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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20241008BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20241008BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B66B5/02 R
B66B1/14 F
B66B13/14 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020178993
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022070000
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】山岸 功治
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-156017(JP,A)
【文献】特開2005-082293(JP,A)
【文献】国際公開第2016/046916(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/171493(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/171494(WO,A1)
【文献】特開2019-034798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0023530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 1/00 - 1/52
B66B 13/00 - 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の複数の階床の少なくともいずれかにおいて第1乗場に通じる第1出入口および第2乗場に通じる第2出入口が設けられる昇降路を走行し、前記第1乗場側に開く第1かごドアおよび前記第2乗場側に開く第2かごドアを有するかごと、
前記建物において災害が発生するときに救出階にいる避難者を退避階に誘導する避難運転において、前記第1乗場側または前記第2乗場側のいずれか一方側を避難側とし、前記第1かごドアおよび前記第2かごドアのうち前記避難側に開く方を前記救出階において開き、前記かごを前記救出階および前記退避階の間で走行させる避難運転部と、
前記第1乗場に設けられ、前記避難運転部に前記第1乗場側を前記避難側として前記避難運転を開始させる第1避難スイッチと、
予め設定された切替操作が前記避難運転の間に行われるときに、前記避難運転部に前記避難側を切り替えさせる切替部と、
を備えるエレベーターシステム。
【請求項2】
前記切替部は、前記救出階における前記第1避難スイッチを含む1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を前記切替操作とする
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記切替部は、前記救出階において前記第1乗場に設けられた第1乗場操作盤を含む1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を前記切替操作とする
請求項1または請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前記切替部は、前記救出階において前記第2乗場に設けられた第2乗場操作盤を含む1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を前記切替操作とする
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
前記切替部は、前記かごに設けられたかご操作盤を含む1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を前記切替操作とする
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記第1乗場に設けられ、前記第1乗場側を前記避難側として前記避難運転が行われている間に、前記救出階において前記第2乗場に設けられた機器が操作されるときに、前記第2乗場側に避難者がいることを前記救出階の前記第1乗場側に通知する第1通知部
を備える
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
前記第2乗場に設けられ、前記第1乗場側を前記避難側として前記避難運転が行われている間に、前記第1乗場側が前記避難側であることを前記救出階の前記第2乗場側に通知する第2通知部
を備える
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項8】
前記第2乗場に設けられ、前記避難運転部に前記第2乗場側を前記避難側として前記避難運転を開始させる第2避難スイッチ
を備える
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項9】
前記切替部は、前記救出階における前記第2避難スイッチを含む1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を前記切替操作とする
請求項8に記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターシステムの例を開示する。エレベーターシステムのかごは、複数の階床にわたる昇降路を走行する。エレベーターシステムの利用者は、昇降路の出入口を通じてかごに乗車する。エレベーターシステムにおいて、建物に火災などの災害が発生するときに、避難運転が行われる。避難運転において、呼びの登録が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-276964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、各々の階床において、昇降路に1つの出入口が設けられるエレベーターシステムにおける避難運転の例を説明する。ここで、少なくともいずれかの階床において、昇降路に2つの出入口が設けられることがある。当該階床からの避難運転において、2つの出入口を通じて避難者が無秩序にかごに乗車する場合に、避難効率が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、昇降路に2つの出入口が設けられる階床からの避難運転においても避難効率が低下しにくいエレベーターシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターシステムは、建物の複数の階床の少なくともいずれかにおいて第1乗場に通じる第1出入口および第2乗場に通じる第2出入口が設けられる昇降路を走行し、前記第1乗場側に開く第1かごドアおよび前記第2乗場側に開く第2かごドアを有するかごと、前記建物において災害が発生するときに救出階にいる避難者を退避階に誘導する避難運転において、前記第1乗場側または前記第2乗場側のいずれか一方側を避難側とし、前記第1かごドアおよび前記第2かごドアのうち前記避難側に開く方を前記救出階において開き、前記かごを前記救出階および前記退避階の間で走行させる避難運転部と、前記第1乗場に設けられ、前記避難運転部に前記第1乗場側を前記避難側として前記避難運転を開始させる第1避難スイッチと、予め設定された切替操作が前記避難運転の間に行われるときに、前記避難運転部に前記避難側を切り替えさせる切替部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベーターシステムであれば、昇降路に2つの出入口が設けられる階床からの避難運転においても避難効率が低下しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るエレベーターシステムの構成図である。
図2】実施の形態1に係るエレベーターシステムの動作の例を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係るエレベーターシステムの動作の例を示すフローチャートである。
図4】実施の形態1に係るエレベーターシステムの主要部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0011】
エレベーターシステム1は、複数の階床を有する建物に適用される。
【0012】
建物において、エレベーターシステム1の昇降路2が設けられる。昇降路2は、複数の階床にわたる空間である。少なくともいずれかの階床において、第1出入口3aおよび第2出入口3bが昇降路2に設けられる。この例において、全ての階床に第1出入口3aおよび第2出入口3bが昇降路2に設けられる。各々の階床に設けられる第1出入口3aは、昇降路2から当該階床のいずれかの方向に向けた出入口である。各々の階床に設けられる第2出入口3bは、昇降路2から当該階床のいずれかの方向に向けた第1出入口3aと異なる出入口である。各々の階床において、第1出入口3aは互いに同じ方向に向けられる。各々の階床において、第2出入口3bは互いに同じ方向に向けられる。第2出入口3bは、例えば第1出入口3aの反対側の出入口である。あるいは、第2出入口3bは、例えば第1出入口3aが向けられる方向と直交する方向に向けた出入口であってもよい。すなわち、例えば第1出入口3aが北側に向けた出入口である場合に、第2出入口3bは南側に向けた出入口または東側に向けた出入口などである。
【0013】
建物の少なくともいずれかの階床は、昇降路2を基準として第1側および第2側に分けられる。この例において、全ての階床は、昇降路2を基準として第1側および第2側に分けられる。各々の階床の第1側は、当該階床を分けたときの第1出入口3aが向けられる側である。各々の階床の第2側は、当該階床を分けたときの第2出入口3bが向けられる側である。なお、各々の階床の第1側および第2側は、直接の往来が可能であってもよい。各々の階床において、第1側に第1乗場4aが設けられる。第1乗場4aは、第1出入口3aを介して昇降路2に通じる場所である。各々の階床において、第2側に第2乗場4bが設けられる。第2乗場4bは、第2出入口3bを介して昇降路2に通じる場所である。
【0014】
エレベーターシステム1は、かご5を備える。かご5は、昇降路2を鉛直方向に走行することで複数の階床の間で利用者などを輸送する装置である。かご5は、第1かごドア6aおよび第2かごドア6bを備える。第1かごドア6aは、第1乗場4a側に設けられる。第1かごドア6aは、いずれかの階床にかご5が停止しているときに、当該階床の第1乗場4aから利用者が乗降しうるように開閉する機器である。第2かごドア6bは、第2乗場4b側に設けられる。第2かごドア6bは、いずれかの階床にかご5が停止しているときに、当該階床の第2乗場4bから利用者が乗降しうるように開閉する機器である。かご5は、かご操作盤7を備える。かご操作盤7は、かご5の内部において利用者が行うかご呼びの登録の操作などを受け付ける機器である。かご操作盤7は、かご呼びの行先階を指定する階床ボタン、第1かごドア6aおよび第2かごドア6bの一方または両方を戸開させる戸開ボタン、ならびに第1かごドア6aおよび第2かごドア6bの一方または両方を戸閉させる戸閉ボタンなどを含む。
【0015】
エレベーターシステム1は、複数の第1乗場操作盤8aと、複数の第2乗場操作盤8bと、を備える。各々の第1乗場操作盤8aは、いずれかの階床に対応する。各々の第1乗場操作盤8aは、対応する階床において第1乗場4aに設けられる。各々の第2乗場操作盤8bは、いずれかの階床に対応する。各々の第2乗場操作盤8bは、対応する階床において第2乗場4bに設けられる。各々の第1操作盤は、第1乗場4aにおいて利用者が行う乗場呼びの登録の操作などを受け付ける機器である。各々の第2操作盤は、第2乗場4bにおいて利用者が行う乗場呼びの登録の操作などを受け付ける機器である。なお、いずれかの階床において、第1乗場操作盤8aまたは第2乗場操作盤8bの一方が設けられていなくてもよい。
【0016】
エレベーターシステム1は、複数の第1報知装置9aと、複数の第2報知装置9bと、を備える。各々の第1報知装置9aは、いずれかの階床に対応する。各々の第1報知装置9aは、対応する階床において第1乗場4aに設けられる。この例において、最上階の第1乗場4aに設けられる第1報知装置9aが図示され、他の階床の第1乗場4aに設けられる第1報知装置9aの図示は省略されている。各々の第1報知装置9aは、対応する階床の第1乗場4aに音声によってエレベーターシステム1の状態を報知する装置である。各々の第2報知装置9bは、いずれかの階床に対応する。各々の第2報知装置9bは、対応する階床において第2乗場4bに設けられる。この例において、最上階の第2乗場4bに設けられる第2報知装置9bが図示され、他の階床の第2乗場4bに設けられる第2報知装置9bの図示は省略されている。各々の第2報知装置9bは、対応する階床の第2乗場4bに音声によってエレベーターシステム1の状態を報知する装置である。なお、いずれかの階床において、第1報知装置9aおよび第2報知装置9bの一方または両方が設けられていなくてもよい。
【0017】
エレベーターシステム1は、複数の第1表示装置10aと、複数の第2表示装置10bと、を備える。各々の第1表示装置10aは、いずれかの階床に対応する。各々の第1表示装置10aは、対応する階床において第1乗場4aに設けられる。この例において、最上階の第1乗場4aに設けられる第1表示装置10aが図示され、他の階床の第1乗場4aに設けられる第1表示装置10aの図示は省略されている。各々の第1表示装置10aは、対応する階床の第1乗場4aに文字または画像などによってエレベーターシステム1の状態を表示する装置である。各々の第2表示装置10bは、いずれかの階床に対応する。各々の第2表示装置10bは、対応する階床において第2乗場4bに設けられる。この例において、最上階の第2乗場4bに設けられる第2表示装置10bが図示され、他の階床の第2乗場4bに設けられる第2表示装置10bの図示は省略されている。各々の第2表示装置10bは、対応する階床の第2乗場4bに文字または画像などによってエレベーターシステム1の状態を表示する装置である。なお、いずれかの階床において、第1表示装置10aおよび第2表示装置10bの一方または両方が設けられていなくてもよい。
【0018】
エレベーターシステム1は、複数の第1避難スイッチ11aと、複数の第2避難スイッチ11bと、を備える。各々の第1避難スイッチ11aは、いずれかの階床に対応する。各々の第1避難スイッチ11aは、対応する階床において第1乗場4aに設けられる。各々の第2避難スイッチ11bは、いずれかの階床に対応する。各々の第2避難スイッチ11bは、対応する階床において第2乗場4bに設けられる。なお、いずれかの階床において、第1避難スイッチ11aおよび第2避難スイッチ11bの一方または両方が設けられていなくてもよい。
【0019】
第1避難スイッチ11aおよび第2避難スイッチ11bは、建物に火災などの災害が発生するときに避難運転を開始させる装置である。ここで、避難運転は、建物に災害が発生するときに、救出階にいる避難者を退避階に誘導する運転である。退避階は、災害から退避するときの退避先に通じる階床である。退避先は、例えば建物の屋外の場所などである。退避階は、例えば建物において予め設定された階床である。退避階は、例えば玄関階などである。救出階は、複数の階床のうち退避階までの間に災害の発生した階床がある階床である。例えば退避階より上方の中間階において災害が発生している場合に、救出階は災害が発生している中間階より上方の階床である。避難者は、災害が発生しているときに救出階にいたエレベーターの利用者などである。避難運転において、第1乗場4a側または第2乗場4b側のいずれか一方が避難の対象である避難側として設定される。第1乗場4a側が避難側に設定される場合に、救出階の第1乗場4aから避難者がかご5に乗車しうるように第1かごドア6aが開閉する。このとき、第2かごドア6bの開閉は制限される。また、第2乗場4b側が避難側に設定される場合に、救出階の第2乗場4bから避難者がかご5に乗車しうるように第2かごドア6bが開閉する。このとき、第1かごドア6aの開閉は制限される。避難運転において、救出階において避難者を乗せたかご5は、救出階から退避階に向かって走行する。避難運転において、退避階において避難者を降ろしたかご5は、救出階に避難者がいる場合に退避階から救出階に向かって走行する。避難運転において、例えば救出階および退避階の他の階床を行先階とするかご呼びの登録が禁止されてもよい。各々の第1避難スイッチ11aは、対応する階床を救出階とし、第1乗場4a側を避難側とする避難運転を開始させる。各々の第2避難スイッチ11bは、対応する階床を救出階とし、第2乗場4b側を避難側とする避難運転を開始させる。第1スイッチまたは第2スイッチは、建物において災害が発生するときに、例えば避難誘導員によって操作される。避難誘導員は、避難者が混乱せず避難できるように誘導する係員である。
【0020】
エレベーターシステム1は、制御盤12を備える。制御盤12は、かご5の動作を制御する装置である。通常運転時において、制御盤12は、乗場呼びおよびかご呼びなどの呼びに応じてかご5を走行させる。この例において、制御盤12は、火災などの災害が発生するときに管制運転を行う。管制運転において、かご5は、例えば退避階などに退避した後に休止する。制御盤12は、例えば図示されない火災感知器などによって災害の発生が感知されるときに、感知された災害に対応する管制運転を行う。制御盤12は、避難運転部13と、切替部14と、を備える。
【0021】
避難運転部13は、避難運転におけるかご5の動作を制御する部分である。第1乗場4a側が避難側に設定される場合に、避難運転部13は、救出階において第1かごドア6aを開閉させる。このとき、避難運転部13は、避難側ではない第2乗場4b側から避難者が乗車しないように第2かごドア6bの開閉を制限する。また、第2乗場4b側が避難側に設定される場合に、避難運転部13は、救出階において第2かごドア6bを開閉させる。このとき、避難運転部13は、避難側ではない第1乗場4a側から避難者が乗車しないように第1かごドア6aの開閉を制限する。避難運転部13は、救出階および退避階の間でかご5を走行させる。
【0022】
切替部14は、避難運転の間に切替操作が行われるときに、避難運転における避難側の切替を行う部分である。切替操作は、エレベーターシステム1の1つまたは複数の機器について、予め設定された操作である。例えば第1乗場4a側が避難側に設定されている間に切替操作が行われるときに、切替部14は、避難運転部13に避難側を第2乗場4b側に切り替えさせる。また、例えば第2乗場4b側が避難側に設定されている間に切替操作が行われるときに、切替部14は、避難運転部13に避難側を第1乗場4a側に切り替えさせる。この例において、避難側の切替は、切替操作が行われた後即座に行われる。
【0023】
切替操作が行われる1つまたは複数の機器は、例えば避難が行われている救出階に設けられる第1避難スイッチ11a、第1乗場操作盤8a、第2乗場操作盤8b、および第2避難スイッチ11b、ならびにかご操作盤7の少なくともいずれかを含む。切替操作は、例えばこれらの1つまたは複数の機器について予め設定された回数、時間、または順序で行われる操作などである。切替操作は、これらの複数の機器についての操作を組み合わせたものであってもよい。
【0024】
続いて、図2および図3を用いて、エレベーターシステム1の動作の例を説明する。
図2および図3は、実施の形態1に係るエレベーターシステム1の動作の例を示すフローチャートである。
図2および図3において、災害として火災が発生した場合のエレベーターシステム1の動作の例が示される。
【0025】
図2のステップS01において、火災感知器において火災の発生が感知される。このとき、制御盤12は、火災に対応する管制運転を開始する。火災に対応する管制運転として、制御盤12は、ステップS02においてかご5を退避階に退避させる。その後、制御盤12は、退避階においてかご5の第1かごドア6aおよび第2かごドア6bの一方または両方を開放する。このとき、火災の発生が感知されたときにかご5に乗車していた利用者は、退避階の第1乗場4aまたは第2乗場4bから退避先に退避する。その後、制御盤12は、エレベーターシステム1における運行を休止させる。
【0026】
その後、ステップS03において、避難運転部13は、いずれかの階床において第1避難スイッチ11aがONに操作されているかを判定する。第1避難スイッチ11aがONに操作されていない場合に、エレベーターシステム1の動作は、再びステップS03に進む。建物において避難が行われるときに、避難誘導員が配備される。避難誘導員は、いずれかの救出階の第1乗場4a側に避難者がいる場合に、当該救出階の第1避難スイッチ11aをONに操作する。第1避難スイッチ11aがONに操作されている間、エレベーターシステム1の動作はステップS04に進む。
【0027】
ステップS04において、避難が行われている救出階の第2報知装置9bは、第1乗場4a側が避難側であること、すなわち、第1乗場4a側を対象として避難運転が行われていることを第2乗場4b側に報知する。ここで、避難が行われている救出階は、例えば避難誘導員によって第1避難スイッチ11aがONに操作された階床などである。同様に、当該救出階の第2表示装置10bは、第1乗場4a側が避難側であることを第2乗場4b側に表示する。第2報知装置9bおよび第2表示装置10bの一方または両方は、第2通知部の例である。第2報知装置9bまたは第2表示装置10bの通知などによって、第2乗場4b側にいる避難者は、避難運転の状況を把握する。また、当該救出階の第2乗場4bに設けられた機器が第2乗場4b側にいる避難者によって操作されるときに、当該救出階の第1報知装置9aは、第2乗場4b側に避難者がいることを第1乗場4a側に報知する。同様に、当該救出階の第1報知装置9aは、第2乗場4b側に避難者がいることを第1乗場4a側に表示する。第1報知装置9aおよび第1表示装置10aの一方または両方は、第1通知部の例である。避難者によって操作される第2乗場4bの機器は、例えば第2乗場操作盤8bまたは第2避難スイッチ11bなどである。第1報知装置9aまたは第1表示装置10aの通知などによって、第1乗場4a側で避難誘導をしている避難誘導員は、第2乗場4b側に避難者がいることを把握する。
【0028】
その後、ステップS05において、避難運転部13は、避難が行われている救出階にかご5を走行させる。避難運転部13は、当該救出階にかご5が停止した後に、避難側である第1乗場4a側の第1かごドア6aを戸開させる。このとき、避難運転部13は、避難側でない第2乗場4b側の第2ドアを戸開させない。
【0029】
その後、ステップS06において、避難運転部13は、避難が行われている救出階の第1乗場4a側の避難が完了したかを判定する。避難運転部13は、例えば避難誘導員によって第1避難スイッチ11aの解除および切替操作のいずれも行われていないときに、第1乗場4a側の避難が完了していないと判定する。避難運転部13は、例えば避難誘導員によって第1避難スイッチ11aの解除または切替操作の少なくともいずれかが行われたときに、第1乗場4a側の避難が完了したと判定する。第1乗場4a側の避難が完了していないと判定するときに、エレベーターシステム1の動作は、ステップS07に進む。一方、第1乗場4a側の避難が完了したと判定するときに、エレベーターシステム1の動作は、ステップS10に進む。
【0030】
ステップS07において、避難運転部13は、避難誘導員によって出発操作が行われるまで、救出階において第1かごドア6aを戸開したままかご5を待機させる。出発操作は、例えば第1乗場操作盤8aのボタンを予め設定された時間以上継続して押す操作などである。かご5が救出階に待機している間に、避難誘導員は、第1乗場4a側の避難者をかご5の内部に誘導する。避難誘導員は、かご5に避難者が十分乗車したことを確認すると、出発操作を行う。その後、ステップS08において、避難運転部13は、第1かごドア6aを戸閉してかご5を退避階に走行させる。その後、ステップS09において、避難運転部13は、退避階においてかご5の第1かごドア6aおよび第2かごドア6bの一方または両方を戸開する。このとき、かご5に乗車していた避難者は、退避階の第1乗場4aまたは第2乗場4bから退避先に退避する。その後、エレベーターシステム1の動作は、ステップS03に進む。
【0031】
ステップS10において、避難運転部13は、避難が行われている救出階の第2乗場4b側に避難者がいるかを判定する。避難運転部13は、例えば第2乗場4bに設けられた機器が操作されるときに、第2乗場4b側に避難者がいると判定する。避難運転部13は、例えば避難誘導員によって第1避難スイッチ11aの解除が行われていないときに、第2乗場4b側に避難者がいると判定してもよい。あるいは、避難運転部13は、例えば避難誘導員によって切替操作が行われるときに、第2乗場4b側に避難者がいると判定してもよい。避難誘導員は、例えば第1報知装置9aまたは第1表示装置10aの通知などによって、第2乗場4b側に避難者がいることを把握する。避難誘導員は、第2乗場4b側に避難者がいるときに、切替操作を行う。避難誘導員は、第2乗場4b側に避難者がいないときに、第1乗場4a側の避難は完了しているので、救出階における避難が完了したと判断する。このとき、避難誘導員は、第1避難スイッチ11aの解除を行って、避難者とともにかご5に乗車する。第2乗場4b側に避難者がいると判定される場合に、エレベーターシステム1の動作は、ステップS11に進む。一方、第2乗場4b側に避難者がいないと判定される場合に、エレベーターシステム1の動作は、図3のステップS21に進む。
【0032】
ステップS11において、切替部14は、切替操作が行われたかを判定する。判定結果がNoの場合に、エレベーターシステム1の動作は、再びステップS11に進む。一方、判定結果がYesの場合に、エレベーターシステム1の動作は、ステップS12に進む。
【0033】
ステップS12において、避難運転部13は、避難側を第2乗場4b側に切り替える。この間に、避難誘導員は、第1乗場4aからかご5に乗車する。その後、ステップS13において、避難運転部13は、第1かごドア6aを戸閉させる。その後、避難運転部13は、第2かごドア6bを戸開させる。その後、避難誘導員は、かご5から第2乗場4bに降車する。すなわち、避難誘導員は、かご5の内部を通って第1乗場4a側から第2乗場4b側に移動する。なお、避難誘導員は、かご5の内部を通らずに第1乗場4a側から第2乗場4b側に移動してもよい。
【0034】
その後、図3のステップS14において、避難運転部13は、避難が行われている救出階の第2乗場4b側の避難が完了したかを判定する。避難運転部13は、例えば避難誘導員によって第1避難スイッチ11aの解除および切替操作のいずれも行われていないときに、第2乗場4b側の避難が完了していないと判定する。避難運転部13は、例えば避難誘導員によって第1避難スイッチ11aの解除または切替操作の少なくともいずれかが行われたときに、第2乗場4b側の避難が完了したと判定する。第2乗場4b側の避難が完了していないと判定するときに、エレベーターシステム1の動作は、ステップS15に進む。一方、第1乗場4a側の避難が完了したと判定するときに、エレベーターシステム1の動作は、ステップS18に進む。
【0035】
ステップS15において、避難運転部13は、避難誘導員によって出発操作が行われるまで、救出階において第2かごドア6bを戸開したままかご5を待機させる。かご5が救出階に待機している間に、避難誘導員は、第2乗場4b側の避難者をかご5の内部に誘導する。避難誘導員は、かご5に避難者が十分乗車したことを確認すると、出発操作を行う。その後、ステップS16において、避難運転部13は、第2かごドア6bを戸閉してかご5を退避階に走行させる。その後、ステップS17において、避難運転部13は、退避階においてかご5の第1かごドア6aおよび第2かごドア6bの一方または両方を戸開する。このとき、かご5に乗車していた避難者は、退避階の第1乗場4aまたは第2乗場4bから退避先に退避する。その後、エレベーターシステム1の動作は、ステップS14に進む。
【0036】
ステップS18において、切替部14は、切替操作が行われたかを判定する。判定結果がNoの場合に、エレベーターシステム1の動作は、再びステップS18に進む。一方、判定結果がYesの場合に、エレベーターシステム1の動作は、ステップS19に進む。
【0037】
ステップS19において、避難運転部13は、避難側を第1乗場4a側に切り替える。この間に、避難誘導員は、第2乗場4bからかご5に乗車する。その後、ステップS20において、避難運転部13は、第2かごドア6bを戸閉させる。その後、避難運転部13は、第1かごドア6aを戸開させる。その後、避難誘導員は、かご5から第1乗場4aに降車する。すなわち、避難誘導員は、かご5の内部を通って第2乗場4b側から第1乗場4a側に移動する。なお、避難誘導員は、かご5の内部を通らずに第2乗場4b側から第1乗場4a側に移動してもよい。第1乗場4a側および第2乗場4b側の避難は完了しているので、避難誘導員は、救出階における避難が完了したと判断する。このとき、避難誘導員は、第1避難スイッチ11aの解除を行って、第1乗場4aから避難者とともにかご5に乗車する。その後、エレベーターシステム1の動作は、ステップS21に進む。
【0038】
ステップS21において、避難運転部13は、第1かごドア6aを戸閉してかご5を退避階に走行させる。その後、避難運転部13は、退避階においてかご5の第1かごドア6aおよび第2かごドア6bの一方または両方を戸開する。このとき、かご5に乗車していた避難誘導員および避難者は、退避階の第1乗場4aまたは第2乗場4bから退避先に退避する。その後、避難運転部13は、避難運転を解除する。このとき、制御盤12は、退避階においてかご5の第1かごドア6aおよび第2かごドア6bの一方または両方を戸開したままかご5を休止させてもよい。その後、エレベーターシステム1の動作は、終了する。
【0039】
なお、避難誘導員は、第2避難スイッチ11bが設けられる階床を救出階とする場合に、救出階において第2乗場4b側から避難を開始してもよい。このとき、例えば上記の説明において第1側および第2側を入れ替えた動作などによってエレベーターシステム1の避難運転が行われる。
【0040】
以上に説明したように、実施の形態1に係るエレベーターシステム1は、かご5と、避難運転部13と、第1避難スイッチ11aと、切替部14と、を備える。かご5が走行する昇降路2において、少なくともいずれかの階床において第1出入口3aおよび第2出入口3bが設けられる。かご5は、第1乗場4a側に開く第1かごドア6aおよび第2乗場4b側に開く第2かごドア6bを備える。第1乗場4aは、第1出入口3aを介して昇降路2に通じる。第2乗場4bは、第2出入口3bを介して昇降路2に通じる。避難運転部13は、避難運転において第1乗場4a側および第2乗場4b側のいずれか一方を避難側とする。避難運転は、建物において災害が発生するときに救出階にいる避難者を退避階に誘導する運転である。避難運転部13は、避難運転において、第1かごドア6aおよび第2かごドア6bのうち避難側に開く方を救出階で開く。避難運転部13は、避難運転において、かご5を救出階および退避階の間で走行させる。第1避難スイッチ11aは、第1乗場4aに設けられる。第1避難スイッチ11aは、避難運転部13に第1乗場4a側を避難側として避難運転を開始させる。切替部14は、予め設定された切替操作が避難運転の間に行われるときに、避難運転部13に避難側を切り替えさせる。
【0041】
このような構成により、昇降路2に2つの出入口が設けられる階床においても、いずれか一方ずつに対応する乗場の側が避難側として設定する。このため、かご5の2つのかごドアが同時に開かないので、一度かご5に乗車した避難者が反対側から乗車した他の避難者などによってかご5から押し出されることが発生しなくなる。これにより、当該階床を救出階とする避難運転においてもエレベーターシステム1における避難効率が低下しにくくなる。また、避難側は切替操作によって切り替えられる。このため、例えば避難誘導員などの判断によって避難側が秩序立って切り替えられる。このため、エレベーターシステム1における避難効率が低下しにくくなる。また、避難者が第1乗場4a側からかご5に乗車した時点でかご5の輸送容量に余裕がある場合に、切替部14は、退避階にかご5が停止したまま避難側を切り替えられる。かご5を退避階に一度走行させることを必要とせずに第2乗場4b側からの避難者もかご5に乗車できるようになるので、エレベーターシステム1における避難効率がより低下しにくくなる。
【0042】
また、エレベーターシステム1は、第2避難スイッチ11bを備える。第2避難スイッチ11bは、第2乗場4bに設けられる。第2避難スイッチ11bは、避難運転部13に第2乗場4b側を避難側として避難運転を開始させる。
【0043】
このような構成により、第1乗場4a側または第2乗場4b側のいずれから避難運転を開始することもできるようになる。これにより、災害の発生状況に応じた柔軟な避難運転が可能になる。
【0044】
また、切替部14は、救出階における第1避難スイッチ11aを含む、1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を切替操作とする。
また、切替部14は、救出階において第1乗場4aに設けられた第1乗場操作盤8aを含む、1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を切替操作とする。
また、切替部14は、救出階において第2乗場4bに設けられた第2乗場操作盤8bを含む、1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を切替操作とする。
また、切替部14は、かご5に設けられたかご操作盤7を含む、1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を切替操作とする。
また、切替部14は、救出階における第2避難スイッチ11bを含む、1つまたは複数の機器において行われる予め設定された操作を前記切替操作とする。
【0045】
このような構成により、救出階において操作可能な第1乗場操作盤8aなどの機器などによって切替操作が行われるようになる。これにより、救出階において避難誘導を行っている避難誘導員は切替操作を容易に行うことができる。このため、エレベーターシステム1における避難効率がより低下しにくくなる。
【0046】
また、エレベーターシステム1は、第1報知装置9aまたは第1表示装置10aを備える。第1報知装置9aおよび第1表示装置10aは、第1乗場4aに設けられる。第1乗場4a側を避難側として避難運転が行われている間に、救出階において第2乗場4bに設けられた機器が操作されることがある。このときに、第1報知装置9aまたは第1表示装置10aは、第2乗場4b側に避難者がいることを救出階の第1乗場4a側に通知する。
【0047】
このような構成により、救出階の第1乗場4a側において避難誘導を行っている避難誘導員は、第2乗場4b側の避難状況を把握することができる。これにより、避難誘導員による避難誘導がより確実なものとなる。
【0048】
また、エレベーターシステム1は、第2報知装置9bまたは第2表示装置10bを備える。第2報知装置9bおよび第2表示装置10bは、第2乗場4bに設けられる。第2報知装置9bまたは第2表示装置10bは、第1乗場4a側を避難側として避難運転が行われている間に、第1乗場4a側が避難側であることを救出階の第2乗場4b側に通知する。
【0049】
このような構成により、救出階の第2乗場4b側にいる避難者は、第1乗場4a側の避難状況を把握することができる。これにより、第2乗場4b側において待機している避難者は安心感を得ることができる。
【0050】
続いて、図4を用いて、エレベーターシステム1のハードウェア構成の例について説明する。
図4は、実施の形態1に係るエレベーターシステム1の主要部のハードウェア構成図である。
【0051】
エレベーターシステム1の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0052】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、エレベーターシステム1の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、エレベーターシステム1の各機能を実現する。
【0053】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0054】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0055】
エレベーターシステム1の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、エレベーターシステム1の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。エレベーターシステム1の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせでエレベーターシステム1の各機能を実現する。
【符号の説明】
【0056】
1 エレベーターシステム、 2 昇降路、 3a 第1出入口、 3b 第2出入口、 4a 第1乗場、 4b 第2乗場、 5 かご、 6a 第1かごドア、 6b 第2かごドア、 7 かご操作盤、 8a 第1乗場操作盤、 8b 第2乗場操作盤、 9a 第1報知装置、 9b 第2報知装置、 10a 第1表示装置、 10b 第2表示装置、 11a 第1避難スイッチ、 11b 第2避難スイッチ、 12 制御盤、 13 避難運転部、 14 切替部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア
図1
図2
図3
図4