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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241008BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20241008BHJP
   H05G 1/30 20060101ALI20241008BHJP
   H05G 1/60 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/00 530B
A61B6/46 502
H05G1/30 B
H05G1/60 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020178210
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069179
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】丹野 圭一
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189831(JP,A)
【文献】特開2011-152199(JP,A)
【文献】特開2007-175377(JP,A)
【文献】特開平08-138883(JP,A)
【文献】特開2012-050705(JP,A)
【文献】特開2008-178674(JP,A)
【文献】特開2007-082886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
H05G 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を含むX線照射部から被検体にX線を照射することによって、前記被検体の体内の画像を撮影する放射線撮影装置であって、
前記X線照射部によるX線の照射を制御する制御部と、
照射されるX線の線量を変更させる操作を受け付ける操作部と、を備え、
前記制御部は、
照射されるX線の線量を予め設定するプリセット設定部と、
前記プリセット設定部によって予め設定された線量を、標準状態として設定する標準状態設定部と、
前記操作部に対する操作に基づいて、前記標準状態を基準として、照射されるX線の線量が前記標準状態から所定の線量分だけ高い高線量状態と、照射されるX線の線量が前記標準状態から前記所定の線量分だけ低い低線量状態との少なくとも一方に、照射されるX線の線量を前記標準状態から相対的に変更する線量変更部と、を含み、
前記操作部は、前記標準状態から前記高線量状態へと切り替える操作と、前記標準状態から前記低線量状態へと切り替える操作との各々を、ユーザから選択的に受け付ける、放射線撮影装置。
【請求項2】
前記X線照射部は、動画像としての前記被検体の体内の画像を撮影するために連続的にX線を照射するように構成されており、
前記線量変更部は、単位時間あたりに照射されるX線の回数であるパルスレートと、1回の照射によって照射されるX線の線量であるパルス線量との少なくとも一方を、設定された前記標準状態から前記所定の線量分だけ相対的に変更することによって、照射されるX線の線量を前記標準状態から前記高線量状態または前記低線量状態に変更するように構成されている、請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記プリセット設定部は、前記被検体を撮影しながら手術する前に、照射されるX線の線量を予め設定するように構成されており、
前記線量変更部は、前記被検体を撮影しながら手術している際に、前記操作部に対する入力操作に基づいて、照射されるX線の線量を前記標準状態から前記高線量状態または前記低線量状態に変更するように構成されている、請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記プリセット設定部は、複数の線量のうちから選択された線量を、照射されるX線の線量として設定するように構成されており、
前記線量変更部は、前記複数の線量の段階よりも少ない数の段階に、照射されるX線の線量を前記標準状態から相対的に変更するように構成されている、請求項2または3に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記線量変更部は、前記パルス線量が前記標準状態より大きい1つの段階に設定された前記高線量状態と、前記パルス線量が前記標準状態より小さい1つの段階に設定された前記低線量状態とに、前記パルス線量を前記標準状態から相対的に変更するように構成されている、請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記標準状態と前記高線量状態と前記低線量状態とを識別可能に表示する表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記パルスレートおよび前記パルス線量の各々が前記標準状態から変更されているか否かを視覚的に識別可能な表示を前記表示部に表示させる表示制御部を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記標準状態と前記高線量状態と前記低線量状態とを色分けして前記表示部に表示させるように構成されている、請求項6に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記被検体が横たわる天板をさらに備え、
前記操作部は、前記天板に設置されており、前記パルスレートを変更させるためのボタンと、前記パルス線量を変更させるボタンとを含む、請求項6または7に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記被検体に行われる手術に対応するように設定された複数の線量を記憶する記憶部をさらに備え、
前記標準状態設定部は、前記記憶部に記憶された複数の線量のうちから撮影前に前記プリセット設定部により予め設定された線量を、前記標準状態として設定するように構成されており、
前記表示制御部は、前記プリセット設定部により予め設定された線量が識別可能な表示を前記表示部に表示させるように構成されている、請求項6~8のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、前記高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを報知する表示を前記表示部に表示させるように構成されている、請求項6~9のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
前記線量変更部は、前記高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、照射されるX線の線量を前記標準状態に変更するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置に関し、特に、被検体にX線を照射することによって被検体の体内の画像を撮影する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体にX線を照射することによって被検体の体内の画像を撮影する循環器用X線診断装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載されている循環器用X線診断装置は、撮影位置を移動して撮影を行うことが可能であり、被検者の心臓の冠状動脈を撮影している状態から被検者の寝台である天板を平行移動させて、被検者の骨盤部から足先までの下肢動脈の撮影を行う。冠状動脈と下肢動脈とでは、被検者の体厚が異なるため、撮影プログラムを心臓用から下肢用に変更させて撮影を行う必要がある。そこで、上記特許文献1に記載されている循環器用X線診断装置では、天板の位置を検出することによって取得された撮影位置の位置情報に基づいて、撮影プログラムを変更して撮影を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-213798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されている循環器用X線診断装置のように、被検者(被検体)の撮影する領域を変更させる場合と異なり、被検者(被検体)の同一の領域(部位)にX線を照射することによってX線透視・撮影を行う場合に、撮影を行いながら照射されるX線の線量などの撮影プログラム(撮影条件)を変更させる場合がある。たとえば、冠状動脈の狭窄性疾患に対するカテーテルを用いた治療である経皮的冠動脈インターベンション(PCI:percutaneous coronary intervention)では、ステントを血管内の狭窄部位に留置するタイミングなどにおいて、撮影される画像の視認性を向上させるために照射されるX線の線量を増加させる場合がある。一方で、ステントの留置が完了しカテーテルなどを被検体の体内から除去するタイミングなどにおいて、被検体の被ばく線量を少なくするために照射されるX線の線量を減少させる場合がある。これらの場合には、医師などの作業者は、予め設定された線量のX線による撮影を行っている状態から、手術の進行度に応じて、人体の部位または手技ごとに対応するように設定されている複数の線量(プリセット)のうちから適切な線量の具体的な値を選択し直すことによって、撮影条件を変更させる。しかしながら、予め設定された線量のX線による撮影を行っている状態において、設定された複数の線量のうちから適切な線量の具体的な値を選択し直す作業が医師などの作業者にとって負担となるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、同一の領域(部位)に対して予め設定された線量のX線によって撮影を行っている場合にも、被検体に照射されるX線の線量を容易に変更することが可能な放射線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における放射線撮影装置は、X線管を含むX線照射部から被検体にX線を照射することによって、被検体の体内の画像を撮影する放射線撮影装置であって、X線照射部によるX線の照射を制御する制御部と、照射されるX線の線量を変更させる操作を受け付ける操作部と、を備え、制御部は、照射されるX線の線量を予め設定するプリセット設定部と、プリセット設定部によって予め設定された線量を、標準状態として設定する標準状態設定部と、操作部に対する操作に基づいて、標準状態を基準として、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ高い高線量状態と、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ低い低線量状態との少なくとも一方に、照射されるX線の線量を標準状態から相対的に変更する線量変更部と、を含み、操作部は、標準状態から高線量状態へと切り替える操作と、標準状態から低線量状態へと切り替える操作との各々を、ユーザから選択的に受け付ける。なお、本明細書では、「X線撮影」および「X線画像の撮影」とは、被検体に逐次的(連続的)にX線を照射するX線透視(X線透視撮影)を含む概念であるものとして記載している。
【発明の効果】
【0008】
上記一の局面における放射線撮影装置では、操作部に対する操作に基づいて、標準状態を基準として、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ高い高線量状態と、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ低い低線量状態との少なくとも一方に、照射されるX線の線量を標準状態から相対的に変更する。これにより、医師などの作業者は、複数の線量のうちから適切な線量の具体的な値を選択し直すことなく、現在照射されているX線の線量から相対的に線量を変更させることができる。そのため、医師などの作業者は、操作部を操作することによって適切なタイミングにおいて照射されるX線の線量を容易に変更することができる。その結果、医師などの作業者は、同一の領域(部位)に対して予め設定された線量のX線によって撮影を行っている場合にも、被検体に照射されるX線の線量を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるX線撮影装置の構成を説明するための図である。
図2】一実施形態によるX線撮影装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3】一実施形態によるプリセットの選択について説明するための図である。
図4】一実施形態によるタッチパネルの表示について説明するための図である。
図5】一実施形態による高線量状態におけるタッチパネルの表示について説明するための図である。
図6】一実施形態による低線量状態におけるタッチパネルの表示について説明するための図である。
図7】一実施形態による高線量状態が一定時間以上続いた場合におけるタッチパネルの表示について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(X線撮影装置の全体構成)
図1図7を参照して、本発明の一実施形態によるX線撮影装置100について説明する。なお、X線撮影装置100は、特許請求の範囲における「放射線撮影装置」の一例である。
【0012】
X線撮影装置100は、図1に示すように、体内に医療用のデバイス200が挿入された被検体101にX線を照射することによって、被検体101の体内の画像を撮影するX線撮影を行う。X線撮影装置100は、たとえば、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う際に、被検体101の体内の様子を確認するための画像(動画像)を撮影する。経皮的冠動脈インターベンションは、心臓の冠動脈(冠状動脈)の狭窄および閉塞による疾患である狭心症および心筋梗塞などに対して、デバイス200を用いて血管の狭窄および閉塞を解消する治療である。
【0013】
デバイス200は、たとえば、被検体101の心臓の近傍の血管に留置されるカテーテル、ガイドワイヤまたはステントなどである。デバイス200は、手首または太ももなどの血管(橈骨動脈または大腿動脈など)から冠動脈の狭窄部位まで挿入される。経皮的冠動脈インターベンションでは、血管内に挿入されたステントなどのデバイス200が、冠動脈の狭窄部位に配置される。そして、冠動脈の狭窄部位においてステントを拡張させることによって血管の狭窄に対しての治療が行われる。
【0014】
経皮的冠動脈インターベンションでは、医師などの作業者は、撮影された動画像としてのX線画像を視認することによって、被検体101の体内の状態を確認しながら、被検体101の体内にステントなどのデバイス200を挿入する。
【0015】
〈X線撮影装置について〉
図2に示すように、X線撮影装置100は、天板1、X線照射部2、X線検出部3、移動部4、画像表示部5、タッチパネル6、制御部7、および、記憶部8を備える。X線撮影装置100は、被検体101にX線を照射することによって、被検体101の体内の画像を撮影する。具体的には、X線撮影装置100は、動画像としてのX線画像(X線透視画像)を撮影する。なお、タッチパネル6は、特許請求の範囲における「操作部」および「表示部」の一例である。
【0016】
天板1は、被検体101が横たわる。被検体101は、天板1に横たわった状態で、デバイス200が挿入されるとともに、X線が照射されて体内の画像が撮影される。また、天板1は、図示しない天板移動部によって移動可能に構成されている。
【0017】
X線照射部2は、被検体101にX線を照射する。X線照射部2は、電圧が印加されることによってX線を照射するX線管21を含む。X線管21は、制御部7によりX線管21に印加される電圧および電流が制御されることによって、照射するX線が制御されるように構成されている。また、本実施形態では、X線照射部2は、動画像としての被検体101の体内の画像(X線画像)を撮影するために連続的にX線を照射するように構成されている。
【0018】
X線検出部3は、被検体101を透過したX線を検出する。そして、X線検出部3は、検出されたX線に基づいて検出信号を出力する。X線検出部3は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)を含む。X線検出部3は、X線照射部2によって連続的に照射されたX線を検出することによって、動画像としてのX線画像を生成するための検出信号を出力する。
【0019】
移動部4は、X線照射部2およびX線検出部3を移動可能に保持する。具体的には、移動部4は、X線照射部2およびX線検出部3を被検体101が横たわる天板1を挟んで対向させるように支持する。そして、移動部4は、X線照射部2およびX線検出部3の被検体101に対する位置および角度を変更可能に支持する。また、移動部4は、X線照射部2とX線検出部3との間の距離を変更可能に支持する。また、移動部4は、たとえば、サーボモータを含む。そして、移動部4は、被検体101に対して、様々な位置および様々な角度からX線撮影を行うために、X線照射部2およびX線検出部3を移動させる。
【0020】
画像表示部5は、たとえば、液晶ディスプレイなどのモニタである。そして、画像表示部5は、撮影されたX線画像(静止画像および動画像)を表示する。具体的には、画像表示部5は、X線検出部3によって検出された検出信号に基づいて生成されたX線画像を表示する。
【0021】
タッチパネル6は、医師などの作業者によるX線撮影装置100を操作するための入力操作を受け付けるように構成されている。具体的には、本実施形態では、タッチパネル6は、X線照射部2によって照射されるX線の線量を変更させる操作を受け付ける。また、タッチパネル6は、制御部7による制御を実行するための入力操作を受け付ける。また、タッチパネル6は、後述する制御部7(表示制御部74)による制御に基づいて、X線照射部2から照射されるX線の線量についての情報を表示する。タッチパネル6は、天板1に設置されている。タッチパネル6に対する操作、および、タッチパネル6の表示についての詳細は後述する。
【0022】
制御部7は、たとえば、FPGA(field-programmable gate array)を含む。制御部7は、所定の制御プログラムを実行することにより、X線照射部2によるX線の照射を制御する。制御部7は、機能的な構成として、プリセット設定部71、標準状態設定部72、線量変更部73、表示制御部74、および、タイマー部75を含む。すなわち、制御部7は、所定の制御プログラムを実行することにより、プリセット設定部71、標準状態設定部72、線量変更部73、表示制御部74、および、タイマー部75として機能する。また、プリセット設定部71、標準状態設定部72、線量変更部73、表示制御部74、および、タイマー部75は、制御部7の中のソフトウェアとしての機能ブロックであり、ハードウェアとしての制御部7の指令信号に基づいて機能するように構成されている。なお、制御部7による制御の詳細については後述する。
【0023】
記憶部8は、たとえば、ハードディスクドライブなどの記憶装置により構成されている。本実施形態では、記憶部8は、被検体101に行われる手術に対応するように設定された複数の線量を記憶する。すなわち、記憶部8は、被検体101に行われる手術に対応するように設定された複数のプリセットを記憶する。また、記憶部8は、画像データおよび各種の設定値を記憶するように構成されている。
【0024】
(プリセットについて)
図3に示すように、X線撮影装置100は、設定されたプリセット(線量)に基づいて、撮影を行うように構成されている。具体的には、X線撮影装置100は、設定されたプリセットに基づいて、連続的に照射されるX線のパルスレートおよびパルス線量を制御する。パルスレートは、1秒間(単位時間)に照射されるX線の回数である。パルス線量は、1回の照射によって照射されるX線の線量である。パルスレートおよびパルス線量は、X線照射部2のX線管21に印加される電流および電圧の大きさおよびパルス幅が制御されることによって所定の値に設定される。
【0025】
照射されるX線のパルス線量は、X線検出部3によって検出されたX線の線量に基づいて自動的に調整される。ここで、被検体101の体の大きさおよび向きなどの差異に起因して、同一の線量(強度)のX線を照射した場合にも、検出されるX線の線量の大きさは変化する。そこで、X線検出部3によって検出されたX線の線量が所定の大きさの範囲内となるように、X線管21に印加される電圧および電流が制御される。すなわち、設定されたプリセットに応じて、撮影されるX線画像の画質(明暗、コントラストなど)が一定の範囲内となるように照射されるX線のパルス線量が制御される。
【0026】
たとえば、プリセットとして「パルスレート:7.5pps、パルス線量:Lv3」が設定された場合には、1秒間に7.5回の間隔でX線が照射されるとともに、X線検出部3が検出するX線の線量(X線検出部3から出力される信号の強度)が「パルス線量:Lv3」に対応する大きさとなるように、照射されるX線の線量が制御される。また、プリセットとして「パルスレート:7.5pps、パルス線量:Lv2」が設定された場合には、同様に1秒間に7.5回の間隔でX線が照射されるとともに、X線検出部3が検出するX線の線量(X線検出部3から出力される信号の強度)は、「パルス線量:Lv3」に比べて比較的小さい「パルス線量:Lv2」に対応するように、照射されるX線の線量が制御される。また、プリセットとして「パルスレート:15pps、パルス線量:Lv4」が設定された場合には、1秒間に15回の間隔でX線が照射されるとともに、X線検出部3が検出するX線の線量(X線検出部3から出力される信号の強度)は、「パルス線量:Lv3」に比べて大きくなる。
【0027】
パルスレート(pps:pulse per second)が大きいと、撮影されるX線画像の動画が滑らかな動きとなり、パルス線量が大きいと、撮影されるX線画像の視認性が向上される。医師などの作業者は、予め手術前に、被検体101に行われる手術(手技)の種類や、被検体101の体格、年齢、病状などに応じて、予め記憶部8に記憶されている複数の線量(プリセット)のうちから、適切なプリセットを選択することによって、撮影されるX線画像が適切な表示となるように設定する。
【0028】
たとえば、タッチパネル6は、X線撮影を行う前に(手術前に)タッチパネル6に対する操作に基づいて、プリセット選択画面61を表示する。プリセット選択画面61は、予め記憶部8に記憶されている複数のプリセットを選択可能に表示する。医師などの作業者は、タッチパネル6に対する選択操作を行うことによって、タッチパネル6に表示されている複数のプリセットのうちから、X線画像の撮影に用いられる適切なプリセットを選択する。
【0029】
そして、本実施形態では、プリセット設定部71(制御部7)は、照射されるX線の線量を予め設定する。具体的には、プリセット設定部71は、複数の線量(プリセット)のうちから選択された線量を、照射されるX線の線量として設定するように構成されている。また、プリセット設定部71は、被検体101を撮影しながら手術する前に、照射されるX線の線量を予め設定するように構成されている。すなわち、プリセット設定部71は、タッチパネル6に対するプリセットを選択する選択操作に基づいて、選択されたプリセットに対応するように照射されるX線の線量(パルスレートおよびパルス線量)を設定する。
【0030】
そして、本実施形態によるX線撮影装置100では、図示しない撮影開始ボタンに対する操作に基づいて、プリセット設定部71によって設定されたプリセットの線量(パルスレートおよびパルス線量)のX線を連続的に照射してX線撮影が開始される。
【0031】
(線量の相対的な変更について)
本実施形態によるX線撮影装置100は、タッチパネル6に対する操作に基づいて、連続的なX線の照射によるX線撮影が行われている最中(手術中)に、相対的にX線の線量(パルスレートおよびパルス線量)を変更する。
【0032】
〈標準状態の設定〉
本実施形態では、標準状態設定部72(制御部7)は、プリセット設定部71によって予め設定された線量を、標準状態として設定する。具体的には、標準状態設定部72は、記憶部8に記憶された複数の線量のうちから撮影前にプリセット設定部71により予め設定された線量を、標準状態として設定するように構成されている。
【0033】
すなわち、標準状態設定部72は、複数のプリセットのうちから選択されたプリセットを、基準となる標準状態として設定する。具体的には、標準状態設定部72は、プリセット設定部71によって設定されたプリセットの線量(パルスレートおよびパルス線量)を、基準となる標準状態として設定する。
【0034】
〈線量の変更〉
本実施形態では、線量変更部73(制御部7)は、被検体101を撮影しながら手術している際に、タッチパネル6に対する入力操作に基づいて、照射されるX線の線量を標準状態から高線量状態または低線量状態に相対的に変更するように構成されている。
【0035】
高線量状態は、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ高い状態である。すなわち、高線量状態は、標準状態に比べて、パルスレートおよびパルス線量の少なくとも一方が所定の線量分だけ高い状態である。また、低線量状態は、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ低い状態である。すなわち、低線量状態は、標準状態に比べて、パルスレートおよびパルス線量の少なくとも一方が所定の線量分だけ低い状態である。線量変更部73は、パルスレートとパルス線量との少なくとも一方を、設定された標準状態から所定の線量分だけ相対的に変更することによって、照射されるX線の線量を標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成されている。
【0036】
X線撮影装置100は、たとえば、パルスレートを、1、2、3、5、7.5、15、および、30(pps)の値にプリセットとして選択可能に構成されている。そして、線量変更部73は、標準状態として設定されたパルスレートを、X線撮影装置100が設定可能な複数のパルスレートのうちのいずれかのパルスレートに変更する。たとえば、線量変更部73は、標準状態におけるパルスレートが7.5ppsに設定されている場合には、パルスレートを15または30に変更することによって、標準状態から高線量状態に相対的に線量を変更する。また、線量変更部73は、パルスレートを7.5から、1、2、3、または、5に変更することによって、標準状態から低線量状態に変更する。なお、パルスレートは、その他の値(たとえば、10など)に設定可能に構成されていてもよい。また、パルスレートは、具体的な数値ではなく、High、Lowなどの抽象的な表現によって設定可能に構成されていてもよい。
【0037】
X線撮影装置100は、たとえば、パルス線量を、Lv1~Lv5の5段階にプリセットとして選択可能に構成されている。1パルスあたりの照射線量として、パルス線量は、Lv1が最も小さい線量であり、Lv5が最も大きい値である。なお、パルス線量は、5段階より多くの段階に変更可能に構成されていてもよいし、5段階より少ない段階に変更可能に構成されていてもよい。なお、パルス線量は、High、Lowなどの表現によって設定可能に構成されていてもよいし、具体的な数値によって設定可能に構成されていてもよい。
【0038】
ここで、本実施形態では、線量変更部73(制御部7)は、記憶部8に記憶されている複数の線量(プリセット)の段階よりも少ない数の段階に、照射されるX線の線量を標準状態から相対的に変更するように構成されている。すなわち、線量変更部73は、プリセットとして選択可能な線量の種類(プリセットの種類)よりも少ない数の段階に、照射されるX線の線量を標準状態から相対的に変更するように構成されている。
【0039】
具体的には、線量変更部73は、パルス線量が標準状態より大きい1つの段階に設定された高線量状態と、パルス線量が標準状態より小さい1つの段階に設定された低線量状態とに、パルス線量を標準状態から相対的に変更するように構成されている。すなわち、線量変更部73は、パルス線量を、標準状態から1段階増加させた高線量状態と、標準状態から1段階減少させた低線量状態とに変更可能に構成されている。
【0040】
たとえば、線量変更部73は、標準状態として、Lv3のパルス線量が設定されている場合に、Lv4のパルス線量に変更させることによって、標準状態から高線量状態に線量を変更する。そして、線量変更部73は、標準状態として、Lv3のパルス線量が設定されている場合に、Lv2のパルス線量に変更させることによって、標準状態から低線量状態に線量を変更する。すなわち、プリセットとして5種類のパルス線量が選択可能である場合にも、線量変更部73は、標準状態を基準として、2種類のパルス線量のみに変更可能に構成されている。
【0041】
〈タッチパネルの表示と操作について〉
図4に示すように、表示制御部74(制御部7)は、照射されるX線の線量を相対的に変更させるための線量変更画面62をタッチパネル6に表示させる。また、本実施形態では、タッチパネル6は、パルスレートを変更させるボタンと、パルス線量を変更させるボタンとを含む。すなわち、表示制御部74は、タッチパネル6に、パルスレートを変更させるボタンと、パルス線量を変更させるボタンとを表示させる。なお、X線撮影が行われている期間において、表示制御部74は、線量変更画面62をタッチパネル6に表示させ続ける。
【0042】
表示制御部74は、タッチパネル6の線量変更画面62の領域62aに、標準状態として設定された線量(プリセット)が識別可能な表示をタッチパネル6に表示する。具体的には、表示制御部74は、標準状態として設定された線量(プリセット)の名前を識別可能なように文字情報として領域62aに表示する。なお、表示制御部74を、標準状態におけるパルスレートとパルス線量を識別可能なように文字情報として表示させるようにしてもよい。
【0043】
また、表示制御部74は、タッチパネル6の線量変更画面62の領域62bに、照射されるX線のパルスレートを識別可能に表示する。具体的には、表示制御部74は、領域62bにパルスレートの具体的な値を示す文字情報を表示させる。また、表示制御部74は、パルスレートを変更させるボタンとして、レート変更ボタン63および64を、領域62bに表示させる。タッチパネル6は、医師などの作業者によって領域62bのレート変更ボタン63および64に対する操作が行われた場合に、パルスレートを変更させるための入力操作を受け付ける。また、表示制御部74は、パルスレートを変更する操作が行われた場合には、変更後のパルスレートの値(たとえば、図7の15pps)を領域62bに表示するように構成されている。
【0044】
また、表示制御部74は、パルス線量を変更させるボタンとして、Boostボタン65およびSavingボタン66を、領域62cに表示させる。タッチパネル6は、医師などの作業者によって領域62cのBoostボタン65およびSavingボタン66に対する操作が行われた場合に、パルス線量を変更させるための入力操作を受け付ける。
すなわち、タッチパネル6は、Boostボタン65に対する操作に基づいて、パルス線量を標準状態から相対的に増加させるための操作を受け付ける。また、タッチパネル6は、Savingボタン66に対する操作に基づいて、パルス線量を標準状態から相対的に減少させるための操作を受け付ける。また、表示制御部74は、標準状態において、Boostボタン65およびSavingボタン66のいずれにも操作が行われていない場合、標準状態からパルス線量を変更させていないことを示すように、Boostボタン65およびSavingボタン66の各々の隣に「off」と表示させる。
【0045】
また、図5および図6に示すように、本実施形態では、表示制御部74(制御部7)は、パルスレートおよびパルス線量の各々が標準状態から変更されているか否かを視覚的に識別可能な表示をタッチパネル6に表示させる。すなわち、本実施形態では、タッチパネル6は、標準状態と高線量状態と低線量状態とを識別可能に表示する。具体的には、表示制御部74は、標準状態と高線量状態と低線量状態とを色分けしてタッチパネル6に表示させるように構成されている。
【0046】
図5に示すように、表示制御部74は、高線量状態における線量のX線が照射されている場合には、タッチパネル6の表示(線量変更画面62)の背景色を赤色に変更する。また、図6に示すように、表示制御部74は、低線量状態における線量のX線が照射されている場合には、タッチパネル6の表示(線量変更画面62)の背景色を緑色に変更する。なお、表示制御部74は、パルスレートおよびパルス線量の少なくとも一方を増加させるように線量が変更された場合に、標準状態から高線量状態に変更されたとして、線量変更画面62の背景色を赤色に変更する。また、表示制御部74は、パルスレートおよびパルス線量の少なくとも一方を減少させるように線量が変更された場合に、標準状態から低線量状態に変更されたとして、線量変更画面62の背景色を緑色に変更する。なお、図5および図6では、ハッチングによって色分けを表している。
【0047】
また、表示制御部74は、Boostボタン65に対する操作が行われることによって、標準状態から相対的にパルス線量を増加させて照射を行う場合に、Boostボタン65の隣の表示を「off」から「on」に変更する。また、表示制御部74は、Savingボタン66に対する操作が行われることによって、標準状態から相対的にパルス線量を減少させて照射を行う場合に、Savingボタン66の隣の表示を「off」から「on」に変更する。このように、表示制御部74は、パルス線量が標準状態から変更されているか否かを文字情報によって識別可能に表示する。
【0048】
また、線量変更部73は、タッチパネル6に対する入力操作に基づいて、高線量状態または低線量状態における線量のX線の照射を行っている状態から、標準状態設定部72によって設定された標準状態に照射されるX線の線量を変更させる(元に戻す)ように構成されている。たとえば、Boostボタン65を操作して標準状態から相対的にパルス線量を増加させて照射を行っている状態において、再度Boostボタン65に対する操作が行われることによって、パルス線量が標準状態に変更される。同様に、Savingボタン66を操作して標準状態から相対的にパルス線量を減少させて照射を行っている状態において、再度Savingボタン66に対する操作が行われることによって、パルス線量が標準状態に変更される。
【0049】
また、線量変更部73は、低線量状態における線量のX線の照射を行っている状態から、照射されるX線の線量を高線量状態に変更させることが可能に構成されている。また、線量変更部73は、高線量状態における線量のX線の照射を行っている状態から、照射されるX線の線量を低線量状態に変更させることが可能に構成されている。たとえば、Boostボタン65を操作して標準状態から相対的にパルス線量を増加させて照射を行っている状態において、Savingボタン66に対する操作が行われた場合には、標準状態より相対的に小さいパルス線量(低線量状態)に変更される。
【0050】
(高線量状態が一定期間継続した場合の制御)
タイマー部75(制御部7)は、時間を計測することによって時間情報を取得する。具体的には、タイマー部75は、線量変更部73によって標準状態から高線量状態に照射されるX線の線量が変更された場合に、高線量状態に変更されたタイミングからの時間を計測する。そして、タイマー部75は、高線量状態に変更されたタイミングから、予め設定された一定期間(たとえば、1分間)の時間が経過した場合に、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを示す時間情報を取得する。
【0051】
そして、図7に示すように、本実施形態では、表示制御部74(制御部7)は、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを報知する表示をタッチパネル6に表示させるように構成されている。たとえば、表示制御部74は、タイマー部75からの時間情報に基づいて、タッチパネル6の領域62dに、高線量状態が一定期間以上続いていることを示す表示を表示する。表示制御部74は、文字情報による表示と、記号(マーク)による表示とを合わせてタッチパネル6の領域62dに表示させることによって、高線量状態が一定期間以上続いた状態であることを報知する表示を行う。
【0052】
また、線量変更部73(制御部7)は、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、照射されるX線の線量を標準状態に変更するように構成されている。すなわち、線量変更部73は、タイマー部75からの時間情報に基づいて、高線量状態から標準状態へと線量を変更する。
【0053】
すなわち、本実施形態によるX線撮影装置100は、高線量状態におけるX線の照射が一定期間(1分間)以上続いた場合に、高線量状態が続いたことを報知する表示を行いながら、照射されるX線の線量を自動的に高線量状態から標準状態に変更させるように構成されている。
【0054】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
本実施形態のX線撮影装置100では、上記のように、タッチパネル6(操作部)に対する操作に基づいて、標準状態を基準として、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ高い高線量状態と、照射されるX線の線量が標準状態から所定の線量分だけ低い低線量状態との少なくとも一方に、照射されるX線の線量を標準状態から相対的に変更する。これにより、医師などの作業者は、複数の線量のうちから適切な線量の具体的な値を選択し直すことなく、現在照射されているX線の線量から相対的に線量を変更させることができる。そのため、医師などの作業者は、タッチパネル6を操作することによって適切なタイミングにおいて照射されるX線の線量を容易に変更することができる。その結果、医師などの作業者は、同一の領域(部位)に対して予め設定された線量のX線によって撮影を行っている場合にも、被検体101に照射されるX線の線量を容易に変更することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0057】
すなわち、本実施形態では、上記のように、X線照射部2は、動画像としての被検体101の体内の画像を撮影するために連続的にX線を照射するように構成されており、線量変更部73(制御部7)は、単位時間あたりに照射されるX線の回数であるパルスレートと、1回の照射によって照射されるX線の線量であるパルス線量との少なくとも一方を、設定された標準状態から所定の線量分だけ相対的に変更することによって、照射されるX線の線量を標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成されている。このように構成すれば、パルスレートを標準状態から所定の線量分だけ変更することによって、撮影された動画像の1秒間あたりの表示枚数を容易に変更することができるとともに、パルス線量を標準状態から所定の線量分だけ変更することによって、撮影される動画像の視認性を容易に変更させることができる。そのため、手術の進行度に応じて、被ばく線量は増加するものの表示させる画像の滑らかさおよび視認性を向上させる状態と、画像の滑らかさおよび視認性は低下するものの被ばく線量を低減させる状態とを、容易に切り替えることができる。その結果、手術の進行度に応じて、複雑な操作(手技)が求められる場合にのみ動画像の表示を容易に向上させることができるので、不必要に線量を高くした状態で照射することを容易に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、プリセット設定部71(制御部7)は、被検体101を撮影しながら手術する前に、照射されるX線の線量を予め設定するように構成されており、線量変更部73(制御部7)は、被検体101を撮影しながら手術している際に、タッチパネル6(操作部)に対する入力操作に基づいて、照射されるX線の線量を標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成されている。このように構成すれば、手術を行っている最中にも、タッチパネル6を操作することにより、照射されるX線の線量を容易に変更することができる。そのため、手術の進行を妨げることなく、撮影される画像の視認性を向上させることと被ばく線量の増加を抑制することとを容易に切り替えることができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、プリセット設定部71(制御部7)は、複数の線量のうちから選択された線量を、照射されるX線の線量として設定するように構成されており、線量変更部73(制御部7)は、複数の線量の段階よりも少ない数の段階に、照射されるX線の線量を標準状態から相対的に変更するように構成されている。このように構成すれば、プリセットを設定するために複数の線量から一の線量を選択する場合に比べて、照射されるX線の線量を線量変更部73によって変更させる場合のほうが、少ない選択肢のうちから線量を設定することができる。そのため、線量変更部73によって照射されるX線の線量を変更させる場合に、選択肢が多すぎるために、医師などの作業者が変更させる選択肢を決定することの手間が増大することを抑制することができる。その結果、選択肢を少なくすることによって、医師などの作業者が照射されるX線の線量を容易に選択することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、線量変更部73(制御部7)は、パルス線量が標準状態より大きい1つの段階に設定された高線量状態と、パルス線量が標準状態より小さい1つの段階に設定された低線量状態とに、パルス線量を標準状態から相対的に変更するように構成されている。このように構成すれば、医師などの作業者は、標準状態から大きい1つの段階と、標準状態から小さい1つの段階との2つの選択肢のうちから変更させる線量を選択することができる。そのため、医師などの作業者は、照射されるX線の線量をより容易に選択することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、標準状態と高線量状態と低線量状態とを識別可能に表示するタッチパネル6(表示部)をさらに備え、制御部7は、パルスレートおよびパルス線量の各々が標準状態から変更されているか否かを視覚的に識別可能な表示をタッチパネル6に表示させる表示制御部74を含む。このように構成すれば、タッチパネル6を視認することによって、容易に標準状態と高線量状態と低線量状態とを視覚的に識別することができる。そのため、照射されているX線の線量の大小を容易に認識することができるので、被検体101に必要以上に多くの線量が照射されることを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、表示制御部74(制御部7)は、標準状態と高線量状態と低線量状態とを色分けしてタッチパネル6(表示部)に表示させるように構成されている。このように構成すれば、色分けされたタッチパネル6の表示を視認することによって、標準状態と、高線量状態と、低線量状態とをより容易に視覚的に識別することができる。そのため、照射されているX線の線量の大小をより容易に認識することができるので、被検体101に必要以上に多くの線量が照射されることをより抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、被検体101が横たわる天板1をさらに備え、タッチパネル6(操作部)は、天板1に設置されており、パルスレートを変更させるためのボタンと、パルス線量を変更させるボタンとを含む。このように構成すれば、被検体101が横たわる天板1に設置されているタッチパネル6を操作することによって、パルスレートおよびパルス線量を容易に変更することができる。そのため、天板1に横たわる被検体101に手術を行う場合に、タッチパネル6を操作するために被検体101から離間した位置に移動する必要がないため、手術を行いながらパルスレートおよびパルス線量を容易に変更することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、被検体101に行われる手術に対応するように設定された複数の線量を記憶する記憶部8をさらに備え、標準状態設定部72(制御部7)は、記憶部8に記憶された複数の線量のうちから撮影前にプリセット設定部71(制御部7)により予め設定された線量を、標準状態として設定するように構成されており、表示制御部74は、プリセット設定部71により予め設定された線量が識別可能な表示をタッチパネル6(表示部)に表示させるように構成されている。このように構成すれば、タッチパネル6の表示を視認することによって、予め記憶されている複数のプリセット(X線の線量)の中から選択されたプリセットを容易に識別することができる。そのため、選択されたプリセットを識別することによって標準状態として設定されている線量の状態を識別することができるので、被検体101に照射されているX線の線量を容易に認識することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、表示制御部74(制御部7)は、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを報知する表示をタッチパネル6(表示部)に表示させるように構成されている。このように構成すれば、高線量状態における比較的高い線量のX線の照射が継続されていることを容易に認識することができるので、被検体101に照射されるX線の線量の合計が大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、線量変更部73(制御部7)は、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、照射されるX線の線量を標準状態に変更するように構成されている。このように構成すれば、高線量状態から自動的に標準状態に変更することができるので、高線量状態における比較的高い線量のX線が被検体101に長時間に亘って照射され続けることを容易に抑制することができる。そのため、被検体101に照射されるX線の線量の合計が大きくなりすぎることを効果的に抑制することができる。
【0067】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、線量変更部73(制御部7)は、単位時間あたりに照射されるX線の回数であるパルスレートと、1回の照射によって照射されるX線の線量であるパルス線量との両方を、設定された標準状態から所定の線量分だけ相対的に変更することによって、照射されるX線の線量を標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、線量変更部によってパルスレートのみを変更可能に構成して、パルス線量は変更しないように構成してもよい。また、線量変更部によって、パルス線量のみを変更可能に構成して、パルスレートは変更しないように構成してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、プリセット設定部71(制御部7)は、被検体101を撮影しながら手術する前に、照射されるX線の線量を予め設定するように構成されており、線量変更部73(制御部7)は、被検体101を撮影しながら手術している際に、タッチパネル6(操作部)に対する入力操作に基づいて、照射されるX線の線量を標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、手術前(撮影前)に、照射されるX線の線量を標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成されていてもよい。また、手術中(撮影中)にプリセット設定部によって照射されるX線の線量を設定する(プリセットを変更する)ように構成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、プリセット設定部71(制御部7)は、複数の線量のうちから選択された線量を、照射されるX線の線量として設定するように構成されており、線量変更部73(制御部7)は、複数の線量の段階よりも少ない数の段階に、照射されるX線の線量を標準状態から相対的に変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、線量変更部が設定可能な線量の段階が、選択可能なプリセットの数と同一でもよい。すなわち、プリセットとして選択可能な線量(パルスレートおよびパルス線量)の全てを、線量変更部が設定可能に構成されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、線量変更部73(制御部7)は、パルス線量が標準状態より大きい1つの段階に設定された高線量状態と、パルス線量が標準状態より小さい1つの段階に設定された低線量状態とに、パルス線量を標準状態から相対的に変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、高線量状態は、パルス線量が標準状態より大きい2つ以上の段階に設定されていてもよい。また、低線量状態は、パルス線量が標準状態より小さい2つ以上の段階に設定されていてもよい。すなわち、3つより大きい数の段階のパルス線量を選択可能に構成されていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、標準状態と高線量状態と低線量状態とを識別可能に表示するタッチパネル6(表示部)をさらに備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、撮影されたX線画像が表示される画像表示部に標準状態と高線量状態と低線量状態とを識別可能に表示するようにしてもよい。その場合、キーボードまたはマウスなどのポインティングデバイスによって、標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するための操作を受け付けるように構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、操作部と表示部とを含むタッチパネル6を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、操作部と表示部とを別個に構成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、表示制御部74(制御部7)は、標準状態と高線量状態と低線量状態とを色分けしてタッチパネル6(表示部)に表示させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、標準状態と高線量状態と低線量状態とを同一の色によって表示するようにしてもよい。また、高線量状態と低線量状態とを示す文字情報を表示することによって、高線量状態と低線量状態とを識別可能に表示するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、タッチパネル6(操作部)は、天板1に設置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、タッチパネル6を天板と離間した位置に設置してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、被検体101に行われる手術に対応するように設定された複数の線量(プリセット)を記憶する記憶部8を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、記憶部を備えず、外部の記憶装置に記憶された複数のプリセット(線量)のうちから照射されるX線の線量を選択することによって、撮影前に予め選択されたプリセットを標準状態として設定するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、表示制御部74(制御部7)は、プリセット設定部71により予め設定された線量(プリセット)が識別可能な表示をタッチパネル6(表示部)に表示させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、選択されたプリセットを表示させないようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、表示制御部74(制御部7)は、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを報知する表示をタッチパネル6(表示部)に表示させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スピーカなどの音声報知部を備えるように構成するとともに、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを音声によって報知するように構成してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、線量変更部73(制御部7)は、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、照射されるX線の線量を標準状態に変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、被検体に照射されるX線の線量の合計値を記憶するとともに、手術が完了する(撮影が終了する)までに照射される線量の合計値が所定の値(たとえば、2Gy:グレイ)より大きくなると判定された場合に、照射されるX線の線量を標準状態に変更するように構成されていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを報知するとともに、照射されるX線の線量を標準状態に変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、標準状態に自動的に変更しないようにしてもよい。また、高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、低線量状態に線量を変更するように構成されていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、線量変更部73(制御部7)は、標準状態から高線量状態または低線量状態に照射されるX線の線量を変更するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、線量変更部を、標準状態から低線量状態に変更させず高線量状態のみに照射されるX線の線量を変更するように構成してもよい。また、線量変更部を、標準状態から高線量状態に変更させず低線量状態のみに照射されるX線の線量を変更するように構成してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、制御部7は、FPGAを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータを含んでいてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、1つのハードウェアとしての制御部7(FPGA)が、ソフトウェアとしての機能ブロックとして、プリセット設定部71と、標準状態設定部72と、線量変更部73と、表示制御部74と、タイマー部75とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、2つ以上のハードウェアとして、プリセット設定部71と、標準状態設定部72と、線量変更部73と、表示制御部74と、タイマー部75とが構成されていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、冠動脈インターベンションにおいて、標準状態から高線量状態または低線量状態に相対的に変更させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、心臓の冠動脈以外の、頭部または下肢などの血管にステントを留置する術式において標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成してもよい。また、血管の疾患に対する術式(手術)ではなく、消化器などの内臓のX線透視(X線テレビ撮影)を行う場合に標準状態から高線量状態または低線量状態に変更するように構成してもよい。
【0085】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0086】
(項目1)
X線管を含むX線照射部から被検体にX線を照射することによって、前記被検体の体内の画像を撮影する放射線撮影装置であって、
前記X線照射部によるX線の照射を制御する制御部と、
照射されるX線の線量を変更させる操作を受け付ける操作部と、を備え、
前記制御部は、
照射されるX線の線量を予め設定するプリセット設定部と、
前記プリセット設定部によって予め設定された線量を、標準状態として設定する標準状態設定部と、
前記操作部に対する操作に基づいて、前記標準状態を基準として、照射されるX線の線量が前記標準状態から所定の線量分だけ高い高線量状態と、照射されるX線の線量が前記標準状態から前記所定の線量分だけ低い低線量状態との少なくとも一方に、照射されるX線の線量を前記標準状態から相対的に変更する線量変更部と、を含む、放射線撮影装置。
【0087】
(項目2)
前記X線照射部は、動画像としての前記被検体の体内の画像を撮影するために連続的にX線を照射するように構成されており、
前記線量変更部は、単位時間あたりに照射されるX線の回数であるパルスレートと、1回の照射によって照射されるX線の線量であるパルス線量との少なくとも一方を、設定された前記標準状態から前記所定の線量分だけ相対的に変更することによって、照射されるX線の線量を前記標準状態から前記高線量状態または前記低線量状態に変更するように構成されている、項目1に記載の放射線撮影装置。
【0088】
(項目3)
前記プリセット設定部は、前記被検体を撮影しながら手術する前に、照射されるX線の線量を予め設定するように構成されており、
前記線量変更部は、前記被検体を撮影しながら手術している際に、前記操作部に対する入力操作に基づいて、照射されるX線の線量を前記標準状態から前記高線量状態または前記低線量状態に変更するように構成されている、項目2に記載の放射線撮影装置。
【0089】
(項目4)
前記プリセット設定部は、複数の線量のうちから選択された線量を、照射されるX線の線量として設定するように構成されており、
前記線量変更部は、前記複数の線量の段階よりも少ない数の段階に、照射されるX線の線量を前記標準状態から相対的に変更するように構成されている、項目2または3に記載の放射線撮影装置。
【0090】
(項目5)
前記線量変更部は、前記パルス線量が前記標準状態より大きい1つの段階に設定された前記高線量状態と、前記パルス線量が前記標準状態より小さい1つの段階に設定された前記低線量状態とに、前記パルス線量を前記標準状態から相対的に変更するように構成されている、項目4に記載の放射線撮影装置。
【0091】
(項目6)
前記標準状態と前記高線量状態と前記低線量状態とを識別可能に表示する表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記パルスレートおよび前記パルス線量の各々が前記標準状態から変更されているか否かを視覚的に識別可能な表示を前記表示部に表示させる表示制御部を含む、項目2~5のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【0092】
(項目7)
前記表示制御部は、前記標準状態と前記高線量状態と前記低線量状態とを色分けして前記表示部に表示させるように構成されている、項目6に記載の放射線撮影装置。
【0093】
(項目8)
前記被検体が横たわる天板をさらに備え、
前記操作部は、前記天板に設置されており、前記パルスレートを変更させるためのボタンと、前記パルス線量を変更させるボタンとを含む、項目6または7に記載の放射線撮影装置。
【0094】
(項目9)
前記被検体に行われる手術に対応するように設定された複数の線量を記憶する記憶部をさらに備え、
前記標準状態設定部は、前記記憶部に記憶された複数の線量のうちから撮影前に前記プリセット設定部により予め設定された線量を、前記標準状態として設定するように構成されており、
前記表示制御部は、前記プリセット設定部により予め設定された線量が識別可能な表示を前記表示部に表示させるように構成されている、項目6~8のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【0095】
(項目10)
前記表示制御部は、前記高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、前記高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いたことを報知する表示を前記表示部に表示させるように構成されている、項目6~9のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【0096】
(項目11)
前記線量変更部は、前記高線量状態におけるX線の照射が一定期間以上続いた場合に、照射されるX線の線量を前記標準状態に変更するように構成されている、項目1~10のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【符号の説明】
【0097】
1 天板
2 X線照射部
6 タッチパネル(操作部、表示部)
7 制御部
8 記憶部
21 X線管
71 プリセット設定部
72 標準状態設定部
73 線量変更部
74 表示制御部
100 X線撮影装置(放射線撮影装置)
101 被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7