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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】カセット
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/00 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 11/04 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20241008BHJP
   B65H 16/04 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J11/00 A
B41J11/04
B41J15/04
B65H16/04
B41J3/36 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020182641
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072933
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】飯島 章太
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-336068(JP,A)
【文献】実開平02-112462(JP,U)
【文献】特開2002-370411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/01-3/54,3/62,11/00-11/70,
15/00-15/24,17/00-17/42,
27/00-35/58
B65H 16/00-16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体である印刷テープと、
前記印刷テープを収容する筐体と、
前記印刷テープに印刷する印刷ヘッドと、前記印刷テープを搬送するプラテンローラを駆動するモータと、カセット装着部と、複数のギヤを有し、前記複数のギヤの内の特定ギヤの第一方向の位置に応じて前記モータの回転数に対する前記プラテンローラの回転数である回転比率を機械的に切替える駆動切替部とを有する印刷装置の前記カセット装着部に、前記筐体が取り外し可能に装着された場合に、前記印刷装置の前記特定ギヤに直接又は間接的に当接して前記特定ギヤを、前記筐体の前記カセット装着部への装着方向である前記第一方向に移動させることで、前記印刷装置の前記駆動切替部に、前記回転比率を切替えさせる押圧部と
を備えることを特徴とするカセット。
【請求項2】
前記筐体の複数の面の内、前記第一方向の面に形成された開口から、前記第一方向とは反対の第二方向に延びるスプールを更に備え、
前記押圧部は、前記スプールの内周から前記スプールの中心軸側に突出する凸部であり、
前記印刷装置の前記カセット装着部に、前記筐体が取り外し可能に装着された場合に、前記スプールは、前記カセット装着部に設けられた、前記モータの回動に応じて回動する駆動軸を挿通し、前記押圧部は、前記印刷装置の前記駆動軸に、前記第一方向に移動可能に外挿された移動部材を介して前記特定ギヤに当接して前記特定ギヤを前記第一方向に移動させることで、前記印刷装置の前記駆動切替部に、前記回転比率を切替えさせることを特徴とする請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記押圧部は、前記スプールの前記内周の内、前記スプールの前記第一方向の中央よりも前記第二方向にあることを特徴とする請求項2に記載のカセット。
【請求項4】
前記押圧部は、前記スプールの前記中心軸側に最も突出することを特徴とする請求項3に記載のカセット。
【請求項5】
前記第一方向において、前記スプールの前記内周の前記第一方向の前記中央よりも前記第一方向の部分を含む範囲に亘って設けられ、前記印刷装置の前記モータの駆動に応じて回動する前記移動部材と、前記スプールの前記内周に沿った周方向に係合する係合部とを更に備え、
前記押圧部は、前記係合部よりも前記スプールの前記中心軸側に突出し、
前記スプールは前記移動部材の回動に応じて回動することを特徴とする請求項3又は4に記載のカセット。
【請求項6】
前記押圧部は、前記筐体の複数の面の内、前記第一方向の面に設けられた前記第一方向に突出する凸部であり、前記筐体が前記印刷装置の前記カセット装着部に装着された場合に、前記特定ギヤに直接又は間接的に当接して、前記回転比率を切替えさせることを特徴とする請求項1に記載のカセット。
【請求項7】
前記筐体の前記複数の面の内、前記第一方向の前記面に形成された開口から、前記第一方向とは反対の第二方向に延びるスプールを更に備え、
前記凸部の少なくとも一部は、前記開口と隣接することを特徴とする請求項6に記載のカセット。
【請求項8】
前記印刷テープは、カラー感熱テープであることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体である印刷テープを収容するカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カセットを着脱可能に装着し、カセットに収容された印刷テープに印刷する印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷装置は、プラテンローラ、モータ、伝達機構、及び切替機構を備える。伝達機構は、モータの駆動力をプラテンローラに伝達する。切替機構は、モータを正転させるか、逆転させるかにより、モータの動力をプラテンローラに伝達する伝達機構の経路を切替えることで、プラテンローラの回転速度を切替える。印刷装置は、モータの回動方向を制御して、二色印刷の時のプラテンローラの回転速度を、モノクロ印刷の時よりも低速回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-370411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の印刷装置は、モータの速度を切替える時に、印刷開始前にモータの原点確認動作をしなければならず、原点確認動作分、印刷の開始が遅くなる。
【0005】
本発明の目的は、印刷装置に装着されるカセットであって、印刷装置のプラテンローラの回転速度を切替える場合に、印刷開始までの時間を従来よりも短くできるカセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るカセットは、印刷媒体である印刷テープと、前記印刷テープを収容する筐体と、前記印刷テープに印刷する印刷ヘッドと、前記印刷テープを搬送するプラテンローラを駆動するモータと、カセット装着部と、複数のギヤを有し、前記複数のギヤの内の特定ギヤの第一方向の位置に応じて前記モータの回転数に対する前記プラテンローラの回転数である回転比率を機械的に切替える駆動切替部とを有する印刷装置の前記カセット装着部に、前記筐体が取り外し可能に装着された場合に、前記印刷装置の前記特定ギヤに直接又は間接的に当接して前記特定ギヤを、前記筐体の前記カセット装着部への装着方向である前記第一方向に移動させることで、前記印刷装置の前記駆動切替部に、前記回転比率を切替えさせる押圧部と
を備える。
【0007】
本態様のカセットは、押圧部により印刷装置が備える特定ギヤを第一方向に移動させることで、プラテンローラの回転速度を切替えることができる。カセットは、カセットが装着される印刷装置のプラテンローラの回転速度を切替える場合に、モータの原点確認動作を行う必要がない。故にカセットは、カセットが装着される印刷装置のプラテンローラの回転速度を切替える場合に、印刷開始までの時間を従来よりも短くできる。
【0008】
本態様のカセットは、前記筐体の複数の面の内、前記第一方向の面に形成された開口から、前記第一方向とは反対の第二方向に延びるスプールを更に備え、前記押圧部は、前記スプールの内周から前記スプールの中心軸側に突出する凸部であり、前記印刷装置の前記カセット装着部に、前記筐体が取り外し可能に装着された場合に、前記スプールは、前記カセット装着部に設けられた、前記モータの回動に応じて回動する駆動軸を挿通し、前記押圧部は、前記印刷装置の前記駆動軸に、前記第一方向に移動可能に外挿された移動部材を介して前記特定ギヤに当接して前記特定ギヤを、前記カセットの装着方向である前記第一方向に移動させることで、前記印刷装置の前記駆動切替部に、前記回転比率を切替えさせてもよい。カセットは、押圧部がスプールの内周に設けられているので、押圧部がスプールの内周に設けられていないカセットに比べ、押圧部が印刷装置の移動部材に当接しやすい。
【0009】
本態様のカセットの前記押圧部は、前記スプールの前記内周の内、前記スプールの前記第一方向の中央よりも前記第二方向にあってもよい。カセットは、押圧部がスプールの第一方向の中央又は中央よりも第一方向にある場合に比べ、移動部材が、押圧部以外の構成により第一方向に移動される可能性を低減できる。
【0010】
本態様のカセットの前記押圧部は、前記スプールの前記中心軸側に最も突出してもよい。カセットは、押圧部よりもスプールの中心軸側となる部材を備える場合に比べ、移動部材が、押圧部以外の構成により第一方向に移動される可能性を低減できる。
【0011】
本態様のカセットは、前記第一方向において、前記スプールの前記内周の前記第一方向の前記中央よりも前記第一方向の部分を含む範囲に亘って設けられ、前記印刷装置の前記モータの駆動に応じて回動する前記移動部材と、前記スプールの前記内周に沿った周方向に係合する係合部とを更に備え、前記押圧部は、前記係合部よりも前記スプールの前記中心軸側に突出し、前記スプールは前記移動部材の回動に応じて回動してもよい。カセットは、移動部材と係合部とが係合することで、移動部材に応じてスプールを回動させることができる。
【0012】
本態様のカセットの前記押圧部は、前記第一方向の前記面に設けられた前記第一方向に突出する凸部であり、前記筐体が前記印刷装置の前記カセット装着部に装着された場合に、前記特定ギヤに直接又は間接的に当接して、前記回転比率を切替えさせてもよい。カセットは、押圧部の構成を比較的簡単にできる。
【0013】
本態様のカセットは、前記筐体の複数の面の内、前記第一方向の面に形成された開口から、前記第一方向とは反対の第二方向に延びるスプールを更に備え、前記凸部の少なくとも一部は、前記開口と隣接してもよい。カセットは、凸部の少なくとも一部はスプールの開口と隣接するので、凸部が開口と離隔している場合に比べ、凸部は特定ギヤに直接又は間接的に当接しやすい。
【0014】
本態様のカセットの前記印刷テープは、カラー感熱テープであってもよい。カセットは、カセットが印刷装置のカセット装着部に装着されることで、カラー感熱印刷する時のプラテンローラの回転速度を、他の種類のテープ(例えば、単色感熱テープ)を用いた印刷時とは異なる速度に機械的に切替えることができる。カセットは、筐体に収容されるテープの種類に応じて、プラテンローラの回転速度を切替えるユーザの手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)カバー3が閉じられた状態の印刷装置1の斜視図であり、(B)カバー3が開かれた状態の印刷装置1の斜視図である。
【0016】
図2】カセット装着部8の底面の図示を省略した、第一実施形態の印刷装置1のカセット装着部8、モータ36、及び駆動力伝達部20の斜視図である。
図3】カセット装着部8の底面の図示を省略した、第一実施形態の印刷装置1のカセット装着部8、モータ36、及び駆動力伝達部20の平面図である。
図4】カセット6の斜視図である。
図5】カセット6が装着されたカセット装着部8の、カセット装着部8の底面の図示を省略した平面図である。
図6】カセット装着部8に装着された状態のカセット6の内部構造を模式的に示した平面図である。
図7】カセット6が押圧部78を備える場合の、図5のA-A線における矢視方向断面図である。
図8】カセット6が押圧部78を備えない場合の、図5のA-A線における矢視方向断面図である。
図9】第二実施形態のカセット160の斜視図である。
図10】第二実施形態のカセット160がカセット装着部8に装着される場合の、図5のA-A線における矢視方向断面図に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第一から第三実施形態について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載される装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施形態の説明では、図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、下側を各々、印刷装置1の左側、右側、前側、後側、上側、下側とする。
【0018】
図1から図3を参照して、第一実施形態の印刷装置1を説明する。第一実施形態の印刷装置1は、一台で感熱タイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等、各種のカセットを使用可能な汎用のテープ印刷装置である。感熱タイプのカセットは、感熱テープを備える。レセプタタイプのカセットは、印刷テープとインクリボンとを備える。ラミネートタイプのカセットは、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとを備える。印刷装置1によって印刷される印刷媒体を総称して印刷テープとも言う。本実施形態の印刷テープは、後述の印刷ヘッド15によって印刷される印刷媒体であり、感熱タイプの感熱テープ、レセプタタイプの印刷テープ、ラミネートタイプのフィルムテープを含む。
【0019】
図1(A)及び図1(B)に示すように、印刷装置1は、筐体2、カバー3、表示部4、操作部5を備える。筐体2は、略直方体形状である。筐体2の左側面には、排出スリット10が形成される。排出スリット10は上下方向に延びる開口であり、印刷済みのテープM(図6参照)をカセット装着部8から排出する。カバー3は、筐体2の後端部において、左右方向に延びる軸を中心に回動可能に支持される。図1(A)は筐体2に対しカバー3が閉じられた状態であり、図1(B)は筐体2に対しカバー3が開かれた状態である。カバー3は、例えば、カセット6の交換時に開閉される。以下の説明では、筐体2に対してカバー3が閉じられている状態を基準に、各部材の構成を説明する。
【0020】
カバー3は、下面に図7に示す押圧部材88、支持棒95、付勢部材96、及び筒状部97を備える。押圧部材88は、上下方向に延びる円柱状の部材である。押圧部材88はカセット6がカセット装着部8に装着された状態で、カセット6を下方に押圧する。押圧部材88の上端は、支持棒95に連結する。支持棒95は、付勢部材96(例えば、コイルバネ)を外挿する。付勢部材96は、押圧部材88と当接し、押圧部材88を下方に付勢する。筒状部97は、上下方向に延びる孔を有する筒状である。筒状部97は、押圧部材88の上端部を筒状部97の孔に挿通し、押圧部材88の上下方向の移動を案内する。図示しないが押圧部材88の外周面後端部は筒状部97に設けた上下方向に延びる溝部に係合する凸部を備え、凸部により押圧部材88の上下方向の移動範囲が規定される。
【0021】
図1(A)に示すように、表示部4は、カバー3の上面に設けられる。表示部4は例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示可能である。操作部5は、カバー3の前方、且つ、筐体2上面の前部に配設される。操作部5は、印刷装置1に各種指示を入力する場合に操作される。
【0022】
図1(B)、図2、及び図3に示すように、印刷装置1は、筐体2とカバー3とによって囲まれ空間に、カセット装着部8、駆動軸83、84、移動部材85、ヘッドホルダ16、印刷ヘッド15、プラテンホルダ13、プラテンローラ11、可動搬送ローラ12、モータ36、駆動力伝達部20、及び切断機構17を備える。
【0023】
カセット装着部8は、印刷ヘッド15で印刷される印刷テープ(例えば、図6の感熱テープ51)を内蔵するカセット6を装着可能下方に凹む凹部である。駆動軸83、84、及び移動部材85は、カセット装着部8に設けられる。駆動軸83、84は、上下方向に延びる。駆動軸83は、ヘッドホルダ16の右端部の後方に設けられ、駆動軸84はヘッドホルダ16の左方に設けられる。駆動軸83は、後述の駆動力伝達部20の第一ギヤ28の回動軸と同軸であり、第一ギヤ28の回動に応じて回動する。本実施形態の駆動軸83は、第一ギヤ28と、移動部材85と、付勢部材89との各々を外挿する。第一ギヤ28と、付勢部材89との各々は、図示しないカセット装着部8の底面よりも下方に設けられる。カセット装着部8の底面には、駆動軸83及び駆動軸83に外挿された移動部材85を挿通する平面視円状の孔と、駆動軸84を挿通する平面視円状の孔とが設けられている。
【0024】
移動部材85は、カセット装着部8に設けられ、駆動軸83に対し、上下方向に移動可能である。本実施形態の移動部材85は、駆動軸83に対し上下方向に移動可能に駆動軸83に外挿される。移動部材85は、駆動軸83の下端近傍に設けられた第一ギヤ28の上方において駆動軸83に外挿される。移動部材85の下端は、第一ギヤ28の上面と当接する。移動部材85の外周面には、移動部材85の上下方向に延びる軸線を中心として放射状且つ等間隔で配置された、複数の突出片82が設けられている。各突出片82は、移動部材85の外周面から半径方向外側に突出し、且つ移動部材85の上端部近傍から下方に延びる。移動部材85は、駆動軸83の回動に応じて回動する。付勢部材89は、第一ギヤ28の下方において駆動軸83に外挿される。付勢部材89は、第一ギヤ28を上方に付勢する。移動部材85は第一ギヤ28を介して付勢部材89により上方に付勢される。図7に示すように、駆動軸83の上端部には、駆動軸83の軸芯に向けて凹んだ凹部831が設けられ、凹部831にはリング86が外挿されている。リング86の外周は、駆動軸83の外周面よりも半径方向外側に突出し、移動部材85の凹部852と当接することで、移動部材85の上方への移動を規制する。凹部852は、移動部材85の上端851から下方に凹んだ平面視リング状の部分である。駆動軸84は、後述の駆動力伝達部20のギヤ32の回動軸と同軸であり、ギヤ32の回動に応じて回動する。カセット装着部8にカセット6が装着された場合、駆動軸83は、カセット6のスプール75に嵌挿され、モータ36の駆動に応じてスプール75を回転する。駆動軸84は、テープ搬送ローラ71に嵌挿され、モータ36の駆動に応じてテープ搬送ローラ71を回転する。
【0025】
ヘッドホルダ16は、カセット装着部8の前部に設けられた金属製の板状である。ヘッドホルダ16は、前面に印刷ヘッド15を搭載する。印刷ヘッド15は、複数の発熱体を備え、カセット6が備えるインクリボン又は感熱テープを加熱して印刷を行う。カセット6がカセット装着部8に装着された場合、ヘッドホルダ16はカセット6のヘッド開口58(後述)に挿入される。
【0026】
モータ36は、カセット装着部8の右方に配設される。モータ36の駆動軸はモータ36の本体から下方に延びる。モータ36は、例えば、ステッピングモータである。駆動力伝達部20は、第一ギヤ28を含む複数のギヤ21から35を有する。図2及び図3に示す駆動力伝達部20は、実際にはカセット装着部8の底面により覆い隠されている。図2図3、及び図7では、ギヤ21から35の歯の図示を省略している。第一ギヤ28は、第一位置から、第一位置に対して下方にある第二位置に移動可能である。本実施形態の駆動力伝達部20の第一ギヤ28は、移動部材85の下方への移動に連動して、第一位置から第二位置に移動可能である。駆動力伝達部20は、第一ギヤ28が第一位置にある時と、第二位置にある時とで、モータ36の回転数に対するプラテンローラ11の回転数である回転比率を切替えて、モータ36からの駆動力をプラテンローラ11へ伝達する。
【0027】
具体的には、モータ36の駆動軸の下端には、ギヤ21が固着される。ギヤ21はギヤ21の左方に配置されたギヤ22と噛み合う。ギヤ23は、ギヤ22と同軸上に配置された段付きギヤを構成する。ギヤ23は、ギヤ22よりも小径で歯数が少なく、ギヤ22の上方に配置される。ギヤ23は、ギヤ23の左方に配置された第二ギヤ24と噛み合う。ギヤ25は、ギヤ24と同軸上に配置された段付きギヤを構成する。ギヤ25は、第二ギヤ24よりも小径で歯数が少なく、第二ギヤ24の下方に配置される。ギヤ25はギヤ25の左後方に配置されたギヤ26と噛み合う。ギヤ26は、ギヤ25よりも径がやや大きく、ギヤ26よりも径が小さい。ギヤ26は、ギヤ26の後方に配置された第三ギヤ27と噛み合う。第三ギヤ27の前端部は、第二ギヤ24の後端部の下方に配置される。つまり、第三ギヤ27の前端部と、第二ギヤ24の後端部は上下に重なるように配置される。
【0028】
第一ギヤ28は、第一位置では第二ギヤ24と係合し、第二位置では第三ギヤ27と係合する。第一ギヤ28は、第一ギヤ28が第一位置にある場合と、第二位置にある場合との各々で、第一ギヤ28の左方に配置されたギヤ29と噛み合う。一例として、第一ギヤ28が第二位置にある場合の回転比率は、第一ギヤ28が第一位置にある場合の回転比率の1/5である。第一ギヤ28が第一位置にある場合と、第二位置にある場合との各々のモータ36とプラテンローラ11との回転比率は、適宜変更されてよい。
【0029】
ギヤ30は、ギヤ29と同軸上に配置された段付きギヤを構成する。ギヤ30は、ギヤ29よりも小径で歯数が少なく、ギヤ29の下方に配置される。ギヤ30は、ギヤ30の左やや前方に配置されたギヤ31と噛み合う。ギヤ31は、ギヤ31の左やや前方に配置されたギヤ32と噛み合う。ギヤ32は、後述のプラテンホルダ13が印刷位置にある場合に、ギヤ32の前方に配置されたギヤ34と噛み合う。ギヤ31は、ギヤ31の前やや右方に配置されたギヤ33と噛み合う。ギヤ33は、プラテンホルダ13が印刷位置にある場合に、ギヤ33の前方に配置されたギヤ35と噛み合う。
【0030】
カセット6がカセット装着部8に装着された状態で、モータ36が反時計回り方向に回転すると、駆動軸83が平面視反時計回り方向に回転する。駆動軸83は、駆動軸83に装着されたスプール75を回転する。モータ36の回転は、駆動軸84に伝達されて、駆動軸84に装着されたテープ搬送ローラ71を平面視時計回り方向に回転する。モータ36の回転は、ギヤ34、35に伝達されて、可動搬送ローラ12、プラテンローラ11を平面視反時計回り方向に回転する。
【0031】
プラテンホルダ13は、ヘッドホルダ16の前側に設けられたアーム状である。プラテンホルダ13の右端部は、上下方向に延びる軸14を中心に揺動可能に軸支される。プラテンローラ11及び可動搬送ローラ12は、プラテンホルダ13の左端部に、上下方向に延びる軸を中心に回転可能に軸支される。プラテンローラ11は、印刷ヘッド15に対向して、印刷ヘッド15と接離可能である。可動搬送ローラ12は、駆動軸84に装着されているテープ搬送ローラ71に対向して、テープ搬送ローラ71と接離可能である。
【0032】
プラテンホルダ13は、カバー3の開閉に連動して待機位置と印刷位置とに揺動する。印刷位置は、プラテンホルダ13がカセット装着部8と近接した位置である。カバー3が開かれると、プラテンホルダ13は印刷位置から待機位置に向けて移動する。待機位置は、プラテンホルダ13がカセット装着部8から離隔した位置であり、プラテンホルダ13が待機位置にある時、ユーザはカセット6をカセット装着部8に対して着脱可能である。
【0033】
カバー3が閉じられると、プラテンホルダ13は待機位置から印刷位置に向けて揺動する。カセット6がカセット装着部8に装着されている場合、プラテンローラ11は印刷テープを介して印刷ヘッド15を押圧し、可動搬送ローラ12はテープを介して後述のテープ搬送ローラ71を押圧する。ギヤ32は、ギヤ34と噛み合い、ギヤ33は、ギヤ35と噛み合う。これにより、プラテンローラ11及び可動搬送ローラ12は各々、モータ36の駆動に応じて回動する。プラテンローラ11の回転速度は、駆動力伝達部20の第一ギヤ28の上下位置に応じて切替えられる。プラテンホルダ13が印刷位置にある時、印刷装置1がカセット装着部8に装着されているカセット6を使用して印刷できる。
【0034】
切断機構17は、カセット装着部8の左側且つ排出スリット10の右方に設けられる。切断機構17は、カセット6から排出されたテープM(図6参照)を所定位置で切断する。切断機構17は、金属製の固定刃18及び移動刃19を有する。移動刃19は、固定刃18に対向して配置され、固定刃18に対し移動可能である。
【0035】
図4から図8を参照して、カセット6の概略構成を説明する。カセット6は、筐体60を備え、筐体60の内部に収納されるテープの種類を適宜変更することによって、感熱タイプ、ラミネートタイプ、レセプタタイプ等に実装可能な汎用カセットである。本実施形態では、感熱タイプのカセット6を例示する。
【0036】
カセット6は、筐体60に加え、支持部61から65、テープ搬送ローラ71、スプール72から75、感熱テープ51及び粘着テープ52を備える。本実施形態のカセット6は、カラー印刷可能なカラー感熱タイプの感熱テープ51を備える場合、押圧部78を更に有する。本実施形態のカセット6は、単色で印刷可能な単色感熱タイプの感熱テープ51を備える場合、押圧部78を有しない。
【0037】
筐体60は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略長方体状(箱型)である。筐体60は、アーム前面壁67、アーム背面壁68、アーム部69、排出口70、ヘッド周壁59、及び案内部56を備える。アーム前面壁67は、筐体60の前端における左右方向中央を跨いで、左右方向に延びる。アーム前面壁67から後方へ離隔した位置には、筐体60の上下方向に亘って延びるアーム背面壁68が設けられる。アーム前面壁67とアーム背面壁68とで前後に規定される、カセット6の右前部から左方に延びる部位は、アーム部69である。アーム部69の左端部には、排出口70が形成される。排出口70は、アーム前面壁67とアーム背面壁68との間で上下方向に延びる隙間である。ヘッド周壁59は、アーム背面壁68の右端部から後方に延び、且つ、アーム背面壁68と平行に延びる周壁である。アーム背面壁68とヘッド周壁59とは、ヘッド開口58を規定する。ヘッド開口58は、カセット6を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間である。ヘッド開口58は、アーム部69の後側に隣接し、筐体60を上下方向に貫通している。ヘッド開口58は、筐体60の左右方向中心を跨いで左右方向に延びる。カセット6が印刷装置1のカセット装着部8に装着された場合、ヘッド開口58には、ヘッドホルダ16が挿入される。ヘッド開口58は、カセット6の前面に形成された開口部57(図4参照)によってカセット6の前面においても外部とつながっている。排出口70から排出された感熱テープ51は、開口部57にてカセット6の外部に露出されて印刷ヘッド15による印刷が行われる。案内部56は、筐体60の左前角に設けられる。案内部56は、印刷済みのテープMを挿通し、テープMを切断機構17に向けて案内する。
【0038】
支持部61は、筐体60の左側前部に設けられ、テープ搬送ローラ71を回転可能に支持する。支持部62は、筐体60の左側後部に設けられ、スプール72を回転可能に支持する。支持部63は、筐体60の右側後部に設けられ、スプール73を回転可能に支持する。支持部64は、筐体60の右側前部に設けられ、スプール74を回転可能に支持する。支持部65は、支持部61と支持部64との間に設けられ、スプール75を回転可能に支持する。スプール75は、筐体60の複数の面の内、筐体60の下面に形成された開口79から上方に延びる。本実施形態のスプール75は、筐体60を上下方向に貫通する支持部65に支持される。スプール75は、上下方向において、スプール75の内周の上下方向の中央Kよりも下方の部分を含む範囲に亘って設けられた係合部76を備える。係合部76は、印刷装置1のモータ36の駆動に応じて回動する移動部材85の突出片82と係合する。スプール75は移動部材85の回動に応じて回動する。
【0039】
押圧部78は、印刷装置1のカセット装着部8に、筐体60が取り外し可能に装着された場合に、印刷装置1の第一ギヤ28に直接又は間接的に当接して第一ギヤ28を第一方向に移動させることで、モータ36の回転数に対するプラテンローラ11の回転数である回転比率を切替えて、モータ36の駆動力をプラテンローラ11へ伝達させる。押圧部78は、スプール75の内周からスプール75の中心軸J側に突出する凸部である。押圧部78は、スプール75の内周の内、スプール75の上下方向の中央Kよりも上方にある。押圧部78は、スプール75の係合部76よりもスプール75の中心軸J側に、筒状に突出する。押圧部78は、スプール75の内周に設けられた部分の内、スプール75の中心軸J側に最も突出する。押圧部78はスプール75と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。
【0040】
図6に示すように、感熱テープ51は長尺状の印刷媒体である。感熱テープ51が、カラー感熱タイプの印刷テープである場合、感熱テープ51は、複数の層が積層されて構成され、色の三原色(シアン、マゼンタ、イエロー)を組み合わせることでカラー印刷可能である。詳細には感熱テープ51は、例えば、基材、複数の感熱層、複数の遮熱層、及びオーバーコート層を有する。本実施形態では複数の感熱層は第一感熱層、第二感熱層、及び第三感熱層を含む。複数の遮熱層は、第一遮熱層と第二遮熱層とを含む。基材、第一感熱層、第一遮熱層、第二感熱層、第二遮熱層、第三感熱層、及びオーバーコート層は、この順で感熱テープ51の厚み方向に並んで積層される。基材は樹脂フィルムであり、詳細には無発泡樹脂フィルムである。第一感熱層、第二感熱層、及び第三感熱層の各層は、各層に応じた発色温度に加熱されることで、各層に応じた色の三原色、即ち、シアン、マゼンタ、及びイエローを発色する。第一遮熱層と第二遮熱層とは各々シート状であり、熱伝導性が比較的低い部材により形成される。各遮熱層は、遮熱層に隣接する二つの感熱層の温度に、遮熱層の熱伝導性に応じた差を生じさせる。オーバーコート層は基材とは反対側から複数の感熱層を保護する。
【0041】
感熱テープ51が、単色感熱タイプの印刷テープである場合、感熱テープ51は、複数の層が積層されて構成され、単色で印刷可能である。詳細には感熱テープ51は、例えば、基材、感熱層、及びオーバーコート層を有し、この順で感熱テープ51の厚み方向に並んで積層される。
【0042】
カラー感熱タイプの感熱テープ51及び単色感熱タイプの感熱テープ51は、何れもスプール73にロール状に巻回され、ロールの前端から前方に引き出され、カセット6の右前角部で左方に曲がる。感熱テープ51はアーム部69の内部を通過し、排出口70からカセット6の外部へ露出する。カセット6がカセット装着部8に装着された場合、ヘッド開口58では、感熱テープ51の基材側がプラテンローラ11に対向し、感熱テープ51の基材側とは反対側、つまり、オーバーコート層側が印刷ヘッド15に対向する。感熱テープ51はヘッド開口58を経由してテープ搬送ローラ71と可動搬送ローラ12との間を通過する。この時、感熱テープ51のオーバーコート層側がテープ搬送ローラ71に対向し、感熱テープ51の基材側が可動搬送ローラ12に対向する。
【0043】
粘着テープ52は、長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。詳細には粘着テープ52は両面粘着テープと剥離紙とを備える。両面粘着テープは、白色のシートの両面に粘着剤が塗布されることで構成される。粘着テープ52は、スプール72にロール状に巻回され、ロールの左端から前方に引き出される。粘着テープ52はテープ搬送ローラ71の外周のうち右前部に接触しながら左方に曲がる。この時、粘着テープ52の剥離紙側がテープ搬送ローラ71に対向し、粘着テープ52の両面粘着テープ側が可動搬送ローラ12に対向する。感熱テープ51は、感熱テープ51のオーバーコート層側から粘着テープ52と重ね合わされる。
【0044】
図1図5図7及び図8を参照し、押圧部78を備えるカセット6をカセット装着部8に装着する場合と、押圧部78を備えないカセット6をカセット装着部8に装着する場合との各々について説明する。本実施形態の押圧部78を備えるカセット6は、カラー感熱タイプの感熱テープ51を有し、押圧部78を備えないカセット6は、単色感熱タイプの感熱テープ51を有する。図1(B)に示すように、カセット装着部8にカセット6を装着する場合、ユーザは、押圧部78の有無に関わらず、筐体2に対してカバー3を開いた状態で、カセット6をカセット装着部8の上方に位置させた後、下方(カセット装着方向)に移動させる。この時、図5に示すように、駆動軸83は、カセット6のスプール75に挿通され、駆動軸84は、カセット6のテープ搬送ローラ71に挿通され、ヘッドホルダ16は、ヘッド開口58に挿通される。これにより、カセット6は、カセット装着部8に装着される。図1(A)に示すように、ユーザは、筐体2に対してカバー3を閉じる。
【0045】
図7に示すように、カセット装着部8に押圧部78を備えるカセット6が装着された場合、スプール75は、カセット装着部8に設けられた、モータ36の回動に応じて回動する駆動軸83を挿通する。押圧部78は、印刷装置1の駆動軸83に、外挿された移動部材85を介して第一ギヤ28に当接して第一ギヤ28を下方に移動させる。詳細には、移動部材85の上端851は、押圧部78の下面782に当接して、移動部材85は、付勢部材89の付勢力に抗して、第一ギヤ28と共に下方に移動する。これにより、第一ギヤ28は第一位置から第二位置に移動し、第二ギヤ24とは噛み合いを解除して、第三ギヤ27と噛み合う。駆動軸83の上端は、押圧部材88の下端881から上方に凹んだ凹部882に当接し、下方に押圧される。押圧部78の上面781は、カバー3の下面に設けられた、押圧部材88の下端881から僅かに離隔する。これにより、カセット6が付勢部材89の付勢力により上方に浮き上がることが抑制される。カセット装着部8から押圧部78を備えるカセット6が取り外される場合、ユーザは、筐体2に対してカバー3を開いた状態で、カセット6を上方(カセット取り外し方向)に移動させて取り外す。押圧部78が移動部材85から離隔するのに伴い、第一ギヤ28は、付勢部材89の付勢力により、第二位置から第一位置に移動し、第二ギヤ24とは噛み合い、第三ギヤ27とは噛み合いを解除する。
【0046】
図8に示すように、カセット装着部8に押圧部78を備えないカセット6が装着された場合、スプール75は、カセット装着部8に設けられた、駆動軸83を挿通する。詳細には、移動部材85の上端851は、押圧部材88の下端881に当接し、移動部材85の凹部852は、リング86の下面と当接し、付勢部材89の付勢力により上方に移動されるのが規制される。これにより、第一ギヤ28は第一位置にある状態を維持し、第二ギヤ24と噛み合う。駆動軸83の上端は、凹部882に当接し、下方に押圧される。これにより、カセット6が付勢部材89の付勢力により上方に浮き上がることが抑制される。カセット装着部8から押圧部78を備えるカセット6が取り外される場合、ユーザは、筐体2に対してカバー3を開いた状態で、カセット6を上方に移動させて取り外す。この時、第一ギヤ28は、第一位置にある状態を維持し、第二ギヤ24とは噛み合い、第三ギヤ27とは噛み合わない。
【0047】
印刷装置1は、印刷データに基づいて印刷制御を行う時の動作について説明する。印刷装置1はモータ36を制御してテープ搬送ローラ71、可動搬送ローラ12、及びプラテンローラ11を回転する。これにより、テープ搬送ローラ71、可動搬送ローラ12、及びプラテンローラ11の協働によって、感熱テープ51と、粘着テープ52との各々が引き出される。モータ36の駆動により、駆動軸83が回動され、駆動軸83の駆動に伴い、スプール75が回動する。印刷装置1はモータ36を制御しながら印刷ヘッド15を制御する。詳細には、印刷装置1は感熱テープ51を搬送しながら、印刷ヘッド15の複数の発熱体を選択的に発熱させる。この時、上述したように、感熱テープ51は厚み方向において基材側とは反対側のオーバーコート層側から印刷ヘッド15によって加熱される。これにより、印刷データに基づいて感熱テープ51に画像が印刷される。印刷装置1はモータ36を制御して駆動軸84を回転することで、印刷された感熱テープ51及び粘着テープ52を搬送する。
【0048】
可動搬送ローラ12による感熱テープ51と、粘着テープ52との各々の搬送速度は、第一ギヤ28の上下方向の位置に応じて切替えられる。本実施形態では、単色感熱タイプの感熱テープ51を備えるカセット6がカセット装着部8に装着され、第一ギヤ28が第一位置にある時の搬送速度は、第一速度である。カラー感熱タイプの感熱テープ51を備えるカセット6がカセット装着部8に装着され、第一ギヤ28が第二位置にある時の搬送速度は、第一速度よりも遅い第二速度である。これにより印刷装置1は、カラー感熱タイプの感熱テープ51を用いて印刷する場合に、単色感熱タイプの感熱テープ51を印刷する場合に比べ、感熱テープ51をゆっくりと正確に搬送し、色の三原色に応じた感熱層ごとの熱伝達時間を確保できる。可動搬送ローラ12は、感熱テープ51と粘着テープ52とが重ね合わされた状態で、テープ搬送ローラ71との間で挟んで感熱テープ51と粘着テープ52とを貼り合わせる。これにより、テープMが作成される。図6に示すように、テープMは案内部56の内側を通過してカセット6の外部に排出される。テープMは切断機構17へと搬送されて、切断機構17により切断される。切断されたテープMは排出スリット10から印刷装置1の外部へと排出される。
【0049】
図9及び図10を参照して、カセット160の下面に設けられた押圧部161により、直接第一ギヤ28を下方に移動させる第二実施形態のカセット160について説明する。図9及び図10では、第一実施形態のカセット6及び印刷装置1と同様の構成については、同じ符号を付与している。変形例のカセット160はスプール75の内周面に設けられた押圧部78に替えて、押圧部161を備える点と、スプール75が押圧部161の下面に形成された開口179から上方に延びる点で、第一実施形態のカセット6と異なり、他の構成は第一実施形態のカセット6と同様である。押圧部161は、カセット160の筐体60が備える複数の面の内、筐体60の下面から下方に突出する筒状である。図示しないが、カセット装着部8の底面には、駆動軸83、及び駆動軸83に外挿された移動部材85に加え、カセット装着部8にカセット160が装着される際に移動部材85に外挿される押圧部161を挿通可能な平面視円状の孔が設けられている。
【0050】
図10に示すように、カセット160がカセット装着部8に装着された場合、押圧部161の下端は、第一ギヤ28の上端部に当接し、付勢部材89の付勢力に抗して、第一ギヤ28を下方に移動させる。これにより、第一ギヤ28は、第一位置から第二位置に移動され、第二ギヤ24との噛み合いが解除され、第三ギヤ27と噛み合う。図示しないが、駆動軸83の上端は、押圧部材88の下端881から上方に凹んだ凹部882に当接し、下方に押圧され、カセット6が付勢部材89の付勢力により上方に浮き上がることが抑制されてもよい。カセット160がカセット装着部8から取り外された場合、押圧部161の下端は、第一ギヤ28の上端部と離隔し、付勢部材89の付勢力により、第一ギヤ28が上方に移動される。これにより、第一ギヤ28は、第二位置から第一位置に移動され、第二ギヤ24と噛み合い、第三ギヤ27との噛み合いが解除される。この場合の印刷装置1は、押圧部161を有しないカセット6がカセット装着部8に装着され、第一ギヤ28が第一位置にある時と、押圧部161を有するカセット160がカセット装着部8に装着され、第一ギヤ28が第二位置にある時とで、モータ36の回転数に対するプラテンローラ11の回転数である回転比率を切替えて、モータ36の駆動力をプラテンローラ11に伝達できる。第二実施形態のカセット160が装着される印刷装置1では、移動部材85は駆動軸83に対し上下方向に移動不能でもよい。
【0051】
上記第一、第二実施形態において、カセット6、160は、本発明のカセットの一例である。感熱テープ51は、本発明の印刷テープの一例である。筐体60、スプール75、係合部76、及び駆動軸83は各々、本発明の筐体、スプール、係合部、及び駆動軸の一例である。押圧部78、161は、本発明の押圧部の一例である。開口79、179は、本発明の開口の一例である。
【0052】
上記第一実施形態のカセット6は、印刷媒体である感熱テープ51と、感熱テープ51を収容する筐体60と、押圧部78を備える。カセット6の筐体60は、感熱テープ51に印刷する印刷ヘッド15と、感熱テープ51を搬送するプラテンローラ11を駆動するモータ36と、カセット装着部8と、複数のギヤ21から35を有し、複数のギヤ21から35の内の第一ギヤ28の上下方向の位置に応じてモータ36の回転数に対するプラテンローラ11の回転数である回転比率を切替える駆動力伝達部20(駆動切替部)とを有する印刷装置1のカセット装着部8に、取り外し可能に装着される。印刷装置1のカセット装着部8に、筐体60が取り外し可能に装着された場合、押圧部78は、印刷装置1の第一ギヤ28に直接又は間接的に当接して第一ギヤ28を、筐体60のカセット装着部8への装着方向である下方に移動させる。これにより、押圧部78は、印刷装置1の駆動力伝達部20に、モータ36からプラテンローラ11へ伝達するモータ36とプラテンローラ11との回転比率を切替えさせる。故に、カセット6は、押圧部78により印刷装置1が備える第一ギヤ28を下方に移動させることで、プラテンローラ11の回転速度を切替えることができる。カセット6は、カセット6が装着される印刷装置1のプラテンローラ11の回転速度を切替える場合に、モータ36の原点確認動作を行う必要がない。故にカセット6は、カセット6が装着される印刷装置1のプラテンローラ11の回転速度を切替える場合に、印刷開始までの時間を従来よりも短くできる。上記第二実施形態のカセット160は、押圧部78に替えて、押圧部161を備え、第一実施形態のカセット6と同様の効果を奏する。
【0053】
第一実施形態のカセット6は、筐体60の複数の面の内、下面に形成された開口79から、上方に延びるスプール75を備える。押圧部78は、スプール75の内周からスプール75の中心軸J側に突出する凸部である。印刷装置1のカセット装着部8に、筐体60が取り外し可能に装着された場合に、スプール75は、カセット装着部8に設けられた、モータ36の回動に応じて回動する駆動軸83を挿通する。押圧部78は、印刷装置1の駆動軸83に、前後方向に移動可能に外挿された移動部材85を介して第一ギヤ28に当接して第一ギヤ28を下方に移動させることで、印刷装置1の駆動力伝達部20に、モータ36からプラテンローラ11へ伝達する、モータ36とプラテンローラ11との回転比率を切替えさせる。カセット6は、押圧部78がスプール75の内周に設けられているので、押圧部78がスプール75の内周に設けられていないカセット6に比べ、押圧部78が印刷装置1の移動部材85に当接しやすい。
【0054】
第一実施形態のカセット6の押圧部78は、スプール75の内周の内、スプール75の前後方向の中央Kよりも第二方向にある。カセット6は、押圧部78がスプール75の第一方向の中央K又は中央Kよりも第一方向にある場合に比べ、移動部材85が、押圧部78以外の構成により第一方向に移動される可能性を低減できる。
【0055】
第一実施形態のカセット6の押圧部78は、スプール75の中心軸J側に最も突出する。カセット6は、押圧部78よりも、スプール75の中心軸J側にある部材を有しないので、押圧部78を移動部材85に確実に当接させやすい。
【0056】
第一実施形態のカセット6の押圧部78は、上下方向において、スプール75の内周の第一方向の中央Kよりも第一方向の部分を含む範囲に亘って設けられ、印刷装置1のモータ36の駆動に応じて回動する移動部材85と、スプール75の内周に沿った周方向に係合する係合部76を備える。押圧部78は、係合部76よりもスプール75の中心軸J側に突出し、スプール75は移動部材85の回動に応じて回動する。カセット6は、移動部材85と係合部76とが係合することで、移動部材85に応じてスプール75を回動させることができる。カセット6がインクリボンを備える場合、プラテンローラ11の回転速度に応じた速度で、インクリボンをスプール75に巻き取ることができる。カセット6がインクリボンを備えない場合、カセット6は、インクリボンを備えるカセットと部品を共通化できる。
【0057】
第二実施形態のカセット160の押圧部161は、筐体60の下面に設けられた下方に突出する凸部であり、筐体60が印刷装置1のカセット装着部8に装着された場合に、第一ギヤ28に直接又は間接的に当接して、モータ36からプラテンローラ11へ伝達する、モータ36とプラテンローラ11との回転比率を切替えさせる。カセット160は、押圧部161を介して印刷装置1の移動部材85を第一方向に移動させるのに加え、駆動力伝達部20比較的簡単にできる。
【0058】
第二実施形態のカセット160は、筐体60の複数の面の内、下面に形成された開口179から、上方に延びるスプール75を備え、押圧部161は、開口179と隣接する。カセット160は、押圧部161はスプール75の開口179と隣接するので、第一ギヤ28に対して押圧部161を位置合わせしやすく、押圧部161が開口79と離隔している場合に比べ、押圧部161は第一ギヤ28に確実に当接させることができる。押圧部161は背面視筒状に形成されており、第一ギヤ28の回動軸の周囲を略均一に下方に押圧できる。
【0059】
第一、第二実施形態の感熱テープ51は、カラー感熱テープである。カセット6、160は、カセット6が印刷装置1のカセット装着部8に装着されることで、カラー感熱印刷する時のプラテンローラ11の回転速度を、他の種類のテープ(例えば、単色感熱テープ)を用いた印刷時とは異なる速度に機械的に切替えることができる。第一、第二実施形態では、カラー感熱タイプの感熱テープ51を備えるカセット6、160がカセット装着部8に装着された場合、印刷装置1の駆動力伝達部20は、モータ36とプラテンローラ11との回転比率を、単色感熱タイプの感熱テープ51を備えるカセット6、160がカセット装着部8に装着された場合よりも小さくする。これにより、カラー感熱タイプの感熱テープ51を用いて印刷する場合に、単色感熱タイプの感熱テープ51を印刷する場合に比べ、感熱テープ51をゆっくりと正確に搬送し、色の三原色に応じた感熱層ごとの熱伝達時間を確保できる。カラー感熱タイプの感熱テープ51を有するカセット160は、単色熱タイプの感熱テープ51を用いて印刷する場合と同じ回転速度でプラテンローラ11が回転される場合に比べ、印刷品質を向上できる。カセット6、160は、筐体60に収容されるテープの種類に応じて、プラテンローラ11の回転速度を切替えるユーザの手間を省くことができる。
【0060】
本発明のカセットは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
【0061】
カセット6は、プラテンローラ11を備えてもよい。カセット6、160が備える印刷テープの種類は適宜変更されてよい。カセット6は、インクリボンを備えてもよく、その場合スプール74に巻回されたインクリボンを、開口部57からカセット6の外部に引き出して印刷テープに印刷した後、使用済みのインクリボンをスプール75で巻き取ってもよい。この場合スプール75は、駆動軸83の回動に応じて回動されるので、カセット6は、インクリボンの搬送速度に応じた速度でインクリボンを巻き取ることができる。カセット6は、スプール72から75の内、使用しないスプールを適宜省略してもよい。例えば、カセット6は、インクリボンを備えない場合、スプール74、75を備えなくてもよい。カセット6がインクリボンを備えない場合、カセット6はスプール75を備えず、支持部65は駆動軸83を挿通可能な筒状に構成されてもよく、押圧部78は支持部65の内周面に設けられてもよい。
【0062】
押圧部78、161の構成は適宜変更されてよい。押圧部78はスプール75の内周に平面視リング状に形成されていたが、押圧部78の形状、配置等は適宜変更されてよい。押圧部78は、スプール75の内周からスプール75の中心軸J側に突出し、移動部材85と当接可能な任意の形状の凸部あってもよく、例えば、平面視棒状であってもよい。スプール75は筐体60を上下方向(カセット6の厚み方向)に貫通する支持部65に支持されていたが、支持部65は筐体60を上下方向に貫通しなくてもよい。第一方向(カセット装着方向)はカセット6をカセット装着部8に装着する際のカセット6の移動方向であればよく、印刷装置1及びカセット6の構成に応じて適宜変更されてよい。第一方向は、例えば、カセット6の厚み方向の一方側であってもよい。押圧部78は、スプール75の内周の内、スプール75の上下方向の中央K又は中央Kよりも下方に設けられてもよい。押圧部78は、スプール75の中心軸J側に最も突出していなくてもよい。
【0063】
押圧部161は、他の部材を介して、第一ギヤ28を下方に移動させてもよい。押圧部161がカセット6が有する複数の面の何れか(例えば、下面)に設けられる場合、押圧部161の形状、配置、及び大きさ等は、押圧部161が移動させる特定ギヤの配置、大きさ等に応じて適宜変更されてよい。例えば、押圧部161は背面視筒状に形成されず、一部分のみが開口179に隣接してもよいし、開口179に隣接しなくてもよい。
【0064】
第一、第二実施形態及び上記変形例に開示された各カセットの特徴を適宜組み合わせて、他の変形例のカセットを構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
6、160:カセット、51:感熱テープ、60:筐体、72から75:スプール、76:係合部、78、161:押圧部、79、179:開口、83、84:駆動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10