて吐出調整機構174の位置を検出するため、吐出調整機構174に衝撃を与えずに、吐出調整機構174の初期位置を検知することができる。
【0048】
例えば、バタフライバルブである吐出調整機構の初期位置を検知しないと、制御部によってバタフライバルブを回転させても、バタフライバルブが所望の位置からずれてしまう場合がある。そのため、造形材料の吐出量にばらつきが生じる場合がある。三次元造形装置100では、制御部40によって吐出調整機構174の初期位置を検知することができるため、制御部40によって吐出調整機構174を所望の位置に回転させることができる。したがって、上記のような問題を回避することができ、造形材料の吐出量の安定化を図ることができる。
【0049】
三次元造形装置100では、吐出調整部170は、発光部176aと受光部176bとの間に設けられスリット部材175を有し、スリット部材175は、吐出調整機構174の動作に連動して回転し、制御部40は、受光部176bにおける受光の有無によって、初期位置を検知する。そのため、三次元造形装置100では、制御部40は、発光部176aから発せられた光がスリット175aを通って受光部176bにおいて受光された場合に、吐出調整機構174の位置を初期位置として検知することができる。
【0050】
三次元造形装置100では、吐出調整機構174は、バタフライバルブであり、吐出調整部170は、モーター171によって回転する入力歯車172と、入力歯車172の回転に連動して回転する出力歯車173と、を有し、バタフライバルブは、出力歯車173によって回転し、フォトセンサー176は、出力歯車173側に設けられている。そのため、三次元造形装置100では、入力歯車172と出力歯車173との間の誤差を除外して、吐出調整機構174の初期位置を検知することができる。
【0051】
三次元造形装置100では、可塑化部120は、第1溝134が設けられた溝形成面132を有するフラットスクリュー130と、溝形成面132に対向する対向面142を有し、連通孔146が設けられたバレル140と、を有し、対向面142には、第1溝134と連通する連通孔146が設けられている。そのため、三次元造形装置100では、例えば、棒状のインラインスクリューを用いる場合に比べて、小型化を図ることができる。
【0052】
なお、上記では、スリット部材175にスリット175aが1つだけ設けられている例について説明したが、スリット部材175には、複数のスリット175aが設けられていてもよい。スリット部材175は、複数のスリット175aが設けられたロータリーエンコーダーであってもよい。スリット部材175は、アブソリュート方式のロータリーエンコーダーであってもよい。この場合、制御部40は、受光部176bの受光の有無によって、吐出調整機構174の初期位置および現在位置を検知する。吐出調整機構174の現在位置とは、図7に示すステップS2のノズル160から造形材料を吐出させる吐出処理を行っている際の吐出調整機構174の位置であり、吐出調整機構174がバタフライバルブの場合、吐出処理を行っている際のバタフライバルブの初期位置からの回転角度である。
【0053】
さらに、吐出調整機構174の初期位置および現在位置を検知した場合、制御部40は、吐出調整機構174の現在位置に基づいて、吐出調整機構174をモーター171を制御してもよい。具体的には、制御部40が検知した吐出調整機構174の現在位置と、モーター171の回転角度に相当する出力と、に差がある場合、制御部40は、当該差がなくなるように、モーター171に対してフィードバックをかける。例えば、制御部40が吐出調整機構174の現在位置が8°であることを検知し、モーター171の出力が吐出調整機構174の回転角度10°に相当している場合、制御部40は、モーター171の出力が回転角度8°に相当するように、フィードバックをかける。
【0054】
また、上記では、制御部40は、受光部176bにおける受光の有無によって、吐出調整機構174の初期位置を検知する例について説明したが、制御部40は、受光部176bで受光される光の強度によって、吐出調整機構174の初期位置を検知してもよい。この場合、スリット部材175の代わりに、互いに反射率が異なる領域を有する反射部材が設けられ、発光部176aからの光は、反射部材で反射されて受光部176bで受光される。例えば、制御部40は、受光部176bで受光された光の強度が所定値を超えた場合の吐出調整機構174の位置を、初期位置として検知する。
【0055】
また、上記では、発光部176aから発せられた光がスリット175aを通って受光部176bにおいて受光された場合に、吐出調整機構174の位置を初期位置として検知する例について説明したが、逆に、発光部176aから発せられた光がスリット部材175で遮光され受光部176bで受光されない場合に、吐出調整機構174の位置を初期位置として検知してもよい。
【0056】
また、上記の例では、スクリューとして、回転軸RA方向の大きさが回転軸RA方向と直交する方向の大きさよりも小さいフラットスクリュー130を用いたが、フラットスクリュー130の代わりに、回転軸RA方向に長い棒状のインラインスクリューを用いてもよい。
【0057】
2. 変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200を模式的に示す断面図である。なお、便宜上、図8では、ステージ20および移動機構30の図示を省略している。
【0058】
以下、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200において、上述した本実施形態に係る三次元造形装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、以下に示す本実施形態の第2~第4変形例に係る三次元造形装置において、同様である。
【0059】
上述した三次元造形装置100では、図4に示すように、吐出調整機構174は、バタフライバルブであった。
【0060】
これに対し、三次元造形装置200では、図8に示すように、吐出調整機構174は、閉塞ピンである。
【0061】
三次元造形装置200では、バレル140とノズル160とを接続する接続部材210を含む。接続部材210には、連通孔146とノズル流路162とを連通する連通流路212が設けられている。図示の例では、連通流路212は、連通孔146から-Z軸方向に延出した後、Z軸に対して傾斜して延出し、ノズル流路162に接続されている。
【0062】
閉塞ピンである吐出調整機構174は、接続部材210に設けられている。吐出調整機構174は、モーター171によってZ軸に沿ってスライド可能である。図示はしないが、吐出調整機構174とモーター171の間に、吐出調整機構174をZ軸に沿ってスライドさせるための移動機構が設けられていてもよい。
【0063】
吐出調整機構174の先端274aは、ノズル孔164を閉塞可能に構成されている。吐出調整機構174の先端274aがノズル孔164を閉塞している状態では、ノズル孔164から造形材料は吐出されない。一方、吐出調整機構174の先端274aがノズル孔164よりも+Z軸方向に位置している場合には、ノズル孔164から造形材料が吐出される。三次元造形装置200では、吐出調整機構174をスライドさせることにより、ノズル孔164から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。
【0064】
閉塞ピンである吐出調整機構174の根元274bには、スリット部材175が設けられている。図示の例では、スリット部材175のX軸方向の大きさは、吐出調整機構174のX軸方向の大きさよりも大きい。例えば、先端274aがノズル孔164よりも所定の間隔を空けて+Z軸方向に位置している場合に、スリット175aは、フォトセンサー176の発光部176aと受光部176bとの間に位置する。制御部40は、受光部176bが発光部176aからの光を受光した位置を、吐出調整機構174の初期位置として検知する。そして、制御部40は、吐出調整機構174を初期位置からスライドさせることによって、造形材料の吐出量を調整する。スリット部材175は、吐出調整機構174の動作に連動してスライドする。
【0065】
なお、吐出調整機構174の根元274bには、スリット部材175の代わりに、上述した反射率の異なる領域を有する反射部材が設けられ、制御部40は、受光部176bで受光される光の強度によって、吐出調整機構174の初期位置を検知してもよい。
【0066】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置300を模式的に示す断面図である。なお、便宜上、図9では、フォトセンサー176を透視して図示している。また、図9では、ステージ20および移動機構30の図示を省略している。
【0067】
上述した三次元造形装置100では、図4に示すように、吐出調整機構174は、バタフライバルブであった。
【0068】
これに対し、三次元造形装置300では、図9に示すように、吐出調整機構174は、シャッターである。
【0069】
シャッターである吐出調整機構174は、モーター171によってX軸に沿ってスライド可能である。図示はしないが、吐出調整機構174とモーター171の間に、吐出調整機構174をX軸に沿ってスライドさせるための移動機構が設けられていてもよい。
【0070】
吐出調整機構174には、X軸方向に貫通する貫通孔374が設けられえている。Z軸方向からみて、貫通孔374とノズル孔164とが重なっている状態では、ノズル孔164から造形材料が吐出される。一方、Z軸方向からみて、貫通孔374とノズル孔164とが重なっていない状態では、ノズル孔164から造形材料は吐出されない。三次元造形装置200では、Z軸方向からみて、貫通孔374とノズル孔164との重なり面積で、ノズル孔164から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。
【0071】
シャッターである吐出調整機構174の一端375には、スリット部材175が設けられている。例えば、Z軸方向からみて、貫通孔374とノズル孔164との重なり面積が最も大きくなった場合に、スリット175aは、フォトセンサー176の発光部176aと受光部176bとの間に位置する。制御部40は、受光部176bが発光部176aからの光を受光した位置を、吐出調整機構174の初期位置として検知する。そして、制御部40は、吐出調整機構174を初期位置からスライドさせることによって、造形材料の吐出量を調整する。スリット部材175は、吐出調整機構174の動作に連動してスライドする。
【0072】
なお、吐出調整機構174の一端375は、スリット部材175の代わりに、上述した反射率の異なる領域を有する反射部材が設けられ、制御部40は、受光部176bで受光される光の強度によって、吐出調整機構174の初期位置を検知してもよい。
【0073】
2.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の第3変形例に係る三次元造形装置400を模式的に示す断面図である。なお、便宜上、図10では、ステージ20および移動機構30の図示を省略している。
【0074】
上述した三次元造形装置100では、図1に示すように、フラットスクリュー130およびバレル140を含み、フラットスクリュー130が回転することによってノズル160から造形材料が吐出された。
【0075】
これに対し、三次元造形装置400では、図10に示すように、フィラメント状のフィラメント材料Fを可塑化チューブ420に挿入し、加熱ブロック430の熱によって造形材料Pを生成して、生成された造形材料Pをノズル160から吐出する。三次元造形装置400は、熱溶解積層法を用いた造形装置である。
【0076】
三次元造形装置400の可塑化部120は、例えば、駆動機構410と、可塑化チューブ420と、加熱ブロック430と、一対のシールド部材440と、マニホールド450と、を含む。
【0077】
駆動機構410には、図10では図示せぬ材料導入部からフィラメント状のフィラメント材料Fが供給される。フィラメント材料Fは、材料導入部において、ロール状に収容されていてもよく、材料導入部から連続的に駆動機構410に供給されてもよい。
【0078】
駆動機構410は、例えば、一対の車輪412から構成されている。フィラメント材料Fは、一対の車輪412の間に供給される。一対の車輪412が回転することにより、フィラメント材料Fは、-Z軸方向に移動し、可塑化チューブ420に挿入される。駆動機構410は、制御部40によって制御される。
【0079】
可塑化チューブ420の周囲には、加熱ブロック430が設けられている。加熱ブロック430は、一対のシールド部材440の間に設けられている。すなわち、加熱ブロック430は、一対のシールド部材440の内側に設けられている。可塑化チューブ420の第1端422は、一対のシールド部材440の外側に位置している。第1端422には、フィラメント材料Fが挿入される。可塑化チューブ420の第2端424は、一対のシールド部材440の外側に位置している。第2端424は、第1端422とは反対側の端である。第2端424には、ノズル160が設けられている。
【0080】
加熱ブロック430には、ヒーターが内蔵されている。加熱ブロック430は、ヒーターの熱によって可塑化チューブ420内のフィラメント材料Fを可塑化する。これにより、造形材料Pが生成される。フィラメント材料Fの先端には、メニスカスMが形成される。フィラメント材料Fの-Z軸方向への移動は、造形材料Pをノズル160から吐出させるためのポンプとして機能する。生成された造形材料Pは、ノズル160から、図10では図示せぬステージに向かって吐出される。
【0081】
マニホールド450は、一対のシールド部材440の外側に設けられている。マニホールド450は、可塑化チューブ420の第1端422に向けて冷却された空気を送付する。これにより、一対のシールド部材440の外側でフィラメント材料Fが可塑化されることを抑制することができる。
【0082】
可塑化チューブ420内には、例えば、バタフライバルブである吐出調整機構174の切り欠き174aが位置している。吐出調整機構174は、Z軸方向からみて切り欠き174aとノズル孔164との重なり面積で、ノズル孔164から吐出される造形材料の吐出量を調整する。
【0083】
2.4. 第4変形例
次に、本実施形態の第4変形例に係る三次元造形装置について説明する。上述した三次元造形装置100では、三次元造形物を造形するための材料として、ペレット状のABSが用いられていた。
【0084】
これに対し、本実施形態の第4変形例に係る三次元造形装置は、三次元造形物を造形するための材料として、例えば、ABS以外の熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料とした材料を挙げることができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0085】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0086】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部120において、フラットスクリュー130の回転と、加熱部150の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル160から吐出された後、温度の低下によって硬化する。熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル160から吐出されることが望ましい。
【0087】
可塑化部120では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部120に投入されることが望ましい。
【0088】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0089】
可塑化部120においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが挙げられる。
【0090】
材料投入部110に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部120において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0091】
材料投入部110に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0092】
その他に、材料投入部110に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂またはPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、あるいはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0093】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0094】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0095】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0096】
三次元造形装置の一態様は、
材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、
ノズルと、
前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整部と、
前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層されるステージと、
前記吐出調整部を制御する制御部と、
を含み、
前記吐出調整部は、
前記吐出量を調整するように機能する吐出調整機構と、
発光部および受光部を有するフォトセンサーと、
前記吐出調整機構を駆動させるモーターと、
を有し、
前記制御部は、前記フォトセンサーの検出結果に基づいて前記吐出調整機構の初期位置を検知し、前記モーターを制御して前記吐出調整機構を前記初期位置からスライドまたは回転させることによって、前記吐出量を調整する。
【0097】
この三次元造形装置によれば、吐出調整機構の初期位置を検知するために、実際にノズルから造形材料を吐出させる必要がなく、制御部の処理によって自動的に吐出調整機構の初期位置を検知することができる。これにより、実際にノズルから造形材料を吐出させて吐出調整機構の初期位置を検知する手間を省くことができる。
【0098】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記吐出調整部は、前記発光部と前記受光部との間に設けられたスリット部材を有し、
前記スリット部材は、前記吐出調整機構の動作に連動してスライドまたは回転し、
前記制御部は、前記受光部における受光の有無によって、前記初期位置を検知してもよい。
【0099】
この三次元造形装置によれば、制御部は、発光部から発せられた光がスリットを通って受光部において受光された場合に、吐出調整機構の位置を初期位置として検知することができる。
【0100】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記スリット部材には、複数のスリットが設けられ、
前記制御部は、前記受光部における受光の有無によって、前記吐出調整機構の現在位置を検知してもよい。
【0101】
この三次元造形装置によれば、制御部によって、吐出調整機構の現在位置を自動的に検知することができる。
【0102】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記制御部は、前記現在位置に基づいて、前記モーターを制御してもよい。
【0103】
この三次元造形装置によれば、制御部が検知した吐出調整機構の現在位置と、モーターの回転角度に相当する出力と、に差がある場合、制御部は、当該差がなくなるように、モーターに対してフィードバックをかけることができる。
【0104】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記吐出調整機構は、バタフライバルブであり、
前記吐出調整部は、
前記モーターによって回転する入力歯車と、
前記入力歯車の回転に連動して回転する出力歯車と、
を有し、
前記バタフライバルブは、前記出力歯車によって回転し、
前記フォトセンサーは、前記出力歯車側に設けられていてもよい。
【0105】
この三次元造形装置によれば、入力歯車と出力歯車との間の誤差を除外して、吐出調整機構の初期位置を検知することができる。
【0106】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記可塑化部は、
溝が設けられた溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、連通孔が設けられたバレルと、
を有してもよい。
【0107】
この三次元造形装置によれば、例えば、棒状のインラインスクリューを用いる場合に比べて、小型化を図ることができる。
【0108】
三次元造形物の製造方法の一態様は、
ノズルから可塑化された造形材料を吐出させて三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
発光部および受光部を有するフォトセンサーの検出結果に基づいて、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整機構の初期位置を検知する工程と、
前記吐出調整機構を前記初期位置からスライドまたは回転させることによって、前記造形材料を前記ノズルから吐出させる工程と、
を含む。
【符号の説明】
【0109】
10…造形ユニット、20…ステージ、22…造形面、30…移動機構、32…モーター、40…制御部、100…三次元造形装置、110…材料投入部、112…供給路、120…可塑化部、122…スクリューケース、124…駆動モーター、126…シャフト、130…フラットスクリュー、131…上面、132…溝形成面、133…側面、134…第1溝、135…中央部、136…溝接続部、137…材料導入部、140…バレル、142…対向面、144…第2溝、146…連通孔、150…加熱部、160…ノズル、162…ノズル流路、164…ノズル孔、170…吐出調整部、171…モーター、172…入力歯車、173…出力歯車、174…吐出調整機構、174a…切り欠き、175…スリット部材、175a…スリット、176…フォトセンサー、176a…発光部、176b…受光部、200…三次元造形装置、210…接続部材、212…連通流路、274a…先端、274b…根元、300…三次元造形装置、374…貫通孔、375…一端、400…三次元造形装置、410…駆動機構、412…車輪、420…可塑化チューブ、422…第1端、424…第2端、430…加熱ブロック、440…シールド部材、450…マニホールド
図1
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図10