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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/18
B41J2/01 401
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020179934
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070715
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】垣内 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉野 隆晃
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168853(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/002778(JP,A1)
【文献】特開2020-168759(JP,A)
【文献】特開2020-138373(JP,A)
【文献】特開2016-153240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0290349(US,A1)
【文献】特開2008-290292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のプレートにより構成される液体吐出ヘッドであって、
第1ノズル吐出口をそれぞれ含む複数の第1個別チャンネルと、
前記第1個別チャンネルに接続され、液体を前記第1個別チャンネルに供給する第1供給マニホールドと、
前記第1個別チャンネルに接続され、前記第1ノズル吐出口から吐出されなかった液体が流通する第1帰還マニホールドと、
第2ノズル吐出口をそれぞれ含む複数の第2個別チャンネルと、
前記第2個別チャンネルに接続され、液体を前記第2個別チャンネルに供給する第2供給マニホールドと、
前記第2個別チャンネルに接続され、前記第2ノズル吐出口から吐出されなかった液体が流通する第2帰還マニホールドと、
前記複数のプレートにより構成され、前記第1供給マニホールドと前記第2帰還マニホールドとを連通させる連通用バイパス経路と、を備え、
前記連通用バイパス経路は、前記第1供給マニホールドに接続された連通用供給側接続路と、前記第2帰還マニホールドに接続された連通用帰還側接続路と、前記連通用供給側接続路と前記連通用帰還側接続路との間における連通路とを含み、
前記連通用供給側接続路および前記連通用帰還側接続路は、前記プレートにより形成され、開口された形状を成し、且つ、当該開口の面積が前記連通路よりも大きいことで、前記プレートの貼りずれに起因した流路断面積の変化が前記連通路よりも小さく、
前記連通路は、前記連通用供給側接続路が形成された前記プレートおよび前記連通用帰還側接続路が形成された前記プレートとは異なる前記プレートにより形成され、開口された形状を成し、且つ、当該開口の面積が前記連通用供給側接続路および前記連通用帰還側接続路よりも小さいことで、前記プレートの貼りずれに起因した流路断面積の変化が前記連通用供給側接続路および前記連通用帰還側接続路よりも大きく、
前記連通用供給側接続路および前記連通用帰還側接続路のうち少なくとも一方の流路抵抗は前記連通路の流路抵抗よりも大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1供給マニホールドに液体を流入させる第1入口ポートと、
前記第2供給マニホールドに液体を流入させる第2入口ポートと、
前記第1帰還マニホールドから液体が流出する第1出口ポートと、
前記第2帰還マニホールドから液体が流出する第2出口ポートと、
前記第2供給マニホールドと前記第1帰還マニホールドとを連通させる接続用バイパス経路と、をさらに備え、
前記第1供給マニホールド、前記第2供給マニホールド、前記第1帰還マニホールド、および前記第2帰還マニホールドは何れも同じ所定方向に延在し、
前記第1入口ポート、前記第2入口ポート、前記第1出口ポート、および前記第2出口ポートは前記所定方向の一端側に配置され、
前記接続用バイパス経路は、前記連通用バイパス経路よりも前記所定方向の一端側に近い側に配置され、かつ、前記連通用バイパス経路の流路抵抗よりも高い流路抵抗を有する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記接続用バイパス経路は、前記第2供給マニホールドに接続された接続用供給側接続路と、前記第1帰還マニホールドに接続された接続用帰還側接続路と、前記接続用供給側接続路と前記接続用帰還側接続路との間における連絡路とを含み、
前記連通用供給側接続路および前記連通用帰還側接続路のうち少なくとも一方の流路断面積は、前記接続用供給側接続路の流路断面積および前記接続用帰還側接続路の流路断面積よりも大きい、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記連通用バイパス経路の前記連通路および前記接続用バイパス経路の前記連絡路は円筒状に形成されている、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記接続用バイパス経路の前記連絡路の孔径は前記連通用バイパス経路の前記連通路の孔径よりも小さい、請求項3又は4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記接続用供給側接続路および前記接続用帰還側接続路のうち少なくとも一方の外側エッジの曲率半径は、前記連通用供給側接続路の外側エッジの曲率半径および前記連通用帰還側接続路の外側エッジの曲率半径よりも大きい、請求項3乃至5の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記連通用供給側接続路および前記連通用帰還側接続路のうち少なくとも一方の外側エッジの曲率半径は、前記接続用供給側接続路の外側エッジの曲率半径および前記接続用帰還側接続路の外側エッジの曲率半径よりも小さい、請求項3乃至6の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記連通用供給側接続路の外側エッジの曲率半径は前記連通用帰還側接続路の外側エッジの曲率半径よりも大きく、
前記接続用供給側接続路の外側エッジの曲率半径は前記接続用帰還側接続路の外側エッジの曲率半径よりも大きい、請求項3乃至7の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1供給マニホールドは前記第1帰還マニホールドの上方に配置され、
前記第2供給マニホールドは前記第2帰還マニホールドの上方に配置され、
前記連通用供給側接続路のコンプライアンスは、前記連通用帰還側接続路のコンプライアンスよりも大きく、
前記接続用供給側接続路のコンプライアンスは、前記接続用帰還側接続路のコンプライアンスよりも大きい、請求項3乃至8の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
積層された複数のプレートにより構成される液体吐出ヘッドであって、
液体が外部から供給される供給マニホールドと、
前記液体が外部に排出される帰還マニホールドと、
上流端が前記供給マニホールドに接続され、下流端が前記帰還マニホールドに接続され、且つ、列をなしてノズル面に配置された複数のノズルに対して個別に連通した複数の個別流路と、
前記複数のプレートにより構成され、前記供給マニホールドと前記帰還マニホールドとを接続するバイパス経路と、を備え、
前記バイパス経路は、前記供給マニホールドに接続された供給側接続路と、前記帰還マニホールドに接続された帰還側接続路と、前記供給側接続路と前記帰還側接続路との間における連通路とを含み、
前記供給側接続路および前記帰還側接続路は、前記プレートにより形成され、開口された形状を成し、且つ、当該開口の面積が前記連通路よりも大きいことで、前記プレートの貼りずれに起因した流路断面積の変化が前記連通路よりも小さく、
前記連通路は、前記供給側接続路が形成された前記プレートおよび前記帰還側接続路が形成された前記プレートとは異なる前記プレートにより形成され、開口された形状を成し、且つ、当該開口の面積が前記供給側接続路および前記帰還側接続路よりも小さいことで、前記プレートの貼りずれに起因した流路断面積の変化が前記供給側接続路および前記帰還側接続路よりも大きく、
前記供給側接続路および前記帰還側接続路のうち少なくとも一方の流路抵抗は前記連通路の流路抵抗よりも大きい、液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズル内のインクが高粘度化するのを抑制することを一つの目的として、供給マニホールドおよび帰還マニホールドを備え、インクタンクと液体吐出ヘッドとの間でインクを循環させるようにした構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、供給マニホールドと帰還マニホールドとが2階建てに構成された状態で、当該供給マニホールドと帰還マニホールドとを連通させるバイパス経路が開示されている。このような構成により、供給マニホールドの下流端から帰還マニホールドにエアを排出することができる。このようなバイパス経路は、各個別チャンネルから離間して配置され、供給マニホールドの下流端から当該供給マニホールドの延長線上に延びる部分および供給マニホールドと帰還マニホールドとを連通させる部分を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-290292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記バイパス経路が複数のエッチングプレートから構成される場合に、当該プレートの貼りずれに起因してバイパス経路の流路抵抗が変わってしまうことで、所望の流量を流すことができない恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、プレートの貼りずれが起きても供給マニホールドから帰還マニホールドに向けて所望の流量の液体を流すことができる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドは、第1ノズル吐出口をそれぞれ含む複数の第1個別チャンネルと、前記第1個別チャンネルに接続され、液体を前記第1個別チャンネルに供給する第1供給マニホールドと、前記第1個別チャンネルに接続され、前記第1ノズル吐出口から吐出されなかった液体が流通する第1帰還マニホールドと、第2ノズル吐出口をそれぞれ含む複数の第2個別チャンネルと、前記第2個別チャンネルに接続され、液体を前記第2個別チャンネルに供給する第2供給マニホールドと、前記第2個別チャンネルに接続され、前記第2ノズル吐出口から吐出されなかった液体が流通する第2帰還マニホールドと、前記第1供給マニホールドと前記第2帰還マニホールドとを連通させる連通用バイパス経路と、を備え、前記連通用バイパス経路は、前記第1供給マニホールドに接続された連通用供給側接続路と、前記第2帰還マニホールドに接続された連通用帰還側接続路と、前記連通用供給側接続路と前記連通用帰還側接続路との間における連通路とを含み、前記連通用供給側接続路および前記連通用帰還側接続路のうち少なくとも一方の流路抵抗は前記連通路の流路抵抗よりも大きいものである。
【0008】
本発明に従えば、連通用供給側接続路および連通用帰還側接続路のうち少なくとも一方の流路抵抗を連通路の流路抵抗よりも大きくしたことで、プレートの貼りずれが起こり連通路の一部が閉塞したとしても、連通用バイパス経路全体の抵抗の差をほとんど無いようにすることができる。これにより、供給マニホールドから帰還マニホールドに向けて所望の流量の液体を流すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プレートの貼りずれが起きても供給マニホールドから帰還マニホールドに向けて所望の流量の液体を流すことができる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出装置の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態に係る液体吐出装置を上方から平面視したときの概略構成を示す模式図である。
図3図1に示す液体吐出装置が備える液体吐出ヘッドの構成の一部を拡大した模式図であり、同図(a)は液体吐出ヘッドの平面構造を示す模式図、同図(b)は液体吐出ヘッドの断面構造を示す模式図である。
図4】本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッドが備える連通用バイパス経路の構成要素の一部を示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッドが備える接続用バイパス経路の構成要素の一部を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る第1供給マニホールドおよび第1帰還マニホールドと、第2供給マニホールドおよび第2帰還マニホールと、連通用バイパス経路および接続用バイパス経路との配置関係を示す平面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る液体吐出ヘッドが備える連通用バイパス経路および接続用バイパス経路の構成を示す分解斜視図である。
図8】変形例に係る液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図面を参照して説明する。以下に説明する液体吐出ヘッドは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
<液体吐出装置の構成>
図1は本発明の実施の形態に係る液体吐出装置1の概略構成を示す模式図である。液体吐出装置1は、下から順に、給紙トレイ10、プラテン11およびラインヘッド12が組み付けられている。給紙トレイ10は、複数の被記録シートPを収容する。給紙トレイ10の上方には、直交方向に長寸のプラテン11が設けられている。プラテン11は、平板部材であり、搬送される被記録シートPを下から支える。プラテン11の更に上方には、ラインヘッド12が配置されている。ラインヘッド12には複数の液体吐出ヘッド13が設けられている。また、プラテン11の前方には排紙トレイ14が設けられており、当該排出トレイ14は記録を終えた被記録シートPを受け取る。
【0013】
給紙トレイ10の後方からはシート搬送路20が延設されている。シート搬送路20は、給紙トレイ10と排紙トレイ14とを繋ぐ。シート搬送路20は、湾曲パス21、ストレートパス22、およびエンドパス23の3つのパスに分割できる。湾曲パス21は、給紙トレイ10から上方へ湾曲して、プラテン11の後方近傍まで至っている。ストレートパス22は、湾曲パス21の終点からプラテン11の前方近傍まで至っている。エンドパス23は、ストレートパス22の終点から排紙トレイ14まで至っている。
【0014】
液体吐出装置1は、被記録シートPを搬送するシート搬送機構として、給送ローラ30、搬送ローラ31、および排出ローラ34を備えている。上記シート搬送機構は、給紙トレイ10の被記録シートPをシート搬送路20に沿って排紙トレイ14まで搬送する。
【0015】
具体的には、給送ローラ30が、給紙トレイ10の上方に設けられ、被記録シートPに上から当接している。搬送ローラ31は、ピンチローラ32と組んで搬送ローラ部33を構成し、湾曲パス21の下流端近傍に配置されている。搬送ローラ部33は、湾曲パス21とストレートパス22とを繋ぐ。排出ローラ34は、拍車ローラ35と組んで排出ローラ部36を構成し、ストレートパス22の下流端近傍に配置されている。排出ローラ部36は、ストレートパス22とエンドパス23を繋ぐ。
【0016】
ここで、被記録シートPは、給送ローラ30によって、湾曲パス21を介して搬送ローラ部33へ供給される。さらに被記録シートPは、搬送ローラ部33により、ストレートパス22から排出ローラ部36へ送られる。ストレートパス22ではプラテン11上の被記録シートPに対してインク等の液体が液体吐出ヘッド13から吐出される。被記録シートPには画像が記録される。この記録済みの被記録シートPは排出ローラ部36によって排紙トレイ14まで搬送される。
【0017】
図2は本発明の実施の形態に係る液体吐出装置1の概略構成を示す平面図である。図2に示すように、ラインヘッド12は、下面が被記録シートPと対向し、被記録シートPが搬送される方向(搬送方向)に直交する方向(直交方向)における被記録シートPの長さ以上の長さを有している。上記の下面は複数の個別チャンネル100(後述の図3(a),(b))のノズル吐出口57が設けられたノズル面となる。
【0018】
各ノズル吐出口57にはタンク16が接続されている。タンク16は、ラインヘッド12上に配置されたサブタンク16bおよびサブタンク16bにチューブ17によって接続された貯留タンク16aを含む。このサブタンク16bおよび貯留タンク16aに液体が貯留されている。タンク16は、ノズル吐出口57から吐出される液体の色の数に応じて設けられ、例えば4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)の液体に対して4つのタンク16が設けられている。これにより、ラインヘッド12は複数種類の液体を吐出する。
【0019】
このように、ラインヘッド12が移動せずに固定されて、複数のノズル吐出口57から液体を吐出する。この吐出と共に、上述のシート搬送機構により被記録シートPを搬送方向に搬送する。これによって、被記録シートPに画像が記録される。なお、液体吐出ヘッド13がラインヘッド12である場合を例に挙げて説明したが、ラインヘッド12の代わりにシリアルヘッドであってもよい。
【0020】
<液体吐出ヘッドの構成>
図3を参照して液体吐出ヘッド13の構成について説明する。図3図1に示す液体吐出装置1が備える液体吐出ヘッド13の構成の一部を拡大した模式図であり、同図(a)は液体吐出ヘッド13の平面構造を示す模式図、同図(b)は液体吐出ヘッド13の断面構造を示す模式図である。なお、図3(b)は、図3(a)に示す液体吐出ヘッド13を個別チャンネル(後述する第1個別チャンネル60a、第2個別チャンネル60b)に沿って切断したときの断面構造を示す。また、図3では、説明の便宜上、後述する第1圧力室50aおよび第2圧力室50bの上方に配置され、第1圧力室50a内または第2圧力室50b内の液体へ圧力を付与する圧電プレートについては図示を省略している。
【0021】
液体吐出ヘッド13が備える各部は、複数のプレートそれぞれに対してエッチング(ハーフエッチング)もしくは切削などの加工を施し、これらのプレートを積層させて形成することができる。或いは、所定の形状に成形された複数の樹脂製プレートを積層させて形成してもよい。
【0022】
図3には、4つの異なるノズル列(第1ノズル列100A、第2ノズル列100B、第3ノズル列100C、第4ノズル列100D)が配置された液体吐出ヘッド13が図示されている。本実施形態では、第1ノズル列100Aと第2ノズル列100Bとは、第1供給マニホールド51aおよび第1帰還マニホールド52aからなる第1島部300aに設けられている。また、第3ノズル列100Cと第4ノズル列100Dとは、第2供給マニホールド51bおよび第2帰還マニホールド52bからなる第2島部300bに設けられている。
【0023】
以下では、第1個別チャンネル60aが接続する供給マニホールドを第1供給マニホールド51a、第1個別チャンネル60aが接続する帰還マニホールドを第1帰還マニホールド52aと称する。同様に、第2個別チャンネル60bが接続する供給マニホールドを第2供給マニホールド51b、第2個別チャンネル60bが接続する帰還マニホールドを第2帰還マニホールド52bと称する。また、島部とは、ノズル面から平面視する場合に、各個別チャンネルが備える圧力室と重複して位置する供給マニホールドと帰還マニホールドとを含むユニットである。なお、第1島部300aに設けられた第1ノズル列100Aおよび第2ノズル列100Bそれぞれを構成する複数の個別チャンネルは同様の構成となるので、第1個別チャンネル60aと総称する。また、第2島部300bに設けられた第3ノズル列100Cおよび第4ノズル列100Dそれぞれを構成する複数の個別チャンネルは同様の構成となるので、第2個別チャンネル60bと総称する。
【0024】
第1個別チャンネル60aは、第1圧力室50a、第1圧力室50aと連通する第1ディセンダ56a、および第1ディセンダ56aと連通し、液滴が吐出される第1ノズル吐出口57aを有する。第1ノズル吐出口57aが設けられている側を下方向とし、その反対側を上方向としたとき、第1ディセンダ56aの上方には第1圧力室50aが設けられている。第1圧力室50aの上面には圧電プレート(圧電体)が配置されており、この圧電プレートによって所定のタイミングで第1圧力室50a内の液体へ圧力を付与する。具体的には、圧電プレートに所定のタイミングで電圧を印加すると圧電プレートの体積が変化し第1圧力室50a内の液体へ圧力を付与する。これにより第1ノズル吐出口57aから液滴を吐出させることができる。
【0025】
また、第1個別チャンネル60aは、第1供給絞り部53aを備え、この第1供給絞り部53aを介して、第1供給マニホールド51aと接続される。さらにまた、第1帰還絞り部54aを備え、この第1帰還絞り部54aを介して、第1帰還マニホールド52aと接続される。具体的には、第1供給マニホールド51aと、第1個別チャンネル60aの第1圧力室50aとが、流路径が小さくなっている第1供給絞り部53aによって接続されている。また、第1個別チャンネル60aの第1ノズル吐出口57aと、第1帰還マニホールド52aとが、流路径が小さくなっている第1帰還絞り部54aによって接続されている。
【0026】
液体吐出装置1では、タンク16から送出されたインク等の液体が、第1入口ポート58aを介して、第1供給マニホールド51aに供給される。第1供給マニホールド51aに供給された液体は、第1供給絞り部53aを介して第1個別チャンネル60aの第1圧力室50aに供給される。第1圧力室50aで圧力が付与された液体は、第1ディセンダ56aを流通して第1ノズル吐出口57aへ導かれ、第1ノズル吐出口57aから液滴の状態で吐出される。ここで、第1ノズル吐出口57aから吐出されなかった液体は、第1帰還絞り部54aを介して第1帰還マニホールド52aに送出される。第1帰還マニホールド52aに送出された液体は、第1出口ポート59aを介してタンク16に戻される。このように、第1島部300aに設けられた各第1個別チャンネル60aはノズル循環を行う構成となっている。なお、第1供給マニホールド51aは、液体を第1圧力室50aに送出させるために、内部は正圧となっている。また、第1帰還マニホールド52aは、第1ノズル吐出口57aから吐出されなかった液体を引き込むために、内部は負圧となっている。
【0027】
また、第1供給マニホールド51aおよび第1帰還マニホールド52aとは、第1ノズル吐出口57aが形成されたノズル面から平面視したとき両者は重畳するように配置されている。液体吐出ヘッド13においてノズル面が形成されている側を下方とし、その反対側を上方としたとき、第1帰還マニホールド52aの上方に第1供給マニホールド51aが配置される。そして、第1供給マニホールド51aと第1帰還マニホールド52aとの間には第1ダンパー部55aが設けられる。この第1ダンパー部55aによって、第1供給絞り部53aを介して第1圧力室50aから第1供給マニホールド51aに伝播してきた圧力波の影響を抑制することができる。さらに、第1帰還絞り部54aを介して第1帰還マニホールド52aに伝播してきた圧力波の影響も抑制することができる。
【0028】
また、第2個別チャンネル60bも、上記した第1個別チャンネル60aと同様の構成を有する。すなわち、第2個別チャンネル60bは、第2圧力室50b、第2圧力室50bと連通する第2ディセンダ56b、および第2ディセンダ56bと連通し、液滴が吐出される第2ノズル吐出口57bを有する。そして、第2個別チャンネル60b夫々は、第2供給絞り部53bを介して第2供給マニホールド51bに、第2帰還絞り部54bを介して第2帰還マニホールド52bにそれぞれ接続されている。
【0029】
また、ノズル面から平面視したとき、第2供給マニホールド51bと第2帰還マニホールド52bとは重畳するように配置され、両者の間に第2ダンパー部55bが設けられる。上記の第1ダンパー部55aおよび第2ダンパー部55bは、ダンパー空間を形成するために凹部領域が設けられ2枚のプレート(後述の図4の第1ダンパープレート80および第2ダンパープレート81)で形成される。なお、第2個別チャンネル60bは、第1個別チャンネル60aと同様な構成を有するため詳細な説明は省略する。
【0030】
上述の第1個別チャンネル60aと第2個別チャンネル60bとは、これらが設けられている島部がそれぞれ異なっているが、図6を用いて後述する連通用バイパス経路70によって液体の循環流路が接続された構成となっている。第1供給マニホールド51aと第2帰還マニホールド52bとが連通用バイパス経路70によって接続される。これにより、第1供給マニホールド51a内の液体の一部が第2帰還マニホールド52bに流通する。そして、第1供給マニホールド51aと第2帰還マニホールド52bとの間でマニホールド循環させることができる。
【0031】
ここで、連通用バイパス経路70の構成要素の一部について図4を用いて説明する。なお、連通用バイパス経路70の詳細な構成については、図6および図7を用いて後述する。
【0032】
図4に示すように、連通用バイパス経路70の構成要素の一部は、上述の第1ダンパー部55aを構成する第1ダンパープレート80および第2ダンパープレート81に形成される。第1ダンパープレート80および第2ダンパープレート81は、第1供給マニホールド51aと第2帰還マニホールド52bとを区画する壁部である。第1ダンパープレート80は第1供給マニホールド51aの底面をなすプレートとしても機能し、第2ダンパープレート81は第2帰還マニホールド52bの上面をなすプレートとしても機能する。第1ダンパープレート80における一部を切り欠くことによって、連通用バイパス経路70の一構成要素である第1流通路70bが設けられる。第1流通路70bは第1供給マニホールド51a内と連通する。
【0033】
また、第2ダンパープレート81における、第1ダンパー部55aおよび第2ダンパー部55bが形成されていない領域において上下方向(プレートが積層される方向)に貫通する孔を形成することによって、連通路70aを設ける。この連通路70aは、一方の端部で第2帰還マニホールド52b内と連通するとともに、他方の端部で第1流通路70bと連通する。この第1流通路70bは、ノズル面から平面視したとき、第1供給マニホールド51aおよび連通路70aそれぞれと重畳する位置に配置されている。
【0034】
連通用バイパス経路70は、第1ダンパープレート80および第2ダンパープレート81に対してエッチングもしくは切削の加工を施し積層させて形成することができる。あるいは、第1ダンパープレート80および第2ダンパープレート81が所定の形状に成形された樹脂製プレートであり、これらのプレートを積層させて形成してもよい。連通路70aおよび第1流通路70bの形状および寸法を適宜設定することで、流通する流体の圧力を容易に調整することができる。
【0035】
さらに、液体吐出ヘッド13は、第2供給マニホールド51bと第1帰還マニホールド52aとが接続用バイパス経路71によって接続され、第2供給マニホールド51b内の液体の一部が第1帰還マニホールド52aに流通する構成となっている。そして、第2供給マニホールド51bと第1帰還マニホールド52aとの間でマニホールド循環させることができる。
【0036】
ここで、接続用バイパス経路71の構成要素の一部について図5を用いて説明する。なお、接続用バイパス経路71の詳細な構成については、図6および図7を用いて後述する。
【0037】
図5に示すように、接続用バイパス経路71の構成要素の一部は、上述の第1ダンパープレート80および第2ダンパープレート81に形成される。第1ダンパープレート80および第2ダンパープレート81は、第2供給マニホールド51bと第1帰還マニホールド52aとを区画する壁部でもある。そして、第1ダンパープレート80は第2供給マニホールド51bの底面をなすプレートとしても機能し、第2ダンパープレート81は第1帰還マニホールド52aの上面をなすプレートとしても機能する。第1ダンパープレート80における一部を切り欠くことによって、接続用バイパス経路71の一構成要素である第2流通路71bが設けられる。第2流通路71bは第2供給マニホールド51b内と連通する。
【0038】
また、第2ダンパープレート81における、第1ダンパー部55a、第2ダンパー部55bおよび連通用バイパス経路70が形成されていない領域において上下方向に貫通する孔を形成することによって、連絡路71aを設ける。この連絡路71aは、一方の端部で第1帰還マニホールド52a内と連通するとともに、他方の端部で第2流通路71bと連通する。この第2流通路71bは、ノズル面から平面視したとき、第2供給マニホールド51bおよび連絡路71aそれぞれと重畳する位置に配置されている。なお、接続用バイパス経路71は上述の連通用バイパス経路70と同様の方法で形成することができる。
【0039】
以下、第1島部300aを構成する第1供給マニホールド51aおよび第1帰還マニホールド52aと、第2島部300bを構成する第2供給マニホールド51bおよび第2帰還マニホールド52bと、連通用バイパス経路70および接続用バイパス経路71それぞれの配置関係について、図6を参照して説明する。
【0040】
図6において第1供給マニホールド51aおよび第2供給マニホールド51bを実線で、第1帰還マニホールド52aおよび第2帰還マニホールド52bを破線で示している。また、第1個別チャンネル60a群および第2個別チャンネル60b群の図示は省略している。
【0041】
図6に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッド13において、ノズル面から平面視したとき、第1供給マニホールド51aと第1帰還マニホールド52aとは、重畳するように配置されるとともに、同じ方向に延伸している。第1供給マニホールド51aと第1帰還マニホールド52aとは延伸方向(所定方向に相当)における長さが異なっている。また、ノズル面から平面視したとき、第2供給マニホールド51bと第2帰還マニホールド52bとは、重畳するように配置されるとともに、同じ方向に延伸している。第2供給マニホールド51bと第2帰還マニホールド52bとは延伸方向における長さが異なっている。以上のことから、本実施形態では、第1供給マニホールド51a、第2供給マニホールド51b、第1帰還マニホールド52a、および第2帰還マニホールド52bは何れも同じ延伸方向に延在する。
【0042】
第1供給マニホールド51aの延伸方向における先端部位置と第2帰還マニホールド52bの延伸方向における先端部位置とが略同じ位置となっており、両者の先端部を連通用バイパス経路70によって接続している。また、第1供給マニホールド51aの先端部とは反対側の端部(基端部と称する)側に第1入口ポート58aが設けられ、第2帰還マニホールド52bの基端部側に第2出口ポート59bが設けられている。
【0043】
また、第2供給マニホールド51bの延伸方向における先端部位置と第1帰還マニホールド52aの延伸方向における先端部位置とが略同じ位置となっており、両者の先端部を接続用バイパス経路71によって接続している。また、第2供給マニホールド51bの基端部側に第2入口ポート58bが設けられ、第1帰還マニホールド52aの基端部側に第1出口ポート59aが設けられている。このように、本実施形態では、第1入口ポート58a、第2入口ポート58b、第1出口ポート59a、および第2出口ポート59bは延伸方向の一端側に配置されている。
【0044】
また、連通用バイパス経路70の方が接続用バイパス経路71よりも延伸方向において遠い位置となっており、互いに重なり合わないように配置されている。すなわち、接続用バイパス経路71は、連通用バイパス経路70よりも延伸方向の一端側(各ポートが配置される側)に近い側に配置される。
【0045】
以下、連通用バイパス経路70および接続用バイパス経路71の詳細な構成について説明する。図7は連通用バイパス経路70および接続用バイパス経路71の構成を示す分解斜視図である。
【0046】
<連通用バイパス経路の詳細>
図7に示すように、連通用バイパス経路70は、第1供給マニホールド51aに接続された連通用供給側接続路73と、第2帰還マニホールド52bに接続された連通用帰還側接続路70dと、連通用供給側接続路73と連通用帰還側接続路70dとの間における上述の連通路70aとを含む。連通用供給側接続路73は、上述の第1流通路70bおよび第1供給マニホールド51aに連通した第1供給延長部70cを含む。連通路70aは例えば円筒状に形成されている。
【0047】
各プレートが積層された状態で、プレート90における第1供給延長部70cと、第1ダンパープレート80において切り出された第1流通路70bと、第2ダンパープレート81において貫通された連通路70aと、プレート91における連通用帰還側接続路70dとが連通する。これにより、連通用バイパス経路70によって第1供給マニホールド51aと第2帰還マニホールド52bとが連通されるようになっている。
【0048】
第1流通路70bは例えば扇型状に形成されている。詳しくは、第1流通路70bは、第1供給延長部70cの弧状の先端部に対応するように湾曲した弧状の外側エッジe3を有する。また、連通用帰還側接続路70dの先端部は、弧状に湾曲するように形成されており、弧状の外側エッジe4を有する。
【0049】
連通用供給側接続路73および連通用帰還側接続路70dのうち少なくとも一方の流路抵抗は連通路70aの流路抵抗よりも大きい。本実施形態では、連通用供給側接続路73および連通用帰還側接続路70dの双方の流路抵抗は連通路70aの流路抵抗よりも大きい。なお、連通用供給側接続路73の流路抵抗は少なくとも第1流通路70bの流路抵抗を含むものである。例えばインクの粘度が7cpsであるとき、連通用供給側接続路73の流路抵抗は例えば3.0~3.5×1011kg/m.sであり、連通用帰還側接続路70dの流路抵抗は例えば1.5~2.0×1011kg/m.sであり、連通路70aの流路抵抗は例えば3.0~4.0×10kg/m.sである。
【0050】
また、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3の曲率半径は、連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4の曲率半径よりも大きい。
【0051】
さらに、連通用供給側接続路73のコンプライアンスは、連通用帰還側接続路70dのコンプライアンスよりも大きい。なお、各接続路のコンプライアンスは、Cp=V/c×ρの算出式により求めることができる。なお、前記算出式において、Vは各接続路の容積であり、cは接続路内の液体音速(インク音速)であり、ρは液体密度(インク密度)である。インク密度は例えば1054kg/mである。また、各マニホールド内のインク音速は例えば91m/sである。
【0052】
以上の構成において、第1供給マニホールド51a内の液体は、連通路70aよりも大きな開口形状となる第1流通路70bに流入する。そして、第1流通路70bのうち連通路70aと重なり合う弧状の端部位置に向かって流れる。第1流通路70bは、弧状の端部位置に向かって徐々に流路幅が狭まっている。このため、第1流通路70bに流入した液体は、連通路70aに至るまでに圧力の大きさが調整され、連通路70aおよび連通用帰還側接続路70dを介して第2帰還マニホールド52b内に流入する。
【0053】
<接続用バイパス経路の詳細>
連通用バイパス経路70と同様に、接続用バイパス経路71は、第2供給マニホールド51bに接続された接続用供給側接続路72と、第1帰還マニホールド52aに接続された接続用帰還側接続路71dと、接続用供給側接続路72と接続用帰還側接続路71dとの間における連絡路71aとを含む。接続用供給側接続路72は、上述の第2流通路71bおよび第2供給マニホールド51bに連通した第2供給延長部71cを含む。連絡路71aは、連通路70aと同様に例えば円筒状に形成されており、連通路70aの孔径よりも小さい孔径を有している。
【0054】
各プレートが積層された状態で、プレート90における第2供給延長部71cと、第1ダンパープレート80において切り出された第2流通路71bと、第2ダンパープレート81において貫通された連絡路71aと、プレート91における接続用帰還側接続路71dとが連通する。これにより、接続用バイパス経路71によって第2供給マニホールド51bと第1帰還マニホールド52aとが連通されるようになっている。
【0055】
第2流通路71bは例えば扇型状に形成されている。詳しくは、第2流通路71bは、第2供給延長部71cの弧状の先端部に対応するように湾曲した弧状の外側エッジe1を有する。また、接続用帰還側接続路71dの先端部は、弧状に湾曲するように形成されており、弧状の外側エッジe2を有する。
【0056】
接続用供給側接続路72および接続用帰還側接続路71dのうち少なくとも一方の流路抵抗は連絡路71aの流路抵抗よりも大きい。本実施形態では、接続用供給側接続路72および接続用帰還側接続路71dの双方の流路抵抗は連絡路71aの流路抵抗よりも大きい。なお、接続用供給側接続路72の流路抵抗は少なくとも第2流通路71bの流路抵抗を含むものである。
【0057】
また、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1の曲率半径は、接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2の曲率半径よりも大きい。
【0058】
さらに、接続用供給側接続路72のコンプライアンスは、接続用帰還側接続路71dのコンプライアンスよりも大きい。
【0059】
以上の構成において、第2供給マニホールド51b内の液体は、連絡路71aよりも大きな開口形状となる第2流通路71bに流入する。そして、第2流通路71bのうち連絡路71aと重なり合う弧状の端部位置に向かって流れる。第2流通路71bは、第1流通路70bと同様に、弧状の端部位置に向かって徐々に流路幅が狭まっている。このため、第2流通路71bに流入した液体は、連絡路71aに至るまでに圧力の大きさが調整され、連絡路71aおよび接続用帰還側接続路71dを介して第1帰還マニホールド52a内に流入する。
【0060】
<連通用バイパス経路と接続用バイパス経路との比較>
本実施形態において、接続用バイパス経路71は、連通用バイパス経路70の流路抵抗よりも高い流路抵抗を有している。
【0061】
また、連通用供給側接続路73の第1流通路70bおよび連通用帰還側接続路70dのうち少なくとも一方の流路断面積は、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの流路断面積および接続用帰還側接続路71dの流路断面積よりも大きい。本実施形態では、連通用供給側接続路73の第1流通路70bおよび連通用帰還側接続路70dの双方の流路断面積は、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの流路断面積および接続用帰還側接続路71dの流路断面積よりも大きい。なお、各流路断面積としては、各流路の流路断面積の最大値を採用することができる。
【0062】
また、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1および接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2のうち少なくとも一方の外側エッジの曲率半径は、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3の曲率半径および連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4の曲率半径よりも大きい。さらに、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3および連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4のうち少なくとも一方の外側エッジの曲率半径は、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1の曲率半径および接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2の曲率半径よりも小さい。本実施形態では、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1および接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2の各曲率半径は、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3の曲率半径および連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4の曲率半径よりも大きい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出ヘッド13においては、連通用供給側接続路73および連通用帰還側接続路70dのうち少なくとも一方の流路抵抗を連通路70aの流路抵抗よりも大きくした。これにより、プレートの貼りずれが起こりそれに起因して連通路70aの一部が閉塞したとしても、連通用バイパス経路70全体の抵抗の差をほとんど無いようにすることができる。接続用バイパス経路71についても同様である。これにより、第1供給マニホールド51aから第2帰還マニホールド52bに向けて所望の流量の液体を流すことができると共に、第2供給マニホールド51bから第1帰還マニホールド52aに向けて所望の流量の液体を流すことができる。
【0064】
また、本実施形態では、接続用バイパス経路71は、連通用バイパス経路70よりも延伸方向の一端側(各ポートが配置される側)に近い側に配置され、かつ、連通用バイパス経路70の流路抵抗よりも高い流路抵抗を有している。この点、連通用バイパス経路70は第1入口ポート58aから遠い位置にあることに起因して流路抵抗が高いため、接続用バイパス経路71の流路抵抗を大きくした。このことによって、第1供給マニホールド51aと連通用バイパス経路70と第2帰還マニホールド52bとにおける全体抵抗と、第2供給マニホールド51bと接続用バイパス経路71と第1帰還マニホールド52aとにおける全体抵抗との差を小さくすることができ、それ故各バイパス経路70,71の流量を同じにすることができる。なお、接続用バイパス経路71全体の流路抵抗は、例えば4.0~5.0×1011kg/m.sであり、連通用バイパス経路70全体の流路抵抗は、例えば3.0~3.9×1011kg/m.sである。
【0065】
また、本実施形態では、連通用供給側接続路73の第1流通路70bおよび連通用帰還側接続路70dの双方の流路断面積は、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの流路断面積および接続用帰還側接続路71dの流路断面積よりも大きい。これにより、エアの排出性を確保した上で、第1供給マニホールド51aと連通用バイパス経路70と第2帰還マニホールド52bとにおける全体抵抗と、第2供給マニホールド51bと接続用バイパス経路71と第1帰還マニホールド52aとにおける全体抵抗との差を簡易な構成によって小さくすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、連通路70aおよび連絡路71aは円筒状に形成されている。この場合、四角筒状又は三角筒状の流路と同断面積の場合に、連通路70aおよび連絡路71aはこれらの形状の流路よりも流路抵抗が下がり液体が流れ易くなるため、多くの流量を流すことができる。
【0067】
また、本実施形態では、連絡路71aは連通路70aの孔径よりも小さい孔径を有している。これにより、第1供給マニホールド51aと連通用バイパス経路70と第2帰還マニホールド52bとにおける全体抵抗と、第2供給マニホールド51bと接続用バイパス経路71と第1帰還マニホールド52aとにおける全体抵抗との差を簡易な構成によって小さくすることができる。なお、連絡路71aの孔径は、例えば0.2~0.3mmである。連絡路71aの流路抵抗は、例えば1.0~2.0×10kg/m.sである。また、連通路70aの孔径は、例えば0.4~0.5mmである。連通路70aの流路抵抗は、例えば3.0~4.0×10kg/m.sである。
【0068】
また、本実施形態では、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1および接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2の各曲率半径は、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3の曲率半径および連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4の曲率半径よりも大きい。この場合、各バイパス経路70,71の流路抵抗の差を小さくする際に、外側エッジの方が内側エッジよりも長いため曲率半径を調整し易い。また、エアを、連通路70a,連絡路71aを基準とした各下流側(つまり、連通用帰還側接続路70dの側、接続用帰還側接続路71dの側)に排出し易くなる。
【0069】
また、本実施形態では、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3の曲率半径は、連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4の曲率半径よりも大きい。そして、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1の曲率半径は、接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2の曲率半径よりも大きい。この場合、各バイパス経路70,71の上流側(IN側)の外側エッジを調整するよりも下流側(OUT側)の外側エッジを調整する方が、液体排出性の低下を避けることができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、連通用供給側接続路73のコンプライアンスは、連通用帰還側接続路70dのコンプライアンスよりも大きい。そして、接続用供給側接続路72のコンプライアンスは、接続用帰還側接続路71dのコンプライアンスよりも大きい。この点につき、本実施形態のように上側(圧力室の側)にアクチュエータを配置する構成の場合、当該アクチュエータに近い第1および第2供給マニホールド51a,51bの方が比較的アクチュエータの駆動によるクロストークの大きな影響を受け易くなる。そこで、連通用供給側接続路73のコンプライアンスおよび接続用供給側接続路72のコンプライアンスを比較的大きくすることで、クロストークの影響を少しでも小さくすることができる。
【0071】
<変形例>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0072】
上記実施形態では、上述の図3(b)で示したように、液体吐出ヘッド13が第1供給マニホールド51aと、第2帰還マニホールド52bと、第2供給マニホールド51bと、第1帰還マニホールド52aとを備える態様について説明したが、これに限定されるものではなく、供給マニホールドおよび帰還マニホールドが一つずつ設けられた液体吐出ヘッドを採用してもよい。
【0073】
図8に示すように、変形例に係る液体吐出ヘッド13Aは、液体が外部から供給される供給マニホールド200と、液体が外部に排出される帰還マニホールド201と、上流端が供給マニホールド200に接続され、下流端が帰還マニホールド201に接続され且つ列をなしてノズル面に配置された複数のノズル203および圧力室206に対して個別に連通した複数の個別流路202とを備える。また、液体吐出ヘッド13Aは、供給マニホールド200と帰還マニホールド201とを接続するバイパス経路204を備える。供給マニホールド200の液体は供給絞り路205を通じて圧力室206に流れ込む。このような液体吐出ヘッド13Aは、帰還マニホールド201の上方に供給マニホールド200が配置された2階建て構造となっている。なお、ノズル203から吐出されなかった液体は帰還絞り路207を介して帰還マニホールド201に流通する。
【0074】
バイパス経路204は、供給マニホールド200に接続された供給側接続路204aと、帰還マニホールド201に接続された帰還側接続路204cと、供給側接続路204aと帰還側接続路204cとの間における連通路204bとを含む。このような構成において、供給側接続路204aおよび帰還側接続路204cのうち少なくとも一方の流路抵抗は連通路204bの流路抵抗よりも大きい。本形態では、供給側接続路204aおよび帰還側接続路204cの双方の流路抵抗は連通路204bの流路抵抗よりも大きくなっている。
【0075】
このように、本変形例に係る液体吐出ヘッド13Aにおいて、供給側接続路204aおよび帰還側接続路204cの双方の流路抵抗を連通路204bの流路抵抗よりも大きくした。これにより、プレートの貼りずれが起こりそれに起因して連通路204bの一部が閉塞したとしても、バイパス経路204全体の抵抗の差をほとんど無いようにすることができる。これにより、供給マニホールド200から帰還マニホールド201に向けて所望の流量の液体を流すことができる。
【0076】
また、上記実施形態では、図6に示したように、液体吐出ヘッド13においては、第1供給マニホールド51aおよび第2供給マニホールド51bは、延伸方向における先端部側(連通用バイパス経路70、接続用バイパス経路71が設けられる側)とは反対側となる基端部側に第1入口ポート58aおよび第2入口ポート58bが設けられる構成であった。また、第1帰還マニホールド52aおよび第2帰還マニホールド52bも、延伸方向における先端部側とは反対側となる基端部側に第1出口ポート59aおよび第2出口ポート59bが設けられる構成であった。これら第1入口ポート58a、第2入口ポート58b、第1出口ポート59a、および第2出口ポート59bが設けられる位置は延伸方向における基端部側に限定されるものではない。第1入口ポート58a、第2入口ポート58b、第1出口ポート59a、および第2出口ポート59bは、第1供給マニホールド51a、第2供給マニホールド51b、第1帰還マニホールド52a、および第2帰還マニホールド52bにおいてそれぞれ異なる側の端部に設けられていてもよい。第1入口ポート58aおよび第2入口ポート58bを介して第1供給マニホールド51aおよび第2供給マニホールド51bに供給され液体が流通する流路(不図示)の配置または形状、第1出口ポート59aおよび第2出口ポート59bを介して、第1帰還マニホールド52aおよび第2帰還マニホールド52bから液体が排出される流路(不図示)の配置または形状に応じて任意に設けることができる。
【0077】
また、上記実施形態では、連通用供給側接続路73および連通用帰還側接続路70dの双方の流路抵抗を連通路70aの流路抵抗よりも大きくしたが、これに限定されるものではない。連通用供給側接続路73および連通用帰還側接続路70dのうち何れか一方の流路抵抗を連通路70aの流路抵抗よりも大きくしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、接続用供給側接続路72および接続用帰還側接続路71dの双方の流路抵抗を連絡路71aの流路抵抗よりも大きくしたが、これに限定されるものではない。接続用供給側接続路72および接続用帰還側接続路71dのうち何れか一方の流路抵抗を連絡路71aの流路抵抗よりも大きくしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、連通用供給側接続路73の第1流通路70bおよび連通用帰還側接続路70dの双方の流路断面積を、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの流路断面積および接続用帰還側接続路71dの流路断面積よりも大きくしたが、これに限定されるものではない。連通用供給側接続路73の第1流通路70bおよび連通用帰還側接続路70dのうち少なくとも一方の流路断面積を、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの流路断面積および接続用帰還側接続路71dの流路断面積よりも大きくしてもよい。
【0080】
さらに、上記実施形態では、接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1および接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2の各曲率半径を、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3の曲率半径および連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4の曲率半径よりも大きくしたが、これに限定されるものではない。接続用供給側接続路72の第2流通路71bの外側エッジe1および接続用帰還側接続路71dの外側エッジe2のうち何れか一方の外側エッジの曲率半径を、連通用供給側接続路73の第1流通路70bの外側エッジe3の曲率半径および連通用帰還側接続路70dの外側エッジe4の曲率半径よりも大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 液体吐出装置
13 液体吐出ヘッド
13A 液体吐出ヘッド
51a 第1供給マニホールド
51b 第2供給マニホールド
52a 第1帰還マニホールド
52b 第2帰還マニホールド
57a 第1ノズル吐出口
57b 第2ノズル吐出口
58a 第1入口ポート
58b 第2入口ポート
59a 第1出口ポート
59b 第2出口ポート
60a 第1個別チャンネル
60b 第2個別チャンネル
70 連通用バイパス経路
70a 連通路
70b 第1流通路
70c 第1供給延長部
70d 連通用帰還側接続路
71 接続用バイパス経路
71a 連絡路
71b 第2流通路
71c 第2供給延長部
71d 接続用帰還側接続路
72 接続用供給側接続路
73 連通用供給側接続路
200 供給マニホールド
201 帰還マニホールド
202 個別流路
203 ノズル
204 バイパス経路
204a 供給側接続路
204b 連通路
204c 帰還側接続路
e1 第2流通路の外側エッジ
e2 接続用帰還側接続路の外側エッジ
e3 第1流通路の外側エッジ
e4 連通用帰還側接続路の外側エッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8