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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/36 20210101AFI20241008BHJP
   B22F 10/18 20210101ALI20241008BHJP
   B22F 12/41 20210101ALI20241008BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20241008BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241008BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241008BHJP
【FI】
B22F10/36
B22F10/18
B22F12/41
B28B1/30
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020182320
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072723
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】宮下 武
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002387(JP,A)
【文献】特開2017-043805(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105,3/16,10/18,10/36,12/41
B23K 26/34
B28B 1/30
B33Y 30/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
無機粉末およびバインダーを含む材料を供給する材料供給手段と、
レーザーと、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記材料供給手段を制御して、前記ステージ上に前記材料を供給する処理と、
前記レーザーを制御して、前記ステージ上の前記材料に、エネルギー密度が140J/mm以上500J/mm 以下のレーザー光を照射する処理を行い、
前記材料供給手段は、前記材料を吐出するノズルを有し、
前記レーザー光が照射される前の前記材料における前記バインダーの含有量は、6質量%以上9質量%以下である、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記レーザー光は、角トップハット形状の形状を有する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記制御部は、前記材料を供給する処理において、前記ステージの第1領域に前記材料を供給し、前記ステージの前記第1領域と異なる第2領域に前記材料を供給しない、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物を造形する三次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、造形用プレートに金属粉末と溶剤と粘着増進材とを有する材料を供給し、レーザー光を照射することで三次元造形物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-184622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように金属粉末および粘着増進材を含む材料にレーザー光を照射すると、レーザー光によって金属粉末が溶融または焼結する前に、沸点の低い粘着増進材が先に気化し、金属粉末を飛散させてしまう場合がある。金属粉末が飛散すると、三次元造形物の厚さがばらつくなど造形精度が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形装置の一態様は、
ステージと、
無機粉末およびバインダーを含む材料を供給する材料供給手段と、
移動手段と、
レーザーと、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記材料供給手段を制御して前記ステージ上に前記材料を供給する処理と、
前記レーザーを制御して、前記ステージ上の前記材料に、エネルギー密度が140J/mm以上のレーザー光を照射する処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
図2】本実施形態に係る三次元造形装置の制御部の処理を説明するためのフローチャート。
図3】本実施形態に係る三次元造形装置で製造される三次元造形物の製造工程を模式的に示す断面図。
図4】本実施形態に係る三次元造形装置で製造される三次元造形物の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】レーザー光のエネルギー密度と、造形層の残膜率および表面粗さSzと、の関係を示す表。
図6】レーザー光のエネルギー密度と、造形層の残膜率と、の関係を示すグラフ。
図7】レーザー光のエネルギー密度と、造形層の表面粗さSzと、の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1. 三次元造形装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す断面図である。なお、図1では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0010】
三次元造形装置100は、図1に示すように、例えば、造形ユニット10と、ステージ20と、移動手段30と、制御部40と、を含む。
【0011】
造形ユニット10は、例えば、支持部材110と、材料供給手段120と、レーザー130と、を含む。
【0012】
支持部材110は、例えば、板状の部材である。支持部材110は、材料供給手段120およびレーザー130を支持している。
【0013】
材料供給手段120は、ステージ20上に材料を供給する。供給される材料については、後述する。材料供給手段120は、例えば、材料導入部121と、モーター122と、フラットスクリュー123と、バレル124と、ヒーター125と、ノズル126と、を有している。
【0014】
材料供給手段120の材料導入部121は、フラットスクリュー123のバレル124側の面に設けられた溝123aに材料を導入する。溝123aに導入される材料は、例えば、粉末状である。フラットスクリュー123は、モーター122によって回転させる。ヒーター125は、バレル124に設けられている。ヒーター125の熱によって、材料は、溝123aにおいて可塑化される。可塑化された材料は、バレル124に設けられた連通孔124aを通って、ノズル126からステージ20に向かって吐出される。吐出された材料は、ステージ20において流動性を失った状態となる。
【0015】
レーザー130は、ステージ20上の材料にレーザー光を照射する。レーザーは、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザー、ファイバーレーザー、UV(ultraviolet)レーザーなどである。
【0016】
レーザー光は、角トップハット形状を有する。角トップハット形状を有するレーザー光は、ガウシアン形状を有するレーザー光に比べて、均一性の高いフラットトップと急峻な境界特性とを有している。
【0017】
ステージ20は、造形ユニット10の下方に設けられている。ステージ20上には、材料が供給され、三次元造形物が形成される。
【0018】
移動手段30は、造形ユニット10とステージ20との相対的な位置を変化させる。移動手段30は、例えば、ステージ20と材料供給手段120との相対的な位置、およびステージ20とレーザー130との相対的な位置を、同時に変化させる。図示の例では、ステージ20は、固定されており、移動手段30は、ステージ20に対して、造形ユニット
10を移動させる。これにより、ステージ20と、材料供給手段120およびレーザー130と、の相対的な位置を変化させることができる。図示の例では、移動手段30は、支持部材110に接続されており、支持部材110を移動させることにより、造形ユニット10を移動させる。
【0019】
移動手段30は、例えば、図示しない3つのモーターの駆動力によって、造形ユニット10をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。移動手段30のモーターは、制御部40によって制御される。
【0020】
なお、移動手段30は、造形ユニット10を移動させずに、ステージ20を移動させる構成であってもよい。この場合、移動手段30は、ステージ20に接続されている。または、移動手段30は、造形ユニット10およびステージ20の両方を移動させる構成であってもよい。この場合、移動手段30は、造形ユニット10およびステージ20の両方に接続されている。
【0021】
制御部40は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部40は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。制御部40は、造形ユニット10および移動手段30を制御する。制御部40の具体的な処理は、後述する。なお、制御部40は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0022】
1.2. 材料
材料供給手段120によってステージ20上に供給される材料は、無機粉末およびバインダーを含む。無機粉末の材質は、例えば、金属、セラミックである。材料供給手段120によって供給される材料は、金属粉末とセラミック粉末との両方を含んでいてもよい。
【0023】
金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼(SUS)、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0024】
セラミックとしては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが挙げられる。
【0025】
バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)などの合成樹脂が挙げられる。バインダーは、レーザーが照射される前の状態において、無機粉末同士を結着させる。バインダーは、例えば、レーザー光の照射によって気化される。
【0026】
ノズル126から吐出される材料におけるバインダーの含有量は、例えば、6質量%以上9質量%以下であり、好ましくは7.5質量%以上8.5質量%以下である。バインダーの含有量が6質量%以上であれば、材料の潤滑性を高くすることができ、ノズル126から材料を吐出することができる。バインダーの含有量が9質量%以下であれば、低コスト化を図ることができる。なお、ノズル126から吐出される材料とは、レーザー光によって照射される前の材料である。
【0027】
1.3. 制御部の処理
制御部40は、移動手段30、材料供給手段120、およびレーザー130を制御する。図2は、制御部40の処理を説明するためのフローチャートである。図3および図4は、三次元造形装置100で製造される三次元造形物の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0028】
ユーザーは、例えば、図示せぬ操作部を操作して、制御部40に処理開始信号を送信する。操作部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどによって実現される。制御部40は、処理開始信号を受けると、図2に示すように、処理を開始する。
【0029】
まず、制御部40は、造形データを取得する処理を行う(ステップS1)。造形データは、三次元造形物を造形するための造形データである。造形データは、造形される三次元造形物の形状、大きさ、および材質などに関する情報を含む。以下に示す制御部40の処理は、造形データに基づいて行われる。造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトによって生成される。制御部40は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。
【0030】
次に、制御部40は、移動手段30を制御してステージ20に対して造形ユニット10を移動させながら、図3に示すように、材料供給手段120を制御して、ステージ20上に材料50を供給する処理を行う(ステップS2)。
【0031】
ステップS2では、制御部40は、ステージ20の第1領域22に材料50を供給し、ステージ20の第2領域24には材料50を供給しない。すなわち、制御部40は、第1領域22にのみ材料50を供給する。第2領域24は、第1領域22と異なる領域である。第2領域24は、例えば、Z軸方向からみて、第1領域22を囲んでいる。
【0032】
次に、制御部40は、移動手段30を制御してステージ20に対し造形ユニット10を移動させながら、図4に示すように、レーザー130を制御してステージ20上の材料50にレーザー光を照射する処理を行う(ステップS3)。材料50にレーザー光を照射することにより、材料50は、焼結または溶融され、平坦性の高い造形層52を形成することができる。
【0033】
ステップS3では、制御部40は、ステージ20上の材料50に、エネルギー密度が140J/mm以上のレーザー光を照射する処理を行う。レーザー光のエネルギー密度が140J/mm以上であれば、後述する実験例のように、残膜率を大きくすることができ、無機粉末の飛散を抑制することができる。このように、三次元造形装置100では、エネルギー密度が140J/mm以上のレーザー光を照射して、三次元造形物を造形する。レーザー光のエネルギー密度は、好ましくは145J/mm以上である。
【0034】
ステップS3において、レーザー光の照射は、材料50に含まれる無機粉末の沸点を超えないようなエネルギー密度で行われる。無機粉末の沸点を超えるようなエネルギー密度でレーザー光を照射すると、無機粉末が気化して、無機粉末の量が少なくなってしまう。レーザー光のエネルギー密度は、例えば、500J/mm以下であり、好ましくは400J/mm以下であり、より好ましくは350J/mm以下である。レーザー光のエネルギー密度は、例えば、500J/mm以下であれば、省エネルギー化を図ることができる。
【0035】
ステップS3では、制御部40は、式(1)に示される関係式により制御を行う。例えば塗布厚dを100μm、レーザー光の出力Pwを500W、レーザー光のビーム幅Dbを200μmと設定した場合、制御部40は、レーザー光のスキャン速度Sをおよそ18
0mm/sec以下、エネルギー密度Egを140J/mm以上となるように制御する。
【0036】
Eg=Pw/(Db×S×d)・・・・・ (1)
【0037】
次に、制御部40は、取得した造形データに基づいて、造形層52の積層数が所定数になったか否か判定する処理を行う(ステップS4)。造形層52の積層数が所定数になっていないと判定した場合(ステップS4で「NO」の場合)、制御部40は、ステップS2に戻り、造形層52の積層数が所定数になるまで、ステップS2およびステップS3を繰り返す。造形層52の積層数が所定数になったと判定した場合(ステップS4で「YES」の場合)、制御部40は、処理を終了する。
【0038】
1.4. 作用効果
三次元造形装置100では、制御部40は、材料供給手段120を制御して、ステージ20上に材料50を供給する処理と、レーザー130を制御して、ステージ20上の材料50に、エネルギー密度が140J/mm以上のレーザー光を照射する処理を行う。そのため、三次元造形装置100では、後述する実験例のように、造形層52の残膜率を大きくすることができ、無機粉末の飛散を抑制することができる。これにより、三次元造形物の厚さの安定化を図ることができる。
【0039】
三次元造形装置100では、材料供給手段120は、材料50を吐出するノズル126を有し、レーザー光が照射される前の材料50におけるバインダーの含有量は、6質量%以上9質量%以下である。そのため、三次元造形装置100では、低コスト化を図りつつ、ノズル126から材料50を吐出させることができる。
【0040】
三次元造形装置100では、レーザー光は、角トップハット形状を有する。そのため、三次元造形装置100では、後述する実験例のように、レーザー光がガウシアン形状を有する場合に比べて、造形層52の表面粗さ(最大高さ)Szを小さくすることができる。
【0041】
三次元造形装置100では、制御部40は、材料50を供給する処理において、ステージ20の第1領域22に材料50を供給し、ステージ20の第1領域22と異なる第2領域24に材料50を供給しない。例えば、材料供給手段としてホッパーを用い、ステージの全面に材料を供給するPBF(粉末床溶融結合)方式では、無機粉末の飛散が生じて第1造形層の厚さがばらついたとしても、第1造形層の上に形成する第2造形層の材料供給において厚さの均一化を図ることができる。一方、材料供給手段がノズルを有するFDM(熱溶解積層方式)やPIJ(ペーストインクジェット)方式では、ステージ上に選択的に材料を供給するため、第1造形層で厚さがばらついた場合、第2造形層の材料供給において、厚さのばらつきを回復させることは難しい。したがって、三次元造形装置100は、ステージ20の第1領域22に材料50を供給し、第2領域24に材料50を供給しない場合において、高い効果を有することができる。
【0042】
なお、上記の例では、ステージ20と、材料供給手段120およびレーザー130と、の相対的な位置を同時に変化させることができる例について説明したが、材料供給手段120とレーザー130とは、別々に移動される構成であってもよい。また、レーザー130は、固定されており、ガルバノミラーを用いてレーザー光を移動させてもよい。この場合、ガルバノミラーは、制御部40によって制御される。
【0043】
また、上記の例では、フラットスクリュー123を用いた例について説明したが、フラットスクリュー123の代わりにインラインスクリューまたはFDM方式のヘッドを用いてもよい。
【0044】
2. 実験例
無機粉末としてSUS630の粉末と、バインダーとしてPVAと、を含む材料を用意した。材料におけるPVAの含有量を、8質量%とした。この材料をノズルからステージ上に供給し、レーザー光を照射した。レーザー光として、角トップハット形状のものと、ガウシアン形状のものと、の2種類を用いた。レーザー光のビーム幅、出力、およびスキャン速度を調整することにより、照射エネルギー密度を振った。
【0045】
図5は、レーザー光のエネルギー密度と、造形層の残膜率および表面粗さSzと、の関係を示す表である。図6は、レーザー光のエネルギー密度と、造形層の残膜率と、の関係を示すグラフである。図7は、レーザー光のエネルギー密度と、造形層の表面粗さSzと、の関係を示すグラフである。図6および図7は、図5に示す値をプロットしたものである。なお、表面粗さSzは、KEYENCE製ワンショット3D形状測定機VR3200によって測定した。
【0046】
図5において、残膜率は、グリーン体の厚さに対するバルク体の厚さの比である。グリーン体とは、ステージに供給された材料であって、レーザー光によって照射される前の状態の材料である。バルク体とは、ステージに供給された材料であって、レーザー光によって照射された後の状態の材料である。
【0047】
図5および図6に示すように、レーザー光のエネルギー密度が140J/mm以上であれば、残膜率が40%程度となった。ここで、グリーン体におけるSUS粉末の含有量は、38.4体積%であった。そのため、残膜率が40%程度であれば、レーザー光の照射によるSUS粉末の飛散が起きていないといえる。図6では、残膜率の38.4%を破線で示している。なお、残膜率が38.4体積%を超えているものは、誤差である。レーザー光のエネルギー密度が小さいと、PVAが気化する際の体積膨張によってSUS粉末が飛散してしまうため、残膜率が小さくなってしまう。
【0048】
図5および図6に示すように、レーザー光が角トップハット形状を有する場合は、ガウシアン形状を有する場合に比べて、エネルギー密度が小さくても、残膜率が40%程度となった。また、図5および図7に示すように、レーザー光が角トップハット形状を有する場合は、ガウシアン形状を有する場合に比べて、表面粗さSzが小さかった。レーザー光がガウシアン形状を有する場合は、角トップハット形状を有する場合に比べて、局所的に高温となる。そのため、SUS粉末の飛散が起きやすく、表面粗さSzが大きくなる。
【0049】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0050】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0051】
三次元造形装置の一態様は、
ステージと、
無機粉末およびバインダーを含む材料を供給する材料供給手段と、
レーザーと、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記材料供給手段を制御して、前記ステージ上に前記材料を供給する処理と、
前記レーザーを制御して、前記ステージ上の前記材料に、エネルギー密度が140J/mm以上のレーザー光を照射する処理を行う。
【0052】
この三次元造形装置によれば、無機粉末の飛散を抑制することができる。
【0053】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記材料供給手段は、前記材料を吐出するノズルを有し、
前記レーザー光が照射される前の前記材料における前記バインダーの含有量は、6質量%以上9質量%以下であってもよい。
【0054】
この三次元造形装置によれば、低コスト化を図りつつ、ノズルから材料を吐出させることができる。
【0055】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記レーザー光は、角トップハット形状を有してもよい。
【0056】
この三次元造形装置によれば、レーザー光がガウシアン形状を有する場合に比べて、造形層の表面粗さSzを小さくすることができる。
【0057】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記制御部は、前記材料を供給する処理において、前記ステージの第1領域に前記材料を供給し、前記ステージの前記第1領域と異なる第2領域に前記材料を供給しなくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…造形ユニット、20…ステージ、22…第1領域、24…第2領域、30…移動手段、40…制御部、50…材料、52…造形層、100…三次元造形装置、110…支持部材、120…材料供給手段、121…材料導入部、122…モーター、123…フラットスクリュー、123a…溝、124…バレル、124a…連通孔、125…ヒーター、126…ノズル、130…レーザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7